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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F28D 1/06 20060101AFI20240618BHJP
   F28F 9/02 20060101ALI20240618BHJP
   F28D 7/08 20060101ALI20240618BHJP
   F28D 7/16 20060101ALI20240618BHJP
   F25B 7/00 20060101ALI20240618BHJP
   F25B 43/00 20060101ALI20240618BHJP
   F25B 39/02 20060101ALI20240618BHJP
   F28F 9/24 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
F28D1/06 A
F28F9/02 301G
F28D7/08
F28D7/16 D
F25B7/00 D
F25B43/00 L
F25B39/02 G
F28F9/24
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020125425
(22)【出願日】2020-07-22
(65)【公開番号】P2022021679
(43)【公開日】2022-02-03
【審査請求日】2023-05-27
(73)【特許権者】
【識別番号】390038553
【氏名又は名称】中山エンジニヤリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090413
【弁理士】
【氏名又は名称】梶原 康稔
(72)【発明者】
【氏名】中山 淳也
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-249439(JP,A)
【文献】特表2015-505027(JP,A)
【文献】特開2012-042205(JP,A)
【文献】実開昭59-080663(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2016/0265814(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 1/06
F28F 9/02
F28D 7/08
F28D 7/16
F25B 7/00
F25B 43/00
F25B 39/02
F28F 9/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次熱媒体と二次熱媒体との間で熱交換を行う熱交換器であって、
前記二次熱媒体が供給される圧力容器であるシェル内に、
前記一次熱媒体を分流する分流手段,
この分流手段によって分流された一次熱媒体が供給される多回路で構成されるコイルが多数のプレートフィンをそれぞれ貫通するプレートフィンコイル体,
前記コイルでそれぞれ熱交換を行った一次熱媒体を合流する合流手段,
設置したことを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
一次熱媒体が、前記多回路で構成されるコイル内で、沸騰熱伝達により二次熱媒体を冷却・凝縮させる作用を、密封したシェル内部で行うことを特徴とする請求項1記載の熱交換器。
【請求項3】
前記シェルの底部に液化した前記二次熱媒体を溜めることで、レシーバータンクとして機能させるようにしたことを特徴とする請求項1又は2記載の熱交換器。
【請求項4】
前記分流手段に対する一次熱媒体の導入口及び前記合流手段からの一次熱媒体の導出口と、前記シェルとの貫通部との間にバイメタルカプラを設けたことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍機吐出ガスの凝縮や、蒸発器から気化した冷媒ガスの再液化、あるいは気体の温度を冷却又は加熱するのに好適な熱交換器の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、低沸点冷媒や炭酸ガスの凝縮,あるいは再液化には、プレート式熱交換器や、シェルアンドプレート式熱交換器,シェルアンドチューブ式熱交換器が利用されている。主に利用されているプレート式熱交換器の構造は、隙間ができるように平板(プレート)を複数枚重ねるとともに、流路を形成し、高温の気体と低温の流体を交互に流すことで熱交換を行っている。例えば、下記特許文献1には、縦置き・横置きのいずれでも使用可能なプレート式熱交換器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-91495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記プレート式熱交換器では、冷却側の媒体は、複数の流路が仕切られた平板と平板の間の隙間に導入されるが、言わば解放された平板の間を自由に流れるため、伝熱面に対して二相流冷媒自体が均等に行き渡らず、非効率な運用を余儀なくされていた。また、断面積が小さい流路に偏った形態で冷媒が通過することで、未蒸発冷媒が冷凍機に吸入される液戻りが生ずる危険性がある。これを防止するために、大きな過熱度が生ずるように冷媒流量を膨張弁あるいは流量調整弁を用いて調節する必要があり、冷却面における過熱域を大きくすることで、伝熱面の有効利用が困難となっていた。
【0005】
また、前記シェルアンドプレートもシェル内部に前述のプレート式熱交換器が配置されただけなので、冷却側の冷媒制御は困難であった。更に、シェルアンドチューブ式にあっては、チューブ側に冷却側の冷媒を流すにしても、パスによる戻りチューブでは仕切り空間の下部に配置されたチューブに冷媒液が流入し、中間部以降上部のチューブには冷媒液が全く入らず、非効率な運用を余儀なくされている。
【0006】
本発明は、以上のような点に着目したもので、熱媒体間における熱交換効率の向上を図ることができる熱交換器を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、一次熱媒体と二次熱媒体との間で熱交換を行う熱交換器であって、前記二次熱媒体が供給される圧力容器であるシェル内に、前記一次熱媒体を分流する分流手段,この分流手段によって分流された一次熱媒体が供給される多回路で構成されるコイルが多数のプレートフィンをそれぞれ貫通するプレートフィンコイル体,前記コイルでそれぞれ熱交換を行った一次熱媒体を合流する合流手段を設置したことを特徴とする。主要な形態の一つは、一次熱媒体が、前記多回路で構成されるコイル内で、沸騰熱伝達により二次熱媒体を冷却・凝縮させる作用を、密封したシェル内部で行うことを特徴とする。他の形態によれば、前記シェルの底部に液化した前記二次熱媒体を溜めることで、レシーバータンクとして機能させるようにしたことを特徴とする。更に他の形態によれば、前記分流手段に対する一次熱媒体の導入口及び前記合流手段からの一次熱媒体の導出口と、前記シェルとの貫通部との間にバイメタルカプラを設けたことを特徴とする。本発明の前記及び他の目的,特徴,利点は、以下の詳細な説明及び添付図面から明瞭になろう。

【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、多数のプレートフィンを多回路で構成されるコイルが貫通するプレートフィンコイルをシェル内に設置する拡大伝熱面としたことで、コイル内の熱媒体と、シェル側の熱媒体との熱交換が良好に行われるようになり、熱交換の効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施例1が適用される冷却システムの一例を示す図である。
図2】(A)は前記実施例1の主要部を示す斜視図であり、(B)はプレートフィンコイル体の長手方向垂直の断面を示す図である。
図3】(A)は前記熱交換器の主要部を側面から見た図であり、(B)は端面から見たシェルに対するプレートフィンコイル体の固定の様子を示す図である。
図4】本発明の実施例2の主要部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態を、実施例に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0011】
図1図3を参照しながら、本発明の実施例1について説明する。図1は、本発明の冷却装置の一例が示されており、一次冷却系100と、二次冷却系200とによって構成されている。そして、一次冷却系100と二次冷却系200との間に、本発明の熱交換器300が設けられており、これによって両冷却系の間で熱交換が行われるようになっている。
【0012】
まず、一次冷却系100から説明すると、凝縮器(コンデンサ)102の一次熱媒体の送出側にはレシーバータンク104が設けられており、レシーバータンク104の冷媒送出側には膨張弁106が設けられている。そして、この膨張弁106の冷媒送出側に、熱交換器300が設けられている。膨張弁106を通過した一次熱媒体は、接続するディストリビュータ340を経て熱交換器300のコイル322に供給され、状態変化あるいは温度変化を伴って、冷凍機108に送出されるようになっている。冷凍機108から吐き出された一次熱媒体は、上述した凝縮器102に供給されており、一次熱媒体が一次冷却系100を循環するようになっている。
【0013】
一方、二次冷却系200は、ユニットクーラー202の二次熱媒体送出側に冷凍機204が設けられており、冷凍機204の冷媒送出側に、熱交換器300が設けられている。冷凍機204から供給された二次熱媒体は、熱交換器300のシェル側に供給され、一次熱媒体との間で熱交換が行われるようになっている。熱交換後の二次熱媒体は、膨張弁206を介してユニットクーラー202に供給されており、二次熱媒体が二次冷却系200を循環するようになっている。
【0014】
これらのうち、一次冷却系100の概略の動作を説明すると、レシーバータンク104の中の液化した一次熱媒体は、膨張弁106とディストリビュータ340による減圧の後、熱交換器300のコイル側に送られる。熱交換器300で熱交換を行った一次熱媒体は、完全にガス化し冷凍機108に吸入されて圧縮された後、凝縮器102で凝縮される。これによって液化した一次熱媒体は、レシーバータンク104に還流される。一方、二次冷却系200の概略の動作を説明すると、熱交換器300のシェル側で熱交換を行って液化した二次熱媒体は、膨張弁206による減圧の後、ユニットクーラー202に供給され、これによりユニットクーラー202が設置された庫内が冷却される。ユニットクーラー202を通過した二次熱媒体はガス化し、冷凍機204に吸入されて圧縮された後、再び熱交換器300に送られて凝縮液化される。
【0015】
次に、図2及び図3を参照しながら、上述した熱交換器300について説明する。図2は主要部を示す図であり、図3は側面から内部を見た図である。これらの図に示すように、本実施例の熱交換器300は、シェル310内にプレートフィンコイル体320が収容された構成となっている。
【0016】
シェル310の円筒部312内には、プレートフィンコイル体320が設けられている。プレートフィンコイル体320は、コイル322が複数含まれており、各コイル322によって媒体回路が構成されている。図示の例では、4つの媒体回路が含まれている。回路を分割することでコイル内部を流れる流体の圧力損失による能力減少を、最小化することができる。各コイル322は、多数のプレートフィン324を貫通する構造となっており、これらによって熱交換の面積が増大し、コイル322内の一次熱媒体と、プレートフィンコイル体320の外側のシェル310内の二次熱媒体との間で熱交換が効率的に行われるようになっている。
【0017】
シェル310とプレートフィンコイル体320との間には、取付部330が設けられており、これにボルト・ナット手段332を使用することで、シェル310内にプレートフィンコイル体320が固定されている。シェル310の円筒部312の上部には、二次熱媒体の導入口360が設けられており、下面側には導出口362が設けられている。
【0018】
更に、本実施例では、コイル322が複数回路で構成され、導入口にディストリビュータ(分流器)340が設けられており、これに膨張弁106側から一次熱媒体が導入口350を介して供給されるようになっている。一方、コイル322の導出口は、回路出口コイル323を介してサクションヘッダー(合流マニホールド)342に接続されており、そのサクション出口が導出口352に接続されている。ディストリビュータ340は、ノズルと複数の分流チューブとによって構成されており(例えば特開2016-017675号参照)、導入口350から導入された一次熱媒体は、ディストリビュータ340で均等に分流されて、コイル322の各回路に供給されるようになっている。
【0019】
前記シェル310は圧力容器となるため、導入口350,導出口352の貫通部位は、いずれも溶接されている。また、導入口350とディストリビュータ340との間、及び導出口352とサクションヘッダー342との間には、バイメタルカプラ351,353がそれぞれ設けられている。バイメタルカプラ351,353は、後述するように、シェル側とパイプ側で同じ材料を使用することで、シェル貫通部における溶接を可能とすることを目的として設置されているもので、導入口350側ないし導出口352側がステンレスとなっており、反対側のディストリビュータ340側ないしサクションヘッダー342側がアルミニウムとなっている。
【0020】
例えば、コイル322内部の流体がアンモニアの場合、水酸化銅を生成することから、銅製のコイルを使用することができない。このため、コイル322の材質としては、例えば、熱伝達特性が優れたアルミニウムが好適である。一方、コイル322に連結する導入口350,導出口352を構成するパイプは、シェル貫通部において密閉する必要である。シェル310の材質は一般的にステンレスや鉄であるが、特にステンレス製の場合、パイプ側のアルミニウムと、シェル側のステンレスとを、シェル貫通部において密閉することになる。しかし、アルミニウムとステンレスでは、融点に差があることから、溶接による接合は不可能である。そこで、シェル内でバイメタルカプラ351,353を設けることで、コイル側のアルミパイプにステンレスパイプを接合し、シェル貫通部におけるパイプ材質をステンレスとすることができるので、シェル貫通部では同一の材質となって溶接による接合が可能となり、導入口350,導出口352とシェル310との間を密閉することができる。
【0021】
次に、上記実施例における作用を説明する。一次冷却系100では、膨張弁106で減圧された一次熱媒体が、熱交換器300の導入口350からディストリビュータ340に導入される。一次熱媒体は、膨張弁106及びディストリビュータ340の両方で蒸発圧力まで減圧されるとともに、更に、ディストリビュータ340で、コイル322の回路に均等に分流される。そして、分流された一次熱媒体は、シェル310内においてコイル322のパイプ内を流れ、回路出口コイル323からサクションヘッダー342で合流し、導出口352から導出される。
【0022】
一方、二次冷却系200では、上述したように、冷凍機204で圧縮された二次熱媒体が、シェル310の上部の導入口360からシェル310内に導入される。導入後、二次熱媒体は、シェル310内で拡散し、プレートフィンコイル体320のプレートフィン324(あるいはコイル322)と接触することで凝縮が起こる。これにより液化した二次熱媒体は、プレートフィン324の間を流下し、シェル310の底部に液体として溜まるようになる。この場合において、シェル310の径(長手方向に対して垂直の断面の径)によって保有できる液面を、システム運転に必要な媒体量がコイル322の最下列の1列程度が、運転中のシェル310の内部媒体液面に浸漬するようにすると(図3参照)、二次熱媒体の凝縮液を過冷却することができる。このため、より冷凍効果に寄与することができる。コイル322内の一次熱媒体との間で熱交換が行われて液化した二次熱媒体は、下側の導出口362から導出され、膨張弁206に送られる。
【0023】
この場合において、本実施例では、ディストリビュータ340による一次熱媒体の均等分流が行われていることから、コイル322の各回路におけるチューブの入り口温度、つまり一次熱媒体の蒸発温度はほぼ同じであり、チューブ内の圧力損失による温度降下もほぼ均一となる。このため、プレートフィンコイル体320を通過する二次熱媒体と一次熱媒体との熱交換が、いずれのコイル322の回路においても、ほぼ均一に行われるようになる。
【0024】
また、本実施例では、二次熱媒体がプレートフィンコイル体320のプレートフィン324と主として接触することで、二次熱媒体の凝縮液が重力効果によって流下する。この場合において、プレートフィン324が多数設けられているため、フィン付きの拡大伝熱面となり、熱交換面積が大きい。このため、一次熱媒体と二次熱媒体との熱交換が極めて良好に効率的に行われるようになる。
【0025】
次に、本実施例の具体例を示す。例えば、
a,ステンレス製のシェル310側には、冷凍機204側から吐き出された50℃の炭酸ガス冷媒を供給し、
b,アルミ製のコイル322側には、膨張弁106側から流入し、-8℃で蒸発するアンモニア冷媒が供給され、
プレートフィンコイル体320で熱交換を行うものとする。
【0026】
この場合の熱通過率は、コイル内部の沸騰熱伝達とフィンコイル外部で起こる凝縮熱伝達の相乗効果により、二次熱媒体の凝縮温度は-5℃となり、TDすなわち、一次媒体のアンモニアの蒸発温度-8℃と、二次熱媒体である炭酸ガス凝縮温度―5℃の温度差で3℃程度での運用を可能としている。このとき、プレートフィンコイル体320の管外側の膜状凝縮の平均熱伝達率は2583W/m2・Kとなり、管内側は1771W/m2・Kの大きな熱通過率を得ることができる。これは、凝縮側炭酸ガスの圧力が高いために、分子運動が大きく、粘性も小さいことから、プレートフィンコイル体320上部では滴状凝縮となり、中間以下では膜状凝縮の混合凝縮が生じていると推察される。詳細は、後述する。
【0027】
このように、気化した状態でシェル310内に導入される二次熱媒体は、良好に凝縮して液化し、シェル310の下側に滞留するようになる。従って、シェル310自体が二次熱媒体のレシーバータンクを兼ねることから、従来システムにおいては別個に用意されているレシーバータンクを省略することが可能となる。更に、シェル310の底部に溜まる二次熱媒体液にプレートフィンコイル体320の一部が浸漬することで、二次熱媒体を過冷却することが可能となり、二次冷媒である炭酸ガスの比エンタルピの差を大きくする効果も得られるのみならず、冷凍機204から吐出された炭酸ガスは、溜められて過冷却された液化炭酸ガスと接触することで、直接接触凝縮も行われることになる。
【0028】
加えて、ディストリビュータ340による多回路構成とするとともに、各回路のコイル322の回路長を最適化することで、内部を通過する一次熱媒体の圧力損失が最小となるように製作することが可能となる。このため、あらゆる産業用途での利用が可能であり、特に、大きな冷房・冷凍能力が必要な産業用途に好適である。
【実施例2】
【0029】
次に、図4を参照して、本発明の実施例2について説明する。前記実施例では、プレートフィンコイル体320のプレートフィン324を四角形状としたが、本実施例は、同図に示すように、フィンコイル体520のプレートフィン524は円盤状となっており、これらを貫通するようにコイル522が設けられている。他は、上述した実施例1と同様である。
【実施例3】
【0030】
次に、上記実施例1の試作機例を示す実施例3について説明する。本試作機では、一次熱媒体をアンモニア冷媒とし、二次熱媒体を炭酸ガスとした。熱交換器300を構成するシェル310,プレートフィンコイル体320のコイル322及びプレートフィン324の詳細仕様,外表面伝熱面積,管外側熱伝達率等を示すと、次の表1~表4のようになる。なお、表1~表4は、連続する一つの表を便宜上4つに分けたものである。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】
【表3】
【0034】
【表4】
【0035】
上記試作機において、アンモニア冷媒の一次冷却系100の冷凍機108では、
蒸発温度to=-8℃
凝縮温度tk=30℃
のとき、動力入力は10.5kWであり、冷凍能力Φo=47kWである。
【0036】
また、炭酸ガス冷媒の二次冷却系200の冷凍機204では、
蒸発温度to=-32℃
凝縮温度tk=-5℃
のとき、動力入力は、7.7kWであり、冷凍能力Φo=38.4kWである。
【0037】
従って、熱交換器300による必要凝縮能力Φk=46.1kWとなるが、実際はポリトロープ圧縮となり、一次冷却系100の冷凍機108の冷凍能力Φo=47kWで充足できる。上述した数値例の試作機の運転状態においても、計算値に近似した結果が得られた。このように、レシーバタンクを兼ねるシェル310の内部にコイル322を設置することで、冷凍システムの簡略化と同時に、コンデンシングユニットの小型化も可能となる。なお、上記冷凍機108,204の数値は、冷凍機メーカーの冷凍機能力計算ソフトにより算出したものである。
【実施例4】
【0038】
次に、上記実施例1の試作機例を示す実施例4について説明する。本試作機では、前記実施例3と比較して、一次熱媒体に炭酸ガス(R-744)を使用しており、一次熱媒体,二次熱媒体ともに炭酸ガスとした二元冷凍システム(カスケードシステム)である。熱交換器300を構成するシェル310,プレートフィンコイル体320のコイル322及びプレートフィン324の詳細仕様,外表面伝熱面積,管外側熱伝達率等を示すと、次の表5~表8のようになる。なお、表5~表8は、連続する一つの表を便宜上4つに分けたものである。
【0039】
【表5】
【0040】
【表6】
【0041】
【表7】
【0042】
【表8】
【0043】
上記試作機において、炭酸ガス冷媒の一次冷却系100の冷凍機108では、
蒸発温度to=-8.5℃
ガス温度tk=30℃
のとき、動力入力は19.8kWであり、冷凍能力Φo=47.8kWである。
【0044】
また、炭酸ガス冷媒の二次冷却系200の冷凍機204では、
蒸発温度to=-32℃
凝縮温度tk=-5.5℃
のとき、動力入力は、7.8kWであり、冷凍能力Φo=37.8kWである。
【0045】
従って、熱交換器300による必要凝縮能力Φk=45.6kWとなるが、実際はポリトロープ圧縮となり、一次冷却系100の冷凍機108の冷凍能力Φo=47.8kWで充足できる。このとき一次冷却系の炭酸ガスは上述した数値例の試作機の運転状態においても、計算値に近似した結果が得られた。計算値は別表計算式を使用し、計算結果は、51.2kWの凝縮能力となることから、シェルアンドフィンコイルにおける能力値も充足しているといえる。このように、レシーバタンクを兼ねるシェル310の内部にコイル322を設置することで、冷凍システムの簡略化と同時に、コンデンシングユニットの小型化も可能となる。なお、上記冷凍機108,204の数値は、冷凍機メーカーの冷凍機能力計算ソフトにより算出したものである。
【0046】
<他の実施例> なお、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えることができる。例えば、以下のものも含まれる。
(1)前記実施例で示したコイルやプレートフィンの数や配置間隔フィンピッチは、適宜設定してよい。コイルの管径並びに回路数も管内流体特性からの圧力損失を考慮し、最適な回路長となるように多回路化することができる。プレートフィンコイル体としては、各種のものが公知であり、いずれのものを用いてもよい。また、プレートフィンの間に、適宜の間隔でバッフル板を設けて、コイル長による撓みの防止や、シェルの円筒部に対するプレートフィンコイル体の支持を行うようにしてもよい。
(2)一次熱媒体で二次熱媒体を冷却する場合、一次熱媒体としては、アンモニア,炭酸ガス、プロパンガス,水,HFC冷媒,HFC/HFO冷媒などが好適な例であり、二次熱媒体としては、炭酸ガス,エチレンガス,エタンガス,亜酸化窒素,水蒸気,空気,HFC/HFO冷媒が好適な例である。
(3)前記実施例では、コイルを多回路構成としたが、冷凍能力が小さい小型のコンデンシングユニットの場合、コイルの合計長さが20m程度ではコイルの回路を分割することなく単一回路とすることができる。単一回路のときは、ディストリビュータの代わりに圧力降下用のチューブを設けることで、膨張弁106の制御性を良好にすることができる。
(4)前記実施例において、一次熱媒体が炭酸ガスであり、臨界状態でコイル322に供給される場合は、膨張弁106及びディストリビュータ340のノズルとチューブを臨界状態の炭酸ガスが通過することになる。すると、膨張弁106の絞りによる減圧とディストリビュータ340のノズルとチューブの細管通過の際には、重力加速度が大きく、摩擦損失による圧力損失が生じて、減圧による液化が起こる。このように、臨界ガスの供給温度によって乾き度の比エンタルピ分は液化し、液化しないガスも冷却されることで、冷凍能力の減少を防ぎながら、二次側冷媒の冷却や凝縮を行うことが可能となる。すなわち、臨界状態で供給される炭酸ガスに対し、膨張弁106による圧力相当飽和温度と実測温度から得られる過熱温度による過熱度制御を行うのみで、臨界状態の際に安定した運転を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明によれば、多数のプレートフィンをコイルが貫通するプレートフィンコイル体をシェル内に設置することとしたので、コイル内の熱媒体と、シェル内の熱媒体との熱交換が良好に行われるようになり、熱交換の効率が向上するようになるため、各種の熱交換の分野に好適である。特に、気体の凝縮や冷却に有効である。
【符号の説明】
【0048】
100:一次冷却系
102:凝縮器
104:レシーバータンク
106:膨張弁
108:冷凍機
200:二次冷却系
202:ユニットクーラー
204:冷凍機
206:膨張弁
208:安全弁
300:熱交換器
310:シェル
312:円筒部
320:プレートフィンコイル体
322:コイル
323:回路出口コイル
324:プレートフィン
330:取付部
332:ボルト・ナット手段
340:ディストリビュータ(分流器)
342:サクションヘッダー(合流マニホールド)
350:導入口
351,353:バイメタルカプラ
352:導出口
360:導入口
362:導出口
520:プレートフィンコイル体
522:コイル
524:プレートフィン
図1
図2
図3
図4