(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】体表面形状測定装置、寝具、寝具の製造方法、コンピュータプログラム、枕、及び枕の製造方法
(51)【国際特許分類】
A47C 27/15 20060101AFI20240618BHJP
A47G 9/10 20060101ALI20240618BHJP
A47C 31/12 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
A47C27/15 A
A47G9/10 E
A47G9/10 W
A47C27/15 B
A47C31/12
(21)【出願番号】P 2019237426
(22)【出願日】2019-12-26
【審査請求日】2022-09-30
(31)【優先権主張番号】P 2019134131
(32)【優先日】2019-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019196643
(32)【優先日】2019-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】597014741
【氏名又は名称】ネムール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 裕樹
【審査官】黒田 正法
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/182539(WO,A1)
【文献】特開平10-168631(JP,A)
【文献】韓国公開実用新案第20-2013-0000468(KR,U)
【文献】特開2005-137596(JP,A)
【文献】特開2004-205231(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 27/15
A47G 9/10
A47C 31/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
寝姿勢の人体の被測定部分以外の部分を支持する複数の支持部と、
前記被測定部分が載置される複数の測定部と、
前記被測定部分の体表面形状に係るデータを取得する取得部と、
を備え、
前記複数の支持部を、支持部間に前記測定部が介在するように並設し、
前記複数の支持部の並設方向に前記取得部を案内する案内部を備え、
前記被測定部分が前記測定部に載置され、前記被測定部分以外の部分は前記支持部により支持し、前記被測定部分の体表面形状を測定
し、
前記取得部は、前記被測定部分を非接触で撮影し、前記被測定部分の体表面形状に係る撮像データを取得する
体表面形状測定装置。
【請求項2】
前記案内部は、前記測定部の下側に配置され、前記測定部に前記人体が仰向けに寝た場合、前記人体の背面側全体に対向するように、前記支持部の並設方向に延び、
前記取得部は前記案内部を走って上側を撮影する
請求項1に記載の体表面形状測定装置。
【請求項3】
前記測定部にネットを張り渡し、
該ネットの少なくとも両側部を支持するネット支持部を備え、
前記被測定部分を前記ネットの平面に対向させて、該被測定部分の体表面形状を測定する請求項1
又は2に記載の体表面形状測定装置。
【請求項4】
前記ネット支持部を昇降させる昇降部を備える、請求項
3に記載の体表面形状測定装置。
【請求項5】
前記ネットの幅は、前記支持部の並設方向に伸縮可能である、請求項
3又は
4に記載の体表面形状測定装置。
【請求項6】
請求項1から
5までのいずれか1項に記載の体表面形状測定装置を用いて、寝姿勢の人体の頭部の骨形状を含む体表面形状に係るデータを取得し、
該データに基づいて、寝姿勢の頭部に当接する当接部を形成し、該当接部を枕本体に嵌合して枕を製造する、枕の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体表面形状測定装置、寝具、寝具の製造方法、コンピュータプログラム、枕、及び枕の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
平成28年の国民健康・栄養調査結果によると、直近の1ヶ月間で睡眠により十分に休養が取れていない者の割合は19.7%であり、この割合は年々増加している。厚生労働省による「健康づくりのための睡眠指針2014」によると、睡眠に問題があると不安、ストレスホルモンが増加し、事故が生じたり、うつ病になり易いことが確認されている。短い睡眠時間及び不眠により肥満、高血圧、耐糖能障害、循環器疾患、及びメタボリックシンドローム等の問題が生じることが示されている。
このような種々の睡眠に関する問題を改善するために、消費者は寝具を買い替えることを検討したりしている。あるアンケート調査によると、快眠のためにこだわっていることやグッズの第1位に「枕」が挙げられている。
【0003】
従来から、快眠の要望に応えるべく種々の枕が開発されている。
従来の枕としては、表面に何らかの素材を置き、柔らかくする、又は高さ調整のための部材を中に配置する等しているものがある(例えば特許文献1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
頭部体圧は、例えば柔らかいウレタン、又はウレタンに例えばジェルを貼ったウレタン・ジェル枕であれば、それに頭部を載置した場合、使用者間で体圧の分散率は様々であり、人により沈み込み過ぎたり、又は高過ぎたりする。高さの調整部材を配置した場合も同様である。
パイプ枕も同様であり、パイプの量で高さをコントロールしても経時的に容易に変形し、直ぐに高さが合わなくなるため、何度も店に調整しに行く必要がある。何度でも調整するサービスが存在するが、消費者にとっては店頭に足を運ぶのは煩雑であり、他の商品を購入することにもつながる。
【0006】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、力が緩んでいる実際の人体の寝姿勢に合う骨形状を含む体表面形状を測定することができる体表面形状測定装置、寝具、寝具の製造方法、コンピュータプログラム、枕、及び枕の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る体表面形状装置は、寝姿勢の人体の被測定部分以外の部分を支持する支持部と、前記被測定部分が嵌まる1又は複数の測定部とを備え、前記被測定部分が前記測定部に嵌まり、前記被測定部分以外の部分は前記支持部により支持し、前記被測定部分の体表面形状を測定する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、実際の宙づり状態の人体の寝姿勢に合う骨形状を含む体表面形状を測定することができる。「宙づり状態」とは、全身の力が抜けた状態で、手足が伸びて脱力した自然な位置にあり、呼吸が苦しくなく被測定者に違和感が無い状態をいう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】当接部の作製方法を説明するための説明図である。
【
図4】本体を内カバーに収容した状態を示す平面図である。
【
図5】本体を内カバーに収容した状態を示す裏面図である。
【
図6】内カバーを外カバーに収容した状態を示す枕の平面図である。
【
図7】内カバーを外カバーに収容した状態を示す枕の裏面図である。
【
図12】実施形態2に係る枕の本体及び当接部の平面図である。
【
図14】実施形態4に係る寝具製造システムを示すブロック図である。
【
図16】体表面形状測定装置を用いて使用者の寝姿勢時の体表面形状を取得する状態を示す模式図である。
【
図17】実施形態5に係る体表面形状測定装置を示す斜視図である。
【
図18】体表面形状測定装置を用いて使用者の寝姿勢時の体表面形状を取得する状態を示す模式図である。
【
図19】本実施形態の体表面形状測定装置を用いて作製したマットを示す平面図である。
【
図21】変形例1のマットの臀部部分を示す断面図である。
【
図22】実施形態5に係る寝具製造システムを示すブロック図である。
【
図23】PCの制御部による、マットの製造処理の手順を示すフローチャートである。
【
図25】変形例3の体表面形状測定装置の測定部を示す斜視図である。
【
図26】変形例4の体表面形状測定装置を示す平面図である。
【
図27】実施形態6に係る体表面形状測定装置を示す断面図である。
【
図29】実施形態8に係る体表面形状測定装置を示す断面図である。
【
図30】型取りをした後の型取り材を示す平面図である。
【
図31】実施形態9に係る体表面形状測定装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態の概要)
最初に本発明の実施態様を列挙して説明する。以下に記載する実施態様の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0011】
本発明の一態様に係る体表面形状測定装置は、寝姿勢の人体の被測定部分以外の部分を支持する支持部と、前記被測定部分が嵌まる1又は複数の測定部とを備え、前記被測定部分が前記測定部に嵌まり、前記被測定部分以外の部分は前記支持部により支持し、前記被測定部分の体表面形状を測定する。
【0012】
上記構成によれば、力が緩んでいる(宙づり状態の)実際の人体の寝姿勢に合う骨形状を含む体表面形状を測定することができる。体表面形状の突出部分は使用者の体重(荷重)がかかる部分であり、同時に、体圧の分布の情報も取得できる。使用者の体重がかかる部分と寝具とが密着し、体圧が良好に分散し、頭、肩、首、及び腰に痛みが生じるのが抑制され、違和感がなく、良好な睡眠が得られる枕及びマット等の寝具を作製することができる。
【0013】
上述の体表面形状測定装置において、前記支持部を複数有し、複数の支持部を、支持部間に前記測定部が介在するように並設してもよい。
【0014】
上記構成によれば、測定したい部分に合わせて、支持部を並べ替え、支持部間の間隙を調整し、測定部の幅を調整することができる。
【0015】
上述の体表面形状測定装置において、前記測定部にネットを張り渡し、該ネットの少なくとも両側部を支持するネット支持部を備え、前記被測定部分を前記ネットの平面に対向させて、該被測定部分の体表面形状を測定してもよい。
【0016】
上記構成によれば、ネットにより被測定部分を支持することができる。また、頭部形状を測定する場合、髪の毛をネットに密着させることができ、体表面形状を良好に測定することができる。
【0017】
上述の体表面形状測定装置において、前記ネット支持部を昇降させる昇降部を備えてもよい。
【0018】
上記構成によれば、高さを調整して、被測定部分を良好に宙づり状態にすることができる。また、使用者が使用している寝具に合わせて、高さを調整することができる。
【0019】
上述の体表面形状測定装置において、前記ネットの幅は、前記支持部の並設方向に伸縮可能であってもよい。
【0020】
上記構成によれば、使用者の体格、体の形状に合わせて、測定部の幅を調整することができる。
【0021】
本発明の一態様に係る体表面形状測定装置は、支持台と、該支持台に載置し、寝姿勢の人体の被測定部分を型取りする型取り材とを備える。
【0022】
上記構成によれば、型により、力が緩んでいる実際の人体の寝姿勢に合う骨形状を含む体表面形状を取得することができ、使用者の荷重がかかる部分と寝具とが密着し、体圧が良好に分散し、頭、肩、首、及び腰に痛みが生じるのが抑制され、違和感がなく、良好な睡眠が得られる枕及びマット等の寝具を作製することができる。
【0023】
上述の体表面形状測定装置において、前記支持台を複数有し、支持台は各別に昇降可能であり、被測定部分を支持する支持台に前記型取り材を載置してもよい。
【0024】
上記構成によれば、被測定部分が寝姿勢の宙づり状態になるように、各支持部の高さを調整し、また、使用者が使用している寝具に合わせて、高さを調整することができる。
【0025】
本発明の一態様に係る寝具は、寝具本体と、寝姿勢の人体の宙づり状態の体表面形状に基づいて、前記寝具本体に複数設けられた凹部及び凸部と、前記複数の凹部に嵌合され、寝姿勢の人体の体重がかかる部分が当接する複数の当接部とを備える。
【0026】
上記構成によれば、力が緩んでいる実際の人体の寝姿勢に合う体表面形状に基づいて設けた凹部に、体表面形状に基づき形成し、体重がかかる部分が当接する当接部を凹部に嵌合してある。体表面形状の凹んだ部分に対応して、寝具本体に凸部が設けてある。荷重がかかる部分を含め、体の凹凸と寝具とが密着し、体圧が良好に分散し、違和感がなく、肩及び首の凝り、並びに頭痛が生じるのが抑制される。寝返りもスムーズに打つことができ
るとともに少ない回数で済み、良好な睡眠が得られる。
【0027】
本発明の一態様に係る寝具は、寝具本体と、寝姿勢の人体の宙づり状態の体表面形状に基づいて、前記寝具本体が切削された複数の切削部と、前記切削部のうちの人体の体重がかかる部分に積層され、前記部分が当接する合成樹脂製の当接部とを備える。
【0028】
上記構成によれば、力が緩んでいる実際の人体の寝姿勢に合う体表面形状に基づいて切削した部分に、合成樹脂を積層して、体重がかかる部分が当接する当接部を形成してある。荷重がかかる部分を含め、体の凹凸と寝具とが密着し、体圧が良好に分散し、違和感がなく、肩及び首の凝り、並びに頭痛が生じるのが抑制される。寝返りもスムーズに打つことができるとともに少ない回数で済み、良好な睡眠が得られる。
【0029】
本発明の一態様に係る寝具は、寝姿勢の人体の宙づり状態の体表面形状に基づいて配置された、複数の合成樹脂製のブロックを有する。
【0030】
上記構成によれば、力が緩んでいる実際の人体の寝姿勢に合う体表面形状に基づいて合成樹脂製のブロックを配置する。荷重がかかる部分と寝具とが密着し、体圧が良好に分散し、違和感がなく、肩及び首の凝り、並びに頭痛が生じるのが抑制される。寝返りもスムーズに打つことができるとともに少ない回数で済み、良好な睡眠が得られる。
【0031】
本発明の一態様に係る寝具の製造方法は、寝姿勢の人体の宙づり状態の被測定部分の体表面形状に係るデータを取得し、前記体表面形状に基づいて、寝具本体に複数の凹部及び凸部を設け、前記凹部に、前記人体の体重がかかる部分が当接する当接部を嵌合する。
【0032】
上記構成によれば、力が緩んでいる実際の人体の寝姿勢に合う体表面形状に基づいて設けた凹部に、体表面形状に基づき形成し、体重がかかる部分が当接する当接部を凹部に嵌合する。体表面形状の凹んだ部分に対応して、寝具本体に凸部を設ける。荷重がかかる部分を含め、体の凹凸と寝具とが密着し、体圧が良好に分散し、違和感がなく、肩及び首の凝り、並びに頭痛が生じるのが抑制され、良好な睡眠が得られる。
【0033】
本発明の一態様に係る寝具の製造方法は、寝姿勢の人体の宙づり状態の被測定部分の体表面形状に係るデータを取得し、前記体表面形状に基づいて、寝具本体を切削し、切削した部分のうちの体重がかかる荷重部分に合成樹脂を積層して、前記荷重部分が当接する当接部を設ける。
【0034】
ここで、「積層」とは複数層を有する場合に限定されず、一層の場合も含む。
上記構成によれば、力が緩んでいる実際の人体の寝姿勢に合う体表面形状に基づいて切削した部分に、合成樹脂を積層して、体重がかかる部分が当接する当接部を形成する。荷重がかかる部分と寝具とが密着し、体圧が良好に分散し、違和感がなく、肩及び首の凝り、並びに頭痛が生じるのが抑制され、良好な睡眠が得られる。
【0035】
上述の寝具の製造方法において、前記合成樹脂は、自重により崩れず、かつ、前記体表面形状を表すように、前記荷重部分に付与する量を制御した状態で積層してもよい。
上記構成によれば、当接部が良好に形成される。
【0036】
本発明の一態様に係る寝具の製造方法は、寝姿勢の人体の宙づり状態の被測定部分の体表面形状に係るデータを取得し、前記体表面形状に基づいて、材質、硬度、又は高さが異なる、複数の合成樹脂製のブロックを配置する。
【0037】
上記構成によれば、力が緩んでいる実際の人体の寝姿勢に合う体表面形状に基づいて合成樹脂製のブロックを配置する。荷重がかかる部分と寝具とが密着し、体圧が良好に分散し、違和感がなく、肩及び首の凝り、並びに頭痛が生じるのが抑制され、良好な睡眠が得られる。
【0038】
上述の寝具の製造方法において、前記被測定部分を型取りして該被測定部分の体表面形状に係るデータを取得してもよい。
【0039】
上記構成によれば、枕及びマット等の寝具において、使用者の体を受け入れる受け皿としての凹部又は切削部の形状を型として直接取得することができ、また、ブロックの高低のデータを取得することができ、容易に、迅速に寝具を作製することができる。
【0040】
上述の寝具の製造方法において、人体の立位又は座位における体表面形状に係る第1データを取得し、人体の立位又は座位における体表面形状に係る第1データと、寝姿勢の前記人体の宙づり状態の被測定部分の体表面形状に係る第2データとを教師データに用い、第1データを入力した場合に、第2データを出力する学習モデルに、取得した前記第1データを入力して、前記人体の前記第2データを取得してもよい。
上記構成によれば、容易に第2データを取得できる。
【0041】
本発明の一態様に係るコンピュータプログラムは、寝姿勢の人体の宙づり状態の被測定部分の体表面形状に係るデータを取得し、前記体表面形状に基づいて、寝具本体を切削し、切削した部分のうちの体重がかかる荷重部分に合成樹脂を積層して、前記荷重部分が当接する当接部を設ける処理をコンピュータに実行させる。
【0042】
本発明の一態様に係る枕は、枕本体と、該枕本体とは異なる材料からなり、該枕本体に嵌め込まれ、寝姿勢の頭部に当接する当接部とを備える。
【0043】
ここで、例えばウレタン樹脂のように同一の種類の樹脂であっても、密度、比重、硬さ等が異なる場合、異なる材料とされる。
上記構成によれば、枕本体の材料と例えば硬さの異なる材料を当接部に用いることで、頭部の沈み込み過ぎを防止し、寝姿勢を制御することができる。即ち体圧の頭部形状に沿った良好な分散と寝姿勢の形状保持とが得られる。また、経時変化に耐え得る材料を当接部の材料に選択することで、枕の機能的な経年劣化を抑制することも可能である。
【0044】
上述の枕において、前記枕本体は上側が開口した凹部を有し、前記当接部は前記凹部に嵌め込まれてもよい。
上記構成によれば、当接部が枕本体に良好に固定される。
【0045】
上述の枕において、前記当接部は、第1貫通孔を有してもよい。
後頭部が突出している使用者の場合、突出部により枕本体に荷重がかかり、突出部の周縁部と枕本体との間に隙間が生じ、頭首肩のラインが上に凸になるという問題がある。第1貫通孔を有することで、突出部が第1貫通孔の内部に収まり、突出が吸収され、上記の問題が解消される。頭首肩の理想のラインが、いずれの後頭部の形状を有する人においても形成され易くなる。
【0046】
上述の枕において、前記凹部は第2貫通孔を有し、前記第1貫通孔は、前記第2貫通孔に連通してもよい。
上記構成によれば、頭首肩の理想のラインがより形成され易くなり、枕の通気性も良好になる。
【0047】
上述の枕において、前記第1貫通孔、及び前記第2貫通孔に嵌合する筒部と、前記枕本体を覆う第1カバーとを備えてもよい。
上記構成によれば、第1貫通孔及び第2貫通孔の形状を保持できる。
【0048】
上述の枕において、前記当接部の前記第1貫通孔の周縁部の曲面形状は、頭部の骨形状及び寝姿勢に応じた形状を有してもよい。
上記構成によれば、使用者の頭部と枕とが密着し、体圧が良好に分散し、違和感がなく、肩及び首の凝り、並びに頭痛が生じるのが抑制される。寝返りもスムーズに打つことができるとともに少ない回数で済み、良好な睡眠が得られる。
【0049】
上述の枕において、前記枕本体の裏面側に配置され、高さを調整する調整部材と、該調整部材、及び前記枕本体を覆う第2カバーとを備えてもよい。
上記構成によれば、調整部材の動きを抑止した状態で、枕の高さを容易に調整できる。
【0050】
上述の枕において、前記当接部は、硬質の合成樹脂、ウレタン樹脂、及びジェルからなる3層構造を含んでもよい。
上記構成によれば、体圧の頭部形状に沿った分散と寝姿勢の形状保持とを設計する自由度が高い。経時変化に耐えうる材料を選択することで、枕の機能的な経年劣化も抑制できる。
【0051】
上述の枕において、前記当接部は、寝姿勢に応じて3個有してもよい。
上記構成によれば、例えば中央部に仰向け寝に対応する当接部を配置し、両側に横向き寝に対応する当接部を配置することで、始め仰向けで寝ていて、寝返りにより横向きになった場合においても、体圧に頭部形状に応じた良好な分散と寝姿勢の形状保持とが得られ、良好な睡眠が得られる。横向き寝に対応し、寝返りに応じて形状を変えた、3個の当接部を配置した場合においても、同様の効果が得られる。
【0052】
上述の枕において、前記当接部は、着脱自在であってもよい。
上記構成によれば、当接部をトラベルピローとして用いる、クッションに載置して昼寝に用いる等することができる。
【0053】
本発明の一態様に係る枕の製造方法は、上述の体表面形状測定装置を用いて、寝姿勢の人体の頭部の骨形状を含む体表面形状に係るデータを取得し、該データに基づいて、寝姿勢の頭部に当接する当接部を形成し、該当接部を枕本体に嵌合して枕を製造する。
【0054】
上記構成によれば、使用者の実際の寝姿勢に沿った枕が得られる。就寝時に枕に最も荷重がかかる、使用者の後頭部を含む骨形状を含む体表面形状、又は寝姿勢に基づくその変化に基づいて枕が製造されるので、使用者の体と枕とを密着させることができ、体圧が良好に分散し、違和感がなく、肩及び首の凝り、並びに頭痛が生じるのが抑制される。寝返りもスムーズに打つことができるとともに、少ない回数で済み、良好な睡眠が得られる。
【0055】
以下、本発明をその実施形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。
(実施形態1)
図1は実施形態1に係る本体2及び当接部4,5の平面図、
図2は本体2及び当接部4,5の斜視図、
図3は当接部4の作製方法を説明するための説明図、
図4は本体2を内カバー6に収容した状態を示す平面図、
図5は本体2を内カバー6に収容した状態を示す裏面図、
図6は内カバー6を外カバー9に収容した状態を示す枕1の平面図、
図7は内カバー6を外カバー9に収容した状態を示す枕1の裏面図、
図8は
図6のVIII-VIII線断面図、
図9は
図6のIX-IX線断面図、
図10はパイプ収容部7を示す平面図、
図11は板部8を示す平面図である。
枕1は、本体2と、当接部3、4、5と、内カバー6と、パイプ収容部7と、板部8と、外カバー9とを備える。
【0056】
図1、
図2に示すように、本体2は低反発性のウレタン等の合成樹脂材料を含み、平面視が半円状をなし、弦の両端部から中央部に向けて凹んだ形状を有する。本体2は、枕1の長手方向の中央部において、例えば仰向け寝時に背骨が緩やかなS字状を描く、力が入らない状態の寝姿勢に近くなる形状を有する。本体2の形状は、平均的な人の頭部から肩までの骨形状に基づいて決定するのが好ましい。なお、本体2の形状は、この場合に限定されない。
本体2は、枕1の長手方向の中央部に短手方向に延びる凹部21を有し、長手方向の両端部側に短手方向に延びる凹部23,23を有する。
【0057】
本体2の中央部に当接部3が、その両側に当接部4,5が、夫々、凹部21、凹部23,23に嵌合されている。当接部3は使用者の頭部の骨形状と、使用者の仰向け寝姿勢と基づく形状を有する。この形状は、後頭部から首、肩にかけての骨形状、及び頭蓋骨の体表面形状、並びに寝姿勢により変化した体表面形状に基づく。当接部4,5は夫々、使用者の頭部の骨形状と、左の横向き寝姿勢及び右の横向き寝姿勢とに基づく形状を有する。
当接部3,4,5は、後述するように、日本人の男性及び女性の平均の頭部データ(骨形状)に基づいて形成されている。上記使用者は男女別の使用者を意味する。当接部3,4,5は、男女別にさらに複数種類、用意されていてもよい。
【0058】
当接部3は長手方向の略中央部に貫通孔31を有する。凹部21は貫通孔31に連通する貫通孔22を有する。なお、貫通孔22は設けず、貫通孔31の下端部が凹部21の底面により塞がれるようにしてもよい。後頭部が突出している使用者の場合、突出部により枕に荷重がかかり、突出部の周縁部と枕との間に隙間が生じ、頭首肩のラインが上に凸になるという問題がある。貫通孔31を有することで、突出部が貫通孔31内に収まり、上記の問題が解消される。頭首肩の理想のラインが、後頭部形状が異なる人においても形成され易くなる。そして、貫通孔31から後述する外カバー9の貫通孔90まで連なっており、即ち表側から裏側まで孔が貫通していた場合、通気性が良い(
図8参照)。
【0059】
当接部4,5は、使用者が横向きに寝たときの耳の形状、大きさ、及び位置情報に対応する貫通孔41,51を有する。凹部23,23は貫通孔41,51に連通する貫通孔224,24を有する。
貫通孔41,51は、使用者の耳の外縁部より例えば0.5cm~2cm大きい形状を有するのが好ましい。これにより、寝返りがし易いとともに、当接部4,5の貫通孔41,51の周縁部分により、良好に頭部の荷重を支持することができる。貫通孔41,51は、前記外縁部より1cm~1.5cm大きい形状を有するのがより好ましい。
【0060】
耳は頭側部から突出しており、横向き寝姿勢において頭部の体圧が耳の部分に集中する。従って、耳で血液の流れが止まり、血液の流れが滞らないように寝返りを打つ回数が増え、寝返りの前後で目を覚ますこともある。耳をつぶさないように無理な姿勢を取ることで首又は肩の筋肉に凝りが生じることもある。本実施形態においては、使用者の耳の形状、大きさ、及び位置情報に対応する貫通孔41,51に耳が収容され、貫通孔41,51の周縁部分に頭側部及び頬の荷重がかかって分散されるので、この問題が生じない。従来より、耳を考慮した枕は存在するが、前記頭部データに基づく耳の大きさ、形状、及び位置を考慮していなかったために上記の問題は解決できなかった。
なお、貫通孔24は設けず、貫通孔41の下端部が凹部23の底面により塞がれるようにしてもよい。
【0061】
当接部3は、例えばジェルからなる第1層32、ウレタンからなる第2層33、硬質の合成樹脂からなる第3層34を備える(
図8参照)。ジェルとしては、日本ゴム協会標準規格のSRIS0101により測定した硬度が0~12の弾性ジェル等が挙げられる。前記合成樹脂としては、PP、PE、PC、ABS等が挙げられる。
当接部4は、例えばジェルからなる第1層42、ウレタンからなる第2層43、硬質の合成樹脂からなる第3層44を備える(
図9参照)。
当接部5も、当接部4と同様の構成を有する。
当接部3,4,5は、上述の3層構造を有する場合に限定されない。4層以上の構造を有していてもよい。また、貫通孔31,41,51の周縁部の形状を調整するために、所定の形状にデザインされた調整板を上述の3層構造の上側又は下側に配置してもよい。この調整板としては、異なる密度、比重、硬さを有するウレタン、ジェル、他の合成樹脂等を用いることができる。
当接部3,4,5の第1層、第2層、及び第3層を夫々複数用意しておき、各使用者に応じて、第1層、第2層、及び第3層を選択し、必要に応じ調整板を選択し、当接部3,4,5をカスタマイズすることができる。
【0062】
以下、当接部4の作製方法について説明する。
例えば産業技術総合研究所の日本人の男性及び女性の平均の頭部データを取得する。
図3に示すように、平均の頭部データ(Aデータ)10を、例えば3DCADソフト等のリバースエンジニアリングソフトにより回転させて、左向きの横向き寝姿勢データを生成し、当接部4の貫通孔41を含む3次元形状のデータ(Bデータ)を生成する。この骨形状及び寝姿勢に基づくBデータに基づいて、当接部4の第1層42、第2層43、及び第3層44等をNC切削又はロボットアーム切削等により作製する。3Dプリンティングにより作製してもよい。使用者毎に補正するための前記調整板も作製してもよい。
例えば頭部を耳の長手方向を通る線で切断した断面と本体2の平面との間の角度が45度をなすように左の横向き寝をする場合、貫通孔41の右側の周縁部の高さが高くなるように、貫通孔41の周縁部の形状を決定する。又は、貫通孔41の右の周縁部の高さが高くなるように設計された調整板を、第1層42の上側、又は第2層43の下側に入れる。
【0063】
また、上述の平均の頭部データに基づいて頭部の模型を作製し、本体2上を転動させ、モーションキャプチャにより寝姿勢データを取得し、Bデータを生成してもよい。また、平均的な体格を有する者の寝姿勢データをモーションキャプチャにより取得し、前記頭部データと組み合わせて、Bデータを生成してもよい。
同様に、当接部3,5のBデータを生成し、当接部3,5を作製する。
作製した当接部3,4,5は、本体2の凹部21,23,23に嵌合される。
【0064】
図4、5に示すように、当接部3,4,5を凹部21,23,23に嵌合した本体2は、内カバー6により被覆される。
内カバー6は袋状をなす。内カバー6の素材としては綿、麻、シルク、羊毛等の天然繊維、ポリエステル等の樹脂原料の繊維、セルロースファイバー等の天然原料加工繊維まで様々な繊維が使用できるが、繊維に限らず、樹脂原料或いは天然原料加工品のでも使用可能であり、被膜材料として使用可能であればよい。内カバー6は貫通孔31,41,51に対応する3つの貫通孔60を有する。
中央の貫通孔60には、当接部3の貫通孔31及び貫通孔22に沿わせた状態で、筒部61が設けられている。筒部61は上端に縫製部62を有し、縫製部62が貫通孔60の上縁部に縫い止めされている。筒部61は下端に放射状に複数の固定部63を有し、固定部63は、例えば面ファスナ構造により、内カバー6の裏面に固定されている。
両端側の貫通孔60にも、同様に筒部61が設けられている。
【0065】
図6、7に示すように、内カバー6の下側に、パイプ収容部7及び板部8を配置した状態で、内カバー6は、外カバー9に覆われる。
【0066】
図10に示すように、パイプ収容部7は、ウレタンチップ及び軟性ポリエステルパイプ等の材料を収容する複数の区画された収容部屋72を有する。収容部屋72に収容する前記材料の量を調整することにより、枕1の高さが調整される。パイプ収容部7は貫通孔31,41,51に対応する3つの貫通孔71を有する。なお、収容部屋72の数は
図10に示した場合に限定されない。
高さ調整は、画面上のデータ間の距離を測定できるメジャーをコンピュータプログラムに内蔵させておき、必要な距離を測定することで得られる。後述する体表面形状測定装置14を用いる場合、測定部15により頭部が浮くので、容易に調整すべき高さを求めることができる。
【0067】
図11に示すように、板部8は、厚み1~2cmの薄い、例えばウレタン製の板であり、1又は2以上重ねて、枕1の高さを調整する。板部8は、貫通孔31,41,51に対応し、長手方向に伸びる貫通孔81を有する。従来の高さ調整用のウレタン板の場合、動き易く、形状維持のために全体的に厚みが厚くなっていたが、本実施形態の板部8の場合、貫通孔81を有し、筒部61及び91により板部8の動きが抑止されている。板部8の動きが抑止されえるので、所望の位置に板部8を配置することができる。
【0068】
外カバー9は袋状をなす。外カバー9は貫通孔31,41,51に対応する3つの貫通孔90を有する。外カバー9の素材としては綿、麻、シルク、羊毛等の天然繊維、ポリエステル等の樹脂原料の繊維、セルロースファイバー等の天然原料加工繊維まで様々な繊維が使用できるが、繊維に限らず、樹脂原料或いは天然原料加工品のでも使用可能であり、被膜材料として使用可能であればよい。
中央の貫通孔90には、内カバー6の筒部61に沿わせた状態で、筒部91が設けられている。筒部91は貫通孔90の上縁部に縫い止めされている。筒部91は下端に放射状に複数の固定部92を有し、固定部93は、例えば面ファスナ構造により、外カバー9の裏面に固定されている。
両端側の貫通孔90にも、同様に筒部91が設けられている。
筒部91は、使用者に応じて、複数の筒長及びマチの幅を有するものを用意してもよい。
【0069】
図8に示すように、本体2、内カバー6、パイプ収容部7、板部8、及び外カバー9の貫通孔22、貫通孔60、貫通孔71、貫通孔81、及び貫通孔90は、貫通孔31に連なっている。なお、
図8においては、筒部61及び筒部91は省略している。
図9に示すように、本体2、内カバー6、パイプ収容部7、板部8、及び外カバー9の貫通孔24、貫通孔60、貫通孔71、貫通孔81、及び貫通孔90は、貫通孔41に連なっている。なお、
図9においては、筒部61及び筒部91は省略している。
【0070】
本実施形態によれば、当接部3,4,5により、体圧の頭部形状に沿った良好な分散と寝姿勢の形状保持とが得られる。また、経時変化に耐え得る材料を当接部3,4,5に用いることで、枕の機能的な経年劣化を抑制することができる。
例えば理想の寝姿勢とされている仰向け入眠時の首~顎の軸心とベッド天面とがなす角度が略15度であること、横向け入眠時の頭首背骨腰骨が直線で結ばれていることから、普段の寝姿勢が何らかの事情でかい離しており、理想の寝姿勢から取れない者は多い。中には理想の寝姿勢を取ると苦しいという者もいる。専門家の適切な指導の元、少しずつ角度を調整しつつ、使用者にとっての理想の寝姿勢に、今の寝姿勢を矯正していくことが、可能となる。例えば角度を2度、4度と上げていき、首のS字カーブや呼吸を確認しながらより良い眠りを取れるよう、使用者にとって本来あるべき、理想の寝姿勢へ近づけていくことが出来る。このような指導の際に、従来であれば毎回角度を変える度に新しい商品を購入することになるが、本実施形態の場合、複数の当接部3,4,5の中から選択する、又は調整板を当接部の上側又は下側に挿入するのみで済む。
【0071】
(実施形態2)
図12は、実施形態2に係る本体2及び当接部4の平面図である。図中、
図1と同一部分は同一符号を付して詳細な説明を省略する。
実施形態2に係る本体2においては、当接部4を3個嵌合している。
中央の当接部4は、
図3の頭部データ10と同様に、頭部データ10の耳の長手方向を通る線で切断した断面と本体2の平面との間の角度が90度をなす場合の寝姿勢に対応する形状を有する。
図12の右側の当接部4は、前記断面と本体2の平面とが45度をなす場合の寝姿勢に対応する形状を有する。
図12の左側の当接部4は、前記断面と本体2の平面とが135度をなす場合の寝姿勢に対応する形状を有する。
なお、3個の当接部4が異なる形状を有する場合に限定されず、左右の当接部4については、上述の調整板を用いて、形状を調整してもよい。
【0072】
以上のように構成されているので、左向きの横寝姿勢で寝る使用者においては、最初は中央の当接部4に、上記90度をなす場合の寝姿勢で寝る。上記45度をなす寝姿勢を取る場合には、右の当接部4に頭部が当接する。上記135度をなす寝姿勢を取る場合には、左の当接部4に頭部が当接する。横向き寝の角度に応じて、良好な寝姿勢を取ることができる。
入眠の最初の期間に、使用者の寝姿勢にフィットする枕形状を有することで、血行が阻害されて起こる無駄な寝返りが減り、睡眠の質が高くなる。
【0073】
(実施形態3)
実施形態3に係る枕1においては、当接部3は着脱自在に構成されている。
図13は当接部3の斜視図である。
当接部3を取り外し、トラベルピローとして、電車や飛行機のシートに当てた状態で頭部を当接することができる。
また、クッションの上に当接部3を載置して、昼寝をすることもできる。
【0074】
(実施形態4)
実施形態4においては、当接部3,4,5は、各使用者の骨形状を測定し、該骨形状に係るAデータに基づいて寝姿勢データを生成し、寝姿勢データに基づくBデータに基づいて作製される。
図14は、実施形態4に係る寝具製造システム13を示すブロック図である。
寝具製造システム13は、撮像データを取得する取得装置11と、撮像データから使用者の頭部の骨形状、並びに耳の形状、大きさ、及び位置に係るAデータを抽出し、当接部3,4,5を形成するためのBデータを生成する生成装置としてのPC12とを備える。
取得装置11として、例えば3Dスキャナ等が挙げられる。取得装置11としては、カメラを用いてもよい。また、モーションキャプチャにより、寝返りにより横向き寝をする場合の、頭部が移動した位置情報を取得し、Aデータ及び位置情報に基づいて、当接部4,5を作製してもよい。
【0075】
PC12は、制御部121と、記憶部122と、入力部124と、インタフェース部125とを備える。これらの各部は、バスを介して互いに通信可能に接続されている。
入力部124は、取得装置11からの撮像データの入力を受け付ける。インタフェース部125は、例えば、LANインタフェース及びUSBインタフェース等により構成され、有線又は無線により取得装置11との通信を行う。有線無線に限らず、USBメモリ等でデータを移動させてもよい。
【0076】
記憶部122は、例えばハードディスクドライブ(HDD)等により構成され、各種のプログラム及びデータを記憶する。記憶部122には、例えば、枕製造プログラム123が格納されている。枕製造プログラム123は、例えば、CD-ROMやDVD-ROM、USBメモリ等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体16に格納された状態で提供され、PC12にインストールすることにより記憶部122に格納される。また、通信網に接続されている図示しない外部コンピュータから枕製造プログラム123を取得し、記憶部122に記憶させることにしてもよい。記憶部122には、マットを製造するためのマット製造プログラムを記憶してもよい。
【0077】
図15は体表面形状測定装置14を示す斜視図、
図16は体表面形状測定装置14を用いて使用者の寝姿勢時の体表面形状を取得する状態を示す模式図である。
体表面形状測定装置14は、寝姿勢の使用者を支持する箱状の支持部141,141,141と、測定部15とを備える。
測定部15は、台151と、アクチュエータにより上下動可能な柱部152,152と、矩形状のネット153と、ネット支持部154とを備える。ネット支持部154は柱部152,152の上端部に設けられ、ネット153の両側部を支持し、柱部152,152の上下動に従って上下動する支持板154a,154aと、平面視がU字状をなし、支持板154a,154aに取り付けられた天板154bとを備える。
【0078】
ネット153は網状の構成物であり、矩形状をなし、ネット支持部154のU字の内周に取り付けられている。ネット153の材料としては綿、麻、シルク、羊毛等の天然繊維、ポリエステル等の樹脂原料の繊維、セルロースファイバー等の天然原料加工繊維まで様々な繊維が使用できるが、繊維に限らず樹脂原料或いは天然原料加工品のでも使用可能であり、被膜材料として使用可能であればよい。ネット153は、
図16に示すように頭部の骨形状を含む体表面形状を測定する場合に、胴体から水平方向に突出した頭部が下がらないようにした状態で頭部に密着するための張力を有するように、ネット支持部154に取り付けられている。張力は張りすぎては形状に沿わず、また被測定者も痛い場合があるので好ましくない。適度に緩め、優しく人体に沿うようにするのが好ましいが、測定自体は可能であるので必須ではない。
網目は髪の毛や肉部が出ない大きさを有するのが好ましい。網目の大きさは一辺が4mm以下であるのがより好ましく、一辺が2mm程度であるのがさらに好ましい。
ネット153は、測定物の表面が透過して見えていることが好ましく、薄いものがより好ましいがそれに限定されない。
透過して見えている方がよいのは、被測定者が測定画面を見た際に、自分を測定したことを認識しやすくするためであり、必須ではない。
厚みは測定した形状に影響を与えてしまい、厚ければ厚いほどデフォルメされてしまうが、測定自体は可能であるので、薄くすることは必須ではない。
【0079】
支持部141は箱状には限定されない。支持部141は3つである場合には限定されない。使用者の体の測定したい部分に対応させて、支持部141を配置する。
被測定部分が頭部である場合、
図16に示すように、頭部がネット153に対向するように、測定部15を長手方向に並ぶ支持部141,141,141の一端部側に配置する。
被測定部分が腰部である場合、測定部15を腰部に対向するように配置し、測定部15を支持部141,141により挟むように、支持部141,141,141を配置する。
【0080】
ネット153の形状は四角状である場合には限定されない。ネット153の厚みは薄く、骨形状が良好に認識できるものが好ましい。
支持部141は、例えば使用者が家で使用している敷き寝具、それに類するサンプルを予め数種類準備しておき、これを載置して、家と近い寝姿勢で測定出来るようにしてもよい。
【0081】
図16に示すように、頭部を測定部15のネット153に対向させる場合、肩から頭頂にかける部分を支持部141から宙に浮くように突出させ、使用者の他の部分は支持部141,141,141により支持する。そして、ネット153が寝姿勢における頭部から首の付け根の骨形状に沿うように調整した状態で、該骨形状を含む体表面形状を取得装置11により測定する。ネット153の調整は、呼吸がしやすいかどうか、寝ていて苦しくなったり、違和感がある部分がないかどうかを確認しながら、ネット支持部154を昇降させ、位置、姿勢を決めるのが好ましい。
【0082】
測定に際し、ネット支持部154を昇降させ、支持部141と測定部15との相対的な高さを調整する。使用者が使用しているマット及び敷布団等を考慮し、作製した枕1を使用するときに、力が入らない、自然な背骨のカーブを有する寝姿勢が得られるようにする。
体表面形状測定装置14によれば、後頭部から肩に掛けての神経、首の骨形状、頭蓋骨の表面形状を測定出来る。頭蓋骨と首の骨と神経との段差が気持ちよく埋まれば、人は安心して眠ることが出来、寝返りも容易に打てる。この隙間は個人差もあり、小さなものであるが、入眠時には非常に大切な部分である。
【0083】
以上のようにして、体表面形状測定装置14により枕1を作製する場合、各使用者の頭部の骨形状を含む体表面形状に係るAデータを取得する。
PC12は、Aデータを、例えば3DCADソフト等のリバースエンジニアリングソフトにより回転させて、仰向けの寝姿勢、横向きの寝姿勢等のデータを生成し、当接部3,4,5の3次元形状のデータ(Bデータ)を生成する。この骨形状及び寝姿勢に基づくBデータに基づいて、当接部3,4,5の第1層、第2層、及び第3層等をNC切削、ロボットアーム切削等の切削、又は3Dプリンティング等により作製する。前記調整板を作製し、使用者毎に調整してもよい。
また、前記体表面形状の寝姿勢に応じた変化をデータとして取得し、該データをリバースエンジニアリングを適用してSTLデータ及びサーフェスデータ等の出力データ(Bデータ)に変換し、当接部3を作製してもよい。
作製した当接部3,4,5を本体2の凹部21,23,23に嵌合し、枕1を製造する。
【0084】
体表面形状測定装置14を用いる代わりに、使用者の立位又は座位をカメラにより撮像して、頭部の骨形状のデータを取得してもよい。側頭部の形状測定では体圧を分散するために特に重要な耳の周りの骨形状が、後頭部に関しても同様に後頭部の頂部分から首にかけての骨形状が、髪の毛により明確でない場合、水泳帽等、髪の毛を押さえたりまとめたりできるものを用いて測定する。
人間が立っているときは背骨を支持するために力が入っており、寝ているときはリラックスして力が緩んでいるので、立位又は座位と、臥位とでは、人間の骨や筋肉の形状が異なる。
人間の脊椎がカーブを描くのは立ち姿勢を支えるためであり、筋力が働いて身体を支えるための生理現象であるので、立位又は座位で首の彎曲部の深さを測定し、当接部の形状に反映した場合、寝たときに、違和感を感じる虞がある。体表面形状測定装置14を用いてAデータを取得するのが好ましい。体表面形状測定装置14を用いた場合、仰向け寝や横向き寝で吊り下がった状態、即ち力が緩んでいる宙づり状態の頭から肩にかけての形状を取得することができる。
【0085】
人間は寝返りを打つことで、体温調節、心身疲労回復、免疫力の向上、記憶の整理、体内組織修復等を行うことが知られている。体表面形状測定装置14を使用する場合、寝返りが打ちやすい姿勢で測定する必要がある。
寝返りが打ちやすい姿勢は横向き寝の場合は頭部、首、背骨、及び腰骨が敷き寝具の底面に対して平行で且つ出来るだけ直線で結ばれており、仰向き寝の場合は首から下が寝具底面に対して出来るだけ直線で結ばれており、かつ頭部は若干直線よりも上の角度を向いているのが、寝姿勢として苦しくないことが実験により確認されている。
寝返りが楽である角度を求める試験を行った。頭部の軸心と水平線とがなす角度が10~20度の範囲である場合、被験者全員に対し快適な枕を提供することができた。使用者が寝姿勢を取った後、10~20度の範囲を基準に、違和感のない角度になるようにネット支持部154の高さを調整して測定し、あとは枕1の作製時に、パイプ収容部7及び板部8により調整するのが好ましい。
【0086】
上述したように、立位又は座位と寝姿勢とでは、骨及び筋肉の形状が異なる。本実施形態においては、寝姿勢の使用者の頭部が、胴部から宙に浮いた状態で、Aデータを取得するので、実際の寝姿勢の形状に合う枕1を製造できる。
【0087】
うつぶせ寝をする使用者の枕1を作製する場合、体表面形状測定装置14により、使用者のうつぶせ時の両頬から顔面の骨形状、及び首から胸にかけての骨形状に係るAデータを取得する。そして、使用者毎に寝姿勢に係るデータを取得し、取得したデータに基づいて当接部を作製するためのBデータを生成する。うつぶせ寝の当接部は、本体2の上側の中央部に顎を載置できる形状を有する。枕1はうつぶせ寝専用にしてもよく、横向き寝姿勢を考慮して、横向き寝に対応する当接部を作製してもよい。
無呼吸症候群の症状を有する使用者に対しては、使用者の舌根が沈下して上気道が狭くならない、使用者の理想的な寝姿勢に係るデータを医師等と協力して取得し、Bデータを生成する。
【0088】
頭部以外の例えば腰部等の被測定部分を体表面形状測定装置14を用いて測定する場合、天板154bを外し、ネット153に被測定部分が対向するように測定部15を配置し、被測定部分以外の部分を支持部141により支持するように配置して、被測定部分の体表面形状を測定する。
【0089】
(実施形態5)
図17は実施形態5に係る体表面形状測定装置14を示す斜視図、
図18は体表面形状測定装置14を用いて使用者の寝姿勢時の体表面形状を取得する状態を示す模式図である。
図17及び
図18中、
図15及び
図16と同一部分は同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
体表面形状測定装置14は、頭部測定部150と、台158と、アクチュエータにより上下動可能であり、左右方向に摺動可能な柱部157,157と、ネット156と、ネット支持部155,155と、支持部159と、台160とを備える。例えばネット156は6個備え、支持部159は5個備える。支持部159,159間の測定部にネット156が張り渡してある構成になる。ネット156及び支持部159の数、並びに配置は、
図17の場合に限定されない。
ネット支持部155,155は柱部157,157の上端部に設けられ、ネット156の両側部を支持し、柱部157,157上下動に従って上下動する。ネット156の張力、撓みは柱部157,157の左右方向の摺動に従って調整される。
【0090】
ネット156は網状の構成物であり、矩形状をなす。ネット156の材料としては綿、麻、シルク、羊毛等の天然繊維、ポリエステル等の樹脂原料の繊維、セルロースファイバー等の天然原料加工繊維まで様々な繊維が使用できるが、繊維に限らず樹脂原料或いは天然原料加工品でも使用可能であり、被膜材料として使用可能であればよい。
【0091】
頭部測定部150は、実施形態4に係る測定部15と同様の構成を有する。
【0092】
支持部159は箱状をなし、台160に載置されている。支持部159は体重を支え、自然な寝姿勢を保持出来る物質、例えばウレタンやジェルのような樹脂、繊維、羽毛、セルロースファイバー等からなる再生物質等、クッション性があり、寝姿勢を保持出来る物で構成してもよい。
台160はキャスタを備えてもよく、昇降可能であってもよい。支持部159は、使用者の体の測定しない部分を支持する。
図18に示すように、頭部がネット153に対向するように、頭部測定部150を長手方向に並ぶネット156の一端側に配置する。使用者の頭部から首の部分をネット153に対向させる。
頭部側から順に、各ネット156を、首から肩甲骨、肩甲骨から腰の窪み、腰の窪みから臀部の下部、臀部の下部から膝の下部、膝の下部から足首、足首から踵までに対向させる。ネット156を対向させる、使用者の被測定部分は、上記の場合に限定されない。
ネット156の形状は四角状である場合には限定されない。ネット156の厚みは薄く、体表面形状が良好に認識できるものが好ましい。
【0093】
図17においては、台151は足側端部で切れた状態を示しているが、
図18に示すように、台151は足側まで延びている。台151は短手方向の中央部に、長手方向に延びる、取得装置11の案内部161を有する。
図18に示すように、使用者が体表面形状測定装置14に仰向けに横たわった場合、取得装置11は頭部側から踵側まで移動し、使用者の頭部から首、首から肩甲骨、肩甲骨から腰の窪み、腰の窪みから臀部の下部、臀部の下部から膝の下部、膝の下部から足首、足首から踵の被測定部分の体表面形状を取得するようにしてある。例えば取得装置11にキャスターを取り付け、取得装置11を、案内部161を走らせて一度に全身を撮影することができる。キャスターは線路のように同じ箇所を往復出来るようにした方がよいがこれに限定されない。取得装置11はアクチュエータにより移動させてもよい。
キャスター以外でも取得装置11を移動式に出来れば良く、例えばドローン、滑車、ラジコン、台車、コンベア等に取得装置11を積載して、寝姿勢の撮影に使用することも出来る。
要は寝姿勢を取る使用者の下側を移動して撮影出来ればよい。
【0094】
各被測定部分は、ネット156により支持され、吊り下がった状態で、体表面形状を取得される。力が緩んでいる実際の人体の仰向けの寝姿勢に合う体表面形状が得られる。
体表面形状の下に突出した部分は、体重(体圧、荷重)がかかる部分であり、体圧分布の情報も良好に取得できる。
ネット156上に、体圧分布測定用のシートを配置し、体表面形状に加えて、体圧分布を測定してもよい。
【0095】
使用者が横向き寝、又はうつぶせ寝をした場合の体表面形状も同様にして取得する。横向き寝の体表面形状を歪みなく取得できるように、取得装置11は、中央部を移動するのみではなく、右側端部及び左側端部に沿って移動できるようにしてもよい。取得装置11を3つ備え、3つの取得装置11を同時に平行に移動させてもよい。
【0096】
複数のネット156は一体化されていてもよい。
【0097】
図18に示すように、頭部を頭部測定部150のネット153に対向させる場合、首から頭頂にかける部分を宙に浮くように突出させ、使用者の他の部分はネット156及び支持部159により支持する。そして、ネット153が寝姿勢における頭部から首の付け根の骨形状に沿うように調整した状態で、該骨形状を含む体表面形状を取得装置11により測定する。ネット153の調整は、呼吸がしやすいかどうか、寝ていて苦しくなる、違和感がある等の部分がないかどうかを確認しながら、ネット支持部154を昇降させ、位置、姿勢を決めるのが好ましい。また、ノーモーションで力を入れずに寝返りが出来る高さが好ましい。
頭部以外の被測定部分についても、ネット156が寝姿勢における体表面形状に沿うように調整する。柱部157の高さ、左右方向の位置も調整するのが好ましい。
【0098】
測定に際し、ネット支持部154を昇降させ、ネット156及び支持部159と頭部測定部150との相対的な高さを調整する。使用者が使用している敷布団等を考慮し、作製したマット17を使用するときに、力が入らない、自然な背骨のカーブを有する寝姿勢が得られるようにする。
【0099】
本実施形態の体表面形状測定装置14によれば、頭部から踵に掛けての体表面形状を良好に測定出来る。頭蓋骨と首の骨と神経との段差が気持ちよく埋まる枕1を作製できる。
使用者の体表面形状の凹凸にフィットし、仰向け寝時に背骨が緩やかなS字状を描き、力が入らない状態の寝姿勢を実現できる後述のマット17を作製できる。体表面形状と寝具との間に隙間がない場合、人は安心して眠ることが出来、寝返りも容易に打てる。
【0100】
図19は、本実施形態の体表面形状測定装置14を用いて作製したマット17を示す平面図である。
マット17は、本体170と、仰向けの寝姿勢の体表面形状に基づく凹部171と、横向けの寝姿勢の体表面形状に基づく凹部172と、凹部171に嵌合する当接部18と、凹部172に嵌合する当接部19とを備える。本体170は、例えば低反発のウレタン等の合成樹脂材料を含む。本体170は、例えば仰向け寝時に背骨が緩やかなS字状を描く、力が入らない状態の寝姿勢に近くなる形状を有する。本体170の形状は、体表面形状測定装置14により各別に測定した各使用者の体表面形状に基づいた凹部及び凸部を有する。
マット17の厚みは例えば5~8cmであり、単独でマットとして使用してもよいし、他の寝具の上に載置して使用してもよい。
【0101】
当接部18は、首の付け根の突出部、肩甲骨、肩甲骨の下角の突出部、背骨、肘裏部、腰骨の上側の突出部、臀部の中央部(腰骨の中心部)、臀部の両端部、踵に当接する。
当接部18は貫通孔181を有する。貫通孔181の周縁部は、当接する人体の部分の体表面形状に沿う曲面形状を有する。
当接部19は、肩甲骨の外側部分、肘部、太ももの両端部、膝部に当接する。当接部19は貫通孔191を有する。貫通孔191の周縁部は当接する体表面形状に沿う曲面形状を有する。
図19において、当接部18及び当接部19は正円状に描いているが、実際は当接する体表面形状と一致する周形状を有する。
図19において、手の内側に位置するように示されている当接部19は、横向き寝時に太ももの両端部が当接する。
凸部は、測定した体表面形状の、首から肩、肩甲骨の間、背中から腰、膝、足首の凹んだ部分に対応して設けられており、該部分に当接する。
なお、凹部及び凸部は、体表面形状に厳密にフィットすると、寝返りがしにくくなるので、若干小さめに設けるのが好ましい。
【0102】
図20は、マット17の一部断面図である。
当接部18は凹部171に嵌合されている。当接部18は貫通孔181を有し、凹部171は貫通孔181に連通する貫通孔170aを有する。
当接部18は、例えばジェルからなる第1層182、ウレタンからなる第2層183、硬質の合成樹脂からなる第3層184を備える。ジェルとしては、日本ゴム協会標準規格のSRIS0101により測定した硬度が0~12の弾性ジェル等が挙げられる。前記合成樹脂としては、PP、PE、PC、ABS等が挙げられる。
当接部18は、本体170と別途作製し、本体170に設けた凹部171に嵌合する。
他の当接部18及び当接部19も同様の構成を有する。
当接部18,19は、上述の3層構造を有する場合に限定されない。4層以上の構造を有していてもよい。また、貫通孔181,191の周縁部の形状を調整するために、所定の形状にデザインされた調整板を上述の3層構造の上側又は下側に配置してもよい。この調整板としては、異なる密度、比重、硬さを有するウレタン、ジェル、他の合成樹脂等を用いることができる。
上述したように、背中から腰にかけて、凸部が形成されている。
【0103】
本体170は、内カバー6及び外カバー9により被覆されている。
内カバー6は袋状をなす。内カバー6の素材としては綿、麻、シルク、羊毛等の天然繊維、ポリエステル等の樹脂原料の繊維、セルロースファイバー等の天然原料加工繊維まで様々な繊維が使用できるが、繊維に限らず、樹脂原料或いは天然原料加工品でも使用可能であり、被膜材料として使用可能であればよい。内カバー6は貫通孔170aに対応する貫通孔60を有する。
外カバー9は袋状をなす。外カバー9は貫通孔170aに対応する貫通孔90を有する。外カバー9の素材としては綿、麻、シルク、羊毛等の天然繊維、ポリエステル等の樹脂原料の繊維、セルロースファイバー等の天然原料加工繊維まで様々な繊維が使用できるが、繊維に限らず、樹脂原料或いは天然原料加工品でも使用可能であり、被膜材料として使用可能であればよい。
下側の内カバー6及び外カバー9の間には板部8が挿入されている。板部8は厚み1~2cmの薄い、例えばウレタン製の板であり、1又は2以上重ねて、マット17の高さを調整する。板部8は、貫通孔170aに対応し、長手方向に伸びる貫通孔81を有する。
【0104】
上記構成によれば、力が緩んでいる実際の人体の寝姿勢に合う体表面形状に基づいて設けた凹部171,172に、体表面形状に基づき形成し、体重がかかる部分が当接する当接部18,19を凹部171,172に嵌合してある。本体170の体表面形状の凹んだ部分に対応して、凸部が設けてある。荷重がかかる部分を含め、体の凹凸と寝具とが密着し、体圧が良好に分散し、違和感がなく、肩及び首の凝り、並びに頭痛が生じるのが抑制される。寝返りもスムーズに打つことができるとともに少ない回数で済み、良好な睡眠が得られる。
【0105】
図21は、変形例1のマット17の臀部部分を示す断面図である。図中、
図20と同一部分は同一符号を付して詳細な説明を省略する。
変形例のマット17においては、本体170を切削して凹部171を形成し、凹部171の周縁部に、第3層184、第2層183、第1層182をこの順に積層して、当接部18を形成する。
【0106】
上記構成によれば、力が緩んでいる実際の人体の寝姿勢に合う体表面形状に基づいて切削して得られた凹部171,172に、合成樹脂を積層して、体重がかかる部分が当接する当接部18,19を形成してある。荷重がかかる部分と寝具とが密着し、体圧が良好に分散し、違和感がなく、肩及び首の凝り、並びに頭痛が生じるのが抑制される。寝返りもスムーズに打つことができるとともに少ない回数で済み、良好な睡眠が得られる。
【0107】
以下、変形例1のマット17の作製方法について説明する。
図22は、実施形態5に係る寝具製造システム25を示すブロック図である。
寝具製造システム25は、撮像データを取得する取得装置11と、撮像データから体表面形状に係るAデータを抽出し、当接部18,19を形成するためのBデータを生成する生成装置としてのPC12と、Bデータに基づいてマット17の当接部18,19を製造する3Dプリンタ30とを備える。
取得装置11として、例えば3Dスキャナ等が挙げられる。取得装置11としては、カメラを用いてもよい。また、モーションキャプチャにより、寝返りにより横向き寝をする場合の、使用者が移動した位置情報を取得し、Aデータ及び位置情報に基づいて、当接部18,19を作製してもよい。
【0108】
PC12は、制御部121と、記憶部122と、入力部124と、インタフェース部125とを備える。これらの各部は、バスを介して互いに通信可能に接続されている。
入力部124は、取得装置11からの撮像データの入力を受け付ける。インタフェース部125は、例えば、LANインタフェース及びUSBインタフェース等により構成され、有線又は無線により取得装置11との通信を行う。有線無線に限らず、USBメモリ等でデータを移動させてもよい。
【0109】
記憶部122は、例えばハードディスクドライブ(HDD)等により構成され、各種のプログラム及びデータを記憶する。記憶部122には、例えば、マット製造プログラム126が格納されている。マット製造プログラム126は、例えば、CD-ROMやDVD-ROM、USBメモリ等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体16に格納された状態で提供され、PC12にインストールすることにより記憶部122に格納される。また、通信網に接続されている図示しない外部コンピュータから枕製造プログラム123を取得し、記憶部122に記憶させることにしてもよい。記憶部122には、枕製造プログラムを記憶してもよい。
【0110】
PC12は、Aデータに基づき、例えば3DCADソフト等のリバースエンジニアリングソフトを用いて、仰向けの寝姿勢、横向きの寝姿勢等のデータを生成し、当接部18,19の3次元形状のデータ(Bデータ)を生成する。このBデータに基づいて、当接部18,19の第1層、第2層、及び第3層等を3Dプリンティング等により作製する。
また、前記体表面形状の寝姿勢に応じた変化をデータとして取得し、該データをリバースエンジニアリングを適用してSTLデータ及びサーフェスデータ等の出力データ(Bデータ)に変換し、当接部18,19を作製してもよい。
【0111】
図23は、PC12の制御部121による、マット製造処理の手順を示すフローチャートである。
制御部121は、体表面形状測定装置14の取得装置11から使用者の撮像データを取得し、このAデータに基づいて、当接部18,19を形成するためのBデータを取得する(S1)。体表面形状測定装置14により使用者の横向き寝の体表面形状を取得する場合、仰向け寝の体表面形状のデータから横向き寝の体表面形状のデータを生成する必要はない。
【0112】
制御部121は、Bデータに基づいて本体170を切削し、当接部18用の凹部171、及び当接部19用の凹部172を生成する(S2)。
制御部121は、3Dプリンタ30により、凹部171及び凹部172の周縁部に、合成樹脂を吐出して、第1層、第2層、及び第3層等を積層する(S3)。
このとき、アルゴリズム解析により、自重により崩れず、かつ、前記体表面形状を表すように、合成樹脂の吐出量を制御した状態で積層するのが好ましい。
合成樹脂の吐出は、3Dプリンタ30の代わりに、ロボットアームを用いてもよい。
【0113】
図20のマット17も、上記と同様に、体表面形状に係るAデータ、及びBデータを取得し、本体170に凹部171,172を形成する。
Bデータに基づいて、当接部18,19を作製し、凹部171,172に嵌合する。
凹部171,172に合成樹脂を吐出して、当接部18,19を形成してもよい。
【0114】
図24は、変形例2のマット17を示す斜視図である。
変形例2のマット17は、体表面形状測定装置14により取得した体表面形状に基づいて、材質、硬度、又は高さが異なる、複数の合成樹脂製のブロック20を配置してなる。
ブロック20の数は
図24の場合に限定されない。
ブロック20はジェル製でもよく、ウレタン製でもよく、羊毛、羽毛、綿、馬の毛を充填してもよい。
体表面形状測定装置14により取得した体表面形状及び体圧分布に基づいて、各ブロック20の材質、硬度、又は高さを調整し、全体として、使用者の体表面形状にフィットするマット17の表面形状を生成する。
【0115】
変形例2のマット17によれば、力が緩んでいる実際の人体の寝姿勢に合う体表面形状に基づいて合成樹脂製のブロック20を配置する。荷重がかかる部分とマット17とが密着し、体圧が良好に分散し、違和感がなく、肩及び首の凝り、並びに頭痛が生じるのが抑制され、良好な睡眠が得られる。
【0116】
図25は、変形例3の体表面形状測定装置14の被測定部分に対向する部分を示す斜視図である。
変形例3の体表面形状測定装置14の被測定部分に対向する部分は、ネット156と、台164と、アクチュエータにより上下動可能であり、支持部159の並設方向に摺動可能な柱部162,162と、ネット支持部163,163とを備える。
ネット支持部163,163は柱部162,162の上端部に設けられ、ネット156の両側部を支持し、柱部162,162の上下動に従って上下動する。ネット156の張力、撓み、幅は、台164における、柱部162,162の前後方向の摺動に従って調整される。
上記構成によれば、使用者の体格、体の形状に合わせて、ネット156を張り渡した測定部の幅を調整することができる。
ネット156の幅の伸縮の構成は、上述の場合に限定されない。
【0117】
図26は、変形例4の体表面形状測定装置14を示す平面図である。
変形例4の体表面形状測定装置14は、矩形状の板部167と、使用者の被測定部分が嵌まる複数の測定部165と、板部167を支持する4本の柱部166とを備える。板部167は、ポリウレタン、綿布団、ラテックス、ポリエステル等から構成することができる。
一例として、測定部165は、頭部、人体の首の付け根の突出部、肩甲骨の下角の突出部、腰骨の上側の突出部、腰骨の中心部(仙骨を含む部分)に対応して設けられている。
測定部165の数は5個に限定されない。1個であってもよいし、6個以上であってもよい。測定部165の位置も限定されない。
【0118】
上記構成によれば、簡単な構成で、寝姿勢で宙づり状態の被測定部分の体表面形状を取得することができる。
板部167は、測定部165を有する部分と、被測定部分以外の部分を支持する複数の支持部とに分割されていてもよい。測定部165が支持部間の間隙であり、ネットを貼り渡している場合、
図17の体表面形状測定装置14に相当する。
図26の体表面形状測定装置14は、使用者の身長に合わせて、測定部165の位置及び大きさが異なる物を複数用意してもよい。
【0119】
(実施形態6)
図27は、実施形態6に係る体表面形状測定装置14を示す断面図である。
図18と同一分は同一符号を付して詳細な説明を省略する。
体表面形状測定装置14は、頭部測定部150と、台158と、アクチュエータにより前後方向及び左右方向に摺動可能な柱部157,157と、ネット156と、ネット支持部155,155と、支持部159と、台160とを備える。例えばネット156は6個備え、支持部159は5個備える。ネット支持部155は柱部157の前端部に設けられ、ネット156の両側部を支持し、柱部157の前後方向の移動に従って移動し、柱部157の左右方向の移動に従って、移動する。ネット156及び支持部159の数、並びに配置は、
図17の場合に限定されない。
頭部測定部150は、台151と、アクチュエータにより前後方向に移動可能な柱部152と、矩形状のネット153と、ネット支持部154とを備える。ネット支持部154は柱部152,152の前端部に設けられ、ネット153の両側部を支持し、柱部152,152の前後方向の移動に従って移動する支持板154aと、平面視がU字状をなし、支持板154aに取り付けられた天板154bとを備える。
【0120】
体表面形状測定装置14は、水平方向に対し、0度から90度まで傾けて用いることができる。
例えば使用者が昼寝用の椅子に、水平方向から85度傾けた状態で寝る場合、体表面形状測定装置14を85度まで傾け、力が緩んだ状態で寝姿勢の体表面形状を測定し、該体表面形状に基づいて椅子の表面を形成する。これにより良好な睡眠を得ることができる。
【0121】
(実施形態7)
実施形態7に係るPC12の記憶部122は、下記の学習モデルと、学習モデルの教師データのデータベースとを記憶していること以外は、実施形態5に係る寝具製造システム25と同様の構成を有する。
教師データのデータベースは、多数の使用者の立位又は座位における体表面形状に係る第1データと、同一の使用者の寝姿勢の、実施形態4の体表面形状測定装置14により取得した第2データとを記憶している。
【0122】
図28は、学習モデルの一例を示す模式図である。
学習モデルは、人工知能ソフトウェアの一部であるプログラムモジュールとしての利用が想定される学習モデルであり、多層のニューラルネットワーク(深層学習)を用いることができ、例えば畳み込みニューラルネットワーク(Convolutional Neural Network:CNN)を用いることができる。他の機械学習を用いてもよい。制御部121が、学習モデルからの指令に従って、学習モデルの入力層に入力された第1データに対し演算を行い、寝姿勢の人体の体表面形状に係る第2データと確率とを出力するように動作する。CNNの場合、中間層はコンボリューション層、プーリング層、及び全結合層を含む。ノード(ニューロン)の数は
図26の場合に限定されない。
【0123】
入力層、出力層及び中間層には、1又は複数のノードが存在し、各層のノードは、前後の層に存在するノードと一方向に所望の重みで結合されている。
【0124】
学習済みの学習モデルの入力層は、第1データを入力する。入力層のノードに与えられたデータは、最初の中間層に入力して与えられると、重み及び活性化関数を用いて中間層の出力が算出され、算出された値が次の中間層に与えられ、以下同様にして出力層の出力が求められるまで次々と後の層(下層)に伝達される。なお、ノードを結合する重みのすべては、学習アルゴリズムによって計算される。
【0125】
学習モデルの出力層は、第2データと確率とを出力する。
【0126】
制御部121は教師データを用いて、第1データを入力した場合に第2データを出力する学習モデルを生成する。具体的には、制御部121は、教師データを入力層に入力し、中間層での演算処理を経て、出力層から第2データを取得する。
制御部121は、出力層から出力された第2データを、教師データにおいて第1データに対しラベル付けされた第2データ、即ち正解値と比較し、出力層からの出力値が正解値に近づくように、中間層での演算処理に用いるパラメータを最適化する。該パラメータは、例えば上述の重み(結合係数)、活性化関数の係数等である。パラメータの最適化の方法は特に限定されないが、例えば制御部121は誤差逆伝播法を用いて各種パラメータの最適化を行う。
制御部121は、生成した学習モデルを記憶部122に格納し、一連の処理を終了する。
【0127】
制御部121は、カメラ等を用いて撮像した、使用者の立位又は座位の体表面形状に係る第1データを取得する。
制御部121は、第1データを学習モデルに入力する。
制御部121は、学習モデルが出力した、第2データと確率とに基づいて、例えば確率が80%以上である第2データを取得する。
本実施形態によれば、簡便に使用者の立位又は座位の体表面形状を測定し、体表面形状測定装置14を用いることなく、体表面形状測定装置14を用いた場合に得られる寝姿勢の体表面形状を取得することができる。
【0128】
(実施形態8)
図29は、実施形態8に係る体表面形状測定装置52を示す断面図である。
体表面形状測定装置52は、矩形状の板部(支持台)53と、板部53を支持する4本の柱部54と、型取り材55とを備える。
型取り材55は、板部53に載置されている。型取り材55は、使用者が仰向けに横たわった場合に自重で塑性変形し、変形後の形状を保つ保形性を有する。型取り材55の材質としては、例えばシリコーンゴム、粘土、ジェル、ゼリー、石膏材等が挙げられる。また、型取り材55として、BAUERFEIND社製のインプレッションフォーム「トリッシャム」を使用してもよい。「トリッシャム」を使用する場合、使用者の頭の重さに合わせて、複数段階の硬さのものを用意するのが好ましい。
【0129】
図30は、型取りをした後の型取り材55を示す平面図である。
使用者の体表面形状に沿う凹部56が形成されている。
【0130】
上記構成によれば、凹部56により、寝姿勢の人体の宙づり状態における被測定部分の体表面形状に係るデータを取得できる。凹部56により、マット又は枕において、使用者の体を受け入れる受け皿としての凹部又は切削部の形状を型として直接取得することができ、また、ブロックの高低のデータを取得することができ、容易に、迅速に寝具を作製することができる。
【0131】
(実施形態9)
図31は、実施形態9に係る体表面形状測定装置52を示す断面図である。
体表面形状測定装置52は、矩形状の板部57、及び板部57を支持する2本又は4本の柱部58,58を複数組と、型取り材55とを備える。複数の板部57は、人体の長手方向に並設されている。
柱部58は、アクチュエータにより上下動が可能である。
【0132】
本実施形態においては、使用者の体表面形状を測定する部分に型取り材55を載置する。該部分が寝姿勢で宙づり状態になるように、型取り材55を載置する板部57、及び他の板部57の高さを調節する。また、使用者が使用している寝具に合わせて、高さを調整することができる。
【0133】
今回開示した実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。実施形態にて記載されている技術的特徴は互いに組み合わせることができ、本発明の範囲は、特許請求の範囲内での全ての変更及び特許請求の範囲と均等の範囲が含まれることが意図される。
【0134】
枕1及びマット17の構成は、前記実施形態において説明した構成に限定されない。
枕1が当接部3,4,5を有する場合に限定されない。例えば使用者が主に仰向け寝姿勢で寝る場合は、当接部3のみを中央部に1個設けることにしてもよい。当接部3のみを3個設けてもよく、この場合、寝返りに応じて、左右の貫通孔31の周縁部の形状を変えてもよい。
【0135】
体表面形状測定装置14は、測定部15と支持部141とが分離している場合に限定されず、支持部141の頭側の内寄り部分に測定部15を嵌め込むように構成してもよい。
さらには、予め使用者の睡眠時の寝姿勢をモーションキャプチャ等により動画として撮影しておき、寝返りの特徴等を捉えて、当接部3,4,5の形状を決定してもよい。
【符号の説明】
【0136】
1 枕
2 本体
21、23 凹部
22、24 貫通孔
3、4、5 当接部
31、41、51 貫通孔
6 内カバー
7 パイプ収容部
8 板部
9 外カバー
10 頭部データ
11 取得装置
12 PC
121 制御部
122 記憶部
123 枕製造プログラム
124 入力部
125 インタフェース部
126 マット製造プログラム
13 寝具製造システム
14、52 体表面形状測定装置
141 支持部
15 測定部
150 頭部測定部
151、164 台
152、162、54、58 柱部
153、156 ネット
154、163 ネット支持部
161 案内部
53、57 板部
55 型取り材
17 マット
171、172 凹部
18、19 当接部
181、191 貫通孔