(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】リフレクトアレイ
(51)【国際特許分類】
H01Q 15/14 20060101AFI20240618BHJP
【FI】
H01Q15/14 Z
(21)【出願番号】P 2023186257
(22)【出願日】2023-10-31
(62)【分割の表示】P 2023032778の分割
【原出願日】2023-03-03
【審査請求日】2023-10-31
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西山 碩芳
(72)【発明者】
【氏名】今井 順平
(72)【発明者】
【氏名】近藤 慎平
(72)【発明者】
【氏名】西村 大輝
【審査官】白井 亮
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-509687(JP,A)
【文献】国際公開第2022/092029(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グランド層と、誘電体層と、複数の素子パターンを有する素子パターン層を含むリフレクトアレイであって、
前記グランド層は無機酸化物材料または金属材料によって形成され、前記グランド層の厚さは18μm以下であり、
所定の動作周波数において電磁波の強度のピークが、内径6インチ、肉厚8mmのコアに巻きつけ、1分間保持した前後において、反射波の強度のピークの変化率が±3%以内であることを特徴とするリフレクトアレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定周波数の電磁波を反射することができるリフレクトアレイに関する。
【背景技術】
【0002】
第5世代移動通信システム(5G)では、既存のLTE(4G)よりも高周波であるsub6帯(3.6GHz~)およびミリ波帯の電磁波(24GHz~)が使用される。ミリ波は、伝送情報容量が大きい反面、電磁波の直進性が高く、到達距離が短いという特徴がある。そのため、ミリ波帯の電磁波が使用される場合には、建造物等による遮蔽により電磁波が急激に減衰し、通信品質を確保できない「不感地帯」が発生しやすいという問題がある。基地局や中継機を増設することでこの問題は解決できるが、それにはコストや設置する場所の確保など、様々なハードルが存在する。
【0003】
リフレクトアレイは、その特殊な構造によって、特定の周波数の電磁波を非対称に反射させることができる反射板である。電磁波を鏡のように正反射する金属反射板とは異なり、反射する周波数帯や、入射方向と反射方向、あるいは反射波の広がり方を、自由に設計することが可能となる。このような特性を利用することによって、不感地帯に対して、基地局を増設することなく、電磁波状況の改善に活用されることが期待される。
【0004】
上記背景を踏まえ、リフレクトアレイの開発が盛んにおこなわれている。
特許文献1においては、入射波を所望方向に反射するリフレクトアレイは、所定の軸に垂直な表面を有する基板と、基板に設けられた複数の素子とを含み、複数の素子の内の特定の素子は、複数の反射位相の内の特定の反射位相で前記入射波を反射し、複数の素子の各々は、パッチ及び地板を少なくとも有する素子構造を有し、第1の隣接する素子の素子間隔は第2の隣接する素子の素子間隔とは異なるが、第1の隣接する素子のパッチ間の隙間の長さは第2の隣接する素子のパッチ間の隙間の長さに等しい、ことが開示される。
特許文献2においては、中継装置は、金属製の位相シフト要素が交互に置かれた周期配列を備え、配列は、少なくとも1つの軸内において周期的であり、誘電体基材の第1の表面上に形成されており、誘電体基材の反対側の表面が、その上に形成された接地面を有し、それぞれの位相シフト要素は、マイクロ波周波数範囲において、0°~360°の位相シフトを提供する。この中継装置は、マイクロ波ネットワーク内で利用することができる、ことが開示される。
特許文献3においては、メタサーフェス反射板が、誘電体基板、誘電体基板の底面に設けられ、全ての向きの偏波に対しメタサーフェス反射板を透過させない金属グラウンド層、および、アーム長の異なる2種以上の十字型の金属共振器を有する複数のスーパーセルを備える、ことが開示される。金属共振器を有するスーパーセルは、誘電体基板の上面に形成され、入射波の垂直偏波および水平偏波を反射させ、所定周波数での電磁波を要求される位相で異常波反射させる回折格子の周期で配列されている、ことが開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5410558号公報
【文献】特許第7026124号公報
【文献】特開2021-048465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
リフレクトアレイの薄膜化および軽量化は、製造上や施工上のメリットが多くあるものの、先行技術のいずれにおいても十分な検討はなされていない。
そこで、本発明は、薄膜化および軽量化を実現するリフレクトアレイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、代表的な本発明のリフレクトアレイの一つは、グランド層と、誘電体層と、複数の素子パターンを有する素子パターン層を含むリフレクトアレイであって、前記グランド層は無機酸化物材料または金属材料によって形成され、前記グランド層の厚さは18μm以下であり、前記リフレクトアレイを、内径6インチ、肉厚8mmのコアに巻きつけ、1分間保持し、目視にて外観にシワや折れ等の外観異常がないことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、薄膜化および軽量化を実現するリフレクトアレイを提供することができる。
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施をするための形態における説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係るリフレクトアレイの断面図である。
【
図2】
図2は、リフレクトアレイの一部を模式的に示す図である。
【
図3】
図3は、十字型の素子パターンを示す図である。
【
図4】
図4は、反射制御領域に関してシミュレーションをした場合の結果の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態の変形例に係るリフレクトアレイの断面図である。
【
図6】
図6は、第2実施形態に係るリフレクトアレイの断面図である。
【
図7】
図7は、第2実施形態に係るリフレクトアレイの断面図である。
【
図8】
図8は、第3実施形態に係るリフレクトアレイの断面図である。
【
図9】
図9は、第3実施形態に係るリフレクトアレイの断面図である。
【
図10】
図10は、第3実施形態に係るリフレクトアレイの断面図である。
【
図11】
図11は、第3実施形態に係るリフレクトアレイの断面図である。
【
図12】
図12は、第3実施形態に係るリフレクトアレイの断面図である。
【
図13】
図13は、第3実施形態に係るリフレクトアレイの断面図である。
【
図14】
図14は、第3実施形態に係るリフレクトアレイの断面図である。
【
図15】
図15は、シミュレーションによって反射制御領域が所望の反射位相特性を得られるかどうかの評価結果を示す図である。
【
図16】
図16は、リフレクトアレイを作成した場合の評価結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付して示している。
また、同一あるいは同様の機能を有する構成要素が複数ある場合には、同一の符号に異なる添字を付して説明する場合がある。また、これらの複数の構成要素を区別する必要がない場合には、添字を省略して説明する場合がある。
【0011】
なお、本開示において、「面」とは、板状部材の面のみならず、板状部材に含まれる層について、板状部材の面と略平行な層の界面も指すことがある。また、「上面」、「下面」とは、板状部材や板状部材に含まれる層を図示した場合の、図面上の上方または下方に示される面を意味する。なお、「上面」、「下面」については、「第1面」、「第2面」と称することもある。
【0012】
また、z軸方向の距離を「厚み」と称することがある。
また、「断面図」は、物の断面の一部または全部を示す場合がある。
また、「所望の反射位相特性を得る」とは、目的とする複数の反射位相を生じさせる特性があることをいう。たとえば、あるパラメータを所定の範囲で変化させた場合に反射位相の上限値と下限値の差を所望の位相差とすることができるとき、または、あるパラメータを所定の範囲内で変化させた場合に目的とする複数の反射位相を得ることができるとき、「所望の反射位相特性を得る」ことができるという。
【0013】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係るリフレクトアレイ1の断面図である。リフレクトアレイ1は、グランド層11と、誘電体層12と、素子パターン層13、を含む。素子パターン層13は、複数の素子パターン14を有する層である。なお、後述するように、素子パターン層13の厚みtpは、例えば、10nm以上18μm以下である。
【0014】
(グランド層)
グランド層11は、リフレクトアレイ1に到達する電磁波を反射させるために設けられる。また、後述する誘電体層12を支持および保護するために用いられる。グランド層11の材料として、無機酸化物材料、金属材料や導電性を有する有機材料など、導電性を有する材料が用いられる。
【0015】
例えば、無機酸化物材料および金属材料としては、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化亜鉛アルミニウム(AZO)、酸化ガリウム亜鉛(GZO)、酸化スズアンチモン、Ag、Al、Au、Pt、Pd、Cu、Co、Cr、In、Ag-Cu、Cu-AuおよびNiなどが用いられる。また、これらの材料のうちの少なくとも1つを含むナノ粒子、またはナノワイヤーを用いてもよい。導電性を有する有機材料としては、ポリチオフェン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリアニリン誘導体、ポリピロール誘導体、カーボンナノチューブ、グラフェン等が挙げられる。特に材料コスト、導電性、製膜性の観点から、CuやAlが好ましい。また、電磁波を反射させるためにはグランド層11の表面抵抗値が100Ω/□以下であることが望ましく、この条件を満たすことができれば無機酸化物材料、例えばITO、有機材料、例えばポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)とポリスチレンスルホン酸(PSS)との混合物(PEDOT/PSS)などを用いることもできる。無機酸化物材料や有機材料を用いることによって、透明性を有するリフレクトアレイを作製することもできる。
【0016】
上記材料を用いる形態としては連続膜、メッシュ状、パンチング形状、周期性構造が挙げられる。
【0017】
ここで、メッシュとは、導体の平面に網目状の透孔(開口)が空いた状態をいう。導体がメッシュ状に形成される場合、メッシュの目は方形であってもよく、菱形であってもよい。メッシュの目を方形に形成する場合、メッシュの目は正方形であることが好ましい。メッシュの目が正方形であれば、意匠性が良い。また、自己組織化法によるランダム形状でもよい。ランダム形状にすることでモアレを防ぐことができる。金属をメッシュ状に加工する場合、金属板のパンチング加工、金属板のエッチング等の方法を採用することが可能である。
【0018】
グランド層がメッシュ状である場合や、透明導電材料を使用した場合、リフレクトアレイが可視光透過性を示し、設置後の景観を保つことを可能にする。
【0019】
グランド層11をメッシュ状にする場合、メッシュの線幅は、5μm以上30μm以下が好ましく、6μm以上15μm以下がより好ましい。メッシュの線間隔は、50μm以上500μm以下が好ましく、100μm以上300μm以下がより好ましい。また、メッシュの線間隔は、動作周波数(以下、「設計周波数」ともいう。)における波長をλ0(mm)としたとき、0.5×λ0以下であることが好ましく、0.1×λ0以下であることがより好ましく、0.01×λ0以下であることがさらに好ましい。メッシュの線間隔が0.5×λ0以下であれば、グランド層11としての性能を発揮させることができる。また、メッシュの線間隔は、0.001×λ0以上であってもよい。
【0020】
グランド層11に無機酸化物材料または金属材料を用いる場合、グランド層11の厚さは18μm以下とすることが好ましく、50nm以上2μm以下の範囲とすることがより好ましい。膜厚が50nm以上であると、ピンホールの無い、均一な膜を形成しやすく、グランド層11としての機能をより十分に果たすことができる。一方、膜厚が2μm以下であると、十分なフレキシビリティを保持させることができ、折り曲げ、引っ張りなどの外的要因により、グランド層11に亀裂が生じることを抑制することができる。グランド層11を1μm以下とすることで可撓性が向上し、曲面等への貼りつけがしやすくなる。また、軽量化も可能となる。
【0021】
グランド層11の形成方法として、金属材料を用いる場合であれば、スパッタ法や蒸着法などのドライコーティング、金属材料をインキ化することによりグラビアコーティング、ダイコーティングなどのウェットコーティング、めっき処理などの表面処理、等から選択することが可能である。または、グランド層11として、金属板を圧延したものを用いてもよい。無機酸化物材料を用いる場合であれば、グランド層11の形成方法として、ドライコーティングを選択することができる。有機材料を用いる場合であれば、グランド層11の形成方法として、ウェットコーティングを選択することができる。また、塗装やスプレー法で形成してもよい。
【0022】
グランド層の形態がめっき処理や蒸着法等で形成された薄膜の場合、リフレクトアレイの可撓性を向上させることが可能であり、それにより曲面での使用やロールtoロールでの生産プロセスを実施することが可能となる。
【0023】
また、電磁波の反射効率を高めるため、グランド層による損失を低減させることが挙げられる。そのため、グランド層の表面粗さは小さいほうが好ましい。
【0024】
グランド層の形態が周期性構造である場合、特定の周波数を選択的に反射または透過させる機能が発現し得る。例えば、パッチ状の導電パターンが周期的に配置された構造をグランド層として使用した場合、特定の周波数のみを反射させることが可能となるため、動作周波数以外の周波数を透過させる機能を付与することができる。また、導電材料が存在しない箇所をホールとして周期的に設けた構造を使用した場合、動作周波数を非対称反射させつつ、特定の周波数のみを透過させるリフレクトアレイを設計することが可能である。
【0025】
本開示においては、JIS-K-7194に準拠し、表面抵抗測定を行う。表面抵抗測定方法としては、四端子法、二端子法、四探針法、誘電体法、渦電流法など、測定法を適宜選択しうる。グランド層11の表面抵抗値は、例えばロレスターGP MCP-T610(商品名、株式会社三菱化学アナリテック製)を用いて測定することができる。
【0026】
(誘電体層)
図1において、誘電体層12の厚みをtとする。誘電体層12としては、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、塩化ビニル、ウレタン、アクリル、アクリルウレタン、ポリオレフイン、ポリエチレン、ポリプロピレン、シリコ一ン、ポリエチレンテレフタレ一卜、ポリエステル、ポリスチレン、ポリイミド、ポリカーボネー卜、ポリアミド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリテトラフルオロエチレン、シクロオレフィンポリマー、エポキシ等の合成樹脂や、ポリイソプレンゴム、ポリスチレンブタジエンゴム、ポリブタジエンゴム、クロロプレンゴ厶、アクリロニトリル-ブタジエンゴムブタジエンゴム、ブチルゴム、アクリルゴム、エチレンプロピレンゴムおよびシリコ一ンゴム等の合成ゴム材料を樹脂成分として用いることができる。また、これら樹脂成分を、ガラス繊維や合成繊維、不織布、紙に含浸させたものを用いてもよい。とりわけ、安価で汎用性に優れている点から、ポリエチレンテレフタレ一卜(PET)を用いることが好ましい。なお、これら樹脂材料および合成ゴム材料は、単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。また、誘電体層12は、単層あるいは複層とすることもできる。また、誘電体層12は、上記材料を発泡化した発泡体を使用してもよい。また、発泡体としては、柔軟性の高い発泡体が好ましく用いられる。
【0027】
誘電体層12の比誘電率は、1以上20以下の範囲にあることが好ましく、1以上10以下の範囲にあることがより好ましく、2以上4以下の範囲にあることがさらに好ましい。比誘電率が上記範囲内であると、リフレクトアレイ1において所望の反射位相特性を得やすい傾向にある。また、誘電正接は0.00005以上0.01以下の範囲にあることが好ましく、0.00005以上0.001以下の範囲にあることが好ましい。上記範囲内であると、誘電損失の少ないリフレクトアレイ1を作製できる。
【0028】
誘電体層12は、例えば、ダイコーティングやコンマコーティング、グラビアコーティングなどのウェットコーティング、Tダイ法やインフレーション法などの溶融押出法、カレンダー製膜法、溶液流延法、熱プレス法などを用いて形成することができる。また、複数の樹脂を多層に押し出してフィルムを製膜する共押出法を用いてもよい。
【0029】
誘電体層12の厚みtは、設計周波数により適宜選択される。設計周波数を28GHzとした場合、40μm以上250μm以下であることが好ましく、50μm以上200μm以下であることがより好ましい。薄すぎると反射位相の確保が困難となり、リフレクトアレイ1の設計が難しくなる。一方で、厚すぎても、反射位相の確保が困難となる、可撓性がなくなる、リフレクトアレイ1の総厚が厚くなるなどの傾向があり、省スペース化が難しくなる。このため、誘電体層12の厚みtは、250μm以下が好ましい。設計周波数を60GHzとした場合、誘電体層12の厚みtは10μm以上250μm以下であることが好ましい。設計周波数が100GHz以上になる場合、誘電体層12の厚みtを数μm以上100μm以下程度にすると、リフレクトアレイ1を設計しやすい。誘電体層12の厚みtを250μm以下とした場合でも後述する素子パターン14の素子長lとの関係によっては十分な反射位相を確保できない場合がある。後述する式(6)および式(7)の素子長lと誘電体層12の厚みtの間の関係式および誘電体層12の厚みtの関係式の両方を満たすことによって、リフレクトアレイ1の作製が可能となる。誘電体層12の厚みtが1μm以下になると、上記の形成方法を用いた場合に、誘電体層12を安定して形成しにくい傾向にある。
【0030】
上記の材料のほかに、誘電体層12は、金属化合物を樹脂成分に含めたもので構成してもよい。誘電体層12における金属化合物の種類およびその含有量に応じて、誘電体層12の密度および誘電率を調整することができる。誘電体層12に金属化合物を含めることによって、難燃性が高まり、延焼防止効果を付与することができる。金属化合物として、チタン酸バリウム、酸化チタンおよび酸化亜鉛などが挙げられる。金属化合物の態様は、粉末(例えば、ナノ粒子)であることが好ましい。
【0031】
誘電体層12の厚みtはマイクロメーター法(JIS-C-2151)を用いてもよい。また、厚みの測定法として、分光干渉式膜厚測定器、電磁式膜厚計、渦電流式膜厚計、赤外線膜厚計、超音波膜厚計、エリプソメーター法などを用いてもよい。また、顕微鏡による膜厚測定法として、顕微鏡写真法、視野微尺法、接眼微尺法、走査型電子顕微鏡法などを用いて測定してもよい。
【0032】
(素子パターン層)
素子パターン層13は、入射してきた電磁波を非対称反射させ、対称反射とは異なる方向へ反射させるために設けられる。素子パターン層13の厚みtpは、例えば、10nm以上18μm以下である。柔軟性、製膜性を考慮すると、電磁波を非対称反射させる機能に影響のない範囲内であれば、より薄いことが好ましい。
【0033】
素子パターン層13は、表面抵抗値が100Ω/□以下であることが好ましい。素子パターン層13に用いる材料としては、例えば、導電性を有する材料で構成されている。かかる材料としては、グランド層11に用いられる材料と同じ材料を用いることが可能である。導電性を有する無機材料または有機材料を誘電体層12上に製膜してもよい。柔軟性、成膜性、安定性、シート抵抗値および低コストの観点から、後述する形成方法として、蒸着法により製膜されたものを素子パターン層13として用いることが好ましい。
【0034】
上記材料を用いる形態としては連続膜、メッシュ状、パンチング形状が挙げられる。
【0035】
素子パターン層13の形成方法として、誘電体層12上に、導電性を有する材料を全面に形成し連続膜としたのち、加工により、素子パターン層13を形成する方法、または、直接、誘電体層12上に素子パターン層13を形成する方法をとることができる。
【0036】
誘電体層12上に、導電性を有する材料を全面に連続膜として形成する方法として、金属であれば、スパッタ法や蒸着法などのドライコーティング、めっき処理や金属インキを用いるグラビアコーティング、ダイコーティングなどのウェットコーティング、等から選択することが可能である。または、金属板を圧延したものを誘電体層12に貼り合せることができる。同様に無機酸化物材料であればドライコーティング、有機系材料であれば、ウェットコーティングにより、連続膜を形成することができる。また、塗装やスプレー法を用いてもよい。
【0037】
形成した連続膜に対しては、ドライエッチングやウェットエッチング、切削などの除去加工を用いて不要部分を取り除くことにより、素子パターン層13が形成される。
【0038】
エッチング法にて除去加工を行う場合、リフレクトアレイ1を構成する素子パターン14の端部にRがついたり(言い換えると、丸みを帯びた状態になったり)、ピンホールの発生、断面形状が順テーパー形状や逆テーパー形状となったり、アンダーカットまたはオーバーエッチングの発生などが起こりうる。こうした、エッチングの加工で形状変化が起きることが想定されるが、反射した電磁波のうちメインビームの方向が設計した反射角度の±5°程度の範囲であれば反射位相特性として許容されるものとする。切削や印刷法、ドライコーティング、めっき処理、塗装やスプレー法で形成した場合も同様に許容される。
【0039】
エッチング法を用いた場合、
図1に示される素子パターン14の断面形状は、-z軸方向に裾が広がるような形状である順テーパー形状であることが好ましい。順テーパー形状であることにより、素子パターン14の表面積が大きくなり、後述する機能層の積層時に機能層との密着力を大きくすることが可能となる。
【0040】
なお、誘電体層12上に素子パターン層13を直接形成する方法として、凸版印刷、平版印刷、凹版印刷、孔版印刷、転写印刷などを用いて印刷する方法や、誘電体層12にマスキングテープやマスキング剤等で素子パターン14部分以外をマスキング処理し、素子パターン層13をドライコーティングやめっき処理、塗装やスプレー法を用いることで、形成することもできる。
【0041】
素子パターン層13の材料は、グランド層11と同一のものを用いてもよいし、異なる材料を用いてもよい。なお、例えば、グランド層11または素子パターン層13の少なくとも一方の層がCuもしくはAlによって形成されることとすることも可能である。Cuは導電性に優れるため、導体損失を低減することができる。Alは密度が小さく軽量でありまたコストが低いため、軽量かつ安価なリフレクトアレイ1を形成できる。また、少なくとも一方の層の厚みは1μm以下とすることができる。1μm以下とすることによって可撓性が向上し、リフレクトアレイ1の曲面等への設置がしやすくなり、また軽量化を実現することが可能となる。
【0042】
素子パターンがメッシュ状である場合、メッシュの線幅は、5μm以上30μm以下が好ましく、6μm以上15μm以下がより好ましい。メッシュの線間隔は、50μm以上500μm以下が好ましく、100μm以上300μm以下がより好ましい。また、メッシュの線間隔は、動作周波数における波長をλ0としたとき、0.5×λ0以下であることが好ましく、0.1×λ0以下であることがより好ましく、0.01×λ0以下であることがさらに好ましい。メッシュの線間隔が0.5×λ0以下であれば性能を担保することができる。また、メッシュの線間隔は、0.001×λ0以上であってもよい。
【0043】
素子パターンがメッシュ状である場合や、透明導電材料を使用した場合、リフレクトアレイが可視光透過性を示し、設置後の景観を保つことを可能にする。
【0044】
素子パターンの形態が薄膜の場合、リフレクトアレイの可撓性を向上させることが可能であり、それにより曲面での使用やロールtoロールでの生産プロセスを実施することが可能となる
【0045】
また、電磁波の反射効率を高めるため、素子パターンによる損失を低減させることが挙げられる。そのため、素子パターンの表面粗さは小さいほうが好ましい。
【0046】
(設計方法)
図2は、リフレクトアレイ1の一部を模式的に示す図である。
図2は、反射制御領域10を示す。反射制御領域10は非対称な反射を実現し得る領域の単位である。リフレクトアレイ1は、xy平面において、複数の反射制御領域10を含む。素子パターン層13には、複数の素子パターン14a~14dが含まれる。
【0047】
リフレクトアレイ1の設計は以下の手順に従って実施する。まず、反射制御領域10の長辺の長さLを以下の式(1)にて決定する。ここで、Lは反射制御領域の長辺の長さ、λ0はリフレクトアレイ1に適用される電磁波の波長(以下、「動作(設計)周波数における波長」ともいう。)、θiは入射角、θrは反射角である。なお、入射角θiおよび反射角θrは、zx面において測定される値である。
【0048】
次に反射制御領域10の長辺の長さLをn分割した長さ(L/n)を、1つの素子パターンが収まるセルとし、単位セルと定義する。単位セルの面積は単位セルサイズ(L/n)を1辺にもつ正方形とする。
図2においては、反射制御領域10は長辺が4分割されており、単位セルUCaからUCdが含まれている。単位セルUCaには素子パターン14aが含まれる。単位セルUCbには素子パターン14bが含まれる。単位セルUCcには素子パターン14cが含まれる。単位セルUCdには素子パターン14dが含まれる。
【0049】
次いで、各反射制御領域において要求される反射位相を以下の式(2)で求める。ここでZs(x)は、反射制御領域10のxy平面におけるx方向の表面インピーダンスの関数であり、損失のない反射を実現する場合を示す。また、120πは入射波のインピーダンスである。表面インピーダンスの式は以下の式(3)のとおりである。ここで、Φr(x)は、以下の式(4)で示される、反射係数の位相である反射位相を示す。各式から式(5)に示される反射位相(Rの偏角)を満たすよう、セルの位置ごとに素子形状を決定する。つまり、入射角θi、反射角θr、電磁波の波長λ
0を決定すれば、反射制御領域10の長辺方向にある座標における反射位相の値を算出することができる。
【数1】
【0050】
(素子パターンに関する設計方法)
上記方法によって反射位相を求めた後、各単位セルにおける反射位相を満たすよう、素子パターン14の形状を変化させ、シミュレーションを行い、素子パターン14の形状の最適化を行う。素子パターンに電磁波が入射した場合に、素子パターン14の形状と反射位相との間の関係は、例えば電磁解析ツール(High Frequency Structure Simulator:HFSS)等を用いたシミュレーションにより求めることができる。素子パターン形状としては例えば、クロスパッチ(十字型)のもの(素子パターン14aおよび14c)、方形のもの(素子パターン14bおよび14d)があげられる。
【0051】
素子パターン14がクロスパッチの場合を説明する。
図3は、クロスパッチの素子パターン14を示す図である。クロスパッチは、xy平面において、2つの方形パッチが直交した形状を指す。素子パターン14は、素子パターン層13が有する複数の素子パターンのうちの1つの素子パターンである。クロスパッチの素子パターン14の長さを素子長l、クロスパッチの素子パターン14の幅を素子幅wとする。素子長lおよび素子幅wのどちらか、または両方を変化させ、単位セルUCの反射位相を制御する。素子長lを固定する場合、素子長lの値を単位セルUC内においてできるだけ大きく設定することが望ましい。大きく設定することにより、所望の反射位相特性を得ることが容易になる。また、素子幅wを固定する場合、素子幅wの値を単位セルUC内においてできるだけ大きく設定することが望ましい。素子幅wの値を大きく設定することにより、反射位相の傾きが緩やかになる為、加工時の加工精度が広がる。なお、素子長lは、クロスパッチの素子パターンに限定して設定されるものではなく、他の形状を有する素子パターンにも設定され得る。また、素子長lは、反射制御領域10において共通の長さを設定することも可能であるし、反射制御領域10に含まれる素子パターンごとに異なる長さを設定することも可能である。
【0052】
(誘電体層に関する設計方法)
上記設計に加え、誘電体層12の厚みt(mm)と素子長l(mm)の間の関係について検討を行った結果、次の式(6)の関係式を満たす場合に所望の反射位相特性を得ることができることを見出した。式(6)を満たすことによって、薄膜化したリフレクトアレイ1を得ることができる。ここで、l≧4.4×tである場合に所望の反射位相に得ることができ、一方、l<4.4×tとなると、良好な反射位相が得られないことが分かった。また、誘電体層12の厚みtが0.25mmよりも大きくなると可撓性を有するリフレクトアレイ1の作製が難しくなり、また誘電体層12の厚みtが0.001mmよりも小さくなると誘電体層12の形成が難しくなることが分かった。
【数2】
【0053】
また、動作周波数(動作周波数における波長λ
0(mm))と誘電体層12の厚みt(mm)の関係についても検討を行い、次の式(7)の関係式を満たす場合に所望の反射位相特性を得ることができることを見出した。式(7)を満たすことで、所望の反射位相を得ることができ、一方、式(7)を満たさない場合、良好な反射位相が得られないことが分かった。
【数3】
【0054】
(反射位相の例)
図4を参照して、反射位相の性質を説明する。
図4は、単位セルに関してシミュレーションをした場合の結果の一例を示す図である。
電磁界解析ツールHFSSにて素子長lを固定とし、素子幅wを変化させ、反射位相のシミュレーションを行う場合、一般的に、グラフA~Cに示されるような位相変化を検出することができる。なお、グラフA~Cは、グランド層11と誘電体層12と素子パターン層13の構成を共通であるが、誘電体層12の厚みtをグラフAは40μm、グラフBは200μm、グラフCは800μmとしてした。素子長lは3.00mmである。例えば破線で示す150°、50°、-100°の3点を反射位相の範囲に含めようとする場合に、グラフBでは3点すべてを含むことができている。このようにグラフBの反射位相特性においては、素子幅wを所定範囲内で変化させた場合、反射位相の上限値と下限値の差を所望の位相差とすることができることから、目的とする複数の所望の反射位相を得ることが可能となる。すなわち、グラフBにおいて「所望の反射位相特性を得る」ことができる。なお、ここで「所望の位相差」は360°に近い値をとるのが望ましいが、これに限定されるわけではない。また「目的とする複数の所望の反射位相」とは360°の中でほぼ均等に分散した複数の反射位相の値であることが望ましい。
図4の場合においては、例えば、素子幅wは単位セルのサイズの上限があり、素子幅wに3mm以下の制限がある場合であっても、反射位相が150°となる素子パターンを含む単位セル、反射位相が50°となる素子パターンを含む単位セル、反射位相が-100°となる素子パターンを含む単位セルをそれぞれ形成することができる。これら単位セルを少なくとも含む反射制御領域10とすることによって、所望の動作周波数で機能するリフレクトアレイ1を形成することができる。なお、素子幅wの所定範囲はリフレクトアレイ1とした場合の大きさに基づいて決定される。また、目的とする複数の反射位相は、リフレクトアレイ1に要求される反射位相特性に基づいて決定される。
図4では素子幅wを所定範囲内で変化させたが、素子長lを所定範囲内で変化させてもよい。その場合も素子長lが所定範囲内で変化した場合に「所望の反射位相特性を得る」ことができる構成が望ましい。
【0055】
一方で、グラフAやグラフCに示される反射位相の変化を見てみると、グラフAでは、50°および-100°の位相を得ることができない。また、グラフCでは、150°および50°の反射位相を得ることができない。このように、所定範囲の素子幅wにおいて目的とする複数の反射位相を得ることができないため、グラフAおよびグラフCにおいては「所望の反射位相特性を得る」ことができない。
【0056】
なお、クロスパッチの素子パターン14の場合を説明したが、上述の設計方法はクロスパッチでないその他の形状をもつ素子パターンにも適用可能である。その他の形状としては、円形状や正方形状、など任意の形状を選択できるが、垂直または水平の偏波に対応させることを考慮すると90°回転において対称性が保たれるような構造が望ましい。
上述の設計方法においては、素子長lおよび素子幅wを決定して、素子パターンを設計したが、「所望の反射位相特性を得る」ような素子パターンの配置を調整するパラメータは素子長lや素子幅wに限られるものではなく、素子パターンに応じて適宜特定すればよい。
【0057】
(製造方法)
リフレクトアレイ1は、次のように製造することができる。
まず、誘電体層12を形成する。誘電体層12はフィルム状に形成する。
続いて、誘電体層12の一方の面上にグランド層11を形成する。また、誘電体層12の残りの面上に素子パターン層13を形成するための連続膜を形成する。グランド層11および連続膜の形成方法は、膜厚に応じて、スパッタ法、蒸着法、めっき処理などから適宜選択する。また、素子パターン層13の形成には、金属板を圧延したものを用いることも可能である。
次に、連続膜をエッチング法により、目的とする素子パターンの形状に加工し、素子パターン層13を形成する。これにより、グランド層11、誘電体層12、素子パターン層13の順に積層されたリフレクトアレイ1を得ることができる。
【0058】
上記のように、製造方法には、誘電体層12上にグランド層11を形成する工程、素子パターン層13を形成する工程が含まれる。グランド層11を形成する方法は、上記記載のほか、金属ペーストや導電性インキなどを印刷により、形成する方法でもよい。素子パターン層13を形成する方法は、上記の他、誘電体層12全体に導電性を付与し、一部を取り除くことによってパターンを形成する方法、誘電体層12上に直接素子パターン層13を形成する方法のいずれかを用いてもよい。
【0059】
(評価方法)
シミュレーションによって所望の反射位相が得られるかどうか評価を行い、得られる場合にはリフレクトアレイを設計および作製し、反射特性の評価を行う。反射特性の評価は送信機を固定(サンプルに対し、垂直に入射)し、リフレクトアレイを介し、設計角度に反射された電磁波を受信機を用いて受信するバイスタティック方式にて評価を行う。その後、反射特性の評価を行ったサンプルを内径6インチ、肉厚8mmのコアに巻き付け、1分間保持し、外観に異常がないか(折れや曲げ跡など)、形状がもとに戻るかなど曲げ評価を行う。その後、曲げ評価後特性として、再び反射特性の評価を行い、曲げ評価前後で反射特性に影響がないか確認を行う。なお、曲げ評価指標としてヤング率やコアへの巻き付けにて評価を行っているが、任意の曲率半径での屈曲性試験、曲げ剛性などの指標で評価することも可能である。
【0060】
[第1実施形態の変形例]
図5は、第1実施形態の変形例に係るリフレクトアレイ1aの断面図である。第1実施形態の変形例は、誘電体層12が複数ある。以下の説明において、上述の第1実施形態と同一または同等の構成要素については同一の符号を付し、その説明を簡略または省略する。
【0061】
リフレクトアレイ1aは、誘電体層12上に、誘電体層12aが形成されている。誘電体層12a上に、素子パターン層13が形成されている。誘電体層12aは、誘電体層12を形成する材料のうち、誘電体層12に採用した材料とは異なるものを選択することが可能である。製造方法についても、誘電体層12に採用可能な製法と同じものを選択することができる。誘電体層12aの厚みtaについても、適宜設定することができる。
なお、リフレクトアレイ1aは、誘電体層12と誘電体層12aの2層を含む構成であるが、構成はこれに限定されない。誘電体層は3層以上であってもよい。
このように、誘電体層の層数または厚みを変更することによって、反射位相特性および反射特性を変更することが可能となる。
【0062】
[第2実施形態]
第2実施形態は、密着向上層を設ける点で、第1実施形態と異なる。
図6および
図7は、第2実施形態に係るリフレクトアレイの断面図である。以下の説明において、上述の第1実施形態と同一または同等の構成要素については同一の符号を付し、その説明を簡略または省略する。
【0063】
誘電体層12とグランド層11の間、または誘電体層12と素子パターン層13の間において層間の密着が得られない場合に、密着性を向上させる層である密着向上層を形成することができる。密着向上層としては、例えば、層同士の接着を用意にする易接着層や、層同士を接着する接着力をもつ接着層を採用することができる。
【0064】
密着向上層の形成方法としては、様々なバリエーションが考えられる。例えば、
図6(a)のリフレクトアレイ1bに示されるように、誘電体層12とグランド層11の間に密着向上層15、誘電体層12と素子パターン層13との間に密着向上層16を形成することが可能である。また、両方に密着向上層がある場合以外にも、
図6(b)のリフレクトアレイ1cに示されるように誘電体層12とグランド層11の間のみ、また
図6(c)のリフレクトアレイ1dに示されるように誘電体層12と素子パターン層13の間のみ、に付与してもよい。また、
図7(a)のリフレクトアレイ1eおよび
図7(b)のリフレクトアレイ1fに示されるように、素子パターン層13の配置に合わせて密着向上層を設けてもよい。
【0065】
誘電体層12とグランド層11の間および誘電体層12と素子パターン層13の間の両方に密着向上層がある場合、それぞれ密着向上層は同一の材料を用いてもよいし、異なる材料を用いてもよい。また、密着向上層は、2層以上の層によって構成されるものでもよいし、複数材料を組み合わせた構成であってもよい。
なお、
図6(c)に示される密着向上層16は、誘電体層12の一面を覆うように形成されている。誘電体層12が外の環境にさらされることを抑制できるため、誘電体層12の劣化を抑制する効果が期待される。このように、密着向上層の形成方法によって、層の保護をすることも可能である。
(構成の一例)
1, 誘電体層12とグランド層11の間および誘電体層12と素子パターン層13の間の両方に密着向上層がある場合(
図6(a)、
図7(b))
2, 誘電体層12とグランド層11の間のみに密着向上層がある場合(
図6(b))
3, 誘電体層12と素子パターン層13の間のみに密着向上層がある場合(
図6(c)、
図7(a))
【0066】
[第3実施形態]
第3実施形態は、機能層を設ける点で、第1実施形態と異なる。
図8から
図14は、第3実施形態に係るリフレクトアレイの断面図である。以下の説明において、上述の第1実施形態と同一または同等の構成要素については同一の符号を付し、その説明を簡略または省略する。
【0067】
(機能の付加)
リフレクトアレイは、必要に応じて機能を付加することができる。付加される機能として、例えば、劣化防止性、意匠性、保護・耐擦傷性、防水性、ガス・水蒸気バリア性、難燃性、不燃性、自己消火性、耐候性、防汚、抗菌・抗ウィルス、耐薬品、消臭性、粘着・接着性などが挙げられる。これらの機能を1つ付加させてもよいし、複数を組み合わせてもよい。
【0068】
機能を付加する方法としては、リフレクトアレイに、機能を有する層である機能層17を加えてもよいし、誘電体層12を形成する際に機能を生じさせる材料を混合させてもよい。また、リフレクトアレイに機能を有する材料を用いてコーティング加工等を施すこともできる。
【0069】
機能層17は、目的に応じて、素子パターン層13、グランド層11、および誘電体層12の少なくとも一つに形成することができる。また、機能層17は、素子パターン層13、グランド層11、誘電体層12の全面に形成することもできるし、いずれかの層の一部のみに形成してもよい。
【0070】
(機能の例)
〇耐候性
リフレクトアレイの劣化の原因として、大気中に曝したことによる酸化や水蒸気の吸収、太陽光などの光(紫外線)による変質、が考えられる。酸素や水蒸気による劣化を防ぐために、リフレクトアレイの表面にガスバリア性に優れた層を付与することが考えられる。また、特に酸素による劣化を防ぐには、機能層の酸素透過度が500cc/m2・atm・day以下であることが好ましい。この条件を満たすことができれば、フィルムを積層してもよいし、オーバーコート層をドライコーティングまたはウェットコーティングにより付与してもよい。またこれらの層は単層でもよいし、複数を組み合わせたり、積層したりしてもよい。
【0071】
また、誘電体層12の劣化を防ぐために、誘電体層12の形成時に酸化防止剤や劣化防止剤、抗酸化素材を添加してもよい。
同様に水蒸気による劣化を防ぐ場合、水蒸気透過度が300g/m2・day以下である層を設けることが好ましい。
太陽光などからの光を防ぐ場合、はUVカット性を有するフィルムや遮光性を有する層を付与することが考えられる。また、紫外線散乱剤、紫外線吸収剤や光安定剤を添加してもよい。
【0072】
〇意匠性
リフレクトアレイを例えば建物の外装または内装に設置する場合、空間との調和を持たせるために、意匠性を付与することが考えられる。具体的には、意匠を施したシート状の素材を接着剤を用いてリフレクトアレイに貼り合せる、または、シート状の素材を熱・圧力をかけてリフレクトアレイに溶着させて貼り付ける、等によって意匠性を付与することができる。
【0073】
〇保護・耐擦傷性
保護・耐擦傷性とは、リフレクトアレイに傷がつくことを防止したり、リフレクトアレイそのものの劣化を防止したりする機能のことである。このような機能を付与する方法として、リフレクトアレイにコーティング加工を施して表面硬度を高めたり、ハードコートフィルムを積層したりすることができる。保護・耐擦傷性の評価として、JIS K5600-5-4にもとづく鉛筆硬度試験にて実施し、H以上であることが好ましい。また、スチールウール(#0000)を用いて荷重1,000gf/cm2で擦った時に、往復摺動回数が1000回を超えるまでは傷が生じないことが好ましい。
【0074】
〇難燃性、不燃性、自己消火性
リフレクトアレイに難燃性、不燃性を付与する方法として、建築基準法に規定される防火認定が適用された不燃材料、準不燃材料、難燃材料を積層することにより付与できる。例えば難燃繊維や難燃プラスチック、不燃塗料、難燃塗料などがある。難燃繊維としてハロゲン系化合物、リン系化合物、ビニロン繊維、ポリエーテルイミド繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維、ビニロン繊維、などがある。難燃プラスチックとして、プラスチック材料にハロゲン系、リン系、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムなどの無機系難燃剤を添加したものがある。
また、自己消火性を有する材料として、ナイロン、ポリカーボネート、塩化ビニルなどが挙げられる。
形成方法としては、これらの材料を用いたものを積層するほか、誘電体層12を形成する際にこれらの材料を混合させてもよい。また、難燃プラスチックや繊維であれば、そのまま誘電体層12の材料として用いることもできる。
【0075】
〇防汚、抗菌、抗ウィルス性
リフレクトアレイに防汚性を付与する方法として、親水性や撥水性を有する基材を積層したりコーティングしたりすることが感がられる。親水性を有する材料として、光触媒材料やシリカ系材料などを用いることができる。撥水性を有する材料として、フッ素樹脂系、シリコーン系などの材料を用いることができる。抗菌、抗ウィルス性材料として光触媒材料、塩素系、カチオンポリマーを成分とする有機系、銀や亜鉛など金属担持系などが含まれた材料を用いることができる。形成方法としては、これら材料フィルムとして積層するまたはコーティング加工に用いる、誘電体層12の形成時に混合する、等の方法を採用することができる。
【0076】
(構成)
機能層の形成方法としては、様々なバリエーションが考えられる。例えば、
図8および
図9に示されるように、グランド層11およびパターン層13に機能を有する層を積層する、または、
図10に示されるように、電体層12に付加機能を有する材料を含ませる構成とすることもできる。
【0077】
ここで、
図8(a)においては、グランド層11の-z軸方向を向く面に機能層17が形成され、また素子パターン層13上に機能層17が形成される。また、
図8(b)において、誘電体層12上に機能層17が形成される。
図8(c)において、機能層17は、素子パターン14を覆うように形成されており、素子パターン14がない箇所には形成されていない。
また、
図9(a)において、機能層17は、素子パターン14および誘電体層12を覆うように形成される。
図9(b)において、機能層17は、素子パターン14の上面にのみ形成される。
また、
図10(a)のリフレクトアレイ1lにおいて、誘電体層12に機能を有する材料である機能材料18が混合される。また、
図10(b)のリフレクトアレイ1mにおいて、機能を発揮させるための材料を含有した誘電体層12aが用いられている。
図10(c)においては、機能層17は誘電体層12上であり、かつ素子パターン14が形成されていない箇所に形成される。
【0078】
機能を有する層に粘着性や接着性がない場合、密着向上層を用いることもできる。
図11から
図13においては、密着向上層を用いる場合が示される。
【0079】
図11(a)において、グランド層11と機能層17の間に密着向上層19が形成され、誘電体層12と機能層17の間に密着向上層20が形成される。また、
図11(b)において、誘電体層12と機能層17の間に形成される密着向上層20は、素子パターン14の上面にのみ形成される。
図11(c)において、機能層17は素子パターン14と同じ配置を持つように形成される。
また、
図12(a)において、機能層17は+z軸を向く層上には形成されておらず、機能層17とグランド層11の間に密着向上層19が形成される。
図12(b)において、機能層17は-z軸を向く層上には形成されておらず、機能層17と誘電体層12の間に密着向上層20が形成される。
図12(c)において、密着向上層20は、素子パターン14の上面にのみ形成される。
また、
図13において、機能層17は素子パターン14と同じ配置を持つように形成される。
図13(b)および(c)において、機能層17は、リフレクトアレイ1vおよび1wの端部も覆うように形成される。
【0080】
上述のように、機能層17は、グランド層11側および素子パターン層13側の両方に形成してもよいし、グランド層11側のみ、素子パターン層13側のみのいずれでもよく、また、誘電体層12に形成する構成でもよい。グランド層11、素子パターン層13の両方に機能層を形成する場合、同一の機能を有するものを形成してもよいし、異なる機能を有するものを形成してもよい。機能層を積層する場合、単層であってもよいし、複数層になってもよい。また、機能層が単層からなる場合であっても、単層内に複数の機能を有する材料を組み合わせたものを用いてもよい。
【0081】
(構成の一例)
1, グランド層11と素子パターン層13の両方に機能層がある場合(
図8、9)
2, グランド層11側のみに機能層がある場合(
図12(a)
3, 素子パターン層13側のみに機能層がある場合(
図12(b)、
図12(c)、
図13)
4, 誘電体層12のみに機能層がある場合(
図10(c))
5, リフレクトアレイの端部にも機能層が形成される場合(
図13(b)、
図13(c))
6, グランド層11と素子パターン層13の両方に機能層があり、かつ、密着向上層がある場合(
図11)
7, グランド層11のみに機能層があり、かつ、密着向上層がある場合(
図12(a))
8, 素子パターン層13のみに機能層があり、かつ、密着向上層がある場合(
図12(b)、
図12(c)、
図13(a))
9, 誘電体層12層内に機能材料18が混ぜ合わさった場合(
図10(a))
【0082】
なお、上記構成1~8は組み合わせることも可能である。例えば構成1と構成9を組み合わせて、
図14のリフレクトアレイ1xに示されるようにすることも可能である。
【0083】
(評価結果)
動作周波数28GHzから100GHz、入射角0°、反射角45°とした場合に、リフレクトアレイの設計、作製を行った。第1実施形態のグランド層11と誘電体層12と素子パターン層13によって形成される構造に基づいて、実施例および比較例を作成し評価を行った。
図15は、シミュレーションによって反射制御領域が所望の反射位相特性を得られるかどうかの評価結果を示す図である。
図16は、リフレクトアレイを作成した場合の評価結果を示す図である。
評価項目として、「位相シフト確認」「反射特性」「曲げ評価後特性」「可撓性」がある。表1に、各項目について、評価基準は示す。「位相シフト確認」は、上記記載の設計にて「所望の反射位相特性を得る」ことが実現できること、を示す。「反射特性」は、設計した動作周波数、入射角、反射角において、電磁波の強度のピーク(例えば最大値)が得られること、を示す。「可撓性」は、内径6インチ、肉厚8mmのコアに巻きつけ、1分間保持し、目視にて外観にシワや折れ等の外観異常がないこと、を示す。「曲げ評価後特性」は、可撓性の評価後のサンプルに反射特性評価を行ったときと同じ条件で測定を行い、反射波の強度のピークの変化率が±3%以内であること、を示す。以下の評価基準を満たす場合には、
図15および
図16において「〇」を付し、満たさない場合には「×」を付す。
【表1】
【0084】
(実施例1)
誘電体層12として200μm厚のPETを用いた。誘電体層12の両面に、グランド層11および素子パターン層13のもととなる層として、2μm厚のCu層をめっき処理により形成した。Cu層のうち一方にはエッチングを行い、素子パターン層13を形成した。なお、用いたPETの誘電率は3.03、誘電正接は0.00476であった。
図15に示されるように、シミュレーションにおいて、動作周波数は28GHz、λ
0は10.7mm、誘電体層12の厚みtは200μm、総厚(すなわち、反射制御領域の厚み。リフレクトアレイを作成した場合にはリフレクトアレイの厚みと同じ)は204μm、単位セルサイズは5.047mm、素子長lは3.0mmである。式(6)および式(7)の条件を満たしており、また「位相シフト確認」に〇と示されるように、所望の反射位相特性を得ることができた。
また、
図16に示されるように、単位セルを3つ含むリフレクトアレイを形成し評価を行った。「反射特性」および「可撓性」のいずれも〇と示されるように、評価結果は要求される水準を満足していた。また、「曲げ後評価特性」に〇と示されるように、可撓性の評価を行った後でも、反射特性に影響が生じなかった。評価結果はいずれも良好であったため、〇と記載している。総合評価に〇と示されるように、リフレクトアレイの要件を満足している。
【0085】
(実施例2)
誘電体層12として100μm厚のPETを用いた。誘電体層12の両面に、グランド層11および素子パターン層13のもととなる層として、2μm厚のCu層をめっき処理により形成した。Cu層のうち一方にはエッチングを行い、素子パターン層13を形成した。なお、用いたPETの誘電率は3.03、誘電正接は0.00476であった。
図15に示されるように、シミュレーションにおいて、動作周波数は28GHz、λ
0は10.7mm、誘電体層12の厚みtは100μm、総厚は104μm、単位セルサイズは3.785mm、素子長lは3.0mmである。式(6)および式(7)の条件を満たしており、また「位相シフト確認」に〇と示されるように、所望の反射位相特性を得ることができた。
また、
図16に示されるように、単位セルを4つ含むリフレクトアレイを形成し評価を行った。「反射特性」および「可撓性」のいずれも〇と示されるように、評価結果は要求される水準を満足していた。また、「曲げ後評価特性」に〇と示されるように、可撓性の評価を行った後でも、反射特性に影響が生じなかった。評価結果はいずれも良好であったため、〇と記載している。総合評価に〇と示されるように、リフレクトアレイの要件を満足している。
【0086】
(実施例3)
誘電体層12として200μm厚のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を用いた。誘電体層12の両面に、グランド層11および素子パターン層13のもととなる層として2μm厚のCu層をめっき処理により形成した。Cu層のうち一方にはエッチングを行い、素子パターン層13を形成した。なお、用いたPTFEの誘電率は2.06、誘電正接は0.0007であった。
図15に示されるように、シミュレーションにおいて、動作周波数は28GHz、λ
0は10.7mm、誘電体層12の厚みtは200μm、総厚は204μm、単位セルサイズは3.785mm、素子長lは3.1mm以上3.6mm以下とした。式(6)および式(7)の条件を満たしており、また「位相シフト確認」に〇と示されるように、所望の反射位相特性を得ることができた。
また、
図16に示されるように、単位セルを4つ含むリフレクトアレイを形成し評価を行った。「反射特性」および「可撓性」のいずれも〇と示されるように、評価結果は要求される水準を満足していた。また、「曲げ後評価特性」に〇と示されるように、可撓性の評価を行った後でも、反射特性に影響が生じなかった。評価結果はいずれも良好であったため、〇と記載している。総合評価に〇と示されるように、リフレクトアレイの要件を満足している。
【0087】
(実施例4)
誘電体層12として100μm厚のシクロオレフィンポリマーを用いた。誘電体層12の両面に、グランド層11および素子パターン層13のもととなる層として2μm厚のCu層をめっき処理により形成した。Cu層の一方にはエッチングを行い、素子パターン層13を形成した。なお、用いたシクロオレフィンポリマーの誘電率は2.32、誘電正接は0.00039であった。
図15に示されるように、シミュレーションにおいて、動作周波数は28GHz、λ
0は10.7mm、誘電体層12の厚みtは100μm、総厚は104μm、単位セルサイズは3.785mm、素子長lは3.24mm以上3.53mm以下とした。式(6)および式(7)の条件を満たしており、また「位相シフト確認」に〇と示されるように、所望の反射位相特性を得ることができた。
また、
図16に示されるように、単位セルを4つ含むリフレクトアレイを形成し評価を行った。「反射特性」および「可撓性」のいずれも〇と示されるように、評価結果は要求される水準を満足していた。また、「曲げ後評価特性」に〇と示されるように、可撓性の評価を行った後でも、反射特性に影響が生じなかった。評価結果はいずれも良好であったため、〇と記載している。総合評価に〇と示されるように、リフレクトアレイの要件を満足している。
【0088】
(実施例5)
誘電体層12として50μm厚のポリスチレンを用いた。誘電体層12の両面に、グランド層11および素子パターン層13のもととなる層として2μm厚のCu層をめっき処理により形成した。Cu層のうち一方にはエッチングを行い、素子パターン層13を形成した。なお、用いたポリスチレンの誘電率は2.32、誘電正接は0.00039であった。
図15に示されるように、シミュレーションにおいて、動作周波数は28GHz、λ
0は10.7mm、誘電体層12の厚みtは50μm、総厚は54μm、単位セルサイズは3.785mm、素子長lは3.45mmとした。式(6)および式(7)の条件を満たしており、また「位相シフト確認」に〇と示されるように、所望の反射位相特性を得ることができた。
また、
図16に示されるように、単位セルを4つ含むリフレクトアレイを形成し評価を行った。「反射特性」および「可撓性」のいずれも〇と示されるように、評価結果は要求される水準を満足していた。また、「曲げ後評価特性」に〇と示されるように、可撓性の評価を行った後でも、反射特性に影響が生じなかった。評価結果はいずれも良好であったため、〇と記載している。総合評価に〇と示されるように、リフレクトアレイの要件を満足している。
【0089】
(実施例6)
誘電体層12として100μm厚のPETを用いた。誘電体層12の両面に、グランド層11および素子パターン層13のもととなる層として300nm厚のCu層を蒸着法により形成した。Cu層のうち一方にはエッチングを行い、素子パターン層13を形成した。なお、用いたPETの誘電率は3.03、誘電正接は0.00476であった。
図15に示されるように、シミュレーションにおいて、動作周波数は28GHz、λ
0は10.7mm、誘電体層12の厚みtは100μm、総厚は100.6μm、単位セルサイズは5.047mm、素子長lは3.0mmとした。式(6)および式(7)の条件を満たしており、また「位相シフト確認」に〇と示されるように、所望の反射位相特性を得ることができた。
また、
図16に示されるように、単位セルを4つ含むリフレクトアレイを形成し評価を行った。「反射特性」および「可撓性」のいずれも〇と示されるように、評価結果は要求される水準を満足していた。また、「曲げ後評価特性」に〇と示されるように、可撓性の評価を行った後でも、反射特性に影響が生じなかった。評価結果はいずれも良好でった。ため、〇と記載している。総合評価に〇と示されるように、リフレクトアレイの要件を満足している。
【0090】
(実施例7)
誘電体層12として100μm厚のPETを用いた。誘電体層12の両面に、グランド層11および素子パターン層13のもととなる層として300nm厚のAl層を蒸着法により形成した。Al層のうち一方にはエッチングを行い、素子パターン層13を形成した。なお、用いたPETの誘電率は3.03、誘電正接は0.00476であった。
図15に示されるように、シミュレーションにおいて、動作周波数は28GHz、λ
0は10.7mm、誘電体層12の厚みtは100μm、総厚は100.6μm、単位セルサイズは5.047mm、素子長lは3.0mmとした。式(6)および式(7)の条件を満たしており、また「位相シフト確認」に〇と示されるように、所望の反射位相特性を得ることができた。
また、
図16に示されるように、単位セルを3つ含むリフレクトアレイを形成し評価を行った。「反射特性」および「可撓性」のいずれも〇と示されるように、評価結果は要求される水準を満足していた。また、「曲げ後評価特性」に〇と示されるように、可撓性の評価を行った後でも、反射特性に影響が生じなかった。評価結果はいずれも良好であったため、〇と記載している。総合評価に〇と示されるように、リフレクトアレイの要件を満足している。
【0091】
(実施例8)
誘電体層12として50μm厚のPETを用いた。誘電体層12の両面に、グランド層11および素子パターン層13のもととなる層として、300nm厚のCu層をめっき処理により形成した。Cu層のうち一方にはエッチングを行い、素子パターン層13を形成した。なお、用いたPETの誘電率は3.03、誘電正接は0.00476であった。
図15に示されるように、シミュレーションにおいて、動作周波数は60GHz、λ
0
は4.99mm、誘電体層12の厚みtは50μm、総厚は50.6μm、単位セルサイズは2.355mm、素子長lは1.40mmである。式(6)および式(7)の条件を満たしており、また「位相シフト確認」に〇と示されるように、所望の反射位相特性を得ることができた。
また、
図16に示されるように、単位セルを3つ含むリフレクトアレイを形成し評価を行った。「反射特性」および「可撓性」のいずれも〇と示されるように、評価結果は要求される水準を満足していた。また、「曲げ後評価特性」に〇と示されるように、可撓性の評価を行った後でも、反射特性に影響が生じなかった。評価結果はいずれも良好であったため、〇と記載している。総合評価に〇と示されるように、リフレクトアレイの要件を満足している。
【0092】
(実施例9)
誘電体層12として200μm厚のPETを用いた。誘電体層12の両面に、グランド層11および素子パターン層13のもととなる層として、300nm厚のCu層をめっき処理により形成した。Cu層のうち一方にはエッチングを行い、素子パターン層13を形成した。なお、用いたPETの誘電率は3.03、誘電正接は0.00476であった。
図15に示されるように、シミュレーションにおいて、動作周波数は60GHz、λ
0は4.99mm、誘電体層12の厚みtは200μm、総厚は200.6μm、単位セルサイズは2.355mm、素子長lは1.50mmである。式(6)および式(7)の条件を満たしており、また「位相シフト確認」に〇と示されるように、所望の反射位相特性を得ることができた。
また、
図16に示されるように、単位セルを3つ含むリフレクトアレイを形成し評価を行った。「反射特性」および「可撓性」のいずれも〇と示されるように、評価結果は要求される水準を満足していた。また、「曲げ後評価特性」に〇と示されるように、可撓性の評価を行った後でも、反射特性に影響が生じなかった。評価結果はいずれも良好であったため、〇と記載している。総合評価に〇と示されるように、リフレクトアレイの要件を満足している。
【0093】
(実施例10)
誘電体層12として20μm厚のPETを用いた。誘電体層12の両面に、グランド層11および素子パターン層13のもととなる層として、300nm厚のCu層をめっき処理により形成した。Cu層のうち一方にはエッチングを行い、素子パターン層13を形成した。なお、用いたPETの誘電率は3.03、誘電正接は0.00476であった。
図15に示されるように、シミュレーションにおいて、動作周波数は100GHz、λ
0は2.99mm、誘電体層12の厚みtは20μm、総厚は20.6μm、単位セルサイズは1.413mm、素子長lは0.90mmである。式(6)および式(7)の条件を満たしており、また「位相シフト確認」に〇と示されるように、所望の反射位相特性を得ることができた。
また、
図16に示されるように、単位セルを3つ含むリフレクトアレイを形成し評価を行った。「反射特性」および「可撓性」のいずれも〇と示されるように、評価結果は要求される水準を満足していた。また、「曲げ後評価特性」に〇と示されるように、可撓性の評価を行った後でも、反射特性に影響が生じなかった。評価結果はいずれも良好であったため、〇と記載している。総合評価に〇と示されるように、リフレクトアレイの要件を満足している。
【0094】
(実施例11)
誘電体層12として50μm厚のPETを用いた。誘電体層12の両面に、グランド層11および素子パターン層13のもととなる層として、300nm厚のCu層をめっき処理により形成した。Cu層のうち一方にはエッチングを行い、素子パターン層13を形成した。なお、用いたPETの誘電率は3.03、誘電正接は0.00476であった。
図15に示されるように、シミュレーションにおいて、動作周波数は100GHz、λ
0は2.99mm、誘電体層12の厚みtは50μm、総厚は50.6μm、単位セルサイズは1.413mm、素子長lは0.90mmである。式(6)および式(7)の条件を満たしており、また「位相シフト確認」に〇と示されるように、所望の反射位相特性を得ることができた。
また、
図16に示されるように、単位セルを3つ含むリフレクトアレイを形成し評価を行った。「反射特性」および「可撓性」のいずれも〇と示されるように、評価結果は要求される水準を満足していた。また、「曲げ後評価特性」に〇と示されるように、可撓性の評価を行った後でも、反射特性に影響が生じなかった。評価結果はいずれも良好であったため、〇と記載している。総合評価に〇と示されるように、リフレクトアレイの要件を満足している。
【0095】
(比較例1)
誘電体層12として300μm厚のPETを用いた。誘電体層12の両面に、グランド層11および素子パターン層13のもととなる層として、2μm厚のCu層をめっき処理により形成した。Cu層のうち一方にはエッチングを行い、素子パターン層13を形成した。ななお、用いたPETの誘電率は3.03、誘電正接は0.00476であった。
図15に示されるように、シミュレーションにおいて、動作周波数は28GHz、λ
0は10.7mm、誘電体層12の厚みtは300μm、総厚は304μm、単位セルサイズは5.047mm、素子長lは3.50mmである。式(6)に含まれる「l≧4.4を満たすか」の条件を満たしているが、式(7)の条件は満たしていない。また、「位相シフト確認」に×と示されるように、所望の反射位相特性を得ることができなかった。
また、
図16に示されるように、反射制御領域において所望の反射位相特性を得ることができなかったため、リフレクトアレイは形成していない。
【0096】
(比較例2)
誘電体層12として764μm厚のフッ素樹脂含侵ガラスクロスを用いた。誘電体層12の両面に、グランド層11および素子パターン層13のもととなる層として、18μm厚のCu層をめっき処理により形成した。Cu層のうち一方にはエッチングを行い、素子パターン層13を形成した。なお、用いた誘電体層の誘電率は2.6、誘電正接は0.0025であった。
図15に示されるように、シミュレーションにおいて、動作周波数は28GHz、λ
0は10.7mm、誘電体層12の厚みtは764μm、総厚は800μm、単位セルサイズは5.047mm、素子長lは2.21mm以上3.31mm以下である。式(6)および式(7)の条件のいずれをも満たしておらず、また「位相シフト確認」に×と示されるように、所望の反射位相特性を得ることができない。
また、
図16に示されるように、単位セルを3つ含むリフレクトアレイを形成し評価を行った。「反射特性」に〇と示されるように要求される水準を満足していた。しかし、「可撓性」および「曲げ後評価特性」に×と示されるように、良好な評価結果を得られなかった。総合評価に×と示されるように、リフレクトアレイの要件を満足していない。
【0097】
(比較例3)
誘電体層12として600μm厚のPETを用いた。誘電体層12の両面に、グランド層11および素子パターン層13のもととなる層として、2μm厚のCu層をめっき処理により形成した。Cu層のうち一方にはエッチングを行い、素子パターン層13を形成した。なお、用いたPETの誘電率は3.03、誘電正接は0.00476であった。
図15に示されるように、シミュレーションにおいて、動作周波数は28GHz、λ
0は10.7mm、誘電体層12の厚みtは600μm、総厚は604μm、単位セルサイズは5.047mm、素子長lは3.0mmである。式(6)の条件について、「l≧4.4を満たすか」は〇と示されるように満たしていたが、「0.001<t<0.25」は×と示されるように満たしていない。また、式(7)の条件を満たしており、「位相シフト確認」に〇と示されるように、所望の反射位相特性を得ることができた。
また、
図16に示されるように、単位セルを3つ含むリフレクトアレイを形成し評価を行った。「反射特性」に〇と示されるように要求される水準を満足していた。しかし、「可撓性」および「曲げ後評価特性」に×と示されるように、良好な評価結果を得られなかった。総合評価に×と示されるように、リフレクトアレイの要件を満足していない。
【0098】
(比較例4)
誘電体層12として1000μm厚のPETを用いた。誘電体層12の両面に、グランド層11および素子パターン層13のもととなる層として、2μm厚のCu層をめっき処理により形成した。Cu層のうち一方にはエッチングを行い、素子パターン層13を形成した。なお、用いたPETの誘電率は3.03、誘電正接は0.00476であった。
図15に示されるように、シミュレーションにおいて、動作周波数は28GHz、λ
0は10.7mm、誘電体層12の厚みtは1000μm、総厚は1004μm、単位セルサイズは5.047mm、素子長lは2.5mmである。式(6)の条件について、「l≧4.4を満たすか」は〇と示されるように満たしていたが、「0.001<t<0.25」は×と示されるように満たしていない。また、式(7)の条件を満たしておらず、「位相シフト確認」に×と示されるように、所望の反射位相特性を得ることができなかった。
また、
図16に示されるように、反射制御領域において所望の反射位相特性を得ることができなかったため、リフレクトアレイは形成していない。
【0099】
(比較例5)
誘電体層12として500μm厚のPETを用いた。誘電体層12の両面に、グランド層11および素子パターン層13のもととなる層として、2μm厚のCu層をめっき処理により形成した。Cu層のうち一方にはエッチングを行い、素子パターン層13を形成した。なお、用いたPETの誘電率は3.03、誘電正接は0.00476であった。
図15に示されるように、シミュレーションにおいて、動作周波数は60GHz、λ
0は4.99mm、誘電体層12の厚みtは500μm、総厚は504μm、単位セルサイズは2.355mm、素子長lは0.2mmである。式(6)および式(7)の条件はいずれも満たしていない。また、「位相シフト確認」に×と示されるように、所望の反射位相特性を得ることができなかった。
また、
図16に示されるように、反射制御領域において所望の反射位相特性を得ることができなかったため、リフレクトアレイは形成していない。
【0100】
(比較例6)
誘電体層12として1000μm厚のPETを用いた。誘電体層12の両面に、グランド層11および素子パターン層13のもととなる層として、2μm厚のCu層をめっき処理により形成した。Cu層のうち一方にはエッチングを行い、素子パターン層13を形成した。なお、用いたPETの誘電率は3.03、誘電正接は0.00476であった。
図15に示されるように、シミュレーションにおいて、動作周波数は60GHz、λ
0は4.99mm、誘電体層12の厚みtは1000μm、総厚は1004μm、単位セルサイズは2.355mm、素子長lは2mmである。式(6)の条件について、「l≧4.4を満たすか」は〇と示されるように満たしているが、「0.001<t<0.25」は×と示されるように満たしていない。また、式(7)の条件はたしていない。「位相シフト確認」に×と示されるように、所望の反射位相特性を得ることができなかった。
また、
図16に示されるように、反射制御領域において所望の反射位相特性を得ることができなかったため、リフレクトアレイは形成していない。
【0101】
(比較例7)
誘電体層12として250μm厚のPETを用いた。誘電体層12の両面に、グランド層11および素子パターン層13のもととなる層として、2μm厚のCu層をめっき処理により形成した。Cu層のうち一方にはエッチングを行い、素子パターン層13を形成した。なお、用いたPETの誘電率は3.03、誘電正接は0.00476であった。
図15に示されるように、シミュレーションにおいて、動作周波数は100GHz、λ
0は2.99mm、誘電体層12の厚みtは250μm、総厚は254μm、単位セルサイズは1.413mm、素子長lは0.08mmである。式(6)および式(7)の条件はいずれも満たしていない。また、「位相シフト確認」に×と示されるように、所望の反射位相特性を得ることができなかった。
また、
図16に示されるように、リフレクトアレイは形成していない。「反射特性」に×と示されるように、要求される水準を満していない。なお、「可撓性」に△と示されるように、サンプルによっては許容される水準に到達する場合が見られた。総合評価に×と示されるように、リフレクトアレイの要件を満足していない。
【0102】
(比較例8)
誘電体層12として200μm厚のPETを用いた。誘電体層12の両面に、グランド層11および素子パターン層13のもととなる層として、2μm厚のCu層をめっき処理により形成した。Cu層のうち一方にはエッチングを行い、素子パターン層13を形成した。なお、用いたPETの誘電率は3.03、誘電正接は0.00476であった。
図15に示されるように、シミュレーションにおいて、動作周波数は100GHz、λ
0は2.99mm、誘電体層12の厚みtは200μm、総厚は204μm、単位セルサイズは1.413mm、素子長lは0.015mmである。式(6)の条件について、「l≧4.4を満たすか」は×と示されるように満たしていないが、「0.001<t<0.25」は〇と示されるように満たしている。また、式(7)の条件は満たしていない。「位相シフト確認」に×と示されるように、所望の反射位相特性を得ることができなかった。
また、
図16に示されるように、リフレクトアレイは形成していない。「反射特性」に×と示されるように、要求される水準を満していない。なお、「可撓性」に〇と示されるように、許容される水準を満たす。総合評価に×と示されるように、リフレクトアレイの要件を満足していない。
【0103】
(比較例9)
誘電体層12として400μm厚のPETを用いた。誘電体層12の両面に、グランド層11および素子パターン層13のもととなる層として、2μm厚のCu層をめっき処理により形成した。Cu層のうち一方にはエッチングを行い、素子パターン層13を形成した。なお、用いたPETの誘電率は3.03、誘電正接は0.00476であった。
図15に示されるように、シミュレーションにおいて、動作周波数は100GHz、λ
0は2.99mm、誘電体層12の厚みtは400μm、総厚は404μm、単位セルサイズは1.413mm、素子長lは0.5mmである。式(6)および式(7)の条件はいずれも満たしていない。また、「位相シフト確認」に×と示されるように、所望の反射位相特性を得ることができない。
また、
図16に示されるように、反射制御領域において所望の反射位相特性を得ることができなかったため、リフレクトアレイは形成していない。
【0104】
(作用・効果)
本開示によれば、グランド層、誘電体層、素子パターン層の構造を有するリフレクトアレイを作成する場合、誘電体層の厚みは、式(6)または(7)によって規定される範囲とされる。このようにして製造のしやすさを確保しつつ、リフレクトアレイとした場合の反射特性および可撓性を獲得することができ、リフレクトアレイの薄膜化および軽量化を実現することができる。
【0105】
また、予め、グランド層、誘電体層、素子パターン層の構造をシミュレーションすることによって、所望の反射位相特性を得ることが可能な、リフレクトアレイの厚み(総厚)、単位セルサイズ、および素子幅等の具体的な構造を導出することができる。
また、本開示によれば、リフレクトアレイの可撓性を確保することができるため、リフレクトアレイの設置や交換の際の作業性、軽量性についても獲得することができる。
【0106】
薄膜化によるメリットとしては、具体的には次のものを上げることができる。
・ロールtoロールでの生産が可能となり、大面積の反射板が作製可能になる。また生産コスト、時間削減が可能。
・エッチング液、廃液処理用化学物質の使用量削減、エッチング時間の短縮、環境配慮。
・施工時、軽量化が可能で作業者負担を軽減できる。また曲面への貼りつけが可能になる。
・厚みが薄い分、省スペース化が可能。
【0107】
なお、本開示においては、反射制御領域10としてx軸方向の一方向に単位セルが配置された場合を示すが、本開示はこの場合に限定されない。グランド層11と誘電体層12と素子パターン層13を含む反射制御領域10であれば、単位セルがx軸方向およびy軸方向の両方に配置される場合にも適用することが可能である。
【0108】
[第4実施形態]
第4実施形態は、素子パターン14としてクロスパッチ以外の形状が含まれる点で、第1実施形態とは異なる。
図17および
図18は、素子パターンの形状を示す図である。素子パターン層13には
図17および
図18に示される素子パターンを含めることが可能であるところ、設計時においてパラメータとして用いられる素子パターンの素子長lの設定についても併せて説明する。
なお、以下の説明において、上述の第1実施形態と同一または同等の構成要素については同一の符号を付し、その説明を簡略または省略する。
【0109】
図17(a)は、素子パターン141を示す図である。素子パターン141は、2つの長方形形状の方形パッチが交差した形状を示すが、方形パッチ141-1および141-2の大きさが異なる。方形パッチ141-1の長手方向の長さをl1、方形パッチ141-2の長手方向の長さをl2とする。ここでは、l2の方がl1よりも短く、式(6)の適用に当たり素子長lとしてl2を用いることが可能である。L2が式(6)を満たす場合、l1も式(6)を満たすことから、素子パターンの形状を規定する代表的な辺の長さのうち短いものを素子長lとすることによって、素子パターン全体として式(6)が満されることが実現され好ましい。
【0110】
図17(b)は、素子パターン142を示す図である。素子パターン142は円形の形状を有しており、直径はdである。この場合、素子パターン142の素子長lとしてdを用いることが可能である。
【0111】
図17(c)は、素子パターン143を示す図である。素子パターン143は楕円形の形状を有しており、長径をld、短径はsdである。この場合、素子パターン143の素子長lとしてsdを用いることが可能である。
【0112】
図18(a)は、素子パターン144を示す図である。素子パターン144は正方形の形状を有しており、一辺の長さがl4である。この場合、素子パターン144の素子長lとしてl4を用いることが可能である。
【0113】
図18(b)は、素子パターン145を示す図である。素子パターン145は長方形の形状を有しており、短辺の長さがl5-1、長辺の長さがl5-2である。この場合、素子パターン145の素子長lとしてl5-1を用いることが可能である。
【0114】
図18(c)は、素子パターン146-1および146-2を示す図である。素子パターン146-1は二等辺三角形の形状を有しており、長さがl6-1の2辺が直角を形成し、直角に対向する辺の長さがl6-2である。この場合、素子パターン146-1の素子長lとしてl6-1を用いることが可能である。
また、素子パターン146-2は直角三角形である。辺の長さがそれぞれl6-3、l6-4、l6-5である。この場合、素子パターン146-2の素子長lとして、最も短いl6-3を用いることが可能である。
【0115】
図18(d)は、素子パターン147-1よび147-2を示す図である。素子パターン147-1は四角形の形状を有しており、辺の長さのうち最も短い長さがl6である。この場合、素子パターン147-1の素子長lとして、l6を用いることが可能である。
また、素子パターン147-2は六角形の形状を有しており、辺の長さのうち最も短い長さがl7である。この場合、素子パターン147-2の素子長lとして、l7を用いることが可能である。
このように多角形を素子パターンとしてする場合、辺の長さのうち最も短いものを素子パターンの素子長lとして用いることが可能です。
【0116】
上述のように、素子パターンが有する形状ごとに、素子長lを設定することが可能である。なお、素子パターンの形状が多角形である場合に最も短い辺の長さを素子長lとしたが、本開示はこれに限定されない。例えば、最も長い辺の長さを素子長lと設定することも可能である。
また、素子パターンの形状は、本開示のものに限定されない。例えば、本開示において示された素子パターンの形状を組み合わせて、所望の形状を持つ素子パターンとすることも可能である。
【0117】
[その他の実施形態]
本発明の内容となり得る態様を以下に述べる、ただしこれに限られるものではない。
(態様1)
グランド層と、誘電体層と、複数の素子パターンを有する素子パターン層を含むリフレクトアレイであって、
前記誘電体層の厚みである厚みt(mm)と、前記複数の素子パターンの長さである素子長l(mm)が以下の関係式を満たすことを特徴とするリフレクトアレイ。
【数4】
(態様2)
設計周波数における波長である波長λ
0(mm)と、前記誘電体層の厚みである厚みt(mm)が以下の関係式を満たすことを特徴とする態様1に記載のリフレクトアレイ。
【数5】
(態様3)
前記グランド層の表面抵抗値が100Ω/□以下である態様1または2に記載のリフレクトアレイ。
(態様4)
前記グランド層または前記素子パターン層の少なくとも一方の層がCuもしくはAlによって形成される態様1から3のいずれか1つに記載のリフレクトアレイ。
(態様5)
前記少なくとも一方の層の厚みが1μm以下であることを特徴とする、態様4に記載のリフレクトアレイ。
(態様6)
前記素子パターンの幅である素子幅wが3mm以下であることを特徴とする態様1から5のいずれか1つに記載のリフレクトアレイ。
(態様7)
前記素子パターンの幅である素子幅wを所定範囲内で変化させるときに所望の反射位相特性を得ることができる態様1から6のいずれか1つに記載のリフレクトアレイ。
(態様8)
密着向上層をさらに含むことを特徴とする態様1から7のいずれか1つに記載のリフレクトアレイ。
(態様9)
機能層をさらに含むことを特徴とする態様1から8のいずれかに記載のリフレクトアレイ。
【0118】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0119】
1、1a~1x リフレクトアレイ
10 反射制御領域
11 グランド層
12、12a 誘電体層
13 素子パターン層
14、14a~14d、141~145、146-1、146-2、147-1、147-2 素子パターン
15、16、19、20 密着向上層
17 機能層
18 機能材料
【要約】
【課題】本発明は、薄膜化および軽量化を実現するリフレクトアレイを提供することを目的とする。
【解決手段】代表的な本発明のリフレクトアレイの一つは、グランド層と、誘電体層と、複数の素子パターンを有する素子パターン層を含むリフレクトアレイであって、前記グランド層は無機酸化物材料または金属材料によって形成され、前記グランド層の厚さは18μm以下であり、前記リフレクトアレイを、内径6インチ、肉厚8mmのコアに巻きつけ、1分間保持し、目視にて外観にシワや折れ等の外観異常がないことを特徴とするものである。
【選択図】
図1