(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】ダンボールダクト
(51)【国際特許分類】
F24F 13/02 20060101AFI20240618BHJP
【FI】
F24F13/02 E
F24F13/02 A
(21)【出願番号】P 2018145147
(22)【出願日】2018-08-01
【審査請求日】2021-07-01
【審判番号】
【審判請求日】2023-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(73)【特許権者】
【識別番号】390022666
【氏名又は名称】協立エアテック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】392023876
【氏名又は名称】山田ダンボール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100219483
【氏名又は名称】宇野 智也
(72)【発明者】
【氏名】新 知之
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏治
(72)【発明者】
【氏名】新川 隆将
(72)【発明者】
【氏名】村▲瀬▼ 勇人
(72)【発明者】
【氏名】岡島 正行
(72)【発明者】
【氏名】早坂 孝光
【合議体】
【審判長】間中 耕治
【審判官】鈴木 充
【審判官】竹下 和志
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-147185(JP,A)
【文献】実開昭55-41331(JP,U)
【文献】登録実用新案第3000301(JP,U)
【文献】特開2015-17746(JP,A)
【文献】実開昭59-172938(JP,U)
【文献】特開2009-139042(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0271972(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単数のダンボール板材を折り曲げ、側縁部同士を当接させて形成される多角筒状体、
若しくは、折り曲げた複数のダンボール板材を対向させ、側縁部同士を当接させて形成される多角筒状
体の何れ
かと、
前記多角筒状体において互いに当接する前記側縁部同士を接合する接合手段と、を有するダンボールダクトにおいて、
前記側縁部に、前記ダンボール板材の平面方向と斜めに交差し且つ互いに接触する突き合わせ面を有する合わせ辺を備え、
前記ダンボール板材を折り曲げて形成される折り合わせ辺の内側に横断面がV字状をなすVカット面を有するカット部を設け、
前記突き合わせ面、及び、前記Vカット面を粘着テープで被覆し、
前記カット部をそれぞれ同じ方向に向かって折り曲げ、前記粘着テープで被覆された前記突き合わせ面同士並びに前記粘着テープで被覆された前記Vカット面同士を互いに面接触させ、前記合わせ辺及びこれらの近傍のダンボール板材の外面に粘着テープを貼着したダンボールダクト。
【請求項2】
前記接合手段が、粘着テープである請求項1記載のダンボールダクト。
【請求項3】
前記ダンボール板材の平面方向と、前記突き合わせ面、若しくは、前記Vカット面との成す鋭角側の傾斜角度が前記多角筒状体の内角の2分の1である請求項1または2記載のダンボールダクト。
【請求項4】
前記多角筒状体の長手方向と交差する平面の一部をなす前記ダンボール板材の端面を粘着テープで被覆した請求項1~3の何れかの項に記載のダンボールダクト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種建築物の空調設備を構成する配管部分に使用されるダンボールダクトに関する。
【背景技術】
【0002】
空調設備の配管部分に使用されるダンボールダクトについては様々な提案がなされているが、本発明のダンボールダクトに関連する従来のダンボールダクトとして、例えば、
図10(a)に示すようなダンボールダクト100がある。
【0003】
このダンボールダクト100は、
図10(b)に示すように、四角形平板状のダンボール板材101を、対向する二つの側縁部101a,101bの間に設定した三つの折り曲げ予定線101cに沿って設けたくぼみ(図示せず)にて、それぞれ90度に折り曲げて四角筒状体を形成し、一方の側縁部101a近傍のダンボール板材101の内面を、他方の側縁部101bに密着させ、側縁部101a近傍のダンボール板材101の外面、側縁部101a及び101b近傍のダンボール板材101の外面を覆うように粘着テープ105を貼着することによって形成されている。なお、
図10(a)中に示す符号θは四角筒状体の内角の角度を表し、
図10(a),(b)中に示す符号101x,101yはそれぞれ各部の長さを示している。
【0004】
そのほか、本発明のダンボールダクトに関連する従来のダンボールダクトとして、例えば、特許文献1に記載された「空調用段ボールダクト」がある。この「空調用段ボールダクト」は、
図12に示すダンボールダクト120のような形状、構造を有している。
【0005】
図12に示すダンボールダクト120は、
図10(b)に示すダンボール板材101と同様、四角形平板状のダンボール板材121を、対向する二つの側縁部121a,121bの間に設定した三つの折り曲げ予定線に沿って設けた凹み(図示せず)にて、それぞれ90度に折り曲げて四角筒状体を形成し、一方の側縁部121a寄りのダンボール板材121の内面を、他方の側縁部121bに密着させるとともに、ダンボール板材121の側縁部121a寄りの部分を90度折り曲げ、側縁部121a近傍のダンボール板材121の内面を側縁部121b近傍のダンボール板材121の外面に密着させ、側縁部121a寄りのダンボール板材121の外面、側縁部121a及び121b寄りのダンボール板材121の外面を覆うように粘着テープ125を貼着することによって形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図10(a)に示す従来のダンボールダクト100は、施工現場において、
図10(b)に示す四角形平板状のダンボール板材101を三つの折り曲げ予定線101cに沿って設けた凹み(図示せず)にて折り曲げて形成されているが、手作業で折り曲げた後の折り曲げ辺103は折り曲げ予定線101c通りにならないことがあり、正確な形状の折り曲げ辺103を形成するのが困難であり、組立作業性が悪い。また、折り曲げ辺103付近に外部から押圧力が加わると、
図10(a)に示す角度θが90度を維持することができず、ダンボールダクトの断面形状が平行四辺形をなすように変形し易いという問題がある。
【0008】
また、複数の折り曲げ辺103付近のダンボール板材101には元の平板形状に戻ろうとする弾性的復元力が存在するとともに、空調運転中のダンボールダクト100の内部には、大気圧より高圧の空調空気が流動しているため、ダンボール板材101の平面部が外部に向かって凸曲面をなすように膨張変形し易い。
【0009】
さらに、ダンボール板材101の弾性的復元力やダンボールダクト100内の空気圧の存在により、
図11(a)に示すように、ダンボールダクト100の内面には、例えば、矢線P1で示すような力が加わり、粘着テープ105を剥がす方向の力が生じている。
【0010】
従って、ダンボールダクト100の施工後、時間が経過すると、これに伴って、
図11(b)に示すように、矢線P1方向の力によって粘着テープ105の側縁部が剥がれて空隙V1が生じて、気密性が悪化することがあり、耐圧性、耐久性の低下を招いている。
【0011】
また、特許文献1に記載された「空調用段ボールダクト」(
図12に示すダンボールダクト120)においても、前述と同様に、複数の折り曲げ辺123付近のダンボール板材121には元の平板状に戻ろうとする弾性的復元力が存在し、また、空調運転中のダンボールダクト120の内部には、大気圧より高圧の空調空気が流動している。このため、
図13(a)に示すように、ダンボールダクト120の内面には、例えば、矢線P2で示すような力が加わり、粘着テープ125を剥がす方向の力が生じている。
【0012】
従って、ダンボールダクト120の施工後、時間が経過すると、これに伴って、
図13(b)に示すように、矢線P2方向の力によって粘着テープ125の一部が剥がれて空隙V2,V3が生じ、気密性が悪化することがあり、これによって耐圧性、耐久性が低下する可能性が高い。
【0013】
また、
図10(a)の矢線Cで示す部分は、側縁部101a近傍のダンボール板材101の内面を、他方の側縁部101bとの角度θ=90度となるように密着させた構造となっているため、ダンボール板材101を角度θ=90度に曲げて形成された他の3つの折り曲げ辺103と外形、構造が異なっている。
【0014】
また、
図12の矢線Dで示す部分は、側縁部121a近傍のダンボール板材121と、側縁部121b近傍のダンボール板材121とが重ね代をもって重なり合った二重構造となっているため、ダンボール板材121を角度θ=90度に曲げて形成された他の3つの折り曲げ辺123と外形、構造が大きく異なっている。
【0015】
従って、ダンボールダクト100,120を長手方向に沿って直列に連結していく場合、連結部分の整合性を保つように重ね代部分を揃えて連結する必要があるため、矢線C,Dで示す部分が同一直線上で直列に連続するように連結する必要がある。このため、ダンボールダクト100,120は、連結時の位置合わせが煩雑であり、施工現場での作業性が悪いという問題もある。
【0016】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、空調空気の内圧に起因する、ダンボール板材の側縁部同士の接合部分の分離が生じ難く、耐圧性、耐久性に優れたダンボールダクトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に係るダンボールダクトは、
単数のダンボール板材を折り曲げ、側縁部同士を当接させて形成される多角筒状体、
若しくは、折り曲げた複数のダンボール板材を対向させ、側縁部同士を当接させて形成される多角筒状体、
若しくは、複数のダンボール板材をそれぞれの側縁部同士が隣り合うように組み合わせ、前記側縁部同士を当接させて形成される多角筒状体の何れか一つと、
前記多角筒状体において互いに当接する前記側縁部同士を接合する接合手段と、を有するダンボールダクトにおいて、
前記側縁部に、前記ダンボール板材の平面方向と斜めに交差し且つ互いに接触する突き合わせ面を有する合わせ辺を備えたことを特徴とする。
【0018】
このような構成とすれば、ダンボール板材の側縁部に形成された合わせ辺同士の接合部分に位置する突き合わせ面が、ダンボール板材の平面方向と斜めに交差したことにより、空調空気の内圧に起因する、突き合わせ面同士を引き離す方向の力が軽減されるため、合わせ辺同士の分離が生じ難くなり、ダンボールダクトの耐圧性、耐久性を高めることができる。
【0019】
前記ダンボールダクトにおいては、前記接合手段として、粘着テープを用いることができる。
【0020】
このような構成とすれば、簡単な作業により、ダンボール板材の合わせ辺同士を高気密、高強度の状態に接合することができる。
【0021】
前記ダンボールダクトにおいては、前記ダンボール板材を折り曲げて形成される折り合わせ辺の内側に横断面がV字状をなすVカット面を有するカット部を設けることが望ましい。
【0022】
このような構成とすれば、ダンボール板材を折り曲げ加工するとき、並びに、折り曲げ加工後におけるダンボール板材の弾性的復元力を低下させることができるので、折り曲げ加工が容易となり、正確な断面形状を有する多角筒状体を形成することができ、また、施工現場での組み立て作業性も向上する。さらに、折り曲げ加工後は、多角筒状体の形状安定性が高まり、コーナー部分が変形し難くなり、ダクトの膨張も抑制されるので、ダンボールダクトの耐圧性、耐久性の向上に有効である。
【0023】
前記ダンボールダクトにおいては、前記突き合わせ面、若しくは、前記Vカット面を粘着テープで被覆することが望ましい。
【0024】
このような構成とすれば、前記突き合わせ面同士、前記Vカット面同士が当接する部分の気密性、強度を高めることができるため、ダンボールダクトの耐圧性、耐久性の向上に有効である。
【0025】
前記ダンボールダクトにおいては、前記ダンボール板材の平面方向と、前記突き合わせ面、若しくは、前記Vカット面との成す鋭角側の傾斜角度が前記多角筒状体の内角の2分の1であることが望ましい。
【0026】
このような構成とすれば、前記突き合わせ面同士、ダンボール板材のVカット面同士を面接触させることができるので、Vカット面同士の密着性、気密性を高めることができ、ダンボールダクトの耐圧性、耐久性の向上に有効である。
【0027】
前記ダンボールダクトにおいては、前記多角筒状体の長手方向と交差する平面の一部をなす前記ダンボール板材の端面を粘着テープで被覆することが望ましい。
【0028】
このような構成とすれば、複数のダンボールダクトを長手方向に連結する場合、端面同士が当接する部分の気密性、強度を高めることができるため、ダンボールダクトの耐圧性、耐久性の向上に有効である。
【発明の効果】
【0029】
本発明により、空調空気の内圧に起因する、ダンボール板材の側縁部同士の接合部分の分離が生じ難く、耐圧性、耐久性に優れたダンボールダクトを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の実施形態であるダンボールダクトを示す斜視図である。
【
図2】
図1中の矢線A方向から見たダンボールダクトの端面図である。
【
図3】
図1に示すダンボールダクトの製造工程の前半部分を示す一部省略斜視図である。
【
図4】
図1に示すダンボールダクトの製造工程の後半部分を示す一部省略斜視図である。
【
図5】
図3(c)中のB-B線における一部省略断面図である。
【
図6】その他の実施形態であるダンボールダクトの製造工程の前半部分を示す一部省略斜視図である。
【
図7】その他の実施形態であるダンボールダクトの製造工程の後半部分を示す一部省略斜視図である。
【
図8】本発明のその他の実施形態であるダンボールダクトの製造工程を示す一部省略斜視図である。
【
図9】本発明のその他の実施形態であるダンボールダクトの製造工程を示す一部省略斜視図である。
【
図10】(a)は従来のダンボールダクトを示す一部省略端面図であり、(b)は前記ダンボールダクトの材料であるダンボール板材を示す斜視図である。
【
図11】(a)は
図10(a)中の矢線Cで示す領域の一部省略拡大端面図であり、(b)は前記(a)の部分に空隙が生じた状態を示す図である。
【
図12】従来のダンボールダクトを示す一部省略端面図である。
【
図13】(a)は
図12中の矢線Dで示す領域の一部省略拡大端面図であり、(b)は前記(a)の部分に空隙が生じた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、
図1~
図9に基づいて、本発明の実施形態であるダンボールダクト1,2,3,4について説明する。
【0032】
初めに、
図1~
図5に基づいて、ダンボールダクト1について説明する。
図1,
図2に示すように、ダンボールダクト1は、一枚のダンボール板材10を折り曲げ、合わせ辺10a,10b同士を当接させて形成された四角筒状体11と、合わせ辺10a,10b同士が当接するコーナー部12において合わせ辺10a,10b同士を接合する粘着テープ15と、を有する。合わせ辺10a,10bは、ダンボール板材10の平面S方向と斜めに交差し、且つ、互いに接触する突き合わせ面10c,10dを備えている。
図2に示すように、ダンボール板材10の平面S方向と突き合わせ面10c,10dとの成す鋭角側の傾斜角度R,Rは四角筒状体の内角(90度)の2分の1である45度である。
【0033】
ここで、
図3~
図5に基づいて、ダンボールダクト1の製造方法について説明する。
図3(a)はダンボールダクト1の原材料である1枚のダンボール板材10を示している。
図5に示すように、ダンボール板材10は、板厚方向の中央に配置された厚紙波板10hと、厚紙波板10hの両面に貼着された中ライナ10m,10mと、中ライナ10m,10mの外面に貼着された厚紙波板10j,10jと、厚紙波板10j,10jの外面に貼着された外ライナ10f,10fと、を備えている。また、ダンボール板材10の両面を形成する外ライナ10f,10fの外面には、それぞれアルミニウム箔16,16が貼着されている。
【0034】
図5中の厚紙波板10h,10jの部分に示す矢線Mは、ダンボール板材10を形成する厚紙波板10h,10jの山谷の長手方向を示し、
図3,
図4中に示す複数の平行直線Lは、それぞれ厚紙波板10h,10jの山谷の長手方向を表している。本実施形態のダンボールダクト1においては、平行直線Lは矢線Mと平行をなしている。なお、本発明に係るダンボールダクトに使用するダンボール板材の形状、構造は
図5に示すダンボール板材10に限定するものではない。
【0035】
図3(a)に示すように、四角形をなすダンボール板材10において対向する一対の側縁部10x,10yの間の領域に、側縁部10x,10yと平行な3本の折り曲げ予定線13a,13b,13c(仮想線)を設定する。前述したように、従来は折り曲げ予定線に沿って凹みを設け、手作業により、凹み部分で折り曲げていたが、折り曲げた後に形成される一辺は折り曲げ予定線通りにならず、その形状は正確ではなかった。
【0036】
そこで、
図3(b)に示すように、折り曲げ予定線13a,13b,13cに沿って、折り曲げ予定線13a,13b,13cを中心とする、横断面がV字状のカット部14a,14b,14cを設ける。カット部14a,14b,14cを形成するダンボール板材10のVカット面10e,10eが突き合わせ面となる。また、
図3(a)中に示す側縁部10x,10yにも、それぞれダンボール板材10の平面S方向と斜めに交差する突き合わせ面10c,10dを設けることにより、合わせ辺10a,10bを形成する。
【0037】
図5に示すように、ダンボール板材10の平面S方向とVカット面10eとの成す鋭角側の傾斜角度Rは、四角筒状体11(
図1参照)の内角(90度)の2分の1である45度であり、Vカット面10e,10e同士の成す対向角度Tは90度である。また、
図5に示すように、横断面がV字状のカット部14a,14b,14cはダンボール板材10の一方の外ライナ10f(
図1に示す四角筒状体11の外側に位置する方の外ライナ10f)及びアルミニウム箔16を残した状態で形成されている。
【0038】
次に、
図3(b)中に示す突き合わせ面10c,10d,10e及びこれらの近傍のダンボール板材10の内面(四角筒状体11を形成したとき内側となる面)を覆うように粘着テープ17を貼着する。また、四角筒状体11の軸心方向と交差する平面の一部をなすダンボール板材10の端面10g及びその近傍を覆うように粘着テープ17を貼着すると、
図3(c)に示す状態となる。
【0039】
次に、
図4(a)に示すように、カット部14a,14b,14cをそれぞれ同じ方向に向かって90度ずつ折り曲げていき、合わせ辺10aの突き合わせ面10cと、合わせ辺10bの突き合わせ面10dと、を互いに接触させ、合わせ辺10a,10b及びこれらの近傍のダンボール板材10の外面に粘着テープ15を貼着すると、
図4(b)に示すようなダンボールダクト1が完成する。粘着テープ15は不燃性のアルミ粘着テープを使用することが望ましいが、これに限定するものではなく、粘着テープ15の代わりに、接着剤を使用することもできる。
【0040】
図2,
図3(b)に示すように、ダンボールダクト1においては、四角筒状体11のコーナー部12を形成する合わせ辺10a,10b(折り合わせ辺12a,12b,12cの内側)に、それぞれダンボール板材10の平面S方向と斜め(45度)に交差し且つ互いに接触する突き合わせ面10c,10d(Vカット面10e,10e)を備えている。
【0041】
図2に示すように、突き合わせ面10c,10dが、ダンボール板材10の平面S方向と斜め(傾斜角度R=45度)に交差していることより、ダンボールダクト1の内圧に起因してコーナー部12の突き合わせ面10c,10d近傍に加わる力は矢線U,Uに示す状態となり、突き合わせ面10c,10dを引き離す方向に作用する力が軽減されるため、ダンボールダクト1の耐圧性、耐久性を高めることができる。従来のダンボールダクトの耐圧性は600Paが限界であったが、本実施形態の構造を採用することによりダンボールダクト1の耐圧性は1000Pa程度まで向上した。
【0042】
前述したように、ダンボールダクト1においては、ダンボール板材10の平面S方向と、合わせ辺10a,10bの突き合わせ面10c,10dと、の成す鋭角側の傾斜角度Rを四角筒状体11の内角(90度)の2分の1(45度)としたことにより、突き合わせ面10c,10d同士を面接触させることができるので、粘着テープ15に生じる剥離力が減少し、接合部分の密着性、気密性を高めることができ、ダンボールダクト1の耐圧性、耐久性の向上に有効である。
【0043】
また、ダンボールダクト1においては、コーナー部12において隣接する合わせ辺10a,10bの接合手段として、粘着テープ15を用いているため、極めて簡単な作業により、ダンボール板材10の合わせ辺10a,10b同士を、高気密、高強度の状態に接合することができる。
【0044】
図1中の複数の平行直線Lで示すように、ダンボールダクト1においては、ダンボール板材10を形成する厚紙波板10hの山谷の長手方向Mは、四角筒状体11の長手方向と交差しているため、外部からの押圧力などが加わったときに変形し難い。
【0045】
ダンボールダクト1においては、
図3(b),(c)に示すように、ダンボール板材10の折り曲げ部分(折り合わせ辺12a,12b,12c)の内側に、横断面がV字状をなすカット部14a,14b,14cを設けているため、ダンボール板材10を折り曲げ加工するとき、並びに、折り曲げ加工後におけるダンボール板材10の弾性的復元力を低下させることができる。
【0046】
従って、施工現場における折り曲げ加工作業が容易となり、内角(角度θ)が90度の正確な形状の四角筒状体11を形成することができ、折り曲げ加工後は、四角筒状体11の形状安定性、形状保持性が高まり、ダンボールダクト1の耐圧性、耐久性の向上に有効である。折り曲げ加工後の折り合わせ辺12a,12b,12c部分は強度が高く、変形し難くなるので、ダンボールダクトの耐圧性、耐久性の向上に有効である。
【0047】
ダンボールダクト1においては、
図3(b),(c)に示すように、カット部14a,14b,14cを形成するダンボール板材10のVカット面10e,10eをそれぞれ粘着テープ17で被覆したことにより、カット部14a,14b,14cの気密性、強度を高めることができるため、ダンボールダクト1の耐圧性、耐久性の向上に有効である。
【0048】
また、ダンボールダクト1においては、四角筒状体11を形成するダンボール板材10の端面10g及びその近傍も粘着テープ17で被覆しているため、ダンボール板材の素地が露出せず、複数のダンボールダクト1を長手方向に連結する場合、端面10g同士が当接する部分の気密性、強度を高めることができる。
【0049】
図2に示すように、ダンボールダクト1の外周において、合わせ辺10a,10b同士を接合して形成されたコーナー部12の形状は、折り合わせ辺12a,12b,12cの形状と同一であり、ダンボールダクト1の長手方向の両端開口部の形状も互いに同一であるため、複数のダンボールダクト1を長手方向に沿って直列に連結していく場合、四角筒状体11の軸心周りの位置合わせ、開口部同士の位置合わせが容易であり、施工性に優れている。
【0050】
次に、
図6~
図9に基づいて、その他の実施形態であるダンボールダクト2,3,4について説明する。なお、
図6~
図9に示すダンボールダクト2,3,4において、前述したダンボールダクト1と共通する部分は、
図1~
図5中の符号と同符号を付して説明を省略する。
【0051】
図6,
図7に基づいて、その他の実施形態であるダンボールダクト2及びその製造方法について説明する。
図6~
図7(a)は、
図7(b)に示すダンボールダクト2の製造工程を示している。
【0052】
図6(a)に示すように、ダンボールダクト2の原材料である2枚の四角形のダンボール板材20,20において、対向する一対の側縁部20x,20yの間の領域に、側縁部20x,20yと平行な1本の折り曲げ予定線23a,23a(仮想線)を設定する。
【0053】
次に、
図6(a),(b)に示すように、それぞれの折り曲げ予定線23a,23aに沿って、折り曲げ予定線23a,23aを中心とする、横断面がV字状のカット部24a,24aを設け、それぞれのVカット面を覆うように粘着テープ17を貼着する。また、側縁部20x,20yにそれぞれダンボール板材20の平面S方向と斜め(45度)に交差する突き合わせ面を設けて合わせ辺20a,20bを形成し、突き合わせ面に粘着テープ17を貼着するとともに、ダンボール板材20の端面20gにも粘着テープ17を貼着する。
【0054】
次に、
図6(b),
図7(a)に示すように、2枚のダンボール板材20,20のカット部24a,24aをそれぞれ同じ方向に向かって90度折り曲げ、一方のダンボール板材20の合わせ辺20a,20bに他方のダンボール板材20の合わせ辺20b,20aを当接させ、突き合わせ面同士を接触させて四角筒状体21とし、2か所にある合わせ辺20a,20bの接合部分及びこれらの近傍のダンボール板材20の外面にそれぞれ粘着テープ15を貼着すると、
図7(b)に示すようなダンボールダクト2が完成する。
【0055】
ダンボールダクト2は、2枚の四角形のダンボール板材20を用いて形成するので、ダンボールダクト2の口径が比較的大きい場合でも、1枚のダンボール材で形成するときよりも面積の小さな2枚のダンボール板材20に分けて施工現場へ搬入可能であり、施工性が良好である。
【0056】
次に、
図8に基づいて、その他の実施形態であるダンボールダクト3及びその製造方法について説明する。
図8はダンボールダクト3の製造工程を示している。
【0057】
図8(a)に示すように、ダンボールダクト3の原材料である四角形のダンボール板材30において、対向する一対の側縁部をダンボール板材30の平面S方向と斜め(45度)に交差するようにカットして突き合わせ面30e,30eを有する合わせ辺30a,30bを形成する。この後、突き合わせ面30e,30e及びこれらの近傍のダンボール板材30の内面(後述する四角筒状体31を形成したとき内側となる面)を覆うように粘着テープ17を貼着する。また、ダンボール板材30の端面30gにも粘着テープ17を貼着する。これにより、後述する四角筒状体31の側面の一つとなる四角形の板状部材33が形成される。なお、合わせ辺30a,30bを形成する突き合わせ面30e,30eと、ダンボール板材30の平面S方向との成す鋭角側の傾斜角度は45度である。
【0058】
この後、
図8(b)に示すように、4枚の板状部材33を合わせ辺30a,30bが隣り合うように対向させ、隣り合う板状部材33の合わせ辺30a,30bを当接させ、突き合わせ面30e,30e同士を接触させて四角筒状体31とし、4か所にある合わせ辺30a,30b及びこれらの近傍のダンボール板材30の外面にそれぞれ粘着テープ15を貼着すると、
図8(c)に示すようなダンボールダクト3が完成する。
【0059】
ダンボールダクト3は、4枚の四角形のダンボール板材30を用いて形成するので、ダンボールダクト3の口径がダンボールダクト2よりも大きい場合でも、1枚のダンボール材で形成するときよりも面積の小さなダンボール板材30に分けて施工現場へ搬入可能であり、施工性の悪化を回避することができる。
【0060】
次に、
図9に基づいて、その他の実施形態であるダンボールダクト4及びその製造方法について説明する。
図9はダンボールダクト4の製造工程を示している。
【0061】
図9は、
図3~
図4に示すダンボールダクト1の製造工程と同様の手順にて、六角筒状体41を有するダンボールダクト4を製造する工程を示している。
【0062】
図9(a)に示すように、四角形をなすダンボール板材40において対向する一対の側縁部に沿った部分を斜めにカットして形成された合わせ辺40a,40bの間に、合わせ辺40a,40bと平行をなす5列の横断面がV字状のカット部44a,44b,44c,44d,44eを設ける。また、カット部44a,44b,44c,44d,44eを形成するVカット面(突き合わせ面)及びその近傍のダンボール板材40の内面(六角筒状体41の内側となる面)にそれぞれ粘着テープ17を貼着する。さらに、合わせ辺40a,40bを形成する突き合わせ面に粘着テープ17を貼着するとともに、ダンボール板材40の端面40gにも粘着テープ17を貼着する。
【0063】
なお、ダンボール板材40の平面S方向と、V字状のカット部44a,44b,44c,44d,44eのVカット面(突き合わせ面)との成す鋭角側の傾斜角度(
図5の傾斜角度Rに相当する角度)は、六角筒状体41の内角(120度)の2分の1である60度である。
【0064】
次に、
図9(b)中に示すように、カット部44a,44b,44c,44d,44eをそれぞれ同じ方向に向かって60度ずつ折り曲げて、それぞれのVカット面(突き合わせ面)同士を接触させ、最後に、合わせ辺40a,40b及びこれらの近傍のダンボール板材40の外面に粘着テープ15を貼着すると、
図9(c)に示すような、六角筒状体41を備えたダンボールダクト4が完成する。
【0065】
なお、
図1~
図9に基づいて説明したダンボールダクト1,2,3,4は、本発明に係るダンボールダクトを例示するものであり、本発明に係るダンボールダクトは前述したダンボールダクト1,2,3,4に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明に係るダンボールダクトは、各種建築物の空調設備を構成する配管部分に使用されるダクトとして、建設業などの産業分野において広く利用することができる。
【符号の説明】
【0067】
1,2,3,4 ダンボールダクト
10,20,30,40 ダンボール板材
10a,10b,20a,20b,30a,30b,40a,40b 合わせ辺
10c,10d,30e 突き合わせ面
10e Vカット面
10f 外ライナ
10g,20g,30g,40g 端面
10h,10j 厚紙波板
10m 中ライナ
10x,10y,20x,20y 側縁部
11,21,31 四角筒状体
12 コーナー部
12a,12b,12c 折り合わせ辺
13a,13b,13c,23a 折り曲げ予定線
14a,14b,14c,24a,44a,44b,44c,44d,44e カット部
15,17 粘着テープ
16 アルミニウム箔
33 板状部材
41 六角筒状体
θ 角度
R 傾斜角度
S 平面
T 対向角度