(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】胚盤胞形成促進剤
(51)【国際特許分類】
C12N 5/073 20100101AFI20240618BHJP
A61K 36/8962 20060101ALI20240618BHJP
A61K 36/062 20060101ALI20240618BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20240618BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240618BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20240618BHJP
A23L 33/145 20160101ALN20240618BHJP
C12N 1/16 20060101ALN20240618BHJP
【FI】
C12N5/073
A61K36/8962
A61K36/062
A61P15/00
A61P43/00 105
A23L33/105
A23L33/145
C12N1/16 Z
(21)【出願番号】P 2020072222
(22)【出願日】2020-04-14
【審査請求日】2023-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
(73)【特許権者】
【識別番号】510001582
【氏名又は名称】株式会社天真堂
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原 太一
(72)【発明者】
【氏名】有賀 幸
(72)【発明者】
【氏名】諸富 勝成
【審査官】安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-299261(JP,A)
【文献】特表2017-514894(JP,A)
【文献】特開2020-132611(JP,A)
【文献】吉崎嘉一ら,酵母発酵にんにくのマウスの受精と初期胚発生に及ぼす影響の検討, 薬理と治療, 2020.7.20,第48巻, 第7号,pp.1145-1150
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 5/073
A61K 36/8962
A61K 36/062
A61P 15/00
A61P 43/00
A23L 33/145
A23L 33/105
C12N 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酵母発酵ニンニク又はその抽出物を含有する胚盤胞形成促進剤。
【請求項2】
受精卵から胚盤胞への形成促進剤である請求項1記載の胚盤胞形成促進剤。
【請求項3】
酵母発酵ニンニク又はその抽出物
(生ニンニク水性抽出液を酵母で発酵させて得られた抽出成分を除く)を含有する体外受精用培地。
【請求項4】
酵母発酵ニンニク又はその抽出物を含有する培地中で卵子と精子を受精させ、次いで当該培地中で受精卵を培養することを特徴とする
、ヒトを除く哺乳動物の体外受精用胞胚又は胚盤胞の製造法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受精卵から胚盤胞への形成促進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトを含む哺乳類の卵が卵管内で受精してから子宮に着床するまでの間に受精卵は、2個、4個、8個のように細胞分裂し、卵管内を移動しながら桑実胚、胞胚、そして胚盤胞へと分化していく。体外受精においては、培地中で卵子に精子を添加し、体外で胞胚又は胚盤胞まで培養して子宮内に戻す。
【0003】
ここで、体外受精においては、妊娠率の向上には健康な卵子と精子の提供が必要とされるが、受精から着床までの段階における胚盤胞への形成率は極めて重要である。この胚盤胞の形成率の向上は、正常な妊娠率の向上のうえでも重要とされる。
特に、マウスの体外受精においては、2細胞まで分裂した後、細胞分裂が進行しなくなる現象、2cell blockが知られており、受精率は向上しても、胚盤胞への形成率が低ければ、妊娠率は向上しない(非特許文献1)。
【0004】
一方、アリイン、アリシンを含まない無臭ニンニクが精子数、精子運動率を増強すること(特許文献1)、ニンニク又はニンニクエキスが雄性生殖管の炎症を低減し、精巣テストステロン濃度を増加させること(特許文献2)、S-アリルシステインが精子数、精子運動率の低下を抑制すること(特許文献3)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平11-346712号公報
【文献】特表2008-544994号公報
【文献】特開2012-17295号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】Int. J. Dev. Biol. 53:129-134(2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、受精卵から胚盤胞への形成促進剤及びこれを用いる体外受精用胞胚又は胚盤胞の製造法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明者らは、受精卵から胚盤胞への形成に作用する成分を見出すべく種々検討した結果、酵母発酵ニンニク又はその抽出物が受精卵から胚盤胞への形成を促進する作用を有し、受精卵の着床率向上、ひいては妊娠率向上効果を有することを見出した。また、酵母発酵ニンニク又はその抽出物は、体外受精後の受精卵から胚盤胞形成までの培地成分としても有用であることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は、次の発明[1]から[4]を提供するものである。
[1]酵母発酵ニンニク又はその抽出物を含有する胚盤胞形成促進剤。
[2]受精卵から胚盤胞への形成促進剤である[1]記載の胚盤胞形成促進剤。
[3]酵母発酵ニンニク又はその抽出物を含有する体外受精用培地。
[4]酵母発酵ニンニク又はその抽出物を含有する培地中で卵子と精子を受精させ、次いで当該培地中で受精卵を培養することを特徴とする体外受精用胞胚又は胚盤胞の製造法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、受精卵から胚盤胞への形成を促進する胚盤胞形成促進剤が提供できる。本発明の胚盤胞形成促進剤を受精時及び/又は受精後に適用すれば、受精後の胚盤胞形成が促進されるので、着床率、ひいては妊娠率が向上する。また、本発明の胚盤胞形成剤は、体外受精における、培地成分として有用であり、この培地成分を含有する培地で、受精卵を培養すれば体外受精用胞胚又は胚盤胞の形成が促進され、体外受精における着床率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】酵母発酵ニンニクの抽出物の添加による、2細胞胚形成に対する影響及び胚盤胞形成に対する影響を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の胚盤胞形成促進剤の有効成分は、酵母発酵ニンニク又はその抽出物である。
【0013】
酵母発酵ニンニクの原料として用いるニンニクは、アリウム・サチバム(Allium sativum)の全草・地上部又は鱗茎が好ましく、鱗茎がより好ましい。本発明においては、ニンニク又はその抽出物を直接用いるのではなく、酵母発酵ニンニク又はその抽出物を用いるのが、優れた胚盤胞形成促進効果を得る観点から重要である。
【0014】
ニンニクの発酵に用いられる酵母としては、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)、分裂酵母(シゾサッカロミケス属)、コウジカビとしてAspergillus oryzae、Aspergillus sojae、Aspergillus awamori、Aspergillus glaucus、Penicillium roqueforti、枯草菌としてBacillus属等が挙げられるが、Saccharomyces cerevisiaeがより好ましい。
【0015】
酵母発酵ニンニクは、例えばニンニクを80℃以上に加熱処理した後、酵母を用いて発酵することにより得ることができる。まず、加熱処理としては、80℃以上であれば雑菌の増殖を抑制できるが、85℃以上が好ましく、80℃~120℃がより好ましい。また加熱処理時間は、5分~1時間が好ましく、5分~30分で十分である。酵母発酵は、酵母を添加し、30~40℃で2日~5日行うのが好ましい。なお、発酵には、グルコース等の糖類を添加して行うのが好ましい。発酵の進行は、ニンニク特有の臭いの変化及びpHの低下(pH6以下への低下)によって確認することができる。
【0016】
得られた酵母発酵ニンニクは、そのままでも使用できるが、粉砕処理して粉末として使用することもでき、抽出物として使用することもできる。酵母発酵ニンニク抽出物としては、酵母発酵ニンニクから水、熱水、アルコール等の有機溶媒で抽出した抽出物が挙げられるが、水又は熱水抽出物がより好ましい。抽出手段は、特に限定されず、酵母発酵ニンニク又はその粉砕物に、水等の溶媒を添加して溶媒中に溶解した成分を採取すればよい。溶媒抽出にあたって、加熱等を行ってもよく、ソックスレー抽出等を採用してもよい。
【0017】
酵母発酵ニンニク又はその抽出物は、後記実施例に示すように、受精から2細胞胚への分裂までにはほとんど作用せず、2細胞胚から胞胚又は胚盤胞への形成を有意に促進する作用を有する。このような作用は、ニンニク又はニンニクに含まれる成分の作用からは、全く予測できないものであった。
従って、酵母発酵ニンニク又はその抽出物は、胚盤胞形成促進剤、特に受精卵から胚盤胞への形成促進剤として有用である。また、酵母発酵ニンニク又はその抽出物は、体外受精用培地の成分としても有用であり、酵母発酵ニンニク又はその抽出物を含有する培地で、受精卵を培養すれば、体外受精用胞胚又は胚盤胞の形成が促進される。
【0018】
本発明の胚盤胞形成促進剤を受精時及び/又は受精後に適用すれば、受精後の着床率、ひいては妊娠率が向上する。胚盤胞形成促進剤の適用手段としては、ヒトを含む哺乳動物に医薬品、食品組成物、外用組成物として摂取、塗布又は投与する手段、及び体外受精における受精卵に適用する手段が挙げられる。従って、本発明の胚盤胞形成促進剤は、受精卵培養培地への添加剤、医薬品、食品組成物、外用組成物の形態が含まれる。
【0019】
これらの胚盤胞形成促進剤中に、酵母発酵ニンニク又はその抽出物は、乾燥固形分量として0.001~50質量%含有させるのが好ましく、0.001~20質量%含有させるのがより好ましい。
【0020】
本発明の胚盤胞形成促進剤を医薬品、食品組成物、外用組成物として使用するにあたっては、通常の食品、医薬品、外用剤などの製剤化で使用される任意成分を含有することができる。この様な任意成分としては、経口投与組成物であれば、例えば、乳糖や白糖などの賦形剤、デンプン、セルロ-ス、アラビアゴム、ヒドロキシプロピルセルロ-スなどの結合剤、カルボキシメチルセルロ-スナトリウム、カルボキシメチルセルロ-スカルシウムなどの崩壊剤、大豆レシチン、ショ糖脂肪酸エステルなどの界面活性剤、マルチト-ルやソルビト-ルなどの甘味剤、クエン酸などの酸味剤、リン酸塩などの緩衝剤、シェラックやツェインなどの皮膜形成剤、タルク、ロウ類などの滑沢剤、軽質無水ケイ酸、乾燥水酸化アルミニウムゲルなどの流動促進剤、生理食塩水、ブドウ糖水溶液などの希釈剤、矯味矯臭剤、着色剤、殺菌剤、防腐剤、香料など好適に例示できる。
【0021】
外用組成物であれば、スクワラン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックスなどの炭化水素類、ホホバ油、カルナウバワックス、オレイン酸オクチルドデシルなどのエステル類、オリ-ブ油、牛脂、椰子油などのトリグリセライド類、ステアリン酸、オレイン酸、レチノイン酸などの脂肪酸、オレイルアルコ-ル、ステアリルアルコ-ル、オクチルドデカノ-ル等の高級アルコ-ル、スルホコハク酸エステルやポリオキシエチレンアルキル硫酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤類、アルキルベタイン塩等の両性界面活性剤類、モノアルキルアンモニウム塩、ジアルキルアンモニウム塩等のカチオン界面活性剤類、ソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセライド、これらのポリオキシエチレン付加物、ポリオキシエチレンアルキルエ-テル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等の非イオン界面活性剤類、ポリエチレングリコ-ル、グリセリン、1,3-ブタンジオ-ル等の多価アルコ-ル類、増粘・ゲル化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、色剤、防腐剤等を含有することができる。
製造は、常法に従い、各種の製剤化に適した手段により行うことができる。また、本発明の胚盤胞形成促進剤の形態としては、錠剤、ソフトカプセル、ハードカプセル、顆粒、ドリンク剤、膣用外用剤、ジェリー状外用剤等が好ましい。
【0022】
本発明の胚盤胞形成促進剤を、体外受精用培地の添加剤として使用すれば、受精卵から胚盤胞への形成率が向上した体外受精用培地が得られる。体外受精用培地への酵母発酵ニンニク又はその抽出物の添加量は、乾燥固形分量として0.001~50質量%が好ましく、0.001~20質量%がより好ましい。
【0023】
酵母発酵ニンニク又はその抽出物を含有する精子前培養培地中で精子を培養し、その後抽出液を含まない培地中で培養後、卵子と精子を受精させ、次いで当該培地中で受精卵を培養すれば、体外受精用胞胚又は胚盤胞が効率よく得られる。
【0024】
ここで、体外受精用培地としては、通常の体外受精に用いられる培地が挙げられる。例えば、精子の前培養には、CARD FERTIUPTM精子前培養培地(九動、佐賀、日本)が挙げられる。卵子塊の前培養にはCARD MEDIUMTM高性能体外受精用培地(九動、佐賀、日本)が挙げられる。受精卵の培養にはCARD mHTF体外受精用培地(九動、佐賀、日本)を使用する。2細胞胚の培養にはKSOM-AA(MERCK、NJ、USA)が挙げられる。
【0025】
受精手段は、例えば、精子の前培養とその後の体外受精により行われる。精子の前培養培地としては、FERTIUPTM精子前培養培地(九動、佐賀、日本)などが挙げられる。精子は酵母発酵ニンニク又はその抽出物を含有する培地中で、37℃、5%CO2、95%空気条件下で30分間前培養した。その後、FERTIUPTM精子前培養培地中で、37℃、5%CO2、95%空気条件下において60分間培養を行われる。卵子の前培養培地は、CARD MEDIUMTM(九動、佐賀、日本)等が挙げられる。前培養した精子と卵子塊は、CARD mHTF体外受精用培地等の体外受精用培地中で、37℃、5%CO2、95%空気条件下で体外受精が行われる。
【0026】
培養手段は、例えば、前培養した精子と卵子塊を体外受精し、37℃で5%CO2、95%空気条件下で3時間後、受精卵をCARD mHTF体外受精用培地(九動、佐賀、日本)で3回洗浄し、37℃、5%CO2、95%空気条件下で一晩培養する。翌日、2細胞期胚をKSOM-AA(MERCK、NJ、USA)培地移して、37℃で5%CO2、95%空気条件下で3日間培養が行われる。
【0027】
このようにして得られた受精卵(4~8細胞期、胞胚又は胚盤胞)は、子宮に戻される。通常の胚移植は4~8細胞期に子宮に移植される。また、胚盤胞まで発育させてから移植する胚盤胞移植のほうが着床率が高い。しかし、培養したすべての胚が胚盤胞にならない問題がある。本発明の胚盤胞形成促進剤を用いた体外受精によれば、受精卵から4~8細胞や胚盤胞への形成が促進されるので、移植に良好な受精卵が形成され、着床率、ひいては妊娠率が向上する。
【実施例】
【0028】
次に実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。
【0029】
製造例1(酵母発酵ニンニク末)
生ニンニクの剥き身100gを、ミキサーを用いてペースト化し、次いで75~85℃に30分加熱した。次いで、酵母(saccharomyces cerevisiae)を白金耳で植菌しグルコースを添加し、35℃で約3日間発酵させた。85℃に30分加熱して発酵停止した後、凍結乾燥機で48時間凍結乾燥し、酵母発酵ニンニク末を得た(収量30g)。
【0030】
試験例
(試験方法)
供試動物
本実験では、2匹の雄C57BL/6J及びBALB/cマウス(共に12週齢)から採精した。また、6匹の雌C57BL/6Jマウス(4週齢)から採卵した。
【0031】
試薬及び培地
精子の前培養には、CARD FERTIUPTM精子前培養培地(九動、佐賀、日本)を使用した。卵子塊の前培養にはCARD MEDIUMTM高性能体外受精用培地(九動、佐賀、日本)を使用した。受精卵の培養にはCARD mHTF体外受精用培地(九動、佐賀、日本)を使用した。2細胞胚の培養にはKSOM-AA(MERCK、NJ、USA)を使用した。
【0032】
精子の採取
供試動物を頸椎脱臼により安楽死させた後、両側の精巣上体尾部を摘出し、付着した血液及び脂肪を取り除いた。ピンセットで精巣上体尾部を固定して、ノエス剪刀で尾部中央の精巣上体を切開した。精巣上体尾部切開部から精子塊を解剖針ですくい取り、FERTIUPTM精子前培養培地(九動、佐賀、日本)で30分間前培養(37℃、5%CO2、95% air)した後に、酵母発酵にんにく抽出液(1%)を含むFERTIUPTM精子前培養培地(九動、佐賀、日本)で60分間前培養(37℃、5%CO2、95% air)した。コントロールは、同様に30分間前培養(37℃、5%CO2、95% air)した後に、にんにく抽出液を含まないFERTIUPTM精子前培養培地(九動、佐賀、日本)で60分間前培養(37℃、5%CO2、95% air)した。
【0033】
卵子塊の採取
雌C57BL/6Jマウス(4週齢)に0.1mlのCARD HyperOvaTM過剰排卵誘起剤(九動、佐賀、日本)を腹腔内注射し、その48時間後に37.5IU/mlのヒト絨毛性性腺刺激ホルモンhCG(ゴナドトロピン、あすか製薬株式会社、東京、日本)を腹腔内注射して過剰排卵を誘発した。hCG投与の16時間後に過剰排卵させた雌マウスを頸椎脱臼により安楽死させて卵管を摘出し、細胞培養用流動パラフィン(ナカライテクス、京都、日本)内で卵管膨大部を開裂し、卵子塊を採取しCARD MEDIUMTM(九動、佐賀、日本)で前培養した。
【0034】
体外受精及び初期胚培養
前培養した精子と卵子塊を体外受精した(37℃、5%CO2、95% air)。3時間後、受精卵をCARD mHTF体外受精用培地(九動、佐賀、日本)で3回洗浄し、一晩培養した(37℃、5%CO2、95% air)。翌日、2細胞期胚をKSOM-AA(MERCK、NJ、USA)に移して3日間培養した(37℃、5%CO2、95% air)。
【0035】
受精率及び胚盤胞率
体外受精を実施した翌日に、2細胞期胚及び未受精卵、死亡卵をそれぞれカウントして受精率(%、2細胞期胚数/すべての細胞数)を算出した。また、2細胞期胚をKSOM-AA(MERCK、NJ、USA)に移して3日間培養し、胚盤胞及び2細胞期胚、死亡胚をそれぞれカウントして胚盤胞率(胚盤胞数/すべての胚数)及び2細胞期胚率(2細胞期胚数/すべての胚数)、死亡胚率(死亡胚数/すべての胚数)を算出した。
【0036】
統計解析
すべてのデータは平均±標準誤差(SEM)で表記した。統計解析はStudent t検定にて実施し、p<0.05を統計学的に有意であると判定した。
【0037】
(結果)
2細胞胚までの収率及び胚盤胞形成までの収率を
図1に示す。
図1より、酵母発酵ニンニクの抽出物を添加して培養された受精卵は、2細胞胚までの割合はコントロールと比較して同等であった。一方、酵母発酵ニンニクの抽出物を添加して培養された受精卵は、胚盤胞までの形成率がコントロールに比べて有意に増加した。
従って、酵母発酵ニンニク又はその抽出物は、受精卵から胚盤胞への形成を促進させる作用を有することがわかった。