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  • 特許-ペダルアーム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】ペダルアーム
(51)【国際特許分類】
   G05G 1/30 20080401AFI20240618BHJP
   B60T 7/06 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
G05G1/30 E
B60T7/06 B
B60T7/06 D
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020057410
(22)【出願日】2020-03-27
(65)【公開番号】P2021157522
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000112082
【氏名又は名称】ヒルタ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003085
【氏名又は名称】弁理士法人森特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 淳二
(72)【発明者】
【氏名】野田 佳孝
(72)【発明者】
【氏名】荒木 功二
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 憲二
(72)【発明者】
【氏名】松田 拓朗
(72)【発明者】
【氏名】日野 義信
【審査官】増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-248019(JP,A)
【文献】特開2010-170278(JP,A)
【文献】実開昭56-172120(JP,U)
【文献】特開2007-122610(JP,A)
【文献】特開2015-11511(JP,A)
【文献】特開2009-181442(JP,A)
【文献】特開2008-305063(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05G 1/30
B60T 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下に延びる溶接ビードを前面に有するアーム本体を備えたペダルアームにおいて、
アーム本体は、プッシュロッドのクレビスがアーム本体の前面を跨いで、アーム本体の側面に形成された凹部に軸着され、アーム本体の側面と凹部との段差がアーム本体の前面に現れる上下の段差開放端に挟まれた範囲で溶接ビードを上下の段差開放端に挟まれた範囲で分断された上下の溶接ビードより薄くした又はなくしたことを特徴とするペダルアーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車に用いられるペダルアームに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車に用いられるペダルアームは、例えば二つ折りにした板金要素の端縁を前面で付き合わせたり、2つの板金要素の端縁を前面及び後面で突き合わせたりして、突き合わせ部分が溶接されたアーム本体を備えている(特許文献1)。アーム本体は、マスターシリンダから延びるプッシュロッドのクレビスが前面を跨いで揺動自在に軸着される。これから、クレビスは、アーム本体の揺動によって、上下に延びる溶接ビードを跨いで揺動する(特許文献1・図1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許4918620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
クレビスは、他部材との干渉を避けるため、前後方向を短く、左右方向に張り出さないことが望ましい。しかし、アーム本体の前面に有する溶接ビードを跨いで揺動するクレビスは、溶接ビードとの干渉を避けるため、前後方向に長くなる。これは、アーム本体の側面に形成された凹部にクレビスを軸着し、クレビスの左右方向の張り出しを抑制する構造の場合でも、同様である。そこで、クレビスの前後方向を短くしたり、左右方向に張り出さないようにするため、アーム本体の構造を検討した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
検討の結果開発したものが、上下に延びる溶接ビードを前面に有するアーム本体を備えたペダルアームにおいて、アーム本体は、プッシュロッドのクレビスがアーム本体の前面を跨いで軸着され、揺動するクレビスが干渉する範囲で溶接ビードを薄く又はなくしたことを特徴とするペダルアームである。アーム本体の前面を跨いでアーム本体に軸着されたクレビスは、ペダルアームの揺動により、アーム本体に対して相対的に揺動する。溶接ビードは、揺動するクレビスが干渉する範囲で、溶接しない又は除去することで、薄く又はなくして、クレビスとの干渉を避ける。
【0006】
また、アーム本体は、プッシュロッドのクレビスがアーム本体の側面に形成された凹部に軸着され、アーム本体の側面と凹部との段差がアーム本体の前面に現れる上下の段差開放端を挟んだ外側の範囲で溶接ビードを薄く又はなくした構成にするとよい。アーム本体の側面と凹部との段差は、アーム本体の前面に上下の段差開放端として現れる。溶接ビードは、上の段差開放端より上側の位置から下の段差開放端の下側の位置までの範囲でなくし、クレビスとの干渉を避ける。
【発明の効果】
【0007】
本発明のペダルアームは、揺動するクレビスが干渉する範囲で溶接ビードを薄く又はなくしたことにより、溶接ビードの厚みだけクレビスの前後方向に短くできる。また、アーム本体の側面と凹部との段差がアーム本体の前面に現れる上下の段差開放端を挟んだ外側の範囲で溶接ビードを薄く又はなくした構成にすると、クレビスが左右方向に張り出さないようにしながら、アーム本体の側面と凹部とで形成される上下の段差開放端と、分断され他溶接ビードの上側の下端と下側の上端とが離れ、応力集中を避けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明を適用したブレーキペダルの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について図を参照しながら説明する。本発明は、例えば図1に見られるように、自動車用のブレーキペダル1に適用される。本例のブレーキペダル1は、1枚の板金を丸め込み、突き合わせを溶接した中空のアーム本体11と、アーム本体の下端に取り付けたペダルパッド12とを備えて構成される。アーム本体11は、復帰方向(図1中右方向)に付勢された状態で、揺動軸111により支持ブラケット2に軸着され、前方(図1中左方向)から延びるプッシュロッド3が中段付近に接続される。
【0010】
アーム本体11は、板金の突き合わせを前面とし、上下に延びる溶接ビード116,117により溶接される。本例のアーム本体11は、中段より下方に凹溝状の補強ビード112が左右一対の対向関係で、2個一組で形成されている(図1の補強ビード112は左側のもの)。補強ビード112は、前後方向(図1中左右方向)及び左右方向(図1注紙面直交方向)に曲げられるアーム本体11の構造強度の低下を防止し、曲げた後の形状を保形する。補強ビード112の断面形状及び長さは自由である。
【0011】
プッシュロッド3のクレビス31は、アーム本体11の前面を跨いで、アーム本体11の側面(図1中正面)に形成された凹部113に、連結軸32により軸着される。本例の凹部113は、前方に開いた側面視山形で、左右一対対向関係で2個一組で形成されている(図1の凹部113は左側のもの)。凹部113は、アーム本体11の側面と凹部113との傾斜した段差が前面に現れ、アーム本体11の前面に現れる上の段差開放端114と下の段差開放端115とを形成している。
【0012】
ペダルパッド12が踏まれてアーム本体11が前後方向に揺動すると、プッシュロッド3を押し引きしながら、凹部113の範囲でクレビス31が揺動する(図1中仮想線参照)。凹部113が形成する上下の段差開放端114,115は、クレビス31の揺動範囲を制限する。また、下の段差開放端114から延びる凹部の段差の下側は、連結軸32が外れたクレビス31を掛合させて落下を防止する働きがある。これにより、本発明を適用したブレーキペダル1は、少なくともペダルパッド12が踏み込まれた際にプッシュロッド3を押して制動作用が発揮される。
【0013】
本発明が適用されるアーム本体11は、凹部113が形成する上下の段差開放端114,115を挟んだ範囲で分断された上下の溶接ビード116,117により、前面の上下方向に連続する突き合わせを接合され、段差開放端114,115を挟んだ範囲で溶接ビードを薄く又はなくしている。これにより、クレビス31の揺動範囲に溶接ビードがなくなり、クレビス31の前後長を短くできる。また、クレビス31はアーム本体11の凹部113に軸着されるので、アーム本体11から左右方向に張り出す量も少ない。こうして、本発明を適用したブレーキペダル1は、クレビス31を小さくできる。
【0014】
本例のアーム本体11は、上の溶接ビード116の下端を上の段差開放端114より上方に離し、また下の溶接ビード117の上端を下の段差開放端115より下方に離している。これにより、上下の段差開放端114,115における応力集中と上下の溶接ビード116,117の上下端における応力集中とを分離でき、応力集中によるアーム本体11の耐久性を向上させることができる。上下の段差開放端114,115と上下の溶接ビード116,117の上下端との距離は、数mm~10数mmあればよい。
【符号の説明】
【0015】
1 ペダルアーム
11 アーム本体
111 揺動軸
112 補強ビード
113 凹部
114 上の段差開放端
115 下の段差開放端
116 上の溶接ビード
117 下の溶接ビード
12 ペダルパッド
2 支持ブラケット
3 プッシュロッド
31 クレビス
32 連結軸

図1