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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】把持方法
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/00 20060101AFI20240618BHJP
   B23P 19/04 20060101ALN20240618BHJP
【FI】
B25J15/00 A
B25J15/00 F
B23P19/04 E
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2023053447
(22)【出願日】2023-03-29
(62)【分割の表示】P 2019102594の分割
【原出願日】2019-05-31
(65)【公開番号】P2023080131
(43)【公開日】2023-06-08
【審査請求日】2023-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【弁理士】
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】山川 智彦
【審査官】國武 史帆
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-179448(JP,A)
【文献】国際公開第2020/066370(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
B23P 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
転動体と、前記転動体を収容する枠体と、を有する把持機構を用いて、部品を把持する把持方法であって、
前記部品は、部品本体と、前記部品本体から突出した被把持部と、を備え、
前記被把持部は、第1部分と、前記第1部分に連結された第2部分と、を有し、
前記第1部分は、一定の厚みを有する板状体の主面の一部を含み、
前記第2部分は、前記第1部分との連結箇所から離れるにつれて増加する厚みを有し、
前記転動体の外面と前記枠体の内面との間に前記部品の前記第1部分が把持されるように、前記把持機構を前記部品に対して相対移動するステップと、
前記部品の把持が解除される前に、前記部品の前記第2部分によって前記転動体が持ち上げられるように、前記把持機構を前記部品に対して更に相対移動するステップとを備えた、把持方法
【請求項2】
前記部品の前記第2部分は、前記主面から突出する少なくとも1つのリブから構成され、
前記リブは、前記主面に対して傾斜した傾斜面として形成された端面を有する、請求項1に記載の把持方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、把持方法及び部品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の組立装置は、搬送を目的として部品を把持するチャック機構を備える。チャック機構は、電動の把持機構である。このほか、エアー吸引又は電動吸引を用いた把持機構も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平7-241733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の把持機構は、空気圧又は電気エネルギーのような動力を利用していたので、コスト高であり、また故障しやすいものであった。
【0005】
そこで、本発明は上記事情を考慮し、低コストで故障しにくい把持機構による把持方法と、把持の対象物として好適な部品とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の把持方法は、転動体と、前記転動体を収容する枠体とを有する把持機構を用いた対象物の把持方法であって、第1段階と、第2段階とを備える。前記第1段階では、前記転動体の外面と前記枠体の内面との間に前記対象物の第1部分が把持されるように、前記把持機構が前記対象物に対して相対移動する。前記第2段階では、前記対象物の把持が解除される前に、前記対象物の第2部分によって前記転動体が持ち上げられるように、前記把持機構が前記対象物に対して更に相対移動する。
【0007】
本発明の部品は、部品本体と、前記部品本体から突出した被把持部とを備える。前記被把持部は、第1部分と、前記第1部分に連結された第2部分とを有する。前記第1部分は、一定の厚みを有する板状体の主面の一部を含む。前記第2部分は、前記第1部分との連結箇所から離れるにつれて増加する厚みを有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、低コストで故障しにくい把持機構による把持方法と、把持の対象物として好適な部品とを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る把持方法が適用される組立装置の一例を示す図である。
図2】把持機構の一例を示す正面図である。
図3図2のIII-III断面図である。
図4】実施形態に係る部品の一例を示す斜視図である。
図5図4のV-V断面図である。
図6】把持方法の第1段階を示す断面図である。
図7】把持方法の第2段階を示す断面図である。
図8】把持機構の変形例を示す正面図である。
図9】把持コロの重量調整の一例を示す断面図である。
図10】把持コロの変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図1図7を参照しながら説明する。図1及び図2において、便宜上、左から右への向きをX軸の正の向き、奥から手前への向きをY軸の正の向き、上から下への向きをZ軸の正の向きとする。なお、図中、同一又は相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。
【0011】
まず、図1を参照して、実施形態に係る把持方法が適用される組立装置100について説明する。図1は、組立装置100の一例を示す図である。
【0012】
図1に示されるように、組立装置100は、第1部品4を第2部品5に嵌合させて組み付ける装置である。組立装置100は、ロボット1と、位置ずれ修正装置2と、把持機構3とを備える。
【0013】
把持機構3は、第1部品4を把持する。第2部品5は、位置決め機構10の上で位置決めされている。第1部品4は、「部品」の一例に相当する。
【0014】
位置ずれ修正装置2は、第2部品5に対して、把持機構3が把持した第1部品4の位置ずれを修正する。具体的に説明すると、位置ずれ修正装置2は、第2部品5への第1部品4の嵌合の際に第1部品4に働く力の向きを検出し、その力の向きに応じて第1部品4の位置ずれを修正する。
【0015】
ロボット1は、第1部品4に対して把持機構3を相対移動させ、また第2部品5に対して把持機構3を相対移動させる。具体的に説明すると、ロボット1は、第1部品4の収納場所まで把持機構3を移動させ、把持機構3に第1部品4を把持させた後、把持機構3とともに第1部品4を第2部品5の直上まで移動させる。この後、ロボット1は、把持機構3とともに第1部品4をZ軸の正の向きに移動させることにより、第1部品4を第2部品5に嵌合させる。嵌合が達成された後、ロボット1は、第1部品4に対する把持機構3の把持を解除させ、把持機構3をZ軸の負の向きに移動させる。
【0016】
次に、図2及び図3を参照して、把持機構3について説明する。図2は、把持機構3の一例を示す正面図である。図3は、図2のIII-III断面図である。
【0017】
図2に示されるように、把持機構3は、ホルダー31と、把持コロ32とを備える。ホルダー31の長手方向と、把持コロ32の長手方向とは、いずれもX軸の方向である。ホルダー31は、「枠体」の一例に相当する。把持コロ32は、「転動体」の一例に相当する。
【0018】
図3に示されるように、把持コロ32は、円柱状の芯部321と、芯部321の周面を覆う被覆部322とを有する。例えば、芯部321は鉄のような金属で、被覆部322はポリアセタール樹脂のような弾性体でそれぞれ構成される。芯部321の密度は、被覆部322の密度よりも大きい。被覆部322は、圧縮変形が可能である。被覆部322の周面の摩擦係数は、芯部321の周面の摩擦係数よりも大きい。
【0019】
図3に示されるように、ホルダー31は、把持コロ32を収容する枠体であって、背板311と、天板312と、上前板313と、下前板314と、左右の側板316とを有する。例えば、ホルダー31は、アルミニウムのような軽金属で構成される。
【0020】
背板311は、ZX平面に沿って延びる矩形の板である。天板312は、背板311の上縁を始端としてXY平面に沿って延びる矩形の板である。上前板313は、天板312の前縁を始端として、背板311から離れる方向へ斜め下方に向かって延びる矩形の板である。下前板314は、上前板313の下縁を始端として、背板311に近づく方向へ斜め下方に向かって延びる矩形の板である。
【0021】
背板311と下前板314との間には、開口315が形成されている。開口315のY方向の幅は、把持コロ32の直径よりも小さい。したがって、開口315を通して把持コロ32が落下することはない。背板311及び下前板314は、把持コロ32の重量を支える。開口315は、把持対象物の挿入を受けることができる。
【0022】
背板311、天板312、上前板313及び下前板314は、ホルダー31の左右側面にそれぞれ略五角形の開口を形成する。左右の側板316は、これらの開口を塞ぐように設置されている。ただし、少なくとも一方の側板316は、把持解除の際に把持コロ32を通さずに把持対象物を通すための切欠部317を、背板311に近い位置に有する。
【0023】
例えば側板316を開閉自在に構成することにより、把持コロ32の出し入れが可能になる。
【0024】
次に、図4及び図5を参照して、実施形態に係る第1部品4について説明する。図4は、第1部品4の一例を示す斜視図である。図5は、図4のV-V断面図である。
【0025】
図4に示されるように、第1部品4は、部品本体41と、被把持部42とを備える。部品本体41は、略直方体の形状を有する。被把持部42は、把持機構3によって把持されやすいように、部品本体41から突出する。被把持部42は矩形の板状に形成され、被把持部42の端面が部品本体41の主面の1つに接続されている。
【0026】
被把持部42は、第1主面421と、第2主面422とを有する。第1主面421及び第2主面422は、ZX平面に沿って延びる。第1主面421はY軸の負側に、第2主面422はY軸の正側にそれぞれ位置する。
【0027】
被把持部42は、2つのリブ423,423を更に有する。2つのリブ423,423は、X軸方向に互いに距離を隔てて設けられている。各リブ423は、第2主面422からY軸の正の向きへ突出する。各リブ423は、第2主面422に対して傾斜した傾斜面424として形成された端面を有する。
【0028】
第2部品5は、略直方体の形状を有する部品本体51に、第1部品4の部品本体41を受け入れる凹部52が形成されたものである。
【0029】
図5に示されるように、被把持部42は、第1部分L1と、第2部分L2とを有する。第1部分L1は、被把持部42のZ軸の負側の端部を含む。第2部分L2は、第1部分L1に連結されている。第1部分L1は、一定の厚みt1を有する板状体の主面の一部、すなわち第2主面422の一部を含む。第2部分L2は、第1部分L1との連結箇所から離れるにつれて増加する厚みt2を有する。第2部分L2は、リブ423に形成された傾斜面424を含む。
【0030】
次に、図6及び図7を参照して、実施形態に係る把持方法について説明する。図6は、把持方法の第1段階を示す断面図である。図7は、把持方法の第2段階を示す断面図である。
【0031】
図6に示されるように、把持機構3は、第1段階において、把持コロ32に働く重力の作用により、把持コロ32の外面とホルダー31の内面との間に第1部品4を把持する。具体的には、被覆部322の外面と背板311の内面との間に、適度の摩擦力で被把持部42の第1部分L1を構成する第2主面422が把持される。被覆部322が圧縮変形することにより、被覆部322が非弾性体で構成された場合に比べて被把持部42との接触面積が大きくなり、大きい把持力を実現している。
【0032】
図7に示されるように、把持機構3は、第1部品4の把持が解除される前に、第1部品4に対してZ軸の正の向きに相対移動する。把持方法は、第1段階から第2段階へ移行する。第2段階において、把持コロ32は、被把持部42の第2部分L2を構成するリブ423の傾斜面424によって持ち上げられる。その結果、被覆部322の圧縮変形による大きい把持力が緩和される。
【0033】
以下、図1図7を参照して、組立装置100の動作を説明する。
【0034】
第1工程において、ロボット1は、図1に示されるように、第1部品4の収納場所まで把持機構3を移動させる。そして、ロボット1は、被把持部42と背板311とが互いに平行になるように把持機構3の姿勢を調整したうえ、第1部品4に対して、把持機構3をZ軸の正の向きに相対移動させる。被把持部42は、開口315を通してホルダー31の中へ入り、把持コロ32を押し退けながらホルダー31の中を上昇する。その後、傾斜面424が把持コロ32を押し上げる前に、把持機構3の移動が停止する。その結果、図6に示される第1段階の状態が実現する。
【0035】
第2工程において、ロボット1は、把持機構3をZ軸の負の向きに移動させる。ロボット1は、把持機構3を更に移動させることにより、図1に示されるように、第2部品5の直上まで第1部品4を搬送する。被把持部42は、被覆部322の外面と背板311の内面との間に把持されたままである。
【0036】
第3工程において、ロボット1は、把持機構3をZ軸の正の向きに移動させる。その結果、第1部品4が第2部品5に嵌合される。少なくとも嵌合の直前までは、図6に示される第1段階の状態が維持される。
【0037】
第4工程において、ロボット1は、把持機構3をZ軸の正の向きに更に移動させる。傾斜面424が把持コロ32を押し上げることにより、図7に示される第2段階の状態が実現する。第2段階は、把持解除の準備段階である。
【0038】
第5工程において、ロボット1は、把持機構3をX軸の正の向きに移動させる。被把持部42は、被覆部322の外面と背板311の内面との間を擦り抜け、更に切欠部317を通過する。その結果、把持機構3による第1部品4の把持が解除される。第1部品4は、第2部品5に嵌合されたままである。
【0039】
第6工程において、ロボット1は、把持機構3をZ軸の負の向きに移動させつつ、次の作業に備えて把持機構3を元の位置に戻す。
【0040】
次に、図8を参照して、把持機構3の変形例について説明する。図8は、把持機構3の変形例を示す正面図である。
【0041】
図8の把持機構3は、ホルダー31に収容された把持コロ32aの数が複数である点で、図2の把持機構3と異なる。複数個の把持コロ32aの重量を互いに異ならせれば、複数の把持力を使い分けることができる。また、複数個の把持コロ32aにおいて、周面の摩擦係数を互いに異ならせてもよい。
【0042】
次に、図9を参照して、把持コロ32の重量調整について説明する。図9は、把持コロ32の重量調整の一例を示す断面図である。
【0043】
図9の把持コロ32は、芯部321の直径が縮小された点で、図3中の把持コロ32と異なる。芯部321及び被覆部322の各々の材料、並びに把持コロ32の全体の直径が同じであれば、金属製の芯部321の直径が小さいほど、把持コロ32の重量が小さくなる。逆に、金属製の芯部321の直径が大きいほど、把持コロ32の重量が大きくなる。芯部321及び/又は被覆部322の材料を変更することによって把持コロ32の重量調整をすることも可能である。
【0044】
次に、図10を参照して、把持コロ32の変形例について説明する。図10は、把持コロ32の変形例を示す断面図である。
【0045】
図10の把持コロ32は、内輪323と、外輪324と、クッションリブ325とを有する点で、図3及び図9中の把持コロ32と異なる。内輪323は小径の円筒状であり、外輪324は大径の円筒状である。クッションリブ325は、内輪323と外輪324との間を3箇所で接続するように設置されている。クッションリブ325が設置された3箇所は、略120度の角度だけ互いに隔てられている。内輪323と、外輪324と、クッションリブ325とは、いずれもポリアセタール樹脂のような弾性体で構成される。図10の把持コロ32は、全体的に圧縮変形が可能であり、大きい把持力を実現できる。
【0046】
実施形態によれば、ホルダー31及び把持コロ32(又は32a)のみで動力不要の把持機構3が構成される。その結果、低コストで故障しにくい把持機構3が実現する。しかも、把持対象である第1部品4に傾斜面424を有するリブ423が設けられたので、把持の解除が容易である。
【0047】
上記した各実施形態の説明は、本発明における好適な実施形態を説明しているため、技術的に好ましい種々の限定を付している場合もあるが、本発明の技術範囲は、特に本発明を限定する記載がない限り、これらの態様に限定されるものではない。すなわち、上記実施形態における構成要素は適宜、既存の構成要素等との置き換えが可能であり、かつ、他の既存の構成要素との組合せを含む様々なバリエーションが可能である。上記実施形態の記載をもって、特許請求の範囲に記載された発明の内容を限定するものではない。
【0048】
例えば、実施形態では、図4に示されたように、リブ423の数が2であったが、これに限られない。リブ423の数は、1又は3以上であってもよい。また、被把持部42にリブ構造が設けられず、被把持部42がX方向の全幅に渡って連続する傾斜面424を有してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、把持機構の分野に利用可能である。
【符号の説明】
【0050】
3 把持機構
4 第1部品(部品)
31 ホルダー(枠体)
32 把持コロ(転動体)
32a 把持コロ(転動体)
41 部品本体
42 被把持部
421 第1主面
422 第2主面(主面)
423 リブ
424 傾斜面(端面)
L1 第1部分
L2 第2部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10