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特許7505760ピラゾリン系または/およびケイ皮酸系化合物含有の青色光遮断システム
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  • 特許-ピラゾリン系または/およびケイ皮酸系化合物含有の青色光遮断システム 図1
  • 特許-ピラゾリン系または/およびケイ皮酸系化合物含有の青色光遮断システム 図2
  • 特許-ピラゾリン系または/およびケイ皮酸系化合物含有の青色光遮断システム 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】ピラゾリン系または/およびケイ皮酸系化合物含有の青色光遮断システム
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/10 20060101AFI20240618BHJP
   C08F 12/00 20060101ALI20240618BHJP
   C08F 26/06 20060101ALI20240618BHJP
   G02B 1/04 20060101ALI20240618BHJP
   C08F 2/44 20060101ALN20240618BHJP
【FI】
G02C7/10
C08F12/00
C08F26/06
G02B1/04
C08F2/44 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020529789
(86)(22)【出願日】2018-02-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-10-15
(86)【国際出願番号】 CN2018076390
(87)【国際公開番号】W WO2019029148
(87)【国際公開日】2019-02-14
【審査請求日】2020-04-01
【審判番号】
【審判請求日】2022-12-09
(31)【優先権主張番号】201710674417.X
(32)【優先日】2017-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520046960
【氏名又は名称】優締新材料科技(蘇州)有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】胡 漢民
(72)【発明者】
【氏名】曾 裕峰
(72)【発明者】
【氏名】魏 海涛
(72)【発明者】
【氏名】姜 方園
【合議体】
【審判長】里村 利光
【審判官】神谷 健一
【審判官】関根 洋之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/067107(WO,A1)
【文献】特開2004-210763(JP,A)
【文献】特開2004-163800(JP,A)
【文献】特開平5-179226(JP,A)
【文献】特開昭49-105537(JP,A)
【文献】特開平9-187499(JP,A)
【文献】特開2012-215787(JP,A)
【文献】国際公開第2008/078804(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C7/10, G02B1/04, C08F12/00,26/06,2/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
青色光遮断膜層を含み、
前記青色光遮断膜層は、下記の式(I-1)、式(II-1)および式(II-2)の化合物を全て含み、
【化1】
式(I-1)、式(II-1)および式(II-2)の化合物は、400±20nmにおいて最大吸収ピークを有し、青色光および290~320nmのUVBを除去し、410nmから450nmまでの可視光を直線的に漸減して吸収する、
ことを特徴とする青色光遮断光学レンズ。
【請求項2】
(I-1)の化合物と式(II-1)の化合物および式(II-2)の化合物とは併用され、
式(I-1)の化合物と、式(II-1)の化合物および式(II-2)の化合物と、の質量割合の範囲は、1:5~5:1である、
ことを特徴とする請求項1に記載の青色光遮断光学レンズ。
【請求項3】
下記の式(I-1)、(II-1)および式(II-2)の化合物の光学レンズにおける使用であって、
前記光学レンズは、式(I-1)、式(II-1)および式(II-2)の化合物を全て含み、290nmから320nmまでのUVBを式(I-1)、式(II-1)および式(II-2)の化合物に吸収させて目を保護し、410nmから450nmまでの可視光を式(I-1)、式(II-1)および式(II-2)の化合物に直線的に漸減して吸収させる
使用。
【化2】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、青色光遮断組成物および青色光遮断膜を含む青色光遮断システムに関する。青色光遮断膜は青色光遮断組成物で加工してなり、青色光遮断組成物または青色光遮断膜は新規な青色光遮断剤を含み、目を保護するよう短波長青色光を完全に吸収することができ、また透過光が特に良好な視覚体験をもたらすように長波長の青色光を選択的に吸収することもできる。本発明は、淡色でありかつ青色光を選択的に吸収するという利点を有し、例えば光学膜、光学レンズ、保護メガネ、皮膚保護、照明、塗料、接着剤、またはパネルなどの分野に適用することができる。
【背景技術】
【0002】
可視光は赤色、橙色、黄色、緑色、青色、紺色、紫色光に分けられ、赤色光の波長が最も長く、紫色光が最も短く、波長が短ければ短いほど、エネルギーが高い。青色光は体内のフリーラジカルを誘発できる(非特許文献1)。3Cディスプレイが発する青色光は、薄暗い環境で目を透過しやすく、老眼の原因となる毛様体筋の痙攣を引き起こし、長期間にわたれば黄斑変性症が発生する。現在、青色光フィルタ剤は主に染料系および無機蛍光粉末系化合物であり、青色光遮断剤としては色が濃くなりすぎるなどの欠点がある。例えば、茶色の眼鏡(特許文献1,CAPLUS AN 2017:351046)は、室内での利用に適しない。
【0003】
優秀な青色光遮断剤は、1.青色光をフィルタリングでき、2.自身が淡色であるという二つの基本的な条件を満たさなければならず、それに、3.青色光を選択的に吸収できるという特性を有する必要がある。それは全帯域の青色光を非選択的に吸収すれば、視覚的に不自然であるという感覚が生じるためである。ハイエンドの応用において、青色光遮断剤は特定の青色光帯域に対する吸収度が、波長の増加につれて徐々に減少する必要があり、つまり、長波長の青色光は高い透過度を有する必要がある。例えば、光学レンズは410nmから450nmの帯域で、それを透過する青色光に50%から100%へ漸次増加する透過度が必要である。このようにして、視覚的に良好な感覚が生じる。してみると、青色光遮断剤としての条件は非常に厳しく、市場では、1.青色光をフィルタリングでき、2.自身が淡色であり、3.青色光を選択的に吸収できるという三つの特性を満たす青色光遮断用製品が極めて珍しい。
【0004】
従来、構造が本発明の式(II-1)の化合物に非常に近い式(II-5)の化合物であるジメチル(p-メトキシベンジリデン)マロネート(商品名Eusorb-1988またはClariant hostavin pr 25)が開示されている。
【0005】
【化1】
【0006】
式(II-5)の化合物は最大吸収ピークが314nmにあり、例えば特許文献2(CAPLUS AN 2008:1039270)のように、UVB(290~320nm)紫外線吸収剤に広く応用されている。しかし、それは青色光遮断の効果を有さない(本発明表1)。本発明のp-アミノケイ皮酸エチル化合物(式II-1)の、開示された最大吸収が380nm以下であることが知られており、例えば、特許文献3の表1のように、開示された最大吸収が338~339nm(EC13)である。したがって、OCHまたはN(CH置換p-2-ベンジリデンマロン酸ジメチルエステル(式II-1または式II-5の化合物)は、従来、いずれも青色光遮断に用いられることがなく、また青色光遮断に適すると認められることもない。
【0007】
【化2】
【0008】
従来、構造が本発明の式(II-2)の化合物に非常に近い式(II-7)の化合物であるシアノ-p-メトキシケイ皮酸エステルが開示されている。(II-7)は最大吸収ピークが340nmにあり、紫外線吸収剤に用いられる。例えば、特許文献4(CAPLUS AN 1997:571294)も特許文献5(CAPLUS AN 1980:116437)の請求項1も、そのUVA紫外線吸収における応用を開示している。発明の式(II-2)の化合物は光開始剤として用いられることが知られており、非特許文献2または特許文献6(CAPLUS AN 1986:79233)に開示されるとおりである。それはフリーラジカルを誘発して一連の光化学反応を引き起こすという役割を果たす。この役割は本発明の青色光遮断剤の有機体保護という役割とは全く異なり、その青色光遮断における機能も応用または予測されることがない。
【0009】
本発明の式(I)のピラゾリン化合物は、元々プリント回路基板のフォトレジスト(光阻害剤)において光開始剤として用いられたり、電荷輸送材料によるプリント回路基板の光不透過性繊維入り樹脂層において反射作用を果たす蛍光増白剤(whitening agent)として用いられたり、電子写真(electrophotography)分野において電荷輸送(charge transfer)用として用いられたり、抗菌剤として用いられたりしている。例えば特許文献7の第5ページ(または特許文献8の第4欄)は化合物(I-1)を光開始剤として、特許文献9は化合物(I-1)をh-line(405nm)で高感度光開始剤として、特許文献10(CAPLUS AN 1981:10007)は化合物(I-2)、(I-3)を光開始剤として開示している。また例えば、特許文献11(CAPLUS AN 1994:43960)は化合物(I-1)をプリント回路基板の光不透過性繊維入り樹脂において、反射作用を発揮する蛍光増白剤として開示しており、非特許文献3(CAPLUS AN 2000:417529)は化合物(I-2)、(I-3)の発光特性を開示している。さらに例えば、特許文献12は化合物(I-2)、(I-3)を電子写真(electrophotography)分野において電荷輸送用として開示している。さらに例えば、非特許文献4は(I-2)、(I-3)が抗菌効果を有することを開示している。以上の役割は本発明の青色光遮断におけるフィルタリングおよび保護機能とは全く関係しておらず、それらの青色光遮断における機能も応用または予測されることがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】中国特許出願公開第106466925号明細書
【文献】特許第4822129号公報
【文献】米国特許出願公開第2004/126700号明細書
【文献】特開平09-221583号公報
【文献】米国特許第4284621号明細書
【文献】特許第3062163号公報
【文献】中国特許出願公開第102012634号明細書
【文献】米国特許第8198008号明細書
【文献】米国特許第8361697号明細書
【文献】特開昭63-033481号公報
【文献】特許第3121096号公報
【文献】米国特許第3837851号明細書
【非特許文献】
【0011】
【文献】Investigative Ophthalmology & Visual Science (20140731),55(7),pp.4119-4127
【文献】J.App.Polym. Sci. Photosensitive resins containing p-dimethyl- aminobenzylidene derivatives and diphenyliodonium salt as photoinitiators,1987,34(8),p.2747-56
【文献】Ganguang Kexue Yu Guang Huaxue(2000),18(2),160-164
【文献】Chemical & Pharmaceutical Bulletin,46(8),1998,p.1254
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
優秀な青色光遮断用製品は、青色光をフィルタリングするという基本的な機能および良好な色外観を有するべきである。特に優秀な青色光遮断用製品は、透過光が良好な青色光視覚体験をもたらすように特定の帯域の青色光に対して異なる吸収能力をさらに有する。したがって、優秀な青色光遮断剤としての条件は非常に厳しい。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的を達成するために、本発明は青色光遮断化合物を特別に設計および選別する。驚いたことに、発明者は特に優秀な青色光遮断剤として用いることができる式(I)および式(II)の化合物を設計した。本発明は同時に、式(I)または式(II)の青色光遮断剤を単独で使用しまたは両者を併用する青色光遮断システムを設計する。本発明は従来の青色光遮断剤の欠点を解消する。例えば、従来の濃色染料または無機蛍光粉末による青色光遮断剤により製品の色が濃くなりすぎるという欠点を解消する。また例えば、従来の青色光遮断剤が長波長青色光を過剰に吸収することによって視覚体験が悪くなるという欠点を解消する。
【0014】
本発明の青色光遮断剤システムは式(I)または式(II)の青色光遮断化合物を単独で使用することを最も基本的な設計とする。それは、約400±20nmにおいて式(I)または式(II)はいずれも最大吸収ピークを有するためである。青色光遮断化合物は組み合わせて使用してもよく、例えば式(I-1)、式(I-2)、式(I-3)の三つの類似する化合物の組み合わせであってもよいし、または、例えば式(II-1)、式(II-2)の二つの類似する化合物の組み合わせであってもよい。それは、類似する化合物同士が高い相容性を有する一方、類似する化合物同士の割合を調整することで、透過した青色光が良好な視覚体験をもたらすように異なる帯域の青色光を選択的に吸収することができるという利点を有する。
【0015】
(I-1)、(I-2)、(I-3)は青色光領域での最大吸収がそれぞれ約390nm、380nm、420nm(溶剤によって僅かの差異がある)である。特定の割合で混合すれば、異なる青色光フィルタリング効果を達成できる。(I-1)、(I-2)、(I-3)の化合物の構造は類似し、ほとんど全ての割合で混合することができる。したがって、(I-1)、(I-2)、(I-3)の化合物の割合を制御することで、透過した青色光が良好な視覚体験を有するように異なる帯域の青色光を選択的に吸収することができる。同様に、本青色光遮断剤システムは式(II)の化合物の組み合わせ、例えば式(II-1)、式(II-2)の化合物の組み合わせであってもよい。(II-1)、(II-2)の青色光領域の最大吸収はそれぞれ約380nm、420nm(溶剤によって僅かの差異がある)であり、(II-1)と(II-2)の割合を制御することで、透過した青色光が良好な視覚体験をもたらすように異なる帯域の青色光を選択的に吸収することができる。本青色光遮断剤システムは式(I)と式(II)の化合物の組み合わせ、例えば式(I-1)、式(I-2)、式(I-3)、式(II-1)、式(II-2)の化合物の組み合わせであってもよい。式(I-1)、式(I-2)、式(I-3)、式(II-1)、式(II-2)の化合物は約400±20nmにおいて最大吸収ピークを有し、五者はいずれも有害な短波長青色光を除去することができる。かつ、式(I-1)、式(I-2)、式(I-3)、式(II-1)、式(II-2)の化合物は410nmから450nmでの吸収値が、透過した青色光が良好な視覚体験をもたらすことができるように、いずれも略直線的に漸減する。式(I)と式(II)の化合物は近い構造ではないが、式(I)と式(II)の化合物はトルエン、ブタノン、イソプロパノール、酢酸エチル、アセトニトリルなどを含む溶剤を共有できる。したがって、式(I)と式(II)の化合物は様々な割合で混合し、青色光フィルタリングの効果を達成することができる。
【0016】
本青色光遮断剤システムは、例えば、ジメチル(p-メトキシベンジリデン)マロネート(式II-5の化合物、UV吸収の最大吸収ピーク314nm)、テトラエチル-2,2’-(1,4-フェニレンジメチリジン)ビスマロネート(式II-6の化合物、UV吸収の最大吸収ピーク320nm)、およびシアノ-p-メトキシケイ皮酸エステル(式II-7の化合物、UV吸収の最大吸収ピーク340nm)など、他の紫外線防止化合物と組み合わせて使用し、紫外線および青色光を同時に防止するという機能を達成することができる。
【0017】
UVA(約320~400nm)紫外線はガラスを透過でき、室内の主な紫外線帯域である。UVB(約290~320nm)紫外線は太陽放射が皮膚において光生物学的効果を引き起こす主な紫外線帯域である。多くの応用では、UVA(約320~400nm)および全帯域青色光(約380nm~450nm)を同時に吸収することが期待されている。UVAB(約290~400nm)および全帯域青色光(約380nm~450nm)を同時に吸収するUV-青色光防止システムも期待されている。410nm~450nmは、エネルギーが低い長波長青色光である。410nmから450nmまで、吸収が漸減する青色光遮断システムは、作られる透過光が良好な視覚体験をもたらすことができるため期待されている。UVAB(約290~400nm)を吸収しかつ同時に青色光(410nmから450nmまで吸収が漸減する)を選択的に吸収するUV-青色光防止システムも、大いに期待されている。それは例えば、式(I-1)、式(I-2)、式(I-3)、式(II-1)、式(II-2)、式(II-5)、式(II-6)、式(II-7)のうちの一種または複数種の化合物の特定の組み合わせである。
【0018】
本発明の化合物は以下のとおりである。
【0019】
【化3】
【0020】
式中、R~RはそれぞれH、直鎖もしくは分岐鎖C~Cアルキル基、OR、およびN(Rから独立して選択され、R~RはそれぞれH、および直鎖もしくは分岐鎖C~Cアルキル基から独立して選択され、R~RはそれぞれCOOR、CONR1011、COR12、およびCNから独立して選択され、RはH、直鎖もしくは分岐鎖のC~C18アルキル基、およびポリエチレングリコール基から選択され、R10~R12はそれぞれH、直鎖もしくは分岐鎖のC~Cアルキル基、およびフェニル基から独立して選択される。
【0021】
好ましくは、R~RはそれぞれC~Cアルキル基、OCH、およびN(CHから独立して選択され、R~RはHであり、R~Rはそれぞれ独立した直鎖もしくは分岐鎖C~Cアルキル基であり、 R~RはそれぞれCOOR、CONR1011、COR12、およびCNから独立して選択され、RはHまたは直鎖もしくは分岐鎖C~C18アルキル基または分子量40~500のポリエチレングリコール基であり、R10~R12はそれぞれH、直鎖もしくは分岐鎖C~Cアルキル基、およびフェニル基から独立して選択される。
【0022】
より好ましくは、R~Rはそれぞれtert-ブチル基、メトキシ基、ジメチルアミノ基から独立して選択され、R~RはHであり、R~Rはそれぞれ独立した直鎖もしくは分岐鎖C~Cアルキル基であり、R~RはそれぞれCOORおよびCNから独立して選択され、Rは直鎖もしくは分岐鎖C~Cアルキル基または分子量40~350のポリエチレングリコール基である。
【0023】
特に好ましくは、式(I-1)、式(I-2)、式(I-3)、式(II-1)、および式(II-2)の化合物を含む。
【0024】
【化4】
【0025】
特に好ましくは、さらに、式(I-1)、式(I-2)、式(I-3)、式(II-1)、式(II-2)の一種または複数種の化合物の組み合わせを含む。別の特に好適な解決手段は、例えば式(I-1)、式(I-2)、式(I-3)、式(II-1)、式(II-2)、式(II-5)、式(II-6)、式(II-7)の一種または複数種の化合物の組み合わせを含む。そのうち、式(II-5)、式(II-6)、式(II-7)は紫外線防止化合物である。
【0026】
【化5】
【0027】
紫外線防止化合物はジメチル(p-メトキシベンジリデン)マロネート(式II-5の化合物)、テトラエチル-2,2’-(1,4-フェニレンジメチリジン)ビスマロネート(式II-6の化合物)、シアノ-p-メトキシケイ皮酸エステル(式II-7の化合物)、(2-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール、2,2’-メチレンビス(4-tert-クチル-6-ベンゾトリアゾールフェノール)、または他の紫外線防止化合物であってもよい。
【0028】
本発明の式(II)の化合物のポリエチレングリコールおよび脂肪エステルの置換基は、応用において、低移行性および高相容性を有する。かつ、本発明に記載の式(II)のケイ皮酸系化合物は、様々な樹脂、モノマーまたはプレポリマーと反応し、低移行性および高相容性という利点を達成することができる。
【0029】
本発明の青色光遮断組成物には、予期せぬ光反応が阻止されるようにフリーラジカル捕捉剤または酸化防止剤または重合禁止剤を選択的に添加することができる。また、組成物におけるpH値を調整することでも、予期せぬ光反応を阻止することができる。青色光遮断組成物の重合反応では、適切な帯域の開始剤を選択することでも、予期せぬ光反応の発生を回避することができる。
【0030】
前述したように、従来の式(I)および式(II)の化合物は、プリント回路基板のフォトレジストにおける光開始剤として、フルーラジカルを誘発して一連の光化学反応を引き起こすという役割を果たす。それは破壊的な役割であり、本発明の青色光遮断剤の光フィルタリングによる保護機能とは全く異なる。また、本発明の青色光遮断システムは、青色光をフィルタリングして除去し、透過した光を人体に有害な短波長青色光がないようにし、一方、短波長青色光以外の可視光が依然として高い透過率を有するようにするという用途に用いられる。これはプリント回路基板における光不透過層の繊維入り樹脂の反射または光阻害という役割とは全く異なる。なお、本発明の青色光遮断システムの青色光フィルタリングは電荷輸送という機能とも全く異なる。
【0031】
式(I-1)の化合物の合成経路は以下のとおりである(実施例1)。
【0032】
【化6】
【0033】
式(II-1)の化合物の合成経路は以下のとおりである(実施例4)。
【0034】
【化7】
【0035】
本発明の青色光遮断システムは、その基本構造が一つ以上の青色光遮断膜層、および/または基質層、および/または離型層を含む。基本的には青色光遮断組成物を基質層または離型層に塗布してから乾燥させる。または、転写式塗布というプロセスを採用し、まず離型膜に塗布し、続いて基質層に転写する。青色光遮断膜の上下層にそれぞれ貼り合わせられた一つの離型薄膜はOCA光学的透明接着剤(Optically Clear Adhesive)である。塗布方法は従来技術に属し、従来の刷毛塗り、スプレー塗布、カーテン塗布、ロール塗布、スリット塗布、エアナイフ塗布、ブレード塗布、およびメタリングバー塗布を含む。乾燥方法は自然乾燥、マイクロ波乾燥、紫外線乾燥、赤外線乾燥、熱風乾燥を含む。基質層はポリエステル、ガラス、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニルの一種または複数種の混合物を含む。離型膜はシリコーン化合物型材質および非シリコーン化合物材質を含む。非シリコーン化合物は、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ尿素、ポリアクリル酸、ポリエステルおよびフルオロカーボン類の一種または複数種の混合物を含む。OCA光学的透明接着剤は厚さによって異なる分野、例えば透明器具の接着、ディスプレイの組立、レンズの組立、パネル、ガラスまたはポリカーボネートなどのプラスチック材料の貼り合わせに用いることができる。青色光遮断膜は他の膜層、例えば、UV吸収膜層、防曇膜層、帯電防止膜層を含んでもよい。青色光遮断膜は光学または電子産業、例えば光学レンズ、保護メガネ、レンズ、ディスプレイ、パネル、照明防護に用いることができる。
【0036】
熱開始青色光遮断組成物は、通常、青色光遮断剤、熱開始剤、モノマー、溶剤、助剤を含む。熱開始剤は開始剤の使用温度範囲に応じて、アルキル過酸化物、アルキル過酸化水素化合物、過酸化エステル化合物の一種または複数種の混合物のような高温(100℃以上)開始剤、アゾ化合物、過酸化ジアシル、過硫酸塩などのような中温(40~100℃)開始剤、およびレドックス開始系のような低温(0~40℃)開始剤に分けられる。熱開始剤は分子構造に応じて主にアゾ化合物および過酸化物の二種類に分けられる。一般的なアゾ化合物はアゾビスイソブチロニトリル(ABIN)、アゾビスイソヘプトニトリル(ABVN)、およびカルボキシル基またはスルホン酸基付きのアゾ化合物を含む。一般的な過酸化物は過酸化ベンゾイル(BPO)、ビス(2,4-ジクロロベンゾイル)ペルオキシド、ジアセチルペルオキシド、ジオクタノイルペルオキシド、ジドデカノイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド(DCP)、ジ-tert-ブチルペルオキシド(DTBP)、tert-ブチルベンゾイルペルオキシド(BPB)、クメンヒドロペルオキシド(CHP)およびtert-ブチルヒドロペルオキシド(TBH)、ペルオキシ二炭酸ジイソプロピル(IPP)、ペルオキシ二炭酸ジイソブチル(IBP)、ペルオキシジカーボネート、メチルエチルケトンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、過硫酸塩および過酸化水素を含む。モノマーは二重結合または他の反応性官能基を含有する低分子化合物である。二重結合系モノマーはアクリル系、アクリレート系、メタクリル系、メタクリレート系、ヒドロキシアクリレート系、ヒドロキシメタクリレート系、ジアセトンアクリルアミド系、エチレン系、スチレン系、ジエン系、フッ化ビニル系、塩化ビニル系、アクリロニトリル系、酢酸ビニル系、シリコーンアクリレート系、エポキシアクリレート系、およびポリウレタンアクリレート系モノマーを含む。アクリルまたはアクリレート系モノマーは、アクリレートソフトモノマー、アクリレートハードモノマー、アクリル官能性モノマー、および架橋性モノマーを含む。好適なアクリレートソフトモノマーは、例えばエチルアクリレート、ブチルアクリレート、アクリル酸2-エチルヘキシル、イソオクチルアクリレートである。好適なアクリルハードモノマーは、例えばアクリル酸メチル、メタクリル酸メチルである。好適なアクリル官能性モノマーは、例えばアクリル酸、メタクリル酸である。好適な架橋性モノマーは、例えばヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、およびアジピン酸ジヒドラジド(ADH)である。青色光遮断膜に用いられる熱硬化性樹脂は、例えばポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレア樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、およびアルキド樹脂である。そのモノマーはイソシアネート系、エピクロロヒドリン、フェノール系、アルデヒド系、ポリオール系、脂肪酸系、ポリ酸系、酸無水物系、ポリチオール系、ポリアミン系、アルコールアミン系、およびチオールアミン系モノマーであってもよい。溶剤はアセトニトリル、アセトン、メチルエチルケトン、ブタノン、シクロヘキサノン、ベンゼン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルイソブチルケトン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、塩化ビニル、ジクロロメタン、クロロホルム、二硫化炭素、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド(DMF)、およびポリエチレングリコールメチルエーテル(EGMME)を含む。ポリウレタンはポリエステルポリオールまたはポリエーテルポリオールとイソシアネートとの反応によって生成される。具体的な実施形態では、例えばポリオール、イソシアネート、鎖延長剤、および触媒(例えばジメチルアミノシクロヘキサン)を混合し、続いて金型に注入して硬化成形させる。または、まずイソシアネートとポリオールを反応させてプレポリマーを生成し、続いて鎖延長剤を添加する。エポキシ樹脂モノマーはエピクロロヒドリンとビスフェノールA系化合物との反応によって生成される。具体的な実施形態は、ビスフェノールAとエピクロロヒドリンを反応させ、続いて、例えばジシアンジアミド(Dicy)またはアジピン酸ジヒドラジド(ADH)などの硬化剤、および促進剤の2-メチルイミダゾールを添加することを含む。アルキド樹脂のモノマーはポリオールおよび脂肪酸を含む。具体的な実施形態では、例えばグリセリン、イソフタル酸無水物および脂肪酸を反応釜内に加え、200~250℃まで所望の粘度および酸価になるまで加熱する。不飽和ポリエステル樹脂はエステル結合および不飽和二重結合を有する線状高分子化合物である。モノマーは不飽和二塩基酸および不飽和ジオール、または飽和二塩基酸および不飽和ジオールを含む。具体的な実施形態では、例えばプロピレングリコール、無水マレイン酸、およびフタル酸無水物を反応釜内で縮合重合反応を行う。生成される不飽和ポリエステルに、スチレンモノマーを加えて粘液状樹脂とし、使用時にさらにシクロヘキサノンパーオキサイドを加える。助剤は安定剤、カップリング剤、レベリング剤、消泡剤、分散剤、溶剤、連鎖移動剤、触媒、強靭化剤、粘着付与剤、可塑剤、増稠剤、希釈剤、難燃剤、重合禁止剤、防腐剤、硬化剤、および酸塩基調整剤の一種または複数種の混合物を含んでもよい。一般的な連鎖移動剤は、例えば脂肪族メルカプタンおよびドデシルメルカプタンである。一般的な安定剤は、例えばUV吸収剤、ヒンダードアミン、酸化防止剤、加水分解防止剤、過酸化物捕捉剤、およびフリーラジカル捕捉剤である。熱開始青色光遮断組成物は、質量含有量が0.01%~20%の青色光遮断剤、質量含有量が0.01~10%の開始剤、含有量が50~99.98%のモノマーまたはプレポリマーまたは重合体、および質量含有量が0~80%の助剤を含んでもよい。そのうち、青色光遮断剤の質量含有量は、好ましくは0.05%~10%であり、より好ましくは0.1%~5%である。具体的な実施形態では、例えば、アクリルソフトモノマー、アクリルハードモノマー、アクリル官能性モノマー、およびアクリル架橋性モノマーを混合し、モノマー混合物を形成させる。モノマー混合物、開始剤および溶剤を反応釜に加え、昇温させて反応させ、反応が完了した後に室温まで降温させ、注出し、基質層に均一に塗布してよい。
【0037】
光開始青色光遮断組成物は、通常、青色光遮断剤、重合モノマーまたは/およびプレポリマー、光開始剤、および助剤を含む。光開始剤は主にフリーラジカル型光開始剤およびカチオン性光開始剤があり、そのうち、フリーラジカル型光開始剤は開裂型光開始剤および水素引抜型光開始剤に分けられる。開裂型フリーラジカル光開始剤はアリールアルキルケトン系化合物を主とし、ベンゾイン誘導体、ジアルコキシアセトフェノン、α-ヒドロキシアルキルフェノン、α-アミンアルキルベンゾフェノン、アシルホスフィンオキサイド、エステル化オキシムケトン化合物、アリールペルオキシエステル化合物、ハロメチルアリールケトン、有機硫黄含有化合物、および蟻酸ベンゾイルの一種または複数種の混合物を含む。水素引抜型フリーラジカル光開始剤は、活性アミン、ベンゾフェノン、チオキサントンおよびその誘導体、アントラキノン、活性アミン、クマロンおよびカンファーキノンの一種または複数種の混合物を含む。カチオン性光開始剤は、ジアゾニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、アルキルスルホニウム塩、鉄アレーン塩、スルホニルオキシケトンおよびトリアリールシリルエーテルの一種または複数種の混合物を含む。プレポリマーは、官能基を含有しかつさらに反応可能なオリゴマー、例えばメタクリレートオリゴマー、アクリレートオリゴマー、エポキシアクリレートオリゴマー、ポリウレタンアクリレートオリゴマー、シリコーンアクリレートオリゴマー、アミノアクリレートオリゴマー、カルボキシルアクリレートオリゴマー、リン酸エステル系アクリレートオリゴマー、ヒドロキシポリアクリレートオリゴマー、ポリエステルアクリレートオリゴマー、およびポリエーテルアクリレートオリゴマーの一種または複数種の混合物であってもよい。重合モノマーは、様々な付加反応または縮合重合反応による小分子の一種または複数種の混合物であってもよい。そのうち、二重結合系モノマーはアクリル系、アクリレート系、メタクリル系、メタクリレート系、ヒドロキシアクリレート系、ヒドロキシメタクリレート系、ジアセトンアクリルアミド系、エチレン系、スチレン系、ジエン系、フッ化ビニル系、塩化ビニル系、アクリロニトリル系、酢酸ビニル系、シリコーンアクリレート系、エポキシアクリレート系、およびポリウレタンアクリレート系モノマーを含む。アクリルまたはアクリレート系モノマーは、アクリレートソフトモノマー、アクリレートハードモノマー、アクリル官能性モノマー、および架橋性モノマーを含む。好適なアクリレートソフトモノマーは、例えばエチルアクリレート、ブチルアクリレート、アクリル酸2-エチルヘキシル、およびイソオクチルアクリレートである。好適なアクリルハードモノマーは、例えばアクリル酸メチル、メタクリル酸メチルである。好適なアクリル官能性モノマーは、例えばアクリル酸、メタクリル酸である。好適な架橋性モノマーは、例えばヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、およびアジピン酸ジヒドラジドである。そのうち、式(I)の青色光遮断剤の質量含有量は0.01%~20%であり、好ましくは0.05%~10%であり、より好ましくは0.1%~5%である。助剤は安定剤、カップリング剤、レベリング剤、消泡剤、分散剤、溶剤、連鎖移動剤、触媒、強靭化剤、粘着付与剤、可塑剤、増稠剤、希釈剤、難燃剤、重合禁止剤、防腐剤、硬化剤、および酸塩基調整剤の一種または複数種の混合物を含んでもよい。一般的な助剤はカップリング剤、例えばシランカップリング剤を含む。一般的な助剤は安定剤、例えばUV吸収剤、ヒンダードアミン、酸化防止剤、およびフリーラジカル捕捉剤の一種または複数種の混合物を含む。光開始青色光遮断組成物は質量含有量が0.01%~20%の青色光遮断剤、質量含有量が0.01~10%の開始剤、5~99.98%のモノマーおよび/またはプレポリマー、および質量含有量が0~95%の助剤を含む。好ましくは、青色光遮断剤の質量含有量は0.05%~10%であり、開始剤の質量含有量は0.05~5%であり、モノマーおよび/またはプレポリマーは5~99.9%であり、助剤の質量含有量は0~50%である。具体的な実施形態では、光開始青色光遮断組成物(例えばアクリレートモノマーと、アクリレートプレポリマーと、青色光吸収剤と、開始剤Photocure 84との組み合わせ)を混合し、清潔な基質層に均一に塗布し、続いてUV光で硬化させて青色光遮断膜を得るようにしてもよい。
【0038】
非反応型青色光遮断組成物は、その組成が青色光遮断剤、重合体、溶剤、および/または助剤を含む。それは主に塗膜内の溶剤または他の分散媒の揮発によって、固体薄膜を形成する。重合体はポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアミド、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、アクリロニトリル-スチレン共重合体、熱可塑性ポリウレタン、ポリイミド、セルロース、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキサイド、ポリオキシメチレン、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミド-イミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、およびポリエーテルイミドの一種または複数種の混合物から選択されてもよいが、これらに限定されない。非開始青色光遮断組成物は質量含有量が0.01%~20%の青色光遮断剤、含有量が5~99.99%の重合体、および質量含有量が(0~95%)の助剤を含んでもよい。具体的な実施形態では、ポリスチレンを例にし、ポリスチレンプラスチックを加熱乾燥させ、続いて小片に粉砕し、キシレン/酢酸エチル混合溶剤に加え、完全に溶解するまで撹拌する。さらに可塑剤(例えばフタル酸ジブチル)、青色光遮断剤を加えて加熱撹拌し、組成物を得る。塗布して乾燥させて溶剤を除去した後、青色光遮断膜を得る。ポリスチレンの可塑剤はフタル酸エステル類、ジテルペン、エポキシ化大豆油、エポキシ化大豆油脂肪酸オクチル、およびアルキルベンゼンスルホネートを含む。
【0039】
本発明の青色光遮断光学レンズまたは保護メガネは、ガラス製の、およびポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ナイロン(PA)、TPX(Polymethylpentene)、ポリスチレン、ジグリコールジアルキルカーボネート樹脂(PEDC)などの高分子材料製のレンズを含む。青色光遮断剤は特定の割合で樹脂に添加して共同で成形することができ、青色光遮断剤の質量含有量は0.01%~20%であり、好ましくは0.05%~10%であり、より好ましくは0.1%~5%である。本発明は含浸プロセスを採用し、レンズを青色光遮断剤含有の溶液に浸漬するようにしてもよい。本発明は薄膜プロセスを採用し、レンズの表面に青色光遮断膜を形成させるようにしてもよい。本発明は転写式塗布プロセスを採用し、例えば、まず離型膜に塗布し、続いて光学レンズに転写するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本発明の式(I-1)および式(II-1)の化合物のUV-VIS吸収図である。
図2】青色光遮断膜の側面模式図であり、図中、1.は離型層、2.は青色光遮断層、3.は基質層である。
図3】青色光遮断用のOCA光学的透明接着剤(Optically Clear Adhesive)の側面模式図であり、図中、1.は離型層、2.は青色光遮断層、3.は離型層である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下に本発明を実施するための形態を説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されない。
【0042】
(実施例1)
式(I-1)の化合物である1-フェニル-3-(4-ブチルスチリル)-5-(4-tert-ブチルフェニル)ピラゾリンの合成
【0043】
【化8】
【0044】
_tert-ブチルベンズアルデヒド16.2gおよびアセトン3.0gを、新たに調製したナトリウムメトキシド溶液に加えて室温で3時間撹拌する。水洗いして乾燥させ、生成物のビス(2-(4-tert-ブチル)フェニルビニル)ケトンを得る。7gのビス(2-(4-tert-ブチル)フェニルビニル)ケトンおよび2.2gのフェニルヒドラジンを秤量し、酢酸で4時間反応させる。冷却した後、生成物を精製し、融点192~197℃、UV-VIS(ETOH max.)387nmの1-フェニル-3-(4-ブチルスチリル)-5-(4-tert-ブチルフェニル)ピラゾリンを得る。
【0045】
(実施例2)
式(I-2)の化合物である1-フェニル-3-(p-メトキシスチリル)-5-(p-メトキシフェニル)ピラゾリンの合成
【0046】
【化9】
【0047】
4-tert-ブチルベンズアルデヒドの代わりに、p-メトキシベンズアルデヒドを使用した以外は、実施例1と同様の方法で、式(I-2)の化合物である、融点159℃、UV-VIS(ETOH max.)381nmの1-フェニル-3-(p-メトキシスチリル)-5-(p-メトキシフェニル)ピラゾリンを得る。
【0048】
(実施例3)
式(I-3)の化合物であるフェニル-3-(p-メトキシスチリル)-5-(p-ジメチルアミノフェニル)ピラゾリンの合成
【0049】
【化10】
【0050】
4-tert-ブチルベンズアルデヒドの代わりに、ジメチルアミノベンズアルデヒドを使用した以外は、実施例1と同様の方法で、融点192℃、UV-VIS(ETOH max.)419nmのフェニル-3-(p-メトキシスチリル)-5-(p-ジメチルアミノフェニル)ピラゾリンを得る。
【0051】
(実施例4)
式(II-1)の化合物であるジメチル2-(4-(ジメチルアミノ)ベンジリデン)ジメチルマロネートの合成
【0052】
【化11】
【0053】
15gの4-(ジメチルアミノ)ベンズアルデヒドおよび14.5gのジメチルマロネートをジクロロメタンで溶解して撹拌し、分子篩を添加して水を除去しかつ防水するよう塩化カルシウムチューブを装着する。1mlのピペリジンおよび0.6mlの酢酸を加え、加熱還流して2時間加温反応させ、反応中に新たな分子篩を添加する。反応が完了した後に溶剤を除去し、酸洗いし、乾燥させた後、式(I-1)の化合物である、融点87-88℃、UV-VIS(CH3CN max.)384nmのジメチル2-(4-(ジメチルアミノ)ベンジリデン)ジメチルマロネートを得る。
【0054】
(実施例5)
式(II-2)の化合物である2-エチル-2-シアノ-3-(4-(ジメチルアミノ)フェニル)アクリル酸エチルの合成
【0055】
【化12】
【0056】
ジメチルマロネートの代わりに、2-シアノ酢酸エチルを使用した以外は、実施例4と同様の方法で、式(II-2)の化合物である、融点125-126℃、UV-VIS(CHCN max.)420nmの2-エチル-2-シアノ-3-(4-(ジメチルアミノ)フェニル)アクリル酸エチルを得る。
【0057】
(実施例6)
式(II-3)の化合物である2-シアノ-3-(4-(ジメチルアミノ)フェニル)オクタデシルアクリレートの合成
【0058】
【化13】
【0059】
24gの化合物II-2をトルエンで溶解して凝縮水除去装置内にて110℃で加熱還流する。トルエン溶液に27gのステアリルアルコールおよび1.5gのp-トルエンスルホン酸を加える。HPLC監視下で反応させ、反応が完了した後、真空濾過により乾燥させ、MS(M/Z:468.4)の化合物(II-3)を得る。
【0060】
(実施例7)
式(II-4)の化合物である2-エチル-2-シアノ-3-(4-(ジメチルアミノ)フェニル)ポリエーテルアクリレートの合成
【0061】
【化14】
【0062】
ステアリルアルコールの代わりに、Methoxypolyethylene glycol 350を使用し、生成物をGPCで精製した以外は、実施例6と同様の方法で、式(II-4)の化合物である2-エチル-2-シアノ-3-(4-(ジメチルアミノ)フェニル)ポリエーテルアクリレートを得る。
【0063】
(実施例8)
青色光遮断組成物および青色光遮断膜
ブチルァクリレート150g、メタクリル酸メチル95g、アクリル酸15g、青色光遮断剤5.8g、および過酸化ベンゾイル6gを、酢酸エチル/トルエン溶剤で混合し、反応釜に加え、75℃まで昇温させ、2時間反応させた後、追加の6gの過酸化ベンゾイルを徐緩に滴下し(溶剤中)、約6時間反応を継続し、粘度を監視し、反応が完了した後、室温まで降温させる。PET膜に塗布し、乾燥させて溶剤を除去した後、青色光遮断剤による青色光遮断膜(100μm)を得る。青色光の400nm帯域での透過度を測定し、結果を表1に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
(実施例9)
青色光遮断剤の組み合わせ
表2は式(I)の化合物を単独でまたは(I-1)、(I-2)、および(I-3)を組み合わせて使用する青色光遮断の応用である。表3は式(II)の化合物を単独でまたは(II-1)、(II-2)、(II-5)を組み合わせて使用する青色光遮断の応用である。表4は(I-1)、(II-1)および(II-5)を組み合わせて使用する青色光遮断の応用である。表2~4中、「380~400nm吸収」は短波長青色光(高エネルギー)への吸収を表す。吸収が大きければ大きいほど、短波長青色光に対する防護効果が高い。表2中、“UVA1 & 380nm~450nm吸収”は、長波長紫外線UVA1(約340~400nm)および380nm~450nmの青色光を両方とも吸収することを表す。吸収が大きければ大きいほど、長波長紫外線(UVA1)および全帯域青色光に対する防護効果が高い。表3、4中、「UVAB & 380nm~450nm吸収」は、UVAB(約290~400nm)の紫外線および380nm~450nmの全帯域青色光を両方とも吸収することを表す。吸収が大きければ大きいほど、紫外線(UVAB)および全帯域青色光に対する防護効果が高い。表2~4中、「410nm~450nm吸収漸減」は410nmから450nmまでの吸収が漸減することを表す。透過した青色光は高い色視覚効果を有する。「-」は効果が悪いこと表し、「+」は効果がやや良好であることを表し、「++」は効果が良好であることを表し、「+++」は効果が非常に良好であることを表す。
【0066】
【表2】
【0067】
【表3】
【0068】
【表4】
【0069】
上記実施例は本発明を何ら制限するものではなく、本発明の様々な異なる組み合わせは、その均等置換または等価変換によって得られる技術的解決手段は、いずれも本発明の保護範囲に属するものとする。
【0070】
(付記)
(付記1)
一つ以上の青色光遮断膜層、および/または基質層、および/または離型膜層を含む青色光遮断システムであって、
式(I)または/および式(II)の化合物を含み、
【化15】
式中、R~RはそれぞれH、直鎖もしくは分岐鎖C~Cアルキル基、OR、およびN(Rから独立して選択され、R~RはそれぞれH、および直鎖もしくは分岐鎖C~Cアルキル基から独立して選択され、R~RはそれぞれCOOR、CONR1011、COR12、およびCNから独立して選択され、RはH、直鎖もしくは分岐鎖C~C18アルキル基、およびポリエチレングリコール基から選択され、R10~R12はそれぞれH、直鎖もしくは分岐鎖C~Cアルキル基、およびフェニル基から独立して選択される、
ことを特徴とする青色光遮断システム。
【0071】
(付記2)
式(I)および式(II)の化合物は以下の構造を有する、
ことを特徴とする付記1に記載の青色光遮断システム。
【化16】
【0072】
(付記3)
式(I)の化合物および式(II)の化合物は別々に使用される、
ことを特徴とする付記1に記載の青色光遮断システム。
【0073】
(付記4)
式(I)の化合物および式(II)の化合物は併用され、その質量割合の範囲は1:5~5:1である、
ことを特徴とする付記1に記載の青色光遮断システム。
【0074】
(付記5)
付記1から4のいずれか一つに記載の青色光遮断システムを製造するための青色光遮断組成物であって、
付記1における式(I)または/および式(II)の化合物、および重合モノマーまたは重合体を含む、
ことを特徴とする青色光遮断組成物。
【0075】
(付記6)
式(I)または/および式(II)の化合物、開始剤、重合モノマーまたは/およびプレポリマーを含む、
ことを特徴とする付記5に記載の組成物。
【0076】
(付記7)
重合モノマーはアクリル系、アクリレート系、メタクリル系、メタクリレート系、ヒドロキシアクリレート系、ヒドロキシメタクリレート系、エチレン系、スチレン系、ジエン系、フッ化ビニル系、塩化ビニル系、アクリロニトリル系、酢酸ビニル系、シリコーンアクリレート系、エポキシアクリレート系、ポリウレタンアクリレート系、エチレンオキシド系、イソシアネート系、ポリオール系、ポリチオール系、ポリアミン系、アルコールアミン系、およびチオールアミン系化合物の一種または複数種の混合物からなる、
ことを特徴とする付記5に記載の組成物。
【0077】
(付記8)
安定剤、紫外線吸収剤、レベリング剤、消泡剤、分散剤、連鎖移動剤、カップリング剤、触媒、強靭化剤、粘着付与剤、可塑剤、増稠剤、希釈剤、難燃剤、重合禁止剤、防腐剤、硬化剤、および酸塩基調整剤から選択される一種または複数種の助剤をさらに含む、
ことを特徴とする付記5に記載の組成物。
【0078】
(付記9)
式(I)または/および式(II)の化合物の質量含有量は0.01%~20%であり、開始剤の質量含有量は0.01%~10%であり、モノマーまたはプレポリマーまたは重合体の含有量は5~99.98%である、
ことを特徴とする付記6に記載の組成物。
【0079】
(付記10)
付記1に記載の式(I)または/および(II)の化合物の青色光遮断における使用。
図1
図2
図3