(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】光ファイバセンシングシステム及び行動特定方法
(51)【国際特許分類】
G01V 8/16 20060101AFI20240618BHJP
G01H 9/00 20060101ALI20240618BHJP
G08B 13/12 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
G01V8/16
G01H9/00 E
G08B13/12
(21)【出願番号】P 2023024741
(22)【出願日】2023-02-20
(62)【分割の表示】P 2020572035の分割
【原出願日】2019-02-15
【審査請求日】2023-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】小島 崇
【審査官】福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-032224(JP,A)
【文献】中国実用新案第202205306(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第106683308(CN,A)
【文献】特開2003-284053(JP,A)
【文献】特開2006-172339(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101388130(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102982639(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103606236(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104599419(CN,A)
【文献】特開2006-058102(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01V 8/16
G01H 9/00
G08B 13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルに含まれる少なくとも1つの光ファイバから、前記ケーブル上の複数の位置の各々にて検出した振動が重畳された光信号を受信する受信部と、
前記光信号に基づいて、前記ケーブル上の前記振動の検出位置を特定し、前記振動の要因となった監視対象の行動を特定する行動特定部と、
前記監視対象を撮影するための複数台のカメラと、を備え、
前記行動特定部は、特定した
前記検出位置と前記監視対象の行動に基づいて、前記複数台のカメラのうち
前記検出位置に対応するエリアを撮影可能な第1のカメラ
で前記監視対象の顔を撮影し、前記複数台のカメラのうち
前記エリアを撮影可能な第2のカメラで、前記監視対象を含む
前記エリア全体を撮影するように、前記複数台のカメラを制御する、
光ファイバセンシングシステム。
【請求項2】
前記行動特定部は、前記監視対象が複数存在する場合、前記光信号に基づいて特定した各監視対象の行動に基づいて前記カメラを制御する、
請求項1に記載の光ファイバセンシングシステム。
【請求項3】
前記行動特定部は、前記カメラが撮影した前記監視対象の画像から特定された前記監視対象の行動と、前記光信号に基づいて特定された前記監視対象の行動と、の整合性を判断する、
請求項1に記載の光ファイバセンシングシステム。
【請求項4】
行動特定装置による行動特定方法であって、
ケーブルに含まれる少なくとも1つの光ファイバから、前記ケーブル上の複数の位置の各々にて検出した振動が重畳された光信号を受信する受信ステップと、
前記光信号に基づいて、前記ケーブル上の前記振動の検出位置を特定し、前記振動の要因となった監視対象の行動を特定する行動特定ステップと、を含み、
前記行動特定ステップでは、特定した
前記検出位置と前記監視対象の行動に基づいて、前記監視対象を撮影するための複数台のカメラのうち
前記検出位置に対応するエリアを撮影可能な第1のカメラ
で前記監視対象の顔を撮影し、前記複数台のカメラのうち
前記エリアを撮影可能な第2のカメラで、前記監視対象を含む
前記エリア全体を撮影するように、前記複数台のカメラを制御する、
行動特定方法。
【請求項5】
前記行動特定ステップでは、前記監視対象が複数存在する場合、前記光信号に基づいて特定した各監視対象の行動に基づいて前記カメラを制御する、
請求項4に記載の行動特定方法。
【請求項6】
前記行動特定ステップでは、前記カメラが撮影した前記監視対象の画像から特定された前記監視対象の行動と、前記光信号に基づいて特定された前記監視対象の行動と、の整合性を判断する、
請求項4に記載の行動特定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光ファイバセンシングシステム、行動特定装置、行動特定方法、及びコンピュータ可読媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フェンス及びその周辺にいる監視対象(主に人)の状態を、光ファイバを用いて監視するシステムが提案されている(例えば、特許文献1)。特許文献1に記載の技術は、フェンスに光ファイバを敷設し、侵入者がフェンスによじ登ったり、梯子をかけて登ったりすることに起因してフェンスに発生した振動を検知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の技術は、フェンス及びその周辺にいる監視対象の状態を、振動の大小といった大まかな基準で判断する構成となっており、このような構成では単純な状態のみしか検知することができない。
【0005】
その一方、監視対象の状態をより詳細に検知するための技術として、光ファイバセンシングの動的パターンを用いたパターンセンシングが将来技術として期待されている。
【0006】
光ファイバセンシングで検知できる振動データは、監視対象の行動に応じた固有パターンを有しており、それらのパターンの動的変化を分析することにより、監視対象の行動を特定することが可能である。
【0007】
しかし、光ファイバセンシングの動的パターンを用いたパターンセンシングでは、敷設されている光ファイバの環境が異なると振動等の伝わり方も異なり、検知の精度が低下する場合がある。
【0008】
そこで本開示の目的は、上述した課題を解決し、より高度かつフレキシブルに監視対象の行動を特定することができる光ファイバセンシングシステム、行動特定装置、行動特定方法、及びコンピュータ可読媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様による光ファイバセンシングシステムは、
光ファイバを含むケーブルと、
前記ケーブルに含まれる少なくとも1つの光ファイバから、前記ケーブル上の複数の位置の各々にて検出した振動が重畳された光信号を受信する受信部と、
前記光信号に基づいて、前記ケーブル上の前記振動の検出位置を特定し、前記振動の要因となった監視対象の行動を特定する行動特定部と、を備え、
前記行動特定部は、前記ケーブル上の前記振動の検出位置の環境に応じて、前記監視対象の行動を特定する際に用いる検知パターンを特定する。
【0010】
一態様による行動特定装置は、
ケーブルに含まれる少なくとも1つの光ファイバから、前記ケーブル上の複数の位置の各々にて検出した振動が重畳された光信号を受信する受信部と、
前記光信号に基づいて、前記ケーブル上の前記振動の検出位置を特定し、前記振動の要因となった監視対象の行動を特定する行動特定部と、を備え、
前記行動特定部は、前記ケーブル上の前記振動の検出位置の環境に応じて、前記監視対象の行動を特定する際に用いる検知パターンを特定する。
【0011】
一態様による行動特定方法は、
ケーブルに含まれる少なくとも1つの光ファイバから、前記ケーブル上の複数の位置の各々にて検出した振動が重畳された光信号を受信する受信ステップと、
前記光信号に基づいて、前記ケーブル上の前記振動の検出位置を特定し、前記振動の要因となった監視対象の行動を特定する行動特定ステップと、を含み、
前記行動特定ステップでは、前記ケーブル上の前記振動の検出位置の環境に応じて、前記監視対象の行動を特定する際に用いる検知パターンを特定する。
【0012】
一態様による非一時的なコンピュータ可読媒体は、
コンピュータに、
ケーブルに含まれる少なくとも1つの光ファイバから、前記ケーブル上の複数の位置の各々にて検出した振動が重畳された光信号を受信する受信手順と、
前記光信号に基づいて、前記ケーブル上の前記振動の検出位置を特定し、前記振動の要因となった監視対象の行動を特定する行動特定手順と、を実行させるためのプログラムであって、
前記行動特定手順では、前記ケーブル上の前記振動の検出位置の環境に応じて、前記監視対象の行動を特定する際に用いる検知パターンを特定する、
プログラムが格納される。
【発明の効果】
【0013】
上述の態様によれば、より高度かつフレキシブルに監視対象の行動を特定することができる光ファイバセンシングシステム、行動特定装置、行動特定方法、及びコンピュータ可読媒体を提供できるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施の形態1に係る光ファイバセンシングシステムの構成例を示す図である。
【
図2】実施の形態1に係る光ファイバ検知部により取得される振動データの例を示す図である。
【
図3】実施の形態1に係る光ファイバ検知部により取得される振動データを時系列に並べた例を示す図である。
【
図4】実施の形態1に係る行動特定部が保持するテーブルの例を示す図である。
【
図5】実施の形態1に係る行動特定装置を実現するコンピュータのハードウェア構成の例を示すブロック図である。
【
図6】実施の形態1に係る光ファイバセンシングシステムの動作フローの例を示すフロー図である。
【
図7】実施の形態2に係る光ファイバセンシングシステムの構成例を示す図である。
【
図8】実施の形態3に係る光ファイバセンシングシステムの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本開示の実施の形態について説明する。
<実施の形態1>
<実施の形態1の構成>
まず、
図1を参照して、本実施の形態1に係る光ファイバセンシングシステムの構成について説明する。なお、本実施の形態1では、監視対象がフェンス10及びその周辺にいる人であるものとして説明するが、監視対象はこれに限定されるものではない。
【0016】
図1に示されるように、本実施の形態1に係る光ファイバセンシングシステムは、フェンス10及びその周辺にいる監視対象の行動を特定するものであり、光ファイバケーブル20及び行動特定装置30を備えている。また、行動特定装置30は、光ファイバ検知部31及び行動特定部32を備えている。なお、光ファイバ検知部31は、受信部の一例である。
【0017】
光ファイバケーブル20は、1以上の光ファイバを被覆して構成されるケーブルであり、気中のフェンス10及びフェンス10周辺の地中の地面に一続きで敷設され、両端が光ファイバ検知部31に接続されている。
図1では、光ファイバケーブル20は、気中に敷設された部分は実線で示され、地中に敷設された部分は点線で示されている。ただし、
図1に示される光ファイバケーブル20の敷設方法は、一例であって、これに限定されるものではない。
【0018】
光ファイバ検知部31は、光ファイバケーブル20に含まれる少なくとも1つの光ファイバにパルス光を入射する。また、光ファイバ検知部31は、パルス光が光ファイバを伝送されることに伴い発生した反射光や散乱光を、同じ光ファイバを経由して、戻り光として受信する。
図1では、光ファイバ検知部31は、時計回りの方向にパルス光を入射し、時計回りの方向から、このパルス光に対する戻り光を受信すると共に、反時計回りの方向にパルス光を入射し、反時計回りの方向から、このパルス光に対する戻り光を受信する。そのため、光ファイバ検知部31は、2方向から戻り光を受信している。
【0019】
フェンス10及びその周辺で振動が発生すると、その振動は光ファイバによって伝送される戻り光に重畳される。そのため、光ファイバ検知部31は、受信された戻り光に基づいて、フェンス10及びその周辺で発生した振動を検知することが可能である。また、光ファイバ検知部31は、光ファイバにパルス光を入射してから、振動が重畳された戻り光が受信されるまでの時間に基づいて、その振動が発生した光ファイバケーブル20上の位置(光ファイバ検知部31からの距離)も検知することが可能である。
【0020】
例えば、光ファイバ検知部31は、受信された戻り光を分散型振動センサ(Distributed Vibration Sensor)で検知することにより、フェンス10及びその周辺で発生した振動及びその振動が発生した光ファイバケーブル20上の位置を検知し、フェンス10及びその周辺で発生した振動の振動データを取得することが可能である。例えば、
図2は、フェンス10及びその周辺で発生した振動の振動データの例を示しており、横軸は、光ファイバケーブル20上の位置(光ファイバ検知部31からの距離)、縦軸は、時間経過を示している。
図2に示される例では、光ファイバ検知部31から約400m離れた位置に振動が発生している。
【0021】
ここで、光ファイバ検知部31で検知された、フェンス10及びその周辺で発生した振動の振動データは、フェンス10及びその周辺にいる監視対象の行動に応じて、振動の強弱、振動位置、振動数の変動の推移等が異なる固有パターンを有している。
【0022】
そのため、行動特定部32は、振動データが有する固有パターンの動的変化を分析することにより、フェンス10及びその周辺にいる監視対象の行動を特定することが可能となる。フェンス10及びその周辺にいる人の行動としては、例えば、以下が考えられる。
(1)フェンス10を掴んで揺らす
(2)フェンス10を叩く
(3)フェンス10をよじ登る
(4)フェンス10に梯子を掛けて、梯子を登る
(5)フェンス10周辺をうろつく
(6)フェンス10周辺に穴を掘る
(7)フェンス10周辺で発砲する
(8)フェンス10周辺に物を置く
【0023】
例えば、監視対象がフェンス10を叩きながら移動し、最終的にフェンス10周辺に穴を掘っていることを示す振動データは、
図3のようになる。
図3に示される振動データは、
図2に示される振動データと同様の振動データを、時系列に縦方向に並べたものである。
【0024】
ここで、行動特定部32において、フェンス10及びその周辺で発生した振動の振動データに基づいて、フェンス10及びその周辺にいる監視対象の行動を特定する方法としては、例えば、パターンマッチングを利用する方法が挙げられる。以下、パターンマッチングの一例を説明する。
【0025】
行動特定部32は、例えば、フェンス10及びその周辺で人が上述の(1)~(8)の行動をしたときに発生した振動の振動データが有する固有パターンを、深層学習により行動モデルパターンとして事前に学習しておく。
【0026】
行動特定部32は、フェンス10及びその周辺にいる監視対象の行動を特定する場合、まず、光ファイバ検知部31から振動データを取得する。ここで、光ファイバ検知部31から取得された振動データにはノイズが含まれている。そのため、行動特定部32は、光ファイバ検知部31から取得された振動データが有する固有パターンからノイズパターンを除去する。
【0027】
そして、行動特定部32は、ノイズパターンが除去された後の固有パターンに基づいて、光ファイバケーブル20上の振動の検出位置を特定すると共に、ノイズパターンが除去された後の固有パターンと、事前に学習された行動モデルパターンと、のパターンマッチングを行うことで、振動の要因となった監視対象の行動を特定する。
【0028】
ただし、光ファイバケーブル20が敷設されている環境が異なると振動等の伝わり方も異なり、監視対象の行動を特定する精度が低下する場合があると考えられる。
【0029】
そこで、本実施の形態1においては、行動特定部32は、光ファイバケーブル20上の振動の検出位置の環境に応じて、その振動の要因となった監視対象の行動を特定する際に用いる検知パターン(上述の行動モデルパターンやノイズパターン)を特定する。なお、光ファイバケーブル20上の振動の検出位置の環境としては、例えば、地中/気中、光ファイバケーブル20が敷設される構造物の種類、光ファイバケーブル20が敷設される構造物の材質、光ファイバケーブル20が敷設される地面の種類、天候、季節、時間帯、周辺状況(工事の有無、飛行場の有無等)が考えられるが、これには限定されない。また、光ファイバケーブル20上の振動の検出位置の環境に応じて異ならせる検知パターンは、行動モデルパターン及びノイズパターンのいずれか一方(他の一方は環境によらず同一のパターンを用いる)でも良い。
【0030】
以下、行動特定部32において、光ファイバケーブル20上の振動の検出位置の環境に応じて、検知パターンを特定する例について説明する。
例えば、フェンス10及びその周辺で発生した振動の伝わり方は、光ファイバケーブル20上の気中に敷設されている部分と地中に敷設されている部分とで異なる。そのため、気中に敷設されている部分と地中に敷設されている部分とで、同じ行動を検知する場合も、両者で検知される固有パターンは異なると考えられる。そのため、行動特定部32は、光ファイバケーブル20上の振動の検出位置が気中に敷設されているか又は地中に敷設されているかに応じて、行動モデルパターンを特定しても良い。
【0031】
また、ノイズの種類も、光ファイバケーブル20上の気中に敷設されている部分と地中に敷設されている部分とで異なると考えられる。例えば、気中に敷設されている部分は、気象(例えば、突風、雨、落雷、降雪等)ノイズの影響を強く受けると考えられる。その一方、地中に敷設されている部分は、騒音(例えば、空港における航空機の離着陸時の騒音、道路における交通の騒音等)ノイズの影響を強く受けると考えられる。そのため、行動特定部32は、光ファイバケーブル20上の振動の検出位置が気中に敷設されているか又は地中に敷設されているかに応じて、ノイズパターンを特定しても良い。なお、行動特定部32は、光ファイバケーブル20上の位置毎のノイズパターンを、予め保持していても良いし、学習しても良い。
例えば、行動特定部32は、以下のようなパターンを学習しても良い。
・監視対象が存在しない時に継続的に検出されるパターンをノイズパターンとして学習・記憶しても良い。
・実運用開始前に一定期間システムを稼働させ、試験的に与えた振動を行動モデルパターンとして学習・記憶しても良い。また、試験的な振動を与えていない時に継続的に検出されるパターンをノイズパターンとして学習・記憶しても良い。
・上記のパターンを、別途取得される環境毎に学習・記憶しても良い。
【0032】
また、固有パターンやノイズの種類は、フェンス10の種類(例えば、構造や材質等)によっても異なると考えられる。そのため、行動特定部32は、フェンス10の種類に応じて、行動モデルパターンやノイズパターンを特定しても良い。
【0033】
また、本実施の形態1では、光ファイバケーブル20は、構造物としてのフェンス10に敷設されているが、固有パターンやノイズの種類は、光ファイバケーブル20がフェンス10に敷設されている場合と他の構造物(例えば、壁、パイプライン、電柱、土木構造物、道路、線路等)に敷設されている場合とで異なると考えられる。そのため、行動特定部32は、振動の検出位置において光ファイバケーブル20が敷設されている構造物の種類に応じて、行動モデルパターンやノイズパターンを特定しても良い。
【0034】
また、固有パターンやノイズの種類は、地面に敷設されている光ファイバケーブル20であっても、地面の種類(例えば、材質(土又はコンクリート)等)によっても異なると考えられる。そのため、行動特定部32は、光ファイバケーブル20上の振動の検出位置が地中に敷設されている場合、地面の種類に応じて、行動モデルパターンやノイズパターンを特定しても良い。
【0035】
また、固有パターンやノイズの種類は、光ファイバケーブル20に含まれる光ファイバの材質や、光ファイバケーブル20の這わせ方等によっても異なると考えられる。そのため、行動特定部32は、振動の検出位置に敷設されている光ファイバケーブル20に含まれる光ファイバの材質や、光ファイバケーブル20の這わせ方に応じて、行動モデルパターンやノイズパターンを特定しても良い。
【0036】
なお、行動特定部32は、光ファイバケーブル20上の位置の環境と、検知パターンと、を対応付けたテーブルを事前に保持し、光ファイバケーブル20上の振動の検出位置の環境をこのテーブルと照合することにより、検知パターンを特定しても良い。
又は、行動特定部32は、光ファイバケーブル20上の位置と、検知パターンと、を直接対応付けたテーブルを事前に保持し、光ファイバケーブル20上の振動の検出位置をこのテーブルと照合することにより、検知パターンを特定しても良い。
【0037】
続いて以下では、行動特定部32において、光ファイバケーブル20上の振動の検出位置の環境を特定する方法について説明する。
行動特定部32は、光ファイバケーブル20上の位置(例:光ファイバ検知部31からの距離)と、その位置の環境と、を対応付けたテーブルを事前に保持しておく。例えば、光ファイバケーブル20が敷設された環境を、気中又は地中で区別する場合のテーブルの例を
図4に示す。
【0038】
行動特定部32は、まず、光ファイバケーブル20上の振動の検出位置を特定する。上述のように、光ファイバ検知部31は、光ファイバケーブル20上の振動の検出位置を検知可能であるため、行動特定部32は、光ファイバ検知部31の検知結果に基づいて、振動の検出位置を特定すれば良い。
【0039】
行動特定部32は、光ファイバケーブル20上の振動の検出位置を特定すると、特定された振動の検出位置を上述のテーブルと照合することにより、振動の検出位置の環境を特定する。
行動特定部32は、光ファイバケーブル20上の振動の検出位置の環境を特定した後に、特定された環境に対応する検知パターンを用いて、ノイズを除去しても良いし、又は、その環境に対応する検知パターンを用いて、監視対象の行動を特定しても良いし、又は、その両方を実施しても良い。
【0040】
続いて以下では、
図5を参照して、行動特定装置30を実現するコンピュータ60のハードウェア構成について説明する。
図5に示されるように、コンピュータ60は、プロセッサ601、メモリ602、ストレージ603、入出力インタフェース(入出力I/F)604、及び通信インタフェース(通信I/F)605等を備える。プロセッサ601、メモリ602、ストレージ603、入出力インタフェース604、及び通信インタフェース605は、相互にデータを送受信するためのデータ伝送路で接続されている。
【0041】
プロセッサ601は、例えばCPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等の演算処理装置である。メモリ602は、例えばRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等のメモリである。ストレージ603は、例えばHDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、またはメモリカード等の記憶装置である。また、ストレージ603は、RAMやROM等のメモリであっても良い。
【0042】
ストレージ603は、行動特定装置30が備える光ファイバ検知部31及び行動特定部32の機能を実現するプログラムを記憶している。プロセッサ601は、これら各プログラムを実行することで、光ファイバ検知部31及び行動特定部32の機能をそれぞれ実現する。ここで、プロセッサ601は、上記各プログラムを実行する際、これらのプログラムをメモリ602上に読み出してから実行しても良いし、メモリ602上に読み出さずに実行しても良い。また、メモリ602やストレージ603は、光ファイバ検知部31及び行動特定部32が保持する情報やデータを記憶する役割も果たす。
【0043】
また、上述したプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータ(コンピュータ60を含む)に供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えば、フレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば、光磁気ディスク)、CD-ROM(Compact Disc-ROM)、CD-R(CD-Recordable)、CD-R/W(CD-ReWritable)、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAMを含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されても良い。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0044】
入出力インタフェース604は、表示装置6041や入力装置6042等と接続される。表示装置6041は、LCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイのような、プロセッサ601により処理された描画データに対応する画面を表示する装置である。入力装置6042は、オペレータの操作入力を受け付ける装置であり、例えば、キーボード、マウス、及びタッチセンサ等である。表示装置6041及び入力装置6042は一体化され、タッチパネルとして実現されていても良い。なお、コンピュータ60は、分散型振動センサ等の不図示のセンサを備え、このセンサを入出力インタフェース604に接続した構成であっても良い。
【0045】
通信インタフェース605は、外部の装置との間でデータを送受信する。例えば、通信インタフェース605は、有線通信路または無線通信路を介して外部装置と通信する。
【0046】
<実施の形態1の動作>
以下、
図6を参照して、本実施の形態1に係る光ファイバセンシングシステムの動作フローについて説明する。
【0047】
図6に示されるように、まず、光ファイバ検知部31は、光ファイバケーブル20に含まれる少なくとも1つの光ファイバにパルス光を入射し、パルス光を入射した光ファイバと同じ光ファイバから戻り光を受信する(ステップS11)。この戻り光には、光ファイバケーブル20上の複数の位置の各々にて検出した振動が重畳されている。
【0048】
続いて、行動特定部32は、戻り光に基づいて、光ファイバケーブル20上の振動の検出位置を特定し、特定された振動の検出位置の環境に応じて、検知パターン(行動モデルパターンやノイズパターン)を特定する(ステップS12)。このとき、前に使用していた検知パターンと特定された検知パターンとが異なる場合には、行動特定部32は、検知パターンの切替を行う。
【0049】
その後、行動特定部32は、特定された検知パターンを用いて、光ファイバケーブル20上の振動の要因となった監視対象の行動を特定する(ステップS13)。
【0050】
<実施の形態1の効果>
上述したように本実施の形態1によれば、行動特定装置30は、光ファイバケーブル20に含まれる少なくとも1つの光ファイバから受信した戻り光(光信号)に基づいて、光ファイバケーブル20上の振動の検出位置を特定し、その振動の要因となった監視対象の行動を特定する。このとき、行動特定装置30は、光ファイバケーブル20上の振動の検出位置の環境に応じて、監視対象の行動を特定する際に用いる検知パラメータを特定する。このように、光ファイバケーブル20上の振動の検出位置の環境に応じて、適切な検知パラメータを特定し、特定された検知パラメータを用いて、監視対象の行動を特定するため、監視対象の行動をより高度にかつフレキシブルに特定することができる。
【0051】
また、本実施の形態1によれば、行動特定装置30は、戻り光に重畳された振動の振動データが有する固有パターンと行動モデルパターンとのマッチングを行って、監視対象の行動を特定する。すなわち、行動特定装置30は、例えば、引用文献1のように、振動の大小といった大まかな基準で状態を特定する(例えば、振動が大、振動数が高で、状態を特定する)のではなく、振動データが有する固有パターンの変化を動的に(例えば、振動の強弱の変化の推移等)パターン分析することで、監視対象の状態を特定する。そのため、監視対象の行動を高精度に特定することが可能である。
【0052】
また、本実施の形態1によれば、光ファイバをセンサとして用いる光ファイバセンシング技術を利用する。そのため、電磁ノイズの影響を受けない、センサへの給電が不要になる、環境耐性に優れる、メンテナンスが容易になる等の利点が得られる。
【0053】
<実施の形態2>
続いて、
図7を参照して、本実施の形態2に係る光ファイバセンシングシステムの構成について説明する。なお、本実施の形態2でも、上述した実施の形態1と同様に、監視対象がフェンス10及びその周辺にいる人であるものとして説明するが、監視対象はこれに限定されるものではない。また、本実施の形態2では、光ファイバケーブル20が敷設された環境を、気中又は地中で区別するものとして説明するが、環境の区別はこれに限定されるものではない。
【0054】
図7に示されるように、本実施の形態2に係る光ファイバセンシングシステムは、上述した実施の形態1と比較して、気中及び地中にそれぞれ敷設された2つの光ファイバケーブル20A,20B(以下、光ファイバケーブル20A,20Bのどちらであるかを特定しない場合は光ファイバケーブル20と称す)を備える点と、2つの光ファイバケーブル20A,20Bにそれぞれ対応して設けられた2つの光ファイバ検知部31A,31B(以下、光ファイバ検知部31A,31Bのどちらであるかを特定しない場合は光ファイバ検知部31と称す)を備える点と、が異なる。
【0055】
光ファイバ検知部31Aは、気中に敷設された光ファイバケーブル20Aに対応して設けられている。光ファイバ検知部31Aは、光ファイバケーブル20Aに含まれる少なくとも1つの光ファイバにパルス光を入射し、パルス光が光ファイバを伝送されることに伴い発生した反射光や散乱光を、同じ光ファイバを経由して、戻り光として受信する。
【0056】
光ファイバ検知部31Bは、地中に敷設された光ファイバケーブル20Bに対応して設けられている。光ファイバ検知部31Bは、光ファイバケーブル20Bに含まれる少なくとも1つの光ファイバにパルス光を入射し、パルス光が光ファイバを伝送されることに伴い発生した反射光や散乱光を、同じ光ファイバを経由して、戻り光として受信する。
【0057】
上述した実施の形態1においては、光ファイバケーブル20が気中と地中に一続きで敷設されていた。そのため、行動特定部32において、光ファイバケーブル20上の振動の検出位置の環境(気中又は地中のどちらに敷設されているか)を特定するには、光ファイバケーブル20上の振動の検出位置を特定する必要があった。
【0058】
これに対して本実施の形態2においては、気中と地中とで別々に2つの光ファイバケーブル20A,20Bを敷設し、さらに、2つの光ファイバケーブル20A,20Bにそれぞれ対応して、光ファイバ検知部31A,31Bを設けている。
【0059】
そのため、行動特定部32において、振動の検出位置の環境を特定するには、その振動が重畳された戻り光が、光ファイバ検知部31A,31Bのどちらで受信されたのかを判断すれば良く、光ファイバケーブル20上の振動の検出位置の特定が不要となる。なお、本実施の形態2においても、光ファイバ検知部31と検知パターン(又は、光ファイバ検知部31に対応する光ファイバケーブル20が敷設された環境)とを対応付けて記憶する必要がある。
【0060】
なお、以上の説明では、光ファイバケーブル20が敷設された環境を、気中又は地中で区別するものとして説明したが、上述のように、環境の区別はこれに限定されない。
本実施の形態2においては、互いに異なる、区別する環境毎に、複数の光ファイバケーブル20を敷設し、複数の光ファイバケーブル20にそれぞれ対応して、複数の光ファイバ検知部31を設ければ良い。例えば、光ファイバケーブル20が敷設された環境を、光ファイバの材質で区別する場合、光ファイバの材質が互いに異なる複数の光ファイバケーブル20を敷設し、複数の光ファイバケーブル20にそれぞれ対応して、複数の光ファイバ検知部31を設ければ良い。
【0061】
上述のように本実施の形態2によれば、互いに異なる環境毎に、複数の光ファイバケーブル20を敷設し、複数の光ファイバケーブル20にそれぞれ対応して、複数の光ファイバ検知部31を設ける。そのため、行動特定装置30は、光ファイバケーブル20上の振動の検出位置の環境を特定するには、その振動が重畳された戻り光が、どの光ファイバ検知部31で受信されたのかを判断すれば良く、振動の検出位置の環境を容易に特定することが可能である。
【0062】
<実施の形態3>
続いて、
図8を参照して、本実施の形態3に係る光ファイバセンシングシステムの構成について説明する。なお、本実施の形態3でも、上述した実施の形態1,2と同様に、監視対象がフェンス10及びその周辺にいる人であるものとして説明するが、監視対象はこれに限定されるものではない。また、本実施の形態3では、上述した実施の形態1をベースとした例について説明するが、本実施の形態3は、上述した実施の形態2をベースとした例にも適用可能である。
【0063】
図8に示されるように、本実施の形態3に係る光ファイバセンシングシステムは、上述した実施の形態1と比較して、カメラ40が追加されている。なお、
図8においては、カメラ40が1台だけ設けられているが、カメラ40は複数台設けても良い。
【0064】
カメラ40は、フェンス10及びその周辺を撮影するカメラであり、例えば、固定カメラ、PTZ(Pan Tilt Zoom)カメラ等で実現される。
【0065】
行動特定部32は、カメラ40の設置位置(光ファイバ検知部31からの距離)、カメラ40の撮影可能エリア等を示すカメラ情報を保持する。また、行動特定部32は、上述のように、検知パターンを用いて、光ファイバケーブル20上の振動の検出位置や、その振動の要因となった監視対象の行動を特定することが可能である。そのため、行動特定部32は、検知パターンを用いて特定された、光ファイバケーブル20上の振動の要因となった監視対象の行動に基づいて、カメラ40を制御しても良い。例えば、行動特定部32は、カメラ40の角度(方位角、仰角)を制御して、カメラ40を監視対象に向け、さらに、ズーム倍率等を制御しても良い。
【0066】
また、行動特定部32は、カメラ40で撮影されたカメラ画像の画像認識を行い、監視対象の行動を特定したり、カメラ画像に映る監視対象の顔認証を行ったりしても良い。
さらに、行動特定部32は、上述の検知パターンを用いて特定された監視対象の行動と、カメラ画像を用いて特定された監視対象の行動と、の整合性を判断しても良い。
【0067】
また、行動特定部32は、監視対象の特定された行動に応じてカメラ40の制御を変更しても良い。例えば、行動特定部32は、より緊急度の高い不審行動(例えば、フェンス10周辺に穴を掘る、フェンス10をよじ登る等)が特定された場合、より詳細に顔、人を特定するようにカメラ40のズームアップを行っても良い。また、行動特定部32は、より緊急度の高い不審行動が特定された場合、監視対象を複数台のカメラ40で撮影可能であれば、複数台のカメラ40で監視対象を追跡しても良い。また、行動特定部32は、複数台のカメラ40で監視対象を追跡する場合、複数台のカメラ40のうちの少なくとも1台のカメラ40は、監視対象の顔を撮影して、撮影された顔画像を顔認証に活用し、複数台のカメラ40のうちの少なくとも1台のカメラ40は、監視対象を含むエリア全体を撮影することで、撮影された画像を、監視対象の行動監視に活用しても良い。
【0068】
また、行動特定部32は、上述の検知パターンを用いて特定された光ファイバケーブル20上の振動の検出位置、すなわち、監視対象の位置が、カメラ40の撮影可能エリアに近づいたことを検知した場合、監視対象がいる方向にカメラを向ける、さらにズームアップを行う等の制御をしても良い。
【0069】
また、行動特定部32は、カメラ40の撮影可能エリアの内部に複数の人がいる場合、複数の人を全て撮影対象にするのではなく、特定の人のみを撮影対象にしても良い。例えば、行動特定部32は、上述の検知パターンを用いて、複数の人の各々について行動を特定し、複数の人の各々の行動に基づいて、複数の人の中から撮影対象を決定しても良い。このとき、例えば、行動特定部32は、不審行動を取っている人を撮影対象として決定しても良い。この場合、以降、行動特定部32は、撮影対象となった人のみをカメラ40で撮影すれば良い。
【0070】
上述したように本実施の形態3によれば、行動特定装置30は、上述の検知パターンを用いて特定された、光ファイバケーブル20上の振動の要因となった監視対象の行動に基づいて、カメラ40を監視対象に向けたり、上述の検知パターンを用いて特定された監視対象の行動と、カメラ画像を用いて特定された監視対象の行動と、の整合性を判断したりする。このように、光ファイバとカメラ40とを連携させることで、監視対象の行動の特定をより高精度に行うことができる。
【0071】
以上、実施の形態を参照して本開示を説明したが、本開示は上述の実施の形態に限定されるものではない。本開示の構成や詳細には、本開示のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0072】
例えば、上述の実施の形態では、行動特定部32は、光ファイバケーブル20上のある1つの環境(例えば、気中又は地中のいずれか1つ)で検出した振動の振動データが有する固有パターンを用いて、監視対象の行動を特定していたが、これには限定されない。行動特定部32は、光ファイバケーブル20上の互いに異なる複数の環境(例えば、気中及び地中の両方)の各々で検出した振動の振動データが有する固有パターンを用いて、監視対象の行動を特定しても良い。
【0073】
例えば、行動特定部32は、気中のフェンス10のある地点で発生した振動の振動データが有する固有パターンを用いて、監視対象がフェンス10を切っていることを特定し、その地点の周辺の地中で発生した振動の振動データが有する固有パターンを用いて、監視対象が地面に立っていることを特定し、これらの結果を統合して、監視対象が地面に立ってフェンス10を切っているといった複合的な行動を特定しても良い。また、行動特定部32は、気中のフェンス10のある地点で発生した振動の振動データが有する固有パターンを用いて、監視対象がフェンス10を切っていることを特定し、その地点の周辺の地中で発生した振動の振動データが有する固有パターンを用いて、監視対象がフェンス10周辺をうろついていることを特定し、これらの結果を統合して、監視対象がフェンス10を切っているという行動と、監視対象がフェンス10周辺をうろついているという行動と、の両方の行動を特定しても良い。
【0074】
また、監視対象の複合的な行動でなく、1つの行動を特定する場合でも、1つの環境で発生した振動の振動データが有する固有パターンを用いるだけでは、行動の特定精度が低い場合がある。このような場合に、複数の環境の各々で発生した振動の振動データが有する固有パターンを用いて、監視対象の行動を特定することで、行動の特定精度の向上を図ることが可能になる。
【0075】
また、行動特定部32は、気中のフェンス10で発生した振動の振動データが有する固有パターンを用いて、監視対象の行動を特定し、フェンス10周辺の地中で発生した振動の振動データが有する固有パターンを用いて、監視対象の位置を特定しても良い。
【0076】
また、上述の実施の形態では、フェンス10及びその周辺で発生した振動の振動データが有する固有パターンを用いて、監視対象の位置を特定する例について説明したが、これには限定されない。
【0077】
フェンス10及びその周辺で発生した振動だけでなく、フェンス10及びその周辺で発生した音及び温度も、光ファイバによって伝送される戻り光に重畳される。そのため、光ファイバ検知部31は、受信された戻り光に基づいて、フェンス10及びその周辺で発生した音及び温度も検知することが可能である。
【0078】
例えば、光ファイバ検知部31は、受信された戻り光を分散型音響センサ(Distributed Acoustic Sensor)及び分散型温度センサ(Distributed Temperature Sensor)で検知することにより、フェンス10及びその周辺で発生した音及び温度を検知し、フェンス10及びその周辺で発生した音及び温度の音響データ及び温度データを取得することが可能である。その他にも、光ファイバ検知部31は、フェンス10及びその周辺で発生した歪み・応力を検知し、歪み・応力データを取得することも可能である。また、上述の音響データ、温度データ、及び歪み・応力データも、フェンス10及びその周辺にいる監視対象の行動に応じた固有パターンを有している。
【0079】
そのため、行動特定部32は、フェンス10及びその周辺に発生した振動の固有パターンだけでなく、音、温度、歪み・応力等の固有パターンを含む、複合的な固有パターンの動的変化を分析することにより、監視対象の行動を特定しても良い。これにより、さらに高精度に監視対象の行動を特定することが可能になると共に、さらに複雑な監視対象の行動を特定することが可能となる。
【0080】
また、上述の実施の形態では、光ファイバケーブル20が敷設される気中及び地中の組み合わせが、フェンス10及びフェンス10周辺の地面である例について説明したが、気中及び地中の組み合わせは、これに限定されない。気中及び地中の組み合わせは、例えば、壁及び床の組み合わせ等、他の組み合わせであっても良い。
【0081】
また、上述の実施の形態では、監視対象がフェンス10及びその周辺にいる人である例について説明したが、監視対象は、これに限定されない。監視対象は、フェンス10以外に、壁、床、パイプライン、電柱、土木構造物、道路、線路、及びこれらの周辺等にいる人でも良い。また、これらのフェンスや壁等は、商業施設、空港、国境、病院、街中、港、プラント、介護施設、社屋、保育所、自宅等に設置されるものであっても良い。また、監視対象は、人以外に、動物、自動車等であっても良い。
【0082】
上記の実施の形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)
光ファイバを含むケーブルと、
前記ケーブルに含まれる少なくとも1つの光ファイバから、前記ケーブル上の複数の位置の各々にて検出した振動が重畳された光信号を受信する受信部と、
前記光信号に基づいて、前記ケーブル上の前記振動の検出位置を特定し、前記振動の要因となった監視対象の行動を特定する行動特定部と、を備え、
前記行動特定部は、前記ケーブル上の前記振動の検出位置の環境に応じて、前記監視対象の行動を特定する際に用いる検知パターンを特定する、
光ファイバセンシングシステム。
(付記2)
前記行動特定部は、前記ケーブル上の前記振動の検出位置が気中であるか又は地中であるかに応じて、前記検知パターンを特定する、
付記1に記載の光ファイバセンシングシステム。
(付記3)
前記振動は、前記監視対象の行動に応じた固有パターンを有しており、
前記行動特定部は、前記振動が有する固有パターンからノイズパターンを除去し、ノイズパターンが除去された後の固有パターンと行動モデルパターンとのマッチングを行って、前記監視対象の行動を特定するものであり、
前記行動特定部は、前記ケーブル上の前記振動の検出位置の環境に応じて、前記検知パターンとしての前記行動モデルパターンを特定する、
付記1又は2に記載の光ファイバセンシングシステム。
(付記4)
前記振動は、前記監視対象の行動に応じた固有パターンを有しており、
前記行動特定部は、前記振動が有する固有パターンからノイズパターンを除去し、ノイズパターンが除去された後の固有パターンと行動モデルパターンとのマッチングを行って、前記監視対象の行動を特定するものであり、
前記行動特定部は、前記ケーブル上の前記振動の検出位置の環境に応じて、前記検知パターンとしての前記ノイズパターンを特定する、
付記1又は2に記載の光ファイバセンシングシステム。
(付記5)
前記行動特定部は、
前記ケーブル上の位置と、該位置の環境と、を対応付けたテーブルを保持しており、
前記ケーブル上の前記振動の検出位置を前記テーブルと照合することで、前記振動の検出位置の環境を特定する、
付記1から4のいずれか1項に記載の光ファイバセンシングシステム。
(付記6)
前記ケーブルとして、互いに異なる環境に敷設された複数の前記ケーブルを備え、
前記受信部として、複数の前記ケーブルの各々に対応して設けられ、対応する前記ケーブルから前記光信号を受信する複数の前記受信部を備え、
前記行動特定部は、前記振動が重畳された光信号がどの前記受信部で受信されたかに応じて、該振動の検出位置の環境を特定する、
付記1から4のいずれか1項に記載の光ファイバセンシングシステム。
(付記7)
前記振動は、前記監視対象の行動に応じた固有パターンを有しており、
前記行動特定部は、
前記ケーブル上の互いに環境が異なる複数の位置の各々にて検出した振動が有する、前記監視対象の行動に応じた固有パターンを用いて、前記監視対象の行動を特定する、
付記1,2,5,6のいずれか1項に記載の光ファイバセンシングシステム。
(付記8)
前記監視対象を撮影可能なカメラをさらに備え、
前記行動特定部は、
前記カメラが撮影したカメラ画像を用いて、前記監視対象の行動を特定し、
前記検知パターンを用いて特定された前記監視対象の行動と、前記カメラ画像を用いて特定された前記監視対象の行動と、の整合性を判断する、
付記1から7のいずれか1項に記載の光ファイバセンシングシステム。
(付記9)
前記監視対象を撮影可能なカメラをさらに備え、
前記行動特定部は、
前記検知パターンを用いて特定された前記監視対象の行動に基づいて、前記カメラを前記監視対象に向ける、
付記1から7のいずれか1項に記載の光ファイバセンシングシステム。
(付記10)
ケーブルに含まれる少なくとも1つの光ファイバから、前記ケーブル上の複数の位置の各々にて検出した振動が重畳された光信号を受信する受信部と、
前記光信号に基づいて、前記ケーブル上の前記振動の検出位置を特定し、前記振動の要因となった監視対象の行動を特定する行動特定部と、を備え、
前記行動特定部は、前記ケーブル上の前記振動の検出位置の環境に応じて、前記監視対象の行動を特定する際に用いる検知パターンを特定する、
行動特定装置。
(付記11)
前記行動特定部は、前記ケーブル上の前記振動の検出位置が気中であるか又は地中であるかに応じて、前記検知パターンを特定する、
付記10に記載の行動特定装置。
(付記12)
前記振動は、前記監視対象の行動に応じた固有パターンを有しており、
前記行動特定部は、前記振動が有する固有パターンからノイズパターンを除去し、ノイズパターンが除去された後の固有パターンと行動モデルパターンとのマッチングを行って、前記監視対象の行動を特定するものであり、
前記行動特定部は、前記ケーブル上の前記振動の検出位置の環境に応じて、前記検知パターンとしての前記行動モデルパターンを特定する、
付記10又は11に記載の行動特定装置。
(付記13)
前記振動は、前記監視対象の行動に応じた固有パターンを有しており、
前記行動特定部は、前記振動が有する固有パターンからノイズパターンを除去し、ノイズパターンが除去された後の固有パターンと行動モデルパターンとのマッチングを行って、前記監視対象の行動を特定するものであり、
前記行動特定部は、前記ケーブル上の前記振動の検出位置の環境に応じて、前記検知パターンとしての前記ノイズパターンを特定する、
付記10又は11に記載の行動特定装置。
(付記14)
前記行動特定部は、
前記ケーブル上の位置と、該位置の環境と、を対応付けたテーブルを保持しており、
前記ケーブル上の前記振動の検出位置を前記テーブルと照合することで、前記振動の検出位置の環境を特定する、
付記10から13のいずれか1項に記載の行動特定装置。
(付記15)
前記ケーブルとして、互いに異なる環境に敷設された複数の前記ケーブルが設けられ、
前記行動特定装置は、複数の前記ケーブルの各々に対応して設けられ、対応する前記ケーブルから前記光信号を受信する複数の前記受信部を備え、
前記行動特定部は、前記振動が重畳された光信号がどの前記受信部で受信されたかに応じて、該振動の検出位置の環境を特定する、
付記10から13のいずれか1項に記載の行動特定装置。
(付記16)
前記振動は、前記監視対象の行動に応じた固有パターンを有しており、
前記行動特定部は、
前記ケーブル上の互いに環境が異なる複数の位置の各々にて検出した振動が有する、前記監視対象の行動に応じた固有パターンを用いて、前記監視対象の行動を特定する、
付記10,11,14,15のいずれか1項に記載の行動特定装置。
(付記17)
前記行動特定部は、
前記監視対象を撮影可能なカメラが撮影したカメラ画像を用いて、前記監視対象の行動を特定し、
前記検知パターンを用いて特定された前記監視対象の行動と、前記カメラ画像を用いて特定された前記監視対象の行動と、の整合性を判断する、
付記10から16のいずれか1項に記載の行動特定装置。
(付記18)
前記行動特定部は、
前記検知パターンを用いて特定された前記監視対象の行動に基づいて、前記監視対象を撮影可能なカメラを前記監視対象に向ける、
付記10から16のいずれか1項に記載の行動特定装置。
(付記19)
行動特定装置による行動特定方法であって、
ケーブルに含まれる少なくとも1つの光ファイバから、前記ケーブル上の複数の位置の各々にて検出した振動が重畳された光信号を受信する受信ステップと、
前記光信号に基づいて、前記ケーブル上の前記振動の検出位置を特定し、前記振動の要因となった監視対象の行動を特定する行動特定ステップと、を含み、
前記行動特定ステップでは、前記ケーブル上の前記振動の検出位置の環境に応じて、前記監視対象の行動を特定する際に用いる検知パターンを特定する、
行動特定方法。
(付記20)
コンピュータに、
ケーブルに含まれる少なくとも1つの光ファイバから、前記ケーブル上の複数の位置の各々にて検出した振動が重畳された光信号を受信する受信手順と、
前記光信号に基づいて、前記ケーブル上の前記振動の検出位置を特定し、前記振動の要因となった監視対象の行動を特定する行動特定手順と、を実行させるためのプログラムであって、
前記行動特定手順では、前記ケーブル上の前記振動の検出位置の環境に応じて、前記監視対象の行動を特定する際に用いる検知パターンを特定する、
プログラムが格納された非一時的なコンピュータ可読媒体。
【符号の説明】
【0083】
10 フェンス
20 光ファイバケーブル
30 行動特定装置
31 光ファイバ検知部
32 行動特定部
40 カメラ
60 コンピュータ
601 プロセッサ
602 メモリ
603 ストレージ
604 入出力インタフェース
6041 表示装置
6042 入力装置
605 通信インタフェース