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▶ 大和冷機工業株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】製氷機
(51)【国際特許分類】
   F25C 5/187 20180101AFI20240618BHJP
   F25C 1/10 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
F25C5/187 Z
F25C1/10 301
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020073201
(22)【出願日】2020-04-16
(65)【公開番号】P2021169887
(43)【公開日】2021-10-28
【審査請求日】2023-03-09
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和2年4月8日に株式会社クレディセゾンへ販売
(73)【特許権者】
【識別番号】000208503
【氏名又は名称】大和冷機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096703
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 俊之
(72)【発明者】
【氏名】杉本 慎
【審査官】奈須 リサ
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-198470(JP,U)
【文献】特開2008-145016(JP,A)
【文献】特開2000-193353(JP,A)
【文献】特開2011-075171(JP,A)
【文献】特開2002-162141(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25C 1/00-5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
略矩形箱形の筺体を有し、前面側に開口する貯氷庫と、
同貯氷庫の上部に配設されて脱氷時に所定方向に氷を落下させる製氷ユニットと、
この製氷ユニットの下方近辺に向けて延設されるとともに傾動可能な傾動片部と、
同傾動片部の傾動を検知するスイッチとを備える製氷機であって、
前記傾動片部は、上方にて略水平に支持される所定の回転軸にて回転可能に吊り下げ支持されており、前記回転軸は前記貯氷庫における前面の開口方向に対して概ね一致しつつ、所定の角度だけ斜めに配置されていることを特徴とする製氷機。
【請求項2】
前記回転軸が斜めに配置される角度は、5度~45度であることを特徴とすることを特徴とする請求項1に記載の製氷機。
【請求項3】
前記回転軸を略水平に支持する上部トレイを有し、前記回転軸は、回転軸芯からの半径が異なるように形成された異径部位を備えると共に、押圧片の可動方向が水平方向となるように前記回転軸に隣接してマイクロスイッチを備え、前記マイクロスイッチのアクチュエータが前記異径部位の回動軌跡範囲に突出して配設されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の製氷機。
【請求項4】
前記傾動片部は、略U字型で上端に前記回転軸が形成されて傾動可能に支持される吊下本体部と、この吊下本体部に対して脱着可能で下方に延設される板片部とを備え、同板片部は前記吊下本体部の奥側と底側に対して奥側と底側に対して係止可能に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の製氷機。
【請求項5】
前記板片部は、前記吊下本体部の奥側に沿って鉛直方向上向きに伸びる回動支持部と、前記吊下本体部の底側に沿って水平方向手前側に伸びる係止支持部とを備え、前記回動支持部は、前記吊下本体部に形成された奥側に開口を有する凹部に対して突起が入り込むことで同突起と同凹部との係合状態に基づいて当該板片部が手前側が下降する方向に回動可能に支持され、前記係止支持部は、前記吊下本体部の底面にて下方に開口しつつ開口端の幅が奥よりも狭まるように形成した二股部位に対して、当該二股部位に対して無理押しして挿入することで形成すると共に、手前側を下方に所定の強さで押し下げることで同二股部位から離反可能な係止突起を有していることを特徴とする請求項4に記載の製氷機。
【請求項6】
前記吊下本体部の前記二股部位は複数形成されており、前記係止支持部は、係止力の調整のために前記二股部位に係止する数を調整できることを特徴とする請求項5に記載の製氷機。
【請求項7】
前記板片部は、下端にJ字形のフックを形成された上方部位である揺動棒と、この揺動棒のJ字形のフックを引っ掛ける貫通穴が形成されて下方に延設される幅広の検知板とを有し、
前記J字形のフックは、前記検知板の貫通穴に挿通させたときに、前記フックの開口側と反対の側の部位が幅広とすることにより、前記検知板の貫通穴の周縁部位が同幅広の部位に当接することで、前記検知板は前記J字形のフックに係止されたまま回転しにくくしたことを特徴とする請求項4~請求項6のいずれかに記載の製氷機。
【請求項8】
前記J字形のフックが、前記検知板の貫通穴に引っ掛けられた状態で、同検知板の下端を上方側に移動させた後、同検知板の下端が下方側に回転したときには、前記フックと前記検知板との接触部位において、

(前記フックと前記検知板との摩擦力の合力)<(自重による前記フックと前記検知板との滑動力)

となっていることを特徴とする請求項7に記載の製氷機。
【請求項9】
前記傾動片部は、前記吊下本体部の前記回転軸と、同回転軸が係止する前記上部トレイとに対して、前記回転軸を前記上部トレイから離脱する方向に移動させた位置で両者が互いに突き当たるように形成した当接片を形成してあることを特徴とする請求項4に記載の製氷機。
【請求項10】
前記吊下本体部における前記当接片に対面する面をテーパー面としてあることを特徴とする請求項9に記載の製氷機。
【請求項11】
前記J字形のフックの内穴の縦寸法Hfと、前記検知板の貫通穴を形成するリング棒の径dとが、
Hf≦2d
となり、検知板の最小傾き角αminが
αmin<44゜
となるように、前記J字形のフックの下側断面を上方が先細りとするか、前記J字形のフックの先端の幅を根元側の幅よりも狭くすることを特徴とする請求項8に記載の製氷機。
【請求項12】
前記J字形のフックの下側断面を上方が先細りとしたときに下側の部分を局部的に肉厚増しとするか、前記J字形のフックの先端の幅を根元側の幅よりも狭くするときに側面部分を局部的に肉厚増しとすることを特徴とする請求項11に記載の製氷機。
【請求項13】
前記J字形のフックの先端を上方へ延長し、前記検知板が上方へ回転してβ角度だけ持ち上がったときに、前記検知板の貫通穴から前記J字形のフックの先端が抜け出ないことを特徴とする請求項7に記載の製氷機。
【請求項14】
凸突起により前記検知板が上方へ回転したときにβ角度を制限することを特徴とする請求項7に記載の製氷機。
【請求項15】
前記係止突起は、丸棒の両側面を削った2平面を持つ断面とし、前記二股部位は、当該係止突起の断面に一致する空隙を有する二股とするとともに、二股の連結部位には上方へ逃げ溝を形成したことを特徴とする請求項5に記載の製氷機。
【請求項16】
前記上部トレイは、後方の上皿引っ掛け爪をクーラーブラケット底面の穴やフックに引っ掛けつつ、取付位置決めのための上皿ダボで位置決めし、前方の上皿弾性部材の弾性爪で穴やフックへと係合するとともに、固定力を増すために上皿ねじ穴を備えていることを特徴とする請求項3に記載の製氷機。
【請求項17】
前記上部トレイは、引っ掛け爪である前記マイクロスイッチ保持のための上皿爪と、前記マイクロスイッチ位置決めのための上皿ダボとを備え、前記上皿爪と前記上皿ダボの保持力によって前記マイクロスイッチを脱落しないように保持することを特徴とする請求項3に記載の製氷機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製氷機に関し、特に、貯氷庫内の氷の量を検知するストックセンサーを備えた製氷機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示される製氷機は、貯氷庫内の上方部位で製氷され、作られた氷は斜め下方に落下して貯蔵される。貯氷庫内に必要以上に氷がたまると、上方部位の製氷ユニットの稼働に支障を生じるため、貯氷庫内の氷の量を検知するためにストックセンサーが備えられている。ストックセンサーは、貯氷庫内で上方から吊り下げられ、下方に可動片を備えている。貯まった氷が可動片に押し当てられると同可動片が傾動するため、この動きをマイクロスイッチなどに伝えて電気的に検知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-063208号公報
【文献】特許第4809946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
製氷機が前面に開口する扉を備えている場合、利用者はスクープを持って貯氷庫内の氷をすくう動作を繰り返す。動作としては、スクープが開口に向けて入ったり出たりする。
上述した従来のストックセンサーを備えた製氷機では、スクープで氷をすくう動作を行うため、ときにはスクープがストックセンサーに突き当たることもある。このとき、ストックセンサーの構造によってはスクープの衝突によって破壊されかねなかった。
図30図31は、特許文献2に開示される製氷機のストックセンサーを示している。
特許文献2に開示される製氷機では、スクープによる打撃によって軸部68aが破壊される危険性が高い。理由は、軸と軸の距離が近い17mmためである。これを回避するため、弾性部材72を、ユニット本体66とは別に作っている。材質も屈曲生の良いPPなどで弾性部材72を作り、ユニット本体66はPC等で作っている。
1)軸68aは表側と裏側にあるが距離が17mmと短いため、検出板や先端68に力がかかるとモーメント、てこの原理により(L寸を140mmとすると140/17=)8倍の荷重がかかり、軸68aが破壊しやすい。
軸の径はφ6(断面積は3×3×3.14=28.3平方mm、剪断応力66N/平方mmと仮定すると、剪断力28×70=1978N≒1866Nに耐えられるが、先端68の下端(L寸140mm下方)で許容最大荷重は1866÷8=233Nとなる。何度も繰り返し打撃力を受けても壊れないためには、通常、安全率を3倍とると78Nまでしか許容されない。このため、その時点で弾性部材72が屈曲し、天井フック60から脱落する必要がある。
78Nという荷重は力の強いユーザーにおいては時々発生し、その際、ユニット全体66が氷の上へと落下することになる。氷の上に落下すると、衛生上好ましくないし、再装着するまでは貯氷検出機能が失われてしまう。大型機ではL=140はさらに大きいため、許容荷重Fもさらに減少してしまう。
2)マイクロスイッチの配置も縦であるため、検知板までの縦長さLkmaxが長くなる。
3)部品点数も多い。
4)着脱部60,104aも高くて見えにくく再装着が難しい。
【0005】
ストックセンサーの可動片が左右に揺動可能な構成としてみたところ、それでもスクープを貯氷庫に向かってまっすぐに挿入する操作では揺動して退避せず、スクープがまともに衝突することを避けられなかった。
対策として安全脱落用に弾性部材72が追加されているが、軸破壊力2KN÷8=250Nのスクープ荷重が発生する前に弾性部材72が外れてストックSW全体(ユニット本体66)が氷上に脱落してしまう。安全率を3倍で考慮する場合は250N÷3=83Nのスクープ荷重で脱落となる。
本発明は、スクープを利用するときに破壊されにくいストックセンサーを備えた製氷機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、略矩形箱形の筺体を有し、前面側に開口する貯氷庫と、同貯氷庫の上部に配設されて脱氷時に所定方向に氷を落下させる製氷ユニットと、この製氷ユニットの下方近辺に向けて延設されるとともに傾動可能な傾動片部と、同傾動片部の傾動を検知するスイッチとを備える製氷機であって、前記傾動片部は、上方にて略水平に支持される所定の回転軸にて回転可能に吊り下げ支持されており、前記回転軸は前記貯氷庫における前面の開口方向に対して概ね一致しつつ、所定の角度だけ斜めに配置された構成としてある。
【0007】
前記のように構成した本発明においては、略矩形箱形の筺体に貯氷庫が収納され、貯氷庫の前面側が開口する。同貯氷庫の上部には製氷ユニットが配設され、脱氷時に所定方向に氷を落下させる。貯氷庫内では、製氷ユニットの下方近辺に向けて傾動可能に延設される傾動片部が備えられ、貯氷庫内の氷の量に応じて同傾動片部が傾動すると、スイッチが当該傾動動作を検知する。
【0008】
前記傾動片部は、上方にて略水平に支持される所定の回転軸を有しており、当該回転軸にて回転可能に吊り下げ支持されている。氷が貯まった場合は氷の重みが傾動片部を押し、前記回転軸を回転させることで当該傾動片部は傾動する。前記回転軸は前記貯氷庫における前方への開口方向に対して概ね一致するので、概略的には前面側から見て左右に傾動する。しかし、同回転軸は前方への開口方向に対して所定の角度だけ斜めに配置されている。
【0009】
従って、スクープをまっすぐに押し込んで傾動片に突き当たった場合、回転軸が斜めに配置されることにより、押し込む力は回動軸を後方に押し下げる力と傾動片を左右のいずれかの方向へ傾動させようとする力とに分散されることになる。押し込む力が傾動片を傾けることにより、後方へ押し下げる力はさらに弱くなる。この結果、傾動片部が破壊されにくい。
【0010】
また、前記回転軸が斜めに配置される角度は、5度~45度とすることが可能である。
前記回転軸を略水平に支持する上部トレイを有し、前記回転軸は、回転軸芯からの半径が異なるように形成された異径部位を備えると共に、押圧片の稼働方向が水平方向となるように前記回転軸に隣接してマイクロスイッチを備え、前記マイクロスイッチのアクチュエータが前記異径部位の回動軌跡範囲に突出して配設される構成としても良い。
【0011】
前記傾動片部は、略U字型で上端に前記回転軸が形成されて傾動可能に支持される吊下本体部と、この吊下本体部に対して脱着可能で下方に延設される板片部とを備え、同板片部は前記吊下本体部の奥側と底側に対して奥側と底側に対して係止可能に形成された構成としても良い。
前記板片部は、前記吊下本体部の奥側に沿って鉛直方向上向きに伸びる回動支持部と、前記吊下本体部の奥側に沿って水平方向手前側に伸びる係止支持部とを備え、前記回動支持部は、前記吊下本体部に形成された奥側に開口を有する凹部に対して突起が入り込むことで同突起と同凹部との係合状態に基づいて手前側が下降する方向に当該板片部が回動可能に支持され、前記係止支持部は、前記吊下本体部の底面にて下方に開口しつつ開口端の幅が奥よりも狭まるように形成した二股部位に対して、当該二股部位に対して無理押しして挿入することで形成すると共に、手前側を下方に所定の強さで押し下げることで同二股部位から離反可能な係止突起を有する構成としても良い。
【0012】
前記吊下本体部の前記二股部位は複数形成されており、前記係止支持部は、係止力の調整のために前記二股部位に係止する数を調整できる構成としても良い。
前記板片部は、下端にJ字形のフックを形成された上方部位である揺動棒と、この揺動棒のJ字形のフックを引っ掛ける貫通穴が形成されて下方に延設される幅広の検知板とを有し、前記J字形のフックは、前記検知板の貫通穴に挿通させたときに、前記フックの開口側と反対の側の部位が幅広とすることにより、前記検知板の貫通穴の周縁部位が同幅広の部位に当接することで、前記検知板は前記J字形のフックに係止されたまま回転しにくくする構成としても良い。
【0013】
前記J字形のフックが、前記検知板の貫通穴に引っ掛けられた状態で、同検知板の下端を上方側に移動させた後、同検知板の下端が下方側に回転したときには、前記フックと前記検知板との接触部位において、

(前記フックと前記検知板との摩擦力の合力)<(自重による前記フックと前記検知板との滑動力)

とする構成としても良い。
前記傾動片部は、前記吊下本体部の前記回転軸と、同回転軸が係止する前記上部トレイとに対して、前記回転軸を前記上部トレイから離脱する方向に移動させた位置で両者が互いに突き当たるように形成した当接片を形成した構成としても良い。
【発明の効果】
【0014】
本発明の製氷機は、傾動片の回転軸を斜めに配置したため、傾動片に衝突したときにスクープを押し込む力を分散させ、傾動片を壊れにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】製氷機の外観を示す斜視図である。
図2】ストックセンサーのパーツ図である。
図3】ストックセンサーの静止状態の平面図である。
図4】ストックセンサーの傾動状態の平面図である。
図5】ストックセンサーの傾動状態の正面図である。
図6】ストックセンサーを手前下方から見た斜視図である。
図7】ストックセンサーの脱落開始状態の左側面図である。
図8】ストックセンサーの静止状態の左側面図である。
図9】ストックセンサーのフックを示す斜視図である。
図10】ストックセンサーの検知板が起き上がった状態を示す斜視図である。
図11】ストックセンサーで支持される検知板が相対的に移動した状態を示す斜視図である。
図12】ストックセンサーのフックによって検知板が受ける力を示す模式図である。
図13】ストックセンサーの当接片を示す図である。
図14a】単純なフック構造での、傾斜角とフック穴内径など各部寸法との関係を示す図である。
図14b】単純なフック構造での、傾斜角とフック穴内径など各部寸法との関係を示す図である。
図14c】本発明の実施態様の概略図である。
図15】テーパー面がない場合の断面図である。
図16】押圧力のグラフを示す図である。
図17】テーパー面がある場合の断面図である。
図18】押圧力のグラフを示す図である。
図19】J字形のフックの下側断面を示す図である。
図20】J字形のフックの先端の幅と根元側の幅を示す図である。
図21】J字形のフックの側面図である。
図22】J字形のフックの正面図である。
図23】J字形のフックの図21におけるA-A線矢視断面図である。
図24】水平棒部の変形例を示す断面図である。
図25】係合溝の変形例を示す断面図である。
図26】水平棒部の断面が円であるときの断面図である。
図27】ハリの発生荷重のグラフを示す図である。
図28】水平棒部の変形例を示す断面図である。
図29】ハリの発生荷重のグラフを示す図である。
図30】従来の製氷機のストックセンサーの斜視図である。
図31】従来の製氷機のストックセンサーの正面図である。
図32】本発明の変形例の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面にもとづいて本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明を適用した製氷機の外観を示す斜視図である。
同図において、概略矩形箱形の筺体を有する製氷機10は、上部に貯氷庫部11、下部に機械室部12を備えており、貯氷庫部11は前面に扉13を備えている。扉13は下縁を回動軸として上縁側が円弧を描いて手前側(前面側)に引き出して回動させて開口させ、あるいは逆の手順で回動させて閉じることが可能となっている。
【0017】
貯氷庫部11には、概略矩形箱形の貯氷庫11aが形成されるとともに当該貯氷庫11aの内部の上方部分には、製氷ユニット14が収容されている。同製氷ユニット14は、製氷機10の前方から見て左側を支点として、右側が上下に傾動するように構成されている。すなわち、図示しない水皿を水平とした状態で製氷し、製氷後に脱氷させるとき(脱氷時)には、水皿は左端を回動支点として右端が時計回り方向に回転するように下降する。右端が下降すると水皿の表面が傾斜し、水皿の上方に配置されている製氷皿から氷が脱落すると、水皿の表面に沿って右側方向(所定方向)に落下する。
【0018】
落下した氷は下方の貯氷庫11a内にたまっていく。脱氷が終了したら、水皿は反対の反時計回り方向に回転し、右端部分が上昇して当初の水平な状態へと戻って製氷を繰り返す。
図2は、ストックセンサーの主要パーツを示すパーツ図である。
ストックセンサー20は、上皿21と、マイクロスイッチ22と、回動片(ヒンジアーム)23と、揺動棒24と、検知板25とを備えている。上皿21は上方に開口しており、マイクロスイッチ22を収容している。通常、マイクロスイッチ22は、薄箱形に形成されている。すなわち、正面視における外形が矩形であり、平面視においても外径は矩形形状である。また、正面視における長手方向に向けて押圧片22aが往復動可能に支持されている。また、平面視において、押圧片22aは短手方向に往復動可能に支持される。さらに、平面視における長手方向の側面には、押圧片22aから離れた部位を回動支点として当接アーム(アクチュエータ)22bが当該水平面内で傾動可能に支持されており、当接アーム22bを押し込むと、当該当接アーム22bが前記押圧片22aを筺体内側に押し込み、内部の電気的接点を変位させることになる。
【0019】
このようなマイクロスイッチ22が、前記上皿21内で寝かせた状態、すなわち、押圧片22aの可動方向が水平方向となるように配置されている。寝かせた状態とすることにより、上皿21の高さを低くすることができ、さらに、上皿21を製氷ユニット14とともに上方の図示しないクーラーブラケットの底面に係合して装着されるようになっており、別途に蓋を用意する必要はない。仮にマイクロスイッチ22を上皿21の側面外面に配設しようとすれば、当該マイクロスイッチ22の外側に蓋となるような物を用意しなければならず、コストアップになる。
上皿21は、所定位置に固定するために、後方の上皿引っ掛け爪21aと、上皿弾性部材21bと、上皿弾性部材爪21b1と、取付位置決めのための上皿ダボ21cと、上皿ねじ穴21dとを備えている。また、上皿21は、所定位置にマイクロスイッチ(SW)を保持するために、マイクロスイッチ位置決めのための上皿ダボ21eと、マイクロスイッチ保持のための上皿爪21fと、マイクロスイッチ保持のための上皿爪21gとを備えている。
ごくまれに上皿21が底面から脱落することも発生しうるが、この際も引っ掛け爪であるマイクロスイッチ保持のための上皿爪21f,21gやマイクロスイッチ位置決めのための上皿ダボ21eの保持力によってマイクロスイッチは脱落しない。
前記上部トレイ(上皿21)は、後方の上皿引っ掛け爪21aをクーラーブラケット底面の穴やフックに引っ掛けつつ、取付位置決めのための上皿ダボ21cで位置決めし、前方の上皿弾性部材21b1の弾性爪21b1で穴やフックへと係合する。また、固定力を増すために上皿ねじ穴21dでねじ固定を追加できる。
【0020】
また、将来的に製氷機のクーラーブラケット部分の小型化が進んだ場合、ストックスイッチの高さスペースもより小型化されていくが、その際に対応することが容易である。
図3は、ストックセンサーの静止状態の平面図であり、図4は、ストックセンサーの傾動状態の平面図である。
上皿21は、吊下本体部である回動片23を回動可能に支持している。回動片23は上方に開口する概略U字型に形成されており、前方の前端アーム23a1と、後方の後端アーム23a2と、前端アーム23a1の下端と後端アーム23a2の下端とを連結する連結片23bとを有している。前端アーム23a1の上端前方と後端アーム23a2の上端後方には、それぞれ前記連結片23bの配置方向と同じ方向に突出する短円柱状の回転軸23c1,23c2が形成されている。また、上皿21の底面からはそれぞれの回転軸23c1,23c2を挿入可能であって、挿入すると前記前端アーム23a1の上端と後端アーム23a2の上端とを挟持するように略当接することで、回転軸23c1,23c2を支点として回動片23を回転可能、かつ脱落不能に支持する支持壁21c1,21c2が形成されている。なお、装着するときには前記前端アーム23a1の上端と後端アーム23a2の上端との距離を狭めるように湾曲させた状態としておき、回転軸23c1,23c2が支持壁21c1,21c2に形成した軸穴に入った後に湾曲状態から復帰させる。このように、回動片23は、上方にて略水平に支持される所定の回転軸23c1,23c2によって回転可能に吊り下げ支持されている。
【0021】
前端アーム23a1の上端の後方部分には、上方に突出し、前記回転軸23c1と同軸の異径アーム23dが形成されている。この異径アーム23dは、当該異径アーム23dが形成されている部位と、形成されていない部位とにおいて、前記回転軸23c1の回転軸芯からの半径が異なるように形成された異径部位である。この異径アーム23dは前記上皿21の底面に形成された穴を貫通して、当該上皿21内に侵入している。異径アーム23dは前記マイクロスイッチ22の当接アーム22bに隣接した位置に配置されており、回動片23が静止した状態では異径アーム23dはマイクロスイッチ22の当接アーム22bに当接していない。しかし、回転軸23c1,23c2を軸芯として左右に揺動するとき、異径アーム23dはマイクロスイッチ22の当接アーム22bの近辺を移動することで、当該異径アーム23dが当接アーム22bに当接して押し込むように作用する。すると、上述したように押圧片22aを押し込み、内部の電気的接点の接続状況を変化させる。例えば、押圧片22aを押し込むことで二つの接点が接触し、また、押圧片22aが復帰することで二つの接点が離れる。この接点の接触状態の変化によって電気的に回動片23の傾動姿勢を検知できる。このように、マイクロスイッチ22の当接アーム22b(アクチュエータ)が回動片23の側の異径アーム23d(異径部位)の回動軌跡範囲に突出して配設することで、回動片23の傾動状態を検知できる。
【0022】
図3の平面視において、上皿21は概略矩形形状となっており、その長辺の前後方向と、貯氷庫11aや製氷機10自体の前後方向とは一致している。これに対して、回転軸23c1,23c2を結ぶ回転軸(図示の一点鎖線)は、貯氷庫11aにおける前面の開口方向に対して概ね一致してはいるが、所定の角度だけ斜めに配置されている。
より具体的には、約10度だけ斜めに配置されている。また、前方の回転軸23c1は、後方の回転軸23c2を基準とすると、貯氷庫11aの正面側から見て右側にずれている。これは、ストックセンサー20自体が右側に配置されているからであり、言い換えるとストックセンサー20が貯氷庫11aにおける右側に配置されているときには、前方の回転軸23c1が同様に右側にずれるような斜めとなるように傾斜して配置されている。仮に、ストックセンサー20が貯氷庫11aにおける左側に配置されているとすれば、前方の回転軸23c1も同様に左側にずれるような斜めとなるように傾斜して配置することになる。
【0023】
図5は、ストックセンサーの傾動状態の正面図である。
同図に示すように、ストックセンサー(傾動片部)20を構成する各部品は、製氷ユニット14の下方近辺に向けて延設されるとともに傾動可能となっている。
ユーザがスクープを正面から真っ直ぐ奥方向に挿入したときに、スクープが回動片23や揺動棒24に当接したとしても、押し込む力は、後方向と右方向とに分散されることになる。上述したように回動片23は回転軸23c1,23c2によって吊り下げ支持されているから、右方向に分散された押圧力により、右方向に回動する回避動作を誘発する。この結果、ストックセンサー20の破損や脱落を防止できる。
【0024】
さらに、手前側の回転軸23c1が貯氷庫11a内の側壁に近い方向にずれているということは、ストックセンサー20は手前に置いて側方に逃げて配置されていることになり、反対方向にずれているときと比較すると、そもそもスクープが衝突しにくい。
このような構造に対して、仮に回転軸23c1,23c1を結ぶ回転軸心が貯氷庫11aの前後方向と一致しているとすると、ユーザがスクープを真っ直ぐに奥方向に挿入して回動片23や揺動棒24を打撃した際、これらの部品が揺動できないため、大きな力(一例として、約70ニュートンが計測された)がストックセンサー20に集中する。この力は図2の軸23c1,23c2へ伝わりながら、爪21aを支点とし、21bを解除するような動作、モーメントを生じるため、上皿21が上部のクーラーブラケットから脱落してしまう。上皿21は破壊されるのを防止するようにクーラーブラケットの底面に係止することで、あえて脱落できるようにしている。また、頻繁に脱落することを前提とすると、クーラーブラケットに係止する弾性体フック部分21b(図2)の材質をポリプロピレン製など繰り返し屈曲生に優れた材料とするべきであり、上皿21の主材料(例えばPC)とは別材料となってしまうので、コストアップを招くことになる。むろん、外れる都度、脱落したストックセンサー20全体をクーラーブラケットに取り付け直す必要が発生し、その間、ユーザは使用することができない。
【0025】
本実施例では、斜めとする角度を10度に設定してあるが、貯氷庫11aの大きさやストックセンサー20の大きさ、それぞれの形状に応じて適宜変更可能である。例えば、5度くらいであってもよいし、45度くらいであっても良い。斜めとする角度がさらに大きくなれば、より打撃力によって破壊されにくくなるが、製氷された氷が貯氷庫11a内で右または左に流れ落ちる構造の場合、検知板25を後方に押すことができにくくなるため、本来の検知機能を低下させかねない。このため、5度~45度、より好適には5度~30度程度が良好である。
【0026】
図6は、ストックセンサーを手前下方から見た斜視図であり、図7は、ストックセンサーの静止状態の左側面図であり、図8は、ストックセンサーの脱落開始状態の左側面図である。
揺動棒24は、上部突起部24aと、同上部突起部24aの下端から前方に突き出る水平棒部24bと、上部突起部24aの下端から下方に伸びるJフック部24cとから構成されている。揺動棒24と検知板25は、回動片23である吊下本体部に対して脱着可能で下方に延設される板片部に相当する。
【0027】
回動片23の後端アーム23a2の背面側には、上部突起部24aを背面側から挿入できる鉛直溝23a2aが形成されている。上部突起部24aは、概略円柱状に形成されており、この鉛直溝23a2aは開口幅が上部突起部24aの直径よりも狭めに形成されているので、上部突起部24aを鉛直溝23a2a内に押し込むことで係合状態となる。この係合状態の強度は、後述するようにして調整してある。また、上部突起部24aは、正面側から見て右側面から短円柱状の上部突起回転軸24a1が形成されており、これに対応して回動片23の後端アーム23a2の対応する位置には当該上部突起回転軸24a1が後方から挿入できるように水平溝23a2bが形成されている。上部突起部24aを鉛直溝23a2a内に押し込んだとき、水平溝23a2bに上部突起回転軸24a1が入り込むため、少なくとも両者が凹凸係合することで揺動棒24は回動片23から落下することはないし、後述するように揺動棒24が後方に押し込まれたときの回動軌跡を形成する役目を果たす。
【0028】
回動片23の連結片23bの底面には奥から前方に向けて4対の係合溝23b1が形成されている。各係合溝23b1は、下方に開口して上方に続く形状であり、開口端の幅がやや狭く、上方に向かうとやや幅広となる。幅広となった部位は、揺動棒24における水平棒部24bの幅と略一致しており、この結果、水平棒部24bを係合溝23b1内に押し込むことで係合状態となる。
【0029】
係合溝23b1は4対形成されているが、この実施例では、水平棒部24bの長さが十分に長くはないので、係合溝23b1における奥側の2つだけに係合している。上述したように水平棒部24bを係合溝23b1内に押し込むことで係合状態となるため、係合溝23b1の1つ1つが所定の係合力を発生する。すなわち、水平棒部24bの長さが長いほど多くの係合溝23b1と係合するので係合力が強くなり、水平棒部24bの長さを短くして少ない係合溝23b1と係合させるようにすれば係合力を弱くすることができる。
【0030】
図7に示すように、通常時は、回動片23の後面の鉛直溝23a2aに対して揺動棒24の上部突起部24aを押し込み、かつ、回動片23の下面の係合溝23b1に対して揺動棒24の水平棒部24bを押し込むと、回動片23と揺動棒24とは互いに係合して一体となっている。しかし、ユーザがスクープを誤って揺動棒24以下の部位に当接させてしまうと、図8に示すように、揺動棒24は後端側を後方に逃がすように鉛直面内で回転しつつ、回動片23から外れる。この外れる回避動作と、回動片23と揺動棒24とが回転軸23c1,23c2を回転支点として右方向に傾動する回避動作とは同時に行われるが、傾動による回避動作で十分に避けきれない大きさの力がかかった場合に、揺動棒24が回動片23から外れる回避動作が行われる。
【0031】
このように、本実施例では、回動片23と揺動棒24とを分離して形成し、衝撃によって揺動棒24とその下部の検知板25とが外れるようにした。すなわち、吊下本体部に対して脱着可能で下方に延設される板片部を備え、同板片部は前記吊下本体部の奥側と底側に対して奥側と底側に対して係止可能に形成されている。脱落するときは、揺動棒24と検知板25だけが脱落し、上皿21、回動片23、マイクロスイッチ22などは脱落しない。脱落した部位を再度取り付ける場合は、上皿21から吊り下げられた回動片23の下部に揺動棒24を係合させるが、上皿21よりも下方の位置の部位で係合させるので、取付行為自体が容易である。上皿21が脱落したとすると、貯氷庫11a内の天井に近い部位であるので、より奥まった位置であり、視認しにくく手探りでの行為とならざるをえないからである。従って、ユーザでも容易に直せるようになる。
【0032】
また、ストックセンサー20の大きさは、製氷機10の貯氷庫11aの大きさによって変化させる必要がある。この場合、回動片23と揺動棒24とが分離しているので、揺動棒24だけの長さを変更して全体の長さを調整可能である。分離して形成された一部だけを複数個用意するだけで足りるので、コストの上昇を抑制できるという効果がある。これは回動片23自体を多くの機種で共通化できるという効果もある。さらに、脱落することにより、個々のパーツが破損することを防止でき、脱落したときには再度係合し直せば良い。
【0033】
係合力の調整は、水平棒部24bの長さを変化させることで可能である。揺動棒24の長さは製氷機の大きさに比例することになるが、大型であるほど係合力が大きい方が好ましい傾向となる。従って、長い揺動棒24については、水平棒部24bを長く形成するというように、揺動棒24の長さに比例した水平棒部24bを用意しておけばよく、同じ長さの揺動棒24ごとに複数の長さの水平棒部24bが必要なわけではない。むろん、用意しておくことは構わないがコストアップの障害もある。揺動棒24の長さは、製氷機10の大きさに依存するだけではなく、脱落させる力の大きさによって変化させても良い。長ければより小さな力でも脱落させることができ、短ければより大きな力でないと脱落できない。すなわち、最適な脱落保持モーメントに調整することができる。
【0034】
なお、水平棒部24bの長さを変化させる方が容易ではあるが、連結片23bの下面に形成する係合溝23b1の数を変更することも可能である。あらかじめ多めの係合溝23b1を形成しておいて、過剰な部分を除去するようにしても良い。係合溝と呼んでいるが、下方から挿入される揺動棒24の水平棒部24bに係合できる凹凸係合は様々であり、溝であったり、爪であったり、適宜変形可能である。
【0035】
揺動棒24以下が脱落するので、上皿21を脱落可能として破壊を避ける必要がなくなる。すると、上皿21が係合するためのフック形状の部位をポリプロピレンで形成する必要性がなくなる。すなわち、単一の材料ですべての部品を形成でき、コストアップを免れることができる。
回動片23は、概略U字形状とされており、かつ、肉厚としたり、内側にリブ22dを立てて形成することで撓み変形時の応力を減じることができる。これにより、揺動棒24以下が繰り返し脱落したとしても回動片23は破壊されにくくすることができる。
【0036】
中型の製氷機の場合、下記のような寸法となった。
回転軸23c1,23c2の距離は約70mmであり、この回転軸23c1,23c2と揺動棒24の下端の検知板25との接続点までの距離が約140mmであった。このとき、スクープで押圧する力Fは軸23c2を支点としたモーメントを生じ、23c1には(140/70=)2倍の荷重が発生するにとどまる。
大型機種でさらに長い揺動軸(175mm)により大きなモーメントが発生した場合も、回動片23の回転軸23c1,23c2に発生する反力は2.5倍に抑制されるため、軸の破壊が起こりにくい。なお、揺動棒24と回動片23とは上部突起部上端24a2を回転軸芯とするモーメント力が発生するようにしている。
【0037】
図7にて、スクープによる押圧力Fが70Nの場合、回動片23の軸部23c1,23c2には140Nが発生する。
回転軸23c1,23c2の軸径をφ6で形成(剪断応力66MPa)すると、剪断力は1866N程度となり、安全率は13倍稼ぐことができる。一方で、F70Nは本体爪21aを支点としたモーメントを生じ、112mm離れた弾性体フック21b1には、レバー比((140+19)/112)=)1.42倍の99.4Nの荷重が発生する。フック21b1の固定保持力が100N以上あれば、本体は脱落せずに済む。大型機種ではさらに長い揺動棒24となり、より大きなモーメントが発生するが、回動片23の回転軸23c1,23c2に強度余裕があるため、上皿21に形成するU字型のフック部形状を調整することによって、固定保持力を150N程度まで高めることも可能である。従って、大型機種でも70Nを超えるスクープの荷重に耐えることができる。
【0038】
本実施例においては、揺動棒24(板片部の一部に相当する)は、回動片23(吊下本体部に相当する)の奥側に沿って鉛直方向上向きに伸びる上部突起部24a(回動支持部に相当)と、回動片23(吊下本体部)の底側に沿って水平方向手前側に伸びる水平棒部24b(係止支持部に相当する)とを有しており、回動支持部は、吊下本体部に形成された奥側に開口を有する水平溝23a2b(凹部に相当)に対して上部突起部24aの上部突起ダボ24a1(突起に相当する)が入り込むことで同突起と同凹部との係合状態に基づいて当該板片部が手前側が下降する方向に回動可能に支持されている。また、前記係止支持部は、前記吊下本体部の底面にて下方に開口しつつ開口端の幅が奥よりも狭まるように形成した係合溝23b1(二股部位)に対して、当該二股部位に対して無理押しして挿入することで形成すると共に、手前側を下方に所定の強さで押し下げることで同二股部位から離反可能な水平棒部24b(係止突起)を有している。
【0039】
そして、吊下本体部の係合溝23b1(二股部位)は複数形成されており、係止支持部は、係止力の調整のために二股部位に係止する数を調整できることができるようにしてある。
水平棒部24b(係止突起)と、係合溝23b1(二股部位)は単純な丸棒や○穴でも良いが、本実施例では、図24図25に示すように、水平棒部24b(係止突起)については、丸棒の両側面を削った2平面を持つ断面とし、係合溝23b1(二股部位)については、当該係止突起の断面に一致する空隙を有する二股とするとともに、二股の連結部位には上方へ逃げ溝を形成してある。
このようにすることにより、1)逃げ溝とすることによって、係合溝23b1等の軸保持ハリの先端のたわみが適宜発生する。また、2)両側の平面を追加することにより、水平棒部が下方へ抜けようとする際に、なるべく大きな上方向の力を得るためである。
例えば、図26は、真円でφ6の棒を入り口幅5mmで保持する場合の力のかかり方を示している。この場合、図27に示すように軸の移動と力のかかり具合となる。片側たわみ0.4mm、ハリの水平発生荷重Fh=10Nとすると、垂直反力Fvは最大で2N(0.5mm下降時)となる。
これに対して、図28に示すように、係止突起は、丸棒の両側面を削った2平面を持つ断面とし、二股部位は、当該係止突起の断面に一致する空隙を有する二股とするとともに、二股の連結部位には上方へ逃げ溝を形成した場合は、図29に示すようになる。片側たわみMax1.1(=(5.2-3)÷2)、ハリの発生荷重Fh=10Nとすると、垂直反力Fvは最大で6Nとなる。ハリの発生荷重(Fh)が同じでも約3倍など、より大きい垂直反力(Fv)を得られ、荷重作用点がストレート部に達したときにリリース時の荷重が急減するためメリハリのある着脱となる。このように、ハリの根元に発生する応力も低減させることができ、繰り返し耐久性が向上する。
図9は、ストックセンサーのフックを示す斜視図である。
揺動棒24における上部突起部24aの下端から下方に向けてJフック部24cが形成されている。上述したように、板片部は、下端にこのJ字形のJフック部24cを形成された上方部位である揺動棒24と、この揺動棒24のJ字形のJフック部24cを引っ掛ける貫通穴25aが形成されて下方に延設される幅広の検知板25とから構成されている。
【0040】
J字形のJフック部24cは、フックの開口側と反対の側の部位に幅広部24c1を形成してある。この幅広部24c1を形成してあるため、検知板25の貫通穴25aに挿通させたときに、検知板25の貫通穴25aの周縁部位が同幅広部24c1に当接することで、検知板25は、板の端部に氷圧がかたよった場合でも、(上方から見て)わずかにしか回転しない。これにより氷を確実に受け止めることが可能となる。
【0041】
図10は、ストックセンサーの検知板が持ち上げられた状態を示す斜視図である。
図9の24dの凸突起が、図10での回転角βをある程度の位置で制限している。フック先端24c4の先端は検知板25の貫通穴25aへの貫通が保てる位置まで伸びている。これにより、βが最大のまま、検知板25が手前や奥へ回転してもフックが外れない。
このように、J字形のフックの先端を上方へ延長し、検知板25が上方へ回転してβ角度だけ持ち上がったときに、検知板25の貫通穴25aからJ字形のフックの先端が抜け出ないようにすることができる。
さらに、凸突起24dにより検知板25が上方へ回転したときにβ角度を制限することができる。
検知板25を揺動棒24に取り付けるときは、検知板25の底辺側を上方に向けた状態とし、この状態で下方に位置する検知板25の貫通穴25aに対してJフック部24cの先端から挿入した後、検知板25の底辺側が下に移動するように検知板25を回転させる。検知板25には、貫通穴25aを取り囲むように半円形状のガード部25bが形成されている。ガード部25bは、検知板25の底辺側が下に移動して、最下位置に至ったときに、Jフック部24cの背面側に突き当たることで、それ以上は検知板25が回転しないようにする。検知板25に氷が突き当たることで揺動棒24と回動片23とを傾動させるが、検知板25が揺動棒24に対して任意に揺動可能であるとすると、氷が検知板25を押しても揺動棒24は傾動しない。このため、検知板25をJフック部24cに装着するまでは回転できるようにしつつ、最下位置に至ったらガード部25bがJフック部24cの背面に当接することでそれ以上は回転できないようにしている。
【0042】
また、半円形状にしているので検知板25の板面を一定にしつつ当該検知板25がJフック部24cに係止したまま回転するとしても、ガード部25bのどこかがJフック部24cの背面に当接し、常に氷による押圧力を揺動棒24に伝えることができるようにしている。
【0043】
図11は、ストックセンサーで支持される検知板25が上から見て、反時計回りに約90度回転移動した吊り下げ状態を示す斜視図であり、図12は、ストックセンサーのフックによって検知板が受ける力を示す模式図である。
検知板25は揺動棒24に対してある程度緩やかに引っ掛けて保持されている。唯一、検知板25を貯氷庫11a内で右側に押したときには、その力を確実に揺動棒24に伝え、回動片23を傾動させてマイクロスイッチ22にて検知させる。
従って、氷の落下であったり、ユーザのスクープ操作により、検知板25がJフック部24cに係止されたまま、同検知板25が回転してしまうことがある。検知板25がそのように回転したままとなると、氷の量を検知できなくなるため、検知板25は、速やかに図6図7に示す状態に戻る必要がある。
【0044】
本実施例では、検知板25が回転しながら滑り落ちるように形成してある。その条件は、Jフック部24cが、検知板25の貫通穴25aに引っ掛けられた状態で、同検知板25の下端を上方側に移動させた後、同検知板25の下端が下方側に回転したときには、Jフック部24cと検知板25との接触部位において、
【0045】
(Jフック部24cと検知板25との摩擦力の合力Ff)

(検知板25の自重によるJフック部24cと検知板25との滑動力Fs)…(1)
となるようにしている。
【0046】
通常のフック形状で、フック内穴の縦寸法Hfがリング径φdの2倍であるときには、検知板25を揺動棒24の軸を基準として、垂直軸に対して捻っていくと、検知板25は鉛直軸に対して45度程度傾斜した姿勢となる。なお、図14a,図14bは、単純なフック構造での、傾斜角とフック穴内径など各部寸法との関係を示す図である。同図の傾斜角α=45゜の例を参照すると、このときは
(Jフック部24cと検知板25との摩擦力の合力Ff(0.18N))

(検知板25の自重によるJフック部24cと検知板25との滑動力Fs(0.16N))…(2)
となるため、初期位置に戻れない。
【0047】
図14cは本発明の実施状態の概略図である。1)Jフック先端の幅を減らし(根元側の幅D(7mm)に対して先端の幅Dtip(4mm)を狭くする)て段差を設け(図11)、2)Jフック部24cの上と下の両側面にC面24c2,24c3を追加した。このようにすることで、検知板25を揺動棒24の軸を基準として90度捻ったときに、検知板25は鉛直軸に対して37度傾斜した姿勢となる。これにより接触点での垂直抗力、摩擦力が減り、(1)式で示す関係を維持することができるようになった。すなわち、
摩擦力の合力Ff<スライド力Fs
となり、検知板25は2点支持から滑り落ちて図6図7に示す初期位置へ戻ることができる。また、傾斜面に力が作用しても、Jフック部24cの先端側を貫通しているため、検知板25が外れてしまうことはない。
図12に示すように、1)と2)とC面の頂点を調整し、Jフック内穴の縦寸法Hfをリング径dの1.8倍という短い寸法に制限できている。なお、1)と2)を実施しない場合でも37度とすることは可能であるが、Hf>2φdとなり、連結フック部分が大型化し上下の(検知板25の)ガタも増えてしまう。
このように、前記J字形のフックの内穴の縦寸法Hfと、前記検知板の貫通穴を形成するリング棒の径dとが、
Hf≦2d
となり、検知板の最小傾き角αminが
αmin<44゜
となるように、図19に示すように、前記J字形のフックの下側断面を上方が先細りとしたり、図20に示すように、前記J字形のフックの先端の幅を根元側の幅よりも狭くしている。
一方で、このような形状とするだけだと、前記J字形のフックの強度の低下が発生する。
図21は、J字形のフックの側面図であり、図22は、J字形のフックの正面図であり、図23は、J字形のフックの図21におけるA-A線矢視断面図である。
図21は、各図において、斜線を施した部分は肉厚とした部分である。図21図22図23に示すように、前記J字形のフックの上方を先細りとしたときに先細りとした部分を局部的に肉厚増しとするか、図21図22に示すように、前記J字形のフックの先端の幅を根元側の幅よりも狭くするときに側面部分を局部的に肉厚増しとする。このように肉厚増しなどを局部的に追加することで強度の改善を図った形状としている。
【0048】
図13は、ストックセンサーの当接片を示す図である。
上皿21の底面から下方に支持壁21c1(21c2)が延設されている。前方の支持壁21c1に対しては、前端アーム23a1の回転軸23c1が内側である後方から外側である前方に向けて貫通して支持されており、後方の支持壁21c2に対しては、後端アーム23a2の回転軸23c2が内側である前方から外側である後方に向けて貫通して支持されている。従って、回動片23に荷重がかかっていないときには、回動片23が上皿21から脱落することはない。
【0049】
しかし、スクープによって検知板連結部を後方に押し下げる力Fを受けると、軸23c2を支点としてモーメントが生じ、軸23c1は21c1から垂直上方へ反力を受ける前端アーム23a1を上方へ押し上げるよう力が作用し、この押し上げる力に応じて前端アーム23a1を後方へ撓ませようとする。
このため、上皿21の底面には、前端アーム23a1における上端の背面付近に凸部21dを形成してあり、回動片23が撓むことによって前端アーム23a1が後方側に変位させられようとしたときには、同凸部21dが前端アーム23a1における上端の背面付近に当接するため、前端アーム23a1の回転軸23c1が支持壁21c1から外れてしまうのを防止している。また、凸部21dの角にはRが、アーム23a1の角にはテーパー面があるため、押圧時に発生する反力の向きは下側へとなり、回転モーメントが発生する。アームの回転により、スクープの荷重はなくなるため、壊れにくくできる。
【0050】
本実施例においては、凸部21dは前端アーム23a1に対応して前方側にのみ形成しているが、後端アーム23a2に対応して、その上端の前面付近に当接するように形成してもよい。
このように、傾動片部は、吊下本体部(回動片23)の回転軸23c1,23c2と、同回転軸23c1,23c2が係止する上皿21(上部トレイ)とに対して、回転軸23c1,23c2を上皿21の支持壁21c1,21c2から離脱する方向に移動させた位置で両者が互いに突き当たるように形成した凸部21d(当接片)を形成してある。
【0051】
この結果、回動片23が上皿21から脱落する可能性をきわめて減らすことができるようになった。
偶然、スクープによる加圧方向と回転軸23c1,23c2の軸芯方向とが斜め10度で一致してしまった場合、上述したような回動による回避動作ができない。この場合、モーメントが大きくなると、回転軸23c1,23c2が支持壁21c1,21c2の軸受穴から脱落する方向へ前端アーム23a1が撓んで変形していく。
【0052】
本実施例では、この変形が1.5mmだけ発生したとき、前端アーム23a1がそれ以上変形しないよう阻止する凸部21dを追加した。この凸部21dが前端アーム23a1をそれ以上後方に移動することを阻止するため、回転軸23c1,23c2が支持壁21c1,21c2の軸受穴から脱落するのを防止できる。
図13に示すように、吊下本体部における当接片に対面する面をテーパー面としてある。約10度のテーパー面があるため、接触圧発生と同時にアームの回転揺動が誘発される。斜め10度の角度で押圧されたとしても、回転揺動が誘発され、逃げてくれる。この結果、脱落を回避できる。
図15は、テーパー面がない場合を示し、図16は、押圧力のグラフを示している。
テーパー面がない場合、強い荷重が生じても、回転動作のきっかけがなく、荷重がさらに上昇して破壊が起きる。
図17は、テーパー面がある場合を示し、図18は、押圧力のグラフを示している。
テーパー面がある場合、左側のR部角とテーパー面との接触になって初めて下方向の分力Fdが生じ、この力Fdが回転モーメントを生じさせてアーム全体が回転する。回転開始と同時に接触圧Fはゼロとなる。これにより、破壊が起きるだけの荷重は生じない。
回動片23と揺動棒24は、一体として形成することも可能である。小型機種の場合、上述したL寸が短いため安全装置としての回動片23と揺動棒24の分離・脱落構造は必須ではない。
図32を参照すると、従来の構造では軸間距離Dが短いため、脱落問題を併発していたが、本発明では軸間距離Dが長いため、寸法Lが短い場合は軸の破壊は起こらず、脱落させる必要も無い。むろん、これにはの回転軸23c1,23c2を斜めに配置した効果も相まってのことである。
このように、回動片23と揺動棒24を分離する構造は、中・大型機種でL寸が大きい場合や、生産台数が少ないが多くのL寸が存在したり、カスタマイズ対応でL寸を調整する場合に用いると効果が高い。
【0053】
なお、本発明は前記実施例に限られるものでないことは言うまでもない。当業者であれば言うまでもないことであるが、
・前記実施例の中で開示した相互に置換可能な部材および構成等を適宜その組み合わせを変更して適用すること
・前記実施例の中で開示されていないが、公知技術であって前記実施例の中で開示した部材および構成等と相互に置換可能な部材および構成等を適宜置換し、またその組み合わせを変更して適用すること
・前記実施例の中で開示されていないが、公知技術等に基づいて当業者が前記実施例の中で開示した部材および構成等の代用として想定し得る部材および構成等と適宜置換し、またその組み合わせを変更して適用すること
は本発明の一実施例として開示されるものである。
【符号の説明】
【0054】
10…製氷機、
11…貯氷庫部、
11a…貯氷庫、
12…機械室部、
13…扉、
14…製氷ユニット、
20…ストックセンサー(傾動片部)、
21…上皿、
21a…上皿引っ掛け爪(後方)、
21b…上皿弾性部材、
21b1…上皿弾性部材爪、
21c…上皿ダボ(取付位置決め)、
21d…上皿ねじ穴、
21e…上皿ダボ(マイクロスイッチ位置決め)、
21f…上皿爪(マイクロスイッチ保持)、
21g…上皿爪(マイクロスイッチ保持)、
21c1,21c2…支持壁、
21d…凸部、
22…マイクロスイッチ、
22a…押圧片、
22b…当接アーム(アクチュエータ)、
23…回動片(ヒンジアーム、吊下本体部)、
23a1…前端アーム、
23a2…後端アーム、
23a2a…鉛直溝、
23a2b…水平溝、
23b…連結片、
23b1…係合溝、
23c1,23c2…回転軸、
23d…異径アーム、
24…揺動棒、
24a…上部突起部、
24a1…上部突起ダボ、
24a2…上部突起部上端、
24b…水平棒部、
24c…Jフック部、
24c1…幅広部、
24c2,24c3…C面、
25…検知板、
25a…貫通穴、
25b…ガード部。
図1
図2
図3
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