(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】情報処理プログラム、情報処理方法および情報処理装置
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20240618BHJP
【FI】
G06Q50/10
(21)【出願番号】P 2022563546
(86)(22)【出願日】2020-11-20
(86)【国際出願番号】 JP2020043491
(87)【国際公開番号】W WO2022107337
(87)【国際公開日】2022-05-27
【審査請求日】2023-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 出
(72)【発明者】
【氏名】西間木 哲
(72)【発明者】
【氏名】福井 誠之
(72)【発明者】
【氏名】中川 格
【審査官】渡邉 加寿磨
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-21134(JP,A)
【文献】国際公開第2018/124297(WO,A1)
【文献】特開2019-73394(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0118068(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0385120(US,A1)
【文献】特開2019-79253(JP,A)
【文献】業務業界を超えたデータ流通の信頼性を向上,富士通フォーラム2019,2019年05月
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
B65G 61/00
G06F 21/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレーサビリティシステムへの登録対象となる証跡データを受け付け、
受け付けた前記証跡データに対応する識別子を、前記トレーサビリティシステムの組織間で共有
する第1の分散台帳に登録し、
受け付けた前記証跡データに含まれる特定のデータに関する情報を、前記識別子とともに前記トレーサビリティシステムの特定の組織間で共有
する第2の分散台帳に登録する、
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする情報処理プログラム。
【請求項2】
前記第2の
分散台帳に登録する処理は、前記特定のデータを前記第2の
分散台帳とは別の
データ管理部に登録し、前記
データ管理部に登録した前記特定のデータへのアクセス先を示す情報を前記識別子とともに前記第2の
分散台帳に登録する、
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理プログラム。
【請求項3】
前記第2の
分散台帳に登録する処理は、前記特定のデータの要約情報を、前記識別子とともに前記第2の
分散台帳に登録する、
ことを特徴とする請求項2に記載の情報処理プログラム。
【請求項4】
前記特定のデータは、前記特定の組織間の取引に関する取引データである、
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理プログラム。
【請求項5】
検索対象とする検索対象情報を受け付け、
受け付けた前記検索対象情報に基づいて前記第2の
分散台帳に登録されたデータを検索し、前記検索対象情報に該当するデータに関する識別子を取得し、
取得した前記識別子を出力する、
処理をさらにコンピュータに実行させることを特徴とする請求項1に記載の情報処理プログラム。
【請求項6】
トレーサビリティシステムへの登録対象となる証跡データを受け付け、
受け付けた前記証跡データに対応する識別子を、前記トレーサビリティシステムの組織間で共有
する第1の分散台帳に登録し、
受け付けた前記証跡データに含まれる特定のデータに関する情報を、前記識別子とともに前記トレーサビリティシステムの特定の組織間で共有
する第2の分散台帳に登録する、
処理をコンピュータが実行することを特徴とする情報処理方法。
【請求項7】
トレーサビリティシステムへの登録対象となる証跡データを受け付け、
受け付けた前記証跡データに対応する識別子を、前記トレーサビリティシステムの組織間で共有
する第1の分散台帳に登録し、
受け付けた前記証跡データに含まれる特定のデータに関する情報を、前記識別子とともに前記トレーサビリティシステムの特定の組織間で共有
する第2の分散台帳に登録する、
処理を実行する制御部を含むことを特徴とする情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、情報処理プログラム、情報処理方法および情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、製造サプライチェーン、医薬品・食品などの流通分野では、製品がどのように製造加工されたのかをブロックチェーンなどの分散台帳を活用してオープンに検証できるトレーサビリティシステムが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の従来技術では、ブロックチェーンへの登録によって会社間の取引データなどの秘匿したい一部のデータも公開対象となってしまうという問題がある。
【0005】
例えば、会社間の取引データをブロックチェーンに登録すると、会社間でどのような取引が行われたのかといったデータもブロックチェーンのデータ同期で共有される。したがって、取引のあった会社間以外の他社に取引の内容が漏洩する場合がある。
【0006】
1つの側面では、トレーサビリティシステムにおける秘匿性の向上を支援できる情報処理プログラム、情報処理方法および情報処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの案では、情報処理プログラムは、受け付ける処理と、第1のデータ管理部に登録する処理と、第2のデータ管理部に登録する処理とをコンピュータに実行させる。受け付ける処理は、トレーサビリティシステムへの登録対象となる証跡データを受け付ける。第1のデータ管理部に登録する処理は、受け付けた証跡データに対応する識別子を、トレーサビリティシステムの組織間で共有して管理する第1のデータ管理部に登録する。第2のデータ管理部に登録する処理は、受け付けた証跡データに含まれる特定のデータに関する情報を、識別子とともにトレーサビリティシステムの特定の組織間で共有して管理する第2のデータ管理部に登録する。
【発明の効果】
【0008】
トレーサビリティシステムにおける秘匿性の向上を支援できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態にかかるトレーサビリティシステムの概要を説明する説明図である。
【
図2】
図2は、サーバ装置の機能構成例を示すブロック図である。
【
図3A】
図3Aは、実施形態にかかるトレーサビリティシステムに登録する証跡データの概要を説明する説明図である。
【
図3B】
図3Bは、実施形態にかかるトレーサビリティシステムに登録する証跡データの概要を説明する説明図である。
【
図4】
図4は、サーバ装置の動作例を示すフローチャートである。
【
図5A】
図5Aは、実施形態にかかるトレーサビリティシステムの動作の概要を説明する説明図である。
【
図5B】
図5Bは、実施形態にかかるトレーサビリティシステムの動作の概要を説明する説明図である。
【
図6】
図6は、サーバ装置の動作例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、実施形態にかかるトレーサビリティシステムの動作の概要を説明する説明図である。
【
図8】
図8は、コンピュータ構成の一例を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、実施形態にかかる情報処理プログラム、情報処理方法および情報処理装置を説明する。実施形態において同一の機能を有する構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。なお、以下の実施形態で説明する情報処理プログラム、情報処理方法および情報処理装置は、一例を示すに過ぎず、実施形態を限定するものではない。また、以下の各実施形態は、矛盾しない範囲内で適宜組みあわせてもよい。
【0011】
図1は、実施形態にかかるトレーサビリティシステムの概要を説明する説明図である。
図1に示すように、トレーサビリティシステム1では、製造サプライチェーン、医薬品・食品などに関連する生産者、加工業者、流通業者などの各組織(組織A、B、C…)がインターネットなどのネットワーク2を介して双方向に通信可能に接続されている。
【0012】
トレーサビリティシステム1では、各組織(組織A、B、C…)が生産物(製造物)に関する取引内容、加工内容などの履歴情報をエビデンス(証跡)データとして登録する。この証跡データには、今回の履歴情報を識別するための識別番号などの識別子とともに、前の履歴情報を示す識別番号などの識別子が含まれる。これにより、トレーサビリティシステム1は、生産物(製造物)に関する取引内容、加工内容などの履歴についての追跡可能性(トレーサビリティ)を確保している。
【0013】
トレーサビリティシステム1の各組織(組織A、B、C…)においては、各種情報を管理する情報処理装置の一例であるサーバ装置10A、10B、10C…と、ユーザが利用するPC(Personal Computer)等の端末装置20A、20B、20C…とを有する。なお、組織ごとのサーバ装置10A、10B、10C…および端末装置20A、20B、20C…については、特に区別しない場合はサーバ装置10および端末装置20と呼ぶものとする。
【0014】
図2は、サーバ装置10の機能構成例を示すブロック図である。
図2に示すように、サーバ装置10は、通信部11と、制御部12と、共有データ管理部13と、個社データ管理部14と、取引データ管理部15と、コンテンツデータ管理部16と、転送処理部17とを有する。
【0015】
通信部11は、制御部12の制御のもと、通信ケーブルなどを介し、他の機器(例えば端末装置20や他の組織のサーバ装置10など)と通信を行う処理部である。
【0016】
例えば、通信部11は、生産物(製造物)に関する取引内容、加工内容などの証跡データとして登録する登録データを端末装置20より受信する。この登録データ(証跡データ)には、取引内容、加工内容などの履歴情報と、取引や加工の実体(例えばテキスト、動画など)を示すコンテンツデータとが含まれる。
【0017】
また、通信部11は、他の組織のサーバ装置10に対するリクエストの送信や、送信したリクエストに対する回答の受信などを行う。また、通信部11は、他の組織のサーバ装置10との間で、共有データ管理部13における組織間のデータ同期に関する通信を行う。
【0018】
制御部12は、サーバ装置10における各種動作を制御する処理部である。制御部12は、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)などによって実現できる。また、制御部12は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)などのハードワイヤードロジックによっても実現できる。
【0019】
例えば、制御部12は、トレーサビリティシステム1への登録対象となる証跡データを通信部11を介して端末装置20より受け付けると、受け付けた証跡データを登録する登録処理を行う。また、制御部12は、取得対象の証跡データに関する識別子を通信部11を介して端末装置20より受け付けると、受け付けた識別子に対応する証跡データを取得して端末装置20へ出力する処理を行う。
【0020】
共有データ管理部13は、登録対象の証跡データについて、トレーサビリティシステム1の組織間(組織A、B、C…)で共有する共有データD13を管理する処理部である。具体的には、共有データ管理部13は、通信部11を介した参加組織間(組織A、B、C…)のサーバ装置10とのデータ同期により、ブロックチェーンなどの分散型台帳技術による分散台帳を介して共有データD13を参加組織間(組織A、B、C…)で共有する。ブロックチェーンなどの分散型台帳技術については、例えばオープンソースのブロックチェーン基盤の一つであるHyperledger Fabricなどを適用できる。
【0021】
個社データ管理部14は、登録対象の証跡データについて、組織間(組織A、B、C…)で共有せずに、組織(個社)内の個社データD14を管理する処理部である。個社データ管理部14としては、例えば、MongoDBやCouchDBなどの公知のデータベースを適用できる。
【0022】
取引データ管理部15は、登録対象の証跡データについて、トレーサビリティシステム1の参加組織(組織A、B、C…)の中の特定の組織間(例えば組織Aおよび組織B)で共有する取引データD15を管理する処理部である。具体的には、取引データ管理部15は、予め設定された特定の組織間(例えば組織A、B)のサーバ装置10との通信部11を介したデータ同期により、取引データD15を特定の組織間で共有する。なお、取引データD15の共有手法については、共有データ管理部13と同様に、ブロックチェーンなどの分散型台帳技術による分散台帳を介するものであってもよい。
【0023】
コンテンツデータ管理部16は、登録対象の証跡データについて、個社データ管理部14と同様に組織間(組織A、B、C…)で共有せずに、組織(個社)内のコンテンツデータD16を管理する処理部である。コンテンツデータ管理部16としては、例えば、各種メディアデータ、テキストデータを格納・取得可能な公知のWebサーバ(WebDAVなど)を適用できる。
【0024】
図3A、
図3Bは、実施形態にかかるトレーサビリティシステム1に登録する証跡データの概要を説明する説明図である。具体的には、
図3Aは、登録対象の証跡データ(履歴情報およびコンテンツ)について、共有データD13、個社データD14およびコンテンツデータD16に分けて登録する場合を例示する図である。また、
図3Bは、登録対象の証跡データ(履歴情報およびコンテンツ)について、共有データD13、取引データD15およびコンテンツデータD16に分けて登録する場合を例示する図である。
【0025】
図3Aに示すように、サーバ装置10は、登録対象の証跡データについて、組織間で共有する共有データD13を共有データ管理部13に登録し、組織内で管理する個社データD14を個社データ管理部14に登録し、コンテンツに関するコンテンツデータD16をコンテンツデータ管理部16に登録する。また、
図3Bに示すように、サーバ装置10は、登録対象の証跡データの中の特定のデータ(本実施形態では取引データD15)について、組織間で共有する共有データD13を共有データ管理部13に登録し、特定の組織間で共有する取引データD15を取引データ管理部15に登録し、コンテンツに関するコンテンツデータD16をコンテンツデータ管理部16に登録する。
【0026】
ここで、共有データD13は、証跡データに対応するID(識別子)と、個社データD14として登録する内容の要約情報であるハッシュ(個社データD14のハッシュ値)と、前の履歴のIDとを有する。
【0027】
この共有データD13を参照することで、トレーサビリティシステム1では、共有データD13に含まれるIDおよび前の履歴のIDをもとに、生産物(製造物)に関する取引内容、加工内容などの履歴についての追跡が可能となる。また、トレーサビリティシステム1では、共有データD13に含まれるハッシュと、個社データD14より求めたハッシュとを比較することで、データ改ざんの有無を検証することができる。
【0028】
個社データD14は、共有データD13に登録したものと同一のID(識別子)と、履歴情報(端末装置20からの登録情報)と、コンテンツデータD16へのアクセス情報と、コンテンツデータD16の要約情報であるハッシュ(コンテンツデータD16のハッシュ値)とを有する。なお、コンテンツデータD16へのアクセス情報については、例えば、コンテンツデータ管理部16におけるコンテンツデータD16の格納先を示す情報(格納先のURLなど)である。
【0029】
この個社データD14を参照することで、トレーサビリティシステム1では、証跡データとして登録した履歴情報を得ることができる。また、トレーサビリティシステム1では、証跡データとして登録したコンテンツデータD16へのアクセスを行うことができる。また、トレーサビリティシステム1では、個社データD14に含まれるハッシュと、コンテンツデータD16より求めたハッシュとを比較することで、データ改ざんの有無を検証することができる。
【0030】
取引データD15は、共有データD13に登録したものと同一のID(識別子)と、履歴情報(端末装置20からの登録情報)と、コンテンツデータD16へのアクセス情報(URL)と、コンテンツデータD16の要約情報であるハッシュ(コンテンツデータD16のハッシュ値)とを有する。
【0031】
この取引データD15を参照することで、トレーサビリティシステム1では、証跡データにおける特定のデータ(例えば特定の組織間の取引内容など)の履歴情報を得ることができる。また、トレーサビリティシステム1では、特定のデータの実体として登録したコンテンツデータD16へのアクセスを行うことができる。また、トレーサビリティシステム1では、取引データD15に含まれるハッシュと、コンテンツデータD16より求めたハッシュとを比較することで、データ改ざんの有無を検証することができる。
【0032】
コンテンツデータD16は、取引内容、加工内容などに関連した動画、テキストなどのコンテンツ(端末装置20からの登録情報)を示すデータである。
【0033】
転送処理部17は、制御部12の制御のもと、各種データの転送に関する処理を行う処理部である。
【0034】
例えば、転送処理部17は、端末装置20より識別子を指定したデータのアクセス要求を受け付けた場合、識別子をもとにデータの管理元の組織を特定する。具体的には、転送処理部17は、識別子が組織名+識別番号などの構成である場合、識別子に含まれる組織名よりデータの管理元の組織を特定する。また、転送処理部17は、識別子に組織名などが含まれない場合、参加組織(組織A、B、C…)それぞれのサーバ装置10に対して識別子を送信し、識別子に対応する情報の管理元であるか否か問い合わせることで組織を特定する。ついで、転送処理部17は、特定した管理元の組織のサーバ装置10に対してアクセス要求を転送し、アクセス要求に応じた回答を端末装置20へ転送する。
【0035】
また、転送処理部17は、他の組織のサーバ装置10より、個社データ管理部14、取引データ管理部15またはコンテンツデータ管理部16において組織内で管理するデータへのアクセス要求を受け付けた場合、要求のあったデータを個社データ管理部14、取引データ管理部15またはコンテンツデータ管理部16より読み出し、通信部11を介して要求元へ転送する。このとき、転送処理部17は、予め設定されたアクセスコントロールリスト(ACL)を参照して組織ごとに設定されたアクセス権の有無を検証し、この検証結果に応じて要求元へのデータ転送を行ってもよい。例えば、要求元の組織についてデータへのアクセス権がある場合、転送処理部17は、要求元へのデータ転送を行う。アクセス権がない場合、転送処理部17は、要求元へエラーを返す。
【0036】
次に、登録対象の証跡データの登録に関するサーバ装置10の動作の詳細を説明する。
図4は、サーバ装置の動作例を示すフローチャートである。
【0037】
図4に示すように、処理が開始されると、通信部11は、登録対象の証跡データに関する履歴情報およびコンテンツデータD16を端末装置20より受信する(S10)。通信部11は、受信したデータを制御部12へ渡す。
【0038】
ついで、制御部12は、コンテンツデータ管理部16に格納する際の、コンテンツデータD16のアドレス情報(URL)を設定し(S11)、コンテンツデータD16のハッシュ値を計算する(S12)。
【0039】
ついで、制御部12は、コンテンツデータD16をコンテンツデータ管理部16に登録し(S13)、登録対象の証跡データに関する識別子としての履歴IDを生成する(S14)。
【0040】
ついで、制御部12は、履歴ID、履歴情報、コンテンツデータD16のアドレス情報・ハッシュ値を個社データ管理部14、取引データ管理部15に登録する(S15)。具体的には、制御部12は、予め設定された科目表などを参照して履歴情報の種別を判別する。ついで、制御部12は、履歴情報の種別が組織内で管理するもの(例えば、特定の組織間で共有しない科目(製造工程など)の情報)である場合、個社データD14として個社データ管理部14へ登録する。また、制御部12は、履歴情報の種別が特定の組織間で共有するもの(例えば、特定の組織間で共有する科目(特定の組織間の取引内容)の情報)である場合、取引データD15として取引データ管理部15へ登録する。
【0041】
ついで、制御部12は、取引データD15(個社データ管理部14への登録を行った場合は個社データD14)のハッシュ値を計算する(S16)。ついで、制御部12は、履歴情報の一部をキーとして個社データ管理部14、取引データ管理部15を検索し、登録対象の証跡データにおける取引内容、加工内容に対して前段となる取引内容、加工内容に該当する履歴情報を求める。これにより、制御部12は、前段の履歴情報の履歴IDを取得する(S17)。
【0042】
ついで、制御部12は、履歴ID、前段の履歴ID、取引データD15(個社データ管理部14への登録を行った場合は個社データD14)のハッシュ値を含む共有データD13を生成する(S18)。ついで、制御部12は、生成した共有データD13を共有データ管理部13に登録し(S19)、処理を終了する。
【0043】
図5A、
図5Bは、実施形態にかかるトレーサビリティシステムの動作の概要を説明する説明図である。
図5Aの例では、S10において、組織Aの端末装置20Aよりサーバ装置10Aに対し、証跡データ(個社データ管理部14に個社データD14として登録する科目の情報)の登録があったものとする。組織Aのサーバ装置10Aは、受け付けた証跡データを登録する登録処理を行う(S11~S19)。
【0044】
これにより、共有データ管理部13には、履歴ID、前段の履歴ID、個社データD14のハッシュ値を含む共有データD13が登録される。また、個社データ管理部14には、履歴ID、コンテンツデータD16のアドレス情報、履歴情報およびコンテンツデータD16のハッシュ値を含む個社データD14が登録される。また、コンテンツデータ管理部16には、コンテンツデータD16が登録される。
【0045】
サーバ装置10Aの共有データ管理部13は、参加組織間(組織A、B、C…)のサーバ装置10とのデータ同期により、分散台帳を介して参加組織間で共有データD13を共有する(S20)。これにより、例えば、サーバ装置10Aの共有データ管理部13における共有データD13と、サーバ装置10Bの共有データ管理部13における共有データD13とは同一のデータとなる。
【0046】
図5Bの例では、S10において、組織Aの端末装置20Aよりサーバ装置10Aに対し、証跡データ(取引データ管理部15に取引データD15として登録する科目の情報)の登録があったものとする。組織Aのサーバ装置10Aは、受け付けた証跡データを登録する登録処理を行う(S11~S19)。
【0047】
これにより、共有データ管理部13には、履歴ID、前段の履歴ID、取引データD15のハッシュ値を含む共有データD13が登録される。また、取引データ管理部15には、履歴ID、コンテンツデータD16のアドレス情報、履歴情報およびコンテンツデータD16のハッシュ値を含む取引データD15が登録される。また、コンテンツデータ管理部16には、コンテンツデータD16が登録される。
【0048】
サーバ装置10Aの共有データ管理部13は、参加組織間(組織A、B、C…)のサーバ装置10とのデータ同期により、分散台帳を介して参加組織間で共有データD13を共有する(S20)。また、サーバ装置10Aの取引データ管理部15は、特定の組織間(図示例では組織A、B)のサーバ装置10とのデータ同期により、分散台帳を介して特定の組織間で取引データD15を共有する(S21)。これにより、例えば、サーバ装置10Aの取引データ管理部15における取引データD15と、サーバ装置10Bの取引データ管理部15における取引データD15とは同一のデータとなる。
【0049】
次に、トレーサビリティシステム1に登録されたデータを端末装置20より取得する際のサーバ装置10の動作の一例を説明する。
図6は、サーバ装置10の動作例を示すフローチャートである。具体的には、
図6は、検索対象とする検索対象情報(検索キー)を端末装置20より受け付け、検索キーに該当する証跡データ(本実施形態では証跡データの識別子)を端末装置20に出力する場合のサーバ装置10の動作例を示すフローチャートである。
【0050】
図6に示すように、処理が開始されると、制御部12は、通信部11を介して端末装置20より検索キーを取得する(S30)。この検索キーは、取引内容、加工内容を特定するための情報あればよく、例えば、識別子、取引(加工)日時、取引(加工)数、取引先などの様々な条件を組み合わせたものであってもよい。
【0051】
ついで、制御部12は、検索キーで取引データ管理部15、個社データ管理部14を検索し(S31)、検索キーに該当する取引データD15、個社データD14を特定する。ついで、制御部12は、特定した取引データD15、個社データD14に対応するID(識別子)を取得し(S32)、取得した識別子を通信部11を介して端末装置20へ出力する(S33)。
【0052】
図7は、実施形態にかかるトレーサビリティシステムの動作の概要を説明する説明図である。
図7の例では、S30において、組織Bの端末装置20Bよりサーバ装置10Bに対し、検索キーによる検索依頼があったものとする。
【0053】
この検索依頼をもとに、サーバ装置10Bは、例えば検索キーに該当する取引データD15を取引データ管理部15より取得して端末装置20Bに出力する。これにより、ユーザは、検索キーに該当する証跡データ(取引データD15)を特定することができる。
【0054】
なお、端末装置20Bは、サーバ装置10Bより取得した取引データD15について、サーバ装置10Bより同一IDの共有データD13を取得し、共有データD13のハッシュ値と、取引データD15から計算したハッシュ値とを比較することで、データの整合性を検証してもよい。同様に、端末装置20Bは、サーバ装置10Bより取得した取引データD15に含まれるハッシュ値と、取引データD15のアドレス情報より取得したコンテンツデータD16のハッシュ値とを比較することで、データの整合性を検証してもよい。
【0055】
以上のように、サーバ装置10は、トレーサビリティシステム1への登録対象となる証跡データを受け付ける。サーバ装置10は、受け付けた証跡データに対応する識別子を、トレーサビリティシステム1の組織間で共有して管理する共有データ管理部13に登録する。サーバ装置10は、受け付けた証跡データに含まれる特定のデータに関する情報を、識別子とともにトレーサビリティシステム1の特定の組織間で共有して管理する取引データ管理部15に登録する。
【0056】
これにより、トレーサビリティシステム1では、登録対象となる証跡データに含まれる特定のデータに関する情報が識別子とともに特定の組織間で共有して管理する取引データ管理部15に登録されるので、特定のデータに関する情報が特定の組織以外で共有されることを抑止できる。このように、トレーサビリティシステム1では、特定の組織以外の他の組織に特定のデータに関する情報が漏洩することを抑止でき、秘匿性の向上を実現できる。
【0057】
また、サーバ装置10は、受け付けた証跡データに含まれる特定のデータをコンテンツデータ管理部16に登録し、コンテンツデータ管理部16に登録した特定のデータへのアクセス先を示す情報を証跡データに対応する識別子とともに取引データ管理部15に登録する。これにより、トレーサビリティシステム1では、取引データ管理部15に登録されたアクセス先を示す情報をもとに、コンテンツデータ管理部16に登録された特定のデータへのアクセスを行うことができる。
【0058】
また、サーバ装置10は、コンテンツデータ管理部16に登録された特定のデータの要約情報を、証跡データに対応する識別子とともに取引データ管理部15に登録する。これにより、トレーサビリティシステム1では、取引データ管理部15に登録された要約情報をもとに、コンテンツデータ管理部16に登録された特定のデータの検証を行うことができる。
【0059】
また、サーバ装置10の取引データ管理部15は、トレーサビリティシステム1の特定の組織間の分散台帳を介して特定の組織間でデータを共有する。これにより、トレーサビリティシステム1では、分散台帳を介して特定の組織間で特定のデータに関する情報を識別子とともに共有することができる。
【0060】
また、受け付けた証跡データに含まれる特定のデータは、特定の組織間の取引に関する取引データである。これにより、トレーサビリティシステム1では、特定の組織間の取引に関する取引データを、特定の組織以外の他の組織に対して秘匿することができる。
【0061】
また、サーバ装置10は、検索対象とする検索対象情報を受け付ける。ついで、サーバ装置10は、受け付けた検索対象情報に基づいて取引データ管理部15に登録されたデータを検索し、検索対象情報に該当するデータに関する識別子を取得する。ついで、サーバ装置10は、取得した識別子を出力する。これにより、トレーサビリティシステム1では、検索対象とする検索対象情報をもとに、検索対象情報に対応する証跡データの識別子を得ることができる。
【0062】
なお、図示した各装置の各構成要素は、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。
【0063】
また、サーバ装置10の通信部11、制御部12、共有データ管理部13、個社データ管理部14、取引データ管理部15、コンテンツデータ管理部16および転送処理部17の各種処理機能は、CPU(またはMPU、MCU(Micro Controller Unit)等のマイクロ・コンピュータ)上で、その全部または任意の一部を実行するようにしてもよい。また、各種処理機能は、CPU(またはMPU、MCU等のマイクロ・コンピュータ)で解析実行されるプログラム上、またはワイヤードロジックによるハードウエア上で、その全部または任意の一部を実行するようにしてもよいことは言うまでもない。また、サーバ装置10で行われる各種処理機能は、クラウドコンピューティングにより、複数のコンピュータが協働して実行してもよい。
【0064】
ところで、上記の実施形態で説明した各種の処理は、予め用意されたプログラムをコンピュータで実行することで実現できる。そこで、以下では、上記の実施形態と同様の機能を有するプログラムを実行するコンピュータ構成(ハードウエア)の一例を説明する。
図8は、コンピュータ構成の一例を説明する説明図である。
【0065】
図8に示すように、コンピュータ200は、各種演算処理を実行するCPU201と、データ入力を受け付ける入力装置202と、モニタ203と、スピーカ204とを有する。また、コンピュータ200は、記憶媒体からプログラム等を読み取る媒体読取装置205と、各種装置と接続するためのインタフェース装置206と、有線または無線により外部機器と通信接続するための通信装置207とを有する。また、コンピュータ200は、各種情報を一時記憶するRAM208と、ハードディスク装置209とを有する。また、コンピュータ200内の各部(201~209)は、バス210に接続される。
【0066】
ハードディスク装置209には、上記の実施形態で説明した機能構成(例えば通信部11、制御部12、共有データ管理部13、個社データ管理部14、取引データ管理部15、コンテンツデータ管理部16および転送処理部17)における各種の処理を実行するためのプログラム211が記憶される。また、ハードディスク装置209には、プログラム211が参照する各種データ212が記憶される。入力装置202は、例えば、操作者から操作情報の入力を受け付ける。モニタ203は、例えば、操作者が操作する各種画面を表示する。インタフェース装置206は、例えば印刷装置等が接続される。通信装置207は、LAN(Local Area Network)等の通信ネットワークと接続され、通信ネットワークを介した外部機器との間で各種情報をやりとりする。
【0067】
CPU201は、ハードディスク装置209に記憶されたプログラム211を読み出して、RAM208に展開して実行することで、上記の機能構成(例えば通信部11、制御部12、共有データ管理部13、個社データ管理部14、取引データ管理部15、コンテンツデータ管理部16および転送処理部17)に関する各種の処理を行う。なお、プログラム211は、ハードディスク装置209に記憶されていなくてもよい。例えば、コンピュータ200が読み取り可能な記憶媒体に記憶されたプログラム211を読み出して実行するようにしてもよい。コンピュータ200が読み取り可能な記憶媒体は、例えば、CD-ROMやDVDディスク、USB(Universal Serial Bus)メモリ等の可搬型記録媒体、フラッシュメモリ等の半導体メモリ、ハードディスクドライブ等が対応する。また、公衆回線、インターネット、LAN等に接続された装置にこのプログラム211を記憶させておき、コンピュータ200がこれらからプログラム211を読み出して実行するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0068】
1…トレーサビリティシステム
2…ネットワーク
10、10A~10C…サーバ装置
11…通信部
12…制御部
13…共有データ管理部
14…個社データ管理部
15…取引データ管理部
16…コンテンツデータ管理部
17…転送処理部
20、20A~20C…端末装置
200…コンピュータ
201…CPU
202…入力装置
203…モニタ
204…スピーカ
205…媒体読取装置
206…インタフェース装置
207…通信装置
208…RAM
209…ハードディスク装置
210…バス
211…プログラム
212…各種データ
A~C…組織
D13…共有データ
D14…個社データ
D15…取引データ
D16…コンテンツデータ