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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20240618BHJP
   H02M 7/12 20060101ALI20240618BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20240618BHJP
【FI】
H02M3/155 W
H02M7/12 Q
H02M7/48 Y
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022578017
(86)(22)【出願日】2021-03-30
(86)【国際出願番号】 JP2021013447
(87)【国際公開番号】W WO2022162964
(87)【国際公開日】2022-08-04
【審査請求日】2023-06-30
(31)【優先権主張番号】P 2021014116
(32)【優先日】2021-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三野 和明
【審査官】安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-206379(JP,A)
【文献】特開平8-205560(JP,A)
【文献】特開2016-187241(JP,A)
【文献】特開2016-074516(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/155
H02M 7/48
H02M 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電圧入力端子と、
前記交流電圧入力端子に接続され、互いに並列に接続された第1のPFCコンバータおよび第2のPFCコンバータと、
前記第1のPFCコンバータの出力と前記第2のPFCコンバータの出力を合成して出力する直流電圧出力端子と、
を備えたコンバータであって、
前記第1のPFCコンバータは、ダイオード整流型PFCコンバータで構成され、
前記第2のPFCコンバータは、トーテムポールブリッジレスPFCコンバータで構成され、
前記交流電圧入力端子と前記第2のPFCコンバータとを接続する第2PFC側接続ラインに接続されるスイッチと、
前記第2PFC側接続ラインに接続される交流電圧出力端子と、さらに備え、
前記第1のPFCコンバータおよび前記第2のPFCコンバータの動作制御と前記スイッチのオンオフ制御によって、前記交流電圧入力端子からの交流電圧を直流電圧に変換して該直流電圧を前記直流電圧出力端子から出力する第1態様と、前記直流電圧出力端子からの直流電圧を交流電圧に変化して該交流電圧を前記交流電圧出力端子から出力する第2態様と、前記交流電圧入力端子からの交流電圧を前記交流電圧出力端子から出力する直結出力態様とのいずれか1つの態様、または、前記第1態様と前記第2態様との組、もしくは、前記第1態様と前記直結出力態様との組から、選択的に実行する、
電力変換装置。
【請求項2】
前記スイッチは、前記第2PFC側接続ラインと前記交流電圧出力端子との間に接続される、
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記スイッチは、前記第2PFC側接続ラインにおける、前記第2のPFCコンバータと前記交流電圧出力端子との接続部と、前記交流電圧入力端子との間に接続されている、
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記第1のPFCコンバータと前記第2のPFCコンバータとは、インターリーブ動作を行う、
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記第2のPFCコンバータに、窒化ガリウム半導体のスイッチング素子を用いる、
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記窒化ガリウム半導体のスイッチング素子は、
前記第2態様でのスイッチング周波数は、前記第1態様でのスイッチング周波数よりも高い、
請求項5に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記直流電圧出力端子に接続される直流型負荷が軽負荷のとき、
前記第1のPFCコンバータを臨界モードまたは電流不連続モードで駆動し、
前記第2のPFCコンバータを電流連続モードで駆動する、
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記直流電圧出力端子に接続される直流型負荷が軽負荷のとき、
前記第1のPFCコンバータの駆動を停止し、前記第2のPFCコンバータを駆動して、
前記第2のPFCコンバータを構成するスイッチング素子のスイッチング周波数を高くする、
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流電力と直流電力とを変換する電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、普及が進みつつある電気自動車(EV)或いはプラグインハイブリッド自動車(PHEV)では、自宅ガレージ等に設置されるAC充電器によって充電される方式が採用されている。充電器の充電プラグにはAC電圧が印加されるので、EVまたはPHEVの車体側には、PFCコンバータが搭載されている。
【0003】
また、EVまたはPHEVは、車両本体に大容量の蓄電池を備えるため、それを電力源としてDC-ACインバータを介してACアウトレットからAC電圧を出力できるようにし、ユーザーが車内で一般用電子機器を使えるようにすることが知られている。
【0004】
特許文献1には、ブリッジダイオードによる整流回路と、複数の昇圧チョッパ回路とを備えたマルチフェーズPFCコンバータが記載されている。
【0005】
特許文献2には、複数のトーテムポールブリッジレスPFC(力率改善)コンバータが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-90423号公報
【文献】特表2016-533147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載のPFCコンバータでは、低コストであるが、ダイオードブリッジを用いて整流しているため、双方向に電力を伝送することはできない。そのため、車内にACアウトレットを設けようとすると、別途DC-ACインバータが必要になる。
【0008】
特許文献2に記載のトーテムポールブリッジレスPFCコンバータでは、双方向に電力を伝送できるので、ACアウトレットを設ける場合にも別途DC-ACインバータを用意する必要がなく、ダイオードを用いないので電力変換効率も高くできる。しかしながら、スイッチング素子の個数が多くなり、SiCやGaN等の高価なスイッチング素子を用いると、大幅なコスト増を招いてしまう。
【0009】
したがって、本発明の目的は、EVやPHEV等の大容量の蓄電池を有する電動車両を充電する電力変換装置において、本来の目的である電力系統からの蓄電池への充電時にも高効率を実現しつつ、ACアウトレットを設ける際に別途DC-ACインバータが不要で、且つ、安価に実現する電力変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の電力変換装置は、交流電圧入力端子と、交流電圧入力端子に接続され、互いに並列に接続された第1のPFCコンバータおよび第2のPFCコンバータと、第1のPFCコンバータの出力と第2のPFCコンバータの出力を合成して出力する直流電圧出力端子と、を備える。第1のPFCコンバータは、ダイオード整流型PFCコンバータで構成される。第2のPFCコンバータは、トーテムポールブリッジレスPFCコンバータで構成される。電力変換装置は、交流電圧入力端子と第2のPFCコンバータとを接続する第2PFC側接続ラインに接続されるスイッチと、第2PFC側接続ラインに接続される交流電圧出力端子と、さらに備える。電力変換装置は、第1のPFCコンバータおよび第2のPFCコンバータの動作制御とスイッチのオンオフ制御によって、交流電圧入力端子からの交流電圧を直流電圧に変換して該直流電圧を前記直流電圧出力端子から出力する第1態様と、直流電圧出力端子からの直流電圧を交流電圧に変化して該交流電圧を交流電圧出力端子から出力する第2態様と、交流電圧入力端子からの交流電圧を交流電圧出力端子から出力する直結出力態様とのいずれか1つの態様、または、前記第1態様と前記第2態様との組、もしくは、前記第1態様と前記直接出力態様との組から、選択的に実行する。
【0011】
この構成では、非可逆の第1のPFCコンバータと、可逆の第2のPFCコンバータとを並列に備える。これにより、交流と直流との双方向での電力供給が実現される。また、第1のPFCコンバータは、第2のPFCコンバータと比較して安価に構成し易く、安価にしても損失性能が劣化し難い。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、交流と直流との双方向での電力供給を、低損失で、且つ、安価に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の実施形態に係る電力変換装置の適用システムの一例を示す図である。
図2図2は、本発明の第1の実施形態に係るコンバータ(電力変換装置)の等価回路図である。
図3図3は、蓄電池の充電時におけるコンバータの接続態様を示す等価回路図である。
図4図4(A)-図4(G)は、充電時における各種波形を示す。
図5図5は、蓄電池に充電された直流電力を交流出力端子から外部に供給する時におけるコンバータの接続態様を示す等価回路図である。
図6図6(A)-図6(D)は、蓄電池の直流電圧を変換して交流出力端子から交流電圧を供給するときにおける各種波形を示す。
図7図7は、本発明の第2の実施形態に係るコンバータ(電力変換装置)の等価回路図である。
図8図8は、蓄電池の充電時におけるコンバータの接続態様を示す等価回路図である。
図9図9は、蓄電池の充電と交流電圧の供給とを同時に行う時におけるコンバータの接続態様を示す等価回路図である。
図10図10は、蓄電池に充電された直流電力を交流出力端子から外部に供給する時におけるコンバータの接続態様を示す等価回路図である。
図11図11(A)-図11(G)は、軽負荷の充電時における各種波形を示す。
図12図12(A)-図12(G)は、電流不連続モードと電流連続モードとの併用での充電時における各種波形を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係る電力変換装置について、図を参照して説明する。
【0015】
(適用されるシステムの一例)
図1は、本発明の実施形態に係る電力変換装置の適用システムの一例を示す図である。
【0016】
図1に示すように、例えば、本発明の第1の実施形態に係るコンバータ10は、電気自動車90に適用される。なお、本実施形態のコンバータ10は、電気自動車に限らず、プラグインハイブリット車両にも適用できる。電気自動車90は、コンバータ10、DC-DCコンバータ91、蓄電池92、AC給電ソケット93、および、ACアウトレット94を備える。コンバータ10が、本発明の「電力変換装置」に対応し、蓄電池92が、本発明の「直流型負荷」に対応する。
【0017】
AC給電ソケット93は、コンバータ10に接続される。コンバータ10は、DC-DCコンバータ91およびACアウトレット94に接続される。DC-DCコンバータ91は、蓄電池92に接続される。
【0018】
概略的には、このシステムでは、蓄電池92を充電する場合、AC給電ソケット93に、外部の給電ケーブル910が装着される。給電ケーブル910は、外部の充電器900に接続されている。これにより、AC給電ソケット93には、給電ケーブル910を通じて、充電器900から交流電圧が供給される。
【0019】
コンバータ10は、双方向PFC回路の機能を有しており、AC給電ソケット93からの交流電圧を直流電圧に変換して、DC-DCコンバータ91に出力する。DC-DCコンバータ91は、コンバータ10からの出力電圧を、蓄電池92の充電電圧に変換し、蓄電池92に出力する。蓄電池92は、この充電電圧によって、充電される。
【0020】
また、このシステムでは、ACアウトレット94から交流電圧を出力する場合、蓄電池92から直流電圧が供給される。
【0021】
コンバータ10は、上述の通り双方向PFC回路の機能を有しているので、蓄電池92からの直流電圧を交流電圧に変換して、ACアウトレット94を通じて、ACアウトレット94に接続された交流型負荷(例えば、電化製品)に、交流電圧を出力する。
【0022】
(コンバータ10の構成)
図2は、本発明の第1の実施形態に係るコンバータ(電力変換装置)の等価回路図である。コンバータ10は、ダイオードブリッジDB、インダクタL1、インダクタL2、インダクタL3、スイッチング素子Q1、スイッチング素子Q2、スイッチング素子Q3、スイッチング素子Q4、スイッチング素子Q5、スイッチング素子Q6、ダイオードD1、ダイオードD2、コンデンサCo、スイッチSW1、および、制御IC11を備える。また、コンバータ10は、交流入力端子PAC1、直流出力端子PDC、および、交流出力端子PAC2を備える。
【0023】
スイッチング素子Q1、スイッチング素子Q2、スイッチング素子Q5、および、スイッチング素子Q6は、シリコン半導体のSi-MOSFETである。スイッチング素子Q3およびスイッチング素子Q4は、窒化ガリウム半導体のGaN-FETである。
【0024】
ダイオードブリッジDBの交流入力端子は、交流入力端子PAC1に接続される。ダイオードブリッジDBのHi側出力端子は、インダクタL1の一方端およびインダクタL2の一方端に接続される。
【0025】
ダイオードブリッジDBのLow側出力端子は、基準電位ラインに接続される。基準電位ラインは、直流出力端子PDCの基準電位側に接続される。
【0026】
インダクタL1の他方端には、ダイオードD1のカソードが接続される。また、インダクタL1の他方端には、スイッチング素子Q1のドレインが接続される。スイッチング素子Q1のソースは、基準電位ラインに接続される。ダイオードD1のアノードは、直流出力端子PDCのHi電位側に接続される。これら、インダクタL1、スイッチング素子Q1、および、ダイオードD1によって、第1の昇圧チョッパ回路が構成される。
【0027】
インダクタL2の他方端には、ダイオードD2のカソードが接続される。また、インダクタL2の他方端には、スイッチング素子Q2のドレインが接続される。スイッチング素子Q2のソースは、基準電位ラインに接続される。ダイオードD2のアノードは、直流出力端子PDCのHi電位側に接続される。これらインダクタL2、スイッチング素子Q2、および、ダイオードD2によって、第2の昇圧チョッパ回路が構成される。
【0028】
そして、第1の昇圧チョッパ回路と第2の昇圧チョッパ回路とが、本発明の「第1のPFCコンバータ」に対応する。
【0029】
インダクタL3の一方端は、交流入力端子PAC1の一方端子に接続される。インダクタL3の他方端は、スイッチング素子Q3のドレインとスイッチング素子Q4のソースとのノードに接続される。スイッチング素子Q3のソースは、基準電位ラインに接続される。スイッチング素子Q4のドレインは、直流出力端子PDCのHi電位側に接続される。
【0030】
スイッチング素子Q5のドレインとスイッチング素子Q6のソースとのノードは、交流入力端子PAC1の一方端子に接続される。スイッチング素子Q5のソースは、基準電位ラインに接続される。スイッチング素子Q6のドレインは、直流出力端子PDCのHi電位側に接続される。これらインダクタL3、スイッチング素子Q3、スイッチング素子Q4、スイッチング素子Q5、および、スイッチング素子Q6によって、トーテムポールブリッジレスPFCが構成される。このトーテムポールブリッジレスPFCが、本発明の「第2のPFCコンバータ」に対応する。
【0031】
そして、これらの構成によって、ダイオードブリッジDBと第1の昇圧チョッパ回路からなる1相、ダイオードブリッジDBと第2の昇圧チョッパ回路からなる1相、および、トーテムポールブリッジレスPFCからなる1相の並列動作が実現される。すなわち、2相がダイオードブリッジDBと昇圧チョッパ回路によって実現され、1相がトーテムポールブリッジレスPFCによって実現される。
【0032】
コンデンサCoは、直流出力端子PDCのHi電位側と直流出力端子PDCの基準電位側との間に接続される。
【0033】
制御IC11は、複数(本実施形態では6個)のスイッチング素子Q1-Q6のゲートに接続し、複数のスイッチング素子Q1-Q6に対して、スイッチング制御信号を出力する。言い換えれば、複数のスイッチング素子Q1-Q6は、制御IC11からのスイッチング制御信号によって駆動制御される。
【0034】
スイッチSW1は、交流入力端子PAC1とトーテムポールブリッジレスPFCとを接続する第2PFC側接続ラインと交流出力端子PAC2との間に接続される。スイッチSW1は、第2PFC側接続ラインと交流出力端子PAC2と間の導通または開放を制御する。
【0035】
(蓄電池92を充電するとき(第1態様))
図3は、蓄電池の充電時におけるコンバータの接続態様を示す等価回路図である。図3に示すように、直流出力端子PDCには、蓄電池92が接続される。また、交流入力端子PAC1には、充電器900が接続される。
【0036】
蓄電池92の充電時、スイッチSW1は、オフ制御される。言い換えれば、スイッチSW1は、開放状態に制御される。なお、本実施形態では、蓄電池92の充電時に、スイッチSW1をオフ制御する態様を示したが、スイッチSW1をオン制御(導通状態に制御)してもよい。この場合、蓄電池92の充電とともに、交流出力端子PAC2から交流電圧を出力できる。
【0037】
この状態において、制御IC11は、複数のスイッチング素子Q1-Q6に対してスイッチング制御信号を出力する。より具体的には、制御IC11は、第1の昇圧チョッパ回路、第2の昇圧チョッパ回路、および、トーテムポールブリッジレスPFCがインターリーブ動作するように、複数のスイッチング素子Q1-Q6に対してスイッチング制御信号を出力する。
【0038】
図4(A)-図4(G)は、充電時における各種波形を示す。図4(A)、図4(B)、図4(C)は、スイッチング素子Q1、Q2、Q4のそれぞれに対するスイッチング制御信号の波形の一例を示す。図4(D)、図4(E)、図4(F)は、インダクタL1、L2、L3のインダクタ電流の波形の一例を示す。図4(G)は、交流入力端子PAC1の電流の波形の一例を示す。なお、スイッチング素子Q3、スイッチング素子Q5、スイッチング素子Q6の波形は図示していないが、スイッチング素子Q5の波形は、スイッチング素子Q4と同じであり、スイッチング素子Q3、Q6の波形は、スイッチング素子Q4と逆相になる。
【0039】
蓄電池92の充電時、図4(A)-図4(C)に示すように、スイッチング素子Q1、スイッチング素子Q2、スイッチング素子Q4は、それぞれに位相差120°を持ってオン制御される。これにより、図4(D)-図4(F)に示すように、第1の昇圧チョッパ回路のインダクタL1のインダクタ電流IL1、第2の昇圧チョッパ回路のインダクタL2のインダクタ電流IL2、および、トーテムポールブリッジレスPFCのインダクタL3のインダクタ電流IL3も、互いに120°の位相差を有する波形となり、それぞれの直流成分に重畳するリップル電流も120°ずつずれる。
【0040】
交流入力端子PAC1の電流Icinは、インダクタ電流IL1、インダクタ電流IL2、および、インダクタ電流IL3が加算された電流である。したがって、インダクタ電流IL1、インダクタ電流IL2、および、インダクタ電流IL3が上述のように、互いに120°の位相差を有するので、それぞれのリップル電流は相殺されるように作用する。これにより、図4(G)に示すように、交流入力端子PAC1の電流Icinのリップル電流の振幅は抑制される。
【0041】
この制御を行うことによって、コンバータ10は、交流入力端子PAC1から入力された交流電圧を直流電圧に変換して直流出力端子PDCから出力する。この出力された直流電圧によって、蓄電池92は充電される。この際、上述の制御が行われることで、コンバータ10から発生する高調波電流やノイズは抑制される。
【0042】
(蓄電池92に充電された直流電力を交流出力端子PAC2から外部に供給するとき(第2態様))
図5は、蓄電池に充電された直流電力を交流出力端子から外部に供給する時におけるコンバータの接続態様を示す等価回路図である。図5に示すように、直流出力端子PDCには、蓄電池92が接続される。また、交流出力端子PAC2には、負荷940が接続される。負荷940は、交流型負荷である。
【0043】
蓄電池92に充電された直流電力を交流出力端子PAC2から外部に供給する時、スイッチSW1は、オン制御される。言い換えれば、スイッチSW1は、導通状態に制御される。
【0044】
第1の昇圧チョッパ回路および第2の昇圧チョッパ回路は、共に単方向のPFCコンバータであるため、直流出力端子PDCから入力された直流電圧を交流に変換して交流入力端子PAC1側に出力できない。したがって、第1の昇圧チョッパ回路および第2の昇圧チョッパ回路は、停止制御される。
【0045】
トーテムポールブリッジレスPFCは、双方向に電力伝送が可能であるため、直流出力端子PDCから入力された直流電圧を交流に変換して交流入力端子PAC1および交流出力端子PAC2側に出力できる。したがって、トーテムポールブリッジレスPFCは、駆動制御される。
【0046】
この制御を行うことによって、コンバータ10は、直流出力端子PDCから入力された直流電圧を交流電圧に変換して交流出力端子PAC2から出力する。この出力された交流電圧が負荷940に供給される。
【0047】
この際、トーテムポールブリッジレスPFCのスイッチング素子は、蓄電池92を充電するときよりも高いスイッチング周波数で駆動することが好ましい。
【0048】
図6(A)-図6(D)は、蓄電池の直流電圧を変換して交流出力端子から交流電圧を供給するときにおける各種波形を示す。図6(A)、図6(C)は、スイッチング素子Q4のに対するスイッチング制御信号の波形の一例を示す。図6(B)、図6(D)は、変換された交流に重畳するリップル電流の波形の一例を示す。図6(A)、図6(B)は、スイッチング周波数が高いときを示し、図6(C)、図6(D)は、スイッチング周波数が低いときを示す。なお、低いスイッチング周波数とは、上述の充電時のスイッチング周波数と同じである。また、高いスイッチング周波数とは、低いスイッチング周波数に対する正の整数倍の周波数であることが望ましい。
【0049】
図6(A)、図6(B)に示すように、スイッチング周波数を高くすることによって、リップル電流の振幅を小さくできる。
【0050】
これにより、第1の昇圧チョッパ回路、第2の昇圧チョッパ回路を駆動せず、トーテムポールブリッジレスPFCのみを駆動させても、交流電圧に重畳するリプルを抑制できる。
【0051】
また、この構成では、トーテムポールブリッジレスPFCのスイッチング素子Q3、Q4のみに、GaN-FETを用い、他のスイッチング素子Q1、Q2、Q5、Q6に、Si-MOSFETを用いている。これにより、全てのスイッチング素子Q1-Q6にGaN-FETを用いるよりも、コンバータ10を安価に構成できる。
【0052】
一方、トーテムポールブリッジレスPFCのスイッチング素子Q3、Q4のみに、GaN-FETを用いることによって、逆回復特性や寄生キャパシタンスに起因する損失を抑制できる。したがって、低損失なコンバータ10を実現できる。
【0053】
なお、交流入力端子PAC1と交流出力端子PAC2の電圧が同じである場合には、蓄電池92の充電時に、スイッチSW1をオン制御(導通制御)することも可能である。これにより、コンバータ10は、蓄電池92への充電を行いながら、交流出力端子PAC2に接続される負荷に交流電力を供給できる。なお、この際、コンバータ10は、第1の昇圧チョッパ回路と第2の昇圧チョッパ回路とをインターリーブ動作させると、よりよい。
【0054】
(利用方法の一例)
充電器900がAC220V/30A、6.6kW出力の場合、この交流電圧が供給される。コンバータ10は、上述の3相による電力変換を行い、この変換された直流によって、蓄電池92が充電される。
【0055】
一方、蓄電池92に充電された電力が交流出力端子PAC2から出力される場合、コンバータ10は、トーテムポールブリッジレスPFCの1相のみを駆動させる。このため、交流出力端子PAC2からは、2.2kW出力が得られる。
【0056】
なお、本実施例において、トーテムポールブリッジレスPFCのスイッチング素子Q3およびQ4にGaN-FETを用いて説明したが、SiC-FET等の他のワイドバンドギャップ半導体を用いたスイッチング素子でもよい。
【0057】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態に係る電力変換装置について、図を参照して説明する。図7は、本発明の第2の実施形態に係るコンバータ(電力変換装置)の等価回路図である。
【0058】
図7に示すように、第2の実施形態に係るコンバータ10は、第1の実施形態に係るコンバータ10に対して、スイッチSW2および交流出力端子PAC2の接続態様において異なる。コンバータ10Aの他の構成は、コンバータ10と同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0059】
コンバータ10Aでは、交流出力端子PAC2は、第2PFC側接続ライン(交流入力端子PAC1とトーテムポールブリッジレスPFCとを接続する接続ライン)に直接接続される。
【0060】
スイッチSW2は、第2PFC側接続ラインの途中に挿入されている。より具体的には、スイッチSW2は、第2PFC側接続ラインにおける、トーテムポールブリッジレスPFCと交流出力端子PAC2との接続部と交流入力端子PAC1との間に接続されている。
【0061】
(蓄電池92を充電するとき(第1態様))
図8は、蓄電池の充電時におけるコンバータの接続態様を示す等価回路図である。図8に示すように、直流出力端子PDCには、蓄電池92が接続される。また、交流入力端子PAC1には、充電器900が接続される。
【0062】
蓄電池92の充電時、スイッチSW2は、オン制御される。言い換えれば、スイッチSW2は、導通状態に制御される。
【0063】
この状態において、制御IC11は、複数のスイッチング素子Q1-Q6に対してスイッチング制御信号を出力する。より具体的には、制御IC11は、第1の昇圧チョッパ回路、第2の昇圧チョッパ回路、および、トーテムポールブリッジレスPFCがインターリーブ動作するように、複数のスイッチング素子Q1-Q6に対してスイッチング制御信号を出力する。
【0064】
この制御を行うことによって、コンバータ10Aは、交流入力端子PAC1から入力された交流電圧を直流電圧に変換して直流出力端子PDCから出力する。この出力された直流電圧によって、蓄電池92は充電される。この際、上述の制御が行われることで、コンバータ10Aから発生する高調波電流は抑制される。
【0065】
(蓄電池92を充電しながら、交流出力端子PAC2から交流電力を供給する)
図9は、蓄電池の充電と交流電圧の供給とを同時に行う時におけるコンバータの接続態様を示す等価回路図である。図9に示すように、直流出力端子PDCには、蓄電池92が接続される。また、交流入力端子PAC1には、充電器900が接続される。また、交流出力端子PAC2には、負荷940が接続される。
【0066】
蓄電池92の充電時、および、交流出力端子PAC2からの交流電力の供給時、スイッチSW2は、オフ制御される。言い換えれば、スイッチSW2は、開放状態に制御される。
【0067】
コンバータ10Aは、第1の昇圧チョッパ回路と第2の昇圧チョッパ回路とによって蓄電池92の充電を行い、トーテムポールブリッジレスPFCは、蓄電池92の電力を交流出力端子PAC2へ出力するためのインバータとして動作するように、スイッチング制御を行う。この際、コンバータ10は、第1の昇圧チョッパ回路と第2の昇圧チョッパ回路とをインターリーブ動作させると、よりよい。
【0068】
これにより、コンバータ10Aは、蓄電池92への充電を行いながら、交流出力端子PAC2に接続される負荷940に交流電力を供給できる。
【0069】
(蓄電池92に充電された直流電力を交流出力端子PAC2から外部に供給するとき(第2態様))
図10は、蓄電池に充電された直流電力を交流出力端子から外部に供給する時におけるコンバータの接続態様を示す等価回路図である。図10に示すように、直流出力端子PDCには、蓄電池92が接続される。また、交流出力端子PAC2には、負荷940が接続される。
【0070】
蓄電池92に充電された直流電力を交流出力端子PAC2から外部に供給する時、スイッチSW2は、オフ制御される。言い換えれば、スイッチSW2は、開放状態に制御される。
【0071】
第1の昇圧チョッパ回路および第2の昇圧チョッパ回路は、停止制御される。トーテムポールブリッジレスPFCは、駆動制御される。
【0072】
この制御を行うことによって、コンバータ10Aは、直流出力端子PDCから入力された直流電圧を交流電圧に変換して交流出力端子PAC2から出力する。この出力された交流電圧が負荷940に供給される。
【0073】
この際、トーテムポールブリッジレスPFCのスイッチング素子は、第1の実施形態と同様に、蓄電池92を充電するときのスイッチング周波数よりも高いスイッチング周波数で駆動することが好ましい。これにより、第1の昇圧チョッパ回路、第2の昇圧チョッパ回路を駆動せず、トーテムポールブリッジレスPFCのみを駆動させても、負荷940に印加される負荷電流に重畳するリップルを抑制できる。
【0074】
なお、この際、コンバータ10Aは、第1の昇圧チョッパ回路、および、第2の昇圧チョッパ回路を駆動させることもできる。すなわち、コンバータ10Aは、第1の昇圧チョッパ回路、および、第2の昇圧チョッパ回路で蓄電池92を充電しながら、蓄電池92の電力から交流電圧を生成し、交流出力端子PAC2から出力することもできる。
【0075】
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態に係る電力変換装置について、図を参照して説明する。第3の実施形態に係るコンバータは、第1の実施形態に係るコンバータと同じ回路構成を備える。第3の実施形態に係るコンバータは、第1の実施形態に係るコンバータに対して、軽負荷時の充電制御において異なる。第3の実施形態に係るコンバータの他の制御は、第1の実施形態に係るコンバータと同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0076】
図11(A)-図11(G)は、電流連続モードでの充電時における各種波形を示す。図12(A)-図12(G)は、電流不連続モードと電流連続モードとの併用での充電時における各種波形を示す。
【0077】
(電流連続モード)
図11(A)、図11(B)、図11(C)は、スイッチング素子Q1、Q2、Q4のそれぞれに対するスイッチング制御信号の波形の一例を示す。図11(D)、図11(E)、図11(F)は、インダクタL1、L2、L3のインダクタ電流の波形の一例を示す。図11(G)は、交流入力端子PAC1の電流の波形の一例を示す。なお、スイッチング素子Q3、スイッチング素子Q5、スイッチング素子Q6の波形は図示していないが、スイッチング素子Q5の波形は、スイッチング素子Q4と同じであり、スイッチング素子Q3、Q6の波形は、スイッチング素子Q4と逆相になる。
【0078】
図11(A)、図11(B)、図11(D)、図11(E)に示すように、軽負荷時には、コンバータは、第1の昇圧チョッパ回路および第2の昇圧チョッパ回路を、臨界モードで動作させる。また、図11(C)、図11(F)に示すように、軽負荷時には、コンバータは、トーテムポールブリッジレスPFCを、電流連続モードで動作させる。
【0079】
(電流不連続モードと電流連続モードの併用)
図12(A)、図12(B)、図12(C)は、スイッチング素子Q1、Q2、Q4のそれぞれに対するスイッチング制御信号の波形の一例を示す。図12(D)、図12(E)、図12(F)は、インダクタL1、L2、L3のインダクタ電流の波形の一例を示す。図12(G)は、交流入力端子PAC1の電流の波形の一例を示す。なお、スイッチング素子Q3、スイッチング素子Q5、スイッチング素子Q6の波形は図示していないが、スイッチング素子Q5の波形は、スイッチング素子Q4と同じであり、スイッチング素子Q3、Q6の波形は、スイッチング素子Q4と逆相になる。
【0080】
図12(A)、図12(B)、図12(D)、図12(E)に示すように、軽負荷時には、コンバータは、第1の昇圧チョッパ回路および第2の昇圧チョッパ回路を、電流不連続モードで動作させる。また、図12(C)、図12(F)に示すように、軽負荷時には、コンバータは、トーテムポールブリッジレスPFCを、電流連続モードで動作させる。
【0081】
これらの制御により、軽負荷時は、第1の昇圧チョッパ回路および第2の昇圧チョッパ回路には、インダクタ電流IL1、Il2としてリップル電流のみが流れ、トーテムポールブリッジレスPFCには、インダクタ電流IL3として、直流成分にリップル成分が重畳された電流が流れる。
【0082】
このような制御を行うことで、コンバータは、軽負荷時には、効率の高いトーテムポールブリッジレスPFCを積極的に用いて、充電を行う。これにより、軽負荷時の電力変換効率を向上できる。また、図11(A)、図11(B)に示すように、この制御では、第1の昇圧チョッパ回路および第2の昇圧チョッパ回路のスイッチング素子は、電流が0の時にターンオンする。これにより、第1の昇圧チョッパ回路および第2の昇圧チョッパ回路のスイッチング損失を低減でき、コンバータの電力変換効率を、さらに向上できる。
【0083】
また、この制御では、第1の実施形態と同様に、第1の昇圧チョッパ回路、第2の昇圧チョッパ回路、および、トーテムポールブリッジレスPFCがインターリーブ動作するので、リップル電流が抑制される。
【0084】
なお、軽負荷時には、第1の昇圧チョッパ回路および第2の昇圧チョッパ回路を停止させることも可能である。この場合、トーテムポールブリッジレスPFCのスイッチング周波数を高くする方がよい。例えば、トーテムポールブリッジレスPFCのスイッチング周波数を、第1の昇圧チョッパ回路および第2の昇圧チョッパ回路とともにインターリーブ動作する時の3倍にするとよい。これにより、トーテムポールブリッジレスPFCの単独動作であっても、リップル電流が抑制される。
【符号の説明】
【0085】
10、10A:コンバータ
11:制御IC
90:電気自動車
91:DC-DCコンバータ
92:蓄電池
93:AC給電ソケット
94:ACアウトレット
900:充電器
910:給電ケーブル
940:負荷
Co:コンデンサ
D1、D2:ダイオード
DB:ダイオードブリッジ
L1、L2、L3:インダクタ
AC1:交流入力端子
AC2:交流出力端子
DC:直流出力端子
Q1、Q2、Q3、Q4、Q5、Q6:スイッチング素子
SW1、SW2:スイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12