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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】ストロー
(51)【国際特許分類】
   A47G 21/18 20060101AFI20240618BHJP
   C04B 33/24 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
A47G21/18
C04B33/24 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021198566
(22)【出願日】2021-12-07
(65)【公開番号】P2023084404
(43)【公開日】2023-06-19
【審査請求日】2022-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】521343334
【氏名又は名称】株式会社しょうざん
(73)【特許権者】
【識別番号】502052114
【氏名又は名称】株式会社長崎オフィスセンター
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】吉島 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】平野 勝
【審査官】木戸 優華
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2020-0034438(KR,A)
【文献】特開2004-035385(JP,A)
【文献】特開2002-020186(JP,A)
【文献】特開昭61-168560(JP,A)
【文献】米国特許第11147891(US,B1)
【文献】岐阜)洗って使える美濃焼の陶磁器ストロー、24の彩り,[online],朝日新聞デジタル,2020年04月09日,[2023年06月29日検索],インターネット<URL:https://www.asahi.com/articles/ASN487S78N470HGB005.html>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G 21/18
C04B 33/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のストローであって、
陶磁器から成る陶磁器部を備え、
前記陶磁器部におけるNaOの質量比が1.4質量%以上1.6質量%以下であり、
前記陶磁器部におけるSiOの質量比が74質量%以上78質量%以下であり、
前記陶磁器部におけるAlの質量比が17質量%以上18質量%以下である、
ストロー。
【請求項2】
請求項1に記載のストローであって、
前記陶磁器部は筒状の形態を有する、
ストロー。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のストローであって、
前記陶磁器部は磁器から成る、
ストロー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はストローに関する。
【背景技術】
【0002】
ストローは、飲み物を飲む際に用いられる筒状の器具である。従来、ストローは、主としてプラスチックから成っていた。プラスチック製のストローは使い捨てにされることが多かった。従来のストローは特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-253414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ストローを陶磁器により構成することが考えられる。陶磁器のストローは、繰り返し使用することができる。陶磁器のストローを繰り返し使用するためには、陶磁器のストローに付着した汚れを容易に落とせることが好ましい。本開示の1つの局面では、汚れを容易に落とせるストローを提供することが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の1つの局面は、筒状のストローである。ストローは、陶磁器から成る陶磁器部を備える。前記陶磁器部におけるNaOの質量比は1質量%以上である。本開示の1つの局面であるストローは、汚れを容易に落とすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】ストローの構成を表す正面図である。
図2図1におけるII-II断面での断面図である。
図3図1におけるIII-III断面での断面図である。
図4】ガラスのコップと、そのコップに入れられた野菜ジュースとを表す写真である。
図5】実施例のストローと比較例のストローとを、野菜ジュースの中に浸漬した状態を表す写真である。
図6】実施例のストローと比較例のストローとを野菜ジュースから取り出してから5秒間が経過した時点での状態を表す写真である。
図7】実施例のストローと比較例のストローとを野菜ジュースから取り出してから10秒間が経過した時点での状態を表す写真である。
図8図7の写真のうち、ストローを表す部分を拡大した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本開示の例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
1.ストローの構成
ストローは、飲料等を飲むときに用いられる器具である。ストローは筒状の形態を有する。例えば、図1図3に示すように、ストロー1は、円筒状の形態を有する。ストロー1は貫通孔3を有する。貫通孔3は、ストロー1の軸方向に沿って、一方の端部5から他方の端部7まで延びている。ストロー1を使用するとき、飲料等は、貫通孔3を通過する。図2に示すように、軸方向に直交する断面で見たとき、貫通孔3の形状は、例えば、円形である。
【0008】
ストローは、陶磁器から成る陶磁器部を備える。ストローの全体が陶磁器部であってもよいし、ストローの一部が陶磁器部であってもよい。陶磁器部は、例えば、筒状の形態を有する。ストローを使用するとき、例えば、陶磁器部の表面に飲み物等が接する。図1図3に示すストロー1の場合、例えば、ストロー1の全体が陶磁器部である。この場合、ストロー1の陶磁器部は円筒状の形態を有する。
【0009】
陶磁器部は、陶器から成っていてもよいし、磁器から成っていてもよい。陶磁器部は磁器から成ることが好ましい。陶磁器部が磁器から成る場合、陶磁器部に付着した汚れが一層落ち易い。
陶磁器部は、例えば、NaO、SiO 、Al、KO、CaO、Fe、MgO、P、SO、TiO、MnO、ZnO、Ga、RbO、SrO、ZrO等を含む。
【0010】
陶磁器部におけるNaOの質量比は、例えば、1質量%以上5質量%以下である。陶磁器部におけるNaOの質量比は、1.1質量%以上3質量%以下であることが好ましく、1.2質量%以上2質量%以下であることがさらに好ましく、1.4質量%以上1.6質量%以下であることが特に好ましい。陶磁器部におけるNaOの質量比が上記の範囲内である場合、陶磁器部に付着した汚れが一層落ち易い。
【0011】
陶磁器部におけるSiO の質量比は、例えば、70質量%以上82質量%以下である。陶磁器部におけるSiO の質量比は、72質量%以上80質量%以下であることが好ましく、74質量%以上78質量%以下であることが一層好ましい。陶磁器部におけるSiO の質量比が上記の範囲内である場合、陶磁器部に付着した汚れが一層落ち易い。
【0012】
陶磁器部におけるAlの質量比は、例えば、13質量%以上22質量%以下である。陶磁器部におけるAlの質量比は、15質量%以上20質量%以下であることが好ましく、17質量%以上18質量%以下であることが一層好ましい。陶磁器部におけるAlの質量比が上記の範囲内である場合、陶磁器部に付着した汚れが一層落ち易い。
【0013】
陶磁器部における各成分の質量比を測定する方法は、SQX(Scan Quant X)分析法である。陶磁器部における特定の成分の質量比とは、陶磁器部の全質量に対する、特定の成分の質量の比率である。
【0014】
陶磁器部の少なくとも一部は釉薬に覆われていないことが好ましい。釉薬に覆われていない部分に付着した汚れは落ち易い。図1図3に示すストロー1の場合、例えば、貫通孔3の内周面9の一部又は全部は釉薬に覆われていない。例えば、ストロー1の外周面11の一部又は全部は釉薬に覆われていない。ストロー1の外周面11には、絵付けが施されていてもよい。
【0015】
2.ストローの製造方法
本開示のストローは、例えば、以下の方法で製造できる。まず、陶石を粉砕加工し、精製することで陶土とする。必要に応じて、Naを含む成分を陶土に追加する。Naを含む成分として、例えば、ソーダ長石等が挙げられる。Naを含む成分を追加することで、完成したストローが備える陶磁器部におけるNaOの質量比を1質量%以上とすることができる。Naを含む成分を多く追加するほど、完成したストローが備える陶磁器部におけるNaOの質量比が大きくなる。
【0016】
次に、真空押出機を使用し、陶土から、筒状の素地を製造する。次に、素地を10日程度自然乾燥する。
次に、素地を窯に入れ、素焼きを行う。次に、素焼き後の製品を窯から出す。必要に応じて、製品に絵付けを施したり、釉薬を掛けたりする。次に、素焼き後の製品を窯に入れ、本焼きを行う。次に、本焼き後の製品を窯から出す。最後に、本焼き後の製品を規定のサイズに切断し、断面を研磨加工する。
【0017】
3.ストローが奏する効果
本開示のストローは、付着した汚れが落ち易いという効果を奏する。その効果を奏する理由は、以下のように推測される。陶磁器部においてNaOの質量比が大きいため、本焼きのとき、陶磁器部においてガラス成分が溶け易い。その結果、陶磁器部の表面が平滑となり、陶磁器部の表面に付着した汚れが落ち易い。なお、汚れとは、例えば、ストローを使用した後にストローの表面に残る飲料等、又は飲料等の成分である。
【0018】
4.実施例
(4-1)実施例のストローの製造
以下の方法で実施例のストローを製造した。天草で採れた陶石を粉砕加工し、精製することで陶土とした。完成した実施例のストローにおいてNaOの質量比が1質量%以上となるように、必要に応じて、Naを含む成分を陶土に追加する。Naを含む成分として、例えば、ソーダ長石等が挙げられる。
【0019】
次に、真空押出機を使用し、陶土から、筒状の素地を製造した。素地の形態は円筒状であった。次に、素地を10日程度自然乾燥した。
次に、素地を窯に入れ、素焼きを行った。素焼きのとき、窯内の温度は以下のように変化した。素焼きの開始時点から、5時間目までの温度は600℃であった。なお、X時間目とは、素焼きの開始時点からX時間が経過した時点を意味する。5時間目から、8時間30分目までかけて、温度を950℃まで上昇させた。8時間30分目から9時間目まで、950℃の温度を維持した。
【0020】
9時間目で素焼きを終了し、窯の火を消した。窯の火が消えてから10時間後に、素焼き後の製品を窯から出した。
次に、素焼き後の製品を窯に入れ、本焼きを行った。本焼きのとき、窯内の温度は以下のように変化した。本焼きの開示時点から、4~6時間が経過するまで、温度は600℃であった。次に、12~14時間かけて、温度を1300℃まで上昇させた。温度が1300℃に達したときから窯の火を弱めてゆき、1~2時間かけて窯の火を消した。窯の火を消したとき、窯内の温度は1200℃であった。
【0021】
窯の火を消してから18時間が経過したとき、本焼き後の製品を窯から出した。本焼き後の製品を規定のサイズに切断し、断面を研磨加工した。以上の工程により、実施例のストローが完成した。
【0022】
実施例のストローは、図1図3に示す形態を有していた。実施例のストローの全体が陶磁器部であった。陶磁器部は磁器から成っていた。実施例のストローは、どの部分も釉薬に覆われていなかった。
【0023】
(4-2)比較例のストローの製造
基本的には実施例のストローの場合と同様にして、比較例のストローを製造した。ただし、実施例のストローの場合と比べて、筒状の素地は、NaOの含有量が少なかった。NaOの含有量が少なかった理由は、Naを含む成分を陶土に追加する処理を行わなかったためであった。
【0024】
(4-3)ストローの分析
実施例及び比較例のストローのそれぞれについて、SQX(Scan Quant X)分析を行い、各成分の質量比を測定した。質量比の測定は、佐賀県窯業技術センターに依頼して行った。測定結果を表1に示す。表1に示す質量比の単位は質量%である。
【0025】
【表1】
【0026】
実施例のストローでは、NaOの質量比は1.4533質量%であった。比較例のストローでは、NaOの質量比は0.3289質量%であった。
(4-4)ストローの評価
実施例及び比較例のストローのそれぞれについて、汚れの落ち易さを評価した。評価方法は以下のとおりであった。図4に示すように、ガラスのコップに野菜ジュースを入れた。次に、図5に示すように、実施例のストローと比較例のストローとを、野菜ジュースの中に浸漬した。なお、図4図8における「本品」とは実施例のストローを意味し、「比較品」とは比較例のストローを意味する。次に、浸漬時間が10秒間となったとき、実施例のストローと比較例のストローとを引き上げ、野菜ジュースから取り出した。
【0027】
図6は、ストローを野菜ジュースから取り出してから5秒間が経過した時点での状態を表す。図7は、ストローを野菜ジュースから取り出してから10秒間が経過した時点での状態を表す。図8は、図7の写真のうち、ストローを表す部分を拡大した写真である。
【0028】
図6図8に示すように、実施例のストローでは、比較例のストローに比べて、野菜ジュースから取り出されたストローの表面に残る野菜ジュースの量が顕著に少なかった。このことは、実施例のストローでは、野菜ジュースが落ち易いことを示している。よって、この評価により、実施例のストローでは汚れが落ち易いことが確認できた。
【0029】
5.他の実施形態
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0030】
(1)ストローの形態は、円筒状以外の筒状であってもよい。円筒状以外の筒状として、例えば、角筒状等が挙げられる。また、ストローの全体形状は、折れ曲がった形状や、曲線の形状であってもよい。
【0031】
(2)ストローは、陶磁器部ではない部分を備えていてもよい。
(3)上記各実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素に分担させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に発揮させたりしてもよい。また、上記各実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記各実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。
【0032】
(4)上述したストローの他、当該ストローを構成要素とするシステム、ストローの製造方法等、種々の形態で本開示を実現することもできる。
【符号の説明】
【0033】
1…ストロー、3…貫通孔、5…一方の端部、7…他方の端部、9…内周面、11…外周面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8