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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】超音波装置および超音波装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/14 20060101AFI20240618BHJP
【FI】
A61B8/14
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022561245
(86)(22)【出願日】2020-11-16
(86)【国際出願番号】 JP2020042628
(87)【国際公開番号】W WO2022102130
(87)【国際公開日】2022-05-19
【審査請求日】2023-10-16
(73)【特許権者】
【識別番号】514315159
【氏名又は名称】株式会社ソシオネクスト
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】足立 直人
【審査官】井海田 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開平4-92652(JP,A)
【文献】特開2013-90839(JP,A)
【文献】特表2008-520314(JP,A)
【文献】国際公開第2017/056463(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/006578(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 ー 8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に向けて超音波を発生し、前記被検体により反射される超音波に応じて電圧を生成する複数の振動子と、
前記複数の振動子がそれぞれ生成する複数の電圧のうち、所定数の振動子が生成する電圧の時間変化をそれぞれ示す所定数の時系列データを生成するデータ生成部と、
前記データ生成部が生成した時系列データを蓄積するデータ蓄積部と、
前記データ生成部が生成した時系列データまたは前記データ蓄積部が蓄積した時系列データを選択する選択部と、
前記選択部が選択した所定数の時系列データを処理して画像データを生成するデータ処理部と、
前記データ蓄積部が蓄積した時系列データを前記選択部が選択する間、前記データ生成部に時系列データの生成動作を停止させる制御部と、
を有する超音波装置。
【請求項2】
前記データ処理部は、
前記選択部が選択した所定数の時系列データから所定の遅延量のデータをそれぞれ抽出する遅延調整部と、
前記遅延調整部が抽出した所定の遅延量のデータを加算する加算部と、
前記加算部が加算したデータに基づいて、前記画像データとして前記被検体の測定部位の複数箇所のいずれかの画像データを生成する画像生成部と、
を有する請求項1に記載の超音波装置。
【請求項3】
前記画像生成部は、前記データ蓄積部が蓄積した時系列データを使用して前記被検体の測定部位の複数の位置の画像データを順次生成し、
前記遅延調整部は、前記データ蓄積部が蓄積した所定数の時系列データからそれぞれ抽出する前記所定の遅延量のデータを前記複数の位置毎に変更する
請求項2に記載の超音波装置。
【請求項4】
前記複数の振動子が生成する電圧のうち、前記所定数の振動子が生成する電圧を選択するスイッチを有し、
前記制御部は、前記データ生成部がデータを生成する毎に、前記スイッチが選択する前記所定数の振動子の位置を、前記画像生成部により生成される画像データの数と同じ数の振動子分ずらす
請求項2または請求項3に記載の超音波装置。
【請求項5】
前記データ生成部は、
前記所定数の振動子が生成する電圧をそれぞれ増幅する複数の増幅器と、
前記複数の増幅器によりそれぞれ増幅される複数の電圧の値をデジタルデータに順次変換する複数のアナログデジタル変換器と
を有する請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の超音波装置。
【請求項6】
少なくとも前記データ生成部、前記データ蓄積部、前記データ処理部および前記制御部に電力を供給するバッテリーを有する
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の超音波装置。
【請求項7】
前記データ処理部が生成する画像データを、画像データを超音波画像として表示するディスプレイが搭載された端末に無線で送信する無線通信部を有する
請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の超音波装置。
【請求項8】
被検体に向けて超音波を発生し、前記被検体により反射される超音波に応じて電圧を生成する複数の振動子と、前記複数の振動子がそれぞれ生成する複数の電圧のうち、所定数の振動子が生成する電圧の時間変化をそれぞれ示す所定数の時系列データを生成するデータ生成部と、を有する超音波装置の制御方法であって、
前記データ生成部が生成した時系列データをデータ蓄積部に蓄積し、
前記データ生成部が生成した時系列データまたは前記データ蓄積部が蓄積した時系列データを選択し、
選択した所定数の時系列データから所定の遅延量のデータをそれぞれ抽出し、
抽出した所定の遅延量のデータを加算し、
加算したデータに基づいて、前記被検体の測定部位の複数箇所のいずれかの画像データを生成し、
前記データ蓄積部が蓄積した時系列データを選択する間、前記データ生成部に時系列データの生成動作を停止させる
超音波装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波装置および超音波装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生体に向けて超音波を発生し、生体により反射される超音波から超音波画像データを生成する超音波装置が知られている。この種の超音波装置では、例えば、複数の振動素子から生体に送信する送信ビーム毎に複数の受信ビームを生成することで、超音波画像の画質が向上される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-323894号公報
【文献】国際公開第2005/065547号
【文献】特開2004-166745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近時、超音波装置の小型化およびワイヤレス化が進んできており、例えば、超音波画像を生成するための基本の処理機能が内蔵された超音波プローブが開発されている。超音波装置では、超音波画像データの生成に使用する超音波の受信信号の数(振動子の数)である受信チャネル数を増やすほど、超音波画像は高画質になるが、消費電力は増える。このため、例えば、バッテリー駆動のために低消費電力が要求されるモバイル型の超音波装置では、据え置き型の超音波装置に比べて、受信チャネル数を抑え、超音波画像の画質で抑えている。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、超音波画像の画質を低下させることなく、超音波装置の消費電力を削減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様では、超音波装置は、被検体に向けて超音波を発生し、前記被検体により反射される超音波に応じて電圧を生成する複数の振動子と、前記複数の振動子がそれぞれ生成する複数の電圧のうち、所定数の振動子が生成する電圧の時間変化をそれぞれ示す所定数の時系列データを生成するデータ生成部と、前記データ生成部が生成した時系列データを蓄積するデータ蓄積部と、前記データ生成部が生成した時系列データまたは前記データ蓄積部が蓄積した時系列データを選択する選択部と、前記選択部が選択した所定数の時系列データを処理して画像データを生成するデータ処理部と、前記データ蓄積部が蓄積した時系列データを前記選択部が選択する間、前記データ生成部に時系列データの生成動作を停止させる制御部と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
開示の技術によれば、超音波画像の画質を低下させることなく、超音波装置の消費電力を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施形態における超音波装置を含む超音波診断システムの一例を示すブロック図である。
図2図1のAMP&ADC部およびデジタル信号処理部の一例を示すブロック図である。
図3図1の超音波装置の動作の一例を示すフロー図である。
図4図1の超音波装置の動作の別の例を示すフロー図である。
図5】第2の実施形態における超音波装置を含む超音波診断システムの一例を示すブロック図である。
図6】他の超音波装置のAMP&ADC部およびデジタル信号処理部の例(比較例)を示すブロック図である。
図7図6の超音波装置200Bの動作の一例を示すフロー図である。
図8図6の超音波装置200Cの動作の一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて実施形態を説明する。以下では、信号等の情報が伝達される信号線には、信号名と同じ符号を使用する。図面に示す1本の信号線は、複数ビットで構成される場合がある。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態における超音波装置200を含む超音波診断システム100の一例を示す。超音波診断システム100は、超音波装置200と端末装置300とを有する。超音波装置200と端末装置300とは、相互に無線通信を行う。例えば、端末装置300は、タブレット端末またはスマートフォン等の可搬性を有する汎用端末、またはパーソナルコンピュータ等の汎用端末である。
【0011】
超音波装置200は、例えば、超音波プローブと一体化されており、超音波プローブの筐体内に収納される。超音波装置200は、トランスデューサ210、パルサ&スイッチ部220、AMP(Amplifier)&ADC(Analog to Digital Converter)部230、デジタル信号処理部240、制御部250、無線通信部260およびバッテリー270を有する。端末装置300は、無線通信部310、CPU(Central Processing Unit)320、メモリ330およびディスプレイ340を有する。
【0012】
超音波装置200は、生体P(被検体)に向けて超音波を発生し、生体Pにより反射される反射波(超音波)を受信し、受信した反射波に基づいて超音波画像データを生成する。超音波装置200は、生成した超音波画像データを無線により端末装置300に送信する。端末装置300は、超音波装置200から受信した超音波画像データを超音波画像としてディスプレイ340に表示する。
【0013】
トランスデューサ210は、生体P(被検体)における超音波画像の測定部位に対向する位置にアレー状に配置された、図示しない複数の振動子が配列された振動子アレーを有する。トランスデューサ210は、パルサ&スイッチ部220が生成したパルス信号に基づいて振動子アレーの振動子のうちの所定数が発生する超音波を生体Pに向けて出力する。この実施形態では、振動子アレーは、N個の振動子を有しており、Nチャネル(Nch)のうちのMチャネル(Mch)の超音波を生体に出力する。
【0014】
生体Pに入り込んだ超音波は、音響インピーダンスが異なる境界において反射される。トランスデューサ210は、生体Pから反射された超音波(反射波)をN個の振動子で受信する。N個の振動子は、受信した超音波を電圧に変換し、Nチャネルの電圧信号としてパルサ&スイッチ部220に出力する。トランスデューサ210とパルサ&スイッチ部220との間は、Nチャネルの信号線で相互に接続される。
【0015】
パルサ&スイッチ部220は、パルサおよびスイッチを有し、制御部250から出力される制御信号CNT1に基づいて動作する。パルサ&スイッチ部220は、トランスデューサ210が超音波を生体Pに送信する場合、パルサが生成するM個のパルス信号を、スイッチを介してトランスデューサ210のM個の振動子に、所定のタイミングで送信する。特に限定されないが、例えば、"N"は128であり、"M"は32である。N"は196または256でもよく、"M"は16または64でもよい。
【0016】
また、パルサ&スイッチ部220は、トランスデューサ210が超音波を生体Pから受信する場合、トランスデューサ210から出力されるNチャネルの電圧信号のうち、Mチャネルの電圧信号を、スイッチを介して選択する。パルサ&スイッチ部220が選択するMチャネルは、パルス信号を出力したMチャネルと同じである。そして、パルサ&スイッチ部220は、選択したMチャネルの電圧信号をAMP&ADC部230に出力する。
【0017】
AMP&ADC部230は、制御部250から出力される制御信号CNT2に基づいて動作する。AMP&ADC部230は、図示しないM個の増幅器(以下、AMPと称する)と、M個のアナログデジタル変換器(以下、ADCと称する)とを有する。各AMPは、パルサ&スイッチ部220から受信するMチャネルの超音波の反射波を示す電圧信号の各々を増幅し、増幅した電圧信号を対応するADCに出力する。AMP&ADC部230がパルサ&スイッチ部220から受信する電圧信号のチャネル数は、受信チャネル数とも称される。
【0018】
各ADCは、対応するAMPにより増幅されたした電圧信号(アナログ信号)をデジタルデータに順次変換し、Mチャネルのデジタルデータをデジタル信号処理部240に出力する。ここで、M個のADCは、反射波に基づいてM個の振動子が生成する電圧の時間変化をそれぞれ示す時系列のデジタルデータを生成する。以下では、時系列のデジタルデータは、時系列データとも称する。
【0019】
デジタル信号処理部240は、制御部250から出力される制御信号CNT3に基づいて動作する。デジタル信号処理部240は、AMP&ADC部230から受信したMチャネルの時系列データに対して各種処理を行って、超音波画像を示す画像データを生成し、生成した画像データを無線通信部260に出力する。例えば、デジタル信号処理部240と無線通信部260とは、SPI(Serial Peripheral Interface)バスで相互に接続される。
【0020】
例えば、デジタル信号処理部240は、パルサ&スイッチ部220からのMチャネルの時系列データを使用して、生体Pからの反射波に対応するMチャネルの電圧信号の各々の遅延量を調整する処理、平均化(整相加算)処理、生体P内での反射波の減衰を加味したゲイン補正処理または輝度情報を取り出すための包絡線処理等を実施する。デジタル信号処理部240の構成および動作の例は、図2以降で説明される。
【0021】
無線通信部260は、例えば、Wi-Fi(登録商標:無線LAN(Local Area Network))等の無線ネットワークを介して、端末装置300の無線通信部310と無線通信を実施する。なお、無線通信部260、310間での無線通信は、Wi-Fiに限定されず、他の無線規格の無線ネットワークを使用して実施されてもよい。無線通信部260は、端末装置300から受信する超音波の照射指示等を、例えば、IC(Inter Integrated Circuit)インタフェースバスを使用して制御部250に出力する。また、無線通信部260は、デジタル信号処理部240から受信した画像データを、端末装置300の無線通信部310に送信する。超音波装置200から端末装置300に送信する超音波画像を示す画像データは、デジタルデータである。
【0022】
制御部250は、超音波装置200の全体を制御する。例えば、制御部250は、超音波装置200の動作を制御するCPU等のプロセッサが実施する制御プログラムにより実現される。この場合、制御部250は、超音波装置200に搭載される図示しないプロセッサに含まれてもよい。
【0023】
なお、制御部250は、FPGA(Field-Programmable Gate Array)またはASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のハードウェアにより実現されてもよい。この場合、FPGAまたはASICは、AMP&ADC部230およびデジタル信号処理部240を含んでもよい。なお、制御部250は、ハードウェアとソフトウェアを協働させることにより実現されてもよい。
【0024】
例えば、制御部250は、無線通信部260を介して端末装置300から受信した測定の開始指示に応じて、パルサ&スイッチ部220を制御して、トランスデューサ210に超音波を出力させる。制御部250は、生体Pからの反射波を超音波画像としてディスプレイ340に表示させるための画像データをデジタル信号処理部240に生成させる。
【0025】
また、制御部250は、無線通信部260を介して端末装置300から受信した測定の停止指示に応じて、パルサ&スイッチ部220およびデジタル信号処理部240等の動作を停止させる。なお、測定の開始指示および測定の停止指示は、超音波装置200に設けられた図示しない操作ボタンまたは操作スイッチ等の操作に基づいて実施されてもよい。
【0026】
バッテリー270は、例えば、超音波装置200に設けられる図示しない充電端子を介して充電可能である。バッテリー270は、超音波装置200内のパルサ&スイッチ部220、AMP&ADC部230、デジタル信号処理部240、制御部250および無線通信部260に電力を供給する。なお、バッテリー270は、無接点で充電されてもよい。また、超音波装置200は、商用電源等の外部電源を使用して動作されてもよく、この場合、超音波装置200は、バッテリー270を持たなくてもよい。
【0027】
端末装置300の無線通信部310は、超音波装置200の無線通信部260から超音波画像データ等を受信する。また、無線通信部310は、超音波の照射指示等を超音波装置200の無線通信部260に送信する。CPU320は、例えば、プログラムを実施することにより端末装置300の全体の動作を制御する。
【0028】
メモリ330は、無線通信部310が受信した画像データ、CPU320が実施する各種プログラム、および各種プログラムで使用するデータ等を保持する。メモリ330は、SRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)またはフラッシュメモリでもよい。なお、メモリ330は、SRAM、DRAMおよびフラッシュメモリの少なくともいずれかと、ストレージ装置とを含んでもよい。
【0029】
ディスプレイ340は、超音波装置200から受信した画像データを超音波画像として表示する。ここで、ディスプレイ340に表示される超音波画像は、超音波装置200による生体Pの走査中に取得される動画と、超音波装置200による生体Pの走査が停止されたときに取得される静止画とがある。端末装置300がタブレット端末等の可搬性を有する端末の場合、ディスプレイ340は、タッチパネルを含んでもよい。なお、超音波装置200と端末装置300とのそれぞれに、無線通信部260、310とは別に有線通信部を設け、有線により画像データ等を送受信してもよい。有線通信部は、無線通信部260、310の代わりにそれぞれ設けられてもよい。
【0030】
図2は、図1のAMP&ADC部230およびデジタル信号処理部240の一例を示す。AMP&ADC部230は、同時に動作するM個のAMP231と、同時に動作するM個のADC232とを有する。デジタル信号処理部240は、データ蓄積部241、選択部242、遅延調整部243、整相加算部244および画像生成部245を有する。
【0031】
上述したように、M個のAMP231は、パルサ&スイッチ部220から受信するMチャネルの超音波の反射波を示す電圧信号をそれぞれ増幅し、増幅した電圧信号を対応するADC232に出力する。M個のADC232は、対応するAMP231から受信するMチャネルの電圧信号を時系列データにそれぞれ変換し、変換により得た時系列データをデジタル信号処理部240に出力する。M個のADC232は、所定数の振動子が生成する電圧の時間変化をそれぞれ示す所定数の時系列データを生成するデータ生成部の一例である。
【0032】
各AMP231および各ADC232は、制御部250からパワーダウンの指示を示す制御信号CNT2を受けている間、動作を停止し、パワーダウン状態に遷移する。例えば、制御部250は、パルサ&スイッチ部220のスイッチがトランスデューサ210からのNチャネルの信号のうちの所定のMチャネルの信号を選択する毎に、各AMP231および各ADC232を一定期間動作させ、その後の一定期間動作を停止させる。
【0033】
データ蓄積部241は、制御部250からの読み書き信号RWに応じて動作する。例えば、読み書き信号RWは、データ蓄積部241のデータの書き込み位置または読み出し位置を示すアドレス情報を含む。データ蓄積部241は、所定時間分の超音波の反射波に対応するMチャネルの時系列データを保持可能なレジスタまたはメモリを有する。
【0034】
データ蓄積部241は、M個のADC232から出力されるMチャネルの時系列データを蓄積(書き込み)する。データ蓄積部241は、蓄積したMチャネルの時系列データのうち、制御部250から指示される時間範囲のデータを読み出して選択部242に出力する。
【0035】
選択部242は、制御部250からの選択信号SELに基づいて動作する。制御部250は、AMP&ADC部230を動作させる期間、ADC232から出力されるMチャネルの時系列データを選択部242に選択させるための選択信号SELを選択部242に出力する。
【0036】
制御部250は、AMP&ADC部230の動作を停止させる期間(パワーダウン期間)、データ蓄積部241から出力されるMチャネルの時系列データを選択部242に選択させるための選択信号SELを選択部242に出力する。この際、制御部250は、データ蓄積部241に蓄積された時系列データのうち、所定の時間範囲の時系列データをデータ蓄積部241に出力させる。選択部242は、選択したMチャネルの時系列データを遅延調整部243に出力する。
【0037】
制御部250は、例えば、デジタル信号処理部240が1ラインの画像データを生成可能な時間に対応する期間にADC232を動作させる。デジタル信号処理部240は、ADC232から出力されるMチャネルの時系列データを使用して、1ラインの画像データを生成する。ここで、1ラインの画像データは、振動子アレーに対向する生体Pの表面の帯状の測定部位の複数箇所のうちの1つにおける生体Pの表面から体内の深さ方向に向く1ラインの超音波画像の生成に使用されるデータである。以下では、測定部位のうち1ラインの超音波画像を生成する箇所は、送信位置とも称される。
【0038】
デジタル信号処理部240は、AMP&ADC部230がパワーダウンしている期間に、データ蓄積部241から読み出されるMチャネルの時系列データを使用して、測定部位の他の少なくとも1箇所における1ラインの画像データを生成する。データ蓄積部241から読み出される時系列データを使用して画像データが生成される期間、AMP&ADC部230の動作は停止される。このため、AMP&ADC部230を常時動作させる場合に比べて、超音波装置200の消費電力を削減することができる。AMP&ADC部230がパワーダウンしている期間に、異なる送信位置の画像データを生成できるため、画質を低下させることなく超音波装置200の消費電力を削減することができる。
【0039】
さらに、超音波装置200の消費電力を削減できるため、バッテリー270の持ち時間を延ばすことができ、バッテリー270で動作する超音波装置200の動作時間を延ばすことができる。また、超音波装置200の消費電力を削減できるため、超音波装置200の発熱量を少なくすることができ、超音波装置200の温度上昇を抑えることができる。この結果、超音波プローブと一体化された超音波装置200において、超音波プローブを握る操作者と、超音波プローブが当てられる被検体(生体P)とが超音波プローブの温度を不快に感じることを抑止することができる。
【0040】
例えば、ADC232からの1つのMチャネルの時系列データを使用して2ラインの画像データを生成する場合、AMP231およびADC232の動作頻度は半分になる。ADC232からの1つのMチャネルの時系列データを使用して4ラインの画像データを生成する場合、AMP231およびADC232の動作頻度は4分の1になる。
【0041】
超音波装置200の動作時の電力のほとんどは、AMP&ADC部230で消費される。したがって、1つのMチャネルの時系列データから2ラインの画像データを生成する場合、超音波装置200の消費電力をほぼ半減することができる。1つのMチャネルの時系列データから4ラインの画像データを生成する場合、超音波装置200の消費電力をほぼ4分の1にすることができる。
【0042】
例えば、制御部250は、データ蓄積部241からの時系列データを使用して、デジタル信号処理部240に3ラインの画像データを生成させる場合、時間範囲が互いに異なる3個のMチャネルの時系列データをデータ蓄積部241に出力させる。そして、デジタル信号処理部240は、測定部位内の隣接する3箇所に対応する1ラインの画像データをそれぞれ生成する。
【0043】
遅延調整部243は、制御部250による制御に基づいて動作する。遅延調整部243は、選択部242から出力されるMチャネルの時系列データから、チャネル毎に所定の遅延量のデータを抽出し、抽出したMチャネルのデータを整相加算部244に出力する。すなわち、遅延調整部243は、Mチャネルの時系列データから所定の遅延量のデータを抽出することで、Mチャネルの超音波の反射波を示すデータの遅延量を調整する。
【0044】
制御部250は、ADC232からのMチャネルの時系列データと、データ蓄積部241からのMチャネルの時系列データとで、異なる遅延調整信号ADJを遅延調整部243に出力する。これにより、遅延調整部243が抽出するチャネル毎のデータの遅延量は、ADC232からのMチャネルの時系列データと、データ蓄積部241からのMチャネルの時系列データとで異なる。さらに、制御部250は、データ蓄積部241から複数回出力されるMチャネルの時系列データを使用する場合、使用する時系列データ毎に、遅延調整部243が抽出するチャネル毎のデータの遅延量を相違させる遅延調整信号ADJを遅延調整部243に出力する。
【0045】
Mチャネルのデータのそれぞれの遅延量は、振動子アレーにおいて超音波を生体Pに向けて発生するM個の振動子の位置と、生体Pの測定部位において1ラインの画像データを生成する位置との関係により決定される。さらに、Mチャネルのデータのそれぞれの遅延量は、生体Pの測定部位(送信位置)の表面から体内に向くライン上において画像データの生成する位置に応じて決定される。
【0046】
整相加算部244は、1つの送信位置に対応して遅延調整部243で遅延量がそれぞれ調整されたMチャネルのデータを順次加算し、送信位置での生体Pの深さ方向の1ライン分のデータ(1ch)を生成する。整相加算部244は、生成した1ライン分のデータを画像生成部245に出力する。
【0047】
画像生成部245は、整相加算部244から受信するデータに基づいて、送信位置での生体Pの深さ方向の1ライン分の画像データを生成し、生成した画像データを図1の無線通信部260に出力する。そして、送信位置に対応する1ライン分の画像データが、端末装置300に送信され、超音波画像としてディスプレイ340に表示される。なお、画像生成部245は、ゲイン補正処理または包絡線処理等の信号処理を実施した後、画像データを生成してもよい。
【0048】
図3は、図1の超音波装置200の動作の一例を示す。例えば、図3に示す動作フローは、制御部250(プロセッサ)が制御プログラムを実施することで実現されてもよい。すなわち、図3は、超音波装置200の制御方法および超音波装置200の制御プログラムの一例を示す。なお、以下の説明において、チャネル(ch)は、振動子アレーに配列される振動子を識別する番号(一端側の振動子から1、2、3、...、128)を示す場合がある。ラインは、生体Pの測定部位のうち1ラインの超音波画像を生成する送信位置を示す。
【0049】
例えば、図3に示す動作フローは、図1の端末装置300から超音波画像の測定の開始指示を受信したことに基づいて開始される。なお、トランスデューサ210のチャネル数N(例えば、128チャネル)と、パルサ&スイッチ部220により選択される振動子の数であるチャネル数M(例えば、32チャネル)は、超音波装置200の設計時に決められる。
【0050】
まず、ステップS100において、制御部250は、カウンタ値Jを"1"に設定する。カウンタ値Jは、送信位置の番号を示し、送信位置に対応して生成される1ライン分の画像データのライン番号を示す。次に、ステップS110において、制御部250は、選択部242にADC232の出力を選択させ、AMP231とADC232とに動作を開始させる。
【0051】
次に、ステップS120において、制御部250は、カウンタ値Jが示すチャネルからチャネルJ+M-1までの超音波の反射波を示すMチャネルの電圧信号をパルサ&スイッチ部220に選択させる。AMP231は、パルサ&スイッチ部220から受信するMチャネルの電圧信号を増幅する。ADC232は、AMP231が増幅した電圧信号を時系列データに変換する。デジタル信号処理部240は、ADC232から出力されるJからJ+M-1までのMチャネル分の時系列データを受信し、データ蓄積部241に蓄積する。
【0052】
次に、ステップS130において、制御部250は、J+(M/2)-1ライン目の画像データを生成するため、選択部242が選択するADC232からの時系列データを使用して、Mチャネル分のデータの遅延量を遅延調整部243に調整させる。遅延調整部243は、ステップS120でADC232から受信した時系列データからデータを抽出することで、データの遅延量を調整する。
【0053】
整相加算部244は、遅延量が調整されたMチャネル分のデータを整相加算してJ+(M/2)-1ライン目の画像データを生成する。なお、生成する画像データのライン番号は、J+(M/2)-1に限定されない。画像データは、無線通信部260を介して端末装置300に送信され、ディスプレイ340に超音波画像として表示される。
【0054】
次に、ステップS140において、制御部250は、AMP231とADC232との動作を停止し、選択部242にデータ蓄積部241の出力を選択させる。
【0055】
次に、ステップS150において、制御部250は、選択部242にデータ蓄積部241の出力を選択させる。制御部250は、遅延調整部243にJ+(M/2)ライン目の画像データを生成するため、選択部242が選択するデータ蓄積部241からの時系列データを使用して、Mチャネルのデータの遅延量を遅延調整部243に調整させる。遅延調整部243は、ステップS120でデータ蓄積部241に蓄積された時系列データからデータを抽出することで、データの遅延量を調整する。
【0056】
整相加算部244は、遅延量が調整されたMチャネル分のデータを整相加算してJ+(M/2)ライン目のデータを生成する。なお、整相加算部244が生成するデータのライン番号は、J+(M/2)に限定されない。画像生成部245は、整相加算部244から受信するデータに基づいて、J+(M/2)ライン目の画像データを生成し、生成した画像データを、無線通信部260を介して端末装置300に送信する。そして、画像データは、超音波画像としてディスプレイ340に表示される。
【0057】
次に、ステップS160において、制御部250は、カウンタ値Jにチャネル数Mを加えた値が、例えば、トランスデューサ210のチャネル数N(振動子数)を超えたか否かを判定する。制御部250は、J+Mがチャネル数Nを超えた場合、測定部位において全ての送信位置の画像データが生成されたため、画像の生成動作を完了する。制御部250は、J+Mがチャネル数N以下の場合、画像データを生成していない送信位置があるため、処理をステップS170に移行する。
【0058】
ステップS170において、制御部250は、カウンタ値Jを"2"増加した後、ステップS110の処理に戻る。そして、J+Mがチャネル数Nを超えるまで、次の2ラインの画像データの生成が順次実施され、測定部位の超音波画像がディスプレイ340に表示される。
【0059】
制御部250は、データ蓄積部241に蓄積された時系列データを使用して画像データを生成した後、カウンタ値Jを"2"増加させる。また、スイッチが選択する振動子の範囲を2個分ずらす。これにより、次の処理ループにおいて、画像データを生成した送信位置の次の送信位置の画像データを順次生成することができる。この結果、ラインが途切れることのない超音波画像をディスプレイ340に表示することができる。
【0060】
この実施形態では、デジタル信号処理部240は、J+(M/2)ライン目の画像データを生成する場合、データ蓄積部241に蓄積された時系列データを使用する。これにより、制御部250は、J+(M/2)ライン目の画像データの生成時にAMP231およびADC232の動作を停止することができる。
【0061】
したがって、画像データの生成動作期間のほぼ半分の期間、AMP231およびADC232の動作を停止することができる。この結果、AMP231およびADC232を常時動作させる場合に比べて、超音波装置200の消費電力をほぼ半減することができる。換言すれば、超音波画像の画質を低下させることなく、超音波装置の消費電力を削減することができる。
【0062】
図4は、図1の超音波装置200の動作の別の例を示す。図3と同様の動作については、図3と同じステップ番号を付し、詳細な説明は省略する。図4に示す動作フローにおいても、制御部250(プロセッサ)が制御プログラムを実施することで実現されてもよい。すなわち、図4は、超音波装置200の制御方法および超音波装置200の制御プログラムの一例を示す。
【0063】
図4では、超音波装置200は、ADC232による1回の変換で生成されるMチャネルの時系列データを使用して、任意のライン数Lの画像データを生成可能である。このために、図4では、図3のステップS100、S110の間にステップS102が挿入される。また、図3のステップS130の代わりにステップS132が実施され、図3のステップS150の代わりにステップS152、S154、S156が実施される。さらに、図4では、図3のステップS170の代わりにステップS172が実施される。
【0064】
ステップS102において、制御部250は、カウンタ値Kを"1"に設定し、ライン数Lを設定する。例えば、ライン数Lは、ADC232から出力される1回の時系列データを使用して生成されるの画像データのライン数である。カウンタ値Kは、L個のラインうち、何番目のラインの画像データを生成するかを示す。
【0065】
ステップS110、S120の動作は、図3と同じである。ステップS132は、J+(M-L)/2ライン目の画像データが生成されることを除き、図3のステップS130の処理と同様である。ステップS152は、J+(M-L)/2+Kライン目の画像データが生成されることを除き、図3のステップS150の処理と同様である。
【0066】
ステップS152の後、ステップS154において、制御部250は、カウンタ値Kを"1"増加させる。次に、ステップS156において、制御部250は、カウンタ値Kがライン数Lを超えたか否かを判定する。制御部250は、カウンタ値Kがライン数Lを超えた場合、ADC232から出力される1回の時系列データを使用した全てのラインの画像データが生成されたと判定し、ステップS160の動作を実施する。制御部250は、カウンタ値Kがライン数L以下の場合、ADC232から出力される1回の時系列データを使用して画像データが生成されていないラインがあると判定し、処理をステップS152に戻す。
【0067】
そして、ステップS160において、制御部250は、カウンタ値Jにチャネル数Mを加えた値が、例えば、トランスデューサ210のチャネル数N(振動子数)を超えたか否かを判定する。制御部250は、J+Mがチャネル数N以下の場合、画像データを生成していない送信位置があるため、処理をステップS172に移行する。
【0068】
ステップS172において、制御部250は、カウンタ値Jにライン数Lを加えて新たなカウンタ値Jを設定し、ステップS110の処理に戻る。そして、J+Mがチャネル数Nを超えるまで、次のL個のラインの画像データの生成が順次実施され、測定部位の超音波画像がディスプレイ340に表示される。
【0069】
制御部250は、データ蓄積部241に蓄積された時系列データを使用してN-1個のラインの画像データを生成した後、カウンタ値Jを"L"増加させる。また、スイッチが選択する振動子の範囲をL個分ずらす。これにより、次の処理ループにおいて、画像データを生成した送信位置の次の送信位置の画像データを順次生成することができる。この結果、ラインが途切れることのない超音波画像をディスプレイ340に表示することができる。
【0070】
図4では、超音波装置200は、ADC232から出力される1回の時系列データを使用してL個のラインの画像データを生成することができる。このため、超音波画像の生成動作中のほぼ(L-1)/Lの期間、AMP231およびADC232の動作を停止することができる。この結果、AMP231およびADC232を常時動作させる場合に比べて、超音波装置200の消費電力をほぼL分の1に削減することができる。なお、ライン数Lが"2"に設定される場合の動作は、図3と同様である。
【0071】
以上、この実施形態では、AMP&ADC部230がパワーダウンしている期間に、異なる送信位置の複数の画像データを生成できるため、画質を低下させることなく超音波装置200の消費電力を削減することができる。AMP&ADC部230がパワーダウンしている期間に、異なる送信位置の複数の画像データを生成することで、画質を低下させることなく超音波装置200の消費電力をさらに削減することができる。
【0072】
超音波装置200と端末装置300とを無線で接続することで、超音波装置200の機能を超音波プローブに搭載し、超音波プローブと一体化することができる。超音波プローブと一体化された超音波装置200をバッテリーで駆動する場合にも、超音波装置200の消費電力を削減できるため、バッテリー270の持ち時間を延ばすことができ、バッテリー270で動作する超音波装置200の動作時間を延ばすことができる。
【0073】
また、超音波装置200の消費電力を削減できるため、超音波装置200の発熱量を少なくすることができ、超音波装置200の温度上昇を抑えることができる。超音波装置200の温度上昇は、バッテリー電源の使用または外部電源の使用にかかわらず抑えることができる。この結果、超音波プローブと一体化された超音波装置200において、超音波プローブを握る操作者と、超音波プローブが当てられる被検体(生体P)とが超音波プローブの温度を不快に感じることを抑止することができる。
【0074】
例えば、データ蓄積部241に蓄積された時系列データを使用してN-1個のラインの画像データを生成した後、カウンタ値Jを"L"増加させる。また、スイッチが選択する振動子の範囲をN個分ずらす。これにより、次の処理ループにおいて、画像データを生成した送信位置の次の送信位置の画像データを順次生成することができる。この結果、ラインが途切れることのない超音波画像をディスプレイ340に表示することができる。
【0075】
なお、図4の動作フローにおいて、超音波装置200は、バッテリー270の残容量に応じて、データ蓄積部241に蓄積された時系列データを使用して生成するライン数を変更してもよい。例えば、超音波装置200は、バッテリー270の残容量が少なくなるほど、図4のライン数Lを増やしてもよい。これにより、バッテリー270の持ち時間をさらに延ばすことができる。
【0076】
(第2の実施形態)
図5は、第2の実施形態における超音波装置200Aを含む超音波診断システム100Aの一例を示す。図1と同様の要素については、同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。この実施形態では、超音波診断システム100Aは、超音波装置200Aのみを含む。すなわち、超音波装置200Aは、図1の端末装置300の機能を含む。
【0077】
超音波装置200Aは、トランスデューサ210、パルサ&スイッチ部220、AMP&ADC部230、デジタル信号処理部240、制御部250、CPU280、メモリ282およびディスプレイ284を有する。CPU280、メモリ282およびディスプレイ284は、図1の端末装置300のCPU320、メモリ330およびディスプレイ340とそれぞれ同様である。例えば、超音波装置200Aは、商用電源を使用して動作するため、バッテリーが搭載されない。なお、ディスプレイ284は、超音波装置200Aの外部に接続されてもよい。
【0078】
例えば、超音波装置200Aのプローブは、図5に示す要素のうちトランスデューサ210のみを含む。このため、トランスデューサ210が内蔵されるプローブとパルサ&スイッチ部220との間は、Nチャネルの信号線を含むケーブルで接続される。AMP&ADC部230およびデジタル信号処理部240の構成および機能は、図2のAMP&ADC部230およびデジタル信号処理部240の構成および機能と同様である。
【0079】
この実施形態では、CPU280は、ICインタフェースバスを介して制御部250に接続される。このため、CPU280は、無線通信部を介することなく、超音波画像の測定の開始指示および停止指示を制御部250に出力する。また、CPU280は、SPIバスを介してデジタル信号処理部240に接続される。このため、CPU280は、無線通信部を介することなく、デジタル信号処理部240から画像データを受信する。超音波装置200Aの動作は、図3および図4と同様である。
【0080】
以上、この実施形態においても、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。例えば、AMP&ADC部230がパワーダウンしている期間に、異なる送信位置の画像データを生成できるため、画質を低下させることなく超音波装置200Aの消費電力を削減することができる。また、AMP&ADC部230がパワーダウンしている期間に、異なる送信位置の複数の画像データを生成することで、画質を低下させることなく超音波装置200Aの消費電力をさらに削減することができる。
【0081】
図6は、他の超音波装置200B、200CのAMP&ADC部およびデジタル信号処理部の例(比較例)を示す。図2と同様の要素については、詳細な説明は省略する。超音波装置200B、200CのAMP&ADC部は、常時動作することを除き、図2のAMP&ADC部230と同様の機能を有する。
【0082】
超音波装置200Bのデジタル信号処理部は、遅延調整部、整相加算部および画像生成部を有し、図2のデータ蓄積部241および選択部242は有していない。遅延調整部は、図2の遅延調整部243と同様に、ADCから出力されるMチャネルの時系列データから、チャネル毎に所定の遅延量のデータを抽出し、抽出したMチャネルのデータを整相加算部に出力する。
【0083】
整相加算部は、図2の整相加算部244と同様に、遅延調整部で遅延量がそれぞれ調整されたMチャネルのデータを加算し、送信位置での1ライン分のデータ(1ch)を生成し、生成した1ライン分のデータを画像生成部に出力する。画像生成部は、図2の画像生成部245と同様に、整相加算部から受信するデータに基づいて、送信位置での1ライン分の画像データを生成する。そして、画像データが超音波画像として図示しないディスプレイに表示される。
【0084】
超音波装置200Cのデジタル信号処理部は、2組の遅延調整部、整相加算部および画像生成部を有する。遅延調整部は並列に動作し、ADCから出力されるMチャネルの時系列データから、チャネル毎に所定の遅延量のデータをそれぞれ抽出する。2つの遅延調整部が抽出するデータは、異なる送信位置の画像データを生成するためのデータであり、互いに相違する。整相加算部は並列に動作し、対応する遅延調整部からの遅延量が調整されたデータをそれぞれ加算処理し、1ライン分の画像データをそれぞれ生成する。そして、超音波装置200Cは、ADCからMチャネルの時系列データを受信する毎に、2ライン分の画像データを生成する。
【0085】
ADCから出力されるMチャネルの時系列データに基づいて、複数ラインの画像データを並列に生成する手法は、パラレル受信方式として知られている。パラレル受信方式では、複数組の遅延調整部と整相加算部とを搭載することで、1ライン分の時間で2ライン分の画像データを生成することが可能であり、フレームレートを高くすることができる。しかし、並列動作させる分、消費電力は大きくなるため、バッテリーにより動作する超音波装置に適用する場合、動作時間が短くなる。
【0086】
図7は、図6の超音波装置200Bの動作の一例を示す。図3と同様の動作については、詳細な説明は省略する。まず、ステップS200において、超音波装置200Bは、カウンタ値Jを"1"に設定する。次に、ステップS220において、超音波装置200Bのデジタル信号処理部は、AMP&ADC部のADCから出力されるチャネルJからチャネルJ+M-1までのMチャネル分の時系列データを受信する。ステップS220の動作は、時系列データが蓄積されないことを除き、図3のステップS120の動作と同様である。
【0087】
次に、ステップS230において、超音波装置200Bのデジタル信号処理部は、図3のステップS130と同様に、ADC232からの時系列データを使用して、Mチャネル分のデータの遅延量を遅延調整部243に調整させる。そして、超音波装置200Bのデジタル信号処理部は、整相加算部によりMチャネルの遅延量が調整されたデータを整相加算して、J+(M/2)-1ライン目の画像データを生成する。
【0088】
次に、ステップS260において、超音波装置200Bは、図3のステップS160と同様に、値J+Mがトランスデューサのチャネル数N(振動子数)を超えた場合、画像データの生成を完了し、値J+Mがチャネル数N以下の場合、ステップS270に移行する。ステップS270において、超音波装置200Bは、カウンタ値Jを"1"増加した後、ステップS220の処理に戻る。
【0089】
図8は、図6の超音波装置200Cの動作の一例を示す。図7と同様の動作については、図7と同じステップ番号を付し、詳細な説明は省略する。図8は、図7のステップS230の代わりにステップS232が実施され、図7のステップS270の代わりにステップS272が実施されることを除き、図7の動作と同様である。
【0090】
ステップS232において、超音波装置200Cの2つの遅延調整部は、J+(M/2)-1ライン目とJ+(M/2)ライン目に対応して、データの遅延量をそれぞれ調整する。超音波装置200Cの2つの整相加算部は、対応する遅延調整部から出力される遅延量が調整されたMチャネルのデータをそれぞれ整相加算する。超音波装置200Cの2つの画像生成部は、対応する整相加算部から出力されるデータに基づいて、J+(M/2)-1ライン目とJ+(M/2)ライン目の画像データを生成する。
【0091】
以上、各実施形態に基づき本発明の説明を行ってきたが、上記実施形態に示した要件に本発明が限定されるものではない。これらの点に関しては、本発明の主旨をそこなわない範囲で変更することができ、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0092】
100 超音波診断システム
200、200A、200B、200C 超音波装置
210 トランスデューサ
220 パルサ&スイッチ部
230 AMP&ADC部
231 AMP
232 ADC
240 デジタル信号処理部
241 データ蓄積部
242 選択部
243 遅延調整部
244 整相加算部
245 画像生成部
250 制御部
260 無線通信部
270 バッテリー
280 CPU
282 メモリ
284 ディスプレイ
300 端末装置
310 無線通信部
320 CPU
330 メモリ
340 ディスプレイ
ADJ 遅延調整信号
CNT1、CNT2、CNT3 制御信号
P 生体
SEL 選択信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8