(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01S 13/90 20060101AFI20240618BHJP
G06Q 50/10 20120101ALI20240618BHJP
【FI】
G01S13/90 127
G06Q50/10
(21)【出願番号】P 2022572917
(86)(22)【出願日】2021-10-18
(86)【国際出願番号】 JP2021038426
(87)【国際公開番号】W WO2022145111
(87)【国際公開日】2022-07-07
【審査請求日】2023-06-12
(31)【優先権主張番号】P 2020218133
(32)【優先日】2020-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】橋爪 大輔
(72)【発明者】
【氏名】石井 孝和
(72)【発明者】
【氏名】平田 寛道
(72)【発明者】
【氏名】大野 翔平
(72)【発明者】
【氏名】粂野 博行
(72)【発明者】
【氏名】牧山 紘
(72)【発明者】
【氏名】清水 太朗
【審査官】▲高▼場 正光
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-020740(JP,A)
【文献】特開2001-083243(JP,A)
【文献】特開2017-215248(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0025423(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第111504251(CN,A)
【文献】長谷川 隆,“広域社会インフラ設備 保守業務の最適化技術”,稼ぐビッグデータ・IoT技術 徹底解説[ISBN: 978-4-8222-7642-3],初版3刷,Pages 193-196
【文献】浅原裕 他,“緊急地震速報を用いた道路安全即時評価プロトタイプシステムの製作”,土木学会論文集A1[ISSN: 2185-4653],2012年07月26日,Volume 68,Number 4,Pages I_1068-I_1073,<URL: https://doi.org/10.2208/jscejseee.68.I_1068>
【文献】穴原琢摩 外7名,“衛星観測による干渉SAR解析を用いた港湾施設の変状の計測”,土木学会論文集B2(海岸工学) [online],2016年11月15日,Volume 72, Number 2,Pages I_1633-I_1638,<URL: https://doi.org/10.2208/kaigan.72.I_1633 >
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00 - G01S 7/42
G01S 13/00 - G01S 13/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地表面の高さの変位を示す変位情報から、前記地表面に設置された複数の設備の各々の
傾きを含む変位を示す設備変位情報を抽出する抽出手段と、
前記設備変位情報を用いて、前記複数の設備に対する点検作業の優先度を算出する算出手段と、を備える、
情報処理装置。
【請求項2】
前記算出手段は、前記設備の重要度、前記設備の築年数、前記設備の耐用年数、前記設備の位置情報、及び前記設備の点検履歴の少なくともいずれかを含む設備情報をさらに用いて、前記優先度を算出する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記算出手段は、災害が発生した地点と、前記設備の各々の位置と、の距離の情報をさらに用いて、前記優先度を算出する、
請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記複数の設備のうち少なくとも一の設備であって、少なくとも一の他の設備に対する前記優先度より高い前記優先度が算出された
前記設備と、前記点検作業を行う作業員の出発地点となる場所と、を結ぶルートを算出するルート算出手段をさらに備えた、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記ルート算出手段は、算出された前記ルート上に、前記変位情報の示す値が一定の基準を満たす箇所が存在する場合、当該箇所を含まないルートを算出する、
請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
複数の時点の観測データに基づいて前記変位情報を生成する生成手段を備え、
前記観測データは、合成開口レーダによって上空から前記地表面が観測された結果に基づくデータである、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記生成手段は、一の観測装置によって生成された前記観測データと、他の観測装置によって生成された前記観測データと、に基づいて、前記変位情報を生成する、
請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記設備変位情報に基づいて、異常が発生したと判定された設備が存在する場合、当該設備に異常が発生したことを示すアラームを通知する通知手段をさらに備えた、
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項9】
地表面の高さの変位を示す変位情報から、前記地表面に設置された複数の設備の各々の
傾きを含む変位を示す設備変位情報を抽出し、
前記設備変位情報を用いて、前記複数の設備に対する点検作業の優先度を算出する、
情報処理方法。
【請求項10】
地表面の高さの変位を示す変位情報から、前記地表面に設置された複数の設備の各々の
傾きを含む変位を示す設備変位情報を抽出する処理と、
前記設備変位情報を用いて、前記複数の設備に対する点検作業の優先度を算出する処理と、をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、設備の点検作業についての技術に関する。
【背景技術】
【0002】
配電設備、通信設備、及び水道設備等の各種設備に対して、設備を管理する事業者は、定期的または災害時に、点検作業を行う。このような点検作業に関連する技術の例が、例えば特許文献1に開示される。特許文献1には、配電設備に災害等による事故が発生した場合に、巡視点検用車両に配電設備の運転状況を通知することや、事故現場へのナビゲーションを行うことが開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のような設備が複数設置されている場合がある。この場合、事業者は、複数の設備のそれぞれに対して点検作業を行う。例えば、配電設備の事業者であれば、複数の送電鉄塔や変電所等の設備のそれぞれに対して点検作業を行う。
【0005】
事業者は、複数の設備を効率的に点検するために、設備の状況等に応じて、優先的に点検作業を行う設備を決定する場合がある。しかしながら、例えば、設備の状況を把握するまでに時間がかかったり、設備の状況から優先的に点検作業を行う設備を決定するまでの判断に時間がかかったりすると、点検作業の初動対応に遅れが生じる。特に設備が広域に設置されている場合には、より時間を要する場合がある。さらに災害時には、このような初動対応の遅れが、設備の異常への対処に影響を及ぼす虞がある。
【0006】
特許文献1には、複数の設備から優先的に点検作業を行う設備を決定することに関する技術は開示されていない。
【0007】
本開示は、上記課題を鑑みてなされたものであり、設備の点検作業を支援することが可能な情報処理装置等を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様にかかる情報処理装置は、地表面の高さの変位を示す変位情報から、前記地表面に設置された複数の設備の各々の変位を示す設備変位情報を抽出する抽出手段と、前記設備変位情報を用いて、前記複数の設備に対する点検作業の優先度を算出する算出手段と、を備える。
【0009】
本開示の一態様にかかる情報処理方法は、地表面の高さの変位を示す変位情報から、前記地表面に設置された複数の設備の各々の変位を示す設備変位情報を抽出し、前記設備変位情報を用いて、前記複数の設備に対する点検作業の優先度を算出する。
【0010】
本開示の一態様にかかるコンピュータ読み取り可能な記憶媒体は、地表面の高さの変位を示す変位情報から、前記地表面に設置された複数の設備の各々の変位を示す設備変位情報を抽出する処理と、前記設備変位情報を用いて、前記複数の設備に対する点検作業の優先度を算出する処理と、をコンピュータに実行させるプログラムを格納する。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、設備の点検作業を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の第1の実施形態の情報処理装置を含む支援システムの構成の一例を模式的に示す図である。
【
図2】本開示の第1の実施形態の情報処理装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】本開示の第1の実施形態の情報処理装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図4】本開示の第2の実施形態の支援システムの機能構成の一例を含むブロック図である。
【
図5】本開示の第2の実施形態の優先度の算出に関するイメージを示す図である。
【
図6】本開示の第2の実施形態の出力される画像の一例を示す図である。
【
図7】本開示の第2の実施形態の情報処理装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図8】本開示の第2の実施形態の変形例1の情報処理装置が変位情報を生成する動作の一例を示すフローチャートである。
【
図9】本開示の第2の実施形態の変形例1の情報処理装置が出力要求を受け付けた場合の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図10】本開示の第3の実施形態の支援システムの機能構成の一例を含むブロック図である。
【
図11】本開示の第3の実施形態の情報処理装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図12】本開示の第4の実施形態の支援システムの機能構成の一例を含むブロック図である。
【
図13】本開示の第4の実施形態の情報処理装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図14】本開示の第1、第2、第3及び第4の実施形態の情報処理装置を実現するコンピュータ装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0014】
<第1の実施形態>
第1の実施形態の情報処理装置について説明する。
【0015】
図1は、第1の実施形態の情報処理装置100を含む支援システム1000の構成の一例を模式的に示す図である。
図1に示すように、支援システム1000は、情報処理装置100と、観測装置200と、記憶装置300と、を含む。支援システム1000は、端末装置400をさらに含むように構成されてもよいし、情報処理装置100と記憶装置300とを備え、観測装置200及び端末装置400と通信するよう構成されてもよい。情報処理装置100は、例えば、観測装置200と記憶装置300と端末装置400と、ネットワークを介して通信可能に接続される。記憶装置300は、情報処理装置100に搭載されてもよい。記憶装置300には、後述する観測データが格納される。なお、記憶装置300には、設備の位置情報等の設備に関する情報である設備情報が格納されていてもよい。
【0016】
観測装置200は、例えば、人工衛星である。この場合、観測装置200は、上空の軌道上を移動しながら地表面を随時観測している。観測装置200はこの例に限らない。例えば、観測装置200は、有人または無人の航空機であってもよい。有人の航空機は、例えば、飛行機、ヘリコプター、及び飛行船等である。無人の航空機は、UAV(Unmanned Aerial Vehicle)、小型無人機またはドローンと呼ばれることもある。有人の航空機と無人の航空機とを区別しない場合、単に航空機と称する。観測装置200が航空機である場合、観測装置200は、例えば、事業者の指示に応じて飛行し、飛行している間に地表面の観測を行う。なお、本明細書において、「地表面」は、土地の表面上に存在する物体を含む。土地の表面上に存在する物体は、例えば、道路、森林、設備、及びその他の建造物等である。
【0017】
観測装置200は、例えば、観測装置200に搭載されるレーダを用いて、上空から地表面を観測する。具体的には、観測装置200は、上空から地表面に電磁波を照射し、地表面からレーダの方向に反射された電磁波を取得する。観測装置200は、このような電磁波の照射と取得とを行って得られた情報を用いることで、地表面に関するデータを取得することができる。地表面に関するデータとは、例えば、地表面の形状を示すデータ、地表面の物体の大きさを示すデータ、または地表面とレーダとの距離を示すデータ等である。このように用いられるレーダは、合成開口レーダ(Synthetic Aperture Radar;SAR)と呼ばれる。なお、地表面の観測方法は、この例に限らない。例えば、観測装置200は、センサからレーザー光を照射し、照射したレーザー光の反射波を取得することによって得られた情報を用いて、地表面に関するデータを取得してもよい。このように用いられるセンサはLiDAR(Light Detection And Ranging)と呼ばれる。本明細書において、観測装置200が人工衛星であり、観測装置200には合成開口レーダが搭載されている例を主に説明するが、上述のように、観測装置200はこの例に限らない。また、本明細書において、観測装置200が、センサまたはレーダを用いて、地表面に関するデータを取得することを「観測する」と称する。
【0018】
観測装置200は、随時、地表面を観測する。そして、観測装置200は、地表面の所定の範囲の観測を行うごとに、地表面を観測した結果に基づくデータである観測データを生成する。観測装置200は、例えば、観測データを記憶装置300に格納する。なお、観測装置200は、観測データを情報処理装置100または図示しない他の装置を介して記憶装置300に格納してもよい。また、観測データは、観測装置200が観測した結果を示すデータであってもよいし、観測装置200が観測した結果に所定の処理が施された結果を示すデータであってもよい。ここで、観測装置200によって観測された地表面の範囲を観測範囲とも称する。観測データは、例えば、観測範囲内の位置を示す位置データと、観測範囲の地表面に関するデータと、の組み合わせを含むデータであってもよい。例えば、観測データは、位置データと、地表面の基準となる地点から観測点までの高さを示すデータ、または、観測装置200から観測点までの距離を示すデータとの組み合わせであってもよい。観測範囲内の位置とは、緯度及び経度の情報であってもよいし、地表面の位置を特定可能な他の情報であってもよい。また、観測範囲内の位置には、標高を示す情報が含まれてもよい。観測データには、さらに、観測が行われた時点を示すデータが含まれてもよい。時点を示すデータは、観測が行われた日付の情報であってもよいし、観測が行われた日付及び時刻の情報であってもよい。観測データは、位置データと地表面に関するデータとを、マップで表した画像であってもよい。
【0019】
上述のように、観測装置200は、上空から地表面を観測することにより広範囲の観測データを生成することができる。さらに、観測装置200は、合成開口レーダを用いることにより、天候が悪い場合であっても、地表面を観測した観測データを生成することができる。
【0020】
端末装置400は、例えば、パーソナルコンピュータであってもよいし、スマートフォンまたはタブレット型端末等の携帯型の端末であってもよい。端末装置400は、情報処理装置100によって生成された情報を出力してもよい。例えば、端末装置400は、後述する優先度を含む情報を、端末装置400が備えるディスプレイに出力してもよい。
【0021】
[情報処理装置100の詳細]
次に、
図2を用いて情報処理装置100の構成の詳細を説明する。
図2は、第1の実施形態の情報処理装置100の機能構成の一例を示すブロック図である。
図2に示すように、情報処理装置100は、抽出部110と算出部120とを備える。
【0022】
抽出部110は、地表面の高さの変位を示す変位情報から、複数の設備の各々の変位を示す設備変位情報を抽出する。例えば、抽出部110は、変位情報を取得する。ここで、変位情報は、例えば、複数の時点で観測された観測データの差分に基づいて生成される。変位情報の生成に用いられる観測データのそれぞれは、例えば、同じ観測範囲で観測された観測データである。さらに、設備変位情報の抽出のためには、設備を含む観測範囲が観測された観測データが用いられる。設備とは、例えば事業者が管理する建造物である。事業者が配電設備に関わる事業者である場合、設備は、例えば送電鉄塔及び変電所等である。事業者が通信設備に関わる事業者である場合、設備は、例えば、基地局や交換局等である。設備は、この例に限らず、種々の建造物であってよい。抽出部110は、例えば、設備の各々の位置での変位を示す変位情報を、設備ごとの変位情報である設備変位情報として抽出する。なお、変位情報は、情報処理装置100によって生成されてもよいし、図示しない他の装置によって生成されてもよい。
【0023】
このように、抽出部110は、地表面の高さの変位を示す変位情報から、地表面に設置された複数の設備の各々の変位を示す設備変位情報を抽出する。抽出部110は、抽出手段の一例である。
【0024】
算出部120は、複数の設備に対する点検作業の優先度を算出する。例えば、算出部120は、設備変位情報に応じて、設備ごとに点検作業の優先度を算出する。優先度は、点検作業を行う必要性を示す指標である。すなわち、「優先度が高い」とは、「点検作業を行う必要性が高い」ことを示す。例えば、設備の変位の値は、所定の時間あたりの設備の傾きの大きさに関する指標の一つとして考えることができる。設備が傾いている場合、設備に変形や破損が発生していたり、設備が設置された箇所の地盤の隆起または沈下が発生していたりする虞がある。すなわち、設備が傾いている場合、設備または設備周辺に異変が生じている可能性があるため、傾いている設備は、傾いていない設備に比べ、点検作業を行う必要性が高いと考えられる。
【0025】
優先度は、例えば数値として算出される。算出部120は、設備変位情報で示される変位が所定の閾値以上である設備の優先度を高くし、設備変位情報で示される変位が所定の閾値未満である設備の優先度を低くしてもよい。また、算出部120は、閾値を複数設け、設備変位情報が超過した閾値に応じて優先度を算出してもよい。また、算出部120は、複数の設備のそれぞれの設備変位情報を比較して、設備変位情報で示される変位の値が相対的に大きいものから、優先度を高くするように、優先度を算出してもよい。優先度は、例えば、1から10の10段階の数値に設定されてよく、優先度が1に近いほど優先度が高く、優先度が10に近いほど優先度が低いと設定されてもよい。また、算出部120は、例えば、設備変位情報で示される変位の絶対値を優先度とし、優先度の値の大きさが大きいほど優先度が高いと設定してもよい。また、算出部120は、複数の設備のそれぞれに対して、異なる優先度を算出してもよいし、複数の設備のうちの一部であって、2以上の設備に対して、同じ優先度を算出してもよい。優先度の表現方法、及び優先度の算出方法は、この例に限らない。
【0026】
このように、算出部120は、設備変位情報を用いて、複数の設備に対する点検作業の優先度を算出する。算出部120は、算出手段の一例である。
【0027】
[情報処理装置100の動作]
次に、情報処理装置100の動作の一例を、
図3を用いて説明する。なお、本開示において、シーケンス図及びフローチャートの各ステップを「S101」のように、各ステップに付した番号を用いて表現する。
【0028】
図3は、情報処理装置100の動作の一例を説明するフローチャートである。抽出部110は、地表面の高さの変位を示す変位情報から、複数の設備の各々の変位を示す設備変位情報を抽出する(S101)。そして、算出部120は、設備変位情報を用いて、複数の設備に対する点検の優先度を算出する(S102)。
【0029】
なお、情報処理装置100は、S102の処理の後、算出した優先度を、設備に関するデータと対応づけて端末装置400に出力してもよい。
【0030】
このように、第1の実施形態の情報処理装置100は、地表面の高さの変位を示す変位情報から、地表面に設置された複数の設備の各々の変位を示す設備変位情報を抽出する。そして、情報処理装置100は、設備変位情報を用いて、複数の設備に対する点検作業の優先度を算出する。例えば、設備の変位を、設備の傾きの大きさとする。すると、情報処理装置100は、例えば、複数の設備のうち、設備の傾きが大きい設備、すなわち、点検作業を行う必要性の高い設備を提示することができる。そのため、情報処理装置100は、事業者の、優先的に点検作業を行う設備を決定する時間を短縮することができる。すなわち、第1の実施形態の情報処理装置100は、設備の点検作業を支援することができる。
【0031】
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態の情報処理装置について説明する。第2の実施形態では、第1の実施形態で説明した情報処理装置等について、より詳細に説明する。
図4は、第2の実施形態の支援システム1001の構成の一例を含むブロック図である。
図4に示すように、支援システム1001は、第1の実施形態における情報処理装置100に代わり情報処理装置101を備え、それ以外については、第1の実施形態で説明した支援システム1000と同様である。すなわち、支援システム1001は、情報処理装置101と、観測装置200と、記憶装置300とを備える。なお、第2の実施形態において、第1の実施形態で説明した内容と重複する内容については、一部説明を省略する。
【0032】
[記憶装置300の詳細]
記憶装置300は、観測データ記憶部310と地理空間情報記憶部320とを備える。観測データ記憶部310には、観測装置200によって生成された観測データが格納される。観測データは、例えば、観測装置200から送信される。
【0033】
地理空間情報記憶部320には、地理空間情報が格納される。地理空間情報は、地表面の位置を示す位置データと、当該位置の地形に関するデータ、当該位置に存在する物体に関するデータ、当該位置において発生した事象に関するデータ、及び当該位置を示す画像データ等とが関連付けられた情報である。地形に関するデータには、例えば、地形図及び地質を示す情報等が含まれる。物体に関するデータには、例えば、建築物の高さおよび大きさに関する情報等が含まれる。事象に関するデータには、例えば、過去に発生した災害及び事故に関する情報や、ハザードマップ等が含まれる。位置を示す画像データには、例えば、空中写真及び衛星画像等が含まれる。また、地理空間情報には、計測や調査によって得られたデータ、及び当該データに基づく分析の結果を表す情報が含まれてもよい。また、地理空間情報には、計測や調査によって得られたデータに基づいて人為的に定められた情報が含まれてもよい。また、地理空間情報には、災害情報、交通情報、及び天気の情報等の、インターネット上に公開されている情報が含まれてもよい。地理空間情報は、例えば、地理情報システム(Geographic Information System:GIS)と呼ばれるシステムにおいて用いられる。GISは、例えば、地図に、地図上の位置に対応する上述の各種データを重畳して出力する。地理空間情報は、GISデータと呼ばれることもある。
【0034】
本実施形態において、地理空間情報には、設備情報が含まれる。設備情報は、例えば、設備名、設備の位置、設備の重要度、設備の築年数、及び設備の耐用年数を示す情報である。設備の重要度とは、例えば、設備を管理する事業者によって定められる値である。例えば、設備が送電鉄塔である場合、送電元に近くなるにつれて送電鉄塔の重要度が高く設定される。なお、設備情報は、この例に限らない。例えば、設備情報には、設備に対して行われた点検の日時及び点検内容を含む点検履歴の情報が含まれてもよい。地理空間情報においては、例えば、地表面の位置と、当該位置に設置された設備の設備情報とが関連付けられている。
【0035】
また、地理空間情報には、設備または設備周辺に設置される各種のセンサによって測定及び検知された情報が含まれてもよい。例えば、地理空間情報には、設備に発生した錆等の腐食の進行度合いを測定するセンサの測定結果が含まれてもよい。また、地理空間情報には、設備における漏油、漏水及び漏電を検知するセンサの検知結果が含まれてもよい。また、地理空間情報には、設備内部及び周辺が撮影された撮影画像が含まれてもよい。このように、各種のセンサによって測定及び検知された情報が、随時、地理空間情報記憶部320に格納されてもよい。この場合、各種のセンサが、記憶装置300とネットワークを介して通信可能に接続される。
【0036】
[情報処理装置101の詳細]
図4に示すように、情報処理装置101は、抽出部111と、算出部121と、生成部130と、受付部140と、出力制御部150と、を備える。なお、抽出部111及び算出部121のそれぞれは、抽出部110及び算出部120のそれぞれの動作に加え、以下に説明する動作を行う。
【0037】
抽出部111は、変位情報から、設備変位情報を抽出する。具体的には、抽出部111は、変位情報から、設備の位置に対応する変位の値を、設備変位情報として抽出する。抽出する対象となる設備は、予め設定されていてもよいし、後述する受付部140によって受け付けられた、端末装置400からの要求に応じて設定されてもよい。また、変位情報は、後述する生成部130によって生成される。
【0038】
算出部121は、設備変位情報と地理空間情報とを用いて、複数の設備に対する点検作業の優先度を算出する。例えば、算出部121は、設備変位情報及び設備情報のそれぞれに対応するスコアを、設備ごとに算出する。そして、算出部121は、算出されたスコアの合計値を、設備の優先度として算出する。例えば、設備変位情報から算出されるスコアは、設備変位情報が、第1の閾値を超えている場合には1、第2の閾値を超えた場合には2、といったように、所定の閾値を超えた場合に、所定の閾値に対応する値が定められてもよい。また、設備変位情報から算出されるスコアは、設備変位情報が示す変位の値そのものであってもよい。例えば、設備情報に含まれる設備の重要度から算出されるスコアは、重要度として設定された値そのものであってもよい。また、例えば、設備の築年数から算出されるスコアは、築年数が所定の閾値を超えた場合に、所定の閾値に対応する値であってもよいし、築年数そのものの値であってもよい。なお、算出されるスコアの例はこの例に限らない。例えば、設備の築年数と設備の耐用年数との差に応じて算出されるスコアがあってもよい。また、例えば、地震の発生地点や川の氾濫地点等の、災害が発生した地点と、設備の位置と、の距離に応じて算出されるスコアがあってもよい。また、例えば、設備の腐食の進行度合いに関する測定結果や、設備における漏油、漏水及び漏電に関する検知結果の情報に応じて算出されるスコアがあってもよい。なお、設備情報に限らず、地理空間情報記憶部320に含まれる各種のデータに応じて算出されるスコアがあってもよい。
【0039】
図5は、優先度の算出に関するイメージを示す図である。算出部121は、各設備に対して、「設備変位情報」や、「設備の重要度」といった項目ごとにスコアを算出する。そして、算出部121は、設備ごとに、算出されたスコアの合計値を優先度として算出する。
図5の例であれば、「設備A」の優先度は、「20」、「設備B」の優先度は「10」、「設備C」の優先度は「5」となっている。この場合、「設備A」が最も点検作業の優先度が高く、「設備C」が最も優先度が低い。なお、優先度を算出する方法は上述の例に限らない。例えば、算出されるスコアに、項目ごとの重み付けを行ってもよい。
【0040】
生成部130は、観測データに基づいて変位情報を生成する。具体的には、生成部130は、観測データ記憶部310から観測データを読み出す。このとき生成部130は、同じ範囲が観測された観測データであって、複数の時点において観測された観測データを読み出す。観測データが、合成開口レーダによって得られた画像である場合、生成部130は、例えば、複数の観測データの、同じ位置に対応する画素を比較することにより変位情報を生成してもよい。また、生成部130は、複数の観測データを用いて、干渉SARと呼ばれる技術を用いて変位情報を生成してもよい。なお、生成される変位情報の範囲は、観測範囲すべてであってもよいし、観測範囲内の予め設定された範囲であってもよい。また、生成部130は、生成した変位情報を、地理空間情報として、地理空間情報記憶部320に格納する。このように、生成部130は、複数の時点の観測データに基づいて変位情報を生成する。生成部130は、生成手段の一例である。
【0041】
なお、生成部130は、観測データが生成されるごとに(すなわち、観測データ記憶部310に観測データが格納されるごとに)変位情報を生成してもよいし、端末装置400からの所定の要求に応じて変位情報を算出してもよい。例えば、所定範囲において災害が発生した場合に、災害の発生前後の所定範囲における変位情報の出力要求が、後述する受付部140によって受け付けられたとする。このような場合、生成部130は、災害前後において所定範囲が観測された観測データを用いて変位情報を算出してもよい。ここで、上述のような要求があったときに、観測装置200が、災害後の所定範囲の観測を行っていない場合がある。このような場合に、生成部130は、観測装置200と異なる観測装置によって観測された観測データを用いて変位情報を生成してもよい。例えば、観測装置200が、衛星コンステレーションの衛星のうちの一つであるとする。このとき、生成部130は、衛星コンステレーションの衛星のうちの他の衛星によって観測された災害後の所定範囲の観測データと、観測装置200によって観測された災害前の所定範囲の観測データとを用いて変位情報を生成してもよい。当該他の衛星は、観測のリアルタイム性を上げるために、観測装置200よりも回帰周期の短い衛星であってもよい。また、生成部130は、観測装置200によって観測された災害前の所定範囲の観測データと、観測装置200と異なる航空機によって観測された災害後の所定範囲の観測データと、を用いて変位情報を生成してもよい。すなわち、生成部130は、一の観測装置によって生成された観測データと、他の観測装置によって生成された観測データと、に基づいて、変位情報を生成してもよい。これにより、情報処理装置101は、上述のような要求があった場合に迅速に変位情報を生成することができるので、優先度の算出も迅速に行うことができる。
【0042】
受付部140は、端末装置400から要求を受け付ける。要求は、例えば、端末装置400にユーザが所定の入力を行うことにより通知される。受付部140は、例えば、端末装置400から、優先度の出力要求を受け付ける。優先度の出力要求には、例えば、優先度を算出する設備を指定する情報が含まれる。この他に、受付部140は、端末装置400から地理空間情報の出力要求を受け付ける。地理空間情報の出力要求には、例えば、出力する情報の種類や出力する範囲(地図上の位置)等の情報が含まれる。
【0043】
出力制御部150は、端末装置400に各種の情報を出力する。例えば、受付部140が、端末装置400から優先度の出力要求を受け付けた場合、出力制御部150は、算出部121によって算出された優先度を端末装置400に出力する。このとき、出力制御部150は、優先度を示す情報を、例えば、端末装置400が有するディスプレイ等の表示装置に表示させるよう制御する。また、受付部140が、端末装置400から地理空間情報の出力要求を受け付けた場合、出力制御部150は、例えば、出力要求において指定された地表面の位置と、当該位置に対応する情報であって、出力要求において指定された情報と、を端末装置400に出力する。
【0044】
出力制御部150は、出力要求において指定された情報を、文字情報で出力してもよいし、表形式で出力してもよい。また、出力制御部150は、地図に、指定された情報を重畳した画像を端末装置400に出力してもよい。
図6は、出力制御部150によって出力される画像の一例を示す図である。
図6では、地図上の設備がある位置に、設備を示すアイコンを重畳している。
図6では、さらに、地図上に、変位情報と設備に対応する優先度の情報とが重畳されている。
図6の例では、変位情報は、地図上を、変位の値に応じて異なるパターンでハッチングすることにより表現されている。出力制御部150は、さらに、優先度が所定の値以上の設備を強調するために、優先度が所定の値以上の設備のアイコンを点滅させたり、着色したりしてもよい。また、出力制御部150は、ユーザによって設備が選択されたときに、端末装置400に、選択された設備の詳細情報(例えば、設備情報、変位情報、及び優先度等)が表示されるように出力制御してもよい。この場合、例えば、ユーザが端末装置400を通じて、設備のアイコンをクリックする等によって設備を選択し、受付部140は、ユーザによって設備が選択されたことを受け付ける。そして、受付部140が、設備が選択されたことを受け付けると、出力制御部150は、選択された設備の詳細情報を端末装置400に出力する。
【0045】
[情報処理装置101の動作]
次に、情報処理装置101の動作を説明する。
図7は、情報処理装置101の動作の一例を示すフローチャートである。なお、本動作例においては、観測装置200によって随時地表面の観測が行われ、観測データが観測データ記憶部310に格納されているものとする。
【0046】
情報処理装置101は、受付部140において端末装置400から優先度の出力要求を受け付けていない場合(S201の「No」)、待機する。受付部140が端末装置400から優先度の出力要求を受け付けると(S210の「Yes」)、生成部130は、指定された範囲の変位情報を生成する(S202)。この場合、指定された範囲とは、例えば、出力要求に含まれる、設備を指定する情報に基づいて、当該指定された設備を含む範囲である。そして、抽出部111は、変位情報から設備変位情報を抽出する(S203)。算出部121は、地理空間情報記憶部320に格納されている情報と、設備変位情報と、に基づいて優先度を算出する(S204)。そして、出力制御部150は、優先度を示す情報を端末装置400に出力する(S205)。
【0047】
このように、第2の実施形態の情報処理装置101は、地表面の高さの変位を示す変位情報から、地表面に設置された複数の設備の各々の変位を示す設備変位情報を抽出する。そして、情報処理装置101は、設備変位情報を用いて、複数の設備に対する点検作業の優先度を算出する。これにより、第2の実施形態の情報処理装置101は、第1の実施形態の情報処理装置100と同様の効果を奏する。すなわち、第2の実施形態の情報処理装置101は、設備の点検作業を支援することができる。
【0048】
また、第2の実施形態の情報処理装置101は、設備変位情報に加え、設備の重要度、設備の築年数、設備の耐用年数、設備の位置情報、及び設備の点検履歴の少なくともいずれかを含む設備情報をさらに用いて、優先度を算出してもよい。また、情報処理装置101は、災害が発生した地点と、設備の各々の位置と、の距離の情報をさらに用いて、優先度を算出してもよい。これにより、情報処理装置101は、多様な情報を考慮した上で優先度を算出することができる。そのため、情報処理装置101は、より適切に、設備の点検作業を支援することができる。
【0049】
[変形例1]
第2の実施形態では、情報処理装置101が、端末装置400から優先度の出力要求を受け付けてから変位情報を生成する例について説明した。変位情報を生成するタイミングはこの例に限らない。
【0050】
図8は、変形例1の情報処理装置101が変位情報を生成する動作の一例を示すフローチャートである。変形例1の情報処理装置101は、観測データ記憶部310に観測データが格納されない場合(S301の「No」)、変位情報を生成しない。観測データ記憶部310に観測データが格納された場合(S301の「Yes」)、生成部130は、格納された観測データと、当該観測データと同様の範囲が観測された観測データに基づいて、変位情報を生成する(S302)。そして、抽出部111は、変位情報から設備変位情報を抽出する。このとき、抽出部111は、例えば、予め設定された設備の位置を含む変位情報が生成されたときに、設備変位情報を抽出してもよい。そして、生成部130及び抽出部111は、それぞれ、変位情報と設備変位情報とを地理空間情報として格納する(S304)。
【0051】
図9は、変形例1の情報処理装置101が、端末装置400から出力要求を受け付けた場合の動作の一例を示すフローチャートである。受付部140が端末装置400から受け付けた出力要求が、優先度の出力要求を含む場合(S401の「Yes」)、算出部121は、地理空間情報記憶部320に格納されている設備変位情報等に基づいて、優先度を算出する(S402)。受付部140が端末装置400から受け付けた出力要求が、優先度の出力要求を含まない場合(S401の「No」)、算出部121は、S402の処理は行わない。そして、出力制御部150は、出力要求に応じた情報を出力する(S403)。例えば、優先度の出力要求が受け付けられた場合、出力制御部150は、優先度を示す情報を端末装置400に出力する。また、例えば、その他の地理空間情報の出力要求が受け付けられた場合、出力制御部150は、出力要求に応じた地理空間情報を端末装置400に出力する。
【0052】
<第3の実施形態>
次に、第3の実施形態の情報処理装置について説明する。
図10は、第3の実施形態の支援システム1002の構成の一例を含むブロック図である。
図10に示すように、支援システム1002は、第2の実施形態における情報処理装置101に代わり情報処理装置102を備え、それ以外については、第2の実施形態で説明した支援システム1001と同様である。すなわち、支援システム1002は、情報処理装置102と、観測装置200と、記憶装置300とを備える。なお、第3の実施形態において、第1の実施形態及び第2の実施形態で説明した内容と重複する内容については、一部説明を省略する。
【0053】
[情報処理装置102の詳細]
図10に示すように、情報処理装置102は、抽出部111と、算出部121と、生成部130と、受付部140と、出力制御部150と、ルート算出部160とを備える。
【0054】
ルート算出部160は、設備の点検作業に関する所定の出発地点と設備とを結ぶルートを算出する。例えば、受付部140が、端末装置400からルートの出力要求を受け付けたとする。ルートの出力要求には、例えば、所定の出発地点を示す情報が含まれる。所定の出発地点を示す情報は、例えば、点検作業を行う作業員の現在位置を示す情報であってもよいし、点検用の車両の位置を示す情報であってもよいし、事業者が所有する営業所の位置を示す情報であってもよい。例えば、ルート算出部160は、優先度に基づいてルートを算出する。具体的には、例えば、ルート算出部160は、優先度が最も高い設備の位置情報と、出発地点の位置情報と、から、出発地点と優先度が最も高い設備とを結ぶルートを算出する。また、ルート算出部160は、優先度が算出された設備のうちの一部であって、優先度が上位の複数の設備を特定し、出発地点と、特定した設備のそれぞれの場所とを結ぶルートを算出してもよい。
【0055】
また、ルート算出部160は、出発地点から、複数の設備を通るルートを算出してもよい。例えば、複数の設備に対して、順番に点検作業を行う場合がある。このような場合に、ルート算出部160は、例えば、優先度に応じて複数の設備を通るルートを算出する。ルート算出部160は、例えば、複数の設備のうち、優先度の高い順に設備を通るルートを算出してもよい。なお、必ずしも優先度の高い順に設備を通るルートが算出されなくてもよい。例えば、ルート算出部160は、各設備の、優先度と位置とに基づいて、優先度の高い設備を優先的に通り、かつ、最短となるように最適化されたルートを算出してもよい。このとき、最適化問題に関する公知のアルゴリズムが用いられてよい。また、ルート算出部160は、複数の設備のすべてを通るルートを算出しなくてもよい。例えば、ルート算出部160は、複数の設備のうち、優先度の高い一部の設備を通るルートを算出してもよい。例えば、第2の実施形態で説明したように、優先度が各スコアの合計で示されている場合、優先度が所定の値以上である設備を通るルートを算出してもよい。
【0056】
このように、ルート算出部160は、複数の設備のうち少なくとも一の設備であって、少なくとも一の他の設備に対する優先度より高い優先度が算出された設備と、点検作業を行う作業員の出発地点となる場所と、を結ぶルートを算出する。ルート算出部160は、ルート算出手段の一例である。
【0057】
また、ルート算出部160は、さらに他の各種情報を用いて、出発地点と設備とを結ぶルートを算出してもよい。例えば、ルート算出部160は、変位情報に基づいてルートを算出してもよい。具体的には例えば、ルート算出部160は、出発地点と設備とを結ぶルートを算出する。このとき、算出されたルートは、上述のように優先度に基づいて算出されたものであってもよいし、他の方法によって算出されたものであってもよい。そして、ルート算出部160は、算出されたルートに、変位情報の示す値が所定の値以上である箇所がある場合に、当該箇所を迂回するルートを算出する。土砂災害や洪水等によって通れなくなっている道路が存在する可能性がある。このような道路については、変位情報の示す値が大きく変わっている可能性が高い。したがって、変位情報に基づいてルートを算出することにより、ルート算出部160は、通行ができない虞のある道路を迂回したルートを算出することができる。このようにルート算出部160は、算出されたルート上に、変位情報の示す値が一定の基準を満たす箇所が存在する場合、当該箇所を含まないルートを算出してもよい。
【0058】
また、災害による被災情報を含む災害情報が存在している場合、ルート算出部160は、災害情報を用いてルートを算出してもよい。災害による被災情報とは、例えば、地震による土砂崩れや、川の氾濫等によって通行できない道路に関する情報である。ルート算出部160は、このような災害情報を用いて、通行できないとされる道路を避けたルートを算出してもよい。なお、ルート算出部160は、例えば、災害情報を、地理空間情報記憶部320に含まれる情報に基づいて取得する。災害情報は、例えば、インターネット上に公開されている情報であってもよい。また、災害情報は、観測データや、衛星写真等から推測された情報であってもよい。例えば、災害前後の観測データまたは衛星写真から、通行できない道路を推測することが可能である。このように、ルート算出部160は、災害による被害状況を含む災害情報に応じて、複数の設備のうち少なくとも一の設備を通るルートを算出してもよい。
【0059】
[情報処理装置102の動作]
次に、情報処理装置102の動作を説明する。
図11は、情報処理装置102の動作の一例を示すフローチャートである。本動作例においては、端末装置400から出力要求を受け付けた場合の動作の一例を説明する
受付部140が受け付けた出力要求に、ルートの出力要求が含まれている場合(S501の「Yes」)、ルート算出部160は、出発地点と設備とを結ぶルートを算出する(S502)。ルートの出力要求には、例えば、出発地点の位置を示す情報が含まれる。また、S502において、ルート算出部160は、例えば、優先度が最も高い設備と出発地点とを結ぶルートを算出する。受付部140が受け付けた出力要求に、ルートの出力要求が含まれていない場合(S501の「No」)、ルート算出部160は、S502の処理を行わない。
【0060】
そして、出力制御部150は、出力要求に応じた情報を出力する(S503)。例えば、受付部140がルートの出力要求を受け付けた場合、出力制御部150は、地図上に算出したルートを重畳した画像を端末装置400に出力する。
【0061】
このように、第3の実施形態の情報処理装置102は、複数の設備のうち少なくとも一の設備であって、少なくとも一の他の設備に対する優先度より高い優先度が算出された設備と、点検作業を行う作業員の出発地点となる場所と、を結ぶルートを算出する。これにより、情報処理装置102は、事業者に、優先度の高い設備までのルートを提示することができる。また、情報処理装置102は、算出されたルート上に、変位情報の示す値が一定の基準を満たす箇所が存在する場合、当該箇所を含まないルートを算出してもよい。これにより、情報処理装置102は、例えば、災害等によって通行が不可能となっている可能性がある箇所を避けたルートを、事業者に提示することができる。すなわち、第3の実施形態の情報処理装置102は、設備の点検作業を支援することができる。
【0062】
[変形例2]
受付部140が、所定の出発地点を示す情報が含むルートの出力要求を受け付ける例を説明したが、ルートの出力要求には、さらに設備の位置を示す情報が含まれてもよい。この場合、ルート算出部160は、出力要求に示される設備と、出発地点と、を結ぶルートを算出してもよい。
【0063】
また、ルートの出力要求に複数の設備の位置を示す情報が含まれていた場合、ルート算出部160は、当該複数の設備のそれぞれと、出発地点とを結ぶルートを算出してもよいし、優先度に応じて、出発地点から当該複数の設備を通るルートを算出してもよい。このとき、ルート算出部160は、さらに変位情報や、災害情報等を用いてもよい。
【0064】
<第4の実施形態>
次に、第4の実施形態の情報処理装置について説明する。
図12は、第4の実施形態の支援システム1003の構成の一例を含むブロック図である。
図12に示すように、支援システム1003は、第3の実施形態における情報処理装置102に代わり情報処理装置103を備え、それ以外については、第3の実施形態で説明した支援システム1002と同様である。すなわち、支援システム1003は、情報処理装置103と、観測装置200と、記憶装置300とを備える。なお、第4の実施形態において、第1の実施形態、第2の実施形態及び第3の実施形態で説明した内容と重複する内容については、一部説明を省略する。
【0065】
[情報処理装置103の詳細]
図12に示すように、情報処理装置103は、抽出部111と、算出部121と、生成部130と、受付部140と、出力制御部150と、ルート算出部160と、通知部170とを備える。
【0066】
通知部170は、設備に異常が発生した場合に、その旨を示すアラームを通知する。アラームは、例えば、端末装置400の表示装置に出力される画像及び文字であってもよいし、端末装置400が備えるスピーカーから発せされる音声であってもよい。また、アラームは、事業者が所有する営業所に設置されたスピーカー等から発せられる音声であってもよい。また、通知部170は、アラームを図示しないサーバ装置に通知してもよい。この場合、例えば、当該サーバ装置と通信可能なアプリケーションがインストールされている装置に、アプリケーション上でアラームが通知されてもよい。
【0067】
通知部170は、例えば、設備変位情報が所定の値以上となった設備を異常と判定する。そして、異常と判定された設備を示す情報を、端末装置400に通知してもよい。このように、通知部170は、設備変位情報に基づいて、異常が発生したと判定された設備が存在する場合、当該設備に異常が発生したことを示すアラームを通知する。通知部170は、通知手段の一例である。
【0068】
なお、設備の異常を判定する方法はこの例に限らない。例えば、通知部170は、設備に発生した錆等の腐食の進行度合いの測定結果に応じて、設備の異常を判定してもよい。また、例えば、通知部170は、設備における漏油、漏水及び漏電が検知された場合に、設備に異常が発生したと判定してもよい。また、例えば、第2の実施形態で説明したように、優先度が各スコアの合計で示されている場合、通知部170は、優先度が所定の値以上である設備を異常と判定してもよい。
【0069】
[情報処理装置103の動作]
次に、情報処理装置103の動作を説明する。
図13は、情報処理装置103の動作の一例を示すフローチャートである。本動作例においては、設備変位情報に基づいて、アラームを通知する例について説明する。
【0070】
設備変位情報が抽出された場合(S601の「Yes」)、通知部170は、抽出された設備変位情報が所定の値以上であるかどうか判定する。このとき、複数の設備の設備変位情報が抽出された場合、通知部170は、設備変位情報の各々に対して、所定の値以上であるかどうか判定する。そして、設備変位情報が所定の値以上の設備が存在する場合(S602の「Yes」)、通知部170はアラームを通知する(S603)。例えば、通知部170は、端末装置400に、設備変位情報が所定の値以上であること、すなわち、異常が発生したことと、異常が発生したと判定された設備の設備情報と、を通知する。
【0071】
設備変位情報が抽出されていない場合(S601の「No」)や、設備変位情報が所定の値以上の設備が存在しない場合(S602の「No」)、の場合、通知部170は、S603の処理は行わない。
【0072】
このように、第4の実施形態の情報処理装置103は、設備変位情報に基づいて、異常が発生したと判定された設備が存在する場合、当該設備に異常が発生したことを示すアラームを通知する。これにより、事業者に、設備に異常が発生したことを迅速に通知することができる。すなわち、第4の実施形態の情報処理装置103は、設備の点検作業を支援することができる。
【0073】
<情報処理装置のハードウェアの構成例>
上述した第1、第2、第3及び第4の実施形態の情報処理装置を構成するハードウェアについて説明する。
図14は、各実施形態における情報処理装置を実現するコンピュータ装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図14が示す各ブロックは、各実施形態における情報処理装置及び情報処理方法を実現するコンピュータ装置10と、ソフトウェアとの組み合わせにより実現できる。
【0074】
図14に示すように、コンピュータ装置10は、プロセッサ11、RAM(Random Access Memory)12、ROM(Read Only Memory)13、記憶装置14、入出力インタフェース15、バス16、及びドライブ装置17を備える。なお、情報処理装置は、複数の電気回路によって実現されてもよい。
【0075】
記憶装置14は、プログラム(コンピュータプログラム)18を格納する。プロセッサ11は、RAM12を用いて本情報処理装置のプログラム18を実行する。具体的には、例えば、プログラム18は、
図3、
図7、
図8、
図9、
図11及び
図13に示す処理をコンピュータに実行させるプログラムを含む。プロセッサ11が、プログラム18を実行することに応じて、本情報処理装置の各構成要素(上述した、抽出部110、111、算出部120、121等)の機能が実現される。プログラム18は、ROM13に記憶されていてもよい。また、プログラム18は、記憶媒体20に記録され、ドライブ装置17を用いて読み出されてもよいし、図示しない外部装置から図示しないネットワークを介してコンピュータ装置10に送信されてもよい。
【0076】
入出力インタフェース15は、周辺機器(キーボード、マウス、表示装置など)19とデータをやり取りする。入出力インタフェース15は、データを取得または出力する手段として機能する。バス16は、各構成要素を接続する。
【0077】
なお、情報処理装置の実現方法には様々な変形例がある。例えば、情報処理装置は、専用の装置として実現することができる。また、情報処理装置は、複数の装置の組み合わせに基づいて実現することができる。
【0078】
各実施形態の機能における各構成要素を実現するためのプログラムを記憶媒体に記録させ、該記憶媒体に記録されたプログラムをコードとして読み出し、コンピュータにおいて実行する処理方法も各実施形態の範疇に含まれる。すなわち、コンピュータ読取可能な記憶媒体も各実施形態の範囲に含まれる。また、上述のプログラムが記録された記憶媒体、及びそのプログラム自体も各実施形態に含まれる。
【0079】
該記憶媒体は、例えばフロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD(Compact Disc)-ROM、磁気テープ、不揮発性メモリカード、またはROMであるが、この例に限らない。また該記憶媒体に記録されたプログラムは、単体で処理を実行しているプログラムに限らず、他のソフトウェア、拡張ボードの機能と共同して、OS(Operating System)上で動作して処理を実行するプログラムも各実施形態の範疇に含まれる。
【0080】
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。
【0081】
この出願は、2020年12月28日に出願された日本出願特願2020-218133を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0082】
100、101、102、103 情報処理装置
110、111 抽出部
120、121 算出部
130 生成部
140 受付部
150 出力制御部
160 ルート算出部
170 通知部
200 観測装置
300 記憶装置
400 端末装置