(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】磁気抵抗効果素子、磁気抵抗効果装置および磁気センサ
(51)【国際特許分類】
G01R 33/09 20060101AFI20240618BHJP
H01L 29/82 20060101ALI20240618BHJP
H10N 50/10 20230101ALI20240618BHJP
【FI】
G01R33/09
H01L29/82 Z
H10N50/10
(21)【出願番号】P 2021164505
(22)【出願日】2021-10-06
【審査請求日】2023-06-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】弁理士法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼野 大地
(72)【発明者】
【氏名】太田 憲和
(72)【発明者】
【氏名】平林 啓
(72)【発明者】
【氏名】渡部 司也
【審査官】島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2003/0214764(US,A1)
【文献】特開2004-335699(JP,A)
【文献】特許第6377882(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 33/09
H01L 29/82
H10N 50/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部磁界に応じて抵抗値が変化するように構成された磁気抵抗効果素子であって、
第1の基準方向に形状磁気異方性が設定され、前記外部磁界に応じて方向が変化すると共に前記外部磁界が印加されない状態では前記第1の基準方向に平行な一方向である第1の磁化方向に向いた磁化を有する第1の磁性層と、
前記第1の基準方向と交差する第2の基準方向に形状磁気異方性が設定され、前記外部磁界に応じて方向が変化すると共に前記外部磁界が印加されない状態では前記第2の基準方向に平行な一方向である第2の磁化方向に向いた磁化を有する第2の磁性層と、
前記第1の磁性層と前記第2の磁性層との間に配置された非磁性層とを備
え、
前記第1の磁性層は、互いに分離された複数の第1の部分を含み、
前記第2の磁性層は、互いに分離された複数の第2の部分を含むことを特徴とする磁気抵抗効果素子。
【請求項2】
前記第1の基準方向と前記第2の基準方向は、互いに直交することを特徴とする請求項1記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項3】
前記非磁性層は、トンネルバリア層であることを特徴とする請求項1または2記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項4】
前記複数の第1の部分と前記複数の第2の部分は、前記第1の基準方向および前記第2の基準方向の各々と直交する一方向から見たときに、格子状に配列されていることを特徴とする請求項
1ないし3のいずれかに記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項5】
前記複数の第1の部分の各々は、前記第1の基準方向に形状磁気異方性が設定され、前記外部磁界に応じて方向が変化すると共に前記外部磁界が印加されない状態では前記第1の磁化方向に向いた磁化を有し、
前記複数の第2の部分の各々は、前記第2の基準方向に形状磁気異方性が設定され、前記外部磁界に応じて方向が変化すると共に前記外部磁界が印加されない状態では前記第2の磁化方向に向いた磁化を有することを特徴とする請求項
1ないし4のいずれかに記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項6】
前記第1の磁性層と前記第2の磁性層の各々に対してバイアス磁界を印加するバイアス磁界発生器が設けられていないことを特徴とする請求項1ないし
5のいずれかに記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項7】
外部磁界に応じて抵抗値が変化するように構成された磁気抵抗効果素子と、
第1のコイル磁界を発生するように構成された第1のコイルとを備え、
前記磁気抵抗効果素子は、
第1の基準方向に形状磁気異方性が設定され、前記外部磁界に応じて方向が変化すると共に前記外部磁界が印加されない状態では前記第1の基準方向に平行な一方向である第1の磁化方向に向いた磁化を有する第1の磁性層と、
前記第1の基準方向と交差する第2の基準方向に形状磁気異方性が設定され、前記外部磁界に応じて方向が変化すると共に前記外部磁界が印加されない状態では前記第2の基準方向に平行な一方向である第2の磁化方向に向いた磁化を有する第2の磁性層と、
前記第1の磁性層と前記第2の磁性層との間に配置された非磁性層とを備え、
前記第1のコイルは、前記第1の磁性層と前記第2の磁性層の各々に、前記第1のコイル磁界の第1の磁界成分であって、前記第1の基準方向と前記第2の基準方向との間の方向である第1の磁界方向の第1の磁界成分が印加されるように構成されていることを特徴とする磁気抵抗効果装置。
【請求項8】
前記第1のコイルは、前記第1のコイル磁界を発生すると共に、前記第1の基準方向と前記第2の基準方向の各々と交差する方向に延在する第1のコイル要素を含むことを特徴とする請求項
7記載の磁気抵抗効果装置。
【請求項9】
更に、第2のコイル磁界を発生するように構成された第2のコイルを備え、
前記第2のコイルは、前記第1の磁性層と前記第2の磁性層の各々に、前記第2のコイル磁界の第2の磁界成分であって、前記第1の基準方向と前記第2の基準方向との間の方向であり且つ前記第1の磁界方向との間に前記第1の基準方向と前記第2の基準方向の一方が存在する第2の磁界方向の第2の磁界成分が印加されるように構成されていることを特徴とする請求項
7または
8記載の磁気抵抗効果装置。
【請求項10】
前記第2のコイルは、前記第2のコイル磁界を発生すると共に、前記第1の基準方向と前記第2の基準方向の各々と交差する方向に延在する第2のコイル要素を含むことを特徴とする請求項
9記載の磁気抵抗効果装置。
【請求項11】
複数の磁気抵抗効果素子を備え、検出対象の磁界を検出して少なくとも1つの検出信号を生成するように構成された磁気センサであって、
前記複数の磁気抵抗効果素子の各々は、
外部磁界に応じて抵抗値が変化するように構成され、
前記複数の磁気抵抗効果素子の各々は、
第1の基準方向に形状磁気異方性が設定され、前記外部磁界に応じて方向が変化すると共に前記外部磁界が印加されない状態では前記第1の基準方向に平行な一方向である第1の磁化方向に向いた磁化を有する第1の磁性層と、
前記第1の基準方向と交差する第2の基準方向に形状磁気異方性が設定され、前記外部磁界に応じて方向が変化すると共に前記外部磁界が印加されない状態では前記第2の基準方向に平行な一方向である第2の磁化方向に向いた磁化を有する第2の磁性層と、
前記第1の磁性層と前記第2の磁性層との間に配置された非磁性層とを備え、
前記複数の磁気抵抗効果素子は、少なくとも1つの第1の磁気抵抗効果素子と、前記少なくとも1つの第1の磁気抵抗効果素子に対して直列に接続された少なくとも1つの第2の磁気抵抗効果素子とを含み、
前記少なくとも1つの第1の磁気抵抗効果素子における前記第1の磁化方向と、前記少なくとも1つの第2の磁気抵抗効果素子における前記第1の磁化方向は、互いに反対方向であり、
前記少なくとも1つの第1の磁気抵抗効果素子における前記第2の磁化方向と、前記少なくとも1つの第2の磁気抵抗効果素子における前記第2の磁化方向は、互いに反対方向であり、
前記少なくとも1つの検出信号は、前記少なくとも1つの第1の磁気抵抗効果素子と前記少なくとも1つの第2の磁気抵抗効果素子との接続点の電位と対応関係を有する第1の検出信号を含むことを特徴とする磁気センサ。
【請求項12】
前記複数の磁気抵抗効果素子は、更に、少なくとも1つの第3の磁気抵抗効果素子と、前記少なくとも1つの第3の磁気抵抗効果素子に対して直列に接続された少なくとも1つの第4の磁気抵抗効果素子とを含み、
前記少なくとも1つの第3の磁気抵抗効果素子における前記第1の磁化方向と、前記少なくとも1つの第4の磁気抵抗効果素子における前記第1の磁化方向は、互いに反対方向であり、
前記少なくとも1つの第3の磁気抵抗効果素子における前記第2の磁化方向と、前記少なくとも1つの第4の磁気抵抗効果素子における前記第2の磁化方向は、互いに反対方向であり、
前記少なくとも1つの検出信号は、更に、前記少なくとも1つの第3の磁気抵抗効果素子と前記少なくとも1つの第4の磁気抵抗効果素子との接続点の電位と対応関係を有する第2の検出信号を含むことを特徴とする請求項
11記載の磁気センサ。
【請求項13】
更に、第1のコイル磁界を発生するように構成された第1のコイルと、
第2のコイル磁界を発生するように構成された第2のコイルとを備え、
前記第1のコイルは、前記少なくとも1つの第1の磁気抵抗効果素子に、前記第1のコイル磁界の第1の磁界成分であって、前記少なくとも1つの第1の磁気抵抗効果素子における前記第1の磁化方向と前記第2の磁化方向との間の方向である第1の磁界方向の第1の磁界成分が印加されるように構成されていると共に、前記少なくとも1つの第2の磁気抵抗効果素子に、前記第1のコイル磁界の第2の磁界成分であって、前記第1の磁界方向とは反対の第2の磁界方向の第2の磁界成分が印加されるように構成され、
前記第2のコイルは、前記少なくとも1つの第3の磁気抵抗効果素子に、前記第2のコイル磁界の第3の磁界成分であって、前記少なくとも1つの第3の磁気抵抗効果素子における前記第1の磁化方向と前記第2の磁化方向との間の方向である第3の磁界方向の第3の磁界成分が印加されるように構成されていると共に、前記少なくとも1つの第4の磁気抵抗効果素子に、前記第2のコイル磁界の第4の磁界成分であって、前記第3の磁界方向とは反対の第4の磁界方向の第4の磁界成分が印加されるように構成されていることを特徴とする請求項
12記載の磁気センサ。
【請求項14】
更に、前記第1のコイル磁界を一時的に発生させた後に生成された前記第1の検出信号と、前記第2のコイル磁界を一時的に発生させた後に生成された前記第2の検出信号とに基づいて、前記検出対象の磁界と対応関係を有する検出値を生成するように構成されたプロセッサを備えたことを特徴とする請求項
13記載の磁気センサ。
【請求項15】
複数の磁気抵抗効果素子を備え、検出対象の磁界を検出して少なくとも1つの検出信号を生成するように構成された磁気センサであって、
前記複数の磁気抵抗効果素子の各々は、外部磁界に応じて抵抗値が変化するように構成され、
前記複数の磁気抵抗効果素子の各々は、
第1の基準方向に形状磁気異方性が設定され、前記外部磁界に応じて方向が変化すると共に前記外部磁界が印加されない状態では前記第1の基準方向に平行な一方向である第1の磁化方向に向いた磁化を有する第1の磁性層と、
前記第1の基準方向と交差する第2の基準方向に形状磁気異方性が設定され、前記外部磁界に応じて方向が変化すると共に前記外部磁界が印加されない状態では前記第2の基準方向に平行な一方向である第2の磁化方向に向いた磁化を有する第2の磁性層と、
前記第1の磁性層と前記第2の磁性層との間に配置された非磁性層とを備え、
前記複数の磁気抵抗効果素子は、前記第1の基準方向および前記第2の基準方向の各々と直交する一方向から見たときに、格子状に配列されていることを特徴
とする磁気センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気抵抗効果素子、磁気抵抗効果素子を含む磁気抵抗効果装置、および磁気抵抗効果素子を含む磁気センサに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、種々の用途で、磁気抵抗効果素子(以下、MR素子とも記す。)を用いた磁気センサが利用されている。MR素子の例としては、方向が固定された磁化を有する磁化固定層と、印加磁界の方向に応じて方向が変化可能な磁化を有する自由層と、磁化固定層と自由層の間に配置されたギャップ層とを有するMR素子が知られている。
【0003】
また、MR素子の他の例としては、特許文献1,2に開示されているような構造のMR素子が知られている。特許文献1には、第1の自由層と、第2の自由層と、第1の自由層と第2の自由層との間に配置されたバリア層とを備えたトンネルMR素子が開示されている。特許文献1では、第1の自由層の磁化と第2の自由層の磁化との間に所定の角度が形成されるように、バイアス磁界を発生するハードバイアスを設けている。
【0004】
特許文献2には、第1の方向の磁気容易軸を有する第1強磁性層と、第2の方向の磁気容易軸を有する第2強磁性層と、第1強磁性層と第2強磁性層との間に配置された非磁性層とを備えたMR素子が開示されている。特許文献2では、第1強磁性層の成長中に、第1強磁性層の磁気容易軸の方向を規定する磁界を印加し、第2強磁性層の成長中に、第2強磁性層の磁気容易軸の方向を規定する磁界であって、第1強磁性層の成長中に印加する磁界の方向とは異なる方向の磁界を印加している。
【0005】
磁化固定層を含むMR素子を備えた磁気センサでは、磁気センサの製造過程において、磁化固定層の磁化の方向を設定する必要がある。しかし、特許文献1,2に開示されたMR素子のように、2つの自由層を含むMR素子では、磁化固定層が設けられていないため、磁化固定層の磁化の方向を設定する工程を省略することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許出願公開第2021/0063508号明細書
【文献】特表2000-504430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示されたMR素子では、ハードバイアスを設ける必要がある。しかし、ハードバイアスは、磁気センサの低コスト化の妨げとなる。また、特許文献2に開示されたMR素子では、異なる方向の磁界を印加しながら強磁性層を成長させる必要がある。しかし、互いに異なる方向の外部磁界を検出するように構成された磁気センサでは、素子毎に磁界の方向を変える必要がある。そのため、工程数が多くなり、磁気センサの製造コストが高くなるという問題がある。
【0008】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、外部磁界に応じて方向が変化する磁化を有する2つの磁性層を備えた磁気抵抗効果素子であって、低コスト化を可能にする磁気抵抗効果素子、ならびに、この磁気抵抗効果素子を含む磁気抵抗効果装置および磁気センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の磁気抵抗効果素子は、外部磁界に応じて抵抗値が変化するように構成された磁気抵抗効果素子である。磁気抵抗効果素子は、第1の基準方向に形状磁気異方性が設定され、外部磁界に応じて方向が変化すると共に外部磁界が印加されない状態では第1の基準方向に平行な一方向である第1の磁化方向に向いた磁化を有する第1の磁性層と、第1の基準方向と交差する第2の基準方向に形状磁気異方性が設定され、外部磁界に応じて方向が変化すると共に外部磁界が印加されない状態では第2の基準方向に平行な一方向である第2の磁化方向に向いた磁化を有する第2の磁性層と、第1の磁性層と第2の磁性層との間に配置された非磁性層とを備えている。
【0010】
本発明の磁気抵抗効果素子において、第1の基準方向と第2の基準方向は、互いに直交していてもよい。
【0011】
また、本発明の磁気抵抗効果素子において、非磁性層は、トンネルバリア層であってもよい。
【0012】
また、本発明の磁気抵抗効果素子において、第1の磁性層は、互いに分離された複数の第1の部分を含んでいてもよい。また、第2の磁性層は、互いに分離された複数の第2の部分を含んでいてもよい。複数の第1の部分と複数の第2の部分は、第1の基準方向および第2の基準方向の各々と直交する一方向から見たときに、格子状に配列されていてもよい。また、複数の第1の部分の各々は、第1の基準方向に形状磁気異方性が設定され、外部磁界に応じて方向が変化すると共に外部磁界が印加されない状態では第1の磁化方向に向いた磁化を有していてもよい。複数の第2の部分の各々は、第2の基準方向に形状磁気異方性が設定され、外部磁界に応じて方向が変化すると共に外部磁界が印加されない状態では第2の磁化方向に向いた磁化を有していてもよい。
【0013】
また、本発明の磁気抵抗効果素子において、第1の磁性層と第2の磁性層の各々に対してバイアス磁界を印加するバイアス磁界発生器が設けられていなくてもよい。
【0014】
本発明の磁気抵抗効果装置は、本発明の磁気抵抗効果素子と、第1のコイル磁界を発生するように構成された第1のコイルとを備えている。第1のコイルは、第1の磁性層と第2の磁性層の各々に、第1のコイル磁界の第1の磁界成分であって、第1の基準方向と第2の基準方向との間の方向である第1の磁界方向の第1の磁界成分が印加されるように構成されている。
【0015】
本発明の磁気抵抗効果装置において、第1のコイルは、第1のコイル磁界を発生すると共に、第1の基準方向と第2の基準方向の各々と交差する方向に延在する第1のコイル要素を含んでいてもよい。
【0016】
また、本発明の磁気抵抗効果装置は、更に、第2のコイル磁界を発生するように構成された第2のコイルを備えていてもよい。第2のコイルは、第1の磁性層と第2の磁性層の各々に、第2のコイル磁界の第2の磁界成分であって、第1の基準方向と第2の基準方向との間の方向であり且つ第1の磁界方向との間に第1の基準方向と第2の基準方向の一方が存在する第2の磁界方向の第2の磁界成分が印加されるように構成されていてもよい。
【0017】
また、本発明の磁気抵抗効果装置において、第2のコイルは、第2のコイル磁界を発生すると共に、第1の基準方向と第2の基準方向の各々と交差する方向に延在する第2のコイル要素を含んでいてもよい。
【0018】
本発明の磁気センサは、複数の磁気抵抗効果素子を備え、検出対象の磁界を検出して少なくとも1つの検出信号を生成するように構成された磁気センサである。複数の磁気抵抗効果素子の各々は、本発明の磁気抵抗効果素子である。
【0019】
本発明の磁気センサにおいて、複数の磁気抵抗効果素子は、少なくとも1つの第1の磁気抵抗効果素子と、少なくとも1つの第1の磁気抵抗効果素子に対して直列に接続された少なくとも1つの第2の磁気抵抗効果素子とを含んでいてもよい。少なくとも1つの第1の磁気抵抗効果素子における第1の磁化方向と、少なくとも1つの第2の磁気抵抗効果素子における第1の磁化方向は、互いに反対方向であってもよい。少なくとも1つの第1の磁気抵抗効果素子における第2の磁化方向と、少なくとも1つの第2の磁気抵抗効果素子における第2の磁化方向は、互いに反対方向であってもよい。少なくとも1つの検出信号は、少なくとも1つの第1の磁気抵抗効果素子と少なくとも1つの第2の磁気抵抗効果素子との接続点の電位と対応関係を有する第1の検出信号を含んでいてもよい。
【0020】
また、本発明の磁気センサにおいて、複数の磁気抵抗効果素子は、更に、少なくとも1つの第3の磁気抵抗効果素子と、少なくとも1つの第3の磁気抵抗効果素子に対して直列に接続された少なくとも1つの第4の磁気抵抗効果素子とを含んでいてもよい。少なくとも1つの第3の磁気抵抗効果素子における第1の磁化方向と、少なくとも1つの第4の磁気抵抗効果素子における第1の磁化方向は、互いに反対方向であってもよい。少なくとも1つの第3の磁気抵抗効果素子における第2の磁化方向と、少なくとも1つの第4の磁気抵抗効果素子における第2の磁化方向は、互いに反対方向であってもよい。少なくとも1つの検出信号は、更に、少なくとも1つの第3の磁気抵抗効果素子と少なくとも1つの第4の磁気抵抗効果素子との接続点の電位と対応関係を有する第2の検出信号を含んでいてもよい。
【0021】
また、本発明の磁気センサは、更に、第1のコイル磁界を発生するように構成された第1のコイルと、第2のコイル磁界を発生するように構成された第2のコイルとを備えていてもよい。第1のコイルは、少なくとも1つの第1の磁気抵抗効果素子に、第1のコイル磁界の第1の磁界成分であって、少なくとも1つの第1の磁気抵抗効果素子における第1の磁化方向と第2の磁化方向との間の方向である第1の磁界方向の第1の磁界成分が印加されるように構成されていると共に、少なくとも1つの第2の磁気抵抗効果素子に、第1のコイル磁界の第2の磁界成分であって、第1の磁界方向とは反対の第2の磁界方向の第2の磁界成分が印加されるように構成されていてもよい。第2のコイルは、少なくとも1つの第3の磁気抵抗効果素子に、第2のコイル磁界の第3の磁界成分であって、少なくとも1つの第3の磁気抵抗効果素子における第1の磁化方向と第2の磁化方向との間の方向である第3の磁界方向の第3の磁界成分が印加されるように構成されていると共に、少なくとも1つの第4の磁気抵抗効果素子に、第2のコイル磁界の第4の磁界成分であって、第3の磁界方向とは反対の第4の磁界方向の第4の磁界成分が印加されるように構成されていてもよい。
【0022】
また、本発明の磁気センサは、第1のコイル磁界を一時的に発生させた後に生成された第1の検出信号と、第2のコイル磁界を一時的に発生させた後に生成された第2の検出信号とに基づいて、検出対象の磁界と対応関係を有する検出値を生成するように構成されたプロセッサを備えていてもよい。
【0023】
また、本発明の磁気センサにおいて、複数の磁気抵抗効果素子は、第1の基準方向および第2の基準方向の各々と直交する一方向から見たときに、格子状に配列されていてもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明の磁気抵抗効果素子は、第1の磁性層と、第2の磁性層と、非磁性層とを備えている。すなわち、本発明の磁気抵抗効果素子は、磁化固定層を備えていない。これにより、本発明によれば、低コスト化を可能にする磁気抵抗効果素子を実現することができるという効果を奏する。また、本発明の磁気抵抗効果装置は、本発明の磁気抵抗効果素子を備えている。これにより、本発明によれば、低コスト化を可能にする磁気抵抗効果装置を実現することができるという効果を奏する。また、本発明の磁気センサは、本発明の磁気抵抗効果素子を複数個備えている。これにより、本発明によれば、低コスト化を可能にする磁気センサを実現することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係る磁気抵抗効果装置の要部を示す斜視図である。
【
図2】本発明の第1の実施の形態に係る磁気抵抗効果装置の要部を示す平面図である。
【
図3】本発明の第1の実施の形態に係る磁気抵抗効果装置の一部を示す断面図である。
【
図4】本発明の第1の実施の形態に係る磁気抵抗効果素子の動作を説明するための説明図である。
【
図5】本発明の第1の実施の形態に係る磁気抵抗効果素子の動作を説明するための説明図である。
【
図6】本発明の第1の実施の形態における第1のコイルの動作を説明するための説明図である。
【
図7】本発明の第2の実施の形態に係る磁気抵抗効果装置の要部を示す平面図である。
【
図8】本発明の第2の実施の形態に係る磁気抵抗効果装置の要部を示す平面図である。
【
図9】本発明の第3の実施の形態に係る磁気センサの構成を示す回路図である。
【
図10】本発明の第3の実施の形態に係る磁気センサの第1の検出回路の一部を示す平面図である。
【
図11】本発明の第3の実施の形態に係る磁気センサの第2の検出回路の一部を示す平面図である。
【
図12】本発明の第3の実施の形態に係る磁気センサの第1の検出回路の動作を説明するための説明図である。
【
図13】本発明の第3の実施の形態に係る磁気センサの第1の検出回路の動作を説明するための説明図である。
【
図14】本発明の第3の実施の形態に係る磁気センサの第2の検出回路の動作を説明するための説明図である。
【
図15】本発明の第3の実施の形態に係る磁気センサの第2の検出回路の動作を説明するための説明図である。
【
図16】本発明の第4の実施の形態に係る磁気センサの一部を示す平面図である。
【
図17】本発明の第5の実施の形態に係る磁気センサの構成を示す回路図である。
【
図18】本発明の第6の実施の形態に係る磁気抵抗効果装置の要部を示す平面図である。
【
図19】本発明の第7の実施の形態に係る磁気センサの第1の検出回路の一部を示す平面図である。
【
図20】本発明の第7の実施の形態に係る磁気センサの第1の検出回路の一部を示す平面図である。
【
図21】本発明の第7の実施の形態に係る磁気センサの第2の検出回路の一部を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。始めに、本発明の第1の実施の形態に係る磁気抵抗効果素子の構成と、本発明の第1の実施の形態に係る磁気抵抗効果装置の構成について説明する。
図1は、本実施の形態に係る磁気抵抗効果装置の要部を示す斜視図である。
図2は、本実施の形態に係る磁気抵抗効果装置の要部を示す平面図である。
図3は、本実施の形態に係る磁気抵抗効果装置の断面を示す断面図である。
【0027】
図1ないし
図3に示したように、本実施の形態に係る磁気抵抗効果装置1は、本実施の形態に係る磁気抵抗効果素子(以下、MR素子と記す。)5を備えている。MR素子5は、外部磁界に応じて抵抗値が変化するように構成されている。MR素子5は、第1の磁性層51と、第2の磁性層53と、第1の磁性層51と第2の磁性層53との間に配置された非磁性層52とを備えている。
【0028】
ここで、以下のように、X方向、Y方向、Z方向を定義する。X方向、Y方向、Z方向は、互いに直交する。本実施の形態では、第1の磁性層51、非磁性層52および第2の磁性層53の積層方向に平行な一方向であって、第2の磁性層53から第1の磁性層51に向かう方向をZ方向とする。また、X方向とは反対の方向を-X方向とし、Y方向とは反対の方向を-Y方向とし、Z方向とは反対の方向を-Z方向とする。また、以下、基準の位置に対してZ方向の先にある位置を「上方」と言い、基準の位置に対して「上方」とは反対側にある位置を「下方」と言う。また、磁気抵抗効果装置1およびMR素子5の各々の構成要素に関して、Z方向の端に位置する面を「上面」と言い、-Z方向の端に位置する面を「下面」と言う。
【0029】
また、以下のように、第1の基準方向RD1と第2の基準方向RD2を定義する。第1の基準方向RD1と第2の基準方向RD2は、いずれも、特定の一方向とその反対方向とを含むものとして定義される。第1の基準方向RD1と第2の基準方向RD2は、互いに交差する。第1の基準方向RD1は、X方向からY方向に向かってαだけ回転した方向に平行な方向である。第2の基準方向RD2は、X方向から-Y方向に向かってβだけ回転した方向に平行な方向である。なお、α,βは、いずれも、0°よりも大きく90°よりも小さい角度である。α,βは、互いに等しくてもよいし、互いに異なっていてもよい。一例では、α,βは、いずれも45°である。この場合、第1の基準方向RD1と第2の基準方向RD2は、互いに直交する。
【0030】
図1および
図2に示したように、第1の磁性層51は、第1の基準方向RD1に形状磁気異方性が設定されている。すなわち、第1の磁性層51は、上方から見て、第1の基準方向RD1に長い形状を有している。また、第1の磁性層51は、外部磁界に応じて方向が変化する磁化M1を有している。磁化M1は、外部磁界が印加されない状態では、第1の基準方向RD1に平行な一方向である第1の磁化方向に向いている。
【0031】
また、
図1および
図2に示したように、第2の磁性層53は、第2の基準方向RD2に形状磁気異方性が設定されている。すなわち、第2の磁性層53は、上方から見て、第2の基準方向RD2に長い形状を有している。また、第2の磁性層53は、外部磁界に応じて方向が変化する磁化M2を有している。磁化M2は、外部磁界が印加されない状態では、第2の基準方向RD2に平行な一方向である第2の磁化方向に向
いている。
【0032】
以下、外部磁界が印加されない状態における磁化M1の方向であって、予め規定された磁化M1の方向を、初期状態における磁化M1の方向、または単に初期状態における方向と言う。同様に、外部磁界が印加されない状態における磁化M2の方向であって、予め規定された磁化M2の方向を、初期状態における磁化M2の方向、または単に初期状態における方向と言う。
【0033】
図2に示した例では、MR素子5は、外部磁界のX方向に平行な方向の磁界成分を検出するように構成されている。この例では、初期状態における第1の磁性層51の磁化M1は、第1の基準方向RD1に平行な一方向であって、X方向からY方向に向かってαだけ回転した方向D1に向いている。すなわち、この例では、第1の磁化方向は、方向D1である。また、この例では、初期状態における第2の磁性層53の磁化M2は、第2の基準方向RD2に平行な一方向であって、X方向から-Y方向に向かってβだけ回転した方向D2に向いている。すなわち、この例では、第2の磁化方向は、方向D2である。
【0034】
図1および
図2に示した例では、第1および第2の磁性層51,53の各々の平面形状(上方から見た形状)は、楕円形である。なお、第1および第2の磁性層51,53の各々の平面形状は、楕円形のように、短手方向の幅が一定となる幅一定部分を含まない形状に限らず、幅一定部分を含む形状であってもよい。幅一定部分を含む平面形状の例としては、長手方向の両端が直線である矩形の他に、長手方向の両端が半円となる長円形や、長手方向の両端が多角形となる形状がある。
【0035】
磁気抵抗効果装置1は、更に、上部電極61と下部電極62とを備えている。上部電極61は、下部電極62の上方に配置されている。上部電極61と下部電極62は、MR素子5に対して、磁気的信号検出用の電流を流すためのものである。MR素子5は、上部電極61と下部電極62との間に配置されている。第1の磁性層51は、上部電極61に接続されている。第2の磁性層53は、下部電極62に接続されている。
【0036】
MR素子5は、磁気的信号検出用の電流を、MR素子5を構成する各層の面に対してほぼ垂直な方向に流すCPP(Current Perpendicular to Plane)タイプのMR素子である。非磁性層52は、トンネルバリア層であってもよいし、非磁性導電層であってもよい。本実施の形態では特に、非磁性層52は、トンネルバリア層である。
【0037】
MR素子5では、第1の磁性層51の磁化M1の方向と第2の磁性層53の磁化M2の方向とがなす角度に応じて抵抗値が変化し、この角度が大きくなるに従って抵抗値は大きくなる。
【0038】
磁気抵抗効果装置1は、更に、第1のコイル磁界を発生するように構成された第1のコイル7を備えている。
図1ないし
図3に示したように、第1のコイル7は、それぞれ第1のコイル磁界を発生するコイル要素71,72を含んでいる。なお、コイル要素とは、コイルを構成する導線の一部である。コイル要素71,72の各々は、第1の基準方向RD1と第2の基準方向RD2の各々と交差する方向に延在している。本実施の形態では特に、コイル要素71,72の各々は、Y方向に平行な方向に延在している。コイル要素71は、MR素子5および上部電極61の上方に配置されている。コイル要素72は、MR素子5および下部電極62の下方に配置されている。コイル要素71,72は、直列または並列に接続されている。
【0039】
第1のコイル7は、第1の磁性層51と第2の磁性層53の各々に、第1のコイル磁界の第1の磁界方向の磁界成分が印加されるように構成されている。第1の磁界方向は、第1の基準方向RD1と第2の基準方向RD2との間の方向である。本実施の形態では、第1の磁性層51と第2の磁性層53の各々に、X方向または-X方向の磁界成分が印加されるように、コイル要素71,72が構成されている。すなわち、本実施の形態では、第1の磁界方向は、X方向または-X方向である。
【0040】
第1のコイル7は、図示しないコイル駆動回路によって制御される。コイル駆動回路は、第1のコイル磁界が一時的に発生するように、第1のコイル7を制御する。なお、コイル駆動回路は、後述するプロセッサに含まれていてもよいし、少なくとも一部がプロセッサとは独立した回路であってもよい。
【0041】
磁気抵抗効果装置1は、更に、コイル要素71と上部電極61との間に介在する絶縁層63と、コイル要素72と下部電極62との間に介在する絶縁層64と、MR素子5および第1のコイル7の周囲に配置された図示しない絶縁層とを備えている。
【0042】
なお、本実施の形態では、第1の磁性層51と第2の磁性層53の各々に対してバイアス磁界を印加するバイアス磁界発生器(例えば磁石)は設けられていない。
【0043】
次に、
図4および
図5を参照して、MR素子5の動作について説明する。
図4および
図5は、MR素子5の動作を説明するための説明図である。ここでは、MR素子5が、
図2に示した例と同様に、外部磁界のX方向に平行な方向の磁界成分を検出するように構成されている場合を例にとって説明する。
図4および
図5において、第1の磁性層51内に描かれた破線の矢印は、初期状態における磁化M1の方向を示し、第2の磁性層53内に描かれた破線の矢印は、初期状態における磁化M2の方向を示している。
【0044】
図4は、MR素子5に対して、外部磁界のX方向に平行な方向の磁界成分Hxが印加された場合であって、磁界成分Hxの方向がX方向の場合を示している。この場合、磁化M1は方向D1からX方向に向かって傾き、磁化M2は方向D2からX方向に向かって傾く。その結果、磁化M1の方向と磁化M2の方向とがなす角度は、初期状態に比べて小さくなり、MR素子5の抵抗値は、初期状態に比べて小さくなる。
【0045】
図5は、MR素子5に対して、磁界成分Hxが印加された場合であって、磁界成分Hxの方向が-X方向の場合を示している。この場合、磁化M1は方向D1からY方向に向かって傾き、磁化M2は方向D2から-Y方向に向かって傾く。その結果、磁化M1の方向と磁化M2の方向とがなす角度は、初期状態に比べて大きくなり、MR素子5の抵抗値は、初期状態に比べて大きくなる。
【0046】
磁化M1の方向と磁化M2の方向とがなす角度は、磁界成分Hxの方向および強度に依存して変化する。MR素子5の抵抗値は、上記の角度に依存して変化する。従って、MR素子5の抵抗値を検出することにより、磁界成分Hxの方向および強度を検出することができる。
【0047】
次に、第1のコイル7の動作について説明する。磁気抵抗効果装置1の使用時には、MR素子5に対して、磁化M1,M2の各々の方向を、初期状態における方向とは反対方向に回転させる大きな磁界が印加される場合がある。この場合、この大きな磁界が無くなっても、磁化M1,M2の各々の方向が、初期状態における方向とは反対方向となる状態が維持される場合がある。本実施の形態では、第1のコイル7および第1のコイル磁界は、外部磁界が印加されない状態における磁化M1,M2の各々の方向が、初期状態における方向とは異なる方向となった場合に、磁化M1,M2の各々の方向を、初期状態における方向にセット、すなわち磁化M1,M2の各々の方向をリセットするために用いられる。
【0048】
図6は、第1のコイル7の動作を説明するための説明図である。
図6において、第1の磁性層51内に描かれた破線の矢印は、外部磁界が印加されない状態において、初期状態における磁化M1の方向とは反対の方向となった磁化M1の方向を示している。また、第2の磁性層53内に描かれた破線の矢印は、外部磁界が印加されない状態において、初期状態における磁化M2の方向とは反対の方向となった磁化M2の方向を示している。
【0049】
図6に示した例では、第1のコイル7に対して第1のコイル磁界を発生させるための電流を供給すると、コイル要素71,72の各々から、第1のコイル磁界が発生する。第1のコイル7は、第1の磁性層51と第2の磁性層53の各々に、第1のコイル磁界の、X方向の磁界成分Hcが印加されるように制御される。具体的には、X方向の磁界成分Hcが発生するように、コイル要素71,72の各々に流す電流の方向を制御する。これにより、磁化M1,M2の各々の方向は、X方向に向かって回転する。その後、第1のコイル7への電流の供給を停止すると、磁化M1,M2の各々の方向は、初期状態における方向になる。
【0050】
なお、初期状態における第1の磁性層51の磁化M1が、方向D1とは反対の方向であり、初期状態における第2の磁性層53の磁化M2が、方向D2とは反対の方向である場合、第1のコイル7は、第1の磁性層51と第2の磁性層53の各々に、-X方向の磁界成分Hcが印加されるように制御される。具体的には、コイル要素71,72の各々に流す電流の方向を、
図6に示した場合とは逆方向にする。
【0051】
以上説明したように、本実施の形態に係るMR素子5は、それぞれ形状磁気異方性が設定された第1および第2の磁性層51,53を備えている。これにより、本実施の形態によれば、磁化の方向が固定された磁化固定層や、バイアス磁界発生器を用いることなく、磁気検出素子として用いることが可能になる。これにより、本実施の形態によれば、低コスト化が可能になる。また、本実施の形態に係るMR素子5を用いることにより、磁気抵抗効果装置1の低コスト化が可能になる。
【0052】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。始めに、
図7および
図8を参照して、本実施の形態に係る磁気抵抗効果装置について説明する。
図7および
図8は、本実施の形態に係る磁気抵抗効果装置の要部を示す説明図である。
【0053】
本実施の形態に係る磁気抵抗効果装置101は、第1の実施の形態に係る磁気抵抗効果装置1の構成要素、すなわちMR素子5および第1のコイル7に加えて、第2のコイル磁界を発生するように構成された第2のコイル8を備えている。
図7および
図8に示したように、第2のコイル8は、それぞれ第2のコイル磁界を発生するコイル要素81および図示しないコイル要素を含んでいる。コイル要素81および図示しないコイル要素の各々は、第1の基準方向RD1と第2の基準方向RD2の各々と交差する方向に延在している。本実施の形態では特に、コイル要素81および図示しないコイル要素の各々は、X方向に平行な方向に延在している。
【0054】
コイル要素81は、MR素子5および上部電極61(
図3参照)の上方に配置されている。コイル要素81は、第1のコイル7のコイル要素71の上方に配置されていてもよいし、コイル要素71の下方に配置されていてもよい。また、図示しないコイル要素は、MR素子5および下部電極62(
図3参照)の下方に配置されている。図示しないコイル要素は、第1のコイル7のコイル要素72(
図3参照)の上方に配置されていてもよいし、コイル要素72の下方に配置されていてもよい。コイル要素81と図示しないコイル要素は、直列または並列に接続されている。
【0055】
第2のコイル8は、MR素子5の第1の磁性層51と第2の磁性層53の各々に、第2のコイル磁界の第2の磁界方向の磁界成分が印加されるように構成されている。第2の磁界方向は、第1の基準方向RD1と第2の基準方向RD2との間の方向であり、且つ第1のコイル磁界の磁界成分の方向すなわち第1の磁界方向との間に第1の基準方向RD1と第2の基準方向RD2の一方が存在する方向である。
【0056】
本実施の形態では、第1の磁性層51と第2の磁性層53の各々に、Y方向または-Y方向の磁界成分が印加されるように、コイル要素81および図示しないコイル要素が構成されている。すなわち、本実施の形態では、第2の磁界方向は、Y方向または-Y方向である。第1の磁界方向(X方向または-X方向)と第2の磁界方向(Y方向または-Y方向)との間には、第1の基準方向RD1と第2の基準方向RD2の一方が存在する。
【0057】
第2のコイル8は、第1のコイル7と同様に、図示しないコイル駆動回路によって制御される。コイル駆動回路は、第2のコイル磁界が一時的に発生するように、第2のコイル8を制御する。
【0058】
次に、本実施の形態における第1および第2のコイル7,8の動作について説明する。本実施の形態では、第1のコイル7および第1のコイル磁界は、MR素子5の第1の磁性層51の磁化M1の方向を、方向D1または方向D1とは反対の方向にセットし、MR素子5の第2の磁性層53の磁化M2の方向を、方向D2または方向D2とは反対の方向にセットするために用いられる。
図7には、磁化M1の方向を方向D1にセットし、磁化M2の方向を方向D2にセットした例を示している。この例では、第1の実施の形態における
図6に示した例と同様に、第1のコイル7は、第1の磁性層51と第2の磁性層53の各々に、第1のコイル磁界の、X方向の磁界成分が印加されるように制御される。
【0059】
また、本実施の形態では、第2のコイル8および第2のコイル磁界は、MR素子5の第1の磁性層51の磁化M1の方向を、方向D1または方向D1とは反対の方向にセットし、MR素子5の第2の磁性層53の磁化M2の方向を、方向D3または方向D3とは反対の方向にセットするために用いられる。方向D3は、第2の基準方向RD2に平行な一方向であって、Y方向から-X方向に向かって回転した方向であり、方向D2とは反対の方向である。
【0060】
図8には、磁化M1の方向を方向D1にセットし、磁化M2の方向を方向D3にセットした例を示している。この例では、第2のコイル8は、第1の磁性層51と第2の磁性層53の各々に、第2のコイル磁界の、Y方向の磁界成分が印加されるように制御される。具体的には、Y方向の磁界成分が発生するように、コイル要素81および図示しないコイル要素の各々に流す電流の方向を制御する。これにより、磁化M1,M2の各々の方向は、Y方向に向かって回転する。その後、第2のコイル8への電流の供給を停止すると、磁化M1,M2は、それぞれ方向D1,D3に向く。
【0061】
なお、磁化M1の方向を方向D1とは反対の方向にセットし、磁化M2の方向を方向D3とは反対の方向にセットする場合、第2のコイル8は、第1および第2の磁性層51,53の各々に、第2のコイル磁界の、-Y方向の磁界成分が印加されるように制御される。具体的には、コイル要素81および図示しないコイル要素の各々に流す電流の方向を、
図8に示した場合とは逆方向にする。
【0062】
次に、本実施の形態に係るMR素子5の動作について説明する。磁化M1の方向を方向D1にセットし、磁化M2の方向を方向D2にセットした場合のMR素子5の動作は、第1の実施の形態における
図4および
図5を参照して説明したMR素子5の動作と同じである。
【0063】
以下、磁化M1の方向を方向D1にセットし、磁化M2の方向を方向D3にセットした場合のMR素子5の動作について説明する。この場合、MR素子5に対して、外部磁界のY方向の磁界成分が印加されると、磁化M1は方向D1からY方向に向かって傾き、磁化M2は方向D3からY方向に向かって傾く。その結果、磁化M1の方向と磁化M2の方向とがなす角度は、初期状態に比べて小さくなり、MR素子5の抵抗値は、初期状態に比べて小さくなる。
【0064】
また、MR素子5に対して、外部磁界の-Y方向の磁界成分が印加されると、磁化M1は方向D1から-Y方向に向かって傾き、磁化M2は方向D3から-Y方向に向かって傾く。その結果、磁化M1の方向と磁化M2の方向とがなす角度は、初期状態に比べて大きくなり、MR素子5の抵抗値は、初期状態に比べて大きくなる。
【0065】
磁化M1の方向と磁化M2の方向とがなす角度は、外部磁界のY方向に平行な方向の磁界成分の方向および強度に依存して変化する。MR素子5の抵抗値は、上記の角度に依存して変化する。従って、MR素子5の抵抗値を検出することにより、外部磁界のY方向に平行な方向の磁界成分の方向および強度を検出することができる。
【0066】
以上説明したように、本実施の形態に係る磁気抵抗効果装置101によれば、1つのMR素子5によって、外部磁界のX方向に平行な方向の磁界成分と、外部磁界のY方向に平行な方向の磁界成分を検出することができる。
【0067】
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1の実施の形態と同様である。
【0068】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。始めに、
図9ないし
図11を参照して、本実施の形態に係る磁気センサの構成について説明する。
図9は、本実施の形態に係る磁気センサの構成を示す回路図である。
図10は、本実施の形態に係る磁気センサの第1の検出回路の一部を示す平面図である。
図11は、本実施の形態に係る磁気センサの第2の検出回路の一部を示す平面図である。
【0069】
磁気センサ100は、複数のMR素子を備えている。複数のMR素子の各々は、第1の実施の形態で説明したMR素子5である。磁気センサ100におけるMR素子5の構成は、
図1ないし
図3に示したMR素子5と同じである。
【0070】
磁気センサ100は、検出対象の磁界である対象磁界を検出して少なくとも1つの検出信号を生成するように構成されている。本実施の形態では特に、磁気センサ100は、対象磁界のX方向に平行な方向の成分を検出して第1の検出信号S1を生成するように構成された第1の検出回路10と、対象磁界のY方向に平行な方向の成分を検出して第2の検出信号S2を生成するように構成された第2の検出回路20とを備えている。
【0071】
第1の検出回路10は、ホイートストンブリッジ回路14と、差分検出器15とを含んでいる。ホイートストンブリッジ回路14は、4つの抵抗部R11,R12,R13,R14と、電源ポートV1と、グランドポートG1と、2つの出力ポートE11,E12とを含んでいる。抵抗部R11は、電源ポートV1と出力ポートE11との間に設けられている。抵抗部R12は、出力ポートE11とグランドポートG1との間に設けられている。抵抗部R13は、出力ポートE12とグランドポートG1との間に設けられている。抵抗部R14は、電源ポートV1と出力ポートE12との間に設けられている。電源ポートV1には、所定の大きさの電圧または電流が印加される。グランドポートG1はグランドに接続される。差分検出器15は、出力ポートE11,E12の電位差に対応する信号を第1の検出信号S1として出力する。
【0072】
第2の検出回路20の回路構成は、第1の検出回路10と同様である。すなわち、第2の検出回路20は、ホイートストンブリッジ回路24と、差分検出器25とを含んでいる。ホイートストンブリッジ回路24は、4つの抵抗部R21,R22,R23,R24と、電源ポートV2と、グランドポートG2と、2つの出力ポートE21,E22とを含んでいる。抵抗部R21は、電源ポートV2と出力ポートE21との間に設けられている。抵抗部R22は、出力ポートE21とグランドポートG2との間に設けられている。抵抗部R23は、出力ポートE22とグランドポートG2との間に設けられている。抵抗部R24は、電源ポートV2と出力ポートE22との間に設けられている。電源ポートV2には、所定の大きさの電圧または電流が印加される。グランドポートG2はグランドに接続される。差分検出器25は、出力ポートE21,E22の電位差に対応する信号を第2の検出信号S2として出力する。
【0073】
磁気センサ100は、更に、第1および第2の検出信号S1,S2に基づいて、対象磁界と対応関係を有する検出値Vsを生成するように構成されたプロセッサ30を備えている。対象磁界の基準平面に平行な成分の方向が、基準平面内の基準位置を中心として回転する場合、検出値Vsは、基準位置における対象磁界の上記成分の方向が基準方向に対してなす角度と対応関係を有していてもよい。基準位置は、磁気センサ100が配置された位置であってもよい。基準平面は、X方向およびY方向に平行な平面(XY平面)であってもよい。基準方向は、X方向であってもよい。プロセッサ30は、例えば特定用途向け集積回路(ASIC)あるいはマイクロコンピュータによって構成されている。
【0074】
抵抗部R11~R14,R21~R24の各々は、少なくとも1つのMR素子5を含んでいる。抵抗部R12の少なくとも1つのMR素子5は、抵抗部R11の少なくとも1つのMR素子5に対して直列に接続されている。抵抗部R14の少なくとも1つのMR素子5は、抵抗部R13の少なくとも1つのMR素子5に対して直列に接続されている。抵抗部R22の少なくとも1つのMR素子5は、抵抗部R21の少なくとも1つのMR素子5に対して直列に接続されている。抵抗部R24の少なくとも1つのMR素子5は、抵抗部R23の少なくとも1つのMR素子5に対して直列に接続されている。
【0075】
本実施の形態では特に、抵抗部R11~R14,R21~R24の各々は、複数のMR素子5を含んでいる。
図10は、抵抗部R11~R14のうちの1つの抵抗部の一部を示している。
図11は、抵抗部R21~R24のうちの1つの抵抗部の一部を示している。
図10および
図11には、
図2に示したX方向、Y方向、Z方向、第1の基準方向RD1、第2の基準方向RD2を示している。複数のMR素子5は、上方から見たときに、格子状に配列されている。すなわち、複数のMR素子5は、第1の基準方向RD1と第2の基準方向RD2にそれぞれ複数個ずつ並ぶように配列されている。
【0076】
抵抗部R11~R14,R21~R24の各々は、更に、複数の上部電極61と、複数の下部電極62とを含んでいる。個々の下部電極62は、第2の基準方向RD2に長い形状を有している。下部電極62の長手方向に隣接する2つの下部電極62の間には、間隙が形成されている。
図10および
図11に示したように、下部電極62の上面上において、下部電極62の長手方向の両端の近傍に、それぞれMR素子5の第2の磁性層53が配置されている。
【0077】
個々の上部電極61は、第1の基準方向RD1に長い形状を有し、第1の基準方向RD1に隣接する2つの下部電極62上に配置されて隣接する2つのMR素子5の2つの第1の磁性層51を電気的に接続する。このような構成により、抵抗部R11~R14,R21~R24の各々は、複数の上部電極61と複数の下部電極62とによって直列に接続された複数のMR素子5を含んでいる。
【0078】
第1の検出回路10は、更に、第1の実施の形態で説明した第1のコイル7を含んでいる。本実施の形態における第1のコイル7の構成および機能は、コイル要素71,72の数を除いて、第1の実施の形態における
図1ないし
図3に示した第1のコイル7と同様である。本実施の形態では、第1のコイル7は、複数のコイル要素71と、複数のコイル要素72とを含んでいる。複数のコイル要素71と複数のコイル要素72は、直列または並列に接続されている。
【0079】
図10に示したように、第1の検出回路10では、複数のコイル要素71と複数のコイル要素72の各々は、Y方向に平行な方向に延在している。複数のコイル要素71は、X方向に並んでいる。個々のコイル要素71は、上方から見てY方向に並ぶ複数のMR素子5と重なるように配置されている。複数のコイル要素72は、複数のコイル要素71と同様に、上方から見て複数のMR素子5と重なるように配置されている。
【0080】
第1のコイル7は、抵抗部R11,R13における複数のMR素子5に、第1のコイル磁界のX方向の磁界成分(第1の磁界成分)が印加されるように構成されていると共に、抵抗部R12,R14における複数のMR素子5に、第1のコイル磁界の-X方向の磁界成分(第2の磁界成分)が印加されるように構成されている。
【0081】
第2の検出回路20は、更に、第2の実施の形態で説明した第2のコイル8を含んでいる。第2の検出回路20における第2のコイル8の構成および機能は、コイル要素81および図示しないコイル要素の数を除いて、第2の実施の形態における
図7および
図8に示した第2のコイル8と同様である。本実施の形態では、第2のコイル8は、複数のコイル要素81と、複数の図示しないコイル要素とを含んでいる。複数のコイル要素81と複数の図示しないコイル要素は、直列または並列に接続されている。
【0082】
図11に示したように、第2の検出回路20では、複数のコイル要素81の各々は、X方向に平行な方向に延在している。複数のコイル要素81は、Y方向に並んでいる。個々のコイル要素81は、上方から見てX方向に並ぶ複数のMR素子5と重なるように配置されている。図示しない複数のコイル要素は、複数のコイル要素81と同様に、上方から見て複数のMR素子5と重なるように配置されている。
【0083】
第2のコイル8は、抵抗部R21,R23における複数のMR素子5に、第2のコイル磁界のY方向の磁界成分(第3の磁界成分)が印加されるように構成されていると共に、抵抗部R22,R24における複数のMR素子5に、第2のコイル磁界の-Y方向の磁界成分(第4の磁界成分)が印加されるように構成されている。
【0084】
第1のコイル7と第2のコイル8は、プロセッサ30によって制御されてもよい。この場合、プロセッサ30は、第1のコイル磁界が一時的に発生するように、第1のコイル7を制御すると共に、第2のコイル磁界が一時的に発生するように、第2のコイル8を制御する。
【0085】
第1の検出回路10は、更に、複数のコイル要素71と複数の上部電極61との間に介在する図示しない第1の絶縁層と、複数のコイル要素72と複数の下部電極62との間に介在する図示しない第2の絶縁層と、複数のMR素子5および第1のコイル7の周囲に配置された図示しない第3の絶縁層とを含んでいる。第2の検出回路20は、更に、複数のコイル要素81と複数の上部電極61との間に介在する図示しない第4の絶縁層と、複数の図示しないコイル要素と複数の下部電極62との間に介在する図示しない第5の絶縁層と、複数のMR素子5および第2のコイル8の周囲に配置された図示しない第6の絶縁層とを含んでいる。
【0086】
図9において、抵抗部R11~R14,R21~R24の各々に描かれた2つの矢印は、その抵抗部におけるMR素子5の第1の磁性層51の磁化M1の方向と第2の磁性層53の磁化M2の方向を示している。また、
図9では、対象磁界が印加されない状態、すなわち初期状態における磁化M1,M2の方向を示している。
【0087】
以下、初期状態における磁化M1,M2の方向について説明する。抵抗部R11,R13における磁化M1の方向は、第1の基準方向RD1に平行な方向D1に向いている。抵抗部R11,R13における磁化M2の方向は、第2の基準方向RD2に平行な方向D2に向いている。抵抗部R12,R14における磁化M1の方向は、方向D1とは反対の方向に向いている。抵抗部R12,R14における磁化M2の方向は、方向D2とは反対の方向に向いている。
【0088】
抵抗部R21,R23における磁化M1の方向は、方向D1に向いている。抵抗部R21,R23における磁化M2の方向は、第2の基準方向RD2に平行な方向D3に向いている。抵抗部R22,R24における磁化M1の方向は、方向D1とは反対の方向に向いている。抵抗部R22,R24における磁化M2の方向は、方向D3とは反対の方向に向いている。
【0089】
第1の検出回路10の第1のコイル7の第1のコイル磁界は、抵抗部R11~R14における磁化M1,M2の各々の方向を、初期状態における方向にセット、すなわち磁化M1,M2の各々の方向をリセットするために用いられる。抵抗部R11,R13に対する第1のコイル7の動作は、
図6を参照して説明した第1のコイル7の動作と同じである。抵抗部R12,R14に対する第1のコイル7の動作は、磁界成分の方向が-X方向になる点を除いて、
図6を参照して説明した第1のコイル7の動作と同じである。
【0090】
第2の検出回路20の第2のコイル8
の第2のコイル磁界は、抵抗部R21~R24における磁化M1,M2の各々の方向を、初期状態における方向にセット、すなわち磁化M1,M2の各々の方向をリセットするために用いられる。抵抗部R21,R23に対する第2のコイル8の動作は、
図8を参照して説明した第2のコイル8の動作と同じである。抵抗部R22,R24に対する第2のコイル8の動作は、磁界成分の方向が-Y方向になる点を除いて、
図8を参照して説明した第2のコイル8の動作と同じである。
【0091】
次に、磁気センサ100の動作について説明する。始めに、
図12および
図13を参照して、第1の検出回路10の動作について説明する。
図12および
図13は、第1の検出回路10の動作を説明するための説明図である。
図12および
図13において、抵抗部R11~R14内に描かれた塗りつぶした矢印は、磁化M1,M2の各々の方向を示している。また、
図12および
図13において、抵抗部R11~R14内に描かれた破線の矢印は、初期状態における磁化M1,M2の各々の方向を示している。
【0092】
図12は、第1の検出回路10に対して、対象磁界のX方向に平行な方向の磁界成分Htxが印加された場合であって、磁界成分Htxの方向がX方向の場合を示している。この場合、抵抗部R11,R13の各々において、磁化M1は方向D1からX方向に向かって傾き、磁化M2は方向D2からX方向に向かって傾く。また、この場合、抵抗部R12,R14の各々において、磁化M1は方向D1とは反対の方向からY方向に向かって傾き、磁化M2は方向D2とは反対の方向から-Y方向に向かって傾く。その結果、磁界成分Htxが存在しない状態と比べて、抵抗部R11,R13の各々の抵抗値は減少し、抵抗部R12,R14の各々の抵抗値は増加する。
【0093】
磁界成分Htxの方向が-X方向の場合は、上述の場合とは逆に、磁界成分Htxが存在しない状態と比べて、抵抗部R11,R13の各々の抵抗値は増加し、抵抗部R12,R14の各々の抵抗値は減少する。
【0094】
抵抗部R11~R14の各々の抵抗値の変化量は、磁界成分Htxの強度に依存する。磁界成分Htxの方向と強度が変化すると、抵抗部R11~R14のそれぞれの抵抗値は、抵抗部R11,R13の抵抗値が増加すると共に抵抗部R12,R14の抵抗値が減少するか、抵抗部R11,R13の抵抗値が減少すると共に抵抗部R12,R14の抵抗値が増加するように変化する。これにより、出力ポートE11,E12の各々の電位が変化すると共に、出力ポートE11,E12間の電位差が変化する。差分検出器15(
図9参照)は、出力ポートE11,E12の電位差に対応する信号を第1の検出信号S1として出力する。
【0095】
第1の検出信号S1は、抵抗部R11のMR素子5と抵抗部R12のMR素子5との接続点の電位、すなわち出力ポートE11の電位と対応関係を有すると共に、抵抗部R13のMR素子5と抵抗部R14のMR素子5との接続点の電位、すなわち出力ポートE12の電位と対応関係を有している。従って、第1の検出信号S1は、磁界成分Htxの方向と強度と対応関係を有している。
【0096】
図13は、第1の検出回路10に対して、対象磁界のY方向に平行な方向の磁界成分Htyが印加された場合であって、磁界成分Htyの方向がY方向の場合を示している。この場合、抵抗部R11,R13の各々において、磁化M1は方向D1からY方向に向かって傾き、磁化M2は方向D2からX方向に向かって傾く。また、この場合、抵抗部R12,R14の各々において、磁化M1は方向D1とは反対の方向から-X方向に向かって傾き、磁化M2は方向D2とは反対の方向からY方向に向かって傾く。その結果、抵抗部R11~R14の各々の抵抗値は、変化しないか、ほとんど変化しない。
【0097】
磁界成分Htyの方向が-Y方向の場合も、上述の場合と同様に、抵抗部R11~R14の各々の抵抗値は、変化しないか、ほとんど変化しない。従って、第1の検出回路10に対して磁界成分Htyが印加された場合、出力ポートE11,E12間の電位差は、変化しないか、ほとんど変化しない。
【0098】
上述のように、第1の検出回路10は、磁界成分Htxに対して感度を有するが、磁界成分Htyに対しては感度を有さないように構成されている。
【0099】
次に、
図14および
図15を参照して、第2の検出回路20の動作について説明する。
図14および
図15は、第2の検出回路20の動作を説明するための説明図である。
図14および
図15において、抵抗部R21~R24内に描かれた塗りつぶした矢印は、磁化M1,M2の各々の方向を示している。また、
図14および
図15において、抵抗部R21~R24内に描かれた破線の矢印は、初期状態における磁化M1,M2の各々の方向を示している。
【0100】
図14は、第2の検出回路20に対して、磁界成分Htyが印加された場合であって、磁界成分Htyの方向がY方向の場合を示している。この場合、抵抗部R21,R23の各々において、磁化M1は方向D1からY方向に向かって傾き、磁化M2は方向D3からY方向に向かって傾く。また、この場合、抵抗部R22,R24の各々において、磁化M1は方向D1とは反対の方向から-X方向に向かって傾き、磁化M2は方向D3とは反対の方向からX方向に向かって傾く。その結果、磁界成分Htyが存在しない状態と比べて、抵抗部R21,R23の各々の抵抗値は減少し、抵抗部R22,R24の各々の抵抗値は増加する。
【0101】
磁界成分Htyの方向が-Y方向の場合は、上述の場合とは逆に、磁界成分Htyが存在しない状態と比べて、抵抗部R21,R23の各々の抵抗値は増加し、抵抗部R22,R24の各々の抵抗値は減少する。
【0102】
抵抗部R21~R24の各々の抵抗値の変化量は、磁界成分Htyの強度に依存する。磁界成分Htyの方向と強度が変化すると、抵抗部R21~R24のそれぞれの抵抗値は、抵抗部R21,R23の抵抗値が増加すると共に抵抗部R22,R24の抵抗値が減少するか、抵抗部R21,R23の抵抗値が減少すると共に抵抗部R22,R24の抵抗値が増加するように変化する。これにより、出力ポートE21,E22の各々の電位が変化すると共に、出力ポートE21,E22間の電位差が変化する。差分検出器25(
図9参照)は、出力ポートE21,E22の電位差に対応する信号を第2の検出信号S2として出力する。
【0103】
第2の検出信号S2は、抵抗部R21のMR素子5と抵抗部R22のMR素子5との接続点の電位、すなわち出力ポートE21の電位と対応関係を有すると共に、抵抗部R23のMR素子5と抵抗部R24のMR素子5との接続点の電位、すなわち出力ポートE22の電位と対応関係を有している。また、第2の検出信号S2は、磁界成分Htyの方向と強度と対応関係を有している。
【0104】
図15は、第1の検出回路10に対して、磁界成分Htxが印加された場合であって、磁界成分Htxの方向がX方向の場合を示している。この場合、抵抗部R21,R23の各々において、磁化M1は方向D1からX方向に向かって傾き、磁化M2は方向D3からY方向に向かって傾く。また、この場合、抵抗部R22,R24の各々において、磁化M1は方向D1とは反対の方向から-Y方向に向かって傾き、磁化M2は方向D3とは反対の方向からX方向に向かって傾く。その結果、抵抗部R21~R24の各々の抵抗値は、変化しないか、ほとんど変化しない。
【0105】
磁界成分Htxの方向が-X方向の場合も、上述の場合と同様に、抵抗部R21~R24の各々の抵抗値は、変化しないか、ほとんど変化しない。従って、第2の検出回路20に対して磁界成分Htxが印加された場合、出力ポートE21,E22間の電位差は、変化しないか、ほとんど変化しない。
【0106】
上述のように、第2の検出回路20は、磁界成分Htyに対して感度を有するが、磁界成分Htxに対しては感度を有さないように構成されている。
【0107】
次に、プロセッサ30における検出値Vsの生成方法の一例について説明する。ここでは、検出値Vsとして、対象磁界のXY平面に平行な成分の方向が、X方向に対してなす角度を表す値を生成する場合について説明する。この場合、プロセッサ30は、例えば下記の式(1)によって、Vsを算出する。なお、“atan”は、アークタンジェントを表す。
【0108】
Vs=atan(S2/S1) …(1)
【0109】
Vsが0°以上360°未満の範囲内では、式(1)におけるVsの解には、180°異なる2つの値がある。しかし、S1,S2の正負の組み合わせにより、Vsの真の値が、式(1)におけるVsの2つの解のいずれであるかを判別することができる。プロセッサ30は、式(1)と、上記のS1,S2の正負の組み合わせの判定により、0°以上360°未満の範囲内でVsを求める。
【0110】
本実施の形態では、第1の検出回路10は第1のコイル7を含み、第2の検出回路20は第2のコイル8を含んでいる。プロセッサ30は、第1のコイル7を制御して第1のコイル磁界を一時的に発生させた後に生成された第1の検出信号S1と、第2のコイル8を制御して第2のコイル磁界を一時的に発生させた後に生成された第2の検出信号S2とを用いて、検出値Vsを生成するように構成されていてもよい。すなわち、プロセッサ30は、第1のコイル7によるリセット後の第1の検出信号S1と、第2のコイル8によるリセット後の第2の検出信号S2とを用いて、検出値Vsを生成してもよい。これにより、検出値Vsの誤差を抑制することができる。
【0111】
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1または第2の実施の形態と同様である。
【0112】
[第4の実施の形態]
次に、
図16を参照して、本発明の第4の実施の形態について説明する。
図16は、本実施の形態に係る磁気センサの一部を示す平面図である。
【0113】
本実施の形態に係る磁気センサ200の構成は、第1および第2のコイル7,8を除いて、第3の実施の形態に係る磁気センサ100と同じである。本実施の形態では、磁気センサ200の第1および第2の検出回路10,20(
図9参照)の各々は、第1のコイル7と第2のコイル8の両方を含んでいる。磁気センサ200における第1のコイル7の構成は、第3の実施の形態における第1の検出回路10の第1のコイル7と同じである。磁気センサ200における第2のコイル8の構成は、第3の実施の形態における第2の検出回路20の第2のコイル8と同じである。第1の検出回路10では、第1のコイル7のみが用いられる。第2の検出回路20では、第2のコイル8のみが用いられる。
【0114】
本実施の形態に係る磁気抵抗効果装置101によれば、第1の検出回路10と第2の検出回路20を入れ替えることができる。具体的には、第1のコイル7によって磁化M1,M2の方向をセットすることによって、抵抗部R11~R14を構成することができ、第2のコイル8によって磁化M1,M2の方向をセットすることによって、抵抗部R21~R24を構成することができる。
【0115】
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第3の実施の形態と同様である。
【0116】
[第5の実施の形態]
次に、
図17を参照して、本発明の第5の実施の形態について説明する。
図17は、本実施の形態に係る磁気センサの構成を示す回路図である。
【0117】
本実施の形態に係る磁気センサ300の構成は、以下の点で第3の実施の形態に係る磁気センサ100と異なっている。本実施の形態では、第1の検出回路10には、第3の実施の形態における抵抗部R13,R14、出力ポートE12および差分検出器15が設けられていない。抵抗部R11,R12は、ハーフブリッジ回路16を構成する。第1の検出回路10は、出力ポートE11の電位に対応する信号を第1の検出信号S1として出力する。
【0118】
また、本実施の形態では、第2の検出回路20には、第3の実施の形態における抵抗部R23,R24、出力ポートE22および差分検出器25が設けられていない。抵抗部R21,R22は、ハーフブリッジ回路26を構成する。第2の検出回路20は、出力ポートE21の電位に対応する信号を第2の検出信号S2として出力する。
【0119】
第1および第2のコイル7,8の構成は、第3の実施の形態と同じであってもよいし、第4の実施の形態と同じであってもよい。本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第3または第4の実施の形態と同様である。
【0120】
[第6の実施の形態]
次に、
図18を参照して、本発明の第6の実施の形態について説明する。
図18は、本発実施の形態に係る磁気抵抗効果装置の要部を示す平面図である。
【0121】
本実施の形態に係る磁気抵抗効果装置401の構成は、以下の点で第1の実施の形態に係る磁気抵抗効果装置1の構成と異なっている。すなわち、本実施の形態に係る磁気抵抗効果装置401は、第1の実施の形態に係るMR素子5の代わりに、本実施の形態に係るMR素子405を備えている。MR素子405の構成は、基本的には、第1の実施の形態に係るMR素子5と同じである。本実施の形態に係るMR素子405は、第1の実施の形態における第1の磁性層51および第2の磁性層53の代わりに、第1の磁性層451と第2の磁性層453とを備えている。
【0122】
第1の磁性層451は、互いに分離された複数の第1の部分を含んでいる。複数の第1の部分の各々の形状磁気異方性および磁化は、第1の実施の形態における第1の磁性層51の形状磁気異方性および磁化M1と同じである。
図18に示したように、複数の第1の部分の各々は、上方から見て、第1の基準方向RD1に長い形状を有している。
【0123】
第2の磁性層453は、互いに分離された複数の第2の部分を含んでいる。複数の第2の部分の各々の形状磁気異方性および磁化は、第1の実施の形態における第2の磁性層53の形状磁気異方性および磁化M2と同じである。
図18に示したように、複数の第2の部分の各々は、上方から見て、第2の基準方向RD2に長い形状を有している。
【0124】
第1の磁性層451の複数の第1の部分と第2の磁性層453の複数の第2の部分は、上方から見たときに、格子状に配列されている。
図18に示したように、複数の第1の部分は、第2の基準方向RD2に沿って並ぶように配置され、複数の第2の部分は、第1の基準方向RD1に沿って並ぶように配置されている。
【0125】
MR素子405では、第1の磁性層451の複数の第1の部分の各々の磁化の方向と第2の磁性層453の複数の第2の部分の各々の磁化の方向とがなす角度に応じて抵抗値が変化し、この角度が大きくなるに従って抵抗値は大きくなる。
【0126】
また、本実施の形態に係る磁気抵抗効果装置401は、第1の実施の形態における第1のコイル7の代わりに、第1のコイル407を備えている。第1のコイル407は、第1の実施の形態で説明した第1のコイル磁界を発生するように構成されている。第1のコイル407は、第1のコイル磁界を発生するコイル要素471を含んでいる。コイル要素471の各々は、Y方向に平行な方向に延在している。コイル要素471は、MR素子405の上方に配置されている。第1のコイル407は、第1の実施の形態における第1のコイル7と同様に、MR素子405の下方に配置された図示しないコイル要素を更に含んでいてもよい。
【0127】
MR素子405の動作は、基本的には、第1の実施の形態で説明したMR素子5の動作と同じである。MR素子5の動作の説明中の第1の磁性層51と第2の磁性層53を、それぞれ第1の磁性層451の第1の部分と第2の磁性層453の第2の部分に置き換えれば、MR素子405の動作の説明になる。
【0128】
また、第1のコイル407の動作は、基本的には、第1の実施の形態で説明した第1のコイル7の動作と同じである。第1のコイル7の動作の説明中の第1の磁性層51、第2の磁性層53、第1のコイル7、コイル要素71およびコイル要素72を、それぞれ第1の磁性層451の第1の部分、第2の磁性層453の第2の部分、第1のコイル407、コイル要素471および図示しないコイル要素に置き換えれば、第1のコイル407の動作の説明になる。
【0129】
本実施の形態によれば、第1の実施の形態に比べて、第1の磁性層451と第2の磁性層453が非磁性層52(
図3参照)を介して接続される部分(以下、ジャンクション部分と言う。)の数を多くすることができる。これにより、本実施の形態によれば、ノイズ磁界等の外乱の影響を低減することができる。
【0130】
また、本実施の形態によれば、ジャンクション部分の数を多くするために、第1の実施の形態に係るMR素子5を複数設ける場合に比べて、上部電極61および下部電極62(
図3参照)の構成を簡単にすることができる。これにより、本実施の形態によれば、磁気抵抗効果装置401の製造が容易になる。
【0131】
なお、本実施の形態に係る磁気抵抗効果装置401は、第2の実施の形態に係る磁気抵抗効果装置101と同様に、MR素子405および第1のコイル407に加えて、第2のコイル磁界を発生するように構成された第2のコイルを備えていてもよい。本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1または第2の実施の形態と同様である。
【0132】
[第7の実施の形態]
次に、本発明の第7の実施の形態について説明する。
図19および
図20は、本実施の形態に係る磁気センサの第1の検出回路の一部を示す平面図である。
図21は、本実施の形態に係る磁気センサの第2の検出回路の一部を示す平面図である。
【0133】
本実施の形態に係る磁気センサの構成は、以下の点で第3の実施の形態に係る磁気センサ100の構成と異なっている。すなわち、本実施の形態では、磁気センサに含まれる複数のMR素子の各々は、第6の実施の形態で説明したMR素子405である。
【0134】
また、本実施の形態に係る磁気センサは、第3の実施の形態における第1の検出回路10および第2の検出回路20の代わりに、第1の検出回路410と第2の検出回路420とを備えている。第1の検出回路410の回路構成および動作は、第3の実施の形態における第1の検出回路10の回路構成(
図9参照)および動作と同じである。第2の検出回路420の回路構成および動作は、第3の実施の形態における第2の検出回路20の回路構成(
図9参照)および動作と同じである。
【0135】
図19および
図20は、第1の検出回路410の抵抗部R11~R14(
図9参照)のうちの1つの抵抗部の一部を示している。
図21は、第2の検出回路420の抵抗部R21~R24(
図9参照)のうちの1つの抵抗部の一部を示している。本実施の形態における抵抗部R11~R14,R21~R24の各々は、複数のMR素子5の代わりに、複数のMR素子405を含んでいる。複数のMR素子405は、上方から見たときに、格子状に配列されている。すなわち、複数のMR素子405は、第1の基準方向RD1と第2の基準方向RD2にそれぞれ複数個ずつ並ぶように配列されている。
【0136】
本実施の形態における抵抗部R11~R14,R21~R24の各々は、第3の実施の形態における複数の上部電極61および複数の下部電極62の代わりに、複数の上部電極461と複数の下部電極462とを含んでいる。個々の下部電極462は、第1の基準方向RD1に長い形状を有している。
図19に示したように、下部電極462の上面上において、下部電極462の長手方向の両端の近傍に、それぞれMR素子405の第2の磁性層453が配置されている。
【0137】
個々の上部電極461は、第2の基準方向RD2に長い形状を有し、第2の基準方向RD2に隣接する2つのMR素子405の2つの第1の磁性層451を電気的に接続する。このような構成により、抵抗部R11~R14,R21~R24の各々は、複数の上部電極461と複数の下部電極462とによって直列に接続された複数のMR素子405を含んでいる。なお、
図20では、複数の上部電極461と複数の下部電極462を省略している。
【0138】
第1の検出回路410は、更に、第1のコイル407を含んでいる。第1のコイル407の構成および動作は、第3の実施の形態における第1のコイル7の
構成および動作と同様である。第1のコイル407は、第1のコイル7の複数のコイル要素71に対応する複数のコイル要素471と、第1のコイル7の複数のコイル要素72に対応する複数の第1のコイル要素(図示せず)とを含んでいる。なお、
図19では、第1のコイル407を省略している。
【0139】
第2の検出回路420は、更に、第2のコイル408を含んでいる。第2のコイル408の構成および動作は、第3の実施の形態における第2のコイル8の構成および動作と同様である。第2のコイル408は、第2のコイル8の複数のコイル要素81に対応する複数のコイル要素481と、第2のコイル8の複数の図示しないコイル要素に対応する複数の第2のコイル要素(図示せず)とを含んでいる。
【0140】
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第3または第6の実施の形態と同様である。
【0141】
なお、本発明は、上記各実施の形態に限定されず、種々の変更が可能である。例えば、上方から見たときに、1つのMR素子5に、複数のコイル要素71と複数のコイル要素72が重なっていてもよい。同様に、上方から見たときに、1つのMR素子5に、複数のコイル要素81と複数の図示しないコイル要素が重なっていてもよい。
【符号の説明】
【0142】
1…磁気抵抗効果装置、5…MR素子、7…第1のコイル、8…第2のコイル、10…第1の検出回路、14…ホイートストンブリッジ回路、15…差分検出器、20…第2の検出回路、24…ホイートストンブリッジ回路、25…差分検出器、30…プロセッサ、51…第1の磁性層、52…非磁性層、53…第2の磁性層、61…上部電極、62…下部電極、63,64…絶縁層、71,72…コイル要素、100…磁気センサ、R11~R24…抵抗部。