(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 50/342 20210101AFI20240618BHJP
H01M 50/119 20210101ALI20240618BHJP
H01M 50/107 20210101ALI20240618BHJP
H01M 50/152 20210101ALI20240618BHJP
H01M 50/559 20210101ALI20240618BHJP
H01M 50/562 20210101ALI20240618BHJP
H01M 50/188 20210101ALI20240618BHJP
H01M 50/133 20210101ALI20240618BHJP
H01M 50/198 20210101ALI20240618BHJP
H01M 50/545 20210101ALI20240618BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20240618BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240618BHJP
【FI】
H01M50/342 101
H01M50/119
H01M50/107
H01M50/152
H01M50/559
H01M50/562
H01M50/188
H01M50/133
H01M50/198
H01M50/545
H01M4/58
H01M10/052
(21)【出願番号】P 2023510251
(86)(22)【出願日】2021-12-21
(86)【国際出願番号】 JP2021047216
(87)【国際公開番号】W WO2022209062
(87)【国際公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-05-24
(31)【優先権主張番号】P 2021060138
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥野 盛朗
(72)【発明者】
【氏名】堀越 吉一
(72)【発明者】
【氏名】葛本 泰地
【審査官】梅野 太朗
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M50/10、50/30、50/50
H01M4/58
H01M10/052
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通口を有する外装部材と、
前記外装部材の内部に収納された電池素子と、
前記外装部材の外側に配置されると共に前記貫通口を遮蔽する電極端子と、
前記電極端子と前記外装部材との間に配置されると共に前記貫通口を遮蔽しない絶縁部材と
を備え、
前記外装部材は、
開口部を有すると共に前記電池素子を内部に収納する収納部と、
前記貫通口を有すると共に前記開口部を閉塞する蓋部と
を含み、
前記収納部および前記蓋部は、互いに接合されており、
前記絶縁部材の荷重たわみ温度は、60℃以上150℃以下であり、
前記蓋部の厚さは、前記収納部の厚さよりも小さい、
二次電池。
【請求項2】
前記絶縁部材の厚さは、前記蓋部の厚さよりも小さい、
請求項1記載の二次電池。
【請求項3】
前記絶縁部材の厚さは、前記電極端子の厚さよりも小さい、
請求項1または請求項2に記載の二次電池。
【請求項4】
前記電極端子の厚さは、前記蓋部の厚さよりも大きい、
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項5】
前記絶縁部材の融点は、130℃以上250℃以下である、
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項6】
前記蓋部の熱伝導率は、前記絶縁部材の熱伝導率よりも大きい、
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項7】
前記電極端子の熱伝導率は、前記絶縁部材の熱伝導率よりも大きい、
請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項8】
前記電池素子は、正極および負極を含み、
前記正極は、正極集電体を含み、
前記負極は、負極集電体を含み、
前記正極集電体および前記負極集電体のうちのいずれか一方は、前記外装部材に接続されている、
請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項9】
前記外装部材および前記電極端子のうちのいずれか一方は、アルミニウムおよびアルミニウム合金のうちの少なくとも一方を含む、
請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項10】
前記電池素子は、正極および負極を含み、
前記正極および前記負極のうちの一方は、前記電極端子と電気的に接続されており、
前記正極および前記負極のうちの他方は、前記外装部材と電気的に接続されている、
請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項11】
前記蓋部は、窪み部を有し、
前記窪み部では、前記蓋部が前記収納部の内部に向かって部分的に窪むように屈曲しており、
前記電極端子は、前記窪み部の内部に配置されている、
請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項12】
前記電池素子は、正極を含み、
前記正極は、オリビン型の結晶構造を有する正極活物質を含む、
請求項1ないし請求項11のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項13】
リチウムイオン二次電池である、
請求項1ないし請求項12のいずれか1項に記載の二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機などの多様な電子機器が普及しているため、小型かつ軽量であると共に高エネルギー密度を得ることが可能である電源として二次電池の開発が進められている。この二次電池は、外装部材の内部に収納された電池素子を備えており、その二次電池の構成に関しては、様々な検討がなされている。
【0003】
具体的には、電池ケースの内部に正極および負極が収納されており、充電後に正極と負極とを互いに接触させた際の抵抗値が規定されている(例えば、特許文献1参照。)。この場合には、正極と接続された正極端子が電池ケースの一端に配置されていると共に、負極と接続された負極端子が電池ケースの他端に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
二次電池の構成に関する様々な検討がなされているが、その二次電池の安全性は未だ十分でないため、改善の余地がある。
【0006】
よって、優れた安全性を得ることが可能である二次電池が望まれている。
【0007】
本技術の一実施形態の二次電池は、貫通口を有する外装部材と、その外装部材の内部に収納された電池素子と、その外装部材の外側に配置されると共に貫通口を遮蔽する電極端子と、その電極端子と外装部材との間に配置されると共に貫通口を遮蔽しない絶縁部材とを備える。外装部材は、開口部を有すると共に電池素子を内部に収納する収納部と、貫通口を有すると共に開口部を閉塞する蓋部とを含む。収納部および蓋部は互いに接合されており、絶縁部材の荷重たわみ温度は60℃以上150℃以下であり、蓋部の厚さは収納部の厚さよりも小さい。
【0008】
ここで、荷重たわみ温度の測定方法は、JIS K7191-2に準拠する。この荷重たわみ温度の測定方法の詳細に関しては、後述する。
【0009】
本技術の一実施形態の二次電池によれば、貫通口を有する外装部材の内部に電池素子が収納されており、その外装部材の外側に配置された電極端子が貫通口を遮蔽しており、その電極端子と外装部材との間に配置された絶縁部材が貫通口を遮蔽しておらず、その外装部材が互いに接合された収納部および蓋部を含み、その絶縁部材の荷重たわみ温度が60℃以上150℃以下であり、その蓋部の厚さが収納部の厚さよりも小さいので、優れた安全性を得ることができる。
【0010】
なお、本技術の効果は、必ずしもここで説明された効果に限定されるわけではなく、後述する本技術に関連する一連の効果のうちのいずれの効果でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本技術の一実施形態における二次電池の構成を表す断面図である。
【
図2】
図1に示した電池素子の構成を拡大して表す断面図である。
【
図3】二次電池の寸法条件を説明するための断面図である。
【
図4】二次電池の動作を説明するための断面図である。
【
図5】二次電池の製造方法を説明するための断面図である。
【
図6】第1比較例の二次電池の構成を表す断面図である。
【
図7】第2比較例の二次電池の構成を表す断面図である。
【
図8】変形例1の二次電池の構成を表す断面図である。
【
図9】変形例2の二次電池の構成を表す断面図である。
【
図10】変形例3の二次電池の構成を表す断面図である。
【
図11】二次電池の適用例の構成を表すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本技術の一実施形態に関して、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、説明する順序は、下記の通りである。
1.二次電池
1-1.構成
1-2.寸法条件
1-3.動作
1-4.製造方法
1-5.作用および効果
2.変形例
3.二次電池の用途
【0013】
<1.二次電池>
まず、本技術の一実施形態の二次電池に関して説明する。
【0014】
ここで説明する二次電池は、柱状の立体的形状を有している。この二次電池は、後述するように、互いに対向する一対の底部と、その一対の底部のそれぞれに連結された側壁部とを有している。
【0015】
ここでは、二次電池は、いわゆる円筒型と呼称される二次電池であり、その二次電池では、外径よりも高さが大きくなっている。この「外径」とは、一対の底部のそれぞれの直径(最大直径)であると共に、「高さ」とは、一方の底部から他方の底部までの距離(最大距離)である。
【0016】
二次電池の充放電原理は、特に限定されないが、以下では、電極反応物質の吸蔵放出を利用して電池容量が得られる場合に関して説明する。この二次電池は、正極および負極と共に電解質を備えている。この二次電池では、負極の充電容量が正極の放電容量よりも大きくなっている。すなわち、負極の単位面積当たりの電気化学容量は、正極の単位面積当たりの電気化学容量よりも大きくなるように設定されている。充電途中において負極の表面に電極反応物質が析出することを防止するためである。
【0017】
電極反応物質の種類は、特に限定されないが、具体的には、アルカリ金属およびアルカリ土類金属などの軽金属である。アルカリ金属の具体例は、リチウム、ナトリウムおよびカリウムなどであると共に、アルカリ土類金属の具体例は、ベリリウム、マグネシウムおよびカルシウムなどである。
【0018】
以下では、電極反応物質がリチウムである場合を例に挙げる。リチウムの吸蔵放出を利用して電池容量が得られる二次電池は、いわゆるリチウムイオン二次電池である。このリチウムイオン二次電池では、リチウムがイオン状態で吸蔵および放出される。
【0019】
<1-1.構成>
図1は、二次電池の断面構成を表している。
図2は、
図1に示した電池素子20の断面構成を拡大している。
【0020】
ただし、
図2では、電池素子20の構成を分かりやすくするために、正極21、負極22およびセパレータ23のそれぞれが巻内側から巻外側に向かって延在していると共に、その正極21と負極22とセパレータ23とが互いに離隔されている状態を示している。
【0021】
以下の説明では、便宜上、
図1中の上側を二次電池の上側とすると共に、
図1中の下側を二次電池の下側とする。
【0022】
ここで説明する円筒型の二次電池は、
図1に示したように、外径Dよりも高さHが大きい立体的形状、すなわち円筒(円柱)状の立体的形状を有している。
【0023】
二次電池の寸法は、特に限定されないが、一例を挙げると、外径D=14mm~26mmであると共に、高さH=49mm~70mmである。ただし、高さHに対する外径Dの比D/Hは、1よりも小さくなっている。なお、比D/Hの下限値は、特に限定されないが、具体的には、0.28である。
【0024】
この二次電池は、
図1および
図2示したように、外装缶10と、電池素子20と、外部端子30と、ガスケット40と、正極リード51および負極リード52と、一対の絶縁板61,62と、シーラント70とを備えている。
【0025】
[外装缶]
外装缶10は、
図1に示したように、電池素子20などを収納する中空の外装部材であり、貫通口10Kを有している。
【0026】
ここでは、外装缶10は、円柱状である二次電池の立体的形状に応じて、円柱状の立体的形状を有している。このため、外装缶10は、互いに対向する上底部M1および下底部M2と、側壁部M3とを有している。この側壁部M3は、上底部M1と下底部M2との間に配置されていると共に、その上底部M1および下底部M2のそれぞれに連結されている。ここでは、上底部M1および下底部M2のそれぞれの平面形状は、円形であると共に、側壁部M3の表面は、外側に向かって凸型の湾曲面である。
【0027】
この外装缶10は、互いに接合された収納部11および蓋部12を含んでおり、その収納部11は、蓋部12により封止されている。ここでは、後述するように、収納部11および蓋部12が互いに溶接されている。
【0028】
収納部11は、電池素子20などを内部に収納する円柱状の略器状の部材(下底部M2および側壁部M3)である。ここでは、収納部11は、下底部M2と側壁部M3とが互いに一体化された構造を有している。この収納部11は、上端が開放されると共に下端が閉塞された中空の構造を有しているため、その上端に開口部11Kを有している。
【0029】
蓋部12は、開口部11Kを閉塞する略円盤状の部材(上底部M1)であり、上記した貫通口10Kを有している。この貫通口10Kは、後述するように、電池素子20と外部端子30とを互いに接続させるための接続経路として利用されると共に、ガスケット40に対する熱の伝達経路として利用される。
【0030】
ここでは、蓋部12は、窪み部12Uを有している。この窪み部12Uでは、蓋部12が収納部11の内部に向かって部分的に窪むように屈曲しているため、その蓋部12の一部が下向きの段差を形成するように折れ曲がっている。貫通口10Kは、窪み部12Uに設けられている。
【0031】
窪み部12Uの形状、すなわち二次電池を上方から見た場合において窪み部12Uの外縁により画定される形状は、特に限定されない。ここでは、窪み部12Uの形状は、円形である。なお、窪み部12Uの内径および深さは、特に限定されないため、任意に設定可能である。
【0032】
上記したように、外装缶10は、互いに物理的に分離されていた2個の部材(収納部11および蓋部12)が互いに溶接されている缶であるため、その外装缶10の缶種は、いわゆる溶接缶である。これにより、外装缶10は、全体として物理的に1個の部材であるため、事後的に2個の部材(収納部11および蓋部12)に分離できない状態である。
【0033】
溶接缶である外装缶10は、加締め加工を用いて形成されたクリンプ缶とは異なる缶であり、いわゆるクリンプレス缶である。外装缶10の内部において素子空間体積が増加するため、単位体積当たりのエネルギー密度が増加するからである。この「素子空間体積」とは、電池素子20を収納するために利用可能である外装缶10の内部空間の体積(有効体積)である。
【0034】
また、溶接缶である外装缶10は、互いに折り重なった部分を有していないと共に、2個以上の部材が互いに重なった部分を有していない。
【0035】
「互いに折り重なった部分を有していない」とは、外装缶10の一部が互いに折り重なるように加工(折り曲げ加工)されていないことを意味している。また、「2個以上の部材が互いに重なった部分を有していない」とは、二次電池の完成後において外装缶10が物理的に1個の部材であるため、その外装缶10が事後的に2個以上の部材に分離できないことを意味している。すなわち、完成後の二次電池における外装缶10の状態は、事後的に分離できるように2個以上の部材が互いに重なりながら組み合わされている状態でない。
【0036】
ここでは、外装缶10が導電性を有しているため、収納部11および蓋部12のそれぞれが導電性を有している。これにより、外装缶10は、負極リード52を介して電池素子20(後述する負極22)と電気的に接続されているため、その負極22の外部接続用端子として機能する。二次電池が外装缶10とは別個に負極22の外部接続用端子を備えていなくてもよいため、その負極22の外部接続用端子の存在に起因する素子空間体積の減少が抑制されるからである。これにより、素子空間体積が増加するため、単位体積当たりのエネルギー密度が増加する。
【0037】
具体的には、外装缶10は、金属材料および合金材料などの導電性材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでおり、その導電性材料は、鉄、銅、ニッケル、ステンレス、鉄合金、銅合金およびニッケル合金などである。ステンレスの種類は、特に限定されないが、具体的には、SUS304およびSUS316などである。ただし、収納部11の形成材料と蓋部12の形成材料とは、互いに同じでもよいし、互いに異なってもよい。
【0038】
なお、蓋部12は、後述するように、正極21の外部接続用端子として機能する外部端子30からガスケット40を介して絶縁されている。外装缶10(負極22の外部接続用端子)と外部端子30(正極21の外部接続用端子)との接触(短絡)が防止されるからである。
【0039】
蓋部12の熱伝導率(W/m・K)は、特に限定されないが、中でも、ガスケット40の熱伝導率(W/m・K)よりも大きいことが好ましい。電池素子20の発熱時において、その電池素子20において発生した熱が蓋部12を介してガスケット40に伝達されやすくなるため、外部端子30が熱作動式の開閉弁として機能しやすくなるからである。この熱作動式の開閉弁として機能する外部端子30の詳細に関しては、後述する。
【0040】
[電池素子]
電池素子20は、
図1に示したように、充放電反応を進行させる発電素子であり、外装缶10の内部に収納されている。この電池素子20は、
図2に示したように、正極21、負極22およびセパレータ23と共に、液状の電解質である電解液(図示せず)を含んでいる。
【0041】
ここで説明する電池素子20は、いわゆる巻回電極体である。すなわち、電池素子20では、正極21および負極22がセパレータ23を介して互いに積層されていると共に、その正極21、負極22およびセパレータ23が巻回されている。これにより、正極21および負極22は、セパレータ23を介して互いに対向しながら巻回されているため、電池素子20は、巻芯部である巻回中心空間20Kを有している。ここでは、正極21、負極22およびセパレータ23は、その負極22が最外周に配置されるように巻回されている。
【0042】
この電池素子20は、外装缶10の立体的形状と同様の立体的形状を有しているため、円柱状の立体的形状を有している。電池素子20が外装缶10の立体的形状とは異なる立体的形状を有している場合と比較して、その外装缶10の内部に電池素子20が収納された際にデッドスペース(外装缶10と電池素子20との間の余剰空間)が発生しにくくなるため、その外装缶10の内部空間が有効に利用されるからである。これにより、素子空間体積が増加するため、単位体積当たりのエネルギー密度が増加する。
【0043】
(正極)
正極21は、
図2に示したように、正極集電体21Aおよび正極活物質層21Bを含んでいる。
【0044】
正極集電体21Aは、正極活物質層21Bを支持する導電性の支持体であり、その正極活物質層21Bが設けられる一対の面を有している。この正極集電体21Aは、金属材料などの導電性材料を含んでおり、その金属材料は、アルミニウムなどである。
【0045】
ここでは、正極活物質層21Bは、正極集電体21Aの両面に設けられており、リチウムを吸蔵放出可能である正極活物質のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。ただし、正極活物質層21Bは、正極21が負極22に対向する側において正極集電体21Aの片面だけに設けられていてもよい。また、正極活物質層21Bは、さらに、正極結着剤および正極導電剤などの材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。正極活物質層21Bの形成方法は、特に限定されないが、具体的には、塗布法などである。
【0046】
正極活物質は、リチウム化合物を含んでいる。高いエネルギー密度が得られるからである。このリチウム化合物は、リチウムを構成元素として含む化合物であり、より具体的には、リチウムと共に1種類または2種類以上の遷移金属元素を構成元素として含む化合物である。ただし、リチウム化合物は、さらに、他元素(リチウムおよび遷移金属元素のそれぞれ以外の元素)のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。
【0047】
リチウム化合物の種類は、特に限定されないが、具体的には、酸化物、リン酸化合物、ケイ酸化合物およびホウ酸化合物などである。また、リチウム化合物の結晶構造は、特に限定されないが、具体的には、層状岩塩型の結晶構造、スピネル型の結晶構造およびオリビン型の結晶構造などである。
【0048】
層状岩塩型の結晶構造を有する酸化物の具体例は、LiNiO2 およびLiCoO2 などである。スピネル型の結晶構造を有する酸化物の具体例は、LiMn2 O4 などである。オリビン型の結晶構造を有するリン酸化合物の具体例は、LiFePO4 およびLiMnPO4 などである。
【0049】
中でも、正極21は、オリビン型の結晶構造を有する正極活物質を含んでいることが好ましいため、リチウム化合物は、オリビン型の結晶構造を有するリン酸化合物であることが好ましい。二次電池の安全性が向上するからである。詳細には、二次電池が過充電されても正極21からリチウムが放出されにくくなるため、負極22が過剰に充電されにくくなる。また、二次電池の熱暴走時において正極21が発熱しにくくなるため、その二次電池の温度が過剰に上昇しにくくなると共に、電解液の分解反応などに起因したガスが発生しにくくなる。
【0050】
より具体的には、リチウム化合物は、下記の式(1)で表される鉄系のリン酸化合物であることが好ましい。二次電池の安全性が十分に向上するからである。
【0051】
LiFex My PO4 ・・・(1)
(Mは、Nb、Ni、Mg、Ti、Zn、Zr、Ta、W、Mo、MnおよびCoのうちのいずれか1種類または2種類以上である。xおよびyは、0.5<x≦1および0≦y<0.5を満たしている。)
【0052】
正極結着剤は、合成ゴムおよび高分子化合物などのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。合成ゴムは、スチレンブタジエン系ゴムなどであると共に、高分子化合物は、ポリフッ化ビニリデンなどである。正極導電剤は、炭素材料などの導電性材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでおり、その炭素材料は、黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラックおよびケッチェンブラックなどである。ただし、導電性材料は、金属材料および高分子化合物などでもよい。
【0053】
ここで、正極活物質層21Bは、
図2に示したように、巻回方向(
図2中の横方向)において正極集電体21Aの一部だけに設けられており、より具体的には、その巻回方向において正極集電体21Aの中央部だけに設けられている。これにより、正極集電体21Aは、正極活物質層21Bにより被覆されていない巻内側の端部である露出部21AXを有していると共に、その正極活物質層21Bにより被覆されていない巻外側の端部である露出部21AYを有している。
【0054】
(負極)
負極22は、
図3に示したように、負極集電体22Aおよび負極活物質層22Bを含んでいる。
【0055】
負極集電体22Aは、負極活物質層22Bを支持する導電性の支持体であり、その負極活物質層22Bが設けられる一対の面を有している。この負極集電体22Aは、金属材料などの導電性材料を含んでおり、その金属材料は、銅などである。
【0056】
ここでは、負極活物質層22Bは、負極集電体22Aの両面に設けられており、リチウムを吸蔵放出可能である負極活物質のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。ただし、負極活物質層22Bは、負極22が正極21に対向する側において負極集電体22Aの片面だけに設けられていてもよい。また、負極活物質層22Bは、さらに、負極結着剤および負極導電剤などを含んでいてもよい。負極結着剤および負極導電剤のそれぞれに関する詳細は、正極結着剤および正極導電剤のそれぞれに関する詳細と同様である。負極活物質層22Bの形成方法は、特に限定されないが、具体的には、塗布法、気相法、液相法、溶射法および焼成法(焼結法)などのうちのいずれか1種類または2種類以上である。
【0057】
負極活物質は、炭素材料および金属系材料のうちの一方または双方などを含んでいる。高いエネルギー密度が得られるからである。炭素材料は、易黒鉛化性炭素、難黒鉛化性炭素および黒鉛(天然黒鉛および人造黒鉛)などである。金属系材料は、リチウムと合金を形成可能である金属元素および半金属元素のうちのいずれか1種類または2種類以上を構成元素として含む材料であり、その金属元素および半金属元素は、ケイ素およびスズのうちの一方または双方などである。ただし、金属系材料は、単体でもよいし、合金でもよいし、化合物でもよいし、それらの2種類以上の混合物でもよい、それらの2種類以上の相を含む材料でもよい。金属系材料の具体例は、TiSi2 およびSiOx (0<x≦2または0.2<x<1.4)などである。
【0058】
ここで、負極活物質層22Bは、
図2に示したように、巻回方向(
図2中の横方向)において負極集電体22Aの一部だけに設けられており、より具体的には、その巻回方向において負極集電体22Aの中央部だけに設けられている。これにより、負極集電体22Aは、負極活物質層22Bにより被覆されていない巻内側の端部である露出部22AXを有していると共に、その負極活物質層22Bにより被覆されていない巻外側の端部である露出部22AYを有している。
【0059】
ここでは、正極21および負極22は、上記したように、その負極22が最外周に配置されるように巻回されている。この場合において、露出部22AYは、外装缶10に接続されておらずに、その外装缶10から離隔されている。
【0060】
なお、負極活物質層22Bの長さは、正極活物質層21Bの長さよりも大きくなっている。ここで説明した「長さ」とは、巻回方向の寸法であり、以降においても同様である。この場合において、負極活物質層22Bは、正極活物質層21Bよりも巻内側に拡張されていると共に、その正極活物質層21Bよりも巻外側に拡張されている。正極21から放出されたリチウムイオンが負極22の表面において析出することを防止するためである。
【0061】
(セパレータ)
セパレータ23は、
図2に示したように、正極21と負極22との間に介在している絶縁性の多孔質膜であり、その正極21と負極22との接触(短絡)を防止しながらリチウムイオンを通過させる。このセパレータ23は、ポリエチレンなどの高分子化合物を含んでいる。
【0062】
なお、セパレータ23の長さは、正極21および負極22のそれぞれの長さよりも大きくなっている。この場合において、セパレータ23は、正極21および負極22のそれぞれよりも巻内側に拡張されていると共に、正極21および負極22のそれぞれよりも巻外側に拡張されている。正極21と負極22とが短絡することを防止するためである。
【0063】
(電解液)
電解液は、正極21、負極22およびセパレータ23のそれぞれに含浸されており、溶媒および電解質塩を含んでいる。溶媒は、炭酸エステル系化合物、カルボン酸エステル系化合物およびラクトン系化合物などの非水溶媒(有機溶剤)のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでおり、その非水溶媒を含んでいる電解液は、いわゆる非水電解液である。電解質塩は、リチウム塩などの軽金属塩のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。
【0064】
[外部端子]
外部端子30は、
図1に示したように、二次電池が電子機器に搭載される際に、その電子機器に接続される電極端子である。この外部端子30は、外装缶10の外側に配置されていると共に、貫通口10Kを遮蔽している。
【0065】
また、外部端子30は、ガスケット40を介して外装缶10により支持されている。より具体的には、外部端子30は、後述するように、ガスケット40を介して蓋部12に熱溶着されている。これにより、外部端子30は、ガスケット40を介して蓋部12から絶縁されながら、そのガスケット40を介して蓋部12に固定されている。
【0066】
ここでは、外部端子30は、正極リード51を介して電池素子20(上記した正極21)と電気的に接続されているため、その正極21の外部接続用端子として機能する。これにより、二次電池の使用時には、外部端子30(正極21の外部接続用端子)および外装缶10(負極22の外部接続用端子)を介して二次電池が電子機器に接続されるため、その電子機器が二次電池を電源として用いて動作可能になる。
【0067】
この外部端子30は、略板状の部材である。外部端子30の立体的形状は、特に限定されないが、具体的には、平坦な板状である。
【0068】
ここでは、外部端子30は、窪み部12Uの内部に配置されている。すなわち、外部端子30は、窪み部12Uよりも外側に突出しないように、その窪み部12Uの内部に収納されている。外部端子30が窪み部12Uよりも外側に突出している場合と比較して、二次電池の高さHが小さくなるため、単位体積当たりのエネルギー密度が増加するからである。
【0069】
なお、外部端子30の外径は、窪み部12Uの内径よりも小さいため、その外部端子30は、周囲において蓋部12から離隔されている。これにより、ガスケット40は、窪み部12Uの内部において蓋部12と外部端子30との間の空間のうちの一部だけに配置されており、より具体的には、ガスケット40が存在しなければ蓋部12と外部端子30とが互いに接触し得る場所だけに配置されている。
【0070】
また、外部端子30は、金属材料および合金材料などの導電性材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでおり、その導電性材料は、アルミニウムおよびアルミニウム合金などである。外部端子30の熱伝導率が向上するからである。これにより、電池素子20において発生した熱が外部端子30を介してガスケット40に伝達されやすくなるため、その外部端子30が熱作動式の開閉弁として機能しやすくなる。また、外部端子30の重量が減少するからである。これにより、二次電池の重量当たりのエネルギー密度が増加するからである。
【0071】
なお、外部端子30は、クラッド材を含んでいてもよい。このクラッド材は、ガスケット40に近い側から順にアルミニウム層およびニッケル層を含んでおり、そのアルミニウム層およびニッケル層は、互いに圧延接合されている。なお、クラッド材は、ニッケル層の代わりにニッケル合金層を含んでいてもよい。
【0072】
特に、外部端子30は、外装缶10の内圧上昇時において、その内圧を開放する開放弁として機能する。この内圧が上昇する原因は、充放電時における電解液の分解反応に起因したガスの発生などであると共に、その電解液の分解反応を促進させる要因は、二次電池内部短絡、二次電池の加熱および大電流条件による二次電池の放電などである。
【0073】
この外部端子30は、後述する圧力作動式の開放弁として機能する安全弁機構91(
図6参照)とは異なり、熱作動式の開放弁として機能する。すなわち、熱作動式の開閉弁として機能する外部端子30は、外装缶10の内部において圧力が上昇したことに応じて作動するのではなく、その外装缶10の内部温度が上昇したことに応じて作動する。これに対して、圧力作動式の開放弁として機能する安全弁機構91は、外装缶10の内部温度が上昇したことに応じて作動するのではなく、その外装缶10の内部において圧力が上昇したことに応じて作動する。
【0074】
具体的には、外部端子30は、上記したように、ガスケット40を介して蓋部12に熱溶着されている。これにより、正常時には、外部端子30がガスケット40を介して蓋部12に固定されているため、その外部端子30が貫通口10Kを遮蔽している。すなわち、外装缶10が密閉されているため、その外装缶10の内部に電池素子20が封入されている。
【0075】
一方、異常発生時、すなわち電池素子20の発熱に起因して外装缶10の内部温度が過度に上昇すると、その電池素子20において発生した熱を利用してガスケット40が加熱されるため、そのガスケット40が熱的に変形する。この場合には、電池素子20において発生した熱が蓋部12および外部端子30のそれぞれに伝導されるため、その蓋部12および外部端子30のそれぞれを介してガスケット40が加熱される。この電池素子20が発熱する要因は、大電流条件による二次電池の充電および二次電池の過充電などである。
【0076】
これにより、ガスケット40を介して蓋部12に固定されている外部端子30の固定強度(シール強度)が低下するため、その外部端子30が蓋部12から部分的または全体的に分離される。よって、蓋部12と外部端子30との間に隙間(内圧の開放経路)が形成されるため、その隙間を利用して内圧が開放される。
【0077】
上記したように、蓋部12は収納部11に溶接されているのに対して、外部端子30はガスケット40を介して蓋部12に熱溶着されているため、その蓋部12に対する外部端子30の固定強度は、その収納部11に対する蓋部12の固定強度(溶接強度)よりも低くなる。この場合には、電池素子20の発熱時において外装缶10の内圧が過度に上昇すると、その内圧の増加を利用して蓋部12が収納部11から分離される前に、ガスケット40の熱的変形を利用して外部端子30が蓋部12から分離される。これにより、外装缶10が破裂する前に外部端子30が開放弁として機能するため、その外装缶10の破裂が防止される。
【0078】
外部端子30の熱伝導率(W/m・K)は、特に限定されないが、中でも、ガスケット40の熱伝導率(W/m・K)よりも大きいことが好ましい。電池素子20において発生した熱が外部端子30を介してガスケット40に伝達されやすくなるため、その外部端子30が熱作動式の開閉弁として機能しやすくなるからである。
【0079】
[ガスケット]
ガスケット40は、
図1に示したように、貫通口10Kを遮蔽しないように外部端子30と外装缶10との間に配置されている絶縁部材である。より具体的には、ガスケット40は、外部端子30と蓋部12との間に配置されている。
【0080】
このガスケット40は、絶縁性かつ熱溶融性を有する高分子化合物のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいるため、外部端子30は、ガスケット40を介して蓋部12に熱溶着されている。
【0081】
ガスケット40の荷重たわみ温度、すなわちガスケット40の形成材料である高分子化合物の荷重たわみ温度は、上記した電池素子20の発熱温度に対応する温度であり、より具体的には、60℃~150℃である。ガスケット40が熱的に変形可能になるため、外部端子30が熱作動式の開放弁として機能可能になるからである。すなわち、正常時においては外部端子30がガスケット40を介して蓋部12に固定されやすくなると共に、異常発生時においては外部端子30がガスケット40の熱的変形を利用して蓋部12から分離されやすくなる。
【0082】
ここで、荷重たわみ温度の測定方法は、上記したように、JIS K7191-2に準拠する。ガスケット40の荷重たわみ温度を特定するためには、二次電池を解体することにより、ガスケット40を回収したのち、そのガスケット40を分析(荷重たわみ温度を測定)してもよい。この他、ガスケット40の物性(材質、分子量および結晶化度など)を調べたのち、そのガスケット40の物性と同様の物性を有する材料(高分子化合物)を別途準備することにより、その高分子化合物を分析してもよい。
【0083】
この場合において、ガスケット40の融点は、特に限定されないが、中でも、130℃~250℃であることが好ましい。ガスケット40の溶解を利用して外部端子30が蓋部12から分離されやすくなるため、外部端子30が熱作動式の開放弁として機能しやすくなるからである。
【0084】
ガスケット40の形成材料である高分子化合物の具体例は、上記した荷重たわみ温度に関する条件が満たされていれば、特に限定されないが、一例を挙げると、ポリプロピレンおよびポリエチレンなどである。
【0085】
ここでは、ガスケット40は、上記したように、貫通口10Kを遮蔽していないため、その貫通口10Kに対応する箇所に貫通口を有するリング状の平面形状を有している。ただし、ガスケット40の平面形状は、特に限定されないため、任意に変更可能である。
【0086】
なお、ガスケット40の設置範囲は、特に限定されないため、任意に設定可能である。ここでは、ガスケット40は、窪み部12Uの内部において、蓋部12の上面と外部端子30の下面との間に配置されている。ただし、ガスケット40の設置範囲は、蓋部12の上面と外部端子30の下面との間の空間よりも外側まで拡張されていてもよい。
【0087】
[正極リード]
正極リード51は、
図1に示したように、外装缶10の内部に収納されており、外部端子30に正極21を接続させる正極21用の接続配線である。この正極リード51は、正極集電体21Aに接続されていると共に、貫通口10Kを経由して外部端子30に接続されている。
【0088】
ここでは、二次電池は、1本の正極リード51を備えている。ただし、二次電池は、2本以上の正極リード51を備えていてもよい。正極リード51の本数が増加すると、電池素子20の電気抵抗が低下するからである。
【0089】
正極リード51の形成材料に関する詳細は、正極集電体21Aの形成材料に関する詳細と同様である。ただし、正極リード51の形成材料と正極集電体21Aの形成材料とは、互いに同じでもよいし、互いに異なってもよい。
【0090】
なお、正極リード51は、正極集電体21Aから物理的に分離されているため、その正極集電体21Aとは別体化されている。ただし、正極リード51は、正極集電体21Aと物理的に連続しているため、その正極集電体21Aと一体化されていてもよい。
【0091】
[負極リード]
負極リード52は、
図1に示したように、外装缶10の内部に収納されており、外装缶10に負極22を接続させる負極22用の接続配線である。この負極リード52は、負極集電体22Aに接続されていると共に、収納部11に接続されている。
【0092】
ここでは、二次電池は、1本の負極リード52を備えている。ただし、二次電池は、2本以上の負極リード52を備えていてもよい。負極リード52の本数が増加すると、電池素子20の電気抵抗が低下するからである。
【0093】
負極リード52の形成材料に関する詳細は、負極集電体22Aの形成材料に関する詳細と同様である。ただし、負極リード52の形成材料と負極集電体22Aの形成材料とは、互いに同じでもよいし、互いに異なってもよい。
【0094】
なお、負極リード52は、負極集電体22Aから物理的に分離されているため、その負極集電体22Aとは別体化されている。ただし、負極リード52は、負極集電体22Aと物理的に連続しているため、その負極集電体22Aと一体化されていてもよい。
【0095】
[一対の絶縁板]
絶縁板61,62は、
図1に示したように、高さ方向において電池素子20を挟むように配置されているため、その電池素子20を介して互いに対向している。この絶縁板61は、蓋部12と電池素子20との間に配置されている。絶縁板61,62のそれぞれは、ポリイミドなどの絶縁性材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。
【0096】
なお、絶縁板61は、巻回中心空間20Kのうちの一部または全体と重なる位置に貫通口61Kを有していることが好ましい。後述するように、二次電池の製造工程において、巻回体が収納されている収納部11の内部に電解液が注入された際に、その電解液の一部が巻回中心空間20Kの内部に供給されるため、その巻回体が電解液により含浸されやすくなるからである。
図1では、貫通口61Kの内径が巻回中心空間20Kの内径よりも大きいと共に、その貫通口61Kが巻回中心空間20Kの全体と重なっている場合を示している。
【0097】
[シーラント]
シーラント70は、
図1に示したように、正極リード51を保護する部材であり、その正極リード51の周囲を被覆するチューブ状の構造を有している。このシーラント70は、高分子化合物などの絶縁性材料を含んでおり、その高分子化合物は、ポリイミドなどである。これにより、正極リード51は、シーラント70を介して蓋部12および負極22のそれぞれから絶縁されている。
【0098】
<1-2.寸法条件>
図3は、二次電池の寸法条件を説明するために、
図1に示した二次電池の断面構成の一部を拡大している。ただし、
図3では、収納部11の一部と共に、蓋部12、外部端子30およびガスケット40を示している。
【0099】
この二次電池では、外部端子30が熱作動式の開閉弁として機能するために、
図3に示したように、一連の構成要素の寸法(厚さ)に関して所定の条件(寸法条件)が満たされている。以下では、収納部11の厚さT1、蓋部12の厚さT2、外部端子30の厚さT3およびガスケット40の厚さT4に関する寸法条件を説明する。
【0100】
具体的には、蓋部12の厚さT2は、収納部11の厚さT1よりも小さくなっている。外装缶10の形状安定性が担保されながら、外部端子30が熱作動式の開閉弁として機能しやすくなるからである。
【0101】
詳細には、厚さT1が厚さT2よりも大きいため、収納部11の剛性が蓋部12の剛性よりも高くなる。この場合には、外装缶10の大部分を占める収納部11の剛性が十分に大きくなるため、その外装缶10の全体の物理的強度が向上する。これにより、外装缶10が外部圧力および内部圧力に起因して変形しにくくなるため、その外装缶10の形状安定性が向上する。
【0102】
しかも、厚さT2が厚さT1よりも小さいため、蓋部12が収納部11よりも薄くなる。この場合には、電池素子20において発生した熱が蓋部12を介してガスケット40に伝達されやすくなるため、そのガスケット40が熱的に変形しやすくなる。これにより、外部端子30が蓋部12から分離されやすくなるため、その外部端子30が熱作動式の開放弁として機能しやすくなる。
【0103】
厚さT2が厚さT1よりも小さくなっていれば、その厚さT1,T2のそれぞれの値は、特に限定されない。中でも、厚さT1,T2のそれぞれは、50mm以上であることが好ましい。収納部11および蓋部12のそれぞれの剛性が担保されながら、その収納部11および蓋部12のそれぞれの熱伝導効率が十分に高くなるからである。厚さT1,T2のそれぞれが50mm未満である場合には、収納部11および蓋部12のそれぞれからガスケット40に熱が伝達されやすくなる一方で、その収納部11および蓋部12のそれぞれにおいてかえって放熱されやすくなるため、その熱の伝達効率が低下しやすくなる。
【0104】
なお、ガスケット40の厚さT4は、特に限定されない。中でも、ガスケット40の厚さT4は、蓋部12の厚さT2よりも小さいことが好ましい。電池素子20において発生した熱が蓋部12を介してガスケット40に伝達されやすくなるため、外部端子30が蓋部12から分離されやすくなるからである。また、ガスケット40の厚さT4は、外部端子30の厚さT3よりも小さいことが好ましい。電池素子20において発生した熱が外部端子30を介してガスケット40に伝達されやすくなるため、その外部端子30が蓋部12から分離されやすくなるからである。
【0105】
また、外部端子30の厚さT3は、特に限定されないが、中でも、蓋部12の厚さT2よりも大きいことが好ましい。外部端子30の剛性が担保されるため、その外部端子30の過剰な変形が抑制されるからである。これにより、外部端子30が熱作動式の開閉弁として意図せずに作動すること、すなわち必要時以外において外部端子30が熱作動式の開閉弁として作動しすぎることは防止される。
【0106】
ただし、厚さT1は、互いに離隔された5箇所において測定された厚さの平均値とする。このように平均値であることは、厚さT2~T4のそれぞれに関しても同様である。
【0107】
<1-3.動作>
図4は、二次電池の動作を説明するために、
図1に対応する断面構成を表している。以下では、充放電時の動作に関して説明したのち、異常発生時の動作に関して説明する。
【0108】
[充放電時の動作]
充電時には、電池素子20において、正極21からリチウムが放出されると共に、そのリチウムが電解液を介して負極22に吸蔵される。一方、放電時には、電池素子20において、負極22からリチウムが放出されると共に、そのリチウムが電解液を介して正極21に吸蔵される。これらの充電時および放電時には、リチウムがイオン状態で吸蔵および放出される。
【0109】
[異常発生時の動作]
電池素子20が発熱すると、電解液の分解反応などに起因してガスが発生するため、外装缶10の内圧が上昇する。この場合には、外部端子30が熱作動式の開放弁として機能するため、外装缶10が破裂する前に内圧が開放される。
【0110】
具体的には、電池素子20が発熱すると、その電池素子20において発生した熱を利用してガスケット40が加熱されるため、そのガスケット40が熱的に変形する。この場合には、
図4に示したように、外部端子30が蓋部12から部分的または全体的に分離されるため、蓋部12と外部端子30との間に隙間Gが形成される。
図4では、外部端子30が蓋部12から部分的に分離された場合を示している。これにより、隙間Gを利用して内圧が開放されるため、外装缶10の破裂が防止される。
【0111】
この場合には、特に、外装缶10の内圧が過度に上昇しなくても、その外装缶10の内部温度が十分に上昇すれば外部端子30が開閉弁として作動する。これにより、外装缶10が破裂する前に内圧が開放されるため、その外装缶10の破裂が効果的に防止される。
【0112】
<1-4.製造方法>
図5は、二次電池の製造方法を説明するために、
図1に対応する断面構成を表している。
図5では、収納部11と蓋部12とが互いに分離されている状態を示している。以下の説明では、随時、
図5と共に、既に説明した
図1~
図3を参照する。
【0113】
二次電池を製造する場合には、以下で例示する手順により、正極21および負極22を作製すると共に電解液を調製したのち、その正極21、負極22および電解液を用いて二次電池を組み立てると共に、その組み立て後の二次電池の安定化処理を行う。
【0114】
ここでは、
図5に示したように、外装缶10を形成するために、互いに物理的に分離されている収納部11および蓋部12を用いる。上記したように、収納部11は、開口部11Kを有している。また、上記したように、蓋部12は、窪み部12Uを有していると共に、その蓋部12には、あらかじめ外部端子30がガスケット40を介して熱溶着されている。
【0115】
[正極の作製]
最初に、正極活物質、正極結着剤および正極導電剤が互いに混合された正極合剤を溶媒に投入することにより、ペースト状の正極合剤スラリーを調製する。この溶媒は、水性溶媒でもよいし、有機溶剤でもよい。ここで説明した溶媒に関する詳細は、以降においても同様である。続いて、正極集電体21Aの両面に正極合剤スラリーを塗布することにより、正極活物質層21Bを形成する。最後に、ロールプレス機などを用いて正極活物質層21Bを圧縮成型する。この場合には、正極活物質層21Bを加熱してもよいと共に、圧縮成型を複数回繰り返してもよい。これにより、正極集電体21Aの両面に正極活物質層21Bが形成されるため、正極21が作製される。
【0116】
[負極の作製]
最初に、負極活物質、負極結着剤および負極導電剤が互いに混合された負極合剤を溶媒に投入することにより、ペースト状の負極合剤スラリーを調製する。続いて、負極集電体22Aの両面に負極合剤スラリーを塗布することにより、負極活物質層22Bを形成する。最後に、ロールプレス機などを用いて負極活物質層22Bを圧縮成型する。負極活物質層22Bの圧縮成型に関する詳細は、正極活物質層21Bの圧縮成型に関する詳細と同様である。これにより、負極集電体22Aの両面に負極活物質層22Bが形成されるため、負極22が作製される。
【0117】
[電解液の調製]
溶媒に電解質塩を投入する。これにより、溶媒中において電解質塩が分散または溶解されるため、電解液が調製される。
【0118】
[二次電池の組み立て]
最初に、溶接法などを用いて、正極21のうちの正極集電体21Aに、シーラント70により周囲を部分的に被覆された正極リード51を接続させる。また、溶接法などを用いて、負極22のうちの負極集電体22Aに負極リード52を接続させる。溶接法は、抵抗溶接法およびレーザ溶接法などのうちのいずれか1種類または2種類以上である。ここで説明した溶接法に関する詳細は、以降においても同様である。
【0119】
続いて、セパレータ23を介して正極21および負極22を互いに積層させたのち、その正極21、負極22およびセパレータ23を巻回させることにより、巻回中心空間20Kを有する巻回体(図示せず)を作製する。この巻回体は、正極21、負極22およびセパレータ23のそれぞれに電解液が含浸されていないことを除いて、電池素子20の構成と同様の構成を有している。
【0120】
続いて、巻回体を介して互いに対向するように絶縁板61,62を配置したのち、開口部11Kから収納部11の内部に巻回体と共に絶縁板61,62を収納する。この場合には、溶接法などを用いて、収納部11に負極リード52を接続させる。
【0121】
続いて、開口部11Kから収納部11の内部に電解液を注入する。これにより、巻回体(正極21、負極22およびセパレータ23)に電解液が含浸されるため、電池素子20が作製される。この場合には、電解液の一部が巻回中心空間20Kの内部に供給されるため、その電解液が巻回中心空間20Kの内部から巻回体に含浸される。
【0122】
続いて、外部端子30がガスケット40を介して熱溶着されている蓋部12を用いて開口部11Kを閉塞したのち、収納部11に蓋部12を接合させる。ここでは、溶接法を用いて収納部11に蓋部12を溶接する。この場合には、溶接法などを用いて、貫通口10Kを経由して外部端子30に正極リード51を接続させる。
【0123】
なお、ガスケット40を用いて外部端子30を蓋部12に熱溶着する場合には、その蓋部12と外部端子30との間にガスケット40を介在させたのち、そのガスケット40を加熱する。加熱温度は、ガスケット40の形成材料などの条件に応じて、任意に設定可能である。
【0124】
これにより、収納部11および蓋部12が互いに溶接されるため、外装缶10が形成されると共に、その外装缶10の内部に電池素子20などが収納されるため、二次電池が組み立てられる。
【0125】
[二次電池の安定化]
組み立て後の二次電池を充放電させる。環境温度、充放電回数(サイクル数)および充放電条件などの条件は、任意に設定可能である。これにより、電池素子20において正極21および負極22のそれぞれの表面に被膜が形成されるため、二次電池の状態が電気化学的に安定化する。
【0126】
よって、外装缶10の内部に電池素子20などが封入されるため、二次電池が完成する。
【0127】
<1-5.作用および効果>
この二次電池によれば、以下で説明する作用および効果が得られる。
【0128】
[主な作用および効果]
本実施形態の二次電池では、貫通口10Kを有する外装缶10の内部に電池素子20が収納されており、その外装缶10の外側に配置された外部端子30が貫通口10Kを遮蔽しており、その外部端子30と外装缶10との間に配置されたガスケット40が貫通口10Kを遮蔽しておらず、その外装缶10が互いに接合された収納部11および蓋部12を含んでおり、そのガスケット40の荷重たわみ温度が60℃~150℃であり、その蓋部12の厚さT2が収納部11の厚さT1よりも小さい。よって、以下で説明する理由により、優れた安全性を得ることができる。
【0129】
以下では、本実施形態の二次電池と2種類の比較例の二次電池とを互いに比較することにより、作用および効果の差異に関して説明する。
【0130】
(第1比較例の二次電池の構成)
図6は、第1比較例の二次電池の断面構成を表しており、
図1に対応している。この第1比較例の二次電池は、
図6に示したように、以下で説明することを除いて、
図1に示した本実施形態の二次電池の構成と同様の構成を有している。
【0131】
具体的には、第1比較例の二次電池は、溶接法を用いて形成された溶接缶(クリンプレス缶)である外装缶10を備えている本実施形態の二次電池とは異なり、加締め加工を用いて形成された加締缶(クリンプ缶)である外装缶80を備えている。この外装缶80は、収納部81および蓋部82を含んでいる。また、第1比較例の二次電池は、安全弁機構91、熱感抵抗素子(PTC素子)92およびガスケット93を備えている。
【0132】
収納部81は、収納部11の構成と同様の構成を有している。すなわち、収納部81は、開口部81Kを有する中空の円柱状の立体的形状を有している。なお、収納部81の材質は、収納部11の材質と同様である。
【0133】
開口部81Kが設けられている収納部81の一端部(開放端部)には、蓋部82、安全弁機構91およびPTC素子92がガスケット93を介して加締められているため、その開口部81Kは、蓋部82により密閉されている。蓋部82の材質は、収納部81の材質と同様である。安全弁機構91およびPTC素子92のそれぞれは、蓋部82の内側に設けられていると共に、その安全弁機構91は、PTC素子92を介して蓋部82と電気的に接続されている。ガスケット93は、ポリプロピレンなどの絶縁性材料を含んでいる。
【0134】
この安全弁機構91では、外装缶80の内圧が上昇すると、ディスク板91Aが反転するため、その内圧が開放されると共に、電池素子20と蓋部12との電気的接続が切断される。すなわち、安全弁機構91は、圧力作動式の開放弁として機能する。大電流に起因する異常な発熱を防止するために、PTC素子92の電気抵抗は、温度の上昇に応じて増加する。
【0135】
(第2比較例の二次電池の構成)
図7は、第2比較例の二次電池の断面構成を表しており、
図1に対応している。この第2比較例の二次電池は、ガスケット40の代わりにガスケット140を備えていることを除いて、
図1に示した本実施形態の二次電池の構成と同様の構成を有している。このガスケット140は、高い荷重たわみ温度(=200℃超)を有するガラスを含んでおり、外部端子30は、ガスケット140を介して蓋部12に熱溶着されている。
【0136】
(第1比較例の二次電池の問題点)
第1比較例の二次電池は、上記したように、圧力作動式の開放弁として機能する安全弁機構91を備えている。しかしながら、安全弁機構91は内圧の上昇に応じて作動するため、外装缶10の内部状況によっては二次電池の安全性が低下する。
【0137】
詳細には、いわゆる熱暴走などに起因して電池素子20が急速に発熱すると、外装缶10の内圧の上昇速度よりも、その外装缶10の内部温度の上昇速度が大きくなる。この場合には、外装缶10の内圧が安全弁機構91を駆動させることができる圧力に到達する前に、外装缶10の内部温度が過度に上昇するため、その安全弁機構91が作動した時点において、外装缶10が著しく高温になる。
【0138】
よって、第1比較例の二次電池では、電池素子20の発熱時において二次電池が高温化するため、優れた安全性を得ることが困難である。
【0139】
なお、正極21が正極活物質としてオリビン型の結晶構造を有するリチウム化合物(リン酸化合物)を含んでいると、上記したように、外装缶10の内部においてガスが発生しにくくなるため、その外装缶10の内圧が根本的に上昇しにくくなる。この場合には、二次電池が安全弁機構91を備えていても、その安全弁機構91が作動する前に二次電池が著しく高温下しやすくなるため、安全性が著しく低下する。
【0140】
(第2比較例の二次電池の問題点)
第2比較例の二次電池では、外部端子30がガスケット140を介して蓋部12に熱溶着されているため、その外部端子30が熱作動式の開放弁として機能し得るように思われる。
【0141】
しかしながら、ガスケット140が高い荷重たわみ温度を有するガラスを含んでいるため、そのガスケット140が熱的に変形する温度は、電池素子20の発熱温度よりも高くなる。この場合には、電池素子20が発熱しても、ガスケット140の温度が熱的に変形することができる温度まで到達しないため、外部端子30が蓋部12から分離されなくなる。これにより、外部端子30が実質的に熱作動式の開閉弁として機能できないため、外装缶10の内圧が過度に上昇すると、その外装缶10が破裂する。
【0142】
よって、第2比較例の二次電池では、電池素子20の発熱時において外装缶10が破裂しやすくなるため、優れた安全性を得ることが困難である。
【0143】
(本実施形態の二次電池の利点)
これに対して、本実施形態の二次電池では、外部端子30がガスケット40を介して蓋部12に熱溶着されているため、その外部端子30が熱作動式の開放弁として機能する。
【0144】
詳細には、ガスケット40が適度に低い荷重たわみ温度(=60℃~150℃)を有しているため、そのガスケット40が熱的に変形する温度は、電池素子20の発熱温度とほぼ同じになる。この場合には、電池素子20が発熱すると、ガスケット40の温度が熱的に変形することができる温度まで到達するため、外部端子30が蓋部12から分離される。これにより、外部端子30が実質的に熱作動式の開閉弁として機能することが可能になるため、外装缶10が破裂する前に内圧が開放される。また、内圧の開放に応じて外装缶10の内部が冷却されるため、その外装缶10の内部温度が過度に上昇しにくくなる。
【0145】
しかも、蓋部12の厚さT2が収納部11の厚さT1よりも小さいため、電池素子20において発生した熱が蓋部12を介してガスケット40に伝達されやすくなると共に、外装缶10の大部分を占める収納部11の剛性が外装缶10の一部である蓋部12の剛性よりも大きくなる。これにより、内圧の上昇時において外装缶10が破損しにくくなると共に、外部端子30が熱作動式の開閉弁としてより機能しやすくなる。
【0146】
よって、本実施形態の二次電池では、電池素子20の発熱時において、外装缶が高温化しにくくなると共に、その外装缶10が破裂しにくくなるため、優れた安全性を得ることができる。
【0147】
[他の作用および効果]
本実施形態の二次電池では、特に、ガスケット40の厚さT4が蓋部12の厚さT2よりも小さくなっていれば、電池素子20において発生した熱が蓋部12を介してガスケット40に伝達されやすくなる。よって、ガスケット40が熱的に変形しやすくなるため、より高い効果を得ることができる。
【0148】
また、ガスケット40の厚さT4が外部端子30の厚さT3よりも小さくなっていれば、電池素子20において発生した熱が外部端子30を介してガスケット40に伝達されやすくなる。よって、ガスケット40が熱的に変形しやすくなるため、より高い効果を得ることができる。
【0149】
また、外部端子30の厚さT3が蓋部12の厚さT2よりも大きくなっていれば、その外部端子30の過剰な変形が抑制される。よって、熱作動式の開閉弁として機能する外部端子30が意図せずに作動すること、すなわち外部端子30の誤作動が防止されるため、より高い効果を得ることができる。
【0150】
また、ガスケット40の融点が130℃~250℃であれば、そのガスケット40の溶解を利用して外部端子30が熱作動式の開放弁として機能しやすくなるため、より高い効果を得ることができる。
【0151】
また、蓋部12の熱伝導率がガスケット40の熱伝導率よりも大きくなっていれば、電池素子20において発生した熱が蓋部12を介してガスケット40に伝達されやすくなる。よって、ガスケット40が熱的に変形しやすくなるため、より高い効果を得ることができる。
【0152】
また、外部端子30の熱伝導率がガスケット40の熱伝導率よりも大きくなっていれば、電池素子20において発生した熱が外部端子30を介してガスケット40に伝達されやすくなる。よって、ガスケット40が熱的に変形しやすくなるため、より高い効果を得ることができる。
【0153】
また、外部端子30がアルミニウムおよびアルミニウム合金のうちの一方または双方を含んでいれば、その外部端子30の熱伝導率が向上すると共に、二次電池の重量エネルギー密度が増加するため、より高い効果を得ることができる。
【0154】
なお、熱作動式の開放弁として機能する外部端子30を用いることにより、その外部端子30の形成材料として軽量である一方で物理的強度が低いアルミニウムおよびアルミニウム合金のうちの一方または双方を用いても、外装缶10の破裂が効果的に抑制されるため、この観点においても安全性を向上させることができる。
【0155】
また、正極21が外部端子30と電気的に接続されており、その負極22が外装缶10と電気的に接続されていれば、その外部端子30が正極21の外部接続用端子として機能すると共に、その外装缶10が負極22の外部接続用端子として機能する。これにより、二次電池が外装缶10および外部端子30を介して電子機器に容易に接続可能になると共に、素子空間体積の増加に応じて単位体積当たりのエネルギー密度が増加するため、より高い効果を得ることができる。
【0156】
また、蓋部12が窪み部12Uを有しており、外部端子30が窪み部12Uの内部に配置されていれば、素子空間体積の増加に応じて体積エネルギー密度が増加するため、より高い効果を得ることができる。
【0157】
また、正極21がオリビン型の結晶構造を有する正極活物質を含んでいれば、電池素子20の発熱時において外装缶10の内圧が根本的に上昇しにくくても、熱作動式の開閉弁として機能する外部端子30を利用して内圧が十分に開放されるため、より高い効果を得ることができる。
【0158】
また、二次電池がリチウムイオン二次電池であれば、リチウムの吸蔵放出を利用して十分な電池容量が安定に得られるため、より高い効果を得ることができる。
【0159】
<2.変形例>
上記した二次電池の構成は、以下で説明するように、適宜、変更可能である。ただし、以下で説明する一連の変形例のうちの任意の2種類以上は、互いに組み合わされてもよい。
【0160】
[変形例1]
図1では、正極21が正極リード51を介して外部端子30に接続されていると共に、負極22が負極リード52を介して収納部11に接続されている。これにより、外部端子30が正極21の外部接続用端子として機能すると共に、外装缶10が負極22の外部接続用端子として機能する。
【0161】
しかしながら、
図1に対応する
図8に示したように、正極21が正極リード51を介して収納部11に接続されていると共に、負極22が負極リード52を介して外部端子30に接続されていてもよい。これにより、外装缶10が正極21の外部接続用端子として機能すると共に、外部端子30が負極22の外部接続用端子として機能してもよい。
【0162】
この場合において、外部端子30は、負極22の外部接続用端子として機能するために、金属材料および合金材料の導電性材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでおり、その導電性材料は、鉄、銅、ニッケル、ステンレス、鉄合金、銅合金およびニッケル合金などである。外装缶10(収納部11および蓋部12)は、正極21の外部接続用端子として機能するために、金属材料および合金材料の導電性材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでおり、その導電性材料は、アルミニウム、アルミニウム合金およびステンレスなどである。
【0163】
この場合においても、二次電池が外部端子30(負極22の外部接続用端子)および外装缶10(正極21の外部接続用端子)を介して電子機器に接続可能であるため、
図1に示した場合と同様の効果を得ることができる。
【0164】
この場合には、特に、外装缶10がアルミニウムおよびアルミニウム合金のうちの一方または双方を含んでいるため、その外装缶10の熱伝導率が向上すると共に、二次電池の重量エネルギー密度が著しく増加する。よって、より高い効果を得ることができる。
【0165】
なお、加締め加工を用いて形成された加締缶(外装缶80)を用いる場合には、その外装缶80の形成材料としてアルミニウムおよびアルミニウム合金のうちの一方または双方を用いることが困難である。収納部81の物理的強度が不足するため、加締め加工を用いて収納部81に蓋部82を固定することが困難だからである。
【0166】
これに対して、溶接加工を用いて形成された溶接缶(外装缶10)を用いる場合には、その外装缶10の形成材料としてアルミニウムおよびアルミニウム合金のうちの一方または双方を用いることができる。収納部11の物理的強度が問題にならないと共に、加締め加工を用いずに収納部81に蓋部82が固定(溶接)されるからである。よって、上記したように、外装缶10の形成材料としてアルミニウムおよびアルミニウム合金のうちの一方または双方を用いることにより、重量エネルギー密度が著しく増加する。
【0167】
[変形例2]
図1では、負極22が最外周に配置されるように正極21および負極22が巻回されており、負極集電体22Aの巻外側の端部である露出部22AYが外装缶10から離隔されている。
【0168】
しかしながら、
図1に対応する
図9に示したように、露出部22AYが収納部11に接続されているため、負極集電体22Aが外装缶10と直接的に電気的接続されていてもよい。露出部22AYと収納部11との接続面積は、任意に設定可能である。
【0169】
この場合においても、外部端子30が熱作動式の開閉弁として機能するため、
図1に示した場合と同様の効果を得ることができる。
【0170】
この場合には、特に、電池素子20において発生した熱が露出部22AYを介して外装缶10に伝達されるため、その熱が蓋部12を介してガスケット40に伝達されやすくなる。よって、外部端子30が熱作動式の開閉弁として機能しやすくなるため、より高い効果を得ることができる。
【0171】
[変形例3]
図1に対応する
図10に示したように、正極21が最外周に配置されるように正極21および負極22が巻回されており、正極集電体21Aの巻外側の端部である露出部21AYが収納部11に接続されているため、正極集電体21Aが外装缶10と直接的に電気的接続されていてもよい。露出部21AYと収納部11との接続面積は、任意に設定可能である。
【0172】
なお、露出部21AYが収納部11に接続されている場合には、負極集電体22Aの全体が負極活物質層22Bにより被覆されているため、その負極集電体22Aが露出部22AX,22AYのそれぞれを含んでいなくてもよい。
【0173】
この場合においても、外部端子30が熱作動式の開閉弁として機能するため、
図1に示した場合と同様の効果を得ることができる。
【0174】
この場合には、特に、電池素子20において発生した熱が露出部21AYを介して外装缶10に伝達されるため、その熱が蓋部12を介してガスケット40に伝達されやすくなる。よって、外部端子30が熱作動式の開閉弁として機能しやすくなるため、より高い効果を得ることができる。
【0175】
[変形例4]
図1では、比D/Hが1よりも小さいため、二次電池の電池構造が円筒型である。
【0176】
しかしながら、ここでは具体的に図示しないが、比D/Hが1よりも大きいため、二次電池の電池構造がコイン型(またはボタン型)でもよい。このコイン型の二次電池の構成は、比D/Hが異なるため、その二次電池の立体的形状が扁平かつ円柱状であることを除いて、円筒型の二次電池の構成と同様である。
【0177】
コイン型の二次電池の寸法は、比D/Hが1よりも大きくなっていれば、特に限定されない。一例を挙げると、外径D=3mm~30mmであると共に、高さH=0.5mm~70mmである。比D/Hの上限値は、特に限定されないが、その比D/Hは、25以下であることが好ましい。
【0178】
このコイン型の二次電池においても、円筒型の二次電池に関する効果と同様の効果を得ることができる。
【0179】
[変形例5]
多孔質膜であるセパレータ23を用いた。しかしながら、ここでは具体的に図示しないが、セパレータ23の代わりに、高分子化合物層を含む積層型のセパレータを用いてもよい。
【0180】
具体的には、積層型のセパレータは、一対の面を有する多孔質膜と、その多孔質膜の片面または両面に設けられた高分子化合物層とを含んでいる。正極21および負極22のそれぞれに対するセパレータの密着性が向上するため、電池素子20の巻きずれが抑制されるからである。これにより、電解液の分解反応が発生しても、二次電池が膨れにくくなる。高分子化合物層は、ポリフッ化ビニリデンなどの高分子化合物を含んでいる。ポリフッ化ビニリデンなどは、物理的強度に優れていると共に、電気化学的に安定だからである。
【0181】
なお、多孔質膜および高分子化合物層のうちの一方または双方は、複数の絶縁性粒子のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。二次電池の発熱時において複数の絶縁性粒子が放熱するため、その二次電池の安全性(耐熱性)が向上するからである。絶縁性粒子は、無機粒子および樹脂粒子のうちの一方または双方などである。無機粒子の具体例は、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、ベーマイト、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化マグネシウムおよび酸化ジルコニウムなどの粒子である。樹脂粒子の具体例は、アクリル樹脂およびスチレン樹脂などの粒子である。
【0182】
積層型のセパレータを作製する場合には、高分子化合物および溶媒などを含む前駆溶液を調製したのち、多孔質膜の片面または両面に前駆溶液を塗布する。この場合には、多孔質膜に前駆溶液を塗布する代わりに、その前駆溶液中に多孔質膜を浸漬させてもよい。また、前駆溶液中に複数の絶縁性粒子を含有させてもよい。
【0183】
この積層型のセパレータを用いた場合においても、正極21と負極22との間においてリチウムイオンが移動可能になるため、同様の効果を得ることができる。この場合には、特に、上記したように、二次電池の安全性が向上するため、より高い効果を得ることができる。
【0184】
[変形例6]
液状の電解質である電解液を用いた。しかしながら、ここでは具体的に図示しないが、電解液の代わりに、ゲル状の電解質である電解質層を用いてもよい。
【0185】
電解質層を用いた電池素子20では、セパレータ23および電解質層を介して正極21および負極22が互いに積層されていると共に、その正極21、負極22、セパレータ23および電解質層が巻回されている。この電解質層は、正極21とセパレータ23との間に介在していると共に、負極22とセパレータ23との間に介在している。ただし、電解質層は、正極21とセパレータ23との間だけに介在していてもよいし、負極22とセパレータ23との間だけに介在していてもよい。
【0186】
具体的には、電解質層は、電解液と共に高分子化合物を含んでおり、その電解液は、高分子化合物により保持されている。電解液の漏液が防止されるからである。電解液の構成は、上記した通りである。高分子化合物は、ポリフッ化ビニリデンなどを含んでいる。電解質層を形成する場合には、電解液、高分子化合物および溶媒などを含む前駆溶液を調製したのち、正極21および負極22のそれぞれの片面または両面に前駆溶液を塗布する。
【0187】
この電解質層を用いた場合においても、正極21と負極22との間において電解質層を介してリチウムイオンが移動可能になるため、同様の効果を得ることができる。この場合には、特に、上記したように、電解液の漏液が防止されるため、より高い効果を得ることができる。
【0188】
[変形例7]
図1では、二次電池が巻回型の電池素子20(巻回電極体)を備えている。しかしながら、ここでは具体的に図示しないが、二次電池が積層型の電池素子(積層電極体)を備えていてもよい。
【0189】
積層型の電池素子は、以下で説明することを除いて、巻回型の電池素子20の構成と同様の構成を有している。
【0190】
積層型の電池素子は、正極、負極およびセパレータを含んでおり、その正極および負極は、セパレータを介して交互に積層されている。このため、積層型の電池素子は、1個または2個以上の正極と、1個または2個以上の負極と、1個または2個以上のセパレータとを含んでいる。正極、負極およびセパレータのそれぞれの構成は、正極21、負極22およびセパレータ23のそれぞれの構成と同様である。
【0191】
積層型の電池素子が複数の正極および複数の負極を含んでいる場合には、その複数の正極のそれぞれの正極集電体に正極リードが接続されていると共に、その複数の負極のそれぞれの負極集電体に負極リードが接続されているため、二次電池は、複数の正極リードおよび複数の負極リードを備えている。複数の正極リードは、互いに接合された状態において外部端子30に接続されていると共に、複数の負極リードは、互いに接合された状態において収納部11に接続されている。
【0192】
この場合においても、積層型の電池素子において充放電されるため、同様の効果を得ることができる。
【0193】
<3.二次電池の用途>
二次電池の用途(適用例)は、特に限定されない。電源として用いられる二次電池は、電子機器および電動車両などの主電源でもよいし、補助電源でもよい。主電源とは、他の電源の有無に関係なく、優先的に用いられる電源である。補助電源は、主電源の代わりに用いられる電源、または主電源から切り替えられる電源である。
【0194】
二次電池の用途の具体例は、以下の通りである。ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、携帯電話機、ノート型パソコン、ヘッドホンステレオ、携帯用ラジオおよび携帯用情報端末などの電子機器である。バックアップ電源およびメモリーカードなどの記憶用装置である。電動ドリルおよび電動鋸などの電動工具である。電子機器などに搭載される電池パックである。ペースメーカおよび補聴器などの医療用電子機器である。電気自動車(ハイブリッド自動車を含む。)などの電動車両である。非常時などに備えて電力を蓄積しておく家庭用または産業用のバッテリシステムなどの電力貯蔵システムである。これらの用途では、1個の二次電池が用いられてもよいし、複数個の二次電池が用いられてもよい。
【0195】
電池パックは、単電池を用いてもよいし、組電池を用いてもよい。電動車両は、二次電池を駆動用電源として作動(走行)する車両であり、その二次電池以外の駆動源を併せて備えたハイブリッド自動車でもよい。家庭用の電力貯蔵システムでは、電力貯蔵源である二次電池に蓄積された電力を利用して家庭用の電気製品などを使用可能である。
【0196】
ここで、二次電池の適用例の一例に関して具体的に説明する。以下で説明する適用例の構成は、あくまで一例であるため、適宜、変更可能である。
【0197】
図11は、電池パックのブロック構成を表している。ここで説明する電池パックは、1個の二次電池を用いた電池パック(いわゆるソフトパック)であり、スマートフォンに代表される電子機器などに搭載される。
【0198】
この電池パックは、
図11に示したように、電源101と、回路基板102とを備えている。この回路基板102は、電源101に接続されていると共に、正極端子103、負極端子104および温度検出端子105を含んでいる。
【0199】
電源101は、1個の二次電池を含んでいる。この二次電池では、正極リードが正極端子103に接続されていると共に、負極リードが負極端子104に接続されている。この電源101は、正極端子103および負極端子104を介して外部と接続可能であるため、充放電可能である。回路基板102は、制御部106と、スイッチ107と、熱感抵抗素子(PTC素子)108と、温度検出部109とを含んでいる。ただし、PTC素子108は省略されてもよい。
【0200】
制御部106は、中央演算処理装置(CPU)およびメモリなどを含んでおり、電池パック全体の動作を制御する。この制御部106は、必要に応じて電源101の使用状態の検出および制御を行う。
【0201】
なお、制御部106は、電源101(二次電池)の電圧が過充電検出電圧または過放電検出電圧に到達すると、スイッチ107を切断することにより、電源101の電流経路に充電電流が流れないようにする。過充電検出電圧は、特に限定されないが、具体的には、4.2V±0.05Vであると共に、過放電検出電圧は、特に限定されないが、具体的には、2.4V±0.1Vである。
【0202】
スイッチ107は、充電制御スイッチ、放電制御スイッチ、充電用ダイオードおよび放電用ダイオードなどを含んでおり、制御部106の指示に応じて電源101と外部機器との接続の有無を切り換える。このスイッチ107は、金属酸化物半導体を用いた電界効果トランジスタ(MOSFET)などを含んでおり、充放電電流は、スイッチ107のON抵抗に基づいて検出される。
【0203】
温度検出部109は、サーミスタなどの温度検出素子を含んでおり、温度検出端子105を用いて電源101の温度を測定すると共に、その温度の測定結果を制御部106に出力する。温度検出部109により測定される温度の測定結果は、異常発熱時において制御部106が充放電制御を行う場合および残容量の算出時において制御部106が補正処理を行う場合などに用いられる。
【実施例】
【0204】
本技術の実施例に関して説明する。
【0205】
<実施例1~11および比較例1~5>
二次電池を作製したのち、その二次電池の性能を評価した。
【0206】
[円筒型の二次電池の作製]
以下で説明する手順により、
図1~
図3に示した二次電池(円筒型のリチウムイオン二次電池)を作製した。この二次電池は、熱作動式の開放弁として機能する外部端子30を備えている。
【0207】
(正極の作製)
最初に、正極活物質91質量部と、正極結着剤(ポリフッ化ビニリデン)3質量部と、正極導電剤(黒鉛)6質量部とを互いに混合させることにより、正極合剤とした。正極活物質としては、表1に示したように、層状岩塩型の結晶構造を有するリチウム化合物(複合酸化物)であるLiNi0.8 Co0.15Al0.05O2 (NCA)およびLiCoO2 (LCO)と、オリビン型の結晶構造を有するLiFePO4 (LFP)とを用いた。続いて、溶媒(有機溶剤であるN-メチル-2-ピロリドン)に正極合剤を投入したのち、その有機溶剤を撹拌することにより、ペースト状の正極合剤スラリーを調製した。続いて、コーティング装置を用いて正極集電体21A(帯状のアルミニウム箔,厚さ=12μm)の両面に正極合剤スラリーを塗布したのち、その正極合剤スラリーを乾燥させることにより、正極活物質層21Bを形成した。この場合には、正極合剤スラリーの塗布範囲を調整することにより、正極集電体21Aが露出部21AX,21AYを有するようにした。最後に、ロールプレス機を用いて正極活物質層21Bを圧縮成型した。これにより、正極21が作製された。
【0208】
(負極の作製)
最初に、負極活物質(炭素材料である黒鉛および金属系材料であるSiO)95質量部と、負極結着剤(ポリフッ化ビニリデン)5質量部とを互いに混合させることにより、負極合剤とした。炭素材料と金属系材料との混合比(重量比)は、炭素材料:金属系材料=95:5とした。続いて、溶媒(有機溶剤であるN-メチル-2-ピロリドン)に負極合剤を投入したのち、その有機溶剤を撹拌することにより、ペースト状の負極合剤スラリーを調製した。続いて、コーティング装置を用いて負極集電体22A(帯状の銅箔,厚さ=15μmで)の両面に正極合剤スラリーを塗布したのち、その負極合剤スラリーを乾燥させることにより、負極活物質層22Bを形成した。この場合には、負極合剤スラリーの塗布範囲を調整することにより、負極集電体22Aが露出部22AX,22AYを有するようにした。最後に、ロールプレス機を用いて負極活物質層22Bを圧縮成型した。これにより、負極22が作製された。
【0209】
(電解液の調製)
溶媒(炭酸エチレンおよび炭酸ジエチル)に電解質塩(LiPF6 )を添加したのち、その溶媒を攪拌した。溶媒の混合比(重量比)は、炭酸エチレン:炭酸ジエチル=30:70としたと共に、電解質塩の含有量は、溶媒に対して1mol/kgとした。これにより、溶媒中において電解質塩が溶解または分散されたため、電解液が調製された。
【0210】
(二次電池の組み立て)
最初に、抵抗溶接法を用いて、正極21のうちの正極集電体21Aに正極リード51(アルミニウム)を溶接したと共に、抵抗溶接法を用いて、負極22のうちの負極集電体22Aに負極リード52(アルミニウム)を溶接した。
【0211】
続いて、セパレータ23(ポリエチレン,厚さ=10μm)を介して正極21および負極22を互いに積層させたのち、その正極21、負極22およびセパレータ23を巻回させることにより、巻回中心空間20Kを有する巻回体を作製した。この場合には、最外周に正極21または負極22が配置されるように正極21および負極22を巻回させた。
【0212】
続いて、絶縁板61,62(ポリイミド)を用いて巻回体を挟んだのち、開口部11Kから収納部11の内部に巻回体と共に絶縁板61,62を収納した。収納部11の材質および厚さT1(mm)は、表1に示した通りである。収納部11の材質は、鉄(Fe,熱導電率=83.5W/m・K)、アルミニウム(Al,熱伝導率=236W/m・K)またはステンレス鋼(SUS,熱伝導率=20W/m・K)とした。より具体的には、最外周に負極22が配置されるように正極21および負極22を巻回させた場合には、収納部11の材質を鉄としたと共に、最外周に正極21が配置されるように正極21および負極22を巻回させた場合には、収納部11の材質をアルミニウムとした。
【0213】
この場合には、抵抗溶接法を用いて負極リード52を収納部11に溶接した。また、最外周に負極22が配置されるように正極21および負極22を巻回させた場合には、抵抗溶接法を用いて収納部11に露出部22AYを溶接したと共に、最外周に正極21が配置されるように正極21および負極22を巻回させた場合には、抵抗溶接法を用いて収納部11に露出部21AYを溶接した。なお、最外周に負極22が配置されるように正極21および負極22を巻回させた場合には、必要に応じて、収納部11に露出部22AYを溶接しなかった。
【0214】
続いて、ガスケット40を介して外部端子30が熱溶着されている蓋部12を準備した。蓋部12、外部端子30およびガスケット40のそれぞれの材質と、その蓋部12の厚さT2(mm)、外部端子30の厚さT3(mm)およびガスケット40の厚さT4(mm)とは、表1に示した通りである。蓋部12の材質は、収納部11の材質と同様にした。外部端子30の材質は、クラッド材(Al/NiCu,熱伝導率=127W/m・K)またはステンレス鋼(SUS,熱伝導率=20W/m・K)とした。より具体的には、最外周に負極22が配置されるように正極21および負極22を巻回させた場合には、外部端子30の材質をクラッド材としたと共に、最外周に正極21が配置されるように正極21および負極22を巻回させた場合には、収納部11の材質をステンレス鋼とした。クラッド材は、蓋部12に近い側から順にAl層およびNiCu層が積層されていると共に、そのAl層とNiCu層とが互いに圧延接合されている材料である。ガスケット40の材質は、ポリプロピレン(PP,荷重たわみ温度(0.45MPa)=60℃~150℃,融点=160℃,熱伝導率=0.12W/m・K)とした。
【0215】
この場合には、比較のために、表1に示したように、ガスケット40の材質をシリコン樹脂(荷重たわみ温度=200℃,融点=300℃)としたことを除いて同様の構成を有する蓋部12も用いた。
【0216】
続いて、開口部11Kから収納部11の内部に電解液を注入したのち、レーザ溶接法を用いて収納部11に蓋部12を溶接した。この場合には、抵抗溶接法を用いて、貫通口10Kを経由して正極リード51を外部端子30に溶接した。
【0217】
これにより、巻回体に電解液が含浸されたため、電池素子20が作製されたと共に、収納部11に蓋部12が接合されたため、外装缶10が形成された。よって、外装缶10の内部に電池素子20などが封入されたため、二次電池が組み立てられた。
【0218】
(二次電池の安定化)
常温環境中(温度=23℃)において、組み立て後の二次電池を1サイクル充放電させた。充電時には、0.1Cの電流で電圧が4.2Vに到達するまで定電流充電したのち、その4.2Vの電圧で電流が0.05Cに到達するまで定電圧充電した。放電時には、0.1Cの電流で電圧が3.0Vに到達するまで定電流放電した。0.1Cとは、電池容量(理論容量)を10時間で放電しきる電流値であると共に、0.05Cとは、電池容量を20時間で放電しきる電流値である。
【0219】
これにより、正極21および負極22のそれぞれの表面に被膜が形成されたため、二次電池の状態が電気化学的に安定化した。よって、二次電池(外径D=21mm×高さH=700mm)が完成した。
【0220】
[コイン型の二次電池の作製]
比D/Hを変更したことを除いて、上記した円筒型の二次電池の作製手順と同様の手順により、二次電池(コイン型のリチウムイオン二次電池,外径D=16mm×高さH=5.4mm)を作製した。
【0221】
[他の円筒型の二次電池の作製]
比較のために、以下で説明する手順により、
図6に示した二次電池(円筒型のリチウムイオン二次電池)を作製した。この二次電池は、圧力作動式の開放弁として機能する安全弁機構91を備えている。
【0222】
安全弁機構91を備えた二次電池の作製手順は、以下で説明することを除いて、外部端子30を備えた二次電池の作製手順と同様である。二次電池を組み立てる場合には、開口部81Kから収納部81の内部に巻回体と共に絶縁板61,62を収納したのち、安全弁機構91に正極リード51を溶接したと共に、収納部81に負極リード52を溶接した。続いて、収納部81の内部に電解液を注入することにより、電池素子20を作製したのち、開口部81Kから収納部81の内部に蓋部82、安全弁機構91およびPTC素子92を収納したのち、ガスケット93を介して収納部81を加締めた。これにより、収納部81に蓋部82が固定されたため、外装缶80が形成されたと共に、その外装缶80の内部に電池素子20などが封入された。
【0223】
収納部81、蓋部82およびガスケット93のそれぞれの材質と、その収納部81の厚さT1(mm)および蓋部82の厚さT2(mm)とは、表1に示した通りである。
【0224】
なお、表1に示した一連の項目は、以下で説明する事項を表している。「電池構造」は、二次電池の種類(円筒型またはコイン型)を表している。「缶種」は、外装缶10,80の種類(溶接缶または加締缶)を表している。「作動方式」は、開閉弁の作動方式を表している。具体的には、「熱」は熱作動式を表しており、「圧力」は圧力作動式を表している。「素子接続」は、収納部11と電池素子20との接続を表している。具体的には、「負集」は、露出部22AYが収納部11に接続されていることを表しており、「正集」は、露出部21AYが収納部11に接続されていることを表している。
【0225】
[電池特性の評価]
二次電池の電池特性として、安全性を評価するための指標である内圧開放特性を調べたところ、表1に示した結果が得られた。
【0226】
内圧開放特性を評価する場合には、熱電対を用いて外装缶10,80の中央部の温度を測定しながら二次電池の過充電試験を行うことにより、内圧の開放状態を調べた。
【0227】
具体的には、過充電試験では、3Cの電流で電圧が18Vに到達するまで定電流充電することにより、二次電池を過充電させた。この場合には、二次電池において開放弁が作動することにより、外装缶10,80の内圧を開放させることができたか否か(開放状態)を判定したと共に、その内圧を開放させることができた場合には、開閉弁の作動温度(℃)を調べた。
【0228】
開放弁が作動したとは、その二次電池が以下のように動作したことを意味している。熱作動式の開放弁である外部端子30を備えている二次電池では、外装缶10の内部温度が上昇したことに応じて外部端子30が蓋部12から分離されたため、内圧が開放されたことを意味している。圧力作動式の開放弁である安全弁機構91を備えている二次電池では、外装缶80の内圧が上昇したことに応じてディスク板91Aが反転したため、内圧が開放されたことを意味している。
【0229】
開放状態に関する判定内容は、以下で説明する通りである。開放弁が作動したため、外装缶10が破裂および変形しなかったと共に、その外装缶10の内部から外部に電池素子20が放出されなかった場合には、Aと判定した。開放弁が作動したたため、外装缶10が破裂しなかったと共に、その外装缶10の内部から外部に電池素子20は放出されなかったが、その外装缶10が変形した場合には、Bと判定した。開放弁が作動したと共に、外装缶10の内部から外部に電池素子20は放出されなかったたが、その外装缶10が破裂した場合には、Cと判定した。開放弁が作動せず、外装缶10が破裂しなかったと共に、その外装缶10の内部から外部に電池素子20は放出されなかったが、その外装缶10が変形した場合には、Dと判定した。開放弁が作動せず、外装缶10が破裂したため、その外装缶10の内部から外部に電池素子20が放出された場合には、Eと判定した。
【0230】
【0231】
[考察]
表1に示したように、内圧の開放状態は、二次電池の構成に応じて変動した。
【0232】
具体的には、圧力作動式の開放弁である安全弁機構91を用いた場合(比較例4,5)には、過充電時において、内圧を開放できないか、その内圧を開放できても作動温度が高くなった。
【0233】
すなわち、正極活物質が層状岩塩型の結晶構造を有するリチウム化合物(複合酸化物)を含んでいる場合(比較例4)には、過充電時において異常な発熱後に大量のガスが発生したことに起因して内圧が十分に上昇したため、開放弁が作動した。しかしながら、外装缶10が破裂したと共に、作動温度が高くなり、より具体的には作動温度が200℃まで到達した。
【0234】
また、正極活物質がオリビン型の結晶構造を有するリチウム化合物(リン酸化合物)を含んでいる場合(比較例5)には、過充電時において大量のガスが発生しなかったことに起因して内圧が十分に上昇しなかったため、開放弁が作動しなかった。ただし、ガスの発生に起因して外装缶10が変形した。
【0235】
一方、熱作動式の開放弁である外部端子30を用いた場合(実施例1~11および比較例1~3)には、過充電時において外装缶10が破裂および変形する前に内圧を開放できるか否かは二次電池の構成に左右された。
【0236】
すなわち、円筒型の二次電池において蓋部12の厚さT2が収納部11の厚さT1と同じである場合(比較例1)には、過充電時においてガスケット40に十分な量の熱が電圧されなかったことに起因して、そのガスケット40が十分に加熱されなかった。これにより、開放弁は作動したが、その開放弁の作動が遅れたため、外装缶10が変形したと共に、作動温度が高くなった。このようにガスケット40が十分に加熱されなかったことに起因して開放弁の作動が遅れたことは、コイン型の二次電池において蓋部12の厚さT2が収納部11の厚さT1と同じである場合(比較例3)にも同様であった。特に、厚さT1,T2が互いに同じになると、蓋部12よりも収納部11が変形しやすくなることに起因して、その蓋部12の変形を利用して外部端子30が蓋部12から分離される作用が得られなくなるため、外装缶10の破裂および変形が誘発されやすくなった。
【0237】
また、円筒型の二次電池においてガスケット40が高い荷重たわみ温度を有するシリコン樹脂を含んでいる場合(比較例2)には、過充電時においてガスケット40が熱的に変形しなかったことに起因して外部端子30が蓋部12から分離されなかった。これにより、開放弁が作動できなかったため、内圧を開放できなかった。この場合には、特に、内圧が過度に上昇しても開放弁が作動しなかったため、外装缶10が破裂したと共に、その外装缶10の内部から外部に電池素子20が放出された。
【0238】
これに対して、円筒型の二次電池において蓋部12の厚さT2が収納部11の厚さT1よりも小さい場合(実施例1~10)には、過充電時においてガスケット40に十分な量の熱が伝達されたことに応じて、そのガスケット40が十分に加熱された。これにより、開放弁が作動したため、内圧を開放できた。しかも、作動温度は、200℃未満に抑えられた。このようにガスケット40が十分に加熱されたことに起因して内圧を開放できたことは、コイン型の二次電池において蓋部12の厚さT2が収納部11の厚さT1より小さい場合(実施例11)においても同様であった。
【0239】
この蓋部12の厚さT2が収納部11の厚さT1よりも小さい場合(実施例1~11)には、特に、以下で説明する一連の傾向が得られた。第1に、ガスケット40の厚さT4が蓋部12の厚さT2よりも小さいと、作動温度が低下した。第2に、ガスケット40の厚さT4が外部端子30の厚さT3よりも小さいと、作動温度が低下した。第3に、外部端子30の厚さT3が蓋部12の厚さT2よりも大きいと、作動温度が低下した。第4に、ガスケット40の材質としてポリプロピレン(荷重たわみ温度=60℃~150℃,融点=160℃)を用いると、作動温度が十分に低下した。第5に、外装缶10および外部端子30のうちのいずれか一方がアルミニウムまたはクラッド材を用いても、開放弁が安定に作動した。第6に、正極21がオリビン型の結晶構造を有するリチウム化合物(リン酸化合物)を含んでいても、開放弁が安定に作動した。
【0240】
[まとめ]
表1に示した結果から、ガスケット40の荷重たわみ温度が60℃~150℃であり、その蓋部12の厚さT2が収納部11の厚さT1よりも小さいと、適正な作動温度において開放弁(外部端子30)が作動したため、内圧開放特性が改善された。よって、優れた安全性を得ることができた。
【0241】
以上、一実施形態および実施例を挙げながら本技術に関して説明したが、その本技術の構成は、一実施形態および実施例において説明された構成に限定されないため、種々に変形可能である。
【0242】
具体的には、電極反応物質がリチウムである場合に関して説明したが、その電極反応物質は、特に限定されない。このため、電極反応物質は、上記したように、ナトリウムおよびカリウムなどの他のアルカリ金属でもよいし、ベリリウム、マグネシウムおよびカルシウムなどのアルカリ土類金属でもよい。この他、電極反応物質は、アルミニウムなどの他の軽金属でもよい。
【0243】
本明細書中に記載された効果は、あくまで例示であるため、本技術の効果は、本明細書中に記載された効果に限定されない。よって、本技術に関して、他の効果が得られてもよい。