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特許7505680フィラグリン及び/又はインボルクリン遺伝子発現増強用組成物、並びに、線維芽細胞賦活用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】フィラグリン及び/又はインボルクリン遺伝子発現増強用組成物、並びに、線維芽細胞賦活用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/121 20060101AFI20240618BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240618BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240618BHJP
   A61P 17/16 20060101ALI20240618BHJP
   A61K 8/9783 20170101ALI20240618BHJP
   C12N 5/071 20100101ALI20240618BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20240618BHJP
【FI】
A61K31/121
A61P17/00
A61P43/00 107
A61P17/16
A61K8/9783
C12N5/071 ZNA
C12N15/09 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020118002
(22)【出願日】2020-07-08
(65)【公開番号】P2022022849
(43)【公開日】2022-02-07
【審査請求日】2023-04-25
(73)【特許権者】
【識別番号】306019030
【氏名又は名称】ハウスウェルネスフーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅田 和希
(72)【発明者】
【氏名】中西 春霞
(72)【発明者】
【氏名】小原 達矢
(72)【発明者】
【氏名】室山 幸太郎
【審査官】伊藤 幸司
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2020-0022795(KR,A)
【文献】特表2014-509631(JP,A)
【文献】特開2006-347976(JP,A)
【文献】特開2004-075632(JP,A)
【文献】特表2009-539917(JP,A)
【文献】Mol Cell Biochem,2011年,355,pp.249-256
【文献】The Journal of Investigative Dermatology,2014年,134,pp.2693-2702
【文献】J. Cell. Mol. Med.,2015年,19(3),pp.620-629
【文献】The Journal of Investigative Dermatology,2004年,123,pp.564-573
【文献】The Journal of Biological Chemistry,2003年,278(36),pp.34277-34285
【文献】Bioorganic & Medicinal Chemistry,2016年,24,pp.501-520
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
A61Q
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デヒドロジンゲロンを有効成分として含有する、ンボルクリン遺伝子発現増強用組成物。
【請求項2】
デヒドロジンゲロンを有効成分として含有する、線維芽細胞賦活用組成物(但し、線維芽細胞賦活は、創傷治癒時の線維芽細胞賦活を除く)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィラグリン及び/又はインボルクリン遺伝子発現増強用組成物、並びに、線維芽細胞賦活用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚は表皮と真皮とから構成される。表皮の機能の一つは体内から水分が逃げないようにする水分保持機能である。一方、真皮は、細胞が少なく、細胞外マトリックスと水とを主成分とする。細胞外マトリックスは、コラーゲン線維、エラスチン線維等の皮膚の張りや弾力性に関わるタンパク質線維や、保水性の維持に重要なプロテオグリカン(ヒアルロン酸、デルマタン硫酸、コンドロイチン硫酸等)の基質により構成される。真皮に含まれる細胞の1つが線維芽細胞であり、線維芽細胞は細胞外マトリックス成分を合成しており、線維芽細胞の活動状態が細胞の張りや弾力性に重要な影響を及ぼす。線維芽細胞の活性が増強されると、皮膚の状態が改善することが知られている。フィラグリン及びインボルクリンは皮膚の保湿やバリア機能に関連する因子として知られている。
【0003】
特許文献1には、ビサクロンを含むウコン水抽出物を経口摂取することにより、紫外線照射後の皮膚水分が保持され保湿効果が達成されることが記載されている。
特許文献2には、ショウガ科ウコン属植物の抽出物が、優れた真皮線維芽細胞賦活活性を有することが記載されている。
【0004】
非特許文献1には、ウコン熱水抽出物が、UV照射により誘導されるTNFα及びインターロイキン1βの増加を抑制し、抗炎症作用を示すこと、角化細胞によるヒアルロン酸産生を促進すること、皮膚の保湿作用を有することが記載されている。
【0005】
非特許文献2には、ウコン抽出物を適用した真皮創傷部位においてTGF-β1が有意に増加し、線維芽細胞でフィブロネクチンやコラーゲンの生成が行われ、肉芽組織の形成つまり創傷治癒の促進が観察されたことが記載されている。
【0006】
一方、ウコンやショウガに含まれる生理活性成分のデヒドロジンゲロンは抗酸化、抗癌、抗炎症、抗うつ、抗マラリア、抗真菌、抗血小板等の作用が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2017-81874号公報
【文献】特開2004-75632号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】Journal of Cosmetic Dermatology,18(6),1866-1874(2019)
【文献】Wound Repair and Regeneration,6(2),167-177(1998)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
シワ形成、肌荒れ、乾燥肌等の皮膚のトラブルを改善するためには、皮膚保湿やバリア機能に関与する因子であるフィラグリン又はインボルクリンの産生を促進させることや、線維芽細胞を賦活することが有効であると考えられる。
【0010】
そこで本発明は、食品として摂取可能な物質を有効成分として含む、フィラグリン及び/又はインボルクリン遺伝子発現増強用組成物、並びに、線維芽細胞賦活用組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、ウコンやショウガに含まれる成分であるデヒドロジンゲロンが、フィラグリン及び/又はインボルクリンの遺伝子発現を増強する作用、及び、線維芽細胞を賦活する作用を有することを見出し、以下の本発明を完成するに至った。
(1)デヒドロジンゲロンを有効成分として含有する、フィラグリン及び/又はインボルクリン遺伝子発現増強用組成物。
(2)デヒドロジンゲロンを有効成分として含有する、線維芽細胞賦活用組成物。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、食品として摂取可能な物質であるデヒドロジンゲロンを有効成分として含む、フィラグリン及び/又はインボルクリン遺伝子発現増強用組成物、並びに、線維芽細胞賦活用組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、異なる濃度のデヒドロジンゲロンの存在下で72時間培養した表皮角化細胞株でのフィラグリン(FLG)のmRNA発現量を示す。
図2図2は、異なる濃度のデヒドロジンゲロンの存在下で72時間培養した表皮角化細胞株でのインボルクリン(INV)のmRNA発現量を示す。
図3図3は、異なる濃度のデヒドロジンゲロンの存在下で24時間培養した線維芽細胞株のWST-1アッセイでの吸光度(細胞代謝活性を反映する)の測定結果を示す。
図4図4は、異なる濃度のデヒドロジンゲロンの存在下で48時間培養した線維芽細胞株のWST-1アッセイでの吸光度の測定結果を示す。
図5図5は、異なる濃度のデヒドロジンゲロンの存在下で72時間培養した線維芽細胞株のWST-1アッセイでの吸光度の測定結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<デヒドロジンゲロン>
デヒドロジンゲロンは、下記の式:
【化1】
で表される構造を有する。
【0015】
デヒドロジンゲロンは植物に由来するものであってもよいし、人為的に合成されたものであってもよい。
【0016】
前記植物としてはショウガ科ウコン属植物、ショウガ科ショウガ属植物等が例示できる。ショウガ科ウコン属植物としては、具体的には、Curcuma longa(秋ウコン)、Curcuma aromatica、Curcuma zedoaria、Curcuma phaeocaulis、Curcuma kwangsinensis、Curcuma wenyujin、及び/又は、Curcuma xanthorrhizaが挙げられる。ショウガ科ショウガ属植物としては、具体的にはZingiber officinale(ショウガ)が挙げられる。
デヒドロジンゲロンはショウガ科ウコン属植物又はショウガ科ショウガ属植物の根茎に由来するものであってよい。
デヒドロジンゲロンは、植物の破砕物、搾汁、抽出物又はそれらの処理物等に含まれる形態であってもよい。
【0017】
デヒドロジンゲロンは、植物、或いは、植物の破砕物、搾汁、抽出物又はそれらの処理物から分離された形態であってもよいし、分離され精製された形態であってもよい。
デヒドロジンゲロンは、人為的に合成され、精製されたものであってもよい。
【0018】
<フィラグリン及び/又はインボルクリン遺伝子発現増強用組成物>
本発明の第一の実施形態は、デヒドロジンゲロンを有効成分として含有する、フィラグリン及び/又はインボルクリン遺伝子発現増強用組成物に関する。
本発明の第一の実施形態に係る組成物の対象は典型的にはヒトであるが、ヒトには限定されず他の非ヒト動物、例えばヒト以外の哺乳類であってもよい。
【0019】
フィラグリン及びインボルクリンは、皮膚の保湿やバリア機能に関連する因子である。フィラグリン及び/又はインボルクリンの遺伝子発現の増強により、皮膚の保湿や、シワ形成、肌荒れ、乾燥肌等の皮膚のトラブルの予防又は改善が達成される。
【0020】
フィラグリンはポリタンパク質前駆体であるプロフィラグリンとして発現する。プロフィラグリンがタンパク質分解による加工を受けて、機能を有する複数のフィラグリン分子が生じる。このため、フィラグリンの遺伝子発現の増強は、プロフィラグリンの遺伝子発現の増強と言い換えてもよい。本明細書では特に限定しない限り、フィラグリンとは、前駆体であるプロフィラグリンと成熟したフィラグリンのどちらであってもよい
【0021】
フィラグリン及び/又はインボルクリンの遺伝子発現が増強されていることは、本発明の第一の実施形態に係る組成物を摂取又は投与した対象から採取した細胞(好ましくは表皮角化細胞)、或いは、本発明の第一の実施形態に係る組成物の存在下で培養した細胞(好ましくは表皮角化細胞)中のmRNAからcDNAを調製し、該cDNAを鋳型とし、プロフィラグリンのcDNA塩基配列(5’非翻訳領域、コーディング領域及び/又は3’非翻訳領域、好ましくはコーディング領域)、及び/又は、インボルクリンのcDNA塩基配列(5’非翻訳領域、コーディング領域及び/又は3’非翻訳領域、好ましくはコーディング領域)の少なくとも一部を特異的に増幅し得るプライマーセットを用いた核酸増幅反応を行い、該反応による増幅産物量を検出することで確認することができる。プロフィラグリンのcDNA塩基配列を増幅するためのプライマーセットとしては、配列番号1に示す塩基配列を含むプライマーと、配列番号2に示す塩基配列を含むプライマーとのセットが例示できる。インボルクリンのcDNA塩基配列を増幅し得るプライマーセットとしては、配列番号3に示す塩基配列を含むプライマーと、配列番号4に示す塩基配列を含むプライマーとのセットが例示できる。
【0022】
また、フィラグリン及び/又はインボルクリンの遺伝子発現が増強されていることは、本発明の第一の実施形態に係る組成物を摂取又は投与した対象から採取した細胞(好ましくは表皮角化細胞)、或いは、本発明の第一の実施形態に係る組成物の存在下で培養した細胞(好ましくは表皮角化細胞)において、フィラグリン及び/又はインボルクリンのタンパク質の量を検出することで確認することができる。細胞中でフィラグリン及び/又はインボルクリンのタンパク質の量が増加している場合に、フィラグリン及び/又はインボルクリンの遺伝子発現が増強されていると評価することができる。
【0023】
ヒト由来フィラグリンのポリタンパク質前駆体であるヒト由来プロフィラグリンのcDNA塩基配列を配列番号7に示す。配列番号7の塩基配列のうち第73位~第12255位がコーディング領域である。このコーディング領域がコードするヒト由来プロフィラグリンのアミノ酸配列を配列番号8に示す。
ヒト由来インボルクリンのcDNA塩基配列を配列番号9に示す。配列番号9の塩基配列のうち第65位~第1819位がコーディング領域である。このコーディング領域がコードするヒト由来インボルクリンのアミノ酸配列を配列番号10に示す。
【0024】
本発明の第一の実施形態に係る組成物の対象は、好ましくは、フィラグリン及び/又はインボルクリンの遺伝子発現の増強を必要とする或いは望む対象である。また、本発明の第一の実施形態に係る組成物は、健常な対象に対しても有効である。
【0025】
本発明の第一の実施形態に係る組成物は、医薬品、飲食品、化粧品等の各形態の組成物であってよい。飲食品は、機能性表示食品、特定保健用食品、栄養補給のためのサプリメント等の形態のものも包含する。
【0026】
本発明の第一の実施形態に係る組成物は、好ましくは、経口又は経鼻により摂取又は投与される組成物であり、より好ましくは、経口により摂取又は投与される組成物である。
本発明の第一の実施形態に係る組成物はまた、皮膚に適用され経皮投与される組成物であってもよい。
【0027】
本発明の第一の実施形態に係る組成物はまた、生体外の細胞と共存させることにより該細胞においてフィラグリン及び/又はインボルクリンの遺伝子発現を増強するための組成物であってもよい。この場合、本発明の第一の実施形態に係る組成物は、細胞を培養するための培地中に添加されて使用される。
【0028】
本明細書において「1日の使用量」とは、本発明の第一の実施形態又は後述する第二の実施形態に係る組成物の、一日間で摂取、投与又は使用される量の総量を意味し、好ましくは、ヒト一人、特に成人一人により、本発明の第一の実施形態又は第二の実施形態に係る組成物が一日間で摂取、投与又は使用される量の総量を意味する。「1日の使用量」の具体例として、本発明の第一の実施形態又は第二の実施形態に係る組成物の量として0.1g~500gが例示できる。
本発明の第一の実施形態に係る組成物は、継続的に摂取、投与又は使用されてもよいし、必要時に摂取、投与又は使用されてもよい。
【0029】
本発明の第一の実施形態に係る組成物におけるデヒドロジンゲロンの含有量は特に限定されず、例えば、組成物全量あたり0.1~95重量%のデヒドロジンゲロンを含むことができ、或いは、1日の使用量あたり1μg~10gのデヒドロジンゲロンを含むことができる。
【0030】
本発明の第一の実施形態に係る組成物の形状は、特に限定されず、例えば、液体状、流動状、ゲル状、半固形状、又は固形状などの何れの形状であってもよい。
【0031】
本発明の第一の実施形態に係る組成物は、デヒドロジンゲロンに加えて、少なくとも1種の他の成分を更に含んでいてもよい。本発明の第一の実施形態に係る組成物が含み得る、少なくとも1種の他の成分としては、特に限定されないが、好ましくは、医薬品、飲食品、化粧品等の最終的な形態において許容される成分である。
【0032】
このような他の成分としては例えば、甘味料、酸味料、ビタミン類、ミネラル類、増粘剤、乳化剤、酸化防止剤、水等が挙げられる。また、必要により、色素、香料、保存料、防腐剤、防かび剤、更なる生理活性物質等を添加してもよい。
【0033】
甘味料としては、ブドウ糖、果糖、ショ糖、乳糖、麦芽糖、パラチノース、トレハロース、キシロース等の単糖や二糖、異性化糖(ブドウ糖果糖液糖、果糖ブドウ糖液糖、砂糖混合異性化糖等)、糖アルコール(エリスリトール、キシリトール、ラクチトール、パラチニット、ソルビトール、還元水飴等)、はちみつ、高甘味度甘味料(スクラロース、アセスルファムカリウム、ソーマチン、ステビア、アスパルテーム等)等が挙げられる。
【0034】
酸味料としては、クエン酸、リンゴ酸、グルコン酸、酒石酸、乳酸、リン酸、又はこれらの塩等があり、これらのうちの1種又は2種以上を利用することができる。
ビタミン類としては、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンE、ナイアシン、イノシトール等が挙げられる。
ミネラル類としては、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、鉄等が挙げられる。
【0035】
増粘剤としては、カラギーナン、ジェランガム、キサンタンガム、アラビアガム、タマリンドガム、グアーガム、ローカストビーンガム、カラヤガム、寒天、ゼラチン、ペクチン、大豆多糖類、カルボキシメチルセルロース(CMC)等が挙げられる。
乳化剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、レシチン、植物性ステロール、サポニン等が挙げられる。
酸化防止剤としては、ビタミンC、トコフェロール(ビタミンE)、酵素処理ルチン等が挙げられる。
前記他の成分は、それぞれ当業者が飲食品、医薬品等の組成物に通常採用する範囲内の量で適宜配合することができる。
【0036】
本発明の第一の実施形態に係る組成物は、デヒドロジンゲロンのみを、フィラグリン及び/又はインボルクリンの遺伝子発現の増強に関与する活性成分として含んでいてもよい。この場合、本発明の第一の実施形態に係る組成物は、フィラグリン及び/又はインボルクリンの遺伝子発現の増強に関与しない、上記のような他の成分を含んでいてよい。
【0037】
<線維芽細胞賦活用組成物>
本発明の第二の実施形態は、デヒドロジンゲロンを有効成分として含有する、線維芽細胞賦活用組成物に関する。
本発明の第二の実施形態に係る組成物の対象は典型的にはヒトであるが、ヒトには限定されず他の非ヒト動物、例えばヒト以外の哺乳類であってもよい。
線維芽細胞の賦活により、皮膚の保湿や、シワ形成、肌荒れ、乾燥肌等の皮膚のトラブルの予防又は改善が達成される。
【0038】
線維芽細胞の賦活とは、線維芽細胞の細胞増殖能が上昇していることを指す。線維芽細胞が賦活されていることは、本発明の第二の実施形態に係る組成物を摂取又は投与した対象から採取した線維芽細胞、或いは、本発明の第二の実施形態に係る組成物の存在下で培養した線維芽細胞をWST-1試薬含有培養液中でインキュベートした後に培養液の波長450~630nmの吸光度を測定し、測定された吸光度が、本発明の第二の実施形態に係る組成物を摂取又は投与しない対象から採取した或いは本発明の第二の実施形態に係る組成物の非存在下で培養した線維芽細胞を用いて同様に測定された吸光度よりも高いことにより確認することができる。
【0039】
本発明の第二の実施形態に係る組成物の対象は、好ましくは、線維芽細胞の賦活を必要とする或いは望む対象である。また、本発明の第二の実施形態に係る組成物は、健常な対象に対しても有効である。
【0040】
本発明の第二の実施形態に係る組成物は、医薬品、飲食品、化粧品等の各形態の組成物であってよい。飲食品は、機能性表示食品、特定保健用食品、栄養補給のためのサプリメント等の形態のものも包含する。
【0041】
本発明の第二の実施形態に係る組成物は、好ましくは、経口又は経鼻により摂取又は投与される組成物であり、より好ましくは、経口により摂取又は投与される組成物である。
本発明の第二の実施形態に係る組成物はまた、皮膚に適用され経皮投与される組成物であってもよい。
【0042】
本発明の第二の実施形態に係る組成物はまた、生体外の線維芽細胞と共存させることにより該細胞を賦活するための組成物であってもよい。この場合、本発明の第二の実施形態に係る組成物は、細胞を培養するための培地中に添加されて使用される。
本発明の第二の実施形態に係る組成物は、継続的に摂取、投与又は使用されてもよいし、必要時に摂取、投与又は使用されてもよい。
【0043】
本発明の第二の実施形態に係る組成物におけるデヒドロジンゲロンの含有量は特に限定されず、例えば、組成物全量あたり0.1~95重量%のデヒドロジンゲロンを含むことができ、或いは、1日の使用量あたり1μg~10gのデヒドロジンゲロンを含むことができる。
【0044】
本発明の第二の実施形態に係る組成物の形状は、特に限定されず、例えば、液体状、流動状、ゲル状、半固形状、又は固形状などの何れの形状であってもよい。
【0045】
本発明の第二の実施形態に係る組成物は、デヒドロジンゲロンに加えて、少なくとも1種の他の成分を更に含んでいてもよい。本発明の第二の実施形態に係る組成物が含み得る、少なくとも1種の他の成分としては、特に限定されないが、好ましくは、医薬品、飲食品、化粧品等の最終的な形態において許容される成分である。
【0046】
このような他の成分としては例えば、甘味料、酸味料、ビタミン類、ミネラル類、増粘剤、乳化剤、酸化防止剤、水等が挙げられる。また、必要により、色素、香料、保存料、防腐剤、防かび剤、更なる生理活性物質等を添加してもよい。これらの成分の具体例は、本発明の第一の実施形態に係る組成物に関して説明したものと同様である。
前記他の成分は、それぞれ当業者が飲食品、医薬品等の組成物に通常採用する範囲内の量で適宜配合することができる。
【0047】
本発明の第二の実施形態に係る組成物は、デヒドロジンゲロンのみを、線維芽細胞の賦活に関与する活性成分として含んでいてもよい。この場合、本発明の第二の実施形態に係る組成物は、線維芽細胞の賦活に関与しない、上記のような他の成分を含んでいてよい。
【実施例
【0048】
<実施例1>
ヒト由来表皮角化細胞株(NHEK)を、1ウェルあたり1×10細胞になるようにHuMedia-KG2培地に懸濁し、懸濁液を24ウェルプレートに播種し、37℃、5%CO条件下で培養した。
培養開始から24時間後に、デヒドロジンゲロン(DHZ)を終濃度で10μM、50μM又は100μM含有する培地(Hydrocortisoneを含まない)に交換し、更に72時間培養した。
対照としてデヒドロジンゲロンを含まない前記培地を用いた以外は同一の方法で表皮角化細胞株の培養を行った。
デヒドロジンゲロンは、市販の試薬を東京化成工業株式会社から入手して使用した。
【0049】
培養後の細胞をPBSで洗浄し、細胞を回収して、細胞からRNAを抽出した。細胞の回収およびRNAの抽出にはRNeasy Mini Kit(QIAGEN)を用い、付属の手順に従って行った。
【0050】
得られたRNAを使用し、リアルタイムPCRによってフィラグリン(FLG)及びインボルクリン(INV)、並びに、内部標準としてリボソームタンパク質S18(RPS18)のmRNA発現量を測定した。One Step TB Green PrimeScript RT-PCR Kit II(タカラバイオ)を用い、付属のプロトコルに従って行った。プライマー配列は次表の通り。
【0051】
【表1】
【0052】
フィラグリン(FLG)及びインボルクリン(INV)のmRNA発現量を、RPS18のmRNA発現量に対する相対値として算出した。更に、各デヒドロジンゲロン濃度条件でのフィラグリン(FLG)及びインボルクリン(INV)の算出したmRNA発現量を、対照条件での各タンパク質の算出したmRNA発現量に対する相対値として表した。
【0053】
各条件についてn=3で測定を行い、平均値及び標準偏差を求めた。また、Dunnettの検定による有意差検定を行った。フィラグリン(FLG)のmRNA発現量を図1に示す。インボルクリン(INV)のmRNA発現量を図2に示す。図1図2において、対照(Ctr)に対する有意差を、**:p<0.01で示す。
デヒドロジンゲロンの濃度に依存して、保湿因子であるフィラグリン及びインボルクリンのmRNA発現量が増加した。
【0054】
<実施例2>
マウス由来線維芽細胞株(3T3-A31)を、1ウェルあたり1×10細胞になるようにDMEM培地(2%FBS、low glucose)に懸濁し、懸濁液を96ウェルプレートに播種し、37℃、5%CO条件下で培養した。
【0055】
培養開始から24時間後に、デヒドロジンゲロン(DHZ)を終濃度で0.5μM、1μM、5μM、10μM、50μM又は100μMとなるように添加し、更に24時間、48時間又は72時間培養した。
対照としてデヒドロジンゲロンを含まない前記培地を用いた以外は同一の方法で線維芽細胞株の培養を行った。
デヒドロジンゲロンは、市販の試薬を東京化成工業株式会社から入手して使用した。
【0056】
24時間、48時間又は72時間培養後に96ウェルプレートにWST-1試薬を加えて2時間インキュベートした後、波長450~630nmの吸光度(細胞の代謝活性)をプレートリーダーで測定した。ここでいう細胞の代謝活性とは、細胞の増殖活動及び、過度の活性化を含む生命維持活動を意味する。
各条件についてn=3で測定を行い、平均値及び標準偏差を求めた。また、Dunnettの検定による有意差検定を行った。
【0057】
デヒドロジンゲロン含有培地中で24時間、48時間及び72時間培養した後の吸光度の測定結果をそれぞれ図3図4及び図5に示す。図3~5において、対照(Ctr)に対する有意差を、*:p<0.05、**:p<0.01で示す。
【0058】
図3~5に示す結果は、5μM、10μM、50μM又は100μMのデヒドロジンゲロン(DHZ)の存在下で線維芽細胞株の代謝活性が増大することを示唆する。
【0059】
線維芽細胞は、ヒアルロン酸、コラーゲン等の保湿成分を産生する。デヒドロジンゲロンは、線維芽細胞を活性化し、保湿成分を増加させることが示唆された。
図1
図2
図3
図4
図5
【配列表】
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