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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】恒温槽型圧電発振器
(51)【国際特許分類】
   H03B 5/32 20060101AFI20240618BHJP
【FI】
H03B5/32 A
H03B5/32 H
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022546999
(86)(22)【出願日】2021-09-06
(86)【国際出願番号】 JP2021032700
(87)【国際公開番号】W WO2022050414
(87)【国際公開日】2022-03-10
【審査請求日】2022-06-06
(31)【優先権主張番号】P 2020149902
(32)【優先日】2020-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000149734
【氏名又は名称】株式会社大真空
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】古城 琢也
【審査官】志津木 康
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-034972(JP,A)
【文献】特開2020-123804(JP,A)
【文献】特開2006-014208(JP,A)
【文献】特開2020-123906(JP,A)
【文献】特開2017-130861(JP,A)
【文献】特開2017-195430(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03B5/30-5/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも発振用IC、圧電振動子、およびヒータ用ICを有するコア部が、断熱用のパッケージの内部に密閉状態で封入された恒温槽型圧電発振器であって、
前記ヒータ用ICが、発熱体と、前記発熱体の温度制御用の制御回路と、前記発熱体の温度を検出するための温度センサとが一体になった構成とされ、
前記コア部は、コア基板を介して前記パッケージに支持されており、
前記コア基板は、平面視で、前記コア部が設けられた領域よりも外側で前記パッケージに接続され、
前記圧電振動子および前記ヒータ用ICが積層された積層構造であり、前記圧電振動子と前記ヒータ用ICとが接合される面において、前記ヒータ用ICの面積が前記圧電振動子の面積よりも大きいことを特徴とすることを特徴とする恒温槽型圧電発振器。
【請求項2】
請求項1に記載の恒温槽型圧電発振器において、
前記コア基板は、前記パッケージと機械的な接続手段によって接続されていることを特徴とする恒温槽型圧電発振器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の恒温槽型圧電発振器において、
前記コア基板と、前記パッケージの内底面との間には、空隙が設けられていることを特徴とする恒温槽型圧電発振器。
【請求項4】
請求項3に記載の恒温槽型圧電発振器において、
前記コア基板は、接着剤によって前記パッケージに接合されており、
前記コア基板と前記パッケージとの間に介在された前記接着剤によって、前記空隙が形成されていることを特徴とする恒温槽型圧電発振器。
【請求項5】
請求項3に記載の恒温槽型圧電発振器において、
前記パッケージの内部には、対向する一対の段差部が形成されており、前記一対の段差部間に形成された凹部によって、前記空隙が形成されていることを特徴とする恒温槽型圧電発振器。
【請求項6】
請求項5に記載の恒温槽型圧電発振器において、
前記凹部が、平面視で、前記コア部に対応する位置に形成されていることを特徴とする恒温槽型圧電発振器。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1つに記載の恒温槽型圧電発振器において、
前記圧電振動子が、ガラスまたは水晶からなる第1、第2封止部材と、水晶からなり両主面に励振電極が形成された振動部を有する圧電振動板とを備え、前記第1封止部材と前記第2封止部材とが、前記圧電振動板を介して積層して接合され、内部に配された前記圧電振動板の前記振動部が気密封止される構成になっていることを特徴とする恒温槽型圧電発振器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、恒温槽型圧電発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
水晶振動子等の圧電振動子は、固有の周波数温度特性に基づいて、温度に応じて振動周波数が変化する。そこで、圧電振動子の周囲の温度を一定に保つために、恒温槽内に圧電振動子を封入した恒温槽型圧電発振器(Oven-Controlled Xtal(crystal) Oscillator:以下、「OCXO」とも言う。)が知られている(例えば、特許文献1参照)。OCXOは、例えば、発振用IC、圧電振動子、ヒータ用IC等を有するコア部が、断熱用のパッケージの内部に密閉状態で封入された構成になっており、コア部は、コア基板を介してパッケージに固定されている。OCXOでは、ヒータ用ICの発熱体(熱源)が発生する熱量(ヒータ発熱量)を制御することによって、コア部の温度が略一定の温度に維持されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6376681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したようなOCXOにおいて、コア基板は、例えば導電性接着剤等によってパッケージに固定され、その導電性接着剤等を介してコア基板とパッケージとが電気的に接続される。この場合、コア基板とパッケージとの接続部分を介して、コア部の熱がパッケージ側へ移動する(漏れる)可能性があり、その接続部分を介してパッケージ側へ移動した熱量の分だけ、コア部の温度を維持するために必要なヒータ発熱量が大きくなり、消費電力が大きくなることが懸念される。
【0005】
本発明は上述したような実情を考慮してなされたもので、コア部の温度を維持するためのヒータ発熱量をできる限り小さく抑えることが可能な恒温槽型圧電発振器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するための手段を以下のように構成している。すなわち、本発明は、少なくとも発振用IC、圧電振動子、およびヒータ用ICを有するコア部が、断熱用のパッケージの内部に密閉状態で封入された恒温槽型圧電発振器であって、前記ヒータ用ICが、発熱体と、前記発熱体の温度制御用の制御回路と、前記発熱体の温度を検出するための温度センサとが一体になった構成とされ、前記コア部は、コア基板を介して前記パッケージに支持されており、前記コア基板は、平面視で、前記コア部が設けられた領域よりも外側で前記パッケージに接続され、前記圧電振動子および前記ヒータ用ICが積層された積層構造であり、前記圧電振動子と前記ヒータ用ICとが接合される面において、前記ヒータ用ICの面積が前記圧電振動子の面積よりも大きいことを特徴とする。この場合、前記コア基板は、前記パッケージと機械的な接続手段によって接続されていることが好ましい。
【0007】
上記構成によれば、コア基板とパッケージとの接続部分が、平面視で、コア部と重畳する位置に設けられておらず、コア部から離れた位置に設けられるので、コア基板とパッケージとの接続部分を介して、コア部の熱がパッケージ側へ移動しにくくなり(漏れにくくなり)、ヒータ用ICの発熱体から発生した熱の大部分をコア部に留めることができる。これにより、コア部の温度を維持するために必要なヒータ発熱量をできる限り小さく抑えることができ、OCXOの消費電力を低減することができる。また、コア基板を介してコア部がパッケージに固定されているので、OCXOが搭載される実装基板からの応力がコア部に伝わりにくくなり、コア部の保護を図ることができる。
【0008】
上記構成において、前記コア基板と、前記パッケージの内底面との間には、空隙が設けられていることが好ましい。
【0009】
上記構成によれば、コア基板とパッケージの内底面との間に設けられた空隙によって、コア部の断熱性を高めることができる。これにより、コア部の温度を維持するために必要なヒータ発熱量をより小さく抑えることができ、OCXOの消費電力をより低減することができる。
【0010】
上記構成において、前記コア基板は、接着剤によって前記パッケージに接合されており、前記コア基板と前記パッケージとの間に介在された前記接着剤によって、前記空隙が形成されていることが好ましい。
【0011】
上記構成によれば、コア基板とパッケージとを接合する接着剤を利用するという簡便な手法によって、コア基板とパッケージの内底面との間に空隙を形成することができる。
【0012】
上記構成において、前記パッケージの内部には、対向する一対の段差部が形成されており、前記一対の段差部間に形成された凹部によって、前記空隙が形成されていることが好ましい。
【0013】
上記構成によれば、段差部を設けることによって、コア基板とパッケージの内底面との間に空隙を確実に確保することができる。また、コア基板とパッケージとを接合するための接着剤がパッケージの内底面に流出した場合であっても、当該接着剤が凹部に流入することによって、接着剤同士が接触することによる短絡を防止することができる。
【0014】
上記構成において、前記凹部が、平面視で、前記コア部に対応する位置に形成されていることが好ましい。
【0015】
上記構成によれば、コア部に対応する位置(例えば下方)に凹部が設けられているので、凹部によってコア部の断熱性をより高めることができる。
【0016】
上記構成において、前記圧電振動子が、ガラスまたは水晶からなる第1、第2封止部材と、水晶からなり両主面に励振電極が形成された振動部を有する圧電振動板とを備え、前記第1封止部材と前記第2封止部材とが、前記圧電振動板を介して積層して接合され、内部に配された前記圧電振動板の前記振動部が気密封止される構成になっていることが好ましい。
【0017】
上記構成によれば、コア部の圧電振動子として、上述のような振動部が内部に気密封止されたサンドイッチ構造の圧電振動子が用いられているので、コア部の低背化および小型化を図ることができ、コア部の熱容量を小さくすることができる。これにより、OCXOのヒータ発熱量を抑えることができ、消費電力を抑えることができる。しかも、コア部の温度追従性を向上させることができ、OCXOの安定性を向上させることができる。また、サンドイッチ構造の圧電振動子では、接着剤を用いずに振動部が気密封止されるので、接着剤から発生したアウトガスによる熱対流の悪影響を抑制することができる。つまり、振動部を気密封止する空間内で、接着剤から発生したアウトガスが循環することによって熱対流が発生し、振動部の精度良い温度制御が妨げられる可能性がある。しかし、サンドイッチ構造の圧電振動子では、そのようなアウトガスが発生しないため、振動部の精度良い温度制御が可能になる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の恒温槽型圧電発振器によれば、コア基板とパッケージとの接続部分が、平面視で、コア部と重畳する位置に設けられておらず、コア部から離れた位置に設けられるので、コア基板とパッケージとの接続部分を介して、コア部の熱がパッケージ側へ移動しにくくなり、ヒータ用ICの発熱体から発生した熱の大部分をコア部に留めることができる。これにより、コア部の温度を維持するために必要なヒータ発熱量をできる限り小さく抑えることができ、消費電力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本実施の形態にかかるOCXOの概略構成を示す断面図である。
図2図2は、図1のOCXOのコア部およびコア基板の概略構成を示す断面図である。
図3図3は、図2のコア部およびコア基板を示す平面図である。
図4図4は、図2のコア部の水晶発振器(水晶振動子および発振用IC)の各構成を模式的に示した概略構成図である。
図5図5は、図4の水晶発振器の第1封止部材の第1主面側の概略平面図である。
図6図6は、図4の水晶発振器の第1封止部材の第2主面側の概略平面図である。
図7図7は、図4の水晶発振器の水晶振動板の第1主面側の概略平面図である。
図8図8は、図4の水晶発振器の水晶振動板の第2主面側の概略平面図である。
図9図9は、図4の水晶発振器の第2封止部材の第1主面側の概略平面図である。
図10図10は、図4の水晶発振器の第2封止部材の第2主面側の概略平面図である。
図11図11は、変形例1にかかるOCXOの概略構成を示す断面図である。
図12図12は、図11のOCXOの平面図である。
図13図13は、変形例2にかかるOCXOの概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0021】
本実施の形態にかかるOCXO1は、図1に示すように、セラミック製等で略直方体のパッケージ(筐体)2の内部にコア部5が配置され、リッド3によって気密封止された構造とされている。パッケージ2は、例えば、7.0×5.0mmのサイズとされている。パッケージ2には、上方が開口された凹部2aが形成されており、凹部2aの内部にコア部5が気密状態で封入されている。凹部2aを囲う周壁部2bの上面には、リッド3が封止材8によって固定されており、パッケージ2の内部が密封状態(気密状態)になっている。封止材8としては、例えばAu-Su合金や、はんだ等の金属系封止材が好適に用いられるが、低融点ガラス等の封止材を用いてもよい。パッケージ2の内部空間は、真空、または低圧の窒素やアルゴン等の熱伝導率が低い雰囲気であることが好ましい。
【0022】
パッケージ2の周壁部2bの内壁面には、接続端子(図示省略)の並びに沿った段差部2cが形成されており、段差部2cに形成された接続端子に、板状のコア基板4を介してコア部5が接続されている。コア基板4は、例えば水晶からなる。なお、コア基板4をポリイミド等の耐熱性および可撓性を有する樹脂材料によって形成してもよい。
【0023】
コア基板4は、パッケージ2の対向する一対の段差部2c,2c間に架け渡されるように配置されており、一対の段差部2c,2cの間であってコア基板4の下側の部分には、空隙2dが形成されている。そして、段差部2cの段差面上に形成された接続端子が、導電性接着剤7を介してコア基板4の下面4bに形成された接続端子(図示省略)に接続されている。また、コア部5の各構成部材に形成された外部端子(図示省略)が、ワイヤ6a,6bを介してコア基板4の上面4aに形成された接続端子4cにワイヤボンディングにより接続されている。導電性接着剤7としては、例えばポリイミド系接着剤、エポキシ系接着剤等が用いられる。
【0024】
次に、コア部5について、図2図3を参照して説明する。図2図3では、コア部5がコア基板4上に搭載された状態を図示している。図2は、図3のコア基板4の短辺方向に沿って切断した断面を示している(図1も同様)。コア部5は、OCXO1で使用される各種電子部品をパッケージングしたものであり、発振用IC51、水晶振動子50、およびヒータ用IC52が上側から順に積層された3層構造(積層構造)の構成になっている。発振用IC51、水晶振動子50、およびヒータ用IC52は、平面視におけるそれぞれの面積が、上方に向かって漸次小さくなっている。コア部5は、特に、温度特性の大きい水晶振動子50、発振用IC51、およびヒータ用IC52の温度調整を行うことで、OCXO1の発振周波数を安定させるように構成されている。なお、コア部5の各種電子部品は封止樹脂によって封止されていないが、封止雰囲気によっては封止樹脂による封止を行うようにしてもよい。
【0025】
水晶振動子50および発振用IC51によって、水晶発振器100が構成される。発振用IC51は、複数の金属バンプ51a(図4参照)を介して水晶振動子50上に搭載されている。発振用IC51によって水晶振動子50の圧電振動を制御することにより、OCXO1の発振周波数が制御される。水晶発振器100の詳細については後述する。
【0026】
水晶振動子50および発振用IC51の互いの対向面の間には、非導電性接着剤(アンダーフィル)53が介在されており、非導電性接着剤53によって水晶振動子50および発振用IC51の互いの対向面が固定されている。この場合、水晶振動子50の上面(第1封止部材20の第1主面201)と、発振用IC51の下面とが、非導電性接着剤53を介して接合される。非導電性接着剤53としては、例えばポリイミド系接着剤、エポキシ系接着剤等が用いられる。また、水晶振動子50の上面に形成された外部端子(図5に示す電極パターン22)が、ワイヤ6aを介してコア基板4の上面4aに形成された接続端子4cにワイヤボンディングにより接続されている。
【0027】
発振用IC51は、平面視における面積が水晶振動子50よりも小さくなっており、発振用IC51の全体が、平面視で水晶振動子50の範囲内に位置している。発振用IC51の下面の全体が、水晶振動子50の上面(第1封止部材20の第1主面201)に接合されている。
【0028】
ヒータ用IC52は、例えば発熱体(熱源)と、発熱体の温度制御用の制御回路(電流制御用の回路)と、発熱体の温度を検出するための温度センサとが一体になった構成とされている。ヒータ用IC52によってコア部5の温度制御を行うことにより、コア部5の温度が略一定の温度に維持され、OCXO1の発振周波数の安定化が図られている。
【0029】
水晶振動子50およびヒータ用IC52の互いの対向面の間には、非導電性接着剤54が介在されており、非導電性接着剤54によって水晶振動子50およびヒータ用IC52の互いの対向面が固定されている。この場合、水晶振動子50の下面(第2封止部材30の第2主面302)と、ヒータ用IC52の上面とが、非導電性接着剤54を介して接合される。非導電性接着剤54としては、例えばポリイミド系接着剤、エポキシ系接着剤等が用いられる。ヒータ用IC52の上面に形成された外部端子(図示省略)が、ワイヤ6bを介してコア基板4の上面4aに形成された接続端子4cにワイヤボンディングにより接続されている。
【0030】
水晶振動子50は、平面視における面積がヒータ用IC52よりも小さくなっており、水晶振動子50の全体が、平面視でヒータ用IC52の範囲内に位置している。水晶振動子50の下面(第2封止部材30の第2主面302)の全体が、ヒータ用IC52の上面に接合されている。
【0031】
ヒータ用IC52およびコア基板4の互いの対向面の間には、導電性接着剤55が介在されており、導電性接着剤55によってヒータ用IC52およびコア基板4の互いの対向面が固定されている。この場合、ヒータ用IC52の下面と、コア基板4の上面4aとが、導電性接着剤55を介して接合される。これにより、ヒータ用IC52が導電性接着剤55およびコア基板4を介してグランド接続されるようになっている。導電性接着剤55としては、例えばポリイミド系接着剤、エポキシ系接着剤等が用いられる。なお、例えばワイヤ等を介してヒータ用IC52がグランド接続される場合には、導電性接着剤の代わりに、上述した非導電性接着剤53,54と同様の非導電性接着剤を用いてもよい。
【0032】
コア基板4の上面4aには、上述したように、多数の接続端子4cが形成されている。また、コア基板4の上面4aには、複数(図3では2つ)のチップコンデンサ(バイパスコンデンサ)4dが配置されている。なお、チップコンデンサ4dのサイズや数については特に限定されない。
【0033】
コア基板4の下面4bには、上述したように、多数の接続端子が形成されており、導電性接着剤7を介してパッケージ2に形成された接続端子に接続されている。図3では、導電性接着剤7によるコア基板4とパッケージ2との接続部分7aを2点鎖線で示している。コア基板4の下面4bの接続端子は、コア基板4の上面4aの接続端子4cに対応する位置に設けられている。コア基板4の下面4bの接続端子のうち、パッケージ2の接続端子との接続に使用される接続端子にそれぞれ導電性接着剤7が塗布されるようになっており、導電性接着剤7が塗布された部分を接続部分7aとしている。導電性接着剤7による接続部分7aは、平面視で、コア基板4の周縁部に設けられており、より詳細には、コア基板4の対向する一対の長辺に沿った領域に所定の間隔で並んで設けられている。コア基板4の対向する一対の長辺に沿った領域は、パッケージ2の対向する一対の段差部2c,2cの上方に位置している。
【0034】
コア部5に用いられる水晶振動子50の種類は特に限定されるものではないが、デバイスを薄型化しやすい、サンドイッチ構造のデバイスを好適に使用できる。サンドイッチ構造のデバイスは、ガラスや水晶からなる第1、第2封止部材と、例えば水晶からなり両主面に励振電極が形成された振動部を有する圧電振動板とから構成され、第1封止部材と第2封止部材とが、圧電振動板を介して積層して接合され、内部に配された圧電振動板の振動部が気密封止される構成になっているデバイスである。
【0035】
このようなサンドイッチ構造の水晶振動子50と、発振用IC51とが一体的に設けられた水晶発振器100について、図4図10を参照して説明する。
【0036】
水晶発振器100は、図4に示すように、水晶振動板(圧電振動板)10、第1封止部材20、第2封止部材30、および発振用IC51を備えて構成されている。この水晶発振器100では、水晶振動板10と第1封止部材20とが接合され、水晶振動板10と第2封止部材30とが接合されることによって、略直方体のサンドイッチ構造のパッケージが構成される。すなわち、水晶発振器100においては、水晶振動板10の両主面のそれぞれに第1封止部材20および第2封止部材30が接合されることでパッケージの内部空間(キャビティ)が形成され、この内部空間に振動部11(図7図8参照)が気密封止される。
【0037】
水晶発振器100は、例えば、1.0×0.8mmのパッケージサイズであり、小型化と低背化とを図ったものである。また、小型化に伴い、パッケージでは、キャスタレーションを形成せずに、スルーホールを用いて電極の導通を図っている。第1封止部材20上に搭載される発振用IC51は、水晶振動板10とともに発振回路を構成する1チップ集積回路素子である。また、水晶発振器100は、上述したヒータ用IC52上に、非導電性接着剤54を介して搭載される。
【0038】
水晶振動板10は、図7図8に示すように、水晶からなる圧電基板であって、その両主面(第1主面101,第2主面102)が平坦平滑面(鏡面加工)として形成されている。水晶振動板10として、厚みすべり振動を行うATカット水晶板が用いられている。図7図8に示す水晶振動板10では、水晶振動板10の両主面101,102が、XZ´平面とされている。このXZ´平面において、水晶振動板10の短手方向(短辺方向)に平行な方向がX軸方向とされ、水晶振動板10の長手方向(長辺方向)に平行な方向がZ´軸方向とされている。
【0039】
水晶振動板10の両主面101,102には、一対の励振電極(第1励振電極111,第2励振電極112)が形成されている。水晶振動板10は、略矩形に形成された振動部11と、この振動部11の外周を取り囲む外枠部12と、振動部11と外枠部12とを連結することで振動部11を保持する保持部(連結部)13とを有している。すなわち、水晶振動板10は、振動部11、外枠部12および保持部13が一体的に設けられた構成となっている。保持部13は、振動部11の+X方向かつ-Z´方向に位置する1つの角部のみから、-Z´方向に向けて外枠部12まで延びている(突出している)。
【0040】
第1励振電極111は振動部11の第1主面101側に設けられ、第2励振電極112は振動部11の第2主面102側に設けられている。第1励振電極111,第2励振電極112には、これらの励振電極を外部電極端子に接続するための引出配線(第1引出配線113,第2引出配線114)が接続されている。第1引出配線113は、第1励振電極111から引き出され、保持部13を経由して、外枠部12に形成された接続用接合パターン14に繋がっている。第2引出配線114は、第2励振電極112から引き出され、保持部13を経由して、外枠部12に形成された接続用接合パターン15に繋がっている。
【0041】
水晶振動板10の両主面(第1主面101,第2主面102)には、水晶振動板10を第1封止部材20および第2封止部材30に接合するための振動側封止部がそれぞれ設けられている。第1主面101の振動側封止部としては振動側第1接合パターン121が形成されており、第2主面102の振動側封止部としては振動側第2接合パターン122が形成されている。振動側第1接合パターン121および振動側第2接合パターン122は、外枠部12に設けられており、平面視で環状に形成されている。
【0042】
また、水晶振動板10には、図7図8に示すように、第1主面101と第2主面102との間を貫通する5つのスルーホールが形成されている。具体的には、4つの第1スルーホール161は、外枠部12の4隅(角部)の領域にそれぞれ設けられている。第2スルーホール162は、外枠部12であって、振動部11のZ´軸方向の一方側(図7図8では、-Z´方向側)に設けられている。第1スルーホール161の周囲には、それぞれ接続用接合パターン123が形成されている。また、第2スルーホール162の周囲には、第1主面101側では接続用接合パターン124が、第2主面102側では接続用接合パターン15が形成されている。
【0043】
第1スルーホール161および第2スルーホール162には、第1主面101と第2主面102とに形成された電極の導通を図るための貫通電極が、スルーホールそれぞれの内壁面に沿って形成されている。また、第1スルーホール161および第2スルーホール162それぞれの中央部分は、第1主面101と第2主面102との間を貫通した中空状態の貫通部分となる。
【0044】
次に、第1封止部材20は、図5図6に示すように、1枚のATカット水晶板から形成された直方体の基板であり、この第1封止部材20の第2主面202(水晶振動板10に接合する面)は平坦平滑面(鏡面加工)として形成されている。なお、第1封止部材20は振動部を有するものではないが、水晶振動板10と同様にATカット水晶板を用いることで、水晶振動板10と第1封止部材20の熱膨張率を同じにすることができ、水晶発振器100における熱変形を抑制することができる。また、第1封止部材20におけるX軸、Y軸およびZ´軸の向きも水晶振動板10と同じとされている。
【0045】
第1封止部材20の第1主面201には、図5に示すように、発振回路素子である発振用IC51を搭載する搭載パッドを含む6つの電極パターン22が形成されている。発振用IC51は、金属バンプ(例えばAuバンプなど)51a(図4参照)を用いて電極パターン22に、FCB(Flip Chip Bonding)法により接合される。また、本実施の形態では、6つの電極パターン22のうち、第1封止部材20の第1主面201の4隅(角部)に位置する電極パターン22は、上述したコア基板4の上面4aに形成された接続端子4cにワイヤ6aを介して接続されている。これにより、発振用IC51が、ワイヤ6a、コア基板4、導電性接着剤7、パッケージ2等を介して、外部に電気的に接続されるようになっている。
【0046】
第1封止部材20には、図5図6に示すように、6つの電極パターン22のそれぞれと接続され、第1主面201と第2主面202との間を貫通する6つのスルーホールが形成されている。具体的には、4つの第3スルーホール211が、第1封止部材20の4隅(角部)の領域に設けられている。第4,第5スルーホール212,213は、図5図6の+Z´方向および-Z´方向にそれぞれ設けられている。
【0047】
第3スルーホール211および第4,第5スルーホール212,213には、第1主面201と第2主面202とに形成された電極の導通を図るための貫通電極が、スルーホールそれぞれの内壁面に沿って形成されている。また、第3スルーホール211および第4,第5スルーホール212,213それぞれの中央部分は、第1主面201と第2主面202との間を貫通した中空状態の貫通部分となる。
【0048】
第1封止部材20の第2主面202には、水晶振動板10に接合するための封止側第1封止部としての封止側第1接合パターン24が形成されている。封止側第1接合パターン24は、平面視で環状に形成されている。
【0049】
また、第1封止部材20の第2主面202では、第3スルーホール211の周囲に接続用接合パターン25がそれぞれ形成されている。第4スルーホール212の周囲には接続用接合パターン261が、第5スルーホール213の周囲には接続用接合パターン262が形成されている。さらに、接続用接合パターン261に対して第1封止部材20の長軸方向の反対側(-Z´方向側)には接続用接合パターン263が形成されており、接続用接合パターン261と接続用接合パターン263とは配線パターン27によって接続されている。
【0050】
次に、第2封止部材30は、図9図10に示すように、1枚のATカット水晶板から形成された直方体の基板であり、この第2封止部材30の第1主面301(水晶振動板10に接合する面)は平坦平滑面(鏡面加工)として形成されている。なお、第2封止部材30においても、水晶振動板10と同様にATカット水晶板を用い、X軸、Y軸およびZ´軸の向きも水晶振動板10と同じとすることが望ましい。
【0051】
この第2封止部材30の第1主面301には、水晶振動板10に接合するための封止側第2封止部としての封止側第2接合パターン31が形成されている。封止側第2接合パターン31は、平面視で環状に形成されている。
【0052】
第2封止部材30の第2主面302には、4つの電極端子32が設けられている。電極端子32は、第2封止部材30の第2主面302の4隅(角部)にそれぞれ位置する。なお、本実施の形態では、上述したように、電極パターン22、ワイヤ6aを介して外部との電気的に接続が行われるが、電極端子32を用いて外部との電気的な接続を行うことも可能になっている。
【0053】
第2封止部材30には、図9図10に示すように、第1主面301と第2主面302との間を貫通する4つのスルーホールが形成されている。具体的には、4つの第6スルーホール33は、第2封止部材30の4隅(角部)の領域に設けられている。第6スルーホール33には、第1主面301と第2主面302とに形成された電極の導通を図るための貫通電極が、第6スルーホール33それぞれの内壁面に沿って形成されている。このように第6スルーホール33の内壁面に形成された貫通電極によって、第1主面301に形成された電極と、第2主面302に形成された電極端子32とが導通されている。また、第6スルーホール33それぞれの中央部分は、第1主面301と第2主面302との間を貫通した中空状態の貫通部分となっている。また、第2封止部材30の第1主面301では、第6スルーホール33の周囲には、それぞれ接続用接合パターン34が形成されている。なお、電極端子32を用いて外部との電気的な接続を行わない場合には、電極端子32、第6スルーホール33等を設けない構成としてもよい。
【0054】
上記の水晶振動板10、第1封止部材20、および第2封止部材30を含む水晶発振器100では、水晶振動板10と第1封止部材20とが振動側第1接合パターン121および封止側第1接合パターン24を重ね合わせた状態で拡散接合され、水晶振動板10と第2封止部材30とが振動側第2接合パターン122および封止側第2接合パターン31を重ね合わせた状態で拡散接合されて、図4に示すサンドイッチ構造のパッケージが製造される。これにより、パッケージの内部空間、つまり、振動部11の収容空間が気密封止される。
【0055】
この際、上述した接続用接合パターン同士も重ね合わせられた状態で拡散接合される。そして、接続用接合パターン同士の接合により、水晶発振器100では、第1励振電極111、第2励振電極112、発振用IC51および電極端子32の電気的導通が得られるようになっている。
【0056】
具体的には、第1励振電極111は、第1引出配線113、配線パターン27、第4スルーホール212および電極パターン22を順に経由して、発振用IC51に接続される。第2励振電極112は、第2引出配線114、第2スルーホール162、第5スルーホール213および電極パターン22を順に経由して、発振用IC51に接続される。
【0057】
水晶発振器100において、各種接合パターンは、複数の層が水晶板上に積層されてなり、その最下層側からTi(チタン)層とAu(金)層とが蒸着形成されているものとすることが好ましい。また、水晶発振器100に形成される他の配線や電極も、接合パターンと同一の構成とすれば、接合パターンや配線および電極を同時にパターニングでき、好ましい。
【0058】
上述のように構成された水晶発振器100では、水晶振動板10の振動部11を気密封止する封止部(シールパス)115,116は、平面視で、環状に形成されている。シールパス115は、上述した振動側第1接合パターン121および封止側第1接合パターン24の拡散接合によって形成され、シールパス115の外縁形状および内縁形状が略八角形に形成されている。同様に、シールパス116は、上述した振動側第2接合パターン122および封止側第2接合パターン31の拡散接合によって形成され、シールパス116の外縁形状および内縁形状が略八角形に形成されている。
【0059】
上述したように、本実施の形態では、コア部5は、コア基板4を介してパッケージ2に支持されており、コア基板4は、平面視で、コア部5が設けられた領域よりも外側でパッケージ2に接続されている。そして、ヒータ用IC52において、発熱体に供給する電流を制御することによって、コア部5の温度調整を行って、コア部5の温度を略一定の温度に維持するようにしている。
【0060】
コア部5は、発振用IC51、水晶振動子50、およびヒータ用IC52の積層構造になっており、平面視におけるそれぞれの面積が、下方に向かって漸次大きくなっており、発振用IC51、水晶振動子50、およびヒータ用IC52の順で大きくなっている。平面視でコア部5が設けられた領域とは、コア部5の構成部品のうち、コア基板4に直接的に接合される部品と、コア基板4との接合領域を言い、本実施形態では、コア基板4とヒータ用IC52との接合領域になっている。
【0061】
図3に示すように、平面視でコア部5が設けられた領域(ヒータ用IC52が設けられた領域)よりも外側に、導電性接着剤7によるコア基板4とパッケージ2との接続部分7aが設けられている。接続部分7aは、平面視で、コア基板4の周縁部であって、コア部5が設けられた領域に重畳しない位置に設けられている。接続部分7aは、コア部5が設けられた領域に対し所定の間隔を隔てて設けられている。
【0062】
本実施の形態によれば、接続部分7aが、平面視で、コア部5と重畳する位置に設けられておらず、コア部5から離れた位置に設けられるので、接続部分7aを介して、コア部5の熱がパッケージ2側へ移動しにくくなり(漏れにくくなり)、ヒータ用IC52の発熱体から発生した熱の大部分をコア部5に留めることができる。これにより、コア部5の温度を維持するために必要なヒータ発熱量をできる限り小さく抑えることができ、OCXO1の消費電力を低減することができる。また、コア基板4を介してコア部5がパッケージ2に固定されているので、OCXO1が搭載される実装基板からの応力がコア部5に伝わりにくくなり、コア部5の保護を図ることができる。
【0063】
また、コア基板4と、パッケージ2の内底面との間には、空隙2dが設けられているので、この空隙2dによって、コア部5の断熱性を高めることができる。これにより、コア部5の温度を維持するために必要なヒータ発熱量をより小さく抑えることができ、OCXO1の消費電力をより低減することができる。
【0064】
ここで、パッケージ2の内部には、対向する一対の段差部2c,2cが形成されており、一対の段差部2c,2cの間に形成された凹部によって、空隙2dが形成されている。また、段差部2c,2c間の凹部が、平面視で、コア部5に対応する位置(この場合、下方の位置)に形成されている。詳細には、段差部2c,2c間の凹部が、平面視で、コア部5に重畳する位置に設けられており、段差部2c,2c間の凹部内に、コア部5の全体が収まっている。
【0065】
このように、パッケージ2の内部に段差部2c,2cを設けることによって、コア基板4とパッケージ2の内底面との間に空隙2dを確実に確保することができる。また、コア基板4とパッケージ2とを接合するための接着剤がパッケージ2の内底面に流出した場合であっても、当該接着剤が凹部に流入することによって、接着剤同士が接触することによる短絡を防止することができる。また、コア部5に対応する位置に、段差部2c,2c間の凹部が設けられているので、この凹部によってコア部5の断熱性をより高めることができる。
【0066】
さらに、本実施の形態では、コア部5の圧電振動子として、上述のような振動部11が内部に気密封止された低背化が可能なサンドイッチ構造の水晶振動子50が用いられているので、コア部5の低背化および小型化を図ることができ、コア部5の熱容量を小さくすることができる。これにより、OCXO1のヒータ発熱量を抑えることができ、消費電力を抑えることができる。しかも、コア部5の温度追従性を向上させることができ、OCXO1の安定性を向上させることができる。また、サンドイッチ構造の水晶振動子50では、上述したように、接着剤を用いずに振動部11が気密封止されるので、接着剤から発生したアウトガスによる熱対流の悪影響を抑制することができる。つまり、振動部11を気密封止する空間内で、接着剤から発生したアウトガスが循環することによって熱対流が発生し、振動部11の精度良い温度制御が妨げられる可能性がある。しかし、サンドイッチ構造の水晶振動子50では、そのようなアウトガスが発生しないため、振動部11の精度良い温度制御が可能になる。
【0067】
ところで、コア部5の熱源として、ヒータ抵抗を有するヒータ基板を用いた場合、ヒータ基板が大型化する可能性があるが、本実施の形態によれば、そのような大型のヒータ基板を用いなくても、必要なヒータ発熱量を確保することができ、コア部5のさらなる小型化を図ることができ、コア部5の熱容量をさらに小さくすることができる。なお、コア部5の大きさを限定しない場合、コア部5の熱源として、ヒータ抵抗を有するヒータ基板を用いることは可能である。
【0068】
また、水晶振動板10は、略矩形に形成された振動部11と、振動部11の外周を取り囲む外枠部12と、振動部11と外枠部12とを連結する保持部13とを有しており、発振用IC51が、平面視において、水晶振動板10の外枠部12の少なくとも一部の領域に重畳している。これにより、発振用IC51の熱が、外枠部12を介して水晶振動板10の振動部11に伝達しやすくなるため、コア部5の温度をより均一化させやすくすることができる。
【0069】
ここで、パッケージ2は、封止や、エージング、経年変化等により、熱ダメージや、経時ダメージを受けることになる。このため、接着剤(導電性接着剤7,55、非導電性接着剤53,54)として、耐熱性の低い樹脂系接着剤を用いた場合、分解、軟化等によりパッケージ2内にガスが発生し、OCXO1の高精度の温度調整が妨げられる可能性がある。そこで、本実施の形態では、そのような接着剤として、熱伝導率が低く、耐熱性が高いポリイミド系接着剤、エポキシ系接着剤を用いることによって、そのような不具合が発生することを抑制するようにしている。
【0070】
本発明は、その精神や主旨または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【0071】
上記実施形態では、パッケージ2の内部に段差部2c,2cを設けることによって、コア基板4とパッケージ2の内底面との間に空隙2dを形成したが、そのような段差部2c,2cをパッケージ2に設けない構成としてもよい。例えば、コア基板4が、導電性接着剤によって、パッケージ2の内底面に形成された接続端子に接合され、コア基板4とパッケージ2との間に介在された導電性接着剤によって、コア基板4とパッケージ2の内底面との間に空隙2dを形成してもよい。この場合、導電性接着剤は、所定の厚みを有する状態で塗布されており、この導電性接着剤の厚みによって、コア基板4とパッケージ2の内底面との間の空隙2dを確保するようにしている。この構成によれば、コア基板4とパッケージ2とを接合する接着剤を利用するという簡便な手法によって、コア基板4とパッケージ2の内底面との間に空隙2dを形成することができる。
【0072】
上記実施の形態では、圧電振動子として、サンドイッチ構造の水晶振動子50を用いたが、これに限らず、それ以外の構造を有する圧電振動子を用いてもよい。また、金属バンプを用いたFCB(Flip Chip Bonding)法により発振用IC51の水晶振動子50への搭載を行ったが、これに限らず、ワイヤボンディングや、導電性接着剤等により発振用IC51の水晶振動子50への搭載を行ってもよい。また、ワイヤボンディングによりヒータ用IC52のコア基板4への搭載を行ったが、これに限らず、金属バンプを用いたFCB法や、導電性接着剤等によりヒータ用IC52のコア基板4への搭載を行ってもよい。また、ワイヤボンディングにより水晶振動子50からコア基板4への電気的接続を行ったが、これに限らず、金属バンプを用いたFCB法や、導電性接着剤等により水晶振動子50をヒータ用IC52に搭載することで、水晶振動子50をヒータ用IC52を介してコア基板4に電気的に接続するようにしてもよい。
【0073】
また、例えば、図11図12に示す変形例1や、図13に示す変形例2のように、ワイヤボンディングによりコア部5とパッケージ2との電気的接続を行ってもよい。また、図示しないが、金属バンプを用いたFCB法によりコア基板4とパッケージ2との電気的接続を行ってもよい。このように、導電性接着剤や、ワイヤボンディング、金属バンプを用いたFCB法等のような機械的な接続手段によって、コア基板4とパッケージ2との電気的接続を行ってもよい。
【0074】
コア基板4がパッケージ2の内底面と機械的な接続手段によって接続されている場合は、コア基板4が一対の段差部2c(図1参照)の上面に接続されている構成に比べてOCXO1の低背化を図ることができる。また、コア基板4がパッケージ2と機械的かつ絶縁性(非導電性)の接続手段によって接続されている場合は、コア部5の熱がパッケージ2側へ移動にしにくくなり(漏れにくくなり)、ヒータ用IC52の発熱体から発生した熱の大部分をコア部5に留めることができる。これにより、コア部5の温度を維持するために必要なヒータ発熱量をできる限り小さく抑えることができ、OCXO1の消費電力を低減することができる。なお、コア基板4がパッケージ2と機械的かつ絶縁性の接続手段によって接続されている場合は、ワイヤボンディングによりコア部4とパッケージ2との電気的接続を行うようにすればよい。
【0075】
上述したコア基板4とパッケージ2との接続部分7aの配置は一例であって、平面視でコア部5が設けられた領域よりも外側であれば、接続部分7aを上記以外の配置構成としてもよい。つまり、平面視でコア部5と重畳しない箇所であれば、接続部分7aを上記以外の箇所に配置してもよい。
【0076】
上記実施の形態では、コア部5が、少なくとも発振用IC51、水晶振動子50、およびヒータ用IC52が上側から順に積層された構成であったが、これとは逆に、コア部5が、少なくともヒータ用IC52、水晶振動子50、および発振用IC51が上側から順に積層された構成であってもよい。
【0077】
コア部5は、少なくとも発振用IC51、水晶振動子50、およびヒータ用IC52を有していればよく、発振用IC51、水晶振動子50、およびヒータ用IC52の積層構造に、例えばヒータ基板等を付加する構成としてもよい。例えばヒータ基板、発振用IC51、水晶振動子50、およびヒータ用IC52が、上側から順に積層された4層構造としてもよいし、あるいはヒータ用IC52、水晶振動子50、発振用IC51、およびヒータ基板が、上側から順に積層された4層構造としてもよい。これらの場合、発振用IC51に発熱体であるヒータ基板を積層することによって、コア部5の温度をより均一化させることができる。
【0078】
なお、ヒータ基板、発振用IC51、水晶振動子50、およびヒータ用IC52が、上側から順に積層された4層構造の場合、コア基板4に直接的に接合されるヒータ用IC52と、コア基板4との接合領域が、コア部5が設けられた領域とされる。一方、ヒータ用IC52、水晶振動子50、発振用IC51、およびヒータ基板が、上側から順に積層された4層構造の場合、コア基板4に直接的に接合されるヒータ基板と、コア基板4との接合領域が、コア部5が設けられた領域とされる。
【0079】
また、コア部5は、少なくとも発振用IC51、水晶振動子50、およびヒータ用IC52を有していればよく、上述したような積層構造を有していなくてもよい。例えば、コア部5を、発振用IC51、水晶振動子50、およびヒータ用IC52に加えて、ヒータ基板や、複数のチップコンデンサ(バイパスコンデンサ)等を有する構成としてもよい。この場合、コア基板4に直接的に接合される構成部品(例えばヒータ基板)と、コア基板4との接合領域が、コア部5が設けられた領域とされる。
【0080】
上記実施の形態では、コア基板4を経由してコア部5とパッケージ2との電気的な接続を行ったが、コア基板4を経由せずにコア部5とパッケージ2とを電気的に接続してもよい。つまり、コア部5を構成する発振用IC51、水晶振動子50、およびヒータ用IC52のうちの少なくとも1つから、ワイヤを介してパッケージ2との電気的な接続を行ってもよい。この変形例にかかるOCXO1について、図11図12を参照して説明する。図11は、変形例1にかかるOCXO1の概略構成を示す断面図である。図12は、図11のOCXO1の平面図である。
【0081】
変形例1にかかるOCXO1は、図11図12に示すように、セラミック製等で略直方体のパッケージ(筐体)2の内部にコア部5が配置され、リッド(蓋)3によって気密封止された構造とされている。パッケージ2は、例えば、5.0×3.2mmのサイズとされている。パッケージ2には、上方が開口された凹部2aが形成されており、凹部2aの内部にコア部5が気密状態で封入されている。凹部2aを囲う周壁部2bの上面には、リッド3が封止材8を介してシーム溶接によって固定されており、パッケージ2の内部が密封状態(気密状態)になっている。封止材8としては、例えばAu-Su合金や、はんだ等の金属系封止材が好適に用いられるが、低融点ガラス等の封止材を用いてもよい。また、これらに限らず、金属リングを用いたシーム封止や金属リングを用いないダイレクトシーム封止、ビーム封止などの手法による封止部材の構成を採用することも可能である(真空度を低下させない上では、シーム封止が好ましい)。パッケージ2の内部空間は、真空(例えば真空度が10Pa以下)、または低圧の窒素やアルゴンなどの熱伝導率が低い雰囲気であることが好ましい。なお、図12では、リッド3を取り外した状態のOCXO1を示しており、OCXO1の内部の構造を示している。
【0082】
パッケージ2の周壁部2bの内壁面には、接続端子(図示省略)の並びに沿った段差部2cが形成されている。コア部5は、対向する一対の段差部2c,2c間における凹部2aの底面(パッケージ2の内底面)に、板状のコア基板4を介して配置されている。あるいは、段差部2cは、凹部2aの底面の四方を囲むように形成されていてもよい。コア基板4は、例えばポリイミド等の耐熱性および可撓性を有する樹脂材料からなる。なお、コア基板4を水晶によって形成してもよい。
【0083】
コア基板4は、非導電性接着剤7bにより凹部2aの底面(パッケージ2の内底面)に接合されており、コア基板4の下側の部分には空隙2dが形成されている。また、コア部5の各構成部材に形成された外部端子(図示省略)は、ワイヤ6a,6bを介して段差部2cの段差面上に形成された接続端子にワイヤボンディングにより接続されている。非導電性接着剤7b,7bの内方側には、スペーサ部材2f,2fが設けられている。
【0084】
非導電性接着剤7b,7bが、コア基板4の長手方向の両端部に配置されており、コア基板4の短手方向(図12の紙面に直交する方向)に沿って直線状に配置されている。各スペーサ部材2fは、非導電性接着剤7bの側方に隣接するように配置されており、コア基板4の短手方向に沿って直線状に配置されている。このように、非導電性接着剤7b,7bの内方側において、コア基板4とパッケージ2の内底面の間に、スペーサ部材2f,2fが介在されている。スペーサ部材2f,2fによって、コア基板4の長手方向の両端部が支持されている。
【0085】
コア基板4は、例えばポリイミド等の耐熱性および可撓性を有する樹脂材料からなる。スペーサ部材2fは、例えばモリブデン、タングステン等のペースト材からなる。このように、コア基板4とパッケージ2の内底面との間には、非導電性接着剤7bおよびスペーサ部材2fの介在物が設けられており、介在物によってコア基板4とパッケージ2の内底面との間の空隙2dを容易に確保することができる。また、スペーサ部材2fによって、パッケージ2の内底面に塗布された非導電性接着剤7bの厚みが規定されるので、コア基板4とパッケージ2の内底面の間の空隙2dの幅を容易に規定することができる。スペーサ部材2fの厚みは、5~50μmであることが好ましい。水晶振動子50および発振用IC51の互いの対向面の間には、アンダーフィルが介在されない構成となっており、水晶振動子50および発振用IC51の互いの対向面は、複数の金属バンプ51aによって固定されており、アンダーフィルによる応力の影響を回避できるようになっている。なお、水晶振動子50および発振用IC51の互いの対向面の間に、アンダーフィルが介在する構成であってもよい。また、水晶振動子50およびヒータ用IC52の互いの対向面の間に、導電性接着剤56が介在しているが、水晶振動子50およびヒータ用IC52の互いの対向面の間に、非導電性接着剤が介在する構成であってもよい。
【0086】
上記実施の形態では、パッケージ2はシングルパッケージとされているが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、図13に示すようなH型パッケージや、2段重ねパッケージを使用することもできる。図13は、変形例2にかかるOCXO1の概略構成を示す断面図である。
【0087】
図13に示すH型パッケージのOCXO1は、上方が開口された凹部2a以外に、下方が開口された凹部2eが形成されたパッケージ2を有している。コア部5の実装部となる主面(凹部2aが形成された主面)と反対側の他主面に形成される凹部2eには、ヒータ用IC52と組み合わせて使用される調整用電子部品としてチップコンデンサ4dなどの回路部品(例えば、はんだで取り付けられる回路部品)を配置することができる。チップコンデンサ4dを配置する凹部2eは、凹部2aとは異なり、リッドによって封止する必要はない。
【0088】
ここで、チップコンデンサ4dは、コア部5と同じ空間内(凹部2a内)に配置することも可能であるが、図13に示すように、コア部5と異なる空間内(凹部2e内)に回路部品を配置することでコア部5が収容される空間内の熱容量を小さくし、小電力での温度制御や、コア部5の温度追従性の向上を図ることができる。また、気密封止された凹部2a内部の雰囲気に対して、はんだやフラックスなどによる事後的なガスの発生をなくすことができる。このため、ガスの悪影響をコア部5に対して与えることがなくなり、電気的特性のさらなる安定化を実現できるうえで望ましい。
【0089】
この出願は、2020年9月7日に日本で出願された特願2020-149902号に基づく優先権を請求する。これに言及することにより、その全ての内容は本出願に組み込まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は、圧電振動子、発振用IC、およびヒータ用ICを有するコア部を備えた恒温槽型圧電発振器に利用可能である。
【符号の説明】
【0091】
1 恒温槽型圧電発振器
2 パッケージ
4 コア基板
5 コア部
7 接着剤
7a 接続部分
50 水晶振動子(圧電振動子)
51 発振用IC
52 ヒータ用IC
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13