(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】電動ベッド
(51)【国際特許分類】
A47C 17/04 20060101AFI20240618BHJP
A47C 20/08 20060101ALI20240618BHJP
A61G 7/012 20060101ALI20240618BHJP
A61G 7/018 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
A47C17/04 C
A47C20/08 Z
A61G7/012
A61G7/018
(21)【出願番号】P 2020101950
(22)【出願日】2020-06-12
【審査請求日】2023-04-04
(73)【特許権者】
【識別番号】390007870
【氏名又は名称】シーホネンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100177264
【氏名又は名称】柳野 嘉秀
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【氏名又は名称】関口 久由
(72)【発明者】
【氏名】大西 悟
【審査官】黒田 正法
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-360804(JP,A)
【文献】国際公開第2020/083449(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 17/04
A47C 20/08
A61G 7/012
A61G 7/018
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボトムと、
前記ボトムの姿勢又は高さを変更するアクチュエータと、
前記ボトムの可動範囲における下限位置で、前記ボトムの下向きの荷重を受け止める受止部材と、
使用者の操作指示を受け付ける操作部と、
前記操作部によって受け付けられた操作指示に応じて前記アクチュエータの動作を制御する制御部と、
前記アクチュエータに加えられる荷重が所定の基準荷重に満たないとき、前記アクチュエータによる前記ボトムの姿勢又は高さを下方へ変更する下向き動作を禁止する禁止機構とを備え
、
前記アクチュエータは、
モータと、
前記ボトムと連結された伸縮可能な伸縮ロッドと、
前記モータの回転駆動力により前記伸縮ロッドを伸縮させるギア機構とを備え、
前記伸縮ロッドが縮むと前記下向き動作となり、
前記伸縮ロッドが伸びると前記ボトムを上方へ姿勢変更又は上昇させる上向き動作となり、
前記禁止機構は、前記伸縮ロッドを縮ませる方向の荷重が前記基準荷重に満たないとき、前記ギア機構を空回りさせることにより前記下向き動作を禁止するラチェット機構である、電動ベッド。
【請求項2】
前記制御部は、
前記操作部によって前記下向き動作の操作指示が受け付けられている下降期間中において、前記アクチュエータの前記下向き動作が禁止され、かつ前記ボトムが前記下限位置より上に位置する場合、前記アクチュエータによって、前記ボトムを上方へ姿勢変更又は上昇させる上向き動作を実行させ、
前記下降期間中において、前記アクチュエータの前記下向き動作が禁止され、かつ前記ボトムが前記下限位置に位置する場合、前記アクチュエータに前記上向き動作を実行させない
請求項1に記載の電動ベッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータを備えた電動ベッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、アクチュエータの駆動力により、使用者の体を支えるボトムの高さを変えたり、ボトムの角度を変えて背上げや脚上げしたりすることができる電動ベッドが知られている。このような電動ベッドにおいてボトムを下降させる際に、ボトムとフレームとの間に人体や異物を挟み込むことを防止するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1に記載の電動ベッドは、演算部で算出されたベッド可動部の所定移動位置における電流動作プロファイルデータと対応する基本動作プロファイルデータを記憶部から読み出して所定の傾きを比較することにより挟み込みの有無を検出するマイクロコントローラを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の電動ベッドは、アクチュエータに流れる電流を検出する電流計、無負荷状態でアクチュエータに流れる電流から予め求められた基本動作プロファイルデータを記憶する記憶部、及びベッド可動部の所定移動位置における電流動作プロファイルデータを演算するマイクロコントローラが必要となる。そのため、挟み込み防止のための構成を簡素化したいという、ニーズがあった。
【0006】
本発明の目的は、挟み込みによる問題が生じるおそれを低減することが容易な電動ベッドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る電動ベッドは、ボトムと、前記ボトムの姿勢又は高さを変更するアクチュエータと、前記ボトムの可動範囲における下限位置で、前記ボトムの下向きの荷重を受け止める受止部材と、使用者の操作指示を受け付ける操作部と、前記操作部によって受け付けられた操作指示に応じて前記アクチュエータの動作を制御する制御部と、前記アクチュエータに加えられる荷重が所定の基準荷重に満たないとき、前記アクチュエータによる前記ボトムの姿勢又は高さを下方へ変更する下向き動作を禁止する禁止機構とを備え、前記アクチュエータは、モータと、前記ボトムと連結された伸縮可能な伸縮ロッドと、前記モータの回転駆動力により前記伸縮ロッドを伸縮させるギア機構とを備え、前記伸縮ロッドが縮むと前記下向き動作となり、前記伸縮ロッドが伸びると前記ボトムを上方へ姿勢変更又は上昇させる上向き動作となり、前記禁止機構は、前記伸縮ロッドを縮ませる方向の荷重が前記基準荷重に満たないとき、前記ギア機構を空回りさせることにより前記下向き動作を禁止するラチェット機構である。
【0008】
この構成によれば、アクチュエータは、ボトムの姿勢又は高さを変更するのであるから、アクチュエータには、通常ボトムの荷重が加えられている。しかしながら、ボトムを下向き動作させている過程で、ボトムに挟み込みが生じると、挟み込まれた人体又は物に対して荷重がかかるため、アクチュエータに加わる荷重が減少する。そして、アクチュエータに加わる荷重が基準荷重を下回ると、禁止機構によってボトムの下向き動作が禁止されるので、アクチュエータの駆動力が挟み込む力として作用するおそれが低減される。従って、挟み込みによる問題が生じるおそれを低減することが容易である。また、ラチェット機構が禁止機構として機能するので、禁止機構を構成することが容易である。
【0009】
また、前記制御部は、前記操作部によって前記下向き動作の操作指示が受け付けられている下降期間中において、前記アクチュエータの前記下向き動作が禁止され、かつ前記ボトムが前記下限位置より上に位置する場合、前記アクチュエータによって、前記ボトムを上方へ姿勢変更又は上昇させる上向き動作を実行させ、前記下降期間中において、前記アクチュエータの前記下向き動作が禁止され、かつ前記ボトムが前記下限位置に位置する場合、前記アクチュエータに前記上向き動作を実行させないことが好ましい。
【0010】
アクチュエータの下向き動作が禁止され、かつボトムが下限位置より上に位置する場合、挟み込みが生じたおそれがあると考えられる。この場合、ボトムを上方へ姿勢変更又は上昇させて挟み込みを解除することができるので、安全性が向上する。一方、ボトムが下限位置に位置する場合、ボトムの荷重が受止部材によって受け止められ、アクチュエータに加わる荷重が基準荷重を下回ると、挟み込みが生じていないにもかかわらず、アクチュエータの下向き動作が禁止される。この場合にボトムを上方へ姿勢変更又は上昇させると、ボトムを下限位置に維持させることができない。そこで、アクチュエータの下向き動作が禁止され、かつボトムが下限位置に位置する場合、アクチュエータに上向き動作を実行させないことによって、ボトムを下限位置に維持させることができる。
【発明の効果】
【0011】
このような構成の電動ベッドは、挟み込みによる問題が生じるおそれを低減することが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る電動ベッドの構成を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示す電動ベッドの昇降フレームを上昇させ、ボトム、ヘッドボード、及びフットボードを取り外した状態を示す斜視図である。
【
図5】
図1に示す電動ベッドの電気的構成の一例を示すブロック図である。
【
図7】
図1に示す電動ベッドの動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、その説明を省略する。本明細書においては、各図中に示す矢印で電動ベッド1の方向を示している。
図1は、本発明の一実施形態に係る電動ベッド1の構成を示す斜視図である。
【0014】
図1に示す如く、電動ベッド1は平面視で前後方向に長手方向を有する略矩形状に形成される。電動ベッド1は、大略的に、床面に載置されるベースユニット2、ベースユニット2に対して昇降可能に連結される昇降フレーム3、昇降フレーム3の上面に取り付けられるボトム4、昇降フレーム3の前端部に組付けられるヘッドボード51、及び昇降フレーム3の後端部に組付けられるフットボード52を主な構成部品として備える。
【0015】
ボトム4は、頭ボトム41、背ボトム42、座ボトム43、膝ボトム44、及び脚ボトム45を含む。頭ボトム41は使用者の頭を支える位置に配置され、背ボトム42は使用者の背中を支える位置に配置され、座ボトム43は使用者の腰を支える位置に配置され、膝ボトム44は使用者の膝を支える位置に配置され、脚ボトム45は使用者の脚を支える位置に配置されている。
【0016】
電動ベッド1の使用者は、ボトム4の上面に図示しないマットレスを敷き、頭を前側に、足を後側にしてマットレスの上に横たわることにより電動ベッド1を使用する。
【0017】
図2は、
図1に示す電動ベッド1の昇降フレーム3を上昇させ、ボトム4、ヘッドボード51、及びフットボード52を取り外した状態を示す斜視図である。電動ベッド1は、アクチュエータA1,A2,A3,A4、及びこれらの駆動を制御する制御ボックスCを備える。アクチュエータA1,A2,A3,A4は、伸縮ロッドRと、伸縮ロッドRを伸縮させるためのモータやギア機構を含む駆動部Mを備えている。
【0018】
ベースユニット2は電動ベッド1の全ての構成部品を直接的又は間接的に支持する基台部であり、平面視で前後方向に長手方向を有する矩形状に形成される。
図2に示す如く、ベースユニット2は前後方向に軸方向を有する支持フレーム21,21を左右に備える。
【0019】
支持フレーム21,21におけるそれぞれの前後両端部には、床面に載置される脚座22が組付けられる。支持フレーム21,21の間における、前部には支持柱23が、後部には支持柱24が左右方向に架け渡される。これにより、支持フレーム21,21が連結され、支持フレーム21,21、及び、支持柱23,24により、ベースユニット2は強固な枠体として構成される。
【0020】
また、支持フレーム21,21の間には、支持柱23と支持柱24との間の領域で、前後方向にスライド可能な支持柱25が左右方向に架け渡される。支持柱25の両端部には図略のローラが取り付けられている。支持フレーム21,21の内側に設けられたガイド部材211によって、支持柱25両端のローラがガイドされることにより、支持柱25が前後方向にスライド可能とされている。
【0021】
昇降フレーム3は、大略的に、平面視で前後方向に長手方向を有する矩形状の枠体である。昇降フレーム3は、左右一対のX形リンク機構6によって、ベースユニット2に対して昇降可能に連結されている。X形リンク機構6は、同じ長さのリンク61とリンク62とが、略中央位置で左右方向に延びる軸63まわりに互いに回動可能に連結されて構成されている。
【0022】
一対のリンク61の下端は、支持柱23に対して左右方向に延びる軸まわりに揺動可能に連結されている。一対のリンク61の上端には、図略のローラが取り付けられている。一対のリンク61のローラが、昇降フレーム3に取り付けられたガイド部材31,31によってガイドされることにより、一対のリンク61の上端が、昇降フレーム3に対して前後方向にスライド可能に連結されている。
【0023】
一対のリンク62の下端は、支持柱25に連結されている。一対のリンク62の上端は、昇降フレーム3に対して左右方向に延びる軸まわりに揺動可能に連結されている。一対のリンク61の間には、軸63よりも上方位置で、連結棒64が架け渡されている。
【0024】
支持フレーム21,21の間には、連結棒27が架け渡されている。連結棒27の略中央部に、アクチュエータA1の駆動部Mが揺動可能に連結されている。連結棒64の略中央部には、径方向に延出するブラケット65が取り付けられている。アクチュエータA1の伸縮ロッドRの先端は、ブラケット65の先端に、左右方向に延びる軸まわりに揺動可能に連結されている。
【0025】
これにより、アクチュエータA1の伸縮ロッドRが伸びると、X形リンク機構6が上下方向に延びて昇降フレーム3が上昇し、アクチュエータA1の伸縮ロッドRが縮むと、X形リンク機構6が上下方向に縮んで昇降フレーム3が下降するようになっている。
【0026】
図3は、
図2に示す電動ベッド1の正面図である。
図3では、ボトム4が取り付けられた状態を示している。X形リンク機構6のリンク61,62における、軸63よりも上方側で、リンク61,62の下面に受止部材66が取り付けられている。受止部材66は、左右方向に突出し、X形リンク機構6が縮んだときに、リンク61の受止部材66はリンク62と、リンク62の受止部材66はリンク61と干渉するようになっている。受止部材66は、例えばゴム等の弾性部材によって構成されている。
【0027】
図4は、
図1に示す電動ベッド1の正面図である。X形リンク機構6が上下方向に縮んで昇降フレーム3が下降すると、リンク61,62に受止部材66が挟まって、これ以上X形リンク機構6が縮まなくなり、昇降フレーム3が下降しなくなる。このときのボトム4の位置が、ボトム4の高さの可動範囲の下限位置となる。このとき、ボトム4の荷重は受止部材66によって受け止められている。
【0028】
昇降フレーム3には、頭ボトム41を支持する可動フレーム411と、背ボトム42を支持する可動フレーム421と、膝ボトム44を支持する可動フレーム441と、脚ボトム45を支持する可動フレーム451とが連結されている。可動フレーム421と、可動フレーム441との間において、昇降フレーム3に座ボトム43が固定的に取り付けられる。
【0029】
可動フレーム421は、その後方端部を支点にして左右方向に延びる軸まわりに揺動可能に、昇降フレーム3に対して連結されている。アクチュエータA2の駆動部Mが、昇降フレーム3に対して左右方向に延びる軸まわりに揺動可能に連結されている。アクチュエータA2の伸縮ロッドRの先端が、リンク機構422を介して可動フレーム421に連結されている。
【0030】
可動フレーム421の前方端部と、可動フレーム411の後方端部とは、蝶番412によって、左右方向に延びる軸まわりに揺動可能に連結されている。アクチュエータA3の駆動部Mが、可動フレーム421に対して左右方向に延びる軸まわりに揺動可能に連結されている。アクチュエータA3の伸縮ロッドRの先端が、ブラケット413を介して可動フレーム411に連結されている。
【0031】
これにより、アクチュエータA2の伸縮ロッドRが伸びると、可動フレーム421が立ち上がるように回動して上方へ姿勢変更し、可動フレーム421の姿勢変更と連動して可動フレーム411とアクチュエータA3とが上方へ移動する。アクチュエータA2の伸縮ロッドRが縮むと、可動フレーム421が倒れるように回動して下方へ姿勢変更し、可動フレーム421の姿勢変更と連動して可動フレーム411とアクチュエータA3とが下方へ移動する。
【0032】
可動フレーム421には背ボトム42が取り付けられ、可動フレーム411には頭ボトム41が取り付けられるので、アクチュエータA2の伸縮ロッドRが伸びると、頭ボトム41と背ボトム42とが連動して上方へ起き上がり、アクチュエータA2の伸縮ロッドRが縮むと、頭ボトム41と背ボトム42とが連動して下方へ倒れるようになっている。
【0033】
背ボトム42が下方へ姿勢変更して水平になると、可動フレーム421の前方端又はリンク機構422等と、昇降フレーム3とが干渉し、これ以上背ボトム42が下方へ姿勢変更できなくなる。このときの背ボトム42の位置が、背ボトム42の姿勢の可動範囲の下限位置となる。このとき、背ボトム42及び頭ボトム41の荷重は昇降フレーム3によって受け止められている。昇降フレーム3は、背ボトム42に対する受止部材の一例に相当する。
【0034】
アクチュエータA3の伸縮ロッドRが伸びると、可動フレーム411が上方へ姿勢変更し、頭ボトム41が起き上がる。アクチュエータA3の伸縮ロッドRが縮むと、可動フレーム411が下方へ姿勢変更し、頭ボトム41が背ボトム42に対して平坦に近づく。
【0035】
蝶番412の可動範囲は、可動フレーム411と可動フレーム421とが平坦になった姿勢、すなわち頭ボトム41と背ボトム42とが平坦になった平坦姿勢を限度とし、頭ボトム41と背ボトム42とが上方側で成すボトム角度が平坦姿勢よりも小さくなる方向には蝶番412は曲がるが、平坦姿勢よりもボトム角度が大きくなる方向には曲がらないように蝶番412がロックするようになっている。
【0036】
頭ボトム41と背ボトム42とが平坦姿勢になって蝶番412がロックしたとき、このときの頭ボトム41の位置が、頭ボトム41の姿勢の可動範囲の下限位置となる。このとき、頭ボトム41の荷重は蝶番412によって受け止められている。蝶番412は、頭ボトム41に対する受止部材の一例に相当する。
【0037】
可動フレーム441は、その前方端部を支点にして左右方向に延びる軸まわりに揺動可能に、昇降フレーム3に対して連結されている。可動フレーム441の後方端部は、可動フレーム451の前方端部に対して、蝶番442によって、左右方向に延びる軸まわりに揺動可能に連結されている。アクチュエータA4の駆動部Mは、昇降フレーム3に対して左右方向に延びる軸まわりに揺動可能に連結されている。アクチュエータA4の伸縮ロッドRの先端が、リンク機構443を介して可動フレーム441に連結されている。
【0038】
これにより、アクチュエータA4の伸縮ロッドRが伸びると、可動フレーム441が立ち上がるように回動して上方へ姿勢変更し、可動フレーム441の姿勢変更と連動して可動フレーム451の前方端が持ち上がる。一方、アクチュエータA4の伸縮ロッドRが縮むと、可動フレーム441が水平に近づくように回動して下方へ姿勢変更し、可動フレーム441の姿勢変更と連動して可動フレーム451の前方端が下降する。
【0039】
可動フレーム441には膝ボトム44が取り付けられ、可動フレーム451には脚ボトム45が取り付けられるので、アクチュエータA4の伸縮ロッドRが伸びると、膝ボトム44と脚ボトム45とが、蝶番442を頂上とする山形に隆起し、アクチュエータA4の伸縮ロッドRが縮むと、蝶番442が下降し、膝ボトム44と脚ボトム45とが水平に近づく。
【0040】
蝶番442が下降して膝ボトム44と脚ボトム45とが下方へ姿勢変更して水平になると、可動フレーム441の後端、可動フレーム451の前端、又は蝶番442と、昇降フレーム3とが干渉し、これ以上膝ボトム44及び脚ボトム45が下方へ姿勢変更できなくなる。このときの膝ボトム44及び脚ボトム45の位置が、膝ボトム44及び脚ボトム45の姿勢の可動範囲の下限位置となる。このとき、膝ボトム44及び脚ボトム45の荷重は昇降フレーム3によって受け止められている。昇降フレーム3は、膝ボトム44及び脚ボトム45に対する受止部材の一例に相当する。
【0041】
以下、アクチュエータA1によってボトム4を上昇させる動作、及びアクチュエータA2,A3,A4によって頭ボトム41、背ボトム42、膝ボトム44、及び脚ボトム45を上方へ姿勢変更させる動作を総称して、上向き動作と称し、アクチュエータA1によってボトム4を下降させる動作、及びアクチュエータA2,A3,A4によって頭ボトム41、背ボトム42、膝ボトム44、及び脚ボトム45を下方へ姿勢変更させる動作を総称して、下向き動作と称する。
【0042】
図5は、
図1に示す電動ベッド1の電気的構成の一例を示すブロック図である。
図5に示す如く、電動ベッド1は、アクチュエータA1,A2,A3,A4と、制御モジュールA1C,A2C,A3C,A4Cと、手元スイッチ8と、制御部7とを備えている。以下、アクチュエータA1,A2,A3,A4を総称してアクチュエータAと称し、制御モジュールA1C,A2C,A3C,A4Cを総称して制御モジュールACと称する。
【0043】
アクチュエータA1,A2,A3,A4は、制御モジュールA1C,A2C,A3C,A4Cを介して制御部7と接続されている。制御モジュールACは、制御部7からの制御信号に応じて、アクチュエータAを伸縮させる。
【0044】
アクチュエータAの伸縮ロッドRは、例えばスプライン軸とされている。アクチュエータAの図略のギア機構は、モータの回転駆動力により伸縮ロッドRを軸心回りに回転させることによって、伸縮ロッドRを伸縮させる。
【0045】
アクチュエータAは、伸縮ロッドRを縮ませる方向の荷重が、所定の基準荷重に満たないとき、上述のギア機構を空回りさせることにより下向き動作を禁止するラチェット機構(爪車)を備えている。このようなラチェット機構は、禁止機構の一例に相当する。
【0046】
なお、アクチュエータAがラチェット機構を内蔵する例を示したが、ラチェット機構(禁止機構)はアクチュエータAの外部に設けられていてもよい。
【0047】
また、アクチュエータAは、伸縮ロッドRの回転を検知する図略の回転検知センサを備えている。回転検知センサによって、伸縮ロッドRの回転が検知されると、その回転を示す信号を制御モジュールACへ出力する。回転検知センサとしては、例えばホール素子を用いることができる。例えば伸縮ロッドRの外周の所定位置に磁石を取り付け、ホール素子を用いて磁石の磁力を検知することによって、伸縮ロッドRの回転を検知することができる。
【0048】
制御モジュールACは、アクチュエータAから出力された、伸縮ロッドRの回転を示す信号に基づいて伸縮ロッドRの伸びている長さ、すなわちストローク位置を演算し、そのストローク位置を示す信号を制御部7へ出力する。また、制御モジュールACは、ラチェット機構によってギア機構が空回りして下向き動作が禁止されたことを検出し、下向き動作が禁止されたことを示す信号を制御部7へ出力する。
【0049】
制御モジュールACは、例えば、制御モジュールACからアクチュエータAに対して伸縮ロッドRを縮ませる下向き動作の制御信号が出力されている期間中に、アクチュエータAから、伸縮ロッドRの回転を示す信号が出力されなくなった場合、下向き動作が禁止されたと判断することができる。
【0050】
上述のような機能を有するアクチュエータAとしては、例えばLINAK社製リニアアクチュエータLA40を用いることができ、上述のような機能を有する制御モジュールACとしては、例えばLINAK社製コントロールボックスC061を用いることができる。
【0051】
なお、アクチュエータAは、伸縮ロッドRを縮ませる方向の荷重が、所定の基準荷重に満たないとき、下向き動作を禁止する禁止機構を備えていればよく、アクチュエータAはLINAK社製リニアアクチュエータに限られず、禁止機構はラチェット機構に限らない。
【0052】
また、制御モジュールACは、LINAK社製コントロールボックスに限られず、制御モジュールACの機能を、アクチュエータA又は制御部7が備えていてもよい。
【0053】
図6は、手元スイッチ8の一例を示す外観図である。手元スイッチ8は、高さ下げボタン80D、高さ上げボタン80U、頭下げボタン81D、頭上げボタン81U、背下げボタン82D、背上げボタン82U、足下げボタン83D、足上げボタン83U、電源スイッチ86、及び表示部87を備える。
【0054】
表示部87は、例えば液晶表示器等により構成され、各ボトム4の高さや姿勢等を表示する。手元スイッチ8は、使用者の操作指示を受け付ける操作部である。手元スイッチ8は、受け付けられた指示を示す信号を、制御部7へ出力する。
【0055】
高さ下げボタン80Dはボトム4全体の下向き動作の操作指示、高さ上げボタン80Uはボトム4全体の上向き動作の操作指示を受け付ける。頭下げボタン81D、背下げボタン82Dは、頭ボトム41、背ボトム42について、それぞれ下向き動作の操作指示を受け付ける。頭上げボタン81U、背上げボタン82Uは、頭ボトム41、背ボトム42について、それぞれ上向き動作の操作指示を受け付ける。足下げボタン83Dは、膝ボトム44及び脚ボトム45について、下向き動作の操作指示を受け付ける。足上げボタン83Uは、膝ボトム44及び脚ボトム45について、上向き動作の操作指示を受け付ける。
【0056】
制御部7は、制御ボックスCに収容されている。制御部7は、例えば所定の演算処理を実行するCPU(Central Processing Unit)、データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)、所定の制御プログラム等を記憶する不揮発性の記憶部、及びこれらの周辺回路等を備えて構成されている。
【0057】
制御部7は、手元スイッチ8によって受け付けられた操作指示に応じてアクチュエータAの動作を制御する。
【0058】
また、制御部7は、手元スイッチ8によって、下向き動作の操作指示が受け付けられている下降期間中において、ボトム4が下限位置より上に位置する場合であって、かつアクチュエータAの下向き動作が禁止されたとき、アクチュエータAに上向き動作を実行させる。
【0059】
また、制御部7は、手元スイッチ8によって、下向き動作の操作指示が受け付けられている下降期間中において、ボトム4が下限位置に位置する場合であって、かつアクチュエータAの下向き動作が禁止されたとき、アクチュエータAに下向き動作を実行させる指示を継続する。
【0060】
次に、上述のように構成された電動ベッド1の動作について説明する。
図7は、
図1に示す電動ベッド1の動作の一例を示すフローチャートである。以下、
図3に示すように昇降フレーム3が上昇してボトム4が高い位置にある状態から、ボトム4を下降させる動作を例に、説明する。
【0061】
まず、使用者が、高さ下げボタン80Dを押すと、手元スイッチ8によってボトム4全体の下向き動作の操作指示が受け付けられ(ステップS1)、手元スイッチ8から制御部7へ、ボトム4全体の下向き動作の指示が出力される。以下、高さ下げボタン80Dが押されたまま維持されているものとして説明する。
【0062】
次に、制御部7は、ボトム4全体の高さに対応するアクチュエータA1に対して、制御モジュールA1Cを介して下向き動作を指示し、伸縮ロッドRを縮ませる(ステップS2)。なお、制御部7は、ボタンが押されなくなったときは、アクチュエータAの動作を停止させる。
【0063】
伸縮ロッドRが縮んでX形リンク機構6が縮むと、昇降フレーム3と共にボトム4が下降し、下向き動作が実行される。下向き動作が実行されている期間中、制御部7は、制御モジュールA1Cからの、下向き動作の禁止を示す信号を監視し(ステップS3)、下向き動作が禁止されていなければ(ステップS3でNO)、アクチュエータA1による下向き動作を継続する(ステップS2,S3)。
【0064】
一方、ラチェット機構によってアクチュエータA1のギア機構が空回りし、アクチュエータA1の下向き動作が禁止されると、下向き動作が禁止されたことが制御モジュールA1Cによって検出され、制御モジュールA1Cから制御部7へ、下向き動作の禁止を示す信号が出力される(ステップS3でYES)。
【0065】
そうすると、制御部7は、制御モジュールA1Cからの、アクチュエータA1の伸縮ロッドRのストローク位置を示す信号を参照し、ボトム4が下限位置より上か否かを確認する(ステップS4)。ボトム4が下限位置より上であった場合(ステップS4でYES)、下降の過程で昇降フレーム3の下に人体や異物が挟み込まれた可能性がある。
【0066】
下降の過程で昇降フレーム3の下に人体や異物が挟み込まれると、挟まった人体や異物に昇降フレーム3等の荷重がかかる。挟まった人体や異物に昇降フレーム3等の荷重がかかると、アクチュエータA1の伸縮ロッドRにかかる荷重が減少する。そして、伸縮ロッドRにかかる荷重が基準荷重を下回ると、ラチェット機構によってアクチュエータA1のギア機構が空回りし、アクチュエータA1の下向き動作が禁止される。
【0067】
これにより、アクチュエータA1の駆動力が、昇降フレーム3の下に挟まった人体や異物に加わるおそれが低減されるので、安全性が向上する。従って、電動ベッド1によれば、挟み込みによる問題が生じるおそれを低減することが容易である。
【0068】
このとき、ラチェット機構によってアクチュエータA1の下向き動作が禁止されると、下向き動作が禁止されたことが制御モジュールA1Cによって検出され、制御モジュールA1Cから制御部7へ、下向き動作の禁止を示す信号が出力される(ステップS3でYES)。従って、下向き動作が禁止され(ステップS3でYES)、ボトム4が下限位置より上であった場合(ステップS4でYES)、下降の過程で昇降フレーム3の下に人体や異物が挟み込まれた可能性がある。
【0069】
そこで、制御部7は、ボトム4が下限位置より上であった場合(ステップS4でYES)、アクチュエータA1によって上向き動作を実行させ、昇降フレーム3を上昇させる(ステップS5)。
【0070】
これにより、例え昇降フレーム3の下に人体や異物が挟み込まれた場合であっても、挟み込まれた人体や異物が解放されるので、安全性がより向上する。
【0071】
一方、ステップS4において、ボトム4が下限位置に位置していた場合(ステップS4でNO)、制御部7は、ステップS2~S4を繰り返す。このとき、ラチェット機構によってアクチュエータA1のギア機構が空回りし、アクチュエータA1の下向き動作が禁止されて、ボトム4は下限位置に維持される。
【0072】
具体的には、
図4に示すように、ボトム4の高さが可動範囲の下限位置に到達すると、リンク61,62の受止部材66がリンク62,61と干渉し、ボトム4及び昇降フレーム3等の荷重が受止部材66によって受け止められる。そうすると、アクチュエータA1の伸縮ロッドRにかかる荷重が減少する。そして、伸縮ロッドRにかかる荷重が基準荷重を下回ると、ラチェット機構によってアクチュエータA1のギア機構が空回りし、アクチュエータA1の下向き動作が禁止されて、ボトム4は下限位置に維持されることになる。
【0073】
もし仮に、下向き動作が禁止されたとき(ステップS3でYES)、ステップS4を実行せずにステップS5を実行した場合、ボトム4の高さが可動範囲の下限位置に到達したときにアクチュエータA1の上向き動作によって昇降フレーム3が上昇される(ステップS5)ので、ボトム4を下限位置に維持しておくことができない。
【0074】
しかしながら、電動ベッド1は、下向き動作が禁止(ステップS3でYES)された場合であっても、ボトム4が下限位置より上でなかった場合(ステップS4でNO)、昇降フレーム3を上昇させないので、ボトム4を下限位置に維持しておくことが可能となる。
【0075】
ブラケット65とX形リンク機構6とを介したアクチュエータA1の伸縮ロッドRと昇降フレーム3との間の連動機構には、遊びが設けられている。そのため、伸縮ロッドRが縮みきる前に、ボトム4が下限位置に到達するようになっている。
【0076】
なお、高さ下げボタン80Dが押され、アクチュエータA1によってボトム4の高さを下降させる下向き動作を例に、
図7のフローチャートを説明したが、頭下げボタン81D、背下げボタン82D、足下げボタン83Dが押されて、頭ボトム41、背ボトム42、膝ボトム44及び脚ボトム45がアクチュエータA2,A3,A4によって姿勢変更する下向き動作の場合であっても、
図7に示すフローチャートの動作を実行することによって、同様の効果を得られる。
【0077】
なお、電動ベッド1は、必ずしもステップS3~S5を実行する必要はなく、アクチュエータAの下向き動作が禁止された場合にボトム4を上向き動作させなくてもよい。
【符号の説明】
【0078】
1 電動ベッド
2 ベースユニット
3 昇降フレーム(受止部材)
4 ボトム
6 X形リンク機構
7 制御部
8 手元スイッチ(操作部)
21,21 支持フレーム
22 脚座
23,24,25 支持柱
27 連結棒
31,31 ガイド部材
41 頭ボトム
42 背ボトム
43 座ボトム
44 膝ボトム
45 脚ボトム
51 ヘッドボード
52 フットボード
61,62 リンク
63 軸
64 連結棒
65 ブラケット
66 受止部材
80D 高さ下げボタン
80U 高さ上げボタン
81D 頭下げボタン
81U 頭上げボタン
82D 背下げボタン
82U 背上げボタン
83D 足下げボタン
83U 足上げボタン
86 電源スイッチ
87 表示部
211 ガイド部材
411,421,441,451 可動フレーム
412 蝶番(受止部材)
442 蝶番
422,443 リンク機構
A,A1,A2,A3,A4 アクチュエータ
AC,A1C,A2C,A3C,A4C 制御モジュール
C 制御ボックス
M 駆動部
R 伸縮ロッド