(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】敷設状態特定システム、敷設状態特定装置、及び敷設状態特定方法
(51)【国際特許分類】
G01H 9/00 20060101AFI20240618BHJP
【FI】
G01H9/00 E
(21)【出願番号】P 2023520681
(86)(22)【出願日】2021-05-13
(86)【国際出願番号】 JP2021018204
(87)【国際公開番号】W WO2022239184
(87)【国際公開日】2022-11-17
【審査請求日】2023-10-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 慎也
【審査官】岡村 典子
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-529952(JP,A)
【文献】特表2019-537721(JP,A)
【文献】特開2003-229823(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0275788(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01H 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路に敷設され、前記道路における車両の走行により発生した振動を検知する光ファイバと、
前記光ファイバから光信号を受信し、前記光信号から前記振動を示す振動情報を取得する振動情報取得部と、
前記車両の走行履歴を示す履歴情報を取得する履歴情報取得部と、
前記履歴情報の経時的変化及び前記振動情報の経時的変化に基づいて、前記光ファイバの敷設状態を特定する敷設状態特定部と、を備える、
敷設状態特定システム。
【請求項2】
前記履歴情報は、前記車両の走行位置の履歴を含み、
前記敷設状態特定部は、前記光ファイバによる前記振動の検知位置と前記履歴情報に含まれる前記車両の走行位置とを紐付けることにより、前記敷設状態を特定する、
請求項1に記載の敷設状態特定システム。
【請求項3】
前記履歴情報は、前記車両の走行距離の履歴を含み、
前記敷設状態特定部は、前記走行距離の履歴に対応するグラフである第1グラフの形状と前記振動情報に対応するグラフである第2グラフの形状とのパターンマッチングにより、前記振動の検知位置と前記車両の走行位置とを紐付ける、
請求項2に記載の敷設状態特定システム。
【請求項4】
道路に敷設され、前記道路における車両の走行により発生した振動を検知する光ファイバから、光信号を受信し、前記光信号から前記振動を示す振動情報を取得する振動情報取得部と、
前記車両の走行履歴を示す履歴情報を取得する履歴情報取得部と、
前記履歴情報の経時的変化及び前記振動情報の経時的変化に基づいて、前記光ファイバの敷設状態を特定する敷設状態特定部と、を備える、
敷設状態特定装置。
【請求項5】
前記履歴情報は、前記車両の走行位置の履歴を含み、
前記敷設状態特定部は、前記光ファイバによる前記振動の検知位置と前記履歴情報に含まれる前記車両の走行位置とを紐付けることにより、前記敷設状態を特定する、
請求項
4に記載の敷設状態特定装置。
【請求項6】
前記履歴情報は、前記車両の走行距離の履歴を含み、
前記敷設状態特定部は、前記走行距離の履歴に対応するグラフである第1グラフの形状と前記振動情報に対応するグラフである第2グラフの形状とのパターンマッチングにより、前記振動の検知位置と前記車両の走行位置とを紐付ける、
請求項
5に記載の敷設状態特定装置。
【請求項7】
前記敷設状態特定部は、前記車両が停車している停止区間がある場合、前記第1グラフの形状を前記停止区間の前後で分割し、分割された区間の各々の形状と、前記第2グラフの形状と、のパターンマッチングにより、前記振動の検知位置と前記車両の走行位置とを紐付ける、
請求項
6に記載の敷設状態特定装置。
【請求項8】
前記敷設状態特定部は、前記光ファイバが余剰している余剰区間がある場合、前記第1グラフの形状と、前記第2グラフの形状から前記余剰区間の形状を除いた形状と、のパターンマッチングにより、前記振動の検知位置と前記車両の走行位置とを紐付ける、
請求項
6に記載の敷設状態特定装置。
【請求項9】
前記敷設状態特定部により特定された前記敷設状態を表示する表示部をさらに備える、
請求項
4から
8のいずれか1項に記載の敷設状態特定装置。
【請求項10】
敷設状態特定装置が行う敷設状態特定方法であって、
道路に敷設され、前記道路における車両の走行により発生した振動を検知する光ファイバから、光信号を受信し、前記光信号から前記振動を示す振動情報を取得する振動情報取得ステップと、
前記車両の走行履歴を示す履歴情報を取得する履歴情報取得ステップと、
前記履歴情報の経時的変化及び前記振動情報の経時的変化に基づいて、前記光ファイバの敷設状態を特定する敷設状態特定ステップと、を含む、
敷設状態特定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、敷設状態特定システム、敷設状態特定装置、及び敷設状態特定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバセンシングは、光ファイバ周辺で発生した事象に応じた振動等を光ファイバが検知し、検知した振動等に基づいて、センシング機器(例えば、DFOS:Distributed Fiber Optical Sensor)等が、発生した事象を検出できるという特徴がある。
【0003】
しかし、光ファイバセンシングでは、センシング機器から、光ファイバが振動等を検知した場所までの光ファイバの距離は特定できるものの、光ファイバが振動等を検知した地図上の位置は特定できない。そのため、光ファイバセンシングにより事象が発生したことは検出できるものの、事象が発生した地図上の位置を特定できないという事態が生じる。このことから、光ファイバの敷設状態を特定する必要がある。
【0004】
そのため、最近は、光ファイバの敷設状態を特定するための技術が提案されている。
例えば、特許文献1には、光ファイバに沿った位置と地理的領域内の位置とを、空間的に較正する技術が記載されている。
【0005】
詳細には、特許文献1に記載の技術によれば、連続する各ピット位置で較正音響信号を生成し、連続するケーブルピットで緯度経度の座標を取得する。その一方で、較正音響信号に対応する光変動を光ファイバで検知する。そして、地理的領域内の位置と、光変動が検知された光ファイバに沿った位置と、を用いて、上述した空間的な較正を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載の技術は、光ファイバの敷設状態を特定するためには、連続する各ピット位置で、較正音響信号という特定の信号を生成する必要があるという問題がある。
【0008】
そこで本開示の目的は、上述した課題を解決し、特定の信号を生成することなく、光ファイバの敷設状態を特定できる敷設状態特定システム、敷設状態特定装置、及び敷設状態特定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様による敷設状態特定システムは、
道路に敷設され、前記道路における車両の走行により発生した振動を検知する光ファイバと、
前記光ファイバから光信号を受信し、前記光信号から前記振動を示す振動情報を取得する振動情報取得部と、
前記車両の走行履歴を示す履歴情報を取得する履歴情報取得部と、
前記履歴情報の経時的変化及び前記振動情報の経時的変化に基づいて、前記光ファイバの敷設状態を特定する敷設状態特定部と、を備える。
【0010】
一態様による敷設状態特定装置は、
道路に敷設され、前記道路における車両の走行により発生した振動を検知する光ファイバから、光信号を受信し、前記光信号から前記振動を示す振動情報を取得する振動情報取得部と、
前記車両の走行履歴を示す履歴情報を取得する履歴情報取得部と、
前記履歴情報の経時的変化及び前記振動情報の経時的変化に基づいて、前記光ファイバの敷設状態を特定する敷設状態特定部と、を備える。
【0011】
一態様による敷設状態特定方法は、
敷設状態特定装置が行う敷設状態特定方法であって、
道路に敷設され、前記道路における車両の走行により発生した振動を検知する光ファイバから、光信号を受信し、前記光信号から前記振動を示す振動情報を取得する振動情報取得ステップと、
前記車両の走行履歴を示す履歴情報を取得する履歴情報取得ステップと、
前記履歴情報の経時的変化及び前記振動情報の経時的変化に基づいて、前記光ファイバの敷設状態を特定する敷設状態特定ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0012】
上述の態様によれば、特定の信号を生成することなく、光ファイバの敷設状態を特定できる敷設状態特定システム、敷設状態特定装置、及び敷設状態特定方法を提供できるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施の形態1に係る敷設状態特定システムの構成例を示す図である。
【
図2】実施の形態1に係る敷設状態特定部が行うパターンマッチングの具体例1を示す図である。
【
図3】光ファイバの敷設状態と車両の走行履歴の例を示す図である。
【
図4】実施の形態1に係る敷設状態特定部が行うパターンマッチングの具体例2を示す図である。
【
図5】実施の形態1に係る敷設状態特定部が行うパターンマッチングの具体例3を示す図である。
【
図7】実施の形態1に係る敷設状態特定システムの動作の流れの例を示すフロー図である。
【
図8】実施の形態2に係る敷設状態特定システムの構成例を示す図である。
【
図9】実施の形態2に係る表示部が表示するGUI画面の例を示す図である。
【
図10】実施の形態2に係る敷設状態特定システムの動作の流れの例を示すフロー図である。
【
図11】他の実施の形態に係る敷設状態特定システムの構成例を示す図である。
【
図12】他の実施の形態に係る敷設状態特定装置を実現するコンピュータのハードウェア構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本開示の実施の形態について説明する。なお、以下の記載及び図面は、説明の明確化のため、適宜、省略及び簡略化がなされている。また、以下の各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0015】
<実施の形態1>
まず、
図1を参照して、本実施の形態1に係る敷設状態特定システム1の構成例について説明する。
図1に示されるように、本実施の形態1に係る敷設状態特定システム1は、光ファイバ10、振動情報取得部21、履歴情報取得部22、及び、敷設状態特定部23を備えている。このうち、振動情報取得部21は、後述のように、光ファイバ10に接続され、装置として設けられる。一方、履歴情報取得部22及び敷設状態特定部23は、装置として設けられても良いし、クラウド上に設けられても良い。
【0016】
光ファイバ10は、道路30の下に埋設されている。ただし、光ファイバ10は、道路30に敷設されていれば良く、
図1に示される敷設方法には限定されない。例えば、光ファイバ10は、道路30に沿って設置された電柱等の構造物に架空敷設されても良い。また、光ファイバ10は、既設の通信用の光ファイバであっても良いし、センシング用に新設された光ファイバであっても良い。
【0017】
振動情報取得部21には、光ファイバ10の一端が接続されている。
振動情報取得部21は、光ファイバ10にパルス光を入射する。また、振動情報取得部21は、パルス光が光ファイバ10を伝送されることに伴い発生した後方散乱光を、光ファイバ10から、光信号として受信する。
【0018】
ここで、車両40が道路30を走行すると、振動が発生し、その振動が光ファイバ10に伝わり、光ファイバ10を伝送される光信号は、特性(例えば、波長)が変化する。そのため、光ファイバ10は、道路30における車両40の走行により発生した振動を検知することが可能であり、光ファイバ10から受信された光信号は、光ファイバ10が検知した振動を示す振動情報を含んでいる。そのため、履歴情報取得部22は、光ファイバ10から受信された光信号から、振動情報を取得する。
【0019】
また、光ファイバ10にパルス光を入射した時刻と、光ファイバ10から光信号を受信した時刻と、の時間差は、光ファイバ10により振動が検知された検知位置(振動情報取得部21からの光ファイバ10の距離)に応じたものとなる。
【0020】
そのため、履歴情報取得部22により取得された振動情報には、道路30における車両40の走行により発生した振動の検知位置(振動情報取得部21からの光ファイバ10の距離)の情報も含まれることになる。
【0021】
履歴情報取得部22は、道路30を走行する車両40から、車両40の走行履歴を示す履歴情報を取得する。車両40の走行履歴は、車両40に搭載されたGPS(Global Positioning System)システム等により取得されたもので良い。また、履歴情報は、例えば、絶対時刻、走行位置(緯度経度)、走行距離等の情報を含んでも良い。また、履歴情報取得部22は、リアルタイムで履歴情報を取得しても良いし、車両40に一時的に蓄積されている履歴情報を任意のタイミングで取得しても良い。
【0022】
敷設状態特定部23は、道路30における車両40の走行により発生した振動を示す振動情報の経時的変化と、その車両40の走行履歴を示す履歴情報の経時的変化と、に基づいて、光ファイバ10の敷設状態を特定する。
【0023】
このとき、履歴情報に車両40の走行位置の履歴の情報が含まれている場合には、敷設状態特定部23は、車両40の走行位置(緯度経度)と、その車両40の走行により発生した振動の検知位置(振動情報取得部21からの光ファイバ10の距離)と、を紐付けても良い。これにより、敷設状態特定部23は、振動情報取得部21からの光ファイバ10の距離を、緯度経度に紐づけることができるため、光ファイバ10の敷設状態を特定できる。
【0024】
ただし、道路30を走行する車両40には、履歴情報が取得された車両40だけでなく、複数の車両40が含まれる。そのため、履歴情報取得部22により取得された振動情報には、道路30を走行する複数の車両40の各々の振動情報が含まれる。
そのため、敷設状態特定部23は、複数の車両40の各々の振動情報の中から、履歴情報を取得した車両40の振動情報を見つける必要がある。
【0025】
そこで、敷設状態特定部23は、履歴情報に車両40の走行距離の履歴の情報が含まれている場合には、車両40の走行距離の履歴に対応するグラフ(第1のグラフ)の形状と、振動情報に対応するグラフ(第2グラフ)の形状と、のパターンマッチングを行う。このパターンマッチングにより、敷設状態特定部23は、履歴情報を取得した車両40の振動情報を見つけると共に、その車両40の走行位置(緯度経度)と、その車両40の走行により発生した振動の検知位置(振動情報取得部21からの光ファイバ10の距離)と、を紐付ける。
以下、パターンマッチングの具体例について説明する。
【0026】
(1)パターンマッチングの具体例1
まず、
図2を参照して、パターンマッチングの具体例1について説明する。
図2の左図は、振動情報に対応するグラフの例を示している。
図2の左図は、道路30で光ファイバ10が検知した振動の振動情報に対応するグラフを示しており、横軸が、振動情報取得部21からの光ファイバ10の距離を示し、縦軸が、時間経過を示している。また、縦軸は、正方向に向かうほど、古いデータとなる。
【0027】
図2の左図においては、道路30を走行している車両40の振動を光ファイバ10で検知すると、車両40が走行していることが、1本の点線からなるグラフで表される。例えば、1台の車両40が時間経過に従って走行していることは、斜めの1本の点線からなるグラフで表される。ここで、グラフの傾きの絶対値は、車両40の走行速度を表している。グラフの傾きの絶対値が小さいほど、車両40の走行速度が速いことを意味している。また、グラフの傾きの正負は、車両40の走行方向を表している。例えば、正の傾きのグラフが車線Aを走行する車両40を表している場合、負の傾きのグラフは、車線Aの反対車線となる車線Bを走行する車両40を表している。
【0028】
ここで、
図2の左図においては、斜めの点線からなるグラフが複数存在している。このことから、
図2の左図においては、道路30において、複数の車両40が走行している様子が観測されていることがわかる。
【0029】
一方、
図2の右図は、履歴情報に対応するグラフの例を示している。
図2の右図は、ある1台の車両40の走行履歴を示す履歴情報に対応するグラフを示しており、横軸が、車両40の走行距離を示し、縦軸が、時間経過を示している。また、縦軸は、正方向に向かうほど、古いデータとなる。
【0030】
例えば、
図2は、
図3に示されるように、光ファイバ10が敷設されている区間と車両40が走行した区間とが重複する重複区間において、光ファイバ10が検知した振動の振動情報(左図)と、その重複区間を車両40が走行したときの走行履歴の履歴情報(右図)と、をそれぞれ表したものとなる。
【0031】
敷設状態特定部23は、時刻を基準として、
図2の左図における振動情報に対応するグラフの中から、
図2の右図における履歴情報に対応するグラフG21と形状が一致するグラフを探索する。
詳細には、敷設状態特定部23は、同一時刻において、光ファイバ10の距離が、グラフG21の走行距離と一致するグラフを探索する。
【0032】
図2の例では、
図2の左図におけるグラフG11は、4つの点P1~P4において、光ファイバ10の距離が、グラフG21の走行距離と一致している。
そのため、敷設状態特定部23は、グラフG11が、グラフG21と形状が一致すると判断する。そして、敷設状態特定部23は、グラフG11上の4つの点P1~P4の各々における光ファイバ10の距離を、グラフG21に対応する走行位置(緯度経度(x1,y1)~(x4,y4))に紐付ける。
【0033】
(2)パターンマッチングの具体例2
次に、
図4を参照して、パターンマッチングの具体例2について説明する。なお、
図4の左図は、
図2の左図と同様に、振動情報に対応するグラフの例を示し、
図4の右図は、
図2の右図と同様に、履歴情報に対応するグラフの例を示している。また、
図4の左図及び右図の横軸及び縦軸は、
図2の左図及び右図と同様である。
【0034】
本具体例2は、車両40が停車している区間がある例である。
図4の右図に示されるように、車両40が停車している区間では、走行距離が変化しない。そこで、敷設状態特定部23は、車両40の走行履歴を示す履歴情報に対応するグラフの形状を、車両40が停車している区間の前後で分割する。これにより、グラフは、車両40が停車している区間よりも前のグラフG22と、車両40が停車している区間よりも後のグラフG23と、に分割される。
【0035】
敷設状態特定部23は、分割後のグラフG22,G23のそれぞれについて、
図4の左図における振動情報に対応するグラフの中から、形状が一致するグラフを探索する。
図4の例では、敷設状態特定部23は、グラフG12が、グラフG22と形状が一致すると判断し、グラフG13が、グラフG23と形状が一致すると判断する。このように、グラフG12,G13は、同じ車両40の振動情報であるが、車両40が停車している区間では振動が検知されないため、互いに分離されてしまっている。
【0036】
以降、敷設状態特定部23は、上述した具体例1と同様に、グラフG12における光ファイバ10の距離を、グラフG22に対応する走行位置(緯度経度)に紐付けると共に、グラフG13における光ファイバ10の距離を、グラフG23に対応する走行位置(緯度経度)に紐付ける。
【0037】
(3)パターンマッチングの具体例3
次に、
図5を参照して、パターンマッチングの具体例3について説明する。なお、
図5の左図は、
図2の左図と同様に、振動情報に対応するグラフの例を示し、
図5の右図は、
図2の右図と同様に、履歴情報に対応するグラフの例を示している。また、
図5の左図及び右図の横軸及び縦軸は、
図2の左図及び右図と同様である。
【0038】
本具体例
3は、光ファイバ10に余剰している余剰区間がある例である。
図6に示されるように、光ファイバ10を敷設するときに、光ファイバ10が余剰している余剰区間が発生することがある。
【0039】
図5の左図に示されるように、光ファイバ10の余剰区間は、振動情報取得部21からの光ファイバ10の距離は異なるものの、物理的な設置位置はほぼ同様であるため、検知される振動もほぼ同様である。
【0040】
そこで、敷設状態特定部23は、道路30で光ファイバ10が検知した振動の振動情報に対応するグラフの各々の形状から、光ファイバ10の余剰区間の形状を除く。
そして、敷設状態特定部23は、車両40の走行履歴を示す履歴情報に対応するグラフG24について、図5の左図における振動情報に対応するグラフであって余剰区間の形状が除かれたグラフの中から、形状が一致するグラフを探索する。
【0041】
図5の例では、敷設状態特定部23は、グラフG14の形状から余剰区間の形状が除かれたグラフが、グラフG24と形状が一致すると判断す
る。
以降、敷設状態特定部23は、上述した具体例1と同様に、グラフG14の形状から余剰区間の形状が除かれたグラフにおける光ファイバ10の距離を、グラフG24に対応する走行位置(緯度経度)に紐付ける。
【0042】
続いて、
図7を参照して、本実施の形態1に係る敷設状態特定システム1の動作の流れの例について説明する。
図7に示されるように、振動情報取得部21は、光ファイバ10から光信号を受信する。そして、振動情報取得部21は、光信号から、光ファイバ10により検知された、道路30における車両40の走行により発生した振動を示す振動情報を取得する(ステップS101)。
一方
、履歴情報取得部22は、道路30を走行する車両40から、車両40の走行履歴を示す履歴情報を取得する(ステップS102)。
【0043】
その後、敷設状態特定部23は、道路30における車両40の走行により発生した振動を示す振動情報の経時的変化と、その車両40の走行履歴を示す履歴情報の経時的変化と、に基づいて、光ファイバ10の敷設状態を特定する(ステップS103)。
【0044】
なお、
図7では、ステップS101,S102の動作は並行して行われているが、これには限定されない。例えば、ステップS101の動作の後に、ステップS102の動作が行われても良いし、ステップS102の動作の後に、ステップS101の動作が行われても良い。
【0045】
上述したように本実施の形態1によれば、振動情報取得部21は、光ファイバ10により検知された、道路30における車両40の走行により発生した振動を示す振動情報を取得する。履歴情報取得部22は、道路30を走行する車両40から、車両40の走行履歴を示す履歴情報を取得する。敷設状態特定部23は、道路30における車両40の走行により発生した振動を示す振動情報の経時的変化と、その車両40の走行履歴を示す履歴情報の経時的変化と、に基づいて、光ファイバ10の敷設状態を特定する。
【0046】
これにより、特許文献1に記載の技術のような特定の信号を生成することなく、光ファイバ10の敷設状態を特定できる。
また、光ファイバ10の敷設状態を特定できるため、光ファイバセンシングにより異常を検出した場合に、異常が発生した場所にいち早く駆け付けることが可能となる。また、光ファイバセンシングにより、特定の場所で発生する事象を検出することも可能になる。
また、車両40としては、走行履歴を取得可能ないかなる車両も利用できる。例えば、特定の作業(例えば、搬送作業や工事作業等)を行う車両40の場合、特定の作業中の走行履歴であっても、他の作業中の走行履歴であっても、利用することが可能である。
【0047】
<実施の形態2>
まず、
図8を参照して、本実施の形態2に係る敷設状態特定システム2の構成例について説明する。
図8に示されるように、本実施の形態2に係る敷設状態特定システム2は、上述した実施の形態1に係る敷設状態特定システム1と比較して、表示部24が追加されている点が異なる。
【0048】
表示部24は、敷設状態特定部23により特定された光ファイバ10の敷設状態を表示する。例えば、表示部24は、
図9に示されるように、振動情報取得部21からの光ファイバ10の距離と、緯度経度と、を紐付けた結果を、テーブルの態様で示したGUI(Graphical User Interface)画面を表示する。
【0049】
続いて、
図10を参照して、本実施の形態2に係る敷設状態特定システム2の動作の流れの例について説明する。
図10に示されるように、まず、
図7のステップS101~S103と同様のステップS201~S203が行われる。その結果、敷設状態特定部23により、光ファイバ10の敷設状態が特定される。
【0050】
その後、表示部24は、敷設状態特定部23により特定された光ファイバ10の敷設状態を表示する(ステップS204)。このとき、表示部24は、
図9に示されるようなGUI画面を表示しても良い。
【0051】
上述したように本実施の形態2によれば、表示部24は、敷設状態特定部23により特定された光ファイバ10の敷設状態を表示する。これにより、光ファイバセンシングにより、特定の場所を監視する監視センター又は監視者や、光ファイバセンシングの結果を利用するユーザ等に、光ファイバ10の敷設状態を知らせることができる。その他の効果は、上述した実施の形態1と同様である。
【0052】
<他の実施の形態>
上述した実施の形態1では、振動情報取得部21、履歴情報取得部22、及び、敷設状態特定部23は、それぞれ別々に設けられていたが、これらの構成要素は、1つの装置の内部に集約して設けても良い。
【0053】
図11は、他の実施の形態に係る敷設状態特定システム3の構成例を示している。この敷設状態特定システム3は、光ファイバ10及び敷設状態特定装置20を備えており、敷設状態特定装置20の内部に、振動情報取得部21、履歴情報取得部22、及び、敷設状態特定部23が設けられている。なお、敷設状態特定装置20は、上述した実施の形態2に係る表示部24を備えていても良い。
【0054】
<実施の形態に係る敷設状態特定装置のハードウェア構成>
続いて、
図12を参照して、上述した他の実施の形態に係る敷設状態特定装置20を実現するコンピュータ50のハードウェア構成例を示している。
【0055】
図12に示されるように、コンピュータ50は、プロセッサ51、メモリ52、ストレージ53、入出力インタフェース(入出力I/F)54、及び通信インタフェース(通信I/F)55等を備える。プロセッサ51、メモリ52、ストレージ53、入出力インタフェース54、及び通信インタフェース55は、相互にデータを送受信するためのデータ伝送路で接続されている。
【0056】
プロセッサ51は、例えばCPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等の演算処理装置である。メモリ52は、例えばRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等のメモリである。ストレージ53は、例えばHDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、またはメモリカード等の記憶装置である。また、ストレージ53は、RAMやROM等のメモリであっても良い。
【0057】
ストレージ53は、敷設状態特定装置20が備える構成要素の機能を実現するプログラムを記憶している。プロセッサ51は、これら各プログラムを実行することで、敷設状態特定装置20が備える構成要素の機能をそれぞれ実現する。ここで、プロセッサ51は、上記各プログラムを実行する際、これらのプログラムをメモリ52上に読み出してから実行しても良いし、メモリ52上に読み出さずに実行しても良い。また、メモリ52やストレージ53は、敷設状態特定装置20が備える構成要素が保持する情報やデータを記憶する役割も果たす。
【0058】
また、上述したプログラムは、コンピュータに読み込まれた場合に、上述した実施の形態で説明された1又はそれ以上の機能をコンピュータに行わせるための命令群(又はソフトウェアコード)を含む。プログラムは、非一時的なコンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体に格納されてもよい。限定ではなく例として、コンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体は、random-access memory(RAM)、read-only memory(ROM)、フラッシュメモリ、solid-state drive(SSD)又はその他のメモリ技術、CD-ROM、digital versatile disc(DVD)、Blu-ray(登録商標)ディスク又はその他の光ディスクストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ又はその他の磁気ストレージデバイスを含む。プログラムは、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体上で送信されてもよい。限定ではなく例として、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体は、電気的、光学的、音響的、又はその他の形式の伝搬信号を含む。
【0059】
入出力インタフェース54は、表示装置541、入力装置542、音出力装置543等と接続される。表示装置541は、LCD(Liquid Crystal Display)、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、モニターのような、プロセッサ51により処理された描画データに対応する画面を表示する装置である。入力装置542は、オペレータの操作入力を受け付ける装置であり、例えば、キーボード、マウス、及びタッチセンサ等である。表示装置541及び入力装置542は一体化され、タッチパネルとして実現されていても良い。音出力装置543は、スピーカのような、プロセッサ51により処理された音響データに対応する音を音響出力する装置である。
【0060】
通信インタフェース55は、外部の装置との間でデータを送受信する。例えば、通信インタフェース55は、有線通信路または無線通信路を介して外部装置と通信する。
【0061】
以上、実施の形態を参照して本開示を説明したが、本開示は上述した実施の形態に限定されるものではない。本開示の構成や詳細には、本開示のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0062】
また、上述した実施の形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)
道路に敷設され、前記道路における車両の走行により発生した振動を検知する光ファイバと、
前記光ファイバから光信号を受信し、前記光信号から前記振動を示す振動情報を取得する振動情報取得部と、
前記車両の走行履歴を示す履歴情報を取得する履歴情報取得部と、
前記履歴情報の経時的変化及び前記振動情報の経時的変化に基づいて、前記光ファイバの敷設状態を特定する敷設状態特定部と、を備える、
敷設状態特定システム。
(付記2)
前記履歴情報は、前記車両の走行位置の履歴を含み、
前記敷設状態特定部は、前記光ファイバによる前記振動の検知位置と前記履歴情報に含まれる前記車両の走行位置とを紐付けることにより、前記敷設状態を特定する、
付記1に記載の敷設状態特定システム。
(付記3)
前記履歴情報は、前記車両の走行距離の履歴を含み、
前記敷設状態特定部は、前記走行距離の履歴に対応するグラフである第1グラフの形状と前記振動情報に対応するグラフである第2グラフの形状とのパターンマッチングにより、前記振動の検知位置と前記車両の走行位置とを紐付ける、
付記2に記載の敷設状態特定システム。
(付記4)
前記敷設状態特定部は、前記車両が停車している停止区間がある場合、前記第1グラフの形状を前記停止区間の前後で分割し、分割された区間の各々の形状と、前記第2グラフの形状と、のパターンマッチングにより、前記振動の検知位置と前記車両の走行位置とを紐付ける、
付記3に記載の敷設状態特定システム。
(付記5)
前記敷設状態特定部は、前記光ファイバが余剰している余剰区間がある場合、前記第1グラフの形状と、前記第2グラフの形状から前記余剰区間の形状を除いた形状と、のパターンマッチングにより、前記振動の検知位置と前記車両の走行位置とを紐付ける、
付記3に記載の敷設状態特定システム。
(付記6)
前記敷設状態特定部により特定された前記敷設状態を表示する表示部をさらに備える、
付記1から5のいずれか1項に記載の敷設状態特定システム。
(付記7)
道路に敷設され、前記道路における車両の走行により発生した振動を検知する光ファイバから、光信号を受信し、前記光信号から前記振動を示す振動情報を取得する振動情報取得部と、
前記車両の走行履歴を示す履歴情報を取得する履歴情報取得部と、
前記履歴情報の経時的変化及び前記振動情報の経時的変化に基づいて、前記光ファイバの敷設状態を特定する敷設状態特定部と、を備える、
敷設状態特定装置。
(付記8)
前記履歴情報は、前記車両の走行位置の履歴を含み、
前記敷設状態特定部は、前記光ファイバによる前記振動の検知位置と前記履歴情報に含まれる前記車両の走行位置とを紐付けることにより、前記敷設状態を特定する、
付記7に記載の敷設状態特定装置。
(付記9)
前記履歴情報は、前記車両の走行距離の履歴を含み、
前記敷設状態特定部は、前記走行距離の履歴に対応するグラフである第1グラフの形状と前記振動情報に対応するグラフである第2グラフの形状とのパターンマッチングにより、前記振動の検知位置と前記車両の走行位置とを紐付ける、
付記8に記載の敷設状態特定装置。
(付記10)
前記敷設状態特定部は、前記車両が停車している停止区間がある場合、前記第1グラフの形状を前記停止区間の前後で分割し、分割された区間の各々の形状と、前記第2グラフの形状と、のパターンマッチングにより、前記振動の検知位置と前記車両の走行位置とを紐付ける、
付記9に記載の敷設状態特定装置。
(付記11)
前記敷設状態特定部は、前記光ファイバが余剰している余剰区間がある場合、前記第1グラフの形状と、前記第2グラフの形状から前記余剰区間の形状を除いた形状と、のパターンマッチングにより、前記振動の検知位置と前記車両の走行位置とを紐付ける、
付記9に記載の敷設状態特定装置。
(付記12)
前記敷設状態特定部により特定された前記敷設状態を表示する表示部をさらに備える、
付記7から11のいずれか1項に記載の敷設状態特定装置。
(付記13)
敷設状態特定装置が行う敷設状態特定方法であって、
道路に敷設され、前記道路における車両の走行により発生した振動を検知する光ファイバから、光信号を受信し、前記光信号から前記振動を示す振動情報を取得する振動情報取得ステップと、
前記車両の走行履歴を示す履歴情報を取得する履歴情報取得ステップと、
前記履歴情報の経時的変化及び前記振動情報の経時的変化に基づいて、前記光ファイバの敷設状態を特定する敷設状態特定ステップと、を含む、
敷設状態特定方法。
(付記14)
前記履歴情報は、前記車両の走行位置の履歴を含み、
前記敷設状態特定ステップでは、前記光ファイバによる前記振動の検知位置と前記履歴情報に含まれる前記車両の走行位置とを紐付けることにより、前記敷設状態を特定する、
付記13に記載の敷設状態特定方法。
(付記15)
前記履歴情報は、前記車両の走行距離の履歴を含み、
前記敷設状態特定ステップでは、前記走行距離の履歴に対応するグラフである第1グラフの形状と前記振動情報に対応するグラフである第2グラフの形状とのパターンマッチングにより、前記振動の検知位置と前記車両の走行位置とを紐付ける、
付記14に記載の敷設状態特定方法。
(付記16)
前記敷設状態特定ステップでは、前記車両が停車している停止区間がある場合、前記第1グラフの形状を前記停止区間の前後で分割し、分割された区間の各々の形状と、前記第2グラフの形状と、のパターンマッチングにより、前記振動の検知位置と前記車両の走行位置とを紐付ける、
付記15に記載の敷設状態特定方法。
(付記17)
前記敷設状態特定ステップでは、前記光ファイバが余剰している余剰区間がある場合、前記第1グラフの形状と、前記第2グラフの形状から前記余剰区間の形状を除いた形状と、のパターンマッチングにより、前記振動の検知位置と前記車両の走行位置とを紐付ける、
付記15に記載の敷設状態特定方法。
(付記18)
前記敷設状態特定ステップにより特定された前記敷設状態を表示する表示ステップをさらに含む、
付記13から17のいずれか1項に記載の敷設状態特定方法。
【符号の説明】
【0063】
1,2,3 敷設状態特定システム
20 敷設状態特定装置
21 振動情報取得部
22 履歴情報取得部
23 敷設状態特定部
24 表示部
30 道路
40 車両
50 コンピュータ
51 プロセッサ
52 メモリ
53 ストレージ
54 入出力インタフェース
541 表示装置
542 入力装置
543 音出力装置
55 通信インタフェース