(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】警報システム
(51)【国際特許分類】
G08B 21/00 20060101AFI20240618BHJP
G08G 1/052 20060101ALI20240618BHJP
G08G 1/056 20060101ALI20240618BHJP
G01S 17/93 20200101ALI20240618BHJP
【FI】
G08B21/00 U
G08G1/052
G08G1/056
G01S17/93
(21)【出願番号】P 2020006839
(22)【出願日】2020-01-20
【審査請求日】2022-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】591080678
【氏名又は名称】株式会社中電工
(73)【特許権者】
【識別番号】512085887
【氏名又は名称】株式会社バイステック
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大地 秀二
(72)【発明者】
【氏名】藤井 英郎
【審査官】久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-114183(JP,A)
【文献】特開2010-185769(JP,A)
【文献】特開2015-161968(JP,A)
【文献】特開2019-105550(JP,A)
【文献】英国特許出願公開第02386730(GB,A)
【文献】中国特許出願公開第110331639(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B 21/00
G08G 1/052
G08G 1/056
G01S 17/93
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路上の作業領域への車両の進入を警報する警報システムであって、
前記道路上の前記作業領域よりも上流側に向かって水平方向及び垂直方向にレーザー光を照射し、前記道路上を走行する車両の複数の計測点から反射した反射光を受光することによって当該車両の位置を計測する計測処理を繰り返し実行し、取得された車両の複数の計測点の位置情報をそれぞれ3次元座標で出力する3次元測域センサと、
前記3次元測域センサから出力された前記車両の複数の計測点の位置情報に含まれる高さ方向の座標を全て同じにして2次元データに変換し、変換後の位置情報に基づいて前記車両の前面部を推定する車両前面推定部と、
前記車両前面推定部で推定された前記車両の前面部の変化速度を当該車両の速度として算出する速度算出部と、
前記車両前面推定部で推定された前記車両の前面部の移動方向を当該車両の移動方向として算出する移動方向算出部と、
前記3次元測域センサから出力された前記車両の計測点の位置情報、前記速度算出部で算出された前記車両の速度及び前記移動方向算出部で算出された前記車両の移動方向に基づいて、前記車両が前記作業領域に誤進入する可能性が所定以上あるか否かを判定する判定部と、
前記判定部により前記車両の前記作業領域への誤進入の可能性が所定以上あると判定された場合に、前記作業領域内の作業者に対して警報を発する警報装置と
、
前記3次元測域センサによる計測範囲を車両が通過する時間を超える所定時間、前記3次元測域センサに距離計測を実行させ、当該3次元測域センサから出力された距離計測結果に基づいて、前記所定時間内における計測差分が第1の所定値以上発生するデータを除いて背景データを生成する背景データ生成部とを備え
、
前記車両前面推定部は、前記背景データ生成部で生成された前記背景データと、前記背景データ生成後に前記3次元測域センサから出力された距離計測データとの差分が第2の所定値以上である距離計測データを前記車両の計測点の位置情報として前記2次元データに変換するように構成されていることを特徴とする警報システム。
【請求項2】
請求項1に記載の警報システムにおいて、
前記3次元測域センサは、道路の幅方向をX方向とし、X方向に直交する水平方向をY方向とし、高さ方向をZ方向としたとき、計測点のX座標、Y座標、Z座標を出力するように構成され、
前記車両前面推定部は、前記3次元測域センサから出力された複数の計測点のZ座標を全て同じにするように構成されていることを特徴とする警報システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の警報システムにおいて、
前記高さ方向の座標を全て0にするように構成されていることを特徴とする警報システム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載の警報システムにおいて、
前記道路上に誤進入検出領域を仮想的に設定する誤進入検出領域設定部を備え、
前記判定部は、前記3次元測域センサで計測された前記車両を起点として、前記移動方向算出部により算出された移動方向に延びる仮想の延長線を設定したとき、当該延長線が前記誤進入検出領域に入らない場合には、前記車両が前記作業領域に誤進入する可能性が所定未満であると判定するように構成されていることを特徴とする警報システム。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載の警報システムにおいて、
前記速度算出部は、前記車両前面推定部で推定された前記車両の前面部の重心の変化速度を当該車両の速度とするように構成されていることを特徴とする警報システム。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか1つに記載の警報システムにおいて、
前記移動方向算出部は、前記車両前面推定部で推定された前記車両の前面部の重心の移動方向を当該車両の移動方向とするように構成されていることを特徴とする警報システム。
【請求項7】
請求項
1に記載の警報システムにおいて、
前記背景データ生成部は、前記背景データの生成後、前記3次元測域センサによる計測範囲を車両が通過する時間を超える所定時間、前記3次元測域センサに距離計測を実行させ、当該3次元測域センサから出力された距離計測結果に基づいて新たな背景データを生成し、前記背景データを前記新たな背景データに更新するように構成されていることを特徴とする警報システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両が走行する道路上の一部に区画された作業領域へ誤進入する車両が存在した場合に警報を発する警報システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両が走行する道路上の一部で例えば道路補修等を行う場合に、当該道路上の一部に作業領域を区画し、その作業領域内で作業者が各種作業を行っている。作業領域で作業を行っている間、道路の他の領域では一般車両が走行している。この一般車両が誤って作業領域へ進入するおそれがあり、そのような道路上の作業領域への車両の進入を警報する警報システムが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1の警報システムは、作業領域が設けられた車線を走行する車両の所定の位置における速度を、ドップラーレーダを用いて検出している。そして、検出された車両の速度が設定速度以上であれば、作業領域内の作業者に警報を発して作業者への避難を促すようになっている。このとき、ドップラーレーダは、作業領域が設けられた車線を走行する車両のみの速度を検出しており、他の車線を走る車両の速度は検出しないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、一般車両が走行する車線が作業領域外に複数ある場合や、作業領域外の車線を走行する一般車両が多い場合がある。このような場合であっても作業領域における作業の安全性を担保する必要があり、作業領域へ誤進入しようとする一般車両を早期にかつ的確に検出して作業者に警報を発したいという要求がある。
【0006】
しかしながら、特許文献1の場合、作業領域が設けられた車線を走行する車両のみを検出しているので、当該車線以外の車線を走行している一般車両の作業領域への誤進入が検出できない。さらに、特許文献1のドップラーレーダでは車両の速度のみを検出しているので、その車両の移動方向を取得することはできず、作業領域に向かって走行している車両であるか否か、即ち作業領域へ誤進入する可能性が高い車両であるか否かは判定できない。
【0007】
このことに対して例えば3次元測域センサを用いて車両の位置情報を経時的に複数回取得し、取得した複数の位置情報に基づいて車両の移動方向を得て、作業領域へ誤進入する可能性を判定する方法が考えられる。この方法では、車両の移動方向を得るにあたり、車両の前面部を正確に推定したいという要求がある。
【0008】
ここで、3次元測域センサは、近年、分解能が向上しつつあるが、特に遠距離の車両を計測しようとした際、計測点の間隔が広がって分解能が荒くなるので、車両の前面部と側面部との区別が難しく、車両が接近して計測点の間隔が狭くなった段階で車両の前面部の検出が正しく行われる場合がある。その結果、車両が接近したときに当該車両の移動方向が急に変わったかのような判断をシステムがしてしまい、誤検出の原因となるおそれがある。
【0009】
そこで、3次元測域センサの垂直方向の分解能を利用することで、車両の高さ方向に複数の計測点を得る方法が考えられる。これにより、遠距離の車両であっても前面部の推定精度が向上すると思われるが、車両の前面部は、例えばフロントガラスを見ると、一般的に上に行くほど後に位置するように傾斜しており、また、フロントバンパーと、その下部または上部とを比較した際、フロントバンパーが最も前に位置している。このため、高さ方向の計測点が車両の前後方向にずれてしまい、その前後方向のずれ量は車両の形によって異なるので、高さ方向に複数の計測点を得たとしても、前面部の推定精度が直ちに向上するものではない。
【0010】
加えて、高さ方向に複数の計測点を得ると、X、Y、Zの座標情報を持った計測点の数が数倍以上になり、演算処理の負荷が大幅に増加するという問題もある。
【0011】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、道路上に区画された作業領域へ誤進入する可能性の高い車両をシンプルな判定処理で高精度に判定可能にし、的確な警報を発することができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明では、3次元測域センサを使用することによって車両の高さ方向の複数の計測点を計測し、その計測結果を2次元データとして扱えるようにして演算処理の負荷の増大を抑制しながら、車両の前面部の推定精度を高めるようにした。
【0013】
第1の発明は、道路上の作業領域への車両の進入を警報する警報システムであって、前記道路上の前記作業領域よりも上流側に向かって水平方向及び垂直方向にレーザー光を照射し、前記道路上を走行する車両の複数の計測点から反射した反射光を受光することによって当該車両の位置を計測する計測処理を繰り返し実行し、取得された車両の複数の計測点の位置情報をそれぞれ3次元座標で出力する3次元測域センサと、前記3次元測域センサから出力された前記車両の複数の計測点の位置情報に含まれる高さ方向の座標を全て同じにして2次元データに変換し、変換後の位置情報に基づいて前記車両の前面部を推定する車両前面推定部と、前記車両前面推定部で推定された前記車両の前面部の変化速度を当該車両の速度として算出する速度算出部と、前記車両前面推定部で推定された前記車両の前面部の移動方向を当該車両の移動方向として算出する移動方向算出部と、前記3次元測域センサから出力された前記車両の計測点の位置情報、前記速度算出部で算出された前記車両の速度及び前記移動方向算出部で算出された前記車両の移動方向に基づいて、前記車両が前記作業領域に誤進入する可能性が所定以上あるか否かを判定する判定部と、前記判定部により前記車両の前記作業領域への誤進入の可能性が所定以上あると判定された場合に、前記作業領域内の作業者に対して警報を発する警報装置とを備えることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、3次元測域センサによる車両の計測点が水平方向だけでなく、垂直方向にも複数得られるので、計測対象の車両が遠方に存在していても、当該車両における計測点の数が増える。車両の位置の計測は繰り返し実行され、取得された位置情報が時系列に出力される。3次元測域センサから出力された車両の複数の計測点の位置情報を車両前面推定部が受け取ると、車両前面推定部は、車両の複数の計測点の位置情報に含まれる高さ方向の座標を全て同じにして2次元データに変換する。これにより、高さ方向に並んでいた計測点のそれぞれが同一平面上に表されるので、計測点が車影を濃く示すようになる。また、ある高さにおける水平方向の計測点が欠損していたとしても、その計測点を、別の高さにおける水平方向の計測点で補完することができる。よって、車両の前面部の推定精度が向上する。
【0015】
速度算出部は、車両前面推定部で推定された車両の前面部の変化速度を当該車両の速度として算出するので、算出された速度の精度も向上する。速度算出部では、例えば、時系列に並ぶ2つの位置情報と、それら位置情報の時間差とを用いて車両の速度を算出することができる。
【0016】
また、移動方向算出部は、車両前面推定部で推定された車両の前面部の移動方向を当該車両の移動方向として算出するので、算出された移動方向の精度も向上する。移動方向算出部では、例えば、時系列に並ぶ2つの位置情報を構成する座標を用いて車両の移動方向を算出することができる。
【0017】
そして、判定部は、車両の位置、速度及び移動方向に基づいて車両が作業領域に誤進入する可能性があるか否かを判定する。例えば、車両が作業領域から上流側へ所定距離以上離れていて遠い場合には、車両の移動方向が作業領域に向いていたとしても、その車両が直ちに作業領域に誤進入する可能性は低いので、誤進入する可能性が所定未満であると判定する。また、車両が作業領域に近くても、車両の移動方向が作業領域に向いていない場合には、その車両が作業領域に誤進入する可能性は低いので、誤進入する可能性が所定未満であると判定する。また、車両の移動方向が作業領域に向いていたとしても、車両の速度が遅く、作業領域に到達するのに要する時間が長時間である場合には、その車両が作業領域に誤進入する可能性は低いので、誤進入する可能性が所定未満であると判定する。このように判定される場合には、警報を発しないので作業者は作業を継続することができる。
【0018】
一方、車両の移動方向が作業領域に向いて、車両の速度が速く、しかも、車両と作業領域との距離が予め設定された距離よりも近い場合には、その車両が作業領域に誤進入する可能性が所定以上であると判定し、その場合には、警報装置が警報を発する。これにより、作業者を作業領域から退避させることができる。
【0019】
第2の発明は、前記3次元測域センサは、道路の幅方向をX方向とし、X方向に直交する水平方向をY方向とし、高さ方向をZ方向としたとき、計測点のX座標、Y座標、Z座標を出力するように構成され、前記車両前面推定部は、前記3次元測域センサから出力された複数の計測点のZ座標を全て同じにするように構成されていることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、高さ方向の複数の計測点のZ座標を全て同じにすることで、全ての計測点をXY平面上に表すことができ、演算処理が容易になる。
【0021】
第3の発明は、前記高さ方向の座標を全て0にするように構成されていることを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、高さ方向の座標を全て0にすることで、例えば全ての計測点をZ座標が0のXY平面上に表すことができ、演算処理が容易になる。
【0023】
第4の発明は、前記道路上に誤進入検出領域を仮想的に設定する誤進入検出領域設定部を備え、前記判定部は、前記3次元測域センサで計測された前記車両を起点として、前記移動方向算出部により算出された移動方向に延びる仮想の延長線を設定したとき、当該延長線が前記誤進入検出領域に入らない場合には、前記車両が前記作業領域に誤進入する可能性が所定未満であると判定するように構成されていることを特徴とする。
【0024】
すなわち、作業領域は数百mの長さにわたって区画されることがあるが、実際に誤進入が起こるのは作業領域の上流部分であり、この上流部分に仮想的に誤進入検出領域を設定しておくことで、作業領域の全体ではなく、狭い領域への誤進入の可能性を判断すれば済むようになる。この場合に、車両の移動方向に延びる延長線が誤進入検出領域に入るか否かを判定することで、判定処理の煩雑化が回避される。
【0025】
第5の発明は、前記速度算出部は、前記車両前面推定部で推定された前記車両の前面部の重心の変化速度を当該車両の速度とするように構成されていることを特徴とする。
【0026】
この構成によれば、車両の前面部の重心の変化速度を当該車両の速度とすることで、算出された車両の速度が適切なものになる。
【0027】
第6の発明は、前記移動方向算出部は、前記車両前面推定部で推定された前記車両の前面部の重心の移動方向を当該車両の移動方向とするように構成されていることを特徴とする。
【0028】
この構成によれば、車両の前面部の重心の移動方向を当該車両の移動方向とすることで、算出された車両の移動方向が適切なものになる。
【0029】
第7の発明は、前記3次元測域センサによる計測範囲(測域範囲)を車両が通過する時間を超える所定時間、前記3次元測域センサに距離計測を実行させ、当該3次元測域センサから出力された距離計測結果に基づいて、前記所定時間内における計測差分が第1の所定値以上発生するデータを除いて背景データを生成する背景データ生成部を備え、前記車両前面推定部は、前記背景データ生成部で生成された前記背景データと、前記背景データ生成後に前記3次元測域センサから出力された距離計測データとの差分が第2の所定値以上である距離計測データを前記車両の計測点の位置情報として前記2次元データに変換するように構成されていることを特徴とする。
【0030】
この構成によれば、3次元測域センサが所定時間、計測処理を実行したとき、その間に移動するのは本警報システムの利用場面を想定すると車両である可能性が高く、その背景に相当する部分は移動しない。したがって、3次元測域センサから出力される距離計測データのうち、上記所定時間内における計測差分を見たとき、背景部分では計測差分が殆ど発生せず、車両が通過した部分では計測差分が大きく発生するので、計測差分が大きく発生するデータを除くことで、背景部分を示す距離データ、即ち背景データを高精度に生成することができる。
【0031】
その後、3次元測域センサによる計測範囲に車両が進入すると、背景データと、その後に3次元測域センサから出力された距離計測データとを比較した際、差分が大きくなる距離計測データが存在することになる。差分が大きくなるのは、車両の進入によるものなので、差分が大きくなる距離計測データを車両の計測点の位置情報とみなして取り扱うことで、距離計測時に発生するノイズの影響を抑制できる。
【0032】
前記第1の所定値と、前記第2の所定値とは同じであってもよいし、異なっていてもよい。異なっている場合、第1の所定値の方を大きな値にしてもよいし、小さな値にしてもよい。また、前記第2の所定値は、例えば20m以上とすることができ、これにより、車両の判定精度が向上する。
【0033】
第8の発明は、前記背景データ生成部は、前記背景データの生成後、前記3次元測域センサによる計測範囲を車両が通過する時間を超える所定時間、前記3次元測域センサに距離計測を実行させ、当該3次元測域センサから出力された距離計測結果に基づいて新たな背景データを生成し、前記背景データを前記新たな背景データに更新するように構成されていることを特徴とする。
【0034】
すなわち、背景データの生成後、道路上に例えば三角コーンが置かれたり、車両が駐車して背景部分が変動することが考えられる。この場合に、本発明では、背景データを新たな背景データに更新することができるので、背景部分の変動に対応することができる。三角コーンや駐車車両は長い時間移動しないものなので、この移動しないものを背景部分とみなして新たな背景データを生成することができる。例えば一定時間移動しないものを背景部分とみなすことができる。この一定時間は、道路を走行する車両との区別が可能な時間であればよく、例えば数秒から数十秒程度の時間に設定することができる。また、背景データを更新する頻度としては、例えば数分に1回、数十分に1回程度にすることができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、3次元測域センサを使用することによって車両の高さ方向の複数の計測点を計測し、その計測結果を2次元データに変換して車両の前面部を推定することができるので、演算処理の負荷の増大を抑制しながら、車両の前面部の推定精度を高めることができる。そして、車両の前面部の推定結果に基づいて車両の速度、移動方向を高精度に算出できる。よって、作業領域へ誤進入する可能性の高い車両をシンプルな判定処理で高精度に判定して的確な警報を発することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明の実施形態1に係る警報システムの使用状態を説明する道路の平面図である。
【
図2】本発明の実施形態1に係る警報システムの概略構成を示す模式図である。
【
図4】3次元測域センサによる計測手法を説明する概念図である。
【
図5】トラックの位置を計測する場合の具体例を説明する図である。
【
図6】トラックの位置を計測して得られた複数の計測点を2次元データに変換して同一平面上に表した例を説明する図である。
【
図7】セダンタイプの乗用車の位置を計測する場合の具体例を説明する図である。
【
図8】セダンタイプの乗用車の位置を計測して得られた複数の計測点を2次元データに変換して同一平面上に表した例を説明する図である。
【
図9】車両の向きと代表点との関係を説明する図である。
【
図10】退避時間及び検出領域設定用ユーザーインターフェース画面を表示した例を示す図である。
【
図11】表示端末の画面上に設定用ユーザーインターフェース画面を表示した例を示す図である。
【
図12】本発明の実施形態1に係る警報システムの動作フローチャートである。
【
図13】本発明の実施形態2に係る警報システムの概略構成を示す模式図である。
【
図14】本発明の実施形態2に係る警報システムの動作フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0038】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る警報システム1の使用状態を説明する道路3の平面図である。この警報システム1は、道路3上に設けられて、道路3上に予め区画された作業領域5への一般車両7の進入を警報するためのものである。この道路3は、進行方向が同一の3つの車線9a、9b、9cを有し、進行方向に向かって例えば最も左側の車線9aに道路工事等を行うための作業領域5が区画されている。車線9a、9b、9cを走行する車両の走行方向は同一である。車線9a、9b、9cの間には、車線境界線11が描かれている。作業領域5の周囲には、当該作業領域5を区画するための複数の三角コーン13が配置されている。車線の数は2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。作業領域5は任意の場所に区画される。
【0039】
また、作業領域5内において、車両7の走行方向上流側の端部には、警報システム1の一部であるセンサユニット15が配置されている。センサユニット15は、作業領域5内における車両7の走行方向中間部に配置されていてもよいし、作業領域5から車両7の走行方向上流側に離れた所に配置されていてもよく、センサユニット15は作業領域5の外部に車両7の走行の邪魔にならないように配置することもできる。また、作業領域5内には、警報装置17と表示端末19とが配置されている。警報装置17も、作業領域5内における車両7の走行方向中間部に配置されていてもよい。また、表示端末19は、作業領域5内に配置しておく必要はなく、例えば作業領域5外に配置しておいてもよい。
【0040】
図2は、実施形態1に係る警報システム1の概略構成の一例を示す模式図である。本実施形態1の警報システム1は、センサユニット15と、警報装置17と、表示端末19と、電源供給部としてのバッテリ20とを備えている。バッテリ20の代わりに商用電源や発電機から出力される電力を使用してもよい。センサユニット15は、3次元測域センサ30と、カメラ31と、制御装置32とを備えている。
図3に示すように、制御装置32は防水ボックス29の内部に収容されている。防水ボックス29は三脚27上に取り付けられ、三脚27によって所定の高さに支持されている。防水ボックス29の上に3次元測域センサ30が配置され、その3次元測域センサ30の上にカメラ31が配置されている。制御装置32、3次元測域センサ30及びカメラ31の配置及び支持方法は上述した方法に限られるものではなく、任意の配置、支持方法とすることができ、例えば、防水ボックス29の中に配置する等が可能である。
【0041】
カメラ31は、例えば動画撮影が可能なビデオカメラ等で構成されている。カメラ31は、少なくとも3つの車線9a、9b、9cの作業領域5よりも上流側を撮像可能に設置されており、車線9a、9b、9cの他に、車線9a、9b、9cを走行している車両7も撮影可能になっている。すなわち、カメラ31は、後述する3次元測域センサ30の計測の対象となっている領域を含むように撮影領域が設定されている。カメラ31と制御装置32とが接続されており、カメラ31で撮影された画像は、制御装置32に入力されるようになっている。
【0042】
表示端末19は、
図10に示すように液晶ディスプレイ等からなる画面19aを有する携帯型情報端末であり、例えば、タブレット型携帯端末、スマートフォン、ノート型パーソナルコンピュータ等で構成することができる。制御装置32と表示端末19とは、無線通信または有線通信可能に構成されている。無線通信の場合、例えば公衆電話回線や、無線LAN等を利用することができる。無線通信及び有線通信を実現するためには、制御装置32と表示端末19との双方に、従来から周知の通信モジュールを内蔵しておけばよい。表示端末19には、カメラ31で撮影された画像が制御装置32を介して送信される。送信された画像は、後述するように表示端末19が有する画面19aに表示される。ユーザーインターフェース画面については後述する。
【0043】
警報装置17は、例えばスピーカや照明装置等で構成することができ、制御装置32に接続されている。制御装置32から動作信号が出力されると、警報装置17がスピーカの場合は警報音を作業領域5内に向けて発し、警報装置17が照明装置である場合には発光する。警報音や発光は、作業領域5内で各種作業を行っている作業者を作業領域5から退避させるためのものであり、十分な音量、発光量に設定されている。尚、警報装置17は、複数設けられていてもよい。また、警報装置17の一例としては、作業者のヘルメットに取り付ける個別警報ユニットがある。個別警報ユニットは、制御装置32からの動作信号を無線通信によって取得可能に構成されており、制御装置32からの動作信号を受信するとヘルメットを叩くように動作し、これによって音と振動を発生させ、作業者に報知することができる。
【0044】
3次元測域センサ30は、例えばいわゆる3D-LiDARが用いられる。3次元測域センサ30は、図示しないが、可視光外の波長のレーザー光を広範囲に照射するレーザー光照射部と、レーザー光照射部から照射されたレーザー光の物体からの反射光を受光する受光部と、受光部で受光されたレーザー光に基づいて物体の位置、3次元測域センサ30からの距離を計測する計測部とを備えており、各部の構成は従来から周知であるため、詳細な説明は省略する。3次元測域センサ30は、例えば水平方向の視野角が360°のもの、180°のもの、60°のもの等を用いることができる。3次元測域センサ30は、例えば垂直方向(鉛直方向)の視野角が10゜のもの、20゜のもの、30゜のもの等を用いることができる。
【0045】
本実施形態1では、
図1に示すように道路3上の作業領域5よりも上流側に向かってレーザー光を照射し、道路3上を走行する車両7から反射した反射光を受光することによって当該車両7の位置や3次元測域センサ30からの距離を計測することができればよいので、水平方向の視野角は狭くてもよい。垂直方向の視野角も、後述する車両の上端から下端までが視野範囲に入ればよいので、狭くてもよい。3次元測域センサ30の使用形態としては、例えば十分に広範囲な視野角を有する3次元測域センサ30を箱に収容して使用することで、道路3上の作業領域5よりも上流側にのみレーザー光を照射することもできる。
【0046】
上述したように、3次元測域センサ30の垂直方向の視野角は10°~30°程度のものがあるが、本実施形態では、垂直方向の視野角は狭くてもよく、水平方向を基準として上に1~3°、下に1~3°程度の狭い範囲のみ測定可能なものであってもよい。また、3次元測域センサ30の測域範囲(計測可能な範囲)の上限は、150m以上のものが好ましく、200mや300mの遠距離計測が可能なものがより好ましい。
【0047】
3次元測域センサ30は、物体から反射した反射光を受光することによって当該物体の位置を計測する計測処理を繰り返し実行するように構成されている。この計測処理の周期は、サンプリング周期、フレームレートと呼ばれており、3次元測域センサ30の機種ごとに予め設定されている場合や、ユーザー側で変更することができる場合がある。例えば、サンプリング周期は5Hz~30Hzの間で設定することができる。物体が車両7である場合には、3次元測域センサ30は、車両7の位置を計測する計測処理を繰り返し実行することができ、取得された位置情報は、制御装置32に出力される。このとき、取得された位置情報を3次元測域センサ30が有するバッファメモリ(図示せず)に一旦蓄積してから、時系列で制御装置32に出力するように構成することができる。取得された位置情報を3次元測域センサ30に一旦蓄積することをバッファリングと呼ぶ。動体以外の静止物の位置情報も同様にバッファリングされる。
【0048】
位置情報の具体例としては、座標情報である。3次元測域センサ30は、例えば受光部を原点として、物体を構成するある点にレーザー光が照射されたとき、その点から反射したレーザー光によってその点のX、Y、Zの3次元座標を計測処理によって求めることができる。
図4は、3次元測域センサ30による計測手法を説明する概念図であり、斜線が描かれた半円形は、3次元測域センサ30の水平方向の視野範囲を示している。この図では、便宜上、3次元測域センサ30の水平方向の視野範囲を180°としている。矢印Aは、3次元測域センサ30による計測が可能な距離を示している。車両7A~7Eが3次元測域センサ30の視野範囲に入っていると仮定して示している。
【0049】
ここで、3次元測域センサ30から照射されるレーザー光は上記視野範囲内で水平方向に走査されているので、1つの物体の異なる部分にレーザー光が照射されることがある。
図5に示すように、例えば車両(トラック)7に着目したとき、レーザー光が車両7に対して水平方向に離れた複数の部分にそれぞれ照射されるとともに、垂直方向(車両7の高さ方向)に離れた複数の部分にもそれぞれ照射されることになる。
【0050】
具体的には、
図5の車両7の黒丸で示す部分(計測点P)にレーザー光がそれぞれ照射された場合、各計測点Pからの反射光を3次元測域センサ30が受光して演算することにより、各計測点Pの座標を求めることができる。
図5に示す全ての計測点Pは、同じ計測タイミング(一周期)で計測される点群である。
【0051】
座標軸は、道路3の幅方向をX方向とし、X方向に直交する水平方向をY方向とし、高さ方向をZ方向として定義することができる。3次元測域センサ30は、計測点Pの位置情報として、X座標、Y座標、Z座標を出力する。Y方向は、車線が延びる方向と概ね一致している。
【0052】
車両7の複数の計測点Pは、X方向に互いに間隔あけて配置され、Y方向にも互いに間隔をあけて配置される。X方向及びY方向の計測点Pの間隔は、3次元測域センサ30の水平方向の分解能に依存するとともに、車両7の3次元測域センサ30に対する向きによっても依存するが、この実施形態1では、車両7が3次元測域センサ30から200m程度離れていても、当該車両7に対してX方向またはY方向に複数の計測点Pが配置されるように、3次元測域センサ30の水平方向の分解能が設定されている。尚、車両7の向きによっては、車両7の前面部のみに計測点Pが存在することもある。
【0053】
また、車両7の複数の計測点Pは、Z方向にも互いに間隔をあけて配置される。Z方向の計測点Pの間隔は、3次元測域センサ30の垂直方向の分解能に依存する。この実施形態1では、車両7が3次元測域センサ30から200m程度離れていても、当該車両7に対してZ方向に複数の計測点Pが配置されるように、3次元測域センサ30の垂直方向の分解能が設定されている。3次元測域センサ30の垂直方向の分解能を利用することで、車両7の高さ方向に複数の計測点Pを得ることができる。
【0054】
図2に示す制御装置32は、例えば小型のパーソナルコンピュータ等を含んで構成することができ、車両前面推定部32a、速度算出部32b、移動方向算出部32c、誤進入検出領域設定部32d、判定部32e及び記憶部32fを備えている。記憶部32fは、例えばRAM、ROM、ハードディスク装置、SSD(ソリッドステートドライブ)等で構成することができる。制御装置32は、記憶部32fに記憶されたプログラムに従って動作する。後述するように動作する車両前面推定部32a、速度算出部32b、移動方向算出部32c、誤進入検出領域設定部32d、判定部32eは、ソフトウェアまたはハードウェアで構成されていてもよいし、ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせで構成されていてもよい。
【0055】
制御装置32は、3次元測域センサ30から出力された各計測点の座標データに基づいて視野内に動体が存在するか否かを検出する。この手法は動体判定手法として従来から用いられている手法であり、原則として、3次元測域センサ30から所定時間間隔で出力される各測定点の座標データに変化がなければ動体が存在しないと判定し、変化があればそこに動体が存在すると判定する。動体の大きさもある程度推定することができる。本警報システム1は、道路3上に設けられるシステムであることから、制御装置32が動体と検出したものは、その殆どが車両7であると推定することができる。従って、3次元測域センサ30から出力される座標データは、車両7の位置情報以外のデータも含まれているが、制御装置32において動体と検出するに至った座標データと、それ以外の座標データとを区別し、動体と検出するに至った座標データを車両7の位置情報として使用することができる。また、明らかに車両7でないと判断できる動体は除外することができる。
【0056】
車両前面推定部32aは、3次元測域センサ30から出力された車両7の位置情報に基づいて車両7の前面部を推定する部分である。車両前面推定部32aには、2次元データ変換部32gが設けられている。2次元データ変換部32gは、3次元測域センサ30から出力された車両7の複数の計測点Pの位置情報に含まれる高さ方向の座標(Z座標)を全て同じにすることにより、3次元測域センサ30で得た3次元データを2次元データに変換する部分である。すなわち、2次元データ変換部32gは、3次元測域センサ30から出力された複数の計測点PのZ座標を全て同じにする処理を実行するように構成されており、具体的には、高さ方向の座標を全て0にする。車両7の複数の計測点PのZ座標を0にすると、
図6に示すように、複数の計測点PがXY平面上に表される。これにより、高さ方向に並んでいた計測点Pのそれぞれが同一平面上に表されることになるので、計測点Pが車影を濃く示すようになる。
【0057】
図7は、車両7がセダンタイプの乗用車である場合を示している。この場合も、同じ計測タイミングで複数の計測点Pが車両7に配置されることになり、計測点Pは、X方向、Y方向及びZ方向にそれぞれ互いに間隔をあけて配置される。2次元データ変換部32gは、3次元測域センサ30から出力された車両7の複数の計測点Pの位置情報に含まれる高さ方向の座標(Z座標)を全て同じにして2次元データに変換すると、
図8に示すように、複数の計測点PがXY平面上に表される。セダンタイプの乗用車の場合、車両7の前面部が傾斜していたり、フロントバンパがフロントガラスよりも前に位置していたりするので、車両7の前面部に配置される計測点Pが前後方向に多少ばらつく傾向にあるが、水方向に一列だけ測定点Pを配置した場合に比べれば、計測点Pが車影を濃く示すようになる。
【0058】
また、3次元測域センサ30で得た3次元データを2次元データに変換することで、ある高さにおける水平方向の計測点Pが欠損していたとしても、その計測点Pを、別の高さにおける水平方向の計測点Pで補完することができる。よって、以下に述べる手法による車両7の前面部の推定精度が向上する。
【0059】
次に、車両前面推定部32aが実行する車両7の前面部を推定するアルゴリズムの一例を説明する。上述したように、
図5及び
図7に示すように車両7の前面部の複数箇所に対して3次元測域センサ30からレーザー光が照射されて複数の計測点Pが配置され、また車両7の側面部の複数箇所に対して3次元測域センサ30からレーザー光が照射されて複数の計測点Pが配置されている場合、それぞれ、
図6及び
図8に示すような平面上の点群データを取得することができる。
【0060】
図6及び
図8に示す点群データからは、車両7の前面部の水平方向に並ぶ各計測点Pの座標と、車両7の側面部の水平方向に並ぶ各計測点Pの座標とを得ることができる。これを簡略化して
図9に示す。車両前面推定部32aでは、
図9の(A)に示すように、車両7の前面部の水平方向に並ぶ計測点P1~P4と、車両7の側面部の水平方向に並ぶ計測点P5~P10が得られたとする。計測点P1~P4の並ぶ方向と、計測点P5~P10の並ぶ方向とは異なることになり、計測点P1~P4の並ぶ方向に沿って延びる線S1と、計測点P5~P10の並ぶ方向に沿って延びる線S2とを特定することが可能になる。線S1は、計測点P1~P4のうち、最も多くの計測点を通る線として定義することができる。また、線S2は、計測点P5~P10のうち、最も多くの計測点を通る線として定義することができる。
【0061】
そして、一般的に車両7の全長は全幅よりも長いので、線S1と線S2の長さを比較し、長い方が車両7の側面部の点群であり、短い方が車両7の前面部の点群であると推定する。このような関係にならない場合もあるので、移動方向も加味して前面部を推定することもできる。これにより、より正確な前面部の推定が可能になる。
【0062】
図9の(A)に示す場合、計測点P1と計測点P4との間隔が車両7の前面部の水平方向の寸法に対応しているので、計測点Pと計測点Pの座標データから車両7の前面部の水平方向の寸法を概算で求めることができる。計測点P1と計測点P4の中央部が車両7の前面部の重心位置であると推定することができ、車両7の前面部の重心位置を座標で得ることができる。また、線S1と線S2の交点に最も近い計測点P4は、車両7の前側の角に対応する点であると推定することができ、車両7の前側の角または前側の角に最も近い点を座標で得ることができる。重心位置、前側の角、それらに最も近い計測点は、車両7の代表点とすることができる。代表点を求めるのが困難な場合には、車両7であると推定される1つの点群の中から3次元測域センサ30に最も近い計測点を代表点とすればよい。1つの車両7であると推定される点群は、同一方向に同一速度で動く点群である。
【0063】
図9の(B)は、車両7の向きが(A)で示す場合と反対である場合を示しており、この場合も、線S1と線S2とを求めることができる。また、
図9の(C)は、車両7が3次元測域センサ30に対して真正面から近づいている場合を示しており、この場合、車両7の側面部の座標データを得ることができないので、前面部の計測点P1~P4の座標データのみ得ることができる。このようにして、車両前面推定部32aは、車両7の代表点の時系列の位置情報を取得することができる。
【0064】
車両前面推定部32aは、車両7の代表点の時系列の位置情報を
図2に示す速度算出部32b及び移動方向算出部32cに出力する。速度算出部32bは、車両前面推定部32aで推定された車両7の代表点の時系列の位置情報に基づいて当該車両7の前面部の変化速度を算出し、この車両7の前面部の変化速度を当該車両7の速度とする部分である。車両7の位置情報として座標データが時系列で出力されているので、時系列に並ぶ座標データのうち、ある座標データ(第1座標データとする)と、次の座標データ(第2座標データとする)とによって車両7の移動距離(L)を算出することができる。また、第1座標データを取得した時と、第2座標データを取得した時の時間間隔(Δt)は既知である。従って、L/Δtによって車両7の速度を算出できる。速度算出部32bでは、代表点、即ち、車両前面推定部32aで推定した車両7の前面部の重心位置の座標に基づいて速度を算出してもよいし、車両7の前側の角の座標に基づいて速度を算出してもよい。
【0065】
移動方向算出部32cは、車両前面推定部32aで推定された車両7の代表点の時系列の位置情報に基づいて車両7の前面部の移動方向を算出し、この車両7の前面部の移動方向を当該車両7の移動方向とする部分である。この移動方向算出部32cも座標データを利用する。すなわち、第1座標データにより特定される点と、第2座標データで特定される点とを結ぶ直線を算出し、その直線の向きを車両7の移動方向とする。例えば、
図9の(A)、(B)に示すように、線S2を求めた場合、線S2の延びる方向を車両7の移動方向とすることもできる。尚、時間的に先に得られた点から後に得られた点に向けて車両7が進んでいると推定する。移動方向算出部32cでは、代表点、即ち、車両前面推定部32aで推定した車両7の前面部の重心位置の座標に基づいて移動方向を算出してもよいし、車両7の角の座標に基づいて移動方向を算出してもよい。
【0066】
図2に示す誤進入検出領域設定部32dは、道路3上に誤進入検出領域D(
図1及び
図4に示す)を仮想的に設定する部分である。誤進入検出領域Dは、3次元測域センサ30の設置位置を中心とした半径Rの円内の領域である。誤進入検出領域設定部32dは、例えば
図10に示す退避時間及び検出領域設定用ユーザーインターフェース40を生成し、表示端末19の画面19a上に表示させる。退避時間及び検出領域設定用ユーザーインターフェース40には、退避時間を変更するための退避時間変更領域41と、誤進入検出領域Dの大きさを変更するための検出領域変更領域42とが設けられている。退避時間変更領域41は、後述するが、車両7が誤進入検出領域Dに到達すると推定された場合、その何秒前に警報を発するかを設定するための領域であり、例えば2秒、3秒、4秒、…等のようにユーザーが選択可能となっている。検出領域変更領域42は、誤進入検出領域Dの半径R(
図4に示す)を変更するための領域であり、例えば2m、3m、4m、…等のようにユーザーが選択可能となっている。つまり、誤進入検出領域設定部32dは、誤進入検出領域Dの大きさをユーザーが任意に変更可能に構成されており、
図1に示すように、3次元測域センサ30を作業領域5の上流側の端部近傍に設置している場合、作業領域5の上流側をカバーすることができるように、誤進入検出領域Dの大きさ設定しておけばよい。
【0067】
図2に示す判定部32eは、3次元測域センサ30から出力された車両7の位置情報、具体的には、車両前面推定部32aで得られた代表点の位置情報と、速度算出部32bで算出された車両7の速度と、移動方向算出部32cで算出された車両7の移動方向とに基づいて、車両7が作業領域5に誤進入する可能性が所定以上あるか否かを判定する部分である。判定部32eは、代表点の位置情報、車両7の速度及び移動方向と、それら以外の情報とを利用して判定してもよい。
【0068】
例えば、車両7が作業領域5から上流側へ所定距離以上離れていて遠い場合には、車両7の移動方向が作業領域5に向いていたとしても、その車両が直ちに作業領域に誤進入する可能性は低いので、誤進入する可能性が所定未満であると判定する。また、車両7が作業領域5に近くても、車両7の移動方向が作業領域に向いていない場合には、その車両7が作業領域5に誤進入する可能性は低いので、誤進入する可能性が所定未満であると判定する。また、車両7の移動方向が作業領域5に向いていたとしても、車両7の速度が遅く、作業領域5に到達するのに要する時間が上記退避時間よりも長い場合には、その車両7が作業領域5に誤進入する可能性は低い状況なので、誤進入する可能性が所定未満であると判定する。このように判定される場合には、警報装置17に対して動作信号を出力しない。
【0069】
一方、車両7の移動方向が作業領域5に向いていて、その車両7の速度が速く、しかも、その車両7と作業領域5との距離が近い場合には、その車両7が作業領域5に誤進入する可能性が所定以上であると判定する。この判定時には、上記退避時間を用いるようにし、車両7が退避時間内に作業領域5に到達すると予測された時点でその車両7が作業領域5に誤進入する可能性が所定以上であると判定するように構成されている。車両7が作業領域5に誤進入する可能性が所定以上であると判定した場合には、警報装置17に対して動作信号を出力する。
【0070】
次に、判定部32eによる判定アルゴリズムの一例について説明する。
図4に示すように、3次元測域センサ3で計測された車両7A~7Eが存在していた場合、判定部32eは、まず、各車両7A~7Eを起点として、移動方向算出部32cにより算出された移動方向に延びる仮想の延長線K1~K7をそれぞれ生成する。車両7Aの移動方向に延びる仮想線K1、車両7Dの移動方向に延びる仮想線K4及び車両7Eの移動方向に延びる仮想線K5は、それぞれ誤進入検出領域Dに入らないので、現時点では、車両7A、7D、7Eについては、作業領域5に誤進入する可能性が所定未満であると判定する。一方、車両7Bの移動方向に延びる仮想線K2及び車両7Cの移動方向に延びる仮想線K3は、それぞれ誤進入検出領域Dに入るので、現時点では、車両7B、7Cについては、作業領域5に誤進入する可能性が所定以上であると判定する。
【0071】
判定部32eは、3次元測域センサ30から出力された位置情報を持つ車両7に識別情報を付与するように構成されている。
図5や
図7に示すように、走行している車両7を3次元測域センサ30で計測すると、判定部32eでは、点群が計測するごとに移動していると判定することができ、これら点群を車両7と推定することができる。この車両7と推定される点群で構成されるデータに対して判定部32eが識別情報を付与する。車両7と推定される点群で構成されるデータが複数存在すれば、それぞれに識別情報を付与する。識別情報とは、一のデータを他のデータと区別するための情報であり、例えば数字、記号、文字、図形等のうち、1つで構成されていてもよいし、複数を組み合わせて構成されていてもよい。
【0072】
(警報システム1の動作)
次に、上述のように構成された警報システム1の運用時の動作について
図12に示すフローチャートに基づいて説明する。警報システム1の運用前の設定時には、
図1に示すように警報システム1を設置するとともに、
図10に示す退避時間及び検出領域設定用ユーザーインターフェース40上で退避時間及び誤進入検出領域Dの大きさを設定する。
【0073】
設定時には、
図11に示す設定用ユーザーインターフェース50を表示端末19に表示させることができる。設定用ユーザーインターフェース50には、スタートボタン50a、モニターボタン50b、警報テストボタン50c、設定ボタン50d及び終了ボタン50eが設けられている。さらに、設定用ユーザーインターフェース50には、3次元測域センサ30で取得された計測データに基づいて生成された俯瞰画像を表示する俯瞰画像表示領域51と、カメラ31で撮像した画像を表示するカメラ画像表示領域52とが設けられている。
【0074】
スタートボタン50aは、警報システム1を稼働状態にする際に操作するボタンである。モニターボタン50bは、警報システム1を作動状態にして俯瞰画像表示領域51に俯瞰画像を表示させたり、カメラ画像表示領域52にカメラ画像を表示させるモードに切り替えるためのボタンである。警報テストボタン50cは、警報装置17をユーザーが作動させて警報装置17の動作確認を行うためのボタンである。設定ボタン50dは、例えば
図10に示す退避時間及び検出領域設定用ユーザーインターフェース40を表示端末19に表示させるためのボタンである。終了ボタン50eは、システムを終了する際に操作するボタンである。
【0075】
俯瞰画像表示領域51には、3次元測域センサ30までの距離を表示する距離表示部51aが設けられている。俯瞰画像表示領域51には、3次元測域センサ30の計測中心を示す中心線51bと、水平方向の計測範囲を示す計測範囲指示線51cとが描かれるようになっている。計測範囲指示線51cは、
図10に示す退避時間及び検出領域設定用ユーザーインターフェース40上で設定された検出領域が反映されるようになっている。俯瞰画像表示領域51に示す枠線54は、作業領域5に誤進入する可能性が所定以上であると判定した車両を示している。
【0076】
カメラ画像表示領域52には、カメラ画像がほぼリアルタイムで表示されるようになっている。カメラ画像表示領域52には、3次元測域センサ30の垂直方向の計測範囲が示されている。すなわち、グレーに塗りつぶされた領域は計測範囲外であり、グレーに塗りつぶされていない範囲が3次元測域センサ30の垂直方向の計測範囲となっている。3次元測域センサ30の垂直方向の計測範囲の表示方法はこの表示例に限られるものではなく、どのような表示方法であってもよい。カメラ画像表示領域52に示す枠線55は、作業領域5に誤進入する可能性が所定以上であると判定した車両を示している。
【0077】
設定用ユーザーインターフェース50により各種設定を行った後、警報システム1の運用時には、
図12に示すフローチャートのステップSA1に進む。ステップSA1では、3次元測域センサ30による計測処理を当該3次元測域センサ30のサンプリング周期で実行する。取得された位置情報は3次元測域センサ30にバッファリングされる。ステップSA2では、3次元測域センサ30の計測データである各点の座標データが制御装置32に出力される。このとき、全ての情報を出力してもよいし、必要な情報のみ出力するようにしてもよい。
【0078】
ステップSA3では、制御装置32が動体判定を行う。3次元測域センサ30から出力される座標データに基づいて当該3次元測域センサ30のサンプリング周期ごとに動体判定を行うことができる。ステップSA3において動体と判定される物は、かなり高い確度で車両7であると推定できるので、車両7と推定される点群で構成されるデータに対して判定部32eが識別情報を付与する。例えば、
図4に示すように、車両と推定される点群データが5つ存在していれば、「7A」、「7B」、「7C」、「7D」、「7E」のように識別情報を付与することができる。
【0079】
その後、ステップSA4では、車両前面推定部32aが車両7の前面部を推定する。このとき、3次元測域センサ30から出力された3次元データを2次元データ変換部32gが2次元データに変換し、車両前面推定部32aが車両7の前面部を推定し、前面部の重心、幅方向中央部に最も近い点、車両7の前側の角に最も近い点等を当該車両7の代表点とする。代表点を求めた後、ステップSA5では、速度算出部32bが代表点に基づいて車両7の速度(秒速)を算出し、また、移動方向算出部32bが代表点に基づいて車両7の移動方向を算出する。
【0080】
ステップSA6では、退避距離を算出する。退避距離は、
図10に示す設定用ユーザーインターフェース40上で設定された退避時間と、速度算出部32bで算出された車両7の速度とに基づいて算出する。算出式は以下の通りである。
【0081】
退避距離=退避時間(秒)×車両の速度(秒速)
ステップSA7では、
図4に示す移動方向延長線K1~K5を生成し、移動方向延長線K1~K5が誤進入検出領域D内に入るか否かを判定する。このとき、車両7A~7Eの任意の1台のみを対象にして移動方向延長線が誤進入検出領域D内に入るか否かを判定する。ステップSA7で移動方向延長線が誤進入検出領域D内に入ると判定された場合、ステップSA8に進み、当該車両7の座標データと誤進入検出領域Dの中心の座標データとの距離(車両7の距離)を算出する。誤進入検出領域Dの中心の座標データは事前に設定し、制御装置32に入力しておけばよい。そして、車両7の距離が車両7のステップSA6で算出した退避距離以下であるか否かを判定する。車両7の距離が車両7のステップSA6で算出した退避距離以下であると判定された場合、当該車両7の作業領域5への誤進入の可能性が所定以上あるということである。ステップSA7、SA8は、判定部32eによって行われる。ステップSA8でYESと判定された場合にはステップSA9に進み、警報装置17に対して動作信号を出力し、警報装置17は警報を発する。これにより、作業者を作業領域5から退避させることができる。次いで、ステップSA10に進み、警報を発した車両7の識別情報を記憶する。尚、ステップSA7、SA8は、入れ替わっていてもよい。
【0082】
このようにして任意の1台の車両7について作業領域5への誤進入の可能性を判定した後、ステップSA14において全ての車両7の判定が終了したか否かを判定する。ステップSA14において識別情報が付与された車両7の全てについて判定が終了していない場合には、ステップSA15に進んで他の車両7についても同様に作業領域5への誤進入の可能性を判定する。
【0083】
一方、ステップSA7においてNOと判定されて移動方向延長線が誤進入検出領域D内に入らないと判定された場合にはステップSA11に進む。また、ステップSA8においてNOと判定されて車両7の距離が車両7のステップSA6で算出した退避距離よりも長い場合にもステップSA11に進む。ステップSA11では、判定の対象となった車両7が発報済の車両(前回のフローで警報を発生させた車両)であるか否かを判定する。これはステップSA10で記憶された識別情報に基づいて判定することができ、初回のフローではNOとなるので、ステップSA14に進む。
【0084】
ステップSA11でYESと判定されるとステップSA12に進む。ステップSA12では、警報装置17に対する動作信号の出力を停止し、警報を解除する。その後、ステップSA13に進み、当該車両7の識別情報を削除してからステップSA14に進む。このフローを繰り返し行う。
【0085】
尚、3次元測域センサ30と制御装置32とは同期させてもよいし、同期させなくてもよい。例えば、ステップSA1の計測処理及びステップSA2の計測データ出力処理は、3次元測域センサ30が行うものであることから、制御装置32による処理とは独立して実行することができる。この場合、制御装置32は、3次元測域センサ30から出力される計測データを適当なタイミングで受け取り、ステップSA3以降の処理を行うことができる。
【0086】
(実施形態1の作用効果)
以上説明したように、この実施形態1によれば、3次元測域センサ30による車両7の計測点Pが水平方向だけでなく、垂直方向にも複数得られるので、計測対象の車両7が遠方に存在していても、当該車両7における計測点Pの数が増える。車両7の位置の計測は繰り返し実行され、3次元測域センサ30から出力された車両7の複数の計測点Pの位置情報を車両前面推定部32aが受け取ると、車両前面推定部32aの2次元データ変換部32gは、車両7の複数の計測点Pの位置情報に含まれる高さ方向の座標を全て同じにして2次元データに変換する。これにより、高さ方向に並んでいた計測点Pのそれぞれが同一平面上に表されるので、計測点Pが車影を濃く示すようになる。また、ある高さにおける水平方向の計測点Pが欠損していたとしても、計測点Pで補完することができるので、車両7の前面部の推定精度が向上する。
【0087】
そして、判定部32eは、車両7の位置、速度及び移動方向に基づいて車両7が作業領域5に誤進入する可能性があるか否かを判定することができるので、作業領域5へ誤進入する可能性の高い車両7をシンプルな判定処理で高精度に判定して的確な警報を発することができる。
【0088】
また、道路3上に誤進入検出領域Dを仮想的に設定することで、作業領域5の全てに対して誤進入の判定を行う必要が無くなり、作業領域5よりも狭い範囲に対して誤進入の判定を行えばよく、判定時の負荷を軽減することができる。また、車両7の移動方向に延びる延長線K1~K5が誤進入検出領域Dに入るか否かを判定すればよいので、判定処理をより一層シンプルにすることができる。
【0089】
(実施形態2)
図13及び
図14は、本発明の実施形態2に係る警報システム1の構成及び動作を示すものである。この実施形態2では、背景データを取得し、この背景データを利用して動体の有無を判断するように構成されている点で実施形態1のものと異なっており、他の部分は実施形態1と同じであるため、以下、実施形態1と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分について詳細に説明する。
【0090】
図13に示すように、制御装置32には、3次元測域センサ30の視野範囲に存在する背景部分を取得して背景データを生成する背景データ生成部32hが設けられている。背景部分は、3次元測域センサ30からの距離が長時間変化しない一方、車両7は3次元測域センサ30の視野範囲に存在する時間が短く、しかも動いている。これを利用して、背景部分を示すデータと、車両を示すデータとの区別を行うことができる。
【0091】
具体的には、背景データ生成部32hは、まず、3次元測域センサ30による計測範囲(測域)を車両7が通過する時間を超える所定時間、3次元測域センサ30に距離計測を実行させる。3次元測域センサ30による計測範囲は既知であり、3次元測域センサ30によって計測可能な道路3の長さを算出できる。また、この道路3を走行する一般的な車両7の速度を事前に計測しておくことができる。3次元測域センサ30によって計測可能な道路3の長さと、車両7の速度とに基づいて、3次元測域センサ30による計測範囲を車両7が通過する時間を算出できる。算出した時間よりも長い時間を上記所定時間とすることができる。背景データ生成部32hは、所定時間計測を実行した3次元測域センサ30から出力された距離計測結果に基づいて、当該所定時間内における計測差分が第1の所定値以上発生するデータを除いて背景データを生成する。
【0092】
すなわち、3次元測域センサ30が所定時間、計測処理を実行したとき、その間に測域内を移動する物体は本警報システム1の利用場面を想定すると車両7である可能性が高く、その背景に相当する部分は移動しない。したがって、3次元測域センサ30から出力される所定時間内における計測差分を見たとき、背景部分では計測差分が殆ど発生せず、車両7が通過した部分では計測差分が大きく発生するので、計測差分が大きく発生するデータを除くことで、背景部分を示す距離データ、即ち背景データを高精度に生成することができる。第1の所定値は、背景部分を示すデータと、車両7を示すデータとの区別が可能な値であればよい。
【0093】
車両前面推定部32aの2次元データ変換部32gは、背景データ生成部32hで生成された背景データと、背景データ生成後に3次元測域センサ30から出力された距離計測データとの差分が第2の所定値以上である距離計測データを車両7の計測点の位置情報として2次元データに変換するように構成されている。
【0094】
つまり、背景データ生成部32hによる背景データの生成後、3次元測域センサ30による計測範囲に車両7が進入すると、背景データ生成部32hで生成された背景データと、その後に3次元測域センサ30から出力された距離計測データとを比較した際、差分が大きくなる距離計測データが存在することになる。差分が大きくなるのは、車両7の進入によるものなので、差分が大きくなる距離計測データを車両7の計測点Pの位置情報とすることで、距離計測時に発生するノイズの影響を抑制できる。
【0095】
前記第1の所定値と、前記第2の所定値とは同じであってもよいし、異なっていてもよい。異なっている場合、第1の所定値の方を大きな値にしてもよいし、小さな値にしてもよい。また、前記第2の所定値は、例えば20m以上とすることができ、これにより、車両の判定精度が向上する。
【0096】
以下、実施形態2の警報システム1の動作を
図14に示すフローチャートに基づいて説明する。ステップSB1、SB2は、
図12に示すフローチャートのステップSA1、SA2と同じである。ステップSB3では、背景データ生成部32hが上述したように背景データを生成する。その後、ステップSB4に進み、背景データ生成後に3次元測域センサ30から出力された距離計測データを読み込む。この距離計測データは、3次元座標データである。
【0097】
次いでステップSB5に進み、ステップSB3で生成された背景データと、ステップSB4で読み込んだ距離計測データとの差分を計算する。差分を計算した後、ステップSB6に進む。ステップSB6では、ステップSB5の計算結果に基づいて制御装置32が動体判定を行う。ステップSB3で生成された背景データと、ステップSB4で読み込んだ距離計測データとの差分が上記第2の所定値以上である距離計測データを持つ部分が動体であると判定する。そして、動体と判定される物に対して識別情報を付与する。
【0098】
ステップSB7では、背景データを更新する。すなわち、背景データ生成部32hは、ステップSB3で背景データを生成した後、3次元測域センサ30による計測範囲を車両7が通過する時間を超える所定時間、3次元測域センサ30に距離計測を実行させ、当該3次元測域センサ30から出力された距離計測結果に基づいて新たな背景データを生成し、ステップSB3で生成した背景データを、新たな背景データに更新するように構成されている。
【0099】
例えば、警報システム1の運用中、ステップSB3において背景データを生成した後、道路3上に例えば三角コーンが置かれたり、車両が駐車して背景部分が変動することが考えられる。この場合に、本実施形態2では、背景データを新たな背景データに更新することができるので、背景部分の変動に対応することができる。三角コーンや駐車車両は長い時間(数分以上)移動しないので、この移動しないものを背景部分とみなして新たな背景データを生成することができる。例えば一定時間移動しないものを背景部分とみなすことができる。この一定時間は、通行する車両7との区別が可能な時間であればよく、例えば数秒から数十秒、または数分程度の時間に設定することができる。また、背景データを更新する頻度としては、例えば数分に1回、数十分に1回程度にすることができる。
【0100】
ステップSB8では、車両前面推定部32aが車両7の前面部を推定する。このとき、車両前面推定部32aの2次元データ変換部32gは、ステップSB3で生成された背景データと、ステップSB4で読み込んだ距離計測データとの差分が第2の所定値以上である距離計測データを車両7の計測点の位置情報として2次元データに変換する。前面部の推定アルゴリズムは実施形態1と同じである。その後のステップSB9~SB19は、
図12に示すフローチャートのステップSA5~SA15と同じである。
【0101】
実施形態2によれば、実施形態1と同様な作用効果を奏することができるとともに、背景データとの差分に基づいて車両7を判定することができるので、距離計測時に発生するノイズの影響を抑制できる。
【0102】
また、次回以降の3次元計測データを比較する場合、動体を抽出した付近を中心に局所的に探索することで、移動体抽出処理時間を、毎回全3次元背景データと差分を計算するより高速に処理することが可能となる。ただし、警報システム1の設置位置を中心として、遠いエリア(例えば10~20m離れたエリア)は、3次元背景データとの差分処理を行うようにしてもよい。
【0103】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0104】
以上説明したように、本発明に係る警報システムは、車両が走行する道路上の一部で例えば道路補修等を行う場合に利用することができる。
【符号の説明】
【0105】
1 警報システム
17 警報装置
30 3次元測域センサ
32a 車両前面推定部
32b 速度算出部
32c 移動方向算出部
32d 誤進入検出領域設定部
32e 判定部
32g 2次元データ変換部
32h 背景データ生成部