(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】トランスデューサ、力覚センサ及びセンサユニット
(51)【国際特許分類】
G01L 1/14 20060101AFI20240618BHJP
G01L 1/12 20060101ALI20240618BHJP
G01L 5/00 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
G01L1/14 B
G01L1/12
G01L5/00 101Z
(21)【出願番号】P 2023573772
(86)(22)【出願日】2022-01-14
(86)【国際出願番号】 JP2022001243
(87)【国際公開番号】W WO2023135771
(87)【国際公開日】2023-07-20
【審査請求日】2024-03-18
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 1.令和3年12月27日に論文(Diguet G,et al.,Magnetic behavior of magneto-rheological foam under uniaxial compression strain,Smart Materials and Structures,volume 31,number 2,February 2022,pp 025018-025027)が公開されたウェブサイト(https://doi.org/10.1088/1361-665X/ac3fc8)
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(73)【特許権者】
【識別番号】597124316
【氏名又は名称】学校法人東北工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】デイゲ ジルダス
(72)【発明者】
【氏名】フロメル ヨーク エツカート
(72)【発明者】
【氏名】大▲高▼ 剛一
(72)【発明者】
【氏名】室山 真徳
【審査官】公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-267066(JP,A)
【文献】特開平04-118538(JP,A)
【文献】特開2019-019922(JP,A)
【文献】国際公開第2015/130610(WO,A1)
【文献】米国特許第05814999(US,A)
【文献】特表2008-523385(JP,A)
【文献】国際公開第2019/049888(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/12
G01L 1/14
G01L 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板上に設けられた変形層と、前記変形層内に設けられた平面コイルと、を備え、
前記変形層は、非磁性材料と、前記変形層中に分散された磁性粒子と、を有する、トランスデューサ。
【請求項2】
前記変形層は、内部に空隙をさらに有する、請求項1に記載のトランスデューサ。
【請求項3】
前記平面コイルはアモルファス磁性合金を含む、請求項1または2に記載のトランスデューサ。
【請求項4】
前記変形層は、前記平面コイルの軸線方向から平面視して前記平面コイルに囲まれる領域内に、前記平面コイルの前記基板から最も離れた第1端部より前記基板に近い側にある第1領域と、前記第1端部より前記基板から遠い側にある第2領域と、を備える、請求項1に記載のトランスデューサ。
【請求項5】
前記変形層は、内部に空隙をさらに有し、前記第2領域における前記空隙の空隙率は、前記第1領域における空隙率よりも高い、請求項4に記載のトランスデューサ。
【請求項6】
前記第2領域における前記磁性粒子の密度は、前記第1領域における磁性粒子の密度よりも高い、請求項4または5に記載のトランスデューサ。
【請求項7】
複数のトランスデューサを備え、
前記複数のトランスデューサのそれぞれは、請求項1~6のいずれか一項に記載のトランスデューサであり、
前記複数のトランスデューサのそれぞれは、前記複数のトランスデューサのそれぞれに作用した力を、前記複数のトランスデューサのそれぞれの前記平面コイルのインダクタンス
の変化及び/又はインピーダンスの変化で測定する、力覚センサ。
【請求項8】
前記複数のトランスデューサは、アレイ状に配置され、
前記複数のトランスデューサのそれぞれの前記平面コイルのインダクタンスの変化
及び/又はインピーダンスの変化を基に、前記力覚センサに作用した力の分布を計測する、請求項7に記載の力覚センサ。
【請求項9】
面内に並ぶコイル領域と凸部領域とを有し、
前記コイル領域は、請求項1~6のいずれか一項に記載のトランスデューサを備え、
前記凸部領域は、前記トランスデューサの前記基板と同一面内に広がる第2基板と、前記第2基板の表面で構成された基準面に対して第1方向に突出する複数の凸部を有する連続した磁歪膜と、を備える、センサユニット。
【請求項10】
前記複数の凸部のうち少なくとも一つの第1凸部は、前記磁歪膜の裏面と前記基準面との間に充填された絶縁体、を備え、
前記複数の凸部のうち少なくとも一つの第2凸部は、前記磁歪膜の裏面と前記基準面との間に空間を有し、前記磁歪膜を貫通する孔を有し、
前記複数の凸部のうちの少なくとも一つの第3凸部は、前記磁歪膜の裏面と前記基準面との間に空間を有し、前記磁歪膜を貫通する孔を有さず、
前記第1凸部の前記第1方向の高さは、前記第2凸部および前記第3凸部の前記第1方向の高さより高い、請求項9に記載のセンサユニット。
【請求項11】
基板と、前記基板上に設けられた変形層と、前記変形層内に設けられたアモルファス磁性合金を含むコイルと、を備え、
前記変形層は、非磁性材料と、前記変形層中に分散された磁性粒子と、を有する、トランスデューサ。
【請求項12】
前記変形層は、内部に空隙をさらに有する、請求項11に記載のトランスデューサ。
【請求項13】
前記コイルは、平面コイルである、請求項11または12に記載のトランスデューサ。
【請求項14】
前記コイルは、螺旋コイルである、請求項11または12に記載のトランスデューサ。
【請求項15】
前記変形層は、前記コイルの軸線方向から平面視して前記コイルに囲まれる領域内に、前記コイルの前記基板から最も離れた第1端部より前記基板に近い側にある第1領域と、前記第1端部より前記基板から遠い側にある第2領域と、を備える、請求項13または14に記載のトランスデューサ。
【請求項16】
前記変形層は、内部に空隙をさらに有し、前記第2領域における前記空隙の空隙率は、前記第1領域における空隙率よりも高い、請求項15に記載のトランスデューサ。
【請求項17】
前記第2領域における前記磁性粒子の密度は、前記第1領域における磁性粒子の密度よりも高い、請求項15または16に記載のトランスデューサ。
【請求項18】
複数のトランスデューサを備え、
前記複数のトランスデューサのそれぞれは、請求項11~17のいずれか一項に記載のトランスデューサであり、
前記複数のトランスデューサのそれぞれは、前記複数のトランスデューサのそれぞれに作用した力を、前記複数のトランスデューサのそれぞれの前記コイルのインダクタンス
の変化及び/又はインピーダンスの変化で測定する、力覚センサ。
【請求項19】
前記複数のトランスデューサは、アレイ状に配置され、
前記複数のトランスデューサのそれぞれの前記コイルのインダクタンスの変化
及び/又はインピーダンスの変化を基に、前記力覚センサに作用した力の分布を計測する、請求項18に記載の力覚センサ。
【請求項20】
面内に並ぶコイル領域と凸部領域とを有し、
前記コイル領域は、請求項11~17のいずれか一項に記載のトランスデューサを備え、
前記凸部領域は、前記トランスデューサの前記基板と同一面内に広がる第2基板と、前記第2基板の表面で構成された基準面に対して第1方向に突出する複数の凸部を有する連続した磁歪膜と、を備える、センサユニット。
【請求項21】
前記複数の凸部のうち少なくとも一つの第1凸部は、前記磁歪膜の裏面と前記基準面との間に充填された絶縁体、を備え、
前記複数の凸部のうち少なくとも一つの第2凸部は、前記磁歪膜の裏面と前記基準面との間に空間を有し、前記磁歪膜を貫通する孔を有し、
前記複数の凸部のうちの少なくとも一つの第3凸部は、前記磁歪膜の裏面と前記基準面との間に空間を有し、前記磁歪膜を貫通する孔を有さず、
前記第1凸部の前記第1方向の高さは、前記第2凸部および前記第3凸部の前記第1方向の高さより高い、請求項20に記載のセンサユニット。
【請求項22】
基板と、前記基板上に設けられた変形層と、前記変形層内に設けられた螺旋コイルと、を備え、
前記変形層は、非磁性材料と、前記変形層中に分散された磁性粒子と、を有し、
前記変形層は、前記螺旋コイルの軸線方向から平面視して前記螺旋コイルに囲まれる領域内に、前記螺旋コイルの前記基板から最も離れた第1端部より前記基板に近い側にある第1領域と、前記第1端部より前記基板から遠い側にある第2領域と、を備え、
前記変形層は、内部に空隙をさらに有し、前記第2領域における前記空隙の空隙率は、前記第1領域における空隙率よりも高い、トランスデューサ。
【請求項23】
基板と、前記基板上に設けられた変形層と、前記変形層内に設けられた螺旋コイルと、を備え、
前記変形層は、非磁性材料と、前記変形層中に分散された磁性粒子と、を有し、
前記変形層は、前記螺旋コイルの軸線方向から平面視して前記螺旋コイルに囲まれる領域内に、前記螺旋コイルの前記基板から最も離れた第1端部より前記基板に近い側にある第1領域と、前記第1端部より前記基板から遠い側にある第2領域と、を備え、
前記第2領域における前記磁性粒子の密度は、前記第1領域における磁性粒子の密度よりも高い、トランスデューサ。
【請求項24】
基板と、
前記基板の表面で構成された基準面に対して第1方向に突出する複数の凸部を有する連続した磁歪膜と、
前記複数の凸部のうち少なくとも一つの第1凸部において、前記磁歪膜の裏面と前記基準面との間に設けられた変形層と、
前記変形層内に設けられたコイルと、を備え、
前記変形層は、非磁性材料と、前記変形層中に分散された磁性粒子と、を有する、センサユニット。
【請求項25】
前記複数の凸部は、
前記磁歪膜の裏面と前記基準面との間に空間を有し、前記磁歪膜を貫通する孔を有する第2凸部と、
前記複数の凸部のうち前記磁歪膜の裏面と前記基準面との間に空間を有し、前記磁歪膜を貫通する孔を有さない第3凸部と、をさらに有し、
前記第1凸部の前記第1方向の高さは、前記第2凸部および前記第3凸部の前記第1方向の高さより高い、請求項
24に記載のセンサユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスデューサ、力覚センサ及びセンサユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
生産労働人口の減少や医療・介護/介助現場での担い手不足の問題を解決するためにロボットのin導入が進んでいる。今後ロボットがヒトと同じように複雑な作業ができるように、ロボットにセンサを高密度に実装して高度な感覚を持たせることが望まれている。
【0003】
ロボットがヒトと同様の作業をするためには、力覚などの感覚をロボットが持つことが重要であり、ヒトと同様の感覚をセンシングできるセンサの搭載が望まれている。力覚センサとしては、例えば、外部から印加される力を電気信号に変換するトランスデューサを備えるもの等が知られている。
【0004】
このよう力覚なセンサとしては、特許文献1~特許文献5のようなセンサが知られている。
特許文献1の触覚センサは、基材上に複数個のコイル及びエラストマー等で構成された非磁性柔軟層が形成され、複数個のコイル及び非磁性柔軟層上に透磁率が高い粒子を含む磁性柔軟層が形成されていると開示されている。特許文献1の触覚センサは、外部からの応力で圧縮されることにより、磁性柔軟層が変位し、磁性柔軟層に分散された粒子がコイルに近づいたり離れたりすることにより、インダクタンスの変化を検出すると開示されている。
【0005】
特許文献2は、物体を把持する指先や皮膚にあたる部分に最適な柔らかさと表面摩擦によるグリップ性を探求し、なされた発明である。特許文献2の検出装置は、磁石原料と粘弾性材料を混錬し成形した粘弾性磁石と、粘弾性磁石の変形による磁束密度ベクトルの変化を検出する磁束検出手段と、を備えると開示されている。
【0006】
特許文献3の感圧センサは、ホール素子と、このホール素子上に弾性エラストマー及び永久磁石とが積層され、ホール素子の入出力端子にそれぞれリード線が備えられている。特許文献3の感圧センサは、外部から応力が作用した場合に、その応力の大きさに比例した弾性変形が弾性エラストマーに生じ、永久磁石がホール素子に相対変位するため、ホール素子に及ぼされる磁界の強さを検出することで応力の強さをセンシングできると開示されている。
【0007】
特許文献4の圧力検出装置は、磁石を含み、加減圧により変化する緩衝部と、緩衝部の変形に伴う磁場の変化を磁気センサにより検出するセンサ部と、を備える圧力検出装置が開示されている。特許文献4の圧力検出装置は、加減圧により緩衝部が変形することで、磁場の変化を検出し、圧力を検出すると開示されている。
【0008】
特許文献5には、磁気センサと、基板と、基板を介して磁気センサの反対側に設けられたエラストマーと、を備え、エラストマー中には磁性フィラーが偏在されている触覚センサが開示されている。特許文献5の触覚センサは、応力が印加され、エラストマーの表面が磁気センサに近づく方向に変形すると、エラストマー中の磁性フィラーが磁気センサに近づく。特許文献5の触覚センサでは、磁性フィラーの相対位置により磁気センサが検出する磁場が変化するため、当該磁場を基に印加された応力を検出可能であると開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特許第6943480号公報
【文献】特許4165589号公報
【文献】特開2009-229453号公報
【文献】特開昭62-46222号公報
【文献】特開2014-98687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1のような触覚センサは、透磁率の高い粒子がコイルから離間しており、インダクタンスの変化が小さい。従って、特許文献1のような触覚センサは、出力信号が小さい。そのため、微小な応力が加わった際に、ノイズの比率が大きく、応力を正確に検知することができない場合があった。またコイルのインダクタンス変化を生じさせるために第1柔軟層と第2柔軟層の2層を形成する構造が複雑でセンサ製造工程が長くなり、製造コストが高くなるという問題がある。
【0011】
また、特許文献2~4に開示されたセンサは、磁石を設け、磁気を計測する方式のセンサである。そのため、特許文献2~4のセンサは、地磁気中でセンサ自体が傾くことの影響でセンサの応答が変化する場合や、磁石、電気モータ等の磁気を発生させる機材が周辺に存在する状況下で使用する際に磁気を発生させる基材の影響でセンサの応答が変化する場合があった。また特許文献2に開示された検出装置は、磁石原料と粘弾性材料とを混錬し形成した粘弾性磁石をあらかじめ磁化しておくことで生じるバイアス磁界が、粘弾性磁石に荷重が作用した時に変化することを検出するものである。そのため予め磁化(着磁)が必要で工程が複雑になるという問題点があった。
【0012】
特許文献5に開示されたセンサは、特許文献1と同様、磁気センサから磁性フィラーが離間しており、入力が小さい。そのため、微小な応力が加わった際に、ノイズの比率が大きく、応力を正確に検知することができない場合があった。
また、特許文献1~5に開示されたセンサは、いずれも構造が煩雑で製造工程も複雑であった。
【0013】
本発明は、上記事情に鑑みてなされた発明であり、簡単な構造で微小な応力を検知可能なトランスデューサ、力覚センサ及びセンサユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を提供する。
【0015】
本発明の一態様に係るトランスデューサは、基板と、前記基板上に設けられた変形層と、前記変形層内に設けられた平面コイルと、を備え、前記変形層は、非磁性材料と、前記変形層中に分散された磁性粒子と、を有する。また、本発明の別態様に係るトランスデューサは、基板と、前記基板上に設けられた変形層と、前記変形層内に設けられたアモルファス磁性合金を含むコイルと、を備え、前記変形層は、非磁性材料と、前記変形層中に分散された磁性粒子と、を有する。
また、本発明の別態様に係るトランスデューサは、基板と、前記基板上に設けられた変形層と、前記変形層内に設けられた螺旋コイルと、を備え、前記変形層は、非磁性材料と、前記変形層中に分散された磁性粒子と、を有し、前記変形層は、前記螺旋コイルの軸線方向から平面視して前記螺旋コイルに囲まれる領域内に、前記螺旋コイルの前記基板から最も離れた第1端部より前記基板に近い側にある第1領域と、前記第1端部より前記基板から遠い側にある第2領域と、を備え、前記変形層は、内部に空隙をさらに有し、前記第2領域における前記空隙の空隙率は、前記第1領域における空隙率よりも高い。
また、本発明の別態様に係るトランスデューサは、基板と、前記基板上に設けられた変形層と、前記変形層内に設けられた螺旋コイルと、を備え、前記変形層は、非磁性材料と、前記変形層中に分散された磁性粒子と、を有し、
前記変形層は、前記螺旋コイルの軸線方向から平面視して前記螺旋コイルに囲まれる領域内に、前記螺旋コイルの前記基板から最も離れた第1端部より前記基板に近い側にある第1領域と、前記第1端部より前記基板から遠い側にある第2領域と、を備え、
前記第2領域における前記磁性粒子の密度は、前記第1領域における磁性粒子の密度よりも高い。
【0028】
本発明の一態様に係るセンサユニットにおいて、基板と、前記基板の表面で構成された基準面に対して第1方向に突出する複数の凸部を有する連続した磁歪膜と、前記複数の凸部のうち少なくとも一つの第1凸部において、前記磁歪膜の裏面と前記基準面との間に設けられた変形層と、前記変形層内に設けられたコイルと、を備え、前記変形層は、非磁性材料と、前記変形層中に分散された磁性粒子と、を有する。
【0029】
上記態様に係るセンサユニットにおいて、前記複数の凸部は、前記磁歪膜の裏面と前記基準面との間に空間を有し、前記磁歪膜を貫通する孔を有する第2凸部と、前記複数の凸部のうち前記磁歪膜の裏面と前記基準面との間に空間を有し、前記磁歪膜を貫通する孔を有さない第3凸部と、をさらに有し、前記第1凸部の前記第1方向の高さは、前記第2凸部および前記第3凸部の前記第1方向の高さより高くてもよい。
本発明によれば、簡単な構造で微小な応力を検知可能なトランスデューサ、力覚センサ及びセンサユニットを提供することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、簡単な構造で微小な応力を検知可能なトランスデューサ、力覚センサ及びセンサユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の一実施形態にかかるトランスデューサの要部を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図1のトランスデューサを複数備える力覚センサを模式的に示す平面図である。
【
図3】
図1のトランスデューサの作用を説明するための図である。
【
図4】
図1の変形例に係るトランスデューサの要部を模式的に示す断面図である。
【
図5】
図4のトランスデューサを複数備える力覚センサを模式的に示す平面図である。
【
図6】
図1の他の変形例に係るトランスデューサの要部を模式的に示す断面図である。
【
図7】
図6のトランスデューサの作用を説明するための図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係るセンサユニットの要部を模式的に示す斜視図であり、
図2の力覚センサを備えるセンサユニットを示す図である。
【
図9】
図8のセンサユニットの断面を模式的に示す図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係るセンサユニットの要部を模式的に示す斜視図である。
【
図11】
図9のセンサユニットにおける触覚センサの作用を説明するための図である。
【
図12】製造例1で作製した変形層の表面の顕微鏡像である。
【
図13】製造例1~製造例3のトランスデューサの変形層における圧縮率に対応した非透磁率を示す図である。
【
図14】実施例1~実施例3のトランスデューサにおける圧縮率とインダクタンスとの相関を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本実施形態について、図を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0033】
[トランスデューサ]
図1は、本実施形態にかかるトランスデューサの要部を模式的に示す断面図である。
図2は、
図1のトランスデューサを複数備える力覚センサを模式的に示す平面図である。本実施形態に係るトランスデューサ100は、基板20と、基板20上に設けられた変形層10と、変形層10内に設けられたコイル13Aと、を備える。
【0034】
<基板>
基板20は、後述する変形層10を支持する基板である。基板20は、例えば回路基板である。回路基板は、センサ信号回路の少なくとも一部を有する基板である。回路基板内にセンサ信号処理回路の全体が形成されていてもよい。ここで、センサ信号処理回路は、コイル13AとコンタクトCと交流回路とが接続されたものであり、コイル13AのそれぞれのインダクタンスLを読み出す回路である。
【0035】
基板20は、例えば、平坦な基板であり、フレキシブル基板などの柔軟な基板であってもよい。柔軟な基板としては、例えばヤング率が3GPa以下の基板を用いることが好ましい。このような柔軟な基板を基板20として用いることで、トランスデューサを幅広い分野で活用できる。
【0036】
基板20は、後述する変形層10より剛性の大きな基材で形成されていてもよい。また、基板20は、複数の層からなっていてもよい。
基板20は、例えば有機ポリマー、シリコン、セラミック、金属などの基板を用いることができ、これらを重ねて形成してもよい。
【0037】
有機ポリマーの基板としては、例えば、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンテレフタレート、エポキシグラスファイバ等を用いることができる。
シリコンの基板としては、例えば、シリコンウェハ、他の材料からなる基板上にポリシリコン薄膜が形成された基板、他の基板上にアモルファスシリコン薄膜が形成された基板等を用いることができる。
セラミックの基板としては、例えば窒化アルミニウム、ジルコニア等を用いることができる。
【0038】
<コイル>
コイル13Aは、例えば基板20の上面とコンタクトCを介して接続されている。コイル13Aは、例えば基板20から基板20と垂直な方向(z方向)に向かって螺旋状に巻かれた螺旋コイルである。すなわち、コイル13Aの軸線方向は、基板20と垂直な方向に対応する。以下、コイル13Aの軸線方向に垂直な方向(xy方向)を面内方向と呼称する場合がある。
【0039】
コイル13Aは、導電性材料である。コイル13Aは、非磁性材料11よりもヤング率の大きい材料で構成されていることが好ましい。また、コイル13Aは、アモルファス磁性合金を含むことが好ましい。アモルファス磁性合金は、ストレスインピーダンス効果(SI効果)を示す材料である。アモルファス磁性合金は、例えば、Fe-Si-B、Fe-Si-B-P等の鉄系アモルファス合金や、Co-Si-B、Co-Si-B-P、Fe-Co-B、Fe-Co-B-P等のコバルト系アモルファス合金である。コイル13Aがアモルファス磁性合金であることで、コイル13AのインダクタンスLsの変化を測定するとともに、コイル13Aが応力を受けストレスインピーダンス効果を示すことによる、インピーダンスの変化も測定可能である。
【0040】
ストレスインピーダンス効果は、磁性材料に応力が加わると生じる。ストレスインピーダンス効果は、ビラリ効果と、導体の表皮効果によるインピーダンス変化が透磁率変化の影響を受けることで生じる。具体的には、トランスデューサ100に応力が作用すると、コイル13Aが面内方向に歪む。コイル13Aが歪むと、ビラリ効果により、透磁率が変化する。下記(1)式は、ビラリ効果を示す式である。下記(1)式は、真空の透磁率をμ0とし、磁気異方性定数KU、飽和磁化MS、飽和磁歪λS、ヤング率EFのコイル13Aの長さが応力により(Δl/l)だけ歪んだときのコイル13Aの透磁率μを示す。ここで、コイル13Aの長さは、コイル13Aを構成する導線の延材方向における長さのことを言う。
【0041】
【0042】
下記(2)式は、表皮効果を示す式である。下記(2)式は、周波数ωの電流を、電気抵抗率がρの導体に電流を流した時に電流の流れる深さ(表皮深さ)δを示す。
【0043】
【0044】
上記(1)式より、透磁率μは、ビラリ効果により磁性材料が受ける応力に依存することが確認される。また上記(2)式より、表皮深さδは、コイル13Aの透磁率μに依存することが確認される。表皮深さδが変化すると、導体のインピーダンスが変化する。従って、コイル13Aに加わる応力が変化すると、磁歪膜のインピーダンスが変化する。そのため、コイル13Aのインピーダンスを測定することで、応力の大きさを検出でき、トランスデューサとして用いられる。
【0045】
コイル13Aは、軸線方向に端部130を有する。端部130は、コイル13Aのうち、基板20から最も離間している。
【0046】
<変形層>
変形層10は、基板20上に設けられている。変形層10は、非磁性材料11と、内部に分散された磁性粒子12と、を有する。非磁性材料11は、例えばコイル13Aが外部に露出しないように設けられている。すなわち、非磁性材料11は、面内方向において、コイル13Aの内側及び外側のいずれにも位置する。
【0047】
非磁性材料11は、軸線方向において、コイル13Aの端部130よりも基板20から離間する領域及び端部130よりも基板20に近接する領域のいずれにも位置する。すなわち、非磁性材料11は、軸線方向から平面視して、コイル13Aに囲まれるとともに端部130よりも基板20に近接している領域である第1領域R1と、軸線方向から平面視して第1領域R1と重なるとともに端部130よりも基板20から離間している領域である第2領域R2と、を含む。
【0048】
変形層10の高さh0に対する第1領域R1の高さhaの比(ha/h0)は、例えば0.1以上0.9以下であり、0.2以上0.8以下であることが好ましい。また、変形層10の高さh0に対する第2領域R2の高さhbの比(hb/h0)は、例えば0.1以上0.9以下であり、0.2以上0.8以下であることが好ましい。第1領域R1の高さha及び第2領域R2の高さhbは、トランスデューサ100に対して応力が生じ、変形層10がひずみ、非磁性材料11が変位することにより変化する。上記高さの比は、トランスデューサ100に対して応力が生じていない定常時における高さの比である。
【0049】
非磁性材料11は、例えばエラストマー等の非磁性材料で構成されている。非磁性材料11は、容易に変形可能な弾性体の素材であることが好ましい。非磁性材料11のヤング率は、例えば0.01MPa以上10MPa以下であり、0.01MPa以上5MPa以下であることが好ましく、0.1MPa以上1MPa以下出ることがより好ましい。ヒトの皮膚のヤング率は、0.2~0.8MPa程度と云われており、上記範囲にすることで、ヒトの皮膚に近いヤング率で、且つ変形しやすくすることができる。非磁性材料11は、例えば、ポリウレタンフォームやポリ塩化ビニル、ポリスチレン-ブタジエン-スチレン、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン、環状オレフィン共重合体エラストマー、シリコーンゴム、エチレンプロピレンゴム、ジメチルポリシロキサン、ウレタンゴム、ハイドロジェル等で構成されている。
【0050】
磁性粒子12は、例えば変形層10中に分散されている。磁性粒子12は、強磁性体材料であり、例えば、Fe系粉末、Ni系粉末及びCo系粉末から選択される一つ以上である。磁性粒子12は、このような磁性材料から選択されることで、コイル13Aに対する相対位置によりコイル13Aのインダクタンスを変化させる。
【0051】
磁性粒子12の形状は、例えば、球状、扁平状、針状、柱状、線状であり、不定形であってもよい。
図1においては、磁性粒子12の形状が球状である例を示した。以下、磁性粒子12が球状である場合を例に、本実施形態について説明する。
【0052】
変形層10における磁性粒子12の混合割合(質量比あるいは体積比)は、例えば質量割合の場合、0.1以上0.9以下であり、0.3以上0.8以下であることが好ましい。また体積割合の場合、0.01以上0.1以下であり、0.03以上0.05以下であることが好ましい。ここで、変形層10における磁性粒子12の質量割合は、磁性粒子12の質量を非磁性材料11及び磁性粒子12の質量の和で除することで求められる。また変形層10における磁性粒子12の体積割合は、磁性粒子12の体積を非磁性材料11及び磁性粒子12の体積の和で除することで求められる。
【0053】
変形層10における磁性粒子12の質量割合が0.1以上であることで、応力の有無によりコイル13Aの径方向内側に含まれる磁性粒子12の量の変化を大きくでき、トランスデューサ100における入力を大きくできる。変形層10における磁性粒子12の混合割合が大きいと応力によるコイル13Aにインダクタンス変化が大きく得られるが、磁性粒子12の質量割合が過度に大きいと磁性粒子12がコイル13Aに接触してノイズが発生する可能性があり、また変形層10が変形しにくくなる。そのため変形層10における磁性粒子12の質量割合を0.9以下にすることが適当である。
【0054】
第2領域R2における磁性粒子12の密度は、第1領域R1における磁性粒子12の密度以下であってもよいが、第1領域R1における磁性粒子12の密度よりも高いことが好ましい。具体的には、第2領域R2における磁性粒子の密度は、第1領域R1における磁性粒子の密度の1倍より大きく10倍以下であることが好ましく、3倍以上10倍以下であることがより好ましい。第2領域R2における磁性粒子12の密度が第1領域R1における磁性粒子12の密度の3倍以上であることで、トランスデューサ100に対して、軸線方向に非磁性材料11を歪ませる方向の応力が加えられた際に、第1領域R1に位置する磁性粒子12の量の変化が大きくなり、コイルのインダクタンスの変化を大きくし、入力を大きくすることができる。また、トランスデューサ100が圧縮され、変形層10が変形することにより、変形層10自体の透磁率も変化する。変形層10の透磁率は、圧縮率が高いほど、また変形層10中の磁性粒子12の質量割合が高いほど高い値を示す。
【0055】
ここで、トランスデューサ100において、インダクタンスLは、変形層10のインダクタンスLm及びコイル13AのインダクタンスLsの和で表され、基本的な解析式としては以下の式(3)より表されるが実際にはLmとLsとの間に相互作用も存在する。
【0056】
【数3】
(式(3)において
L:トランスデューサのインダクタンス、
B
max:変形層の飽和磁化、μ
0:真空の透磁率、μ
r:変形層の透磁率、
I
max:変形層を飽和磁化させるために必要なコイル電流、V:変形層の容積、
N:コイルの巻き数、A:コイルの断面積、l:コイルの長さ)
【0057】
[トランスデューサの製造方法]
本実施形態に係るトランスデューサは、例えば以下の方法により製造される。本実施形態に係るトランスデューサの製造方法は、例えば、準備工程と、実装工程と、積層工程と、を備える。
【0058】
(準備工程)
準備工程は、例えば基板20を準備する工程と、変形層10を構成する基材を準備する工程と、を有する。基板としては、例えば回路基板を準備する。変形層を構成する基材は、例えば磁性粒子を非磁性材料と混合及び撹拌することで作製される。
【0059】
(実装工程)
実装工程は、例えば、コンタクトを介して基板と導通するようにコイルを実装する。コイルと回路基板が電気的に接続する箇所をコンタクトという。
【0060】
(積層工程)
積層工程は、例えばコイルが表面に設けられた基板上に変形層を積層する。変形層は、例えば変形層を構成する基材を基板の表面に塗布、硬化することにより形成できる。変形層の硬化は、例えばUV照射や熱処理等により行うことができる。第1領域R1と第2領域R2とで構成が異なる変形層を形成する場合、例えば積層工程を二工程に分けて実施すればよい。トランスデューサ100は、例えばこのように製造される。
【0061】
図3は、
図1のトランスデューサの作用を説明するための図である。トランスデューサ100に対し、軸線方向に応力が印加されると、変形層10は、軸線方向に歪むように圧縮変形する。すなわち、変形層10を構成する非磁性材料11及び磁性粒子12は、全体として基板20に近接するように変位する。ここで、変形層10を構成する非磁性材料11の変位の仕方は、領域ごとに一様ではない。例えば定常時に第2領域R2に位置する非磁性材料11は、定常時に第1領域R1に位置する非磁性材料11と比べ、基板20に近接する方向に大きく変位する。同様に、変形層10に含まれる複数の磁性粒子12は、それぞれの変位が一様ではない。例えば、複数の磁性粒子12のうち、第2領域R2に位置する磁性粒子12は、第1領域R1に位置する磁性粒子12と比べ、基板20に近接する方向に大きく変位する。同様に、トランスデューサ100に対し、面内方向に応力が印加され、変形層10が変位すると、コイル13Aの径方向内側に含まれる磁性粒子12の量や、コイル13Aの径方向内側であって、端部130近傍における磁性粒子12の密度が変化する。
【0062】
このように、トランスデューサ100を圧縮する方向に応力が印加されると、第1領域R1における磁性粒子12の密度が増大する。第1領域R1における磁性粒子12の密度が増大すると、透磁率が増大し、トランスデューサ100のインダクタンスLm+Lsが増大する。また、トランスデューサ100に対する応力が除かれると、変形層10の表面が基板20から離間する方向に変位し、第1領域R1における磁性粒子12の密度が減少する。そのため、透磁率が減少し、トランスデューサ100のインダクタンスLm+Lsが減少する。
【0063】
また、トランスデューサ100の変形層10は、応力が印加されると、コイル13Aが歪む。すなわち、コイル13Aがアモルファス磁性合金で形成されている場合、ストレスインピーダンス効果により、コイル13Aのインピーダンスが変化する。
【0064】
本発明では、トランスデューサ100に加わった応力、又は、応力による変形層10の変位自体をコイル13Aに接続された信号処理回路により計測可能な電気信号に変換する。すなわち、本実施形態に係るトランスデューサ100は、応力の変化を上記コイル13AのインダクタンスLs及び変形層10のインダクタンスLmの変化に変換できる。また、トランスデューサ100は、上記のような変形層10内にコイル13Aが設けられているため、コイル13AのインダクタンスLsの変化が大きく、さらに変形層10のインダクタンスLmも変化するため、簡単な構造で入力を大きくし、微小な応力を検知可能である。
【0065】
本発明は、上記例に限定されず、種々の変更が可能である。例えば、変形層10は、コイルが挿入される開口を有し、開口にコイル13Aが挿入されており、押圧時にコイルの軸線方向における高さが変化しないように形成されていてもよい。また、以下のような変形例の構成であってもよい。
【0066】
[変形例]
図4は、
図1の変形例に係るトランスデューサの要部を模式的に示す断面図である。
図5は、
図4のトランスデューサを複数備える力覚センサを模式的に示す平面図である。
図4に示すトランスデューサ100Aは、コイル13Aに変えてコイル13Bを備える点で
図1に示すトランスデューサ100と異なる。トランスデューサ100Aにおいて、トランスデューサ100と同様の構成は、同様の符号を付し、説明を省略する。
【0067】
コイル13Bは、同一面内で渦巻く平面コイルである。コイル13Bは、例えば、基板20の表面で渦巻く。コイル13Bは、例えば、その両端でコンタクトCを介して信号処理回路とつながっている。コイル13Bの軸線方向における高さhaは、コイル13Bの軸線方向における厚みに対応しており、僅少である。
【0068】
トランスデューサ100Aにおいて、コイル13Bは、例えばパターニング等により基板20の表面に形成される。コイル13Bを作製するためにパターニングを行う工程は、例えば基板20上に変形層10を形成する前に行われる。トランスデューサ100Aは、製造プロセスが簡便であり、スループットが高い。特に、
図5に示すような、複数のコイル13Bを備えるような力覚センサ200Aを作製する場合、一度に多数のコイル13Bを形成でき、効果的である。また、コイル13Bは面内方向に伸びやすいため、コイル13Bをアモルファス磁性合金で形成した場合、ストレスインピーダンス効果によって、面内方向の伸びた際の入力を大きくできる。
【0069】
ここで、トランスデューサ100Aにおいて、インダクタンスLは、変形層10のインダクタンスLm及びコイル13BのインダクタンスLsの和で表され、基本的な解析式としては以下の式(4)より表されるが実際にはLmとLsとの間に相互作用も存在する。ここで、式(4)におけるコイルの抵抗率ρは、式(5)で表される。
【0070】
【0071】
【数5】
(式(4)、(5)において
L:トランスデューサのインダクタンス、
Lm:変形層のインダクタンス、Ls:コイルのインダクタンス、
B
max:変形層の飽和磁化、μ
0:真空の透磁率、μ
r:変形層の透磁率、
I
max:変形層を飽和磁化させるために必要なコイル電流、V:変形層の容積、
n:コイルの巻き数、d
in:コイルの内径、d
outコイルの外径、d
avg:コイルの平均直径、ρ:コイルの抵抗率、c
1,c
2,c
3,c
4:コイルの形状により決まる定数)
【0072】
コイル13Bの内径dinは、例えば、コイル13Bの重心を通る径の最小値である。コイル13Bの外径doutは、例えばコイル13Bの重心を通る系の最大値である。コイル13Bの平均直径davgは、davg=(din+dout)/2である。
【0073】
[変形例2]
図6は、
図1の他の変形例に係るトランスデューサの要部を模式的に示す断面図である。
図7は、
図6のトランスデューサ100Bの作用を説明するための図である。
図6に示すトランスデューサ100Bは、変形層10Bが内部に空隙14をさらに有する点で、
図1に示すトランスデューサ100と異なる。トランスデューサ100Bにおいて、トランスデューサ100と同様な構成は、同様の符号を付し、説明を省略する。トランスデューサ100Bでは、変形層10Bが空隙14を有することで、トランスデューサ100Bに応力が印加された際に、非磁性材料11及び磁性粒子12が定常時の空隙14部分を埋めるように変位する。そのため、トランスデューサ100Bでは、変形層10Bのヤング率を小さくしやすい。
【0074】
空隙14は、例えば、変形層10B内に複数備えられる。変形層10Bの空隙率は、例えば50%以上95%以下であり、60%以上90%以下であることが好ましい。変形層10Bの空隙率は、ヤング率を小さくする観点から60%以上であることが好ましく、降伏点が低くなり、塑性変形になることを抑制する観点から、90%以下であることが好ましい。ここで、変形層10Bの空隙率は、変形層製作に用いた原料の単位体積当たりの重量Wst、空隙が形成された変形層の単位体積当たり重量Wafにより、
A=1-Waf/Wst
で得られる値をパーセント(%)表示したものである。
【0075】
非磁性材料11としては、例えばポリウレタンフォーム、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン-ブタジエン-スチレン、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン、環状オレフィン共重合体エラストマー、シリコーンゴム、エチレンプロピレンゴム、ジメチルポリシロキサン、ウレタンゴム、ハイドロジェル等が用いられる。
【0076】
第2領域R2における空隙14の密度は、第1領域R1における空隙14の密度よりも高いことが好ましい。第2領域R2における空隙14の密度は、例えば第1領域R1における空隙14の密度の2倍以上10倍以下であることが好ましい。第2領域R2における空隙14の密度を第1領域R1における空隙14の密度よりも高くすることで、トランスデューサ100Bに応力が印加される前後における透磁率の比を大きくすることができる。
【0077】
トランスデューサ100Bの変形層は、例えば準備工程において、水を含む有機ポリマーを非磁性材料及び磁性粒子12を混合及び撹拌後、熱処理することで形成される。第1領域R1及び第2領域R2の空隙率が異なる変形層10Bは、例えば含水率の異なる有機ポリマーを重ね、熱圧着又は熱延伸することで形成される。
【0078】
[第2実施形態]
図8は、第2実施形態に係るセンサユニットの要部を模式的に示す斜視図であり、
図2の力覚センサを備えるセンサユニットを示す図である。
図9は、
図8のセンサユニットの要部の拡大図を模式的に示す断面図である。
図8に示すセンサユニット300において、先の実施形態の構成と同様の構成は同様の符号を付し、説明を省略する。
【0079】
センサユニット300は、面内に並ぶコイル領域Raと凸部領域Rbとを備え、コイル領域Raは、上記実施形態に係るトランスデューサ100を有し、凸部領域Rbは、トランスデューサの基板と同一面内に広がる第2基板20Bと、第2基板の表面で構成された基準面Sに対して第1方向に突出する複数の凸部を有する連続した磁歪膜15と、を有する。
【0080】
<コイル領域Ra>
コイル領域Raは、例えば基板20と、基板20上に設けられた変形層10と、変形層10内に設けられたコイル13Aと、を備える。変形層10は非磁性材料11と、変形層10中に分散された磁性粒子12と、を有する。
【0081】
コイル領域Raは、例えば少なくとも一つのトランスデューサ100を備える第一センサ(力覚センサ)である。コイル領域Raは、例えば複数のトランスデューサ100を備え、これに伴い、複数のコイル13Aを備える。コイル領域Raにおいて、複数のコイル13Aは、例えばアレイ状に配置されている。コイル領域Raに位置する力覚センサは、複数のトランスデューサ100のそれぞれのコイル13Aのインダクタンスやインピーダンスの変化を基に力覚センサに作用した力の分布を計測する。コイル領域Raの高さh0は、例えば後述する第2凸部2の高さh2及び第3凸部3の高さh3よりも高い。
【0082】
<凸部領域Rb>
凸部領域Rbは、例えばそれぞれがセンサとして機能する複数の凸部1a,1b,2,3を備える第二センサ(多機能センサ)である。
【0083】
(第1凸部)
第1凸部1a、1bは、磁歪膜15の裏面15bと基準面Sとの間に絶縁体30を有する。第1凸部1a、1bは、触覚センサとして機能する。
【0084】
第1凸部1aは、例えばz方向からの平面視でx方向における長さとy方向における長さとが略均等である。第1凸部1bは、例えばz方向からの平面視で、y方向における長さがx方向における長さよりも長い。第1凸部1bは、このような形状をしていることで、外部から力が加わる方向により反力が異なる。例えばx方向から印加された力に対する反力とy方向から印加された力に対する反力とが異なる。その結果、第1凸部1bは、外部からの力の方向による大きさの違いを読み取れる。センサユニット300は、触覚センサとして第1凸部1aのみを備えていてもよく、第1凸部1bのみを備えていてもよいが、第1凸部1a及び1bの両方を備えていることが好ましい。
【0085】
第1凸部1a、1bのz方向における高さは、z方向に垂直な方向における最小幅よりも小さいことが好ましい。すなわち、第1凸部1aのz方向における基準面Sからの高さは、例えば第1凸部1aのx方向における幅以下であり、第1凸部1bのz方向における基準面Sからの高さは、例えば第1凸部1bのx方向における幅w1b以下であることが好ましい。第1凸部1a、1bのz方向における高さh1は、例えば第2凸部2のz方向における高さh2及び第3凸部3のz方向における高さh3より高い。また、第1凸部1a、1bのz方向における高さh1は、例えば変形層10のz方向における基板20からの高さh0よりも高い。第1凸部1a、1bのそれぞれは高さが同じであっても異なっていてもよい。
【0086】
絶縁体30は、裏面15bと少なくとも一部で接する。絶縁体30は、基準面Sと第1凸部1a、1bに対応する裏面15bとの間に位置する。絶縁体30は、基準面Sと第1凸部1a、1bに対応する磁歪膜15の裏面15bとの間を充填している。すなわち絶縁体30は、磁歪膜15と基板20とに密着して配置される。絶縁体30の形状は、例えば、基準面Sと第1凸部1a、1bとで囲まれた領域の形状に対応する。絶縁体30は、触覚センサの触り心地に大きな影響を与える要素であり、絶縁体30の材料は、第1凸部1a、1bの硬さ(触り心地)が例えばヒトの皮膚と同様な硬さとなるように選択されることが好ましい。具体的には、絶縁体30の材料は、ヤング率が1×103Pa~5×106Paの範囲であることが好ましい。このような絶縁体30の材料としては、例えばPDMS(ポリジメチルシロキサン)等が挙げられる。
【0087】
第1凸部1a、1bは、絶縁体30を備えており、外部より力が作用すると絶縁体30からの反力が生じる。絶縁体30からの反力により磁歪膜15に応力が作用し、磁歪膜15が歪むことで第1凸部1a、1bのインピーダンスが変化する。磁歪膜15のインピーダンスを測定することで、第1凸部1a、1bは作用した力を検出する触覚センサとして機能する。
【0088】
(第2凸部)
第2凸部2は、磁歪膜15の裏面と基準面Sとの間に空間R2を有し、磁歪膜15を貫通する孔Hを有する。空間R2は、基準面Sに沿って形成されている。第2凸部2は、磁歪膜15を貫通する少なくとも1つの孔Hを有する。
【0089】
z方向からの平面視における第2凸部2の形状は問わない。第2凸部2は、例えば、z方向からの平面視形状が円形である。z方向からの平面視における第2凸部2の幅w2は、例えば0.5mm以上5mm以下である。空間R2の高さhR2は、大きいことが好ましく、例えば2mm以上であることが好ましい。一方、第2凸部2は、第1凸部1a、1bの少なくとも一方を備えるセンサユニットに備えられる場合、強度の観点から例えば第2凸部2のz方向における基準面Sからの高さh2は、第1凸部1a、1bの高さh1よりも低くなるように設計される。
【0090】
空間R2は孔Hにより外部とつながった空間であり、そのため、通常は外部圧力による応力は磁歪材料に作用しない。音響波の作用により第2凸部2の外部の圧力が変化すると、圧力の変化に応じて磁性材料が振動し、第2凸部2に応力変化が作用する。このとき、ストレスインピーダンス効果により、第2凸部2のインピーダンスが変化する。従って、第2凸部2はインピーダンスを測定することにより、音響センサ(マイクロフォン)として機能する。
【0091】
(第3凸部)
第3凸部3は、磁歪膜15の裏面10bと、基準面Sとの間に空間R
3を有する。空間R
3は基準面Sに沿って密閉されている。z方向からの平面視における第3凸部3の形状は問わない。第3凸部3は、例えば、z方向からの平面視形状が円形である。z方向からの平面視における第3凸部3の幅w
3は、例えば0.5mm以上5mm以下である。空間R
3の高さh
R3は、大きいことが好ましく、例えば1mm以上であることが好ましい。一方、第3凸部3は、第1凸部1a、1bの少なくとも一方を備えるセンサユニットに備えられる場合、第3凸部3のz方向における基準面Sからの高さh
3は、例えば第1凸部1a、1bの高さh
1よりも低くなるように設計される。尚、
図9では高さh
2が高さh
3よりも高い場合を例示したが、この例に限定されず、高さh
3が高さh
2よりも高くてもよい。
【0092】
空間R3は密閉空間であり、空間R3の内の圧力と外部圧力との圧力差に対応する圧力が第3凸部3の磁性材料に作用し、磁性材料が歪み、第3凸部3のインピーダンスが変化する。従って、第3凸部3はインピーダンスを測定することで圧力センサとして機能する。
【0093】
(コンタクト)
コンタクトは、複数の凸部1a、1b、2、3のそれぞれの所定の方向における両端に位置する。センサユニット300Aは、それぞれの凸部の両端に配置されたコンタクトに後述するセンサ信号処理回路を接続して、それぞれの凸部のインピーダンスを測定する。例えば、
図9に示す構成では、コンタクトC
1b1およびC
1b2、コンタクトC
31およびC
32、ならびにコンタクトC
21およびC
22は、センサ信号処理回路に接続する。センサユニット300Aは、センサ信号処理回路によりそれぞれ第1凸部1a、第1凸部1b、第3凸部3、第2凸部2のインピーダンスを測定する。
【0094】
(基板)
第2基板20Bは、例えば基板20と面内方向に並ぶ。第2基板20Bは、例えば基板20と同様の構成である。基板20及び第2基板20Bは、一体であってもよい。基板20及び第2基板20Bは、例えばそれぞれのセンサのコンタクトを、図示を省略する信号処理回路と接続する回路を内部に有する。
【0095】
本実施形態に係るセンサユニット300では、コイル領域Raが備えるトランスデューサを用いて、インダクタンスの変化に基づく力のセンシングをするとともに、凸部領域Rbが備えるセンサを用いてストレスインピーダンス効果に基づくセンシングをすることができる。
【0096】
[第3実施形態]
図10は、第3実施形態に係るセンサユニットの要部を模式的に示す斜視図であり、
図5の力覚センサを備えるセンサユニットを示す図である。
図10のセンサユニット300Aにおいて、
図8のセンサユニット300と同様の構成は同様の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0097】
センサユニット300Aは、基板20と、基板20の表面で構成された基準面Sに対してz方向に突出する複数の凸部を有する連続した磁歪膜15と、複数の凸部のうち少なくとも一つの第1凸部1a´、1b´において、磁歪膜15の裏面と基準面Sとの間に設けられた変形層10と、変形層10内に設けられたコイル13Bと、を備え、変形層10は、非磁性材料11と、変形層10中に分散された磁性粒子12と、を有する。
【0098】
センサユニット300Aにおいて、第1凸部1a´及び1b´は、磁歪膜15の裏面と基準面Sとの間に変形層10と、変形層10内に設けられたコイル13Bと、を備え、変形層10は非磁性材料11と、変形層10中に分散された磁性粒子12と、を有する点で、上記実施形態の第1凸部1a及び1bと異なる。他の構成は、上記実施形態の第1凸部1a及び1bと同様である。
【0099】
変形層10,非磁性材料11及び磁性粒子12の構成は、上記実施形態の構成と同様である。
【0100】
センサユニット300Aにおいて、複数の凸部は、例えば磁歪膜15の裏面15bと基準面Sとの間に空間R2を有し、磁歪膜15を貫通する孔Hを有する第2凸部2と、複数の凸部のうち磁歪膜15の裏面15bと基準面Sとの間に空間R3を有し、磁歪膜15を貫通する孔を有さない第3凸部3と、をさらに有する。センサユニット300Aにおいて、第1凸部1a´及び1b´のz方向の高さは、第2凸部2および第3凸部3のz方向の高さより高いことが好ましい。
【0101】
上記のようなセンサユニット300Aの製造方法の例としては、例えば、以下の方法が例示される。センサユニット300Aの製造方法は、例えば、凸部領域Rbを作製するために基板上にレジスト層を形成する第1工程と、レジスト層に所定の形状をした複数の凹部を形成する第2工程と、レジスト層に磁歪膜15を形成する第3工程と、磁歪膜15上の所定の位置に絶縁材料を形成する第4工程と、磁歪膜15を貫通する孔Hを形成する第5工程と、磁歪膜15の裏面15bに接する不要な材料を除去する第6工程と、コンタクトを介して基板20と磁歪膜15とを電気的に接続させる第7工程と、磁歪膜15の表面の不要な材料を除去する第8工程と、を含む。また、センサユニット300Aの製造方法は、例えばコイル領域Raを作製するために、上記第7工程の前に、基板20上にコイル13Bを設ける工程と、上記第4工程に変えて凸部1a´、1b´の形状に沿った変形層10を設ける工程と、を含む点を除き、凸部領域Rbを作製する手段と同様にすることができる。凸部1a´、1b´の形状に沿った変形層10の作製は、例えば上記第4工程においてコイル13Bと相対する位置の絶縁材料を変形層を構成する材料と置き換えることにより行うことができる。
【0102】
センサユニット300Aにおいて、第1凸部1a´及び1b´は、触覚センサとして機能する。
図11は、触覚センサとしての
図10中の第1凸部1a´の作用を説明するための図であり、センサユニット300Aの断面のうち第1凸部1a´近傍を示す図である。第1凸部1a´の磁歪材料と外部の物体とが接触すると、外部より第1凸部1a´に力が作用する。第1凸部1a´に力が作用すると、変形層10からの反力が生じる。すなわち磁性材料に応力が作用し歪む。従って、ストレスインピーダンス効果により、磁性材料のインピーダンスが変化する。磁性材料のインピーダンスは、磁歪膜15において、第1凸部1a´のそれぞれの近傍の2つのコンタクトを介して測定される(Signal 2)。磁性材料のインピーダンスと応力との相関を事前に把握しておき、測定したインピーダンスと比較することで、触覚センサは作用した力を検出できる。なお、第1凸部1a’を例に説明をしたが、第1凸部1b’の作用も同様である。
【0103】
ここで第1凸部1a´、1b´は基準面に対しz方向に突出する立体構造をしており、面内方向の大きさは微小である。そのため、その第1凸部1a´、1b´に加わった力は、第1凸部1a´、1b´の凸構造である表面の微小面に対し垂直に加わったとみなすことができる。特に第1凸部1a´のようなx方向とy方向との大きさが等しいセンサである場合、外部より作用する力の向きは、その触覚センサの表面に対し垂直である蓋然性が高い。
図11中の力F1,F2及びF3のいずれも第1凸部1a´に対して交差する方向に作用しており、入力が大きく微小な応力を検知しやすい。
【0104】
第1凸部1b´のようなx方向の長さとy方向の長さとが異なる触覚センサに対し、z方向から傾斜した力が作用すると、絶縁体30から磁性材料へ、方向により大きさの異なる反力が生じる。従って、第1凸部1bのような触覚センサは方向の分解能が高い。
【0105】
また、第1凸部1a´、1b´は、応力により変形層10が歪み、磁性粒子12が変位することでコイル13Bの透磁率が変化することによるインダクタンスLsの変化も測定可能である(Signal 1)。すなわち、本実施形態に係るセンサユニット300Aの第1凸部1a´、1b´は、磁歪膜15のストレスインピーダンス効果によるインピーダンスの変化の信号(Signal 2)及び磁性粒子12が変位することによるコイル13BのインダクタンスLsの変化の信号(Signal 1)も信号処理回路に入力する。また、磁歪膜15が、外部磁場に対するシールドとして作用するため、Signal 1の信号が外部磁場に影響されづらい。磁歪膜15のストレスインピーダンス効果によるインピーダンスの変化の信号(Signal 2)は、上述の通り、応力の方向に拠らず、入力を大きくすることが可能である。
【0106】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は特定の実施形態および変形例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【実施例】
【0107】
以下、本発明の製造例について説明する。
【0108】
[製造例1]
製造例1では、以下の手順で基板上に変形層を形成し、変形層を圧縮することで透磁率の変化を測定した。
変形層を構成する基材として、ポリウレタンフォームと鉄微粒子を用いた。具体的には、ポリウレタンフォームは市販のフォーム原料Flex Foam-IT IIIから製作した。これは、2成分(パートA:イソシアネート、パートB:ポリオール)ポリウレタンフォームである。該2成分(すなわちパートA、B)を所定の重量比で混合し、30秒間攪拌することでポリウレタンフォームを作製した。鉄微粒子はBASFから購入した平均直径5μmのCarbonyl Iron Particles(C3518)である。各成分(パートA、パートB、Fe)とサンプルの重量は、アズワン製の化学スケールSefiITX220を使用して100μgの感度で測定した。各成分の計量後、まず、Fe粒子をA成分に注入して混合し、次にB成分を混合物に加え、混合物全体を30秒間撹拌した。次に、混合物を室温で12時間放置して、気泡と鉄微粒子が混合しているポリウレタンフォームを作製して変形層とした。
上記の手順によって、(Fe重量、A成分、B成分)=(4182.0g、1969g、3701g)で原料成分を用いた変形層を製作した。得られたポリウレタンフォームの変形層の鉄微粒子混合比は質量比で0.78、体積比で0.0154であった。
図12に、オリンパスSZX9実体顕微鏡で観察したポリウレタン変形層の表面の顕微鏡像を示す。
図12において、泡のサイズが約30~50μmであり、白い斑点で示される微粒子に比べてはるかに大きくなっていることが確認された。
【0109】
この顕微鏡観察結果などから変形層の空隙率は約85%と見積もられた。
また、この変形層に対して、荷重印可装置(内作)を用いて積層方向に対して垂直に圧縮して変形層の圧縮率を変化させるとともに、Stefan Mayer Instrumentsの透磁率計Ferromasterを用いて変形層の透磁率を測定した。
【0110】
[製造例2]
変形層を構成する基材中の原料の量を変更し、変形層における磁性粒子12の割合が、質量比での混合割合0.714、体積比での混合割合0.0192の変形層を製造した。製造例1と同様の方法により変形層の空隙率は約85%と見積もられた。また、製造例1と同様の方法により圧縮率に対する透磁率の変化を求めた。
【0111】
[製造例3]
変形層を構成する基材中の原料の量を変更し、変形層における磁性粒子12の割合が、質量比での混合割合0.537、体積比での混合割合0.01の変形層を製造した。製造例1と同様の方法により変形層の空隙率は約86%と見積もられた。また製造例1と同様の方法により圧縮率に対する透磁率の変化を求めた。
【0112】
図13に製造例1~製造例3の積層構造体の変形層の圧縮率に対する透磁率の変化を示す。
図13における縦軸は、真空の透磁率を1としたときの変形層の比透磁率を示す。
図13における横軸は、積層構造体に対して応力を印加している際の変形層の体積を変形層に対して応力を印加していない際の体積で除し、100倍して求めた圧縮率を示す。
図13より、いずれの製造例においても、変形層を圧縮するに伴い透磁率が高まること、磁性粒子の質量割合が高いほど高い透磁率を示すこと、及び磁性粒子の質量割合が高いほど圧縮による透磁率の変化量が大きいことが確認される。
【0113】
[実施例1~実施例3]
以下の手順でトランスデューサを作製し、そのインダクタンスを測定した。
先ず、プリント基板上にパターニングにより内径100μm、外径1mm、巻き数5回、平均直径0.55mmのCu製の平面コイルを3箇所に形成した。平面コイルは、両端でコンタクトを取り、コイルのインダクタンスLs及び変形層のインダクタンスLmを測定するための回路と接続させた。
次いで、製造例1、製造例2、製造例3のそれぞれの方法で3種類のポリウレタンフォームを準備した。平面コイルが形成された基板上に、3種類のポリウレタンフォームのそれぞれを変形層とするトランスデューサを3種類形成した。変形層は、直径1mm×高さ1mmの略円柱形とした。変形層の配置は、重心が平面コイルの重心と重なるようにした。3種類のトランスデューサのうち、製造例1のポリウレタンフォームを用いたトランスデューサを実施例1とし、製造例2のポリウレタンフォームを用いたトランスデューサを実施例2とし、製造例3のポリウレタンフォームを用いたトランスデューサを実施例3とする。
【0114】
上記の手順で作製したトランスデューサを用い、製造例1と同様の方法でトランスデューサの変形層を積層方向に圧縮するとともに、トランスデューサのインダクタンスを測定した。インダクタンスの測定は周波数30kHzの交流抵抗を測定することで行った。トランスデューサのインダクタンスLm+Lsは、上記式(4)より算出した、コイルのインダクタンスLs及び変形層のインダクタンスLmの和である。また、同じ装置を用いて、トランスデューサの変形層を積層方向に圧縮した状態から応力を減少させ、変形層の圧縮率が低くなるように変形層10を復元させた際のトランスデューサのインダクタンスを測定した。
【0115】
図14は、変形層の圧縮率及びトランスデューサのインダクタンスの測定結果を示すグラフである。
図14において、横軸は変形層へ印加した力を示し、縦軸はトランスデューサのインダクタンスLm+Lsを示す。
実施例1~3のトランスデューサは、いずれも変形層へ印加した力が大きいほど、インダクタンスの変化が大きく、力覚をセンシングするセンサとして活用できることが確認された。また、実施例1~3において、圧縮率に対する比透磁率の大きい変形層を用いたトランスデューサほどインダクタンスが大きくなることが確認された。またこれらのトランスデューサは、何れも簡単な構造で微小な応力を検知可能であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明は、ヒトの皮膚において、メルケル触覚盤、マイスナー小体及びパチニ小体が検知する圧力並びにルフィニ小体が検知する伸びの刺激を検知することが可能であるため、ヒトの触覚を代替するセンサシステムに利用可能である。
【符号の説明】
【0117】
1(1a、1b、1a´、1b´):第1凸部(触覚センサ)、2:第2凸部(音響センサ)、3:第3凸部(圧力センサ)、10:変形層、11:非磁性材料、
12:磁性粒子、13A、13B:コイル、14:空隙、15:磁歪膜、15b:磁歪膜の裏面、20:基板、20B:第2基板、100,100A,100B:トランスデューサ、200,200A:力覚センサ、300,300A:センサユニット、C:コンタクト