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  • 特許-磁石配列方法及びロータの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】磁石配列方法及びロータの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/02 20060101AFI20240618BHJP
   H02K 1/2783 20220101ALI20240618BHJP
【FI】
H02K15/02 K
H02K1/2783
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023506839
(86)(22)【出願日】2022-02-02
(86)【国際出願番号】 JP2022003942
(87)【国際公開番号】W WO2022196149
(87)【国際公開日】2022-09-22
【審査請求日】2023-08-16
(31)【優先権主張番号】P 2021044582
(32)【優先日】2021-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】竹内 雄志
【審査官】津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/008284(WO,A1)
【文献】特開2019-33578(JP,A)
【文献】特開平8-88957(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/02
H02K 1/2783
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハルバッハ配列される複数の着磁磁石を配列する方法であって、
磁性体から成る配列治具に前記複数の着磁磁石を配列する配列工程を備え、
前記配列工程では、前記配列治具と予め設定された着磁磁石との接触面積を、前記配列治具と他の着磁磁石との接触面積に比べて異ならせる、磁石配列方法。
【請求項2】
前記配列治具における前記着磁磁石との接触面に凹部が形成されている、請求項1に記載の磁石配列方法。
【請求項3】
前記着磁磁石における前記配列治具との接触面に凹部が形成されている、請求項1又は2に記載の磁石配列方法。
【請求項4】
前記凹部である溝を跨ぐように、異なる磁極を配置する、請求項2又は3に記載の磁石配列方法。
【請求項5】
前記複数の着磁磁石を配列した際に磁束ループを形成する両側の着磁磁石における一方の着磁磁石の前記配列治具への吸着力と他方の着磁磁石の前記配列治具への吸着力との差が減少するように、前記一方の着磁磁石と前記配列治具との接触面積を、前記他方の着磁磁石と前記配列治具との接触面積に比べて小さくする、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の磁石配列方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の磁石配列方法を備える、ロータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、磁石配列方法及びロータの製造方法に関し、例えば、ハルバッハ配列される複数の着磁磁石の配列方法及び当該複数の着磁磁石を有するロータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハルバッハ配列された磁石を有するロータなどが実用化されている。このようなロータは、例えば、特許文献1に開示されているように、鉄製の帯状薄板から成るプレートに複数の磁石をハルバッハ配列してエポキシ樹脂で固定した磁石ユニットを、ロータコアに巻き付けることで製造したり、特許文献2に開示されているように、バックヨークの凹凸を利用して主磁極永久磁石と副磁極永久磁石とをハルバッハ配列して製造したり、している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-107929号公報
【文献】特開2007-110822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本出願人は、以下の課題を見出した。ハルバッハ配列される磁石は、予め着磁されている必要があるが、それ故に、当該磁石を精度良く定められた位置に配列することが困難である。
【0005】
本開示は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、ハルバッハ配列される着磁磁石を精度良く定められた位置に配列することが可能な、磁石配列方法及びロータの製造方法を実現する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る磁石配列方法は、ハルバッハ配列される複数の着磁磁石を配列する方法であって、
磁性体から成る配列治具に前記複数の着磁磁石を配列する配列工程を備え、
前記配列工程では、前記配列治具と予め設定された着磁磁石との接触面積を、前記配列治具と他の着磁磁石との接触面積に比べて異ならせる。
【0007】
上述の磁石配列方法において、前記配列治具における前記着磁磁石との接触面に凹部が形成されていることが好ましい。
【0008】
上述の磁石配列方法において、前記着磁磁石における前記配列治具との接触面に凹部が形成されていることが好ましい。
【0009】
上述の磁石配列方法において、前記凹部である溝を跨ぐように、異なる磁極を配置することが好ましい。
【0010】
上述の磁石配列方法において、前記複数の着磁磁石を配列した際に磁束ループを形成する両側の着磁磁石における一方の着磁磁石の前記配列治具への吸着力と他方の着磁磁石の前記配列治具への吸着力との差が減少するように、前記一方の着磁磁石と前記配列治具との接触面積を、前記他方の着磁磁石と前記配列治具との接触面積に比べて小さくすることが好ましい。
【0011】
本開示の一態様に係るロータの製造方法は、上述の磁石配列方法を備える。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、ハルバッハ配列される着磁磁石を精度良く定められた位置に配列することが可能な、磁石配列方法及びロータの製造方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施の形態の磁石配列方法において、配列治具のZ軸+側の面に複数の着磁磁石が配列された様子を示す図である。
図2図1のII部分を示す拡大図である。
図3】配列治具のZ軸+側の面に複数の着磁磁石が配列された様子を示す拡大断面図である。
図4】磁束ループを説明するための図である。
図5】配列治具の外周面に複数の着磁磁石が配列された様子を示す斜視図である。
図6】製造されたアウターロータを示す図である。
図7】凹部が形成された着磁磁石を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。但し、本開示が以下の実施の形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。
【0015】
先ず、本実施の形態の磁石配列方法を説明する。なお、以下の説明では、説明を明確にするために、三次元(XYZ)座標系を用いて説明する。本実施の形態の磁石配列方法は、着磁磁石をハルバッハ配列する際に好適である。
【0016】
図1は、本実施の形態の磁石配列方法において、配列治具のZ軸+側の面に複数の着磁磁石が配列された様子を示す図である。図2は、図1のII部分を示す拡大図である。図3は、配列治具のZ軸+側の面に複数の着磁磁石が配列された様子を示す拡大断面図である。
【0017】
本実施の形態では、例えば、図1乃至図3に示すように、着磁磁石1を配列治具2のZ軸+側の面にハルバッハ配列する。着磁磁石1は、例えば、X軸方向に長い四角柱形状であり、所定の磁束が発生するようにN極部分とS極部分とが配置されている。但し、着磁磁石1は、四角柱形状に限定されず、円柱形状や他の多角柱形状でもよく、着磁磁石1の形状は、限定されない。
【0018】
配列治具2は、磁性体から成り、例えば、図1乃至図3に示すように、板形状を基本形態としている。ここで、本実施の形態で用いる配列治具2は、着磁磁石1を配列する際の以下の課題を解決するために想到した。
【0019】
図4は、磁束ループを説明するための図である。例えば、図4に示すように、3個の着磁磁石1を1組の磁石群11として用いて1つの磁束ループRが形成されるように、当該3個の着磁磁石1を配列するものとする。
【0020】
つまり、1組の磁石群11は、3個の着磁磁石1として、Y軸-側に配置される第1の着磁磁石1a、Y軸+側に配置される第2の着磁磁石1b、及び中央に配置される第3の着磁磁石1cを備えている。そして、隣接する磁石群11の間には、隣接する磁石群11の間の磁束を減少させるための着磁磁石1として、第4の着磁磁石1dを配置するものとする。
【0021】
このように配列される着磁磁石1を、例えば、磁性体100のZ軸+側の平坦面にY軸+側に向かって配列する場合、図4に示すように、1組の磁石群11が形成する磁束ループRにおいて、第2の着磁磁石1bの側の磁束が第1の着磁磁石1aの側の磁束に対して大きくなる。
【0022】
そのため、第2の着磁磁石1bの磁性体100への吸着力A2が第1の着磁磁石1aの磁性体100への吸着力A1に対して大きくなり、第1の着磁磁石1aを配列する場合に比べて、第2の着磁磁石1bを配列する際に当該第2の着磁磁石1bの位置制御が困難になる。また、第2の着磁磁石1bを配列する際に、第2の着磁磁石1bのZ軸-側の面が磁性体100のZ軸+側の平坦面に強く擦れて、第2の着磁磁石1bのZ軸-側の面が損傷する可能性がある。
【0023】
しかも、着磁磁石1を配列する際にY軸方向で隣接する磁極が異なる場合、異なる磁極の間で磁束が発生する。そのため、Y軸+側に新たに配置される着磁磁石1がY軸-側で隣接する着磁磁石1の影響を受け、Y軸+側に新たに配置される着磁磁石1の位置制御が困難になる。
【0024】
また、着磁磁石1を配列する際にY軸方向で隣接する着磁磁石1における対向する部分が異なる磁極である場合、隣接する着磁磁石1同士に吸着力が発生したり、隣接する着磁磁石1における対向する部分が等しい磁極である場合、隣接する着磁磁石1同士に反発力が発生したり、する。そのため、着磁磁石1の位置制御が困難になる。
【0025】
そこで、これらの課題を解消するために、本実施の形態の配列治具2は、図1乃至図3に示すように、配列治具2における着磁磁石1が配列される面であるZ軸+側の面に凹部21が形成されている。本実施の形態では、凹部21として、第1の凹部21a及び第2の凹部21bを備えている。
【0026】
第1の凹部21aは、配列治具2における第2の着磁磁石1bが配置される位置に形成されている。第1の凹部21aは、例えば、図1乃至図3に示すように、Z軸方向から見て、略円形状のディンプルであり、X軸方向に間隔を開けてS字状に並べられている。
【0027】
但し、第1の凹部21aは、X軸方向に間隔を開けて直線状に並べられたり、X軸方向にランダムに並べられたり、してもよい。また。第1の凹部21aは、略円形状のディンプルに限らず、多角形状若しくは楕円形状のディンプルでもよく、又は、溝形状でもよい。
【0028】
要するに、第1の凹部21aは、第2の着磁磁石1bの配列治具2への吸着力が、第2の着磁磁石1bの磁性体100への吸着力に対して減少する形状及び配置であればよい。このとき、第2の着磁磁石1bの配列治具2への吸着力と第1の着磁磁石1aの配列治具2への吸着力との差が減少するように、第2の着磁磁石1bと配列治具2との接触面積を、第1の着磁磁石1aと配列治具2との接触面積に比べて小さくするとよい。
【0029】
第2の凹部21bは、配列治具2に着磁磁石1が配列された際に、隣接する磁極が第2の凹部21bを跨ぐ位置に形成されている。このとき、第2の凹部21bは、例えば、着磁磁石1のN極部分とS極部分との境界部分に配置されるだけではなく、Y軸方向で隣接する着磁磁石1の境界部分にも配置されるとよい。なお、図1などで示す第2の凹部21bの配置は、一例であり、着磁磁石1のN極部分とS極部分との配置などに応じて、適宜、変更することができる。
【0030】
第2の凹部21bは、X軸方向に延在する溝部であり、着磁磁石1のX軸方向の長さ以上の長さを有する。これにより、異なる磁極の間に発生する磁束を減少させることができる。このとき、第2の凹部21bは、配列治具2に着磁磁石1が配列された際に、隣接する着磁磁石1同士の吸着力又は反発力に対して、着磁磁石1の配列治具2への吸着力が大きくなるように、第2の凹部21bのY軸方向の幅寸法及びZ軸方向の深さが設定されている。
【0031】
このような配列治具2のZ軸+側の面に、上述のようにY軸+側に向かって第1の着磁磁石1a→第3の着磁磁石1c→第2の着磁磁石1b→第4の着磁磁石1dの順で、配列治具2の第1の凹部21a及び第2の凹部21bを目印にして、これらの着磁磁石1a、1c、1b、1dを配列する工程を繰り返すと、着磁磁石1をハルバッハ配列することができる。
【0032】
このとき、第2の着磁磁石1bと配列治具2との接触面積が、第1の着磁磁石1aと配列治具2との接触面積に比べて異なる。そして、第1の凹部21aは、第2の着磁磁石1bの配列治具2への吸着力が当該第2の着磁磁石1bの磁性体100への吸着力に対して減少するように形成されている。
【0033】
そのため、第2の着磁磁石1bを配列する際に当該第2の着磁磁石1bの位置制御が容易になる。しかも、第1の凹部21aがディンプル形状の場合、第2の凹部21bと形状が異なるため、第2の着磁磁石1bを配置する位置を目視により確認し易い。
【0034】
ここで、第2の着磁磁石1bの配列治具2への吸着力と第1の着磁磁石1aの配列治具2への吸着力との差が減少するように、第2の着磁磁石1bと配列治具2との接触面積を、第1の着磁磁石1aと配列治具2との接触面積に比べて小さくすると、全ての着磁磁石1a、1b、1c、1dの配列治具2への吸着力を略平準化することができる。そのため、各々の着磁磁石1の位置制御を安定させることができる。
【0035】
また、第2の凹部21bは、配列治具2に着磁磁石1が配列された際に、異なる磁極の境界部分に配置されるので、異なる磁極の間で発生する磁束を減少させることができる。そのため、Y軸+側に新たに配置される着磁磁石1の位置制御が容易になる。
【0036】
さらに、第2の凹部21bは、配列治具2に着磁磁石1が配列された際に、隣接する着磁磁石1同士の吸着力又は反発力に対して、着磁磁石1の配列治具2への吸着力が大きくなるように形成されている。そのため、隣接する着磁磁石1同士の吸着力又は反発力に打ち勝つように、Y軸+側に新たに着磁磁石1を配置することができる。
【0037】
以上より、本実施の形態の磁石配列方法は、着磁磁石1を定められた位置に精度良く配列することができる。しかも、第2の着磁磁石1bの配列治具2への吸着力を減少させることができるので、第2の着磁磁石1bのZ軸-側の面と配列治具2とが強く擦れることを抑制でき、第2の着磁磁石1bのZ軸-側の面の損傷を抑制することができる。
【0038】
このとき、第2の凹部21bは、隣接する着磁磁石1の境界部分に配置されるように配列治具2に形成されているので、着磁磁石1を配列する際に第2の凹部21bを目印にして着磁磁石1を配列すればよい。これにより、着磁磁石1を定められた位置に簡単に配列することができる。
【0039】
次に、ロータの製造方法を説明する。図5は、配列治具の外周面に複数の着磁磁石が配列された様子を示す斜視図である。図6は、製造されたアウターロータを示す図である。なお、図5では、配列治具2の外周面に形成された凹部21を省略して当該配列治具2を簡略化して示している。上述の配列治具2を、例えば、図5に示すように、円筒形状とし、当該配列治具2の外周面に着磁磁石1を配列して相互を接合すると、着磁磁石1を円筒形状に配列することができる。
【0040】
そして、図6に示すように、例えば、円筒形状のロータコア3の内部に円筒形状に配列された着磁磁石1を挿入して、ロータコア3の内周面と着磁磁石1の外周面とを接合し、図示を省略した回転軸を取り付けると、アウターロータ4を製造することができる。但し、ロータコアの外周面に円筒形状に配列された着磁磁石1を固定してインナーロータを製造してもよい。
【0041】
本開示は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【0042】
例えば、上記実施の形態では、3個の着磁磁石1で1つの磁束ループRを形成しているが、磁束ループRを形成するための着磁磁石1の個数や磁極の配置などは限定されない。
【0043】
例えば、上記実施の形態では、配列治具2に凹部21を形成しているが、図7に示すように、着磁磁石1に凹部1eを形成してもよい。要するに、磁束ループを形成する一方の着磁磁石1の吸着力を減少させることができ、又は、隣接する異なる磁極の間で発生する磁束を減少させることができるように、着磁磁石1又は配列治具2の少なくとも一方に凹部が形成されていればよい。
【0044】
この出願は、2021年3月18日に出願された日本出願特願2021-44582を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0045】
1 着磁磁石、1a 第1の着磁磁石、1b 第2の着磁磁石、1c 第3の着磁磁石、1d 第4の着磁磁石、1e 凹部
2 配列治具
3 ロータコア
4 アウターロータ
11 磁石群
21 凹部、21a 第1の凹部、21b 第2の凹部
100 磁性体
A1、A2 吸着力
R 磁束ループ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7