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特許7505725農業用ハウスの省エネ性能シミュレーション装置、多層カーテンのカーテン熱移動指標算出装置、コンピュータプログラム及び記録媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】農業用ハウスの省エネ性能シミュレーション装置、多層カーテンのカーテン熱移動指標算出装置、コンピュータプログラム及び記録媒体
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/02 20240101AFI20240618BHJP
   A01G 9/24 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
G06Q50/02 ZAB
A01G9/24 J
A01G9/24 N
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2024518468
(86)(22)【出願日】2023-12-11
(86)【国際出願番号】 JP2023044186
【審査請求日】2024-04-04
(31)【優先権主張番号】P 2023045338
(32)【優先日】2023-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390010814
【氏名又は名称】株式会社誠和
(74)【代理人】
【識別番号】100101742
【弁理士】
【氏名又は名称】麦島 隆
(72)【発明者】
【氏名】新村 素晴
(72)【発明者】
【氏名】大出 浩睦
【審査官】酒井 優一
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107562996(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
A01G 9/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
農業用ハウスにて所定の期間、所定の植物を栽培する場合において、前記植物に適する設定夜温度の維持に必要な熱量を確保するための燃料消費量を、前記農業用ハウス内の内張り被覆材の熱移動指標を算出要素に含めて求める燃料消費量算出部と、
前記燃料消費量を、基準燃料消費量と比較し、前記内張り被覆材を用いたことによる燃料消費の削減量を求める燃料削減量算出部と
を有し、
前記燃料消費量算出部が、前記内張り被覆材の熱移動指標を求める熱移動指標決定部を有し、
前記熱移動指標決定部は、前記内張り被覆材として単層のカーテン部材が選択された場合、カーテン部材の個別熱移動指標を記憶する個別熱移動指標記憶部にアクセスし、選択された前記カーテン部材の個別熱移動指標を読み出し、読み出した前記個別熱移動指標を前記内張り被覆材の熱移動指標として決定する
農業用ハウスの省エネ性能シミュレーション装置。
【請求項2】
農業用ハウスにて所定の期間、所定の植物を栽培する場合において、前記植物に適する設定夜温度の維持に必要な熱量を確保するための燃料消費量を、前記農業用ハウス内の内張り被覆材の熱移動指標を算出要素に含めて求める燃料消費量算出部と、
前記燃料消費量を、基準燃料消費量と比較し、前記内張り被覆材を用いたことによる燃料消費の削減量を求める燃料削減量算出部と
を有し、
前記燃料消費量算出部が、前記内張り被覆材の熱移動指標を求める熱移動指標決定部を有し、
前記熱移動指標決定部は、
前記内張り被覆材として複数のカーテン部材を多層に配設して構成される多層カーテンを用いる場合、カーテン部材の個別熱移動指標を記憶する個別熱移動指標記憶部にアクセスし、選択された前記複数のカーテン部材の各個別熱移動指標を読み出し、各カーテン部材の個別熱移動指標を説明変数とし、多層カーテンの多層状態での熱移動指標であるカーテン熱移動指標を目的変数として機械学習により生成された予測モデルを用い、選択された前記複数のカーテン部材から構成される多層カーテンのカーテン熱移動指標を算出し、前記カーテン熱移動指標を前記内張り被覆材の熱移動指標として決定する
農業用ハウスの省エネ性能シミュレーション装置。
【請求項3】
前記燃料消費量算出部により算出される前記燃料消費量に基づき、燃料コストを算出すると共に、前記基準燃料消費量を用いて算出される基準燃料コストと比較し、燃料削減コストを算出する燃料削減コスト算出部
を有する
請求項1又は2記載の農業用ハウスの省エネ性能シミュレーション装置。
【請求項4】
前記燃料消費量算出部により算出される前記燃料消費量に基づき、温室効果ガス排出量を算出し、前記基準燃料消費量を用いて算出される基準温室効果ガス排出量と比較し、温室効果ガスの削減量を算出する温室効果ガス削減量算出部
を有する
請求項1又は2記載の農業用ハウスの省エネ性能シミュレーション装置。
【請求項5】
前記多層カーテンを構成するカーテン部材中、最も上層のカーテン部材は、より下層のカーテン部材と比較して、同等以上の保温性を有する条件で前記カーテン熱移動指標を算出する
請求項記載の農業用ハウスの省エネ性能シミュレーション装置。
【請求項6】
前記熱移動指標として、一晩の暖房熱量を当該一晩の夜間デグリアワーと被覆面積で割って得られた値から求められる平均放熱係数が用いられる
請求項1又は2記載の農業用ハウスの省エネ性能シミュレーション装置。
【請求項7】
農業用ハウス内に設けられる内張り被覆材の、カーテン部材を多層に配設して構成される多層カーテンの多層状態での熱移動指標であるカーテン熱移動指標を算出する多層カーテンのカーテン熱移動指標算出装置であって、
前記多層カーテンを構成する複数の前記カーテン部材の個別熱移動指標を説明変数とし、前記多層カーテンのカーテン熱移動指標を目的変数として機械学習により生成された予測モデルを用い、前記カーテン部材の選択情報に基づき、前記カーテン部材の個別熱移動指標を記憶する個別熱移動指標記憶部から、対応する各カーテン部材の個別熱移動指標を読み出し、選択された複数の前記カーテン部材から構成される多層カーテンのカーテン熱移動指標を算出するカーテン熱移動指標算出部
を有する
多層カーテンのカーテン熱移動指標算出装置。
【請求項8】
前記多層カーテンを構成するカーテン部材中、最も上層のカーテン部材は、より下層のカーテン部材と比較して、同等以上の保温性を有する条件で前記カーテン熱移動指標を算出する
請求項記載の多層カーテンのカーテン熱移動指標算出装置。
【請求項9】
前記熱移動指標として、一晩の暖房熱量を当該一晩の夜間デグリアワーと被覆面積で割って得られた値から求められる平均放熱係数が用いられる
請求項記載の多層カーテンのカーテン熱移動指標算出装置。
【請求項10】
コンピュータを農業用ハウスの省エネ性能シミュレーション装置として機能させるコンピュータプログラムであって、
農業用ハウスにて所定の期間、所定の植物を栽培する場合において、前記植物に適する設定夜温度の維持に必要な熱量を確保するための燃料消費量を、前記農業用ハウス内の内張り被覆材の熱移動指標を算出要素に含めて求める手順と、
前記燃料消費量を、基準燃料消費量と比較し、前記内張り被覆材を用いたことによる燃料消費の削減量を求める手順
を前記コンピュータに実行させ、
前記内張り被覆材として単層のカーテン部材が選択された場合、カーテン部材の個別熱移動指標を記憶する個別熱移動指標記憶部にアクセスし、選択された前記カーテン部材の個別熱移動指標を読み出し、読み出した前記個別熱移動指標を前記内張り被覆材の熱移動指標として用いる
コンピュータプログラム。
【請求項11】
コンピュータを農業用ハウスの省エネ性能シミュレーション装置として機能させるコンピュータプログラムであって、
農業用ハウスにて所定の期間、所定の植物を栽培する場合において、前記植物に適する設定夜温度の維持に必要な熱量を確保するための燃料消費量を、前記農業用ハウス内の内張り被覆材の熱移動指標を算出要素に含めて求める手順と、
前記燃料消費量を、基準燃料消費量と比較し、前記内張り被覆材を用いたことによる燃料消費の削減量を求める手順
を前記コンピュータに実行させ、
前記内張り被覆材として複数のカーテン部材を多層に配設して構成される多層カーテンを用いる場合、カーテン部材の個別熱移動指標を記憶する個別熱移動指標記憶部にアクセスし、選択された前記複数のカーテン部材の各個別熱移動指標を読み出し、各カーテン部材の個別熱移動指標を説明変数とし、多層カーテンの多層状態での熱移動指標であるカーテン熱移動指標を目的変数として機械学習により生成された予測モデルを用い、選択された前記複数のカーテン部材から構成される多層カーテンのカーテン熱移動指標を算出し、前記カーテン熱移動指標を前記内張り被覆材の熱移動指標として用いる
コンピュータプログラム。
【請求項12】
前記燃料消費量に基づき、燃料コストを算出すると共に、前記基準燃料消費量を用いて算出される基準燃料コストと比較し、燃料削減コストを算出する
請求項10又は11記載のコンピュータプログラム。
【請求項13】
前記燃料消費量に基づき、温室効果ガス排出量を算出し、前記基準燃料消費量を用いて算出される基準温室効果ガス排出量と比較し、温室効果ガスの削減量を算出する
請求項10又は11記載のコンピュータプログラム。
【請求項14】
前記多層カーテンを構成するカーテン部材中、最も上層のカーテン部材は、より下層のカーテン部材と比較して、同等以上の保温性を有する条件で前記カーテン熱移動指標を算出する
請求項11記載のコンピュータプログラム。
【請求項15】
前記熱移動指標として、一晩の暖房熱量を当該一晩の夜間デグリアワーと被覆面積で割って得られた値から求められる平均放熱係数が用いられる
請求項10又は11記載のコンピュータプログラム。
【請求項16】
コンピュータを多層カーテンのカーテン熱移動指標算出装置として機能させるコンピュータプログラムであって、
農業用ハウス内に、カーテン部材を多層にして配設される多層カーテンの多層状態での熱移動指標であるカーテン熱移動指標を推定する手順として、
前記多層カーテンを構成する複数の前記カーテン部材の個別熱移動指標を説明変数とし、前記多層カーテンのカーテン熱移動指標を目的変数として機械学習により生成された予測モデルを用い、前記カーテン部材の選択情報に基づき、前記カーテン部材の個別熱移動指標を記憶する個別熱移動指標記憶部から、対応する各カーテン部材の個別熱移動指標を読み出し、選択された複数の前記カーテン部材から構成される多層カーテンの熱移動指標を算出する手順
を前記コンピュータに実行させるコンピュータプログラム。
【請求項17】
前記多層カーテンを構成するカーテン部材中、最も上層のカーテン部材は、より下層のカーテン部材と比較して、同等以上の保温性を有する条件で前記カーテン熱移動指標を算出する
請求項16記載のコンピュータプログラム。
【請求項18】
前記熱移動指標として、一晩の暖房熱量を当該一晩の夜間デグリアワーと被覆面積で割って得られた値から求められる平均放熱係数が用いられる
請求項16記載のコンピュータプログラム。
【請求項19】
請求項10、11又は16記載のコンピュータプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用ハウス内に配設される内張り被覆材の熱移動指標を求めると共に、この熱移動指標を用いて農業用ハウスの省エネ性能をシミュレーションする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
農業用ハウスの内側に、内張り被覆材を設けることが行われている。内張り被覆材としては、1枚のカーテン部材で構成する場合のほか、複数枚のカーテン部材を用いて多層カーテンとして構成する場合があるが、いずれにしても、主に植物の上方すなわち天井側の空間を覆うように開閉可能に設けられ、保温、遮光、遮熱、日長等の調整機能を担わせている。特許文献1,2では、透明なプラスチックフィルム、プラスチックフィルムにアルミ蒸着を施したもの、アルミ箔の細糸状のものを編み込んだもの、不織布などを用いて構成される個々のカーテン部材を相互に間隔をもって複数枚配設した多層カーテンが開示されている。カーテン部材を多層にすることで、カーテン部材間に空気層が形成され、カーテン部材1枚で構成される単層のカーテンよりも保温性を向上させ、暖房稼働時間を節約できるなど、省エネルギー対策としての効果が高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-29314号公報
【文献】特開2016-192915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1,2に開示の多層カーテンは、上記のように保温性に優れているが、多層カーテンは、例えば、透明カーテン部材とアルミ蒸着を施した反射性カーテン部材との組み合わせの場合、保温のためには2枚とも閉鎖し、日の出と共にまず反射性カーテン部材を開放し、その後、日が高くなる前に透明カーテン部材を開放するといった運用がなされる。また、透明カーテン部材は、一般に透明度の高いものが好まれ、紫外線透過性、光拡散性等の機能に関しても種々の要望がある。また、これらの機能は栽培対象の植物の種類、農業用ハウスの設置地域の気象条件等によっても左右され、求められる機能は一様ではない。また、多層カーテンは、相互に間隔をもって重ね合わせる複数のカーテン部材の層数(枚数)は、2層だけでなく、3層とすることもでき、場合によっては、それ以上の層数とすることも可能で、各カーテン部材の組み合わせによって様々な機能を実現できる。
【0005】
多層カーテンの選定にあたっては、栽培対象の植物の種類、農業用ハウスの設置地域の気象条件、さらには農業用ハウスのサイズ等と考慮し、適当と判断されたものが用いられる。しかしながら、多層カーテンを構成するカーテン部材の種類は非常に多く、それらを組み合わせた場合にいずれが適当であるかの判断は容易ではなく、経験に頼らざるを得ない面も大きい。多層カーテンの販売・製造側において、カーテン部材個別の特性値に加え、多層カーテン全体としての特性値を情報として提供している場合もあるが、その場合でも、カーテン部材の組み合わせは代表的なものに限られる。
【0006】
また、内張り被覆材の設置にも、相応のコストがかかることから、事前に、内張り被覆材の性能をシミュレーションできることが望ましい。その際、内張り被覆材を配設する主たる目的としては保温性を高め、暖房に要するコストをできるだけ削減することにあることから、所望の内張り被覆材の保温性に関する性能、並びに、内張り被覆材を用いることによりどの程度の燃料消費用の節約になるかという省エネ性能を提示できることが望ましい。
【0007】
本発明は上記に鑑みなされたものであり、内張り被覆材として単層のカーテン部材を用いた場合、及び、多層カーテンの構成とした場合のいずれにおいても、農業用ハウスにおける燃料消費用の削減量をシミュレーションし、省エネ対策に貢献できる技術の提供を課題とし、あわせて、内張り被覆材として多層カーテンを用いた場合の保温性に関連する熱移動指標を、カーテン部材の組み合わせに関わらず算出できる技術の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明では、
農業用ハウスにて所定の期間、所定の植物を栽培する場合において、前記植物に適する設定夜温度の維持に必要な熱量を確保するための燃料消費量を、前記農業用ハウス内の内張り被覆材の熱移動指標を算出要素に含めて求める燃料消費量算出部と、
前記燃料消費量を、基準燃料消費量と比較し、前記内張り被覆材を用いたことによる燃料消費の削減量を求める燃料削減量算出部と
を有する農業用ハウスの省エネ性能シミュレーション装置を提供する。
【0009】
前記燃料消費量算出部により算出される前記燃料消費量に基づき、燃料コストを算出すると共に、前記基準燃料消費量を用いて算出される基準燃料コストと比較し、燃料削減コストを算出する燃料削減コスト算出部を有する構成とすることが好ましい。
前記燃料消費量算出部により算出される前記燃料消費量に基づき、温室効果ガス排出量を算出し、前記基準燃料消費量を用いて算出される基準温室効果ガス排出量と比較し、前記温室効果ガスの削減量を算出する温室効果ガス削減量算出部を有する構成とすることが好ましい。
前記燃料消費量算出部が、前記内張り被覆材の熱移動指標を求める熱移動指標決定部を有する構成とすることが好ましい。
【0010】
前記熱移動指標決定部は、前記内張り被覆材として単層のカーテン部材が選択された場合、カーテン部材の個別熱移動指標を記憶する個別熱移動指標記憶部にアクセスし、選択された前記カーテン部材の個別熱移動指標を読み出し、読み出した前記個別熱移動指標を前記内張り被覆材の熱移動指標として決定する構成とすることが好ましい。
【0011】
前記熱移動指標決定部は、前記内張り被覆材として複数のカーテン部材を多層に配設して構成される多層カーテンを用いる場合、カーテン部材の個別熱移動指標を記憶する個別熱移動指標記憶部にアクセスし、選択された前記複数のカーテン部材の各個別熱移動指標を読み出し、各カーテン部材の個別熱移動指標を説明変数とし、多層カーテンの多層状態での熱移動指標であるカーテン熱移動指標を目的変数として機械学習により生成された予測モデルを用い、選択された前記複数のカーテン部材から構成される多層カーテンのカーテン熱移動指標を算出し、前記カーテン熱移動指標を前記内張り被覆材の熱移動指標として決定する構成とすることが好ましい。
前記多層カーテンを構成するカーテン部材中、最も上層のカーテン部材は、より下層のカーテン部材と比較して、同等以上の保温性を有する条件で前記カーテン熱移動指標を算出する構成とすることが好ましい。
前記熱移動指標として、一晩の暖房熱量を当該一晩の夜間デグリアワーと被覆面積で割って得られた値から求められる平均放熱係数が用いられることが好ましい。
【0012】
また、本発明は、農業用ハウス内に設けられる内張り被覆材の、カーテン部材を多層に配設して構成される多層カーテンの多層状態での熱移動指標であるカーテン熱移動指標を算出する多層カーテンのカーテン熱移動指標算出装置であって、
前記多層カーテンを構成する複数の前記カーテン部材の個別熱移動指標を説明変数とし、前記多層カーテンのカーテン熱移動指標を目的変数として機械学習により生成された予測モデルを用い、前記カーテン部材の選択情報に基づき、前記カーテン部材の個別熱移動指標を記憶する個別熱移動指標記憶部から、対応する各カーテン部材の個別熱移動指標を読み出し、選択された前記複数のカーテン部材から構成される多層カーテンのカーテン熱移動指標を算出するカーテン熱移動指標算出部
を有する多層カーテンのカーテン熱移動指標算出装置を提供する。
前記多層カーテンを構成するカーテン部材中、最も上層のカーテン部材は、より下層のカーテン部材と比較して、同等以上の保温性を有する条件で前記カーテン熱移動指標を算出する構成とすることが好ましい。
前記熱移動指標として、一晩の暖房熱量を当該一晩の夜間デグリアワーと被覆面積で割って得られた値から求められる平均放熱係数が用いられることが好ましい。
【0013】
また、本発明は、コンピュータを農業用ハウスの省エネ性能シミュレーション装置として機能させるコンピュータプログラムであって、
農業用ハウスにて所定の期間、所定の植物を栽培する場合において、前記植物に適する設定夜温度の維持に必要な熱量を確保するための燃料消費量を、前記農業用ハウス内の内張り被覆材の熱移動指標を算出要素に含めて求める手順と、
前記燃料消費量を、基準燃料消費量と比較し、前記内張り被覆材を用いたことによる燃料消費の削減量を求める手順と
を前記コンピュータに実行させるコンピュータプログラムを提供する。
【0014】
前記燃料消費量に基づき、燃料コストを算出すると共に、前記基準燃料消費量を用いて算出される基準燃料コストと比較し、燃料削減コストを算出することが好ましい。
前記燃料消費量に基づき、温室効果ガス排出量を算出し、前記基準燃料消費量を用いて算出される基準温室効果ガス排出量と比較し、前記温室効果ガスの削減量を算出することが好ましい。
【0015】
前記内張り被覆材として単層のカーテン部材が選択された場合、カーテン部材の個別熱移動指標を記憶する個別熱移動指標記憶部にアクセスし、選択された前記カーテン部材の個別熱移動指標を読み出し、読み出した前記個別熱移動指標を前記内張り被覆材の熱移動指標として用いることが好ましい。
前記内張り被覆材として複数のカーテン部材を多層に配設して構成される多層カーテンを用いる場合、カーテン部材の個別熱移動指標を記憶する個別熱移動指標記憶部にアクセスし、選択された前記複数のカーテン部材の各個別熱移動指標を読み出し、各カーテン部材の個別熱移動指標を説明変数とし、多層カーテンの多層状態での熱移動指標であるカーテン熱移動指標を目的変数として機械学習により生成された予測モデルを用い、選択された前記複数のカーテン部材から構成される多層カーテンのカーテン熱移動指標を算出し、前記カーテン熱移動指標を前記前記内張り被覆材の熱移動指標として用いることが好ましい。
前記多層カーテンを構成するカーテン部材中、最も上層のカーテン部材は、より下層のカーテン部材と比較して、同等以上の保温性を有する条件で前記カーテン熱移動指標を算出することが好ましい。
前記熱移動指標として、一晩の暖房熱量を当該一晩の夜間デグリアワーと被覆面積で割って得られた値から求められる平均放熱係数が用いられることが好ましい。
【0016】
また、本発明は、コンピュータを多層カーテンのカーテン熱移動指標算出装置として機能させるコンピュータプログラムであって、
農業用ハウス内に、カーテン部材を多層にして配設される多層カーテンの多層状態での熱移動指標であるカーテン熱移動指標を推定する手順として、
前記多層カーテンを構成する複数の前記カーテン部材の個別熱移動指標を説明変数とし、前記多層カーテンのカーテン熱移動指標を目的変数として機械学習により生成された予測モデルを用い、前記カーテン部材の選択情報に基づき、前記カーテン部材の個別熱移動指標を記憶する個別熱移動指標記憶部から、対応する各カーテン部材の個別熱移動指標を読み出し、選択された前記複数のカーテン部材から構成される多層カーテンの熱移動指標を算出する手順
を前記コンピュータに実行させるコンピュータプログラムを提供する。
前記多層カーテンを構成するカーテン部材中、最も上層のカーテン部材は、より下層のカーテン部材と比較して、同等以上の保温性を有する条件で前記カーテン熱移動指標を算出することが好ましい。
前記熱移動指標として、一晩の暖房熱量を当該一晩の夜間デグリアワーと被覆面積で割って得られた値から求められる平均放熱係数が用いられることが好ましい。
【0017】
また、本発明は、上記のコンピュータプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供する。コンピュータプログラムを記憶した記録媒体は、非一過性の記録媒体であっても良い。非一過性の記録媒体は特に限定されないが、例えば フレキシブルディスク、ハードディスク、CD-ROM、MO(光磁気ディスク)、DVD-ROM、メモリカードなどの記録媒体が挙げられる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、内張り被覆材がカーテン部材1枚の単層からなる場合と複数枚のカーテン部材から構成される多層カーテンである場合のいずれにおいても、それらの熱移動指標を用いて燃料消費量の予測が可能で、選択されたカーテン部材又は多層カーテンによる燃料消費の削減量、温室効果ガスの削減量を把握でき、省エネ性能を可視化できると共に、省エネ性能のより優れた内張り被覆材を選択することが可能である。
【0019】
また、多層カーテンとする場合、その多層状態での熱移動指標であるカーテン熱移動指標は、組み合わせが多種であるため、従来、限定された情報のみであったが、本発明によれば、予測モデルによって、選択されたカーテン部材の個別熱移動指標を用いて多層カーテンのカーテン熱移動指標を求めることができる。よって、多層カーテンを設置する際において、保温性のレベルを知ることができ、多層カーテンを構成するカーテン部材の選択範囲が広がり、結果的に、所望の機能のカーテン部材の中で保温性に優れた組み合わせを選択でき、より適切な多層カーテンを選択できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明の一の実施形態に係る農業用ハウスの省エネ性能シミュレーション装置の概略構成を示すブロック図である。
図2図2(a)は、2層の多層カーテンのイメージを示した図であり、図2(b)は、3層の多層カーテンのイメージを示した図である。
図3図3は、内張り被覆材毎の燃料消費量、燃料削減コスト、燃料コスト、温室効果ガス排出量、温室効果ガス削減量等のシミュレーション結果を示したディスプレイの画面の一例を示した図である。
図4図4(a),(b)は、内張り被覆材を構成するカーテン部材を選択する際のディスプレイの画面の一例を示した図である。
図5図5は、必要熱量を算出する際に必要な情報を入力するディスプレイの画面の一例を示した図である。
図6図6は、必要熱量算出部における期間暖房負荷の算出過程を説明するための図である。
図7図7は、夜間デグリアワーの算出過程を説明するための図である。
図8図8は、期間暖房負荷に日毎の昼間暖房負荷を含める場合の算出過程を説明するための図である。
図9図9は、暖房由来温室効果ガス排出量算出部における温室効果ガス排出量の算出過程を説明するための図である。
図10図10は、本発明の一の実施形態に係る多層カーテンのカーテン熱移動指標算出装置の概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面に示した本発明の実施形態に基づき、さらに詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る農業用ハウスの省エネ性能シミュレーション装置1の概略構成を示した図である。この図に示したように、本実施形態の農業用ハウスの省エネ性能シミュレーション装置1は、プロセッサ(CPU)1a、記憶部(本明細書において「記憶部」と称する場合、主記憶装置、ストレージ等、揮発性や不揮発性の記録媒体のいずれも含む意味であり、いずれかに限定するものではない)1bを備えたコンピュータ(コンピュータの種類は限定されるものではなく、パーソナルコンピュータ、マイクロコンピュータ、携帯型情報端末等を含む)から構成される。
【0022】
具体的には、本実施形態の農業用ハウスの省エネ性能シミュレーション装置1には、燃料消費量算出部10、燃料削減量算出部20、燃料削減コスト算出部30及び温室効果ガス削減量算出部40として機能させる手順を実行するコンピュータプログラムが記憶部1bに記憶されている。コンピュータプログラムは、通常、当該コンピュータ(農業用ハウスの省エネ性能シミュレーション装置1)に内蔵又は外付けのハードディスクやSSD等の不揮発性の記録媒体に記憶され、上記プロセッサ1aによって読み出されて実行される。また、各種データの記憶場所は、農業用ハウスの省エネ性能シミュレーション装置1に内蔵又は外付けの記憶部のほか、通信回線を介して接続された記憶部であってもよい。
【0023】
燃料消費量算出部10は、農業用ハウスにて所定の期間、所定の植物を栽培する場合において、植物に適する設定夜温度の維持に必要な熱量を確保するための燃料消費量を、内張り被覆材の熱移動指標を算出要素に含めて求める。このため、燃料消費量算出部10は、内張り被覆材の熱移動指標を決定する熱移動指標決定部110と、設定夜温度の維持に必要な熱量(必要熱量)を算出する必要熱量算出部120を備えている。
【0024】
[熱移動指標の算出]
熱移動指標決定部110は、内張り被覆材として単層のカーテン部材が選択された場合、カーテン部材の個別熱移動指標を記憶する個別熱移動指標記憶部50にアクセスし、選択されたカーテン部材の個別熱移動指標を読み出し、読み出した個別熱移動指標を算出要素である内張り被覆材の熱移動指標として決定する。
【0025】
一方、内張り被覆材として、複数のカーテン部材を多層に配設して構成される多層カーテンを用いる場合には、個別熱移動指標記憶部50にアクセスし、選択された前記複数のカーテン部材の各個別熱移動指標を読み出し、各カーテン部材の個別熱移動指標を説明変数とし、多層カーテンの多層状態での熱移動指標であるカーテン熱移動指標を目的変数として機械学習により生成された予測モデルを用い、選択された複数のカーテン部材から構成される多層カーテンのカーテン熱移動指標を算出する。そして、求めたカーテン熱移動指標を算出要素である内張り被覆材の熱移動指標として決定する。
【0026】
多層カーテンAは、農業用ハウス内に、カーテン部材A1,A2からなる2層(図2(a))、あるいは、カーテン部材A1,A2,A3からなる3層(図2(b))というように多層に配設して構成される内張り被覆材である。カーテン部材A1,A2,A3は、2層や3層に限らず、4層等としてもよい。
【0027】
ここで、熱移動指標とは、カーテンの熱移動に関する指標であり、具体的には、熱貫流率、換気による損失熱量を全壁面積で割って求めた換気伝熱係数を加えた放熱係数又は暖房負荷係数と呼ばれる指標(「実測による温室暖房負荷係数の決定」、高倉直、岡田益己、農業気象第27巻、第3号、1972年3月)、又は、平均放熱係数を用いることができる。いずれを用いることも可能であるが、放熱係数は環境の変動(空の雲のかかり方など)の影響を受けるため、そのような変動のない、放熱係数の期待値である平均放熱係数を用いることが好ましい。なお、「平均放熱係数」は、一晩の暖房熱量を当該一晩の夜間デグリアワーと被覆面積で割って得られる一晩の暖房負荷係数を、実験期間内の複数種類のフィルム(カーテン部材)について求め、それらをフィルム(カーテン部材)の種類別に平均化した値である。本実施形態では、1980年11月9日~1981年2月3日にかけて、株式会社誠和の小山工場圃場に建設したA~Cの3つのハウス(表面積:262m、床面積:120m、外被膜:農業用塩化ビニルフィルム、暖房方式:温風暖房機、カーテンの形式:Aハウス・・・農業用ビニルフィルム一層、B,Cハウス・・・二軸二層、カーテン位置(下層):A,Bハウス・・・1.8m(地上より)、Cハウス・・・1.85m(地上より)、二層の場合の層間距離:20cm)にそれぞれ4つの栽培ベッドを設けて行った実験により求めた値を採用した。実験は、各栽培ベッド上のみ黒マルチで被覆し、栽培ベッド毎に、野沢菜、レタス、さやえんどう、いんげんを植え、各ハウスにおける暖房負荷係数の平均値をフィルムの種類に対応して求め、Aハウスの暖房負荷係数を100%としたときに、B,Cハウスの暖房負荷係数が各種フィルムの組み合わせによって何%の値になったかを求め、この値を「平均放熱係数」としたものである。
【0028】
予測モデルは、各カーテン部材A1,A2,A3として、13種類のものを用意し、それらを組み合わせた27通りの多層カーテンA(2層を24通り、3層を3通り)を製作し、各カーテン部材A1,A2,A3の個別熱移動指標としての平均放熱係数(個別平均放熱係数)を説明変数とし、製作した多層カーテンA自体のカーテン熱移動指標としての平均放熱係数(カーテン平均放熱係数)を目的変数として回帰分析により生成した。次式は、この予測モデルの一例である。
【0029】
(2層の多層カーテンの場合の予測モデル(2層用予測モデル))
カーテン平均放熱係数:K=0.578・K1+0.252・K2-0.326
(K1は、上層のカーテン部材の個別平均放熱係数、K2は中層(2層の場合、中層が下層となる)のカーテン部材の個別平均放熱係数)
【0030】
(3層の多層カーテンの場合の予測モデル(3層用予測モデル))
カーテン平均放熱係数:K’=0.334・K1’+0.146・K2’+0.252・K3’-0.514
(K1’は上層のカーテン部材の個別平均放熱係数、K2’は中層のカーテン部材の個別平均放熱係数、K3’は下層のカーテン部材の個別平均放熱係数)
【0031】
熱移動指標決定部110は、カーテン部材の選択情報を得ると、例えば、入力装置からの入力によって、上層のカーテン部材A1として透明系のカーテン部材「ラクソス(商品名)」が選択され、中層(2層の場合の下層)のカーテン部材A2として「テンパ(商品名)」が選択されると、個別熱移動指標記憶部50にアクセスし、カーテン部材A1,A2の個別平均放熱係数を読み出し、上記2層用予測モデルに適用して、多層カーテンAのカーテン平均放熱係数Kを算出する。
【0032】
このとき、多層カーテンAを構成するカーテン部材中、最も上層のカーテン部材A1は、より下層のカーテン部材A2,A3と比較して、同等以上の保温性を有する条件でカーテン平均放熱係数Kを算出することが好ましい。すなわち、上層のカーテン部材A1としては、保温性の点で同等以上のものを選択するように設定すること、すなわち、中層又は下層のカーテン部材A2,A3と比較して個別平均放熱係数が同値かそれよりも低い値のものが選択されるようにすることが好ましい。例えば、選択された上層のカーテン部材A1の個別平均放熱係数が、中層用又は下層用のカーテン部材A2,A3の平均放熱係数よりも高い場合には、再選択させる処理としたり、中層用又は下層用カーテン部材A2,A3を選択する段階で選択済みの上層のカーテン部材A1よりも平均放熱係数が高いものしかリストに示されない処理としたりすることもできる。また、中層用又は下層用のカーテン部材A2,A3が先に選択された場合には、上層用のカーテン部材A1として、それらよりも個別平均放熱係数が低いものしかリスト表示されない処理とすることもできる。
【0033】
熱移動指標決定部110は、例えば、図3及び図4(a)の「内張り被覆材の種類」の欄がクリックされると、図4(b)に示したようなポップアップ画面を表示させる。このポップアップ画面の「上層」、「中層」、「下層」の各入力欄に、プルダウンメニューを利用して、所望のカーテン部材が指定される。この場合、例えば、透明性、遮光性、光散乱性などのカーテン部材の他の機能については、操作者が別の資料を参考にしつつ選択する。あるいは、プルダウンメニューに表示されたカーテン部材の各商品名に隣接して、透明、遮光、光散乱など、各カーテン部材の特徴となる文言を付するようにしてもよい。もちろん、そのような他の機能を参考にせずに、任意に選択し、保温性の高いもの(平均放熱係数の低いもの)を選択することもできる。
【0034】
例えば、上層の入力欄において「ラクソス1243D」を選択し、中層の入力欄において「テンパ6562D」が選択され、下層の入力欄において「ハーモニー(商品名)4215O」が選択されたとする。すると、熱移動指標決定部110において、個別熱移動指標記憶部50にアクセスし、各カーテン部材の個別平均放熱係数を読み出す。この場合、上層、中層、下層の3層のカーテン部材(ラクソス1243D+テンパ6562D+ハーモニー4215O)が選択されたため、熱移動指標決定部110は、上記3層用予測モデルを適用して、多層カーテンAのカーテン平均放熱係数Kを算出し、これを算出要素に用いる熱移動指標として決定する。この例では、1.9kcal/mh℃となる。カーテン平均放熱係数Kは、図3の画面の「平均放熱係数」の欄に表示される。なお、図3の例では、この3層の多層カーテンAを採用した場合の平均表熱係数が第2欄に表示され、第1欄には、1層のカーテンを採用した場合の平均放熱係数が表示され、第3欄ではカーテンを配設しない場合の平均放熱係数が表示されている。
また、図5に示した必要熱量を算出するための入力画面の「内張り被覆材の種類」の欄にも上記の選択された多層カーテンAの構成が反映されると共に、平均放熱係数も反映される。なお、上記の説明では、図3の画面が表示されている際に「内張り被覆材の種類」の欄がクリックされると、図4(b)のポップアップ画面が表示されるようになっているが、図5に示した必要熱量の入力画面を優先して表示させ、当該入力画面において「内張り被覆材の種類」の欄がクリックされると、図4(b)のポップアップ画面が表示され、各カーテン部材を選択し、その選択結果が、図5の画面と共に図3の画面にも反映されるようにすることも可能であり、いずれの画面を優先して表示させるかは任意である。
【0035】
また、図4(b)に示したポップアップ画面の「上層」、「中層」、「下層」の各入力欄のうち、いずれか一つのみ、例えば、中層の入力欄において「テンパ6562D」が選択され、上層及び下層の入力欄には何も選択されていない場合には、熱移動指標決定部110は、上記のように個別熱移動指標記憶部50にアクセスし、「テンパ6562D」の個別平均放熱係数を読み出し、その個別平均放熱係数を算出要素に用いる熱移動指標として決定する。
【0036】
[設定夜温度の維持に必要な熱量(必要熱量)の算出]
必要熱量算出部120は、農業用ハウス内の設定夜温度を確保するための必要熱量を算出する。設定夜温度は、植物の種類に応じて規定され、栽培期間中の平均値に相当する値である。但し、農業用ハウスの設置地域や季節等も考慮して定められることが好ましい。設定夜温度は、図5に示した必要熱量算出のための入力画面において手入力で設定することも可能であるが、好ましくは、農業用ハウスの省エネ性能シミュレーション装置1が、植物の種類別に適切な夜温(平均値)を記憶した植物情報データベース52を有し(図6参照)、入力画面において栽培対象の植物の種類を選択すると、必要熱量算出部120が当該植物情報データベース52にアクセスして、当該植物に対応する夜温(平均値)を読み出して設定される構成とする。例えば、トマトの場合、設定夜温度=15.5℃が読み出されて設定される。
【0037】
必要熱量算出部120は、図6に示したように、農業用ハウスの設置地域の公開気象データが記憶されている気象情報データベース53から得られる日毎の最高気温及び日毎の最低気温に(S501)、農業用ハウスの設計床面積(S502)及び設計被覆面積(S503)を考慮して日毎の夜間暖房負荷(S507)を求め、この日毎の夜間暖房負荷(S507)を用いて栽培期間における期間暖房負荷(S509)を求める。この期間暖房負荷(S509)が、栽培期間において設定夜温度を確保するための必要熱量となる。なお、「設計床面積」は、建設予定の農業用ハウスの床面積の設計値であり、計算負荷を軽減するため、例えば方形の床形状と仮定して算出される値である。「設計被覆面積」は、農業用ハウスの側面、妻面、屋根を形成する天井面と矢切面を合わせた、被覆材により被覆される面積の設計値である。
【0038】
日毎の夜間暖房負荷(S507)を求めるためには、日毎の夜間放熱量(S505)と日毎の地中伝熱量(S506)を求める。日毎の夜間放熱量(S505)は、「設計被覆面積(S503)×内張り被覆材(内張り被覆材が選択されない場合には屋根材)の平均放熱係数(S510)×日毎の夜間デグリアワー(S504)」により求められる。設計床面積及び設計被覆面積は、構造情報データベース51から読み込まれる。
【0039】
内張り被覆材の平均放熱係数(S510)は、上記の熱移動指標決定部110により求められた熱移動指標(1枚のカーテン部材のみの場合は、そのカーテン部材の個別熱移動指標(個別平均放熱係数)、多層カーテンAの場合にはカーテン熱移動指標(カーテン平均放熱係数))の値が用いられる。
【0040】
日毎の夜間デグリアワー(S504)とは、上記の設定夜温度と外気温の差分を積分した値である。夜間デグリアワーは、近似値が用いられる。地域の日毎の最高気温と日毎の最低気温を直線で結んだときの幾何的な暖房デグリアワーの算出方法に従って求める(農業気象(J. Agr. Met.) 38 (1):29-36頁, 1982、林 真紀夫、古在豊樹「各種暖房デグリアワー算定値と実測値の比較および暖房デグリアワー線図の提案」参照)。
【0041】
具体的には、図7に示したように、「日毎の最低気温≧設定夜温度」か否かを判断する(S601)。
a)日毎の最低気温が設定夜温度以上の場合(S601においてYesの場合):
「(14×設定夜温度(平均値)+(49×日毎の最高気温+119×日毎の最低気温)/12)×0」により求める。すなわち、この場合は、暖房の必要がないため、夜間デグリアワー(1)は0となる(S602)。
b)次に、「7/12×日毎の最高気温+5/12×日毎の最低気温>設定夜温度(平均値)」か否かを判断する(S603)。
b-1)設定夜温度を超える場合(S603においてYesの場合):
「12×(設定夜温度(平均値)-日毎の最低気温)2/(日毎の最高気温-日毎の最低気温)」により、夜間デグリアワー(2)を求める(S604)。
b-2)設定夜温度以下の場合(S603においてNoの場合):
「(14×設定夜温度(平均値)+(49×日毎の最高気温+119×日毎の最低気温)/12)×1」により、夜間デグリアワー(3)を求める(S605)。
【0042】
なお、夜間デグリアワーの近似値は、日毎の最高気温と日毎の最低気温を説明変数とし、夜間デグリアワーを目的変数として生成した機械学習モデルにより求めることが正確性の点でより好ましい。
【0043】
日毎の地中伝熱量(図6のS506)は、日毎の地中熱流束(S511)に設計床面積(例えば、1000m)(S502)を掛け、これに日没から翌朝までの夜間時間に相当する14時間を掛けて求められる。日毎の地中熱流束(S511)は、設定夜温度(平均値)と日毎の夜間平均外気温との差分に係数を掛け(S512)、これに地中伝熱係数(札幌の場合、-31)(S513)をプラスして求められる。なお、地中伝熱係数は、公開気象データに基づき各地点について暖地・寒地の分別を行い割り当てた値であり、本実施形態では、日最低気温0℃以下の日数が112日/年未満の場合は暖地として「-36」を割り当て、日最低気温0℃以下の日数が112日以上の場合は寒地として「-31」を割り当てている。
日毎の夜間平均外気温は、地域の日毎の最高気温及び日毎の最低気温(S501)を用いて、「(5×日毎の最高気温+19×日毎の最低気温)/24」により求められる。
【0044】
このようにして得られた日毎の夜間放熱量(S505)と日毎の地中伝熱量(S506)を合計すると、日毎の夜間暖房負荷(S507)が求められる。日毎の夜間放熱量(S505)と日毎の地中伝熱量(S506)との合計が0以下の場合には、日毎の夜間暖房負荷は0として算出される。
【0045】
日毎の夜間暖房負荷(S507)を栽培期間に相当する日数分求め、それらを合計する(S508)。これにより期間暖房負荷が得られる(S509)。なお、期間を月毎にすれば月次の期間暖房負荷が求められ、12ヶ月分合計すれば、年次の期間暖房負荷が得られる。
【0046】
但し、期間暖房負荷(S509)を求めるにあたっては、図8に示したように、日毎の夜間暖房負荷(S507)だけでなく、日毎の昼間暖房負荷(S701)を加算し、日毎の期間暖房負荷(S702)を求め、これを、栽培期間に対応する日数分求めて合計する構成とすることが好ましい。日毎の昼間暖房負荷(S701)は、日射量作用を考慮した値となる。日毎の昼間暖房負荷(S701)は、簡易的に固定値を採用することもできるが、公開気象データを参照し、「昼間の室内設定温度-外気温-室内太陽熱影響温度」を求めて(S703)、そのうち正の部分のみを積分した値(デグリアワー)を求めることが好ましい。このように、日毎の昼間暖房負荷(S701)を用いることにより、期間暖房負荷(S509)の算出精度が高くなる。日毎の昼間暖房負荷(デグリアワー)(S701)は、日毎の最高気温、日毎の最低気温及び日照時間を説明変数とした生成した機械学習モデルにより求めることが精度を高めるためにはより好ましい。
【0047】
なお、上記のように、日毎の最高気温、日毎の最低気温等の必要な気象データは、地域に対応させて気象情報データベース53に記憶されている(図6参照)。気象情報データベース53は、当該地域の地域気象観測システム(アメダス)等から必要な情報を取り込んで形成することができる。なお、これらの情報を気象情報データベース53にアクセスして読み出す場合に限らず、当該地域の地域気象観測システム等に直接アクセスして読み出す仕組みとすることも可能である。
【0048】
[燃料消費量の算出]
燃料消費量算出部10は、必要熱量算出部120により、上層、中層、下層の3層からなる多層カーテンA(ラクソス1243D+テンパ6562D+ハーモニー4215O)を用いた場合の必要熱量である期間暖房負荷(S509)が求められたならば、期間暖房負荷を確保するのに要した燃料消費量を算出する。まず、上記により得られた期間暖房負荷を熱利用効率(例えば、0.9)で割る(S802)。なお、熱利用効率は、農業用ハウス内において必要熱量を確保するにあたって、熱源から農業用ハウス内に至るまでの損失を考慮するための任意の値であるが、あくまでシミュレーションであるため、農業用ハウス内の必要熱量を用いて比較できればよく、必ずしも熱利用効率を考慮する必要はない。但し、熱利用効率を考慮することで、より実際の温室効果ガス排出量に近い値を求めることができる。
【0049】
例えば、必要熱量算出部120により、必要熱量である年次期間暖房負荷=1734.571389GJが求められた場合、これを例えば熱利用効率=0.9で除し、1927.301543GJを得る。この値に対して、使用する燃料種別に応じた単位発熱量で除することで、年次燃料消費量求められる。例えば、図5に示したように、入力画面においてA重油が選択された場合には、A重油の単位発熱量39.1GJ/kLが採用される。よって、この例では、1927.301543GJ/39.1GJ/kL=49.29159957kL=49291.59957Lが年次燃料消費量として求められる。
【0050】
[燃料削減量の算出]
燃料削減量算出部20は、燃料消費量算出部10において、選択した内張り被覆材に応じた燃料消費量が求められたならば、その値を基準燃料消費量と比較する。基準燃料消費量としては、例えば、内張り被覆材を設置しない場合の燃料消費量を設定することができる。
【0051】
図3の第1欄が、「内張り被覆材の種類」が1枚のカーテン部材「テンパ5557D」の例であり、第2欄が「ラクソス1243D+テンパ6562D+ハーモニー4215O」3枚の多層カーテンの例であり、第3欄が内張り被覆材を設置しない例である。なお、第3欄の内張り被覆材を用いない場合の燃料消費量の算出は、燃料消費量算出部10において、内張り被覆材ではなく、屋根材の平均放熱係数(例えば、屋根材がフッ素樹脂製のフィルムの場合、5.6kcal/mh℃)を用いて上記と同様の計算を行う。
【0052】
その結果、年次燃料消費量は、第1欄のケースで80,102L、第2欄のケースで49,292L、第3欄のケースで234,875Lと算出され、表示される。このうち、第3欄の内張り被覆材を配設しない場合を基準燃料消費量とすると、燃料削減量は次のとおりとなる。
第2欄-第3欄=-185,583L
第1欄-第3欄=-154,773L
よって、省エネ効果が高いのは、第1欄の内張り被覆材よりも第2欄の内張り被覆材ということになる。
【0053】
なお、基準燃料消費量は、内張り被覆材を設置しない場合だけでなく、適宜の内張り被覆材を用いて算出された燃料消費量を基準燃料消費量することもできる。図3の例では、第1欄のケース又は第2欄のケースのいずれかを基準とし、両者の差分を求めて比較することももちろん可能である。例えば、
第1欄-第2欄=+30,810L
となり、第1欄のケースの方が、第2欄よりも燃料消費量が多いことが把握できる。
【0054】
[燃料削減コストの算出]
燃料削減コスト算出部30は、燃料消費量算出部10により算出された上記の選択した内張り被覆材に応じた燃料消費量に基づき、燃料コストを算出し、基準燃料消費量を用いて算出される基準燃料コストと比較し、燃料削減コストを算出する。
【0055】
例えば、A重油の単価を¥79/L(熱量あたりの単価では約¥2,000/GJ)とする。
第1欄の内張り被覆材(単層)のケース:
80,102L×¥79= ¥6,328,051/年
¥31,640,253/5年
第2欄の内張り被覆材(多層カーテン)のケース:
49,292L×¥79= ¥3,894,068/年
¥19,470,340/5年
第3欄の内張り被覆材なしのケース:
234,875L×¥79=¥18,553,123/年
¥92,775,615/5年
その結果、第3欄の内張り被覆材なしを基準とすると、差分は次のとおりとなる。
第2欄-第3欄=¥-14,661,005/年
¥-73,305,275/5年
第1欄-第3欄=¥-12,227,072/年
¥-61,135,362/5年
【0056】
第1欄のケース又は第2欄のケースのいずれかを基準とした場合には、両者の差分は次のとおりとなる。
第1欄-第2欄= ¥+2,433,983/年
¥+12,169,915/5年
以上より、第2欄のケースの燃料削減コストが最も大きいことがわかる。
【0057】
[温室効果ガス削減量の算出]
温室効果ガス削減量算出部40は、燃料消費量算出部10により算出される燃料消費量に基づき、温室効果ガス排出量を算出し、さらに、基準燃料消費量を用いて算出される基準温室効果ガス排出量と比較し、温室効果ガスの削減量を算出する。
具体的には、図9に示したように、まず、必要熱量算出部120により求められた必要熱量である期間暖房負荷(S509)を温室効果ガス排出量に換算する。例えば、必要熱量算出部120により、必要熱量である年次期間暖房負荷=1734.57GJが求められた場合(S509)、これを上記のように例えば熱利用効率=0.9で除し、1927.30GJを得る(S802)。この値に対して、化石燃料の種類によって紐付けられた排出係数(S803)を掛ける。化石燃料の種類は入力画面において選択可能とすることができ、図5に示したように、例えばA重油を選択した場合には、二酸化炭素の排出係数=0.0189が採用される。よって、上記の多層カーテンAを用いて暖房設備を稼働した例では、1927.30GJ×0.0189×44/12=133.56tが求められる。このようにして求められた温室効果ガス排出量は、図3に表示される。
【0058】
すなわち、図3に示したように、温室効果ガス排出量は、同様に求められ、第1欄の内張り被覆材を用いたケースでは217t、第2欄の内張り被覆材を用いたケースでは133.6t、第3欄の内張り被覆材を用いないケースでは636.4tとなる。
【0059】
各ケースの差分を求めると次のとおりとなる。
第2欄-第3欄=-502.8t/年
第1欄-第3欄=-419.4t/年
第1欄-第2欄= +83.4t/年
【0060】
内張り被覆材を使用しない第3欄のケースを基準温室効果ガス排出量とすると、第3欄のケースでは内張り被覆材による温室効果ガス削減量が0tとなる。そして、第1欄の内張り被覆材を用いたケースの温室効果ガス削減量は419.4t/年、第2欄の内張り被覆材を用いたケースの温室効果ガス削減量は502.8t/年となる。
【0061】
なお、温室効果ガス削減量算出部40は、参考情報として、温室効果ガス削減量に相当する量を、樹木に吸収させる場合に換算し、また、世帯の年間二酸化炭素排出量に換算して表示させることができる。例えば、スギの人工林の場合、樹木1本あたりの換算で1年で約14kgの二酸化炭素を取り込む。また、世帯あたりの二酸化炭素排出量は2020年度で2.88t(環境省)とされている。そこで、これらの数値を用いて上記により求められた温室効果ガス排出量を割れば算出できる。図3では、第1欄のケース、第2欄のケース、第3欄のケースのそれぞれについて樹木換算、世帯換算の数値を表示させている。
【0062】
本実施形態によれば、内張り被覆材の熱移動指標(平均放熱係数等)を燃料消費量の算出に用いている。このため、内張り被覆材の構成、すなわち、カーテン部材1枚の単層のもの、カーテン部材を2枚以上を適宜に組み合わせた多層カーテンのいずれであっても、それらの構成の違いに即した燃料消費量、燃料削減量、燃料削減コスト、温室効果ガス削減量といった省エネ性能をシミュレーションできる。従って、内張り被覆材の構成の選択、特に、多層カーテンを採用する場合のカーテン部材の組み合わせの選択に役立ち、省エネ性能を高めるのに寄与できる。その一方で、従来と比較して、多層カーテンの組み合わせの自由度も広がる。
【0063】
上記実施形態の農業用ハウスの省エネ性能シミュレーション装置1は、内張り被覆材の熱移動指標を算出要素に含めて燃料消費量を算出し、省エネ性能を可視化するため、各種タイプの内張り被覆材の平均放熱係数等の熱移動指標を求める熱移動指標決定部110を設けている。
【0064】
この熱移動指標決定部110は、内張り被覆材を単層とする場合には、選択されたカーテン部材の熱移動指標を読み込んで決定するだけであるが、多層カーテンとする場合には、上記のように予め構築された予測モデルを用いて実行される。そこでこの熱移動指標決定部110を用いることで、多層カーテンの多層状態での熱移動指標を求めるコンピュータから構成される多層カーテンのカーテン熱移動指標算出装置1000を構築することもできる。
【0065】
この多層カーテンのカーテン熱移動指標算出装置1000は、図10に示したように、上記の熱移動指標決定部110と同様の構成のカーテン熱移動指標算出部1100を備える。すなわち、カーテン熱移動指標算出部1100は、内張り被覆材として、複数のカーテン部材を多層に配設して構成される多層カーテンAを用いる場合には、個別熱移動指標記憶部50にアクセスし、選択された複数のカーテン部材の各個別熱移動指標を読み出し、各カーテン部材の個別熱移動指標を説明変数とし、多層カーテンの多層状態での熱移動指標であるカーテン熱移動指標を目的変数として機械学習により生成された予測モデルを用い、選択された複数のカーテン部材から構成される多層カーテンのカーテン熱移動指標を算出する。
【0066】
予測モデルの例は、上記の2層用予測モデル及び3層用予測モデルと同じである。この予測モデルを用いることで、上層、中層、下層のカーテン部材を選択すればそれらの多層状態での熱移動指標が算出される。熱移動指標も上記と同様、平均放熱係数等を用いることができる。多層カーテンのカーテン熱移動指標算出装置1000によれば、カーテン部材の選択によって種々の組み合わせの多層カーテンの熱移動指標を算出できる。従って、内張り被覆材を採用する場合、シミュレーションされた多層カーテンの平均放熱係数を参考にして選択することが可能となる。熱移動指標として平均放熱係数を採用した場合には、平均放熱係数はその値が低いほど保温性が高いため、出力された平均放熱係数を参照して、複数の組み合わせ中から、より保温性の高いものを選択したりすることができる。
なお、上層のカーテン部材A1としては、より下層のカーテン部材A1,A2と比較して保温性の点で同等以上のものを選択するように設定すること、すなわち、中層又は下層のカーテン部材A2,A3と比較して個別平均放熱係数が同値かそれよりも低い値のものが選択されるようにすることが好ましいことは上記実施形態と同様である。この場合、例えば、選択された上層のカーテン部材A1の個別平均放熱係数が、中層用又は下層用のカーテン部材A2,A3の平均放熱係数よりも高い場合には、再選択させる処理としたり、中層用又は下層用カーテン部材A2,A3を選択する段階で選択済みの上層のカーテン部材A1よりも平均放熱係数が高いものしかリストに示されない処理としたり、中層用又は下層用のカーテン部材A2,A3が先に選択された場合には、上層用のカーテン部材A1として、それらよりも個別平均放熱係数が低いものしかリスト表示されない処理としたりすることができることも上記実施形態と同様である。
【符号の説明】
【0067】
1 農業用ハウスの省エネ性能シミュレーション装置
10 燃料消費量算出部
110 熱移動指標決定部
120 必要熱量算出部
20 燃料削減量算出部
30 燃料削減コスト算出部
40 温室効果ガス削減量算出部
50 個別熱移動指標記憶部
51 構造情報データベース
52 植物情報データベース
53 気象情報データベース
1000 多層カーテンのカーテン熱移動指標算出装置
1100 カーテン熱移動指標算出部
【要約】
各種内張り被覆材の熱移動指標を算出要素に含めた燃料消費量を算出し、農業用ハウスの省エネ性能をシミュレーションする。
内張り被覆材がカーテン部材1枚の単層からなる場合と複数枚のカーテン部材から構成される多層カーテンである場合のいずれにおいても、それらの熱移動指標を用いて燃料消費量の予測が可能で、選択されたカーテン部材又は多層カーテンによる燃料消費の削減量、温室効果ガスの削減量を把握でき、省エネ性能を可視化できると共に、省エネ性能のより優れた内張り被覆材を選択することが可能である。
図1
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図10