(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】最適化した制御でブレーキ粒子を吸引するためのシステム
(51)【国際特許分類】
F16D 65/00 20060101AFI20240618BHJP
【FI】
F16D65/00 C
(21)【出願番号】P 2021524437
(86)(22)【出願日】2019-11-06
(86)【国際出願番号】 FR2019052633
(87)【国際公開番号】W WO2020094982
(87)【国際公開日】2020-05-14
【審査請求日】2022-11-02
(32)【優先日】2018-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】514287580
【氏名又は名称】タラノ・テクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ロイク・アダムザック
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ・ロッカ-セラ
(72)【発明者】
【氏名】ティボー・ル・ブレール
(72)【発明者】
【氏名】アドリアン・メストル
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-529840(JP,A)
【文献】特開2012-081931(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0122601(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102017200941(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0248180(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 65/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
摩擦ブレーキシステムからのブレーキ粒子を吸引するためのシステムであって、
前記吸引
するためのシステムが、少なくとも1つの負圧源(1)と、前記負圧源に空気回路によって接続される少なくとも1つの吸引口(83)と、前記負圧源を制御するように構成される制御ユニット(6)と、
を備え、
前記吸引
するためのシステムが、前記空気回路中に広がっている現在の気流状態を決定するためのデバイスをさらに備え、
前記空気回路中の前記現在の気流状態が、前記気流状態についての設定点に達するまたは前記設定点を満たしやすいように、前記制御ユニットが前記負圧源を制御することを特徴とする、システム。
【請求項2】
前記空気回路中に広がっている前記現在の気流状態を決定するための前記デバイスが、前記空気回路中に広がっている圧力を測定するための圧力センサ(22)であり、前記圧力が前記現在の気流状態を表し、前記空気回路中の前記圧力が所定の負圧設定点(DPR)に達するまたは前記負圧設定点を満たしやすいように、前記制御ユニットが前記負圧源を制御する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記負圧源が、電気モータ(11)によって駆動されるタービンによって形成される、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記吸引した粒子を収集するための少なくとも1つのフィルタ(2)をさらに備える、請求項1から3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記負圧源が、電気モータ(11)によって駆動されるタービンによって形成され、前記圧力センサが、前記フィルタに隣接して配置される、または前記フィルタと一体化される、請求項2
を引用する請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記システムが、集中型フィルタおよびタービンを備え、前記集中型フィルタおよび前記タービンが4つ以上の吸引口に接続される、請求項1から4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記システムが、分散型フィルタおよびタービンを備え、すなわち、各吸引口または吸引口の対用に分散型フィルタおよびタービンを備える、請求項1から4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記制御ユニットが、前記フィルタの目詰まりの所定のレベルを検出し、ユーザにメッセージを送信するように構成される、請求項
4に記載のシステム。
【請求項9】
前記所定の負圧設定点(DPR)が、環境圧力より20ミリバール~40ミリバール低い範囲内で選択される、請求項
2に記載のシステム。
【請求項10】
車両のブレーキシステムからの摩擦ブレーキ粒子を吸引するためのシステムを制御するための方法であって、前記吸引
するためのシステムが、
少なくとも1つの負圧源(タービンまたは他のもの)と、前記負圧源に空気回路によって接続される少なくとも1つの吸引口(83)と、制御ユニット(6)と、前記空気回路中に広がっている現在の気流状態を決定するためのデバイスと、
を備え、
前記制御ユニットが、
(a)所定の起動条件に従って、前記負圧
源を制御し、
(b)前記空気回路中に広がっている前記現在の気流状態を測定し、
(c)現在の気流状態と、前記気流状態についての少なくとも1つの設定点と、の間の差異を決定し、
(d)前記差異に応じて、前記負圧源の動力を調整するためまたは前記タービンを回転するために使用される制御信号を調整する、
ように構成される、方法。
【請求項11】
前記空気回路中に広がっている前記現在の気流状態を決定するための前記デバイスが、前記空気回路中に広がっている圧力を測定するための圧力センサ(22)であり、前記圧力が前記現在の気流状態を表し、ステップ(b)および(c)が、
(b)前記圧力センサによって、前記空気回路中の前記圧力を測定すること、
(c)現在の圧力と負圧設定点との間の差異を決定すること、
となる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記現在の気流状態が前記気流状態についての所定の設定点の値に達するように、特に前記負圧源についての制御設定点が所定の閾値を超えたときに、フィルタの目詰まりの所定のレベルを検出するように前記制御ユニットがさらに構成される、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
目詰まり状態が決定されるとユーザにメッセージを送信するように前記制御ユニットがさらに構成される、請求項10から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記負圧源がタービンであり、前記タービンを回転させるために使用される制御信号が所定の値を超えるとき、前記タービンの回転によって放出されるノイズレベルがある可聴閾値を超え、それによりユーザが気づくことができる、請求項10から12のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摩擦ブレーキシステム中のブレーキ粒子を吸引するためのシステムに関する。そのような摩擦ブレーキシステムは、道路車両または鉄道車両に適合させることができる。そのような摩擦ブレーキシステムは、風力タービンまたは産業機械などの据え付け型ロータ機械に適合させることもできる。
【背景技術】
【0002】
たとえば、特許文献1といった文書に記載されるようなそのようなシステムでは、吸引タービンおよび粒子収集フィルタが設けられる。摩耗からの粒子は、ここで収集フィルタ中に徐々に蓄積される。このことによって、フィルタの累進的な目詰まりがもたらされる。この累進的な目詰まりによって、フィルタが高レベルの目詰まりをしている場合でさえ正しく粒子を収集し続けるために、フィルタが高いインライン損失を引き起こす場合のためにサイズ決定される吸引力が必要になる。
【0003】
逆に、フィルタが新しいとき、空気配管中の非常に小さい損失で、吸引力が大きすぎることがわかる場合があり、高速で回転するタービンによって生成される付随ノイズが不愉快だとわかる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】独国特許第4240873号明細書
【文献】仏国特許第3057040号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、フィルタの累進的な目詰まりに関する改善された解決策を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そのために、車両の摩擦ブレーキシステムからのブレーキ粒子を吸引するためのシステムが提案され、吸引システムは、
少なくとも1つの負圧源(たとえば、タービンまたは他の手段)と、負圧源に空気回路によって接続される少なくとも1つの吸引口と、負圧源を制御するように構成される制御ユニットと、を備え、
吸引システムが、空気回路中に広がっている現在の気流状態を決定するためのデバイスをさらに備え、
空気回路中の現在の気流状態が、気流状態についての少なくとも1つの設定点に達するまたは少なくとも1つの設定点を満たしやすいように、制御ユニットが負圧源を制御することを特徴とする。
【0007】
「気流状態についての設定点」という用語は、所定の値を意味すると理解するべきであるが、この設定点が時間または動作状態の関数であることは、排除されない(下記を参照)。
【0008】
「現在の気流状態を決定するためのデバイス」という用語は、圧力センサ、流量センサ、または、対象の少なくとも1つの気流状態を表す量を測定する電気測定デバイスのいずれかを意味すると理解するべきである。
【0009】
「吸引口を負圧源に接続する空気回路」という用語に関しては、直接またはフィルタを介してのいずれかで吸引口からタービンに通じる流体導管を意味すると理解するべきである。第1の導管は吸引口からフィルタに通じる粒子の経路中の吸引口の下流に位置決めされ、タービンはフィルタの下流に配置することができ、その逆も同様である。第1の導管は、タービンの下流の部分(タービンの下流のフィルタ)が正圧下となることを除外することなく、全体的または部分的に負圧下である。
【0010】
これらの配置構成によって、制御を気流状態についての所望の設定点にリンクすることにより、フィルタの目詰まりのレベルにほぼ関係ない吸引効率が得られる。また、フィルタが新しいとき、必要な動力は比較的小さく、タービンを使用する場合には、その回転速度がやや低く、このことによって、非常に穏やかなノイズレベルを保証することが可能になる。粒子が収集され、目詰まりのレベルが上がると、システムは、気流状態についての同じ所望の設定点を達成するために、より大きい吸引力を提供するように設計される。
【0011】
加えて、そのような気流状態のセンサの使用によって、吸引システムの動作および効率をより信頼できるようにすること、ならびに、たとえば管が外れている場合などといった異常な場合についてのある種の診断機能をもたらすことが可能になる。
【0012】
加えて、電気モータを有する特定のタービンの場合には、その管理によって、その機能のための最も低い可能な電力消費、最小限を得ることが可能になる。
【0013】
「負圧源」という用語は、本明細書では、ブレーキ粒子を吸引する機能に特異的なタービン、または、車両中に前から存在して、収集フィルタに向けて粒子を吸引するために制御した方法で使用される負圧源のいずれかを意味すると理解するべきである。
【0014】
圧力測定の場合には、空気回路中に広がっている現在の気流状態を決定するためのデバイスは、空気回路中に広がっている圧力を測定するための圧力センサであり、圧力が現在の気流状態を表し、制御ユニットは、空気回路中の圧力が負圧設定点(DPR)に達するまたは負圧設定点(DPR)を満たしやすいように、負圧源を制御する。
【0015】
これらの配置構成を用いて、フィルタの目詰まりのレベルにほぼ関係ない吸引効率が得られる。フィルタが新しいとき、必要な動力は比較的小さく、タービンを使用する場合には、その回転速度がやや低く、このことによって、非常に穏やかなノイズレベルを保証することが可能になる。粒子が収集され、目詰まりのレベルが上がると、システムは、空気回路中での同じ所望の負圧設定点に達するために、より大きい吸引力を提供するように設計される。
【0016】
圧力センサの解決策とは別に、空気回路中の対象の気流状態を測定するための流量センサ、さもなくば対象の少なくとも1つの気流状態を表す量を測定する電子測定デバイスを使用することが可能である。
【0017】
「負圧設定点」という用語は、所定の値を意味すると理解するべきであるが、この負圧設定点が時間または動作状態の関数であることは、排除されない。
【0018】
システムに関する本発明の様々な実施形態では、場合によって以下の配置構成のうちの1つまたは複数を別個にまたは組み合わせて使用することができる。
【0019】
好ましいオプションによれば、負圧源は、電気モータによって駆動されるタービンによって形成される。この様式では、タービンによって発生される負圧を管理するために、制御ユニットが電気モータの回転速度を制御することがもたらされる。たとえば、12V、24V、または72VといったDC電圧によって制御される電気モータの場合には、PWMによって変調される制御信号を利用するため、制御ロジックの準備をすることができる。
【0020】
代わりのオプションによれば、負圧源は、車両中に前から存在する負圧源によって形成され、特に自動車分野の場合には、車両のエンジンの動作によって誘起される負圧源、たとえば、空気取入れ口からのバイパスによって、または別の例では、たとえば排気ガスといったガスの外への流れでのベンチュリ効果の使用によって形成される。鉄道分野の場合には、負圧源は、空気ブレーキシステムから、または鉄道車両の何らかの他の補助システムから得ることができる。
【0021】
1つのオプションによれば、圧力センサは、フィルタに隣接して配置される、またはフィルタと一体化される。この様式では、小型メカトロニクスの解決策および簡略化した組立体が提示される。
【0022】
1つのオプションによれば、システムは、吸引した粒子を収集するための少なくとも1つのフィルタを備えることができる。
【0023】
1つのオプションによれば、システムは、集中型フィルタおよびタービンを備え、集中型フィルタおよびタービンは、4つ以上の吸引口に接続される。この様式では、完全な解決策のコストが最適化される。完全な機能を実行するために単一の圧力センサ(気流状態の各々単一のセンサ)を設けることが可能である。
【0024】
1つのオプションによれば、システムは、分散型フィルタおよびタービンを、すなわち、各吸引口または吸引口の対用に分散型フィルタおよびタービンを備える。この様式では、負圧源の動力、特にタービンの回転速度は、ブレーキ手段の各々について具体的に適合される。たとえば鉄道分野のように、パッド毎またはディスクの側面毎にフィルタ、タービン、および吸引口を有することさえ可能である。
【0025】
1つのオプションによれば、制御ユニットは、フィルタの目詰まりの所定のレベルを検出し、ユーザにメッセージを送信するように構成される。これによって、当該車両の所有者、運転手、または保守責任者であろうとなかろうと、当該使用者に、フィルタを交換する必要について知らせることが可能になる。実際には、制御ユニットは、車両のダッシュボードまたは車両の保守を管理することを担うリモートサーバにメッセージを送信することができる。エンジンが最高速度に達するとき、所望の設定点でない最低レベルに負圧が達したときに目詰まり表示器が起動されることに留意されたい。ここで、タービンによって放出されるノイズレベルは寿命表示器としても機能できることに留意されよう。
【0026】
1つのオプションによれば、所定の負圧設定点は、環境圧力より20ミリバール~40ミリバール低い範囲内で選択される。有利なことに、これは、ブレーキ粒子を効率的に捕獲する一方で、システムの要素について合理的で安価なサイズ決定および適度な寸法を維持するための最適な範囲である。
【0027】
本発明は、車両のブレーキシステムからの摩擦ブレーキ粒子を吸引するためのシステムを制御するための方法にも関し、吸引システムは、
少なくとも1つの負圧源(タービンまたは他のもの)と、負圧源に空気回路(3、30)によって接続される少なくとも1つの吸引口(83)と、制御ユニット(6)と、空気回路中に広がっている現在の気流状態を決定するためのデバイスと、を備え、
制御ユニットが、
(a)所定の起動条件に従って、負圧源(たとえばタービンの回転)を制御し、
(b)空気回路中に広がっている現在の気流状態を測定し、
(c)現在の気流状態と、気流状態についての少なくとも1つの設定点と、の間の差異を決定し、
(d)前記差異に応じて、圧力源の動力を調整するためまたはタービンを回転するために使用される制御信号を調整する、
ように構成される。
【0028】
圧力測定の典型的な場合では、車両のブレーキシステムからの摩擦ブレーキ粒子を吸引するためのシステムを制御するための方法が提案されており、吸引システムは、
少なくとも1つの負圧源(タービンまたは他のもの)と、負圧源に空気回路(3、30)によって接続される少なくとも1つの吸引口(83)と、制御ユニット(6)と、圧力センサ(22)と、を備え、
制御ユニットが、
(a)所定の起動条件に従って、負圧源(たとえばタービンの回転)を制御し、
(b)圧力センサによって、空気回路中の圧力を測定し、
(c)現在の圧力と負圧設定点との間の差異を決定し、
(d)前記差異に応じて、圧力源の動力を調整するためまたはタービンを回転するために使用される制御信号を調整する、
ように構成される。
【0029】
方法に関する本発明の様々な実施形態では、場合によって以下の配置構成のうちの1つまたは複数を別個にまたは組み合わせて使用することができる。
【0030】
1つのオプションによれば、制御ユニットは、現在の気流状態が気流状態についての設定点に達するように、負圧源についての制御設定点が所定の閾値を超えたときに、フィルタの目詰まりの所定のレベルを検出するようにさらに構成される。
【0031】
圧力センサの典型的な場合では、制御ユニットは、圧力が所定の負圧設定点に達するように、または負圧源を最大の動力にするコマンドにもかかわらず設定点に達しないように、負圧源についての制御設定点が所定の閾値を超えたときに、フィルタの目詰まりの所定のレベルを検出するように構成される。
【0032】
圧力センサおよび電気制御タービンの典型的な場合には、制御ユニットは、圧力が所定の負圧設定点に達するように、タービンの回転についての制御設定点が所定の閾値を超えたときに、フィルタの目詰まりの所定のレベルを検出するようにさらに構成される。
【0033】
1つのオプションによれば、制御ユニットは、目詰まり状態が決定されるとユーザにメッセージを送信するようにさらに構成される。こうして、当該車両の所有者、運転手、または保守責任者は、フィルタを交換する必要について知ることができる。
【0034】
1つのオプションによれば、設定点(負圧またはより一般的な気流状態)は、一定の値ではなく、様々な動作状態(温度、湿度、車両速度)に従って決定することができる。加えて、設定点は、ブレーキフェーズの時間にわたる関数であってよい。こうして、負圧の管理およびフィードバック制御を、本質的なものだけに対して洗練させることが可能である。
【0035】
1つのオプションによれば、負圧源がタービンであり、タービンを回転させるために使用される制御信号が所定の値を超えるとき、タービンの回転によって放出されるノイズレベルがある可聴閾値を超え、それによりユーザが気づくことができる。言い換えると、タービンのホイッスル音は可聴の警告であり、ユーザにフィルタを交換するように促すインジケータとして働く。
【0036】
本発明の他の特徴、目的、および利点は、非限定の例として与えられる、本発明の実施形態の以下の記載を読めば明らかとなろう。本発明は、添付図面を参照することにより、やはりより良好に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図2】車輪または車軸についての、ブレーキ粒子を吸引するための局所化システムを示す機能図である。
【
図3】いくつかの車輪または車軸上の、ブレーキ粒子を吸引するための集中型システムを示す機能図である。
【
図4】ブレーキ粒子を吸引するためのシステムを示す機能ブロック図である。
【
図5】ブレーキ粒子を吸引するためのシステムの構成要素の物理的な図である。
【
図6】システムの少なくとも1つの機能性を図示するタイミング図である。
【
図7】システムの少なくとも1つの機能性を図示するタイミング図である。
【
図8】システムの変形形態の機能性を図示するタイミング図である。
【
図9】ブレーキ粒子を吸引するためのシステムの機能図の変形形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
様々な図では、同じ参照符号は、同一または同様の要素を指定する。提示を明確にするために、ある種の要素は、必ずしも原寸で表されない。
【0039】
図1は、摩擦ブレーキ部材を概略的に示す。図示された事例では、車輪(または鉄道車両の車軸)と一体的に回転させられることが意図されるブレーキディスク9が示される。ディスク9は、軸Aの周りを回転する。従来技術によれば、ディスクをまたぎ、キャリパ金具上に取り付けられるキャリパ7がある。加えて、キャリパは、ディスクを挟むように摩擦パッド上で働くように構成されるピストンを備える。摩擦パッド(図示せず)は、バックプレートまたはソールプレート上に取り付けられ、このすべては、それ自体が知られており、本明細書では詳細に記載されない。
【0040】
ディスクブレーキの図が示されているが、本発明は、ドラムブレーキ、または車輪リムに直接適用されるブレーキパッドを有するシステムにさえ、やはり好適である。
【0041】
摩擦パッドの場所に、逃げる粒子を捕獲するためのデバイス8が設けられる。より具体的には、吸引口83を、摩擦パッドの各々に設けることができる。たとえば、本出願人の特許文献2という文書に一例を見つけることができ、特許文献2では、粒子は、摩擦材料中に形成される溝に捕獲される。吸引口は、溝で形成することができ、溝が今度は摩擦ライニングのソールプレート中の貫通孔に接続されて、(フィルタに向かった)下流の通路と連通する。
【0042】
吸引口83は、空気回路によって負圧源に接続される。空気回路は、第1の導管3および第2の導管30を備えることができる。
【0043】
一般的に、吸引口は、粒子がパッドと回転部材(ディスク、ドラム、リムなど)との間の界面から出るときの、粒子の経路中にあってよい。良好な捕獲に寄与するのは、負圧またはこの場所に作られる流れである。
【0044】
他の構成では、カウリングを設けることができ、この場合には、吸引口は、前記カウリングによって覆われる空間からの出口によって形成される。
【0045】
したがって、本発明は、吸引口83の構成にかかわらず適用できることを理解するべきである。
【0046】
ディスクブレーキ構成で典型的には、
図1に示されるように、ディスクの両側に吸引口83があることになる。
【0047】
吸引口(または場合によって、複数の吸引口)は、
図2に例示されるように、ここでは第1の導管3と呼ばれる流体導管によってフィルタ2に接続される。第1の導管3は、部品(たとえば、キャリパの本体)を通るトンネルの形の通路を除外することなく配管として形成することができる。第1の導管は、より長い長さまたはより短い長さであってよく、この長さは、たとえば50cmといった数十センチメートルから、
図3に図示されるような集中型フィルタ構成の数メートルの範囲である。
【0048】
一般的に、吸引口とフィルタ2との間の流体接続部は、1つまたは複数の分岐部、T接続部、Y接続部などを備える場合がある。空気回路という用語は、流体導管/空気ホースを指すために使用することもできる。
【0049】
吸引口とフィルタ2との間の流体接続部は、剛性部分と可撓性のホース部分とを備えることができる。
【0050】
吸引口、フィルタ、および負圧源の間で様々な構成を見いだすことができる。各吸引口毎(最大限分散した構成)に、または吸引口の各対毎(
図2)にさえ1つのフィルタがあってよいが、複数の吸引口の対についての単一のフィルタを有すること(
図3)(いわゆる、集中型構成)、または全車両で単一のフィルタを有することさえも可能である。この選択は、車両のタイプ、目詰まりするまでのフィルタに必要な耐用年数、車両内への据付けについての様々な制約などによって規定される場合がある。
【0051】
図2、
図6、および
図7では、負圧構成は、フィルタが第1の導管3と負圧源1との間に挿置されて示され、負圧源1はフィルタを介して粒子を吸引し、この場合、フィルタは外部の環境圧力と比較して負圧である。しかし、
図9に示される構成では、負圧源(ここではタービン1)は、第1の導管3とフィルタとの間に挿置することができ、この場合、タービンが粒子を吸い、次いで、タービンが粒子をフィルタの中に符号3’で示される下流導管を介して吹き込む。この場合では、フィルタ2は、負圧ではなく正圧である。
【0052】
典型的な実施形態では、フィルタ2は、紙または何らかの他のタイプのフィルタ媒体を備え、空気が通過することを可能にし、吸引口から来る流れの中に含まれる小さい粒子を捕捉することができる。
【0053】
「フィルタ」という用語は、本明細書では広義に理解するべきである。この用語は、遠心ろ過解決策(「サイクロン」タイプ)、電磁捕捉技法を有するフィルタ解決策、および静電気捕捉技法を有するフィルタ解決策を含む。「フィルタ」という用語は、粒子が、客室空気フィルタなどの既に存在するフィルタに向けられる、または触媒コンバータのフィルタに向けられる解決策をやはり含む。
【0054】
粒子フィルタ2は、マイクロメートルまたはミリメートルの寸法を有する固体粒子を運ぶ、吸引口から来る空気をフィルタ処理するように、言い換えると、空気がフィルタ媒体を通過することを可能にする一方で、粒子がフィルタ媒体を通過せずフィルタ上に捕捉されるように構成される。フィルタ媒体中に捕捉される粒子の量は時間経過とともに増加する。そのために、フィルタ2は、蓄積によって機能し、フィルタ媒体を通る空気の通過は、時間経過とともにより難しくなる。
【0055】
図示される例では、負圧源1は、電気モータ11によって駆動される吸引タービン10によって形成される。
【0056】
図示される例では、電気モータを有するタービンは、フィルタとは別個の実体を形成する。これらの条件下では、タービンをフィルタに接続するために第2の空気流体導管30が設けられる。
【0057】
単一の実体としてタービンおよびフィルタを有する構成も可能であることに留意されたい。
【0058】
本発明の有利な配置構成によれば、第1の導管3の中に広がっている圧力を測定するように構成される圧力センサ22も設けられる。
【0059】
当該圧力センサは、第1の導管の中に広がっている気流状態を決定することを可能にする解決策の組の中の1つの解決策を表す。こうして、気流状態を決定するためのデバイスの概念に対する圧力センサを一般化することができ、このことによって、圧力センサの解決策が気流センサ、およびタービンのロータにおいて観察される回転に対する抵抗を測定するセンサもカバーすることが示される。
【0060】
図2のブロック図では、圧力センサ22は、少なくとも1つの吸引口とフィルタ2との間の、第1の導管3の経路上に配置される。
【0061】
しかし、代わりの等しく好ましい構成では、圧力センサ22は、
図5に図示されるように、フィルタ2に隣接して配置される、またはフィルタ2と一体化される。
【0062】
圧力センサは、膜、カプセル、ピトー管などといった、任意の技術タイプのものであってよい。
【0063】
一例によれば、Freescale(商標)ブランドのMPX5700DPセンサを選択することができる。一例によれば、ピエゾ抵抗センサを選択することができる。
【0064】
実際には、圧力センサ22は、環境圧力と、その関連する入力部に広がっている圧力と、の間の圧力差を測定する。
【0065】
吸引システムは、タービンを制御するように構成される制御ユニット6をさらに備える。
【0066】
制御ユニット6は、ゼロ速度と可能な最高速度との間の任意の値に従って、タービンを駆動するモータの速度を制御するための制御信号を発生することが可能な電子ユニットである。
【0067】
一例によれば、電気モータはDC電圧によって給電され、制御ロジックがPWM(パルス幅変調)によって変調された信号を利用できるようになっている。使用されるDC電圧は、たとえば、従来型の自動車での12ボルト、トラックもしくはバスなどといった頑丈な車両もしくは産業用車両での24ボルト、または鉄道車両(市街電車、列車)での72ボルトといった、粒子を吸引するためのシステムの応用分野に依存する場合がある。
【0068】
ここで、吸引タービンの代わりに、負圧源は、車両中に前から存在してよく、特に自動車分野の場合には、車両のエンジンの動作によって、たとえば、空気取入れ口からのバイパスによって、またはさもなくば、たとえば排気ガスといったガスの外への流れでのベンチュリ効果の使用によって引き起こされる負圧源であってよいことに留意されたい。鉄道分野の場合には、負圧源は、空気ブレーキシステムから、または当該鉄道車両の別の補助システムから得ることができる。
【0069】
本発明者らは、所望の負圧値が、第1の導管3の内側に広がるようにされるとき、システムは最適な動作を実現することができることを発見した。そこから、本発明者らは、第1の導管の中に、言い換えると圧力センサがそこに広がっている圧力を測定する場所においても、負圧設定点を得ることからなる対象の動作を決定した。
【0070】
有利な構成によれば、所定の負圧設定点DPRは、環境圧力より20ミリバール~40ミリバール低い範囲内で選択される。言い換えると、絶対圧力のスケールでは、第1の導管の中の絶対圧力設定点は、PC=Patmo-DPRによって表すことができ、Patmoは、吸引システムの近傍で広がっている大気圧である。
【0071】
上で示したように、圧力センサ22が環境圧力に対する圧力を測定し、制御ユニット6が負圧源を制御し、その結果、第1の導管の中の圧力が所定の負圧設定点に達するまたは所定の負圧設定点を満たしやすい、言い換えると、その結果、導管の中および吸引口の中の負圧がDPRに等しくなる。ここで、負圧設定点は一定の所定の値であってよいが、下でわかるように、設定点は、ブレーキシーケンスのフェーズまたは経時曲線にさえ依存したいくつかの目標値を含む較正パラメータであってもよいことに留意されたい。
【0072】
図4で見ることができるように、制御ユニット6は、圧力センサ22から来るのに加えて、車両に搭載されて存在する他の要素から来る、特に、上述の摩擦ブレーキを制御するブレーキアクチュエータから来る情報を受け取る。ブレーキアクチュエータは、関係する鉄道車両または車両(気動車など)のタイプに依存するペダルまたはマニピュレータであってよい。
【0073】
いくつかの構成では、ブレーキペダル68と相互作用する2元オン/オフスイッチがあるにすぎない。このスイッチは、たとえばABS機能を管理するユニットといったブレーキ機能のため、吸引システムの制御ユニット6に直接、または、制御ユニット63を介して情報67を送達することができる。別の構成では、非常に大量の情報を、ブレーキペダルの現在の位置を正確に反映して、アナログまたはデジタルで提供することができ、このことによって、制御ユニット6がブレーキ強度を知ること、および、ブレーキペダル上のユーザまたは運転手の行為が一度始まると非常に速く作用できることが可能になる。この場合、アナログまたはデジタルポテンショメータ69が設けられ、これが、吸引システムの制御ユニット6のための詳細な情報66を送達する。
【0074】
3つのタイミング図の区分を用いて、
図6は、フィルタの目詰まりの3つの異なる状態/レベルを図示する。
【0075】
上部の曲線は、第1の導管3の内側に広がっているP3と示される圧力、言い換えると、ほぼ吸引口83に印可される吸引圧力を表す。
【0076】
グラフの下部の曲線は、たとえば、その平均制御電流によって特徴付けられる、タービンのモータ11の制御を表す。
【0077】
中央部分にある曲線は、タービンの回転速度を表す。
【0078】
T1がブレーキシーケンスの開始を示す一方、T2はブレーキシーケンスの終了を示す。
【0079】
フィルタが新しい状態であるとき、左のタイミング図「A」では、目標圧力(すなわち、Patmo-DPR)は、低いタービン速度で、等しく少ない制御電流で得られることを理解することができる。
【0080】
比較して、フィルタが既にかなり使用されている、中央のタイミング図「B」では、同じ目標圧力(すなわち、Patmo-DPR)に達するために、タービン速度はより高く、制御電流もより多い。
【0081】
比較して、左のタイミング図「C」では、フィルタは、かなり高いレベルの目詰まりを有し、同じ目標圧力(すなわち、Patmo-DPR)に達するために、タービン速度はさらにより高く、制御電流はさらにより多い。
【0082】
より正確には、制御ユニット6は、自動化ループ(フィードバック制御)を備え、自動化ループは、吸引を起動するための条件が存在するとすぐに、可能な限り速く、第1の導管中の圧力を目標圧力Patmo-DPRに到達させるように努める。
【0083】
別の形で表すと、制御ユニットは、
- 所定の起動条件(たとえば、ブレーキペダルからの情報)に従って、タービンの回転を制御する動作と、
- 圧力センサ22によって、第1の導管3の中の圧力を測定する動作と、
- 現在の圧力と所定の負圧設定点DPRとの間の差異を決定する動作と、
- 前記差異に応じて、タービンの回転速度の力を調整するために使用される制御信号を調整する動作と、
を少なくとも含む方法を実施する。
【0084】
フィードバックループによって得られる回転速度に依存して、制御ユニットは、フィルタの目詰まりのレベルを推定するように構成される。実際には、フィードバック制御によって得られる回転速度がより高くなると、フィルタの目詰まりがひどくなる。そのために、制御ユニットは、変換曲線またはノモグラムさえ含む場合がある。
【0085】
したがって実際には、
図7に図示されるように、調節またはフィードバック制御によって得られるタービン速度の漸進的増加が観察される。
【0086】
制御ユニットは、実際にはフィルタを交換する差し迫った必要性に対応する、フィルタの目詰まりの所定のレベルを検出するように構成される。これは、
図7に図示されており、
図7では、タービン速度がタービンモータにとって最高の許容可能速度に達するとき、または、最大の動力のコマンドを用いてさえ負圧設定点DPRに達することができないとき、目詰まりの警告が決定される。
【0087】
1つのオプションによれば、そのような条件下で、制御ユニットがユーザにメッセージを送信するように構成される。
【0088】
桁数を説明すると、タービン10およびその電気モータ11によって消費される電力は、約30ワットから1キロワット超の範囲となる場合があり、実際には、この電力は、使用可能にされる吸引口の数に依存し、またわずかな圧力低下を発生する配管の長さに依存して、[30W~800W]の範囲内に含まれる場合がある。
【0089】
1つの構成では、タービンの速度は、0rpm~12,000rpmの範囲となる場合がある。
【0090】
1つの構成では、タービンの速度は、0rpm~30,000rpmの範囲となる場合がある。
【0091】
ゼロから設定点の速度にするためのタービンの応答時間は、自動車用途では、典型的には、100msと700msとの間であり、400msと600msとの間であることが最も多い場合がある。
【0092】
図3には、集中型フィルタ、集中型圧力センサ、および吸引口83の各々をフィルタ2に接続するのを可能にする管またはホース31、32、33、34が見いだされる。
【0093】
同じタービンによって使用可能にされるいくつかのフィルタがあってよいことに留意されたい。
【0094】
図9では、タービン1は第1の導管3とフィルタとの間に挿置される。タービンが粒子を吸い、次いで、タービンが粒子をフィルタの中に符号3’で示される下流導管を介して吹き込む。この場合では、フィルタ2は、負圧ではなく正圧である。
【0095】
制御ロジックは、第1の導管の中の負圧を測定するセンサ22、および/または、下流導管3’中の正圧を測定する補助センサ23を使用することができる。フィードバック制御設定点は、センサのうちの一方もしくは他方、または2つの組合せにさえ関係する場合がある。
【0096】
図8に図示されるように、変形形態では、所定の一定値ではなく、むしろ、ブレーキシーケンスの現在のフェーズに依存するいくつかの設定点であるフィードバック制御設定点を可能にする。
【0097】
P3と示される曲線は、第1の導管3の内側に広がっている圧力、言い換えると、ほぼ吸引口83に印可される吸引圧力を表す。T1がブレーキシーケンスの開始を示す一方、T2はブレーキシーケンスの終了を示す。
【0098】
こうして、3つの負圧設定点、すなわち、DPR1と示される標準設定点、DPR2と示される低下した負圧設定点、DPR3と示される上昇した負圧設定点を設けることが可能である。
【0099】
上昇した負圧設定点DPR3は、たとえば、ブレーキの開始時、およびブレーキシーケンスの終了時に選択される。低下した負圧設定点DPR2は、たとえば、ブレーキシーケンスの中間で選択される。
【0100】
図8に示される例によれば、ブレーキの開始時にDPR1と示される第1の標準負圧が印可され、中間のブレーキフェーズの期間には低下した負圧設定点DPR2が印可され、ブレーキフェーズの終了時に上昇した負圧設定点DPR3が印可される。1つのオプションによれば、吸引口ならびにそこに位置決めされた粒子の第1の導管をきれいにする働きをする拡張フェーズと呼ばれるフェーズで、摩擦ブレーキの解放より長く、一時的に、上昇した負圧設定点が印可される。
【符号の説明】
【0101】
1 負圧源、タービン
2 フィルタ
3 空気回路、第1の導管
3’ 下流導管
6 制御ユニット
7 キャリパ
8 デバイス
9 ブレーキディスク、ディスク
10 吸引タービン、タービン
11 電気モータ
22 圧力センサ
23 補助センサ
30 空気回路、第2の導管、第2の空気流体導管
31 管、ホース
32 管、ホース
33 管、ホース
34 管、ホース
63 制御ユニット
66 詳細な情報
67 情報
68 ブレーキペダル
69 ポテンショメータ
83 吸引口
P3 圧力
T1 ブレーキシーケンスの開始
T2 ブレーキシーケンスの終了
DPR1 標準設定点
DPR2 低下した負圧設定点
DPR3 上昇した負圧設定点