IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ソム イノベーション バイオテク エス.エル.の特許一覧

特許7505790フェニルケトン尿症の治療における使用のための化合物
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】フェニルケトン尿症の治療における使用のための化合物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/519 20060101AFI20240618BHJP
   A61K 31/517 20060101ALI20240618BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20240618BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240618BHJP
   A61K 31/40 20060101ALI20240618BHJP
   A61K 31/343 20060101ALI20240618BHJP
   A61K 31/4184 20060101ALI20240618BHJP
   A61K 31/708 20060101ALI20240618BHJP
   A61K 31/522 20060101ALI20240618BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20240618BHJP
   A61K 31/4741 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
A61K31/519
A61K31/517
A61P3/00
A61P43/00 121
A61K31/40
A61K31/343
A61K31/4184
A61K31/708
A61K31/522
A61K31/506
A61K31/4741
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021547215
(86)(22)【出願日】2020-02-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-08
(86)【国際出願番号】 EP2020053714
(87)【国際公開番号】W WO2020165318
(87)【国際公開日】2020-08-20
【審査請求日】2023-02-13
(31)【優先権主張番号】19382102.2
(32)【優先日】2019-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519030796
【氏名又は名称】ソム イノベーション バイオテク ソシエダッド アノニマ
【氏名又は名称原語表記】SOM INNOVATION BIOTECH, S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100094640
【弁理士】
【氏名又は名称】紺野 昭男
(74)【代理人】
【識別番号】100103447
【弁理士】
【氏名又は名称】井波 実
(74)【代理人】
【識別番号】100111730
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 武泰
(74)【代理人】
【識別番号】100180873
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 慶政
(72)【発明者】
【氏名】インサ ボロナット、ラウル
(72)【発明者】
【氏名】レイグ ボラーニョ、ヌリア
(72)【発明者】
【氏名】フェレ フェレ、アイリーン
(72)【発明者】
【氏名】ウエルタス ガンビン、オスカル
(72)【発明者】
【氏名】エステバ グラス、サンティアゴ
(72)【発明者】
【氏名】シニョリレ、ルカ
(72)【発明者】
【氏名】ペリコット モール、ガル.ラ
【審査官】堂畑 厚志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/029202(WO,A1)
【文献】特開平4-210983(JP,A)
【文献】特表平7-505395(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K9/00-33/44
A61K47/00-47/69
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェニルケトン尿症を治療および/または予防するための、トリアムテレンおよびノラトレキセド、またはそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される化合物を含む医薬組成物。
【請求項2】
前記化合物が、トリアムテレンまたはその薬学的に許容される塩である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記化合物が、トリアムテレンである、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記化合物が、ノラトレキセドまたはその薬学的に許容される塩である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記化合物が、ノラトレキセド二塩酸塩である、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記フェニルケトン尿症が、バリアントフェニルケトン尿症、非フェニルケトン尿症の高フェニルアラニン血症および古典的フェニルケトン尿症から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記フェニルケトン尿症が、バリアントフェニルケトン尿症である、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
ラトレキセド、スルトプリド、ヒドラスチニン、ブフラロール、バルガンシクロビル、リコベンダゾール、アルベンダゾール、バラシクロビル、ミノキシジル、ロキソリビン、サプロプテリン、セピアプテリン、オキシトリプタン、ピリメタミン、ペグバリアーゼ、またはそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される第二の化合物をさらに含む、請求項2または3に記載の医薬組成物。
【請求項9】
トリアムテレン、スルトプリド、ヒドラスチニン、ブフラロール、バルガンシクロビル、リコベンダゾール、アルベンダゾール、バラシクロビル、ミノキシジル、ロキソリビン、サプロプテリン、セピアプテリン、オキシトリプタン、ピリメタミン、ペグバリアーゼ、またはそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される第二の化合物をさらに含む、請求項4または5に記載の医薬組成物。
【請求項10】
フェニルケトン尿症を治療および/または予防するための医薬の製造における請求項1から5のいずれか一項に定義される化合物の使用。
【請求項11】
前記フェニルケトン尿症が、バリアントフェニルケトン尿症、非フェニルケトン尿症の高フェニルアラニン血症および古典的フェニルケトン尿症から選択される、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
前記フェニルケトン尿症が、バリアントフェニルケトン尿症である、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
フェニルケトン尿症を治療および/または予防するための、トリアムテレンまたはその薬学的に許容される塩を含む医薬であって、当該医薬は、ノラトレキセド、スルトプリド、ヒドラスチニン、ブフラロール、バルガンシクロビル、リコベンダゾール、アルベンダゾール、バラシクロビル、ミノキシジル、ロキソリビン、サプロプテリン、セピアプテリン、オキシトリプタン、ピリメタミン、ペグバリアーゼ、またはそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される1つ以上の他の化合物との組み合わせ物である、医薬。
【請求項14】
前記トリアムテレンまたはその薬学的に許容される塩が、トリアムテレンである、請求項13に記載の医薬。
【請求項15】
フェニルケトン尿症を治療および/または予防するための、ノラトレキセドまたはその薬学的に許容される塩を含む医薬であって、当該医薬は、トリアムテレン、スルトプリド、ヒドラスチニン、ブフラロール、バルガンシクロビル、リコベンダゾール、アルベンダゾール、バラシクロビル、ミノキシジル、ロキソリビン、サプロプテリン、セピアプテリン、オキシトリプタン、ピリメタミン、ペグバリアーゼ、またはそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される1つ以上の他の化合物との組み合わせ物である、医薬。
【請求項16】
前記ノラトレキセドまたはその薬学的に許容される塩が、ノラトレキセド二塩酸塩である、請求項15に記載の医薬。
【請求項17】
前記フェニルケトン尿症が、バリアントフェニルケトン尿症、非フェニルケトン尿症の高フェニルアラニン血症および古典的フェニルケトン尿症から選択される、請求項13~16のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項18】
前記フェニルケトン尿症が、バリアントフェニルケトン尿症である、請求項17に記載の医薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェニルケトン尿症の治療および/または予防における使用のための化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
フェニルアラニンヒドロキシラーゼ欠乏症としても公知のフェニルケトン尿症(PKU)は、フェニルアラニン(Phe)のチロシン(Tyr)への損なわれた変換によって特徴付けられるまれな代謝障害であり、そのため、これは、血液中のフェニルアラニンのレベルを増加させる。フェニルアラニンは、食事を通して得られる、例えば、タンパク質中、および一部の人口甘味料中のアミノ酸である。PKUを未治療のままにすると、結果として起こる過剰の血中フェニルアラニンの蓄積が、生理学的、神経学的および知的障害を引き起こし得る。
【0003】
PKUの兆候および症状は、軽度から重度まで異なる。この疾患の最も重度の形態は、古典的PKUとして公知である。古典的PKUを有する幼児は、生後数か月まで正常に見える。治療しないと、これらの子供たちは永久的な知的障害を発生する。けいれん発作、発育の遅れ、行動上の問題および精神障害も一般的である。バリアントPKUおよび非PKUの高フェニルアラニン血症と呼ばれる場合がある、この状態の重症度が低い形態は、より低い脳の損傷の危険性を有する。非常に軽度の症例の人々は、低フェニルアラニン食による治療を必要としない場合がある。
【0004】
PKUおよび未制御のフェニルアラニンレベルを有する母親から生まれた乳児は、誕生前に非常に高レベルのフェニルアラニンに曝されているので、知的障害のかなりの危険性を有する。これらの幼児はまた、低い出生時体重であり、他の子供たちよりもゆっくりと成長し得る。他の特徴的な医学的問題としては、心臓の欠陥または他の心臓の問題、小頭症および行動上の問題が挙げられる。PKUおよび未制御のフェニルアラニンレベルを有する女性は、流産の危険性の増加もある。
【0005】
PAH遺伝子中の変異は、この遺伝子がフェニルアラニンのチロシンへのパラ-ヒドロキシル化を触媒するフェニルアラニンヒドロキシラーゼの産生の原因であるので、フェニルケトン尿症を引き起こす。遺伝子の変異がフェニルアラニンヒドロキシラーゼの活性を低減すると、食事からのフェニルアラニンは効率的に処理されない。結果として、このアミノ酸は、血液および他の組織中において毒性レベルまで高まり得る。脳中の神経細胞は、フェニルアラニンレベルに特に感受性であるので、過剰量のこの物質は、脳の損傷を引き起こし得る。
【0006】
PKUは、古典的PKU(症例のおよそ48%)、バリアント(または軽度)PKU(症例のおよそ24%)および症例のおよそ16%に相当する非PKUのHPA(または軽度の高フェニルアラニン血症(HPA))として分類され得る。
【0007】
この疾患の最も重度の形態である古典的PKUは、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ活性が大幅に低減するか、または存在しない場合に起こる。酵素が一部の活性を維持するのを可能にするPAH遺伝子中の変異は、バリアントPKUまたは非PKUの高フェニルアラニン血症などの、この状態のより軽度の型をもたらす。
【0008】
フェニルケトン尿症は、未治療の対象における血中フェニルアラニンレベルが1200μmol/Lよりも高い場合に古典的PKU、未治療の対象における血中フェニルアラニンレベルが600~1200μmol/Lを構成する場合にバリアントPKU、および未治療の対象における血中フェニルアラニンレベルが120~600μmol/Lを構成する場合に非PKUの高フェニルアラニン血症(または軽度の高フェニルアラニン血症)とみなされる。
【0009】
一部のPKU患者は、それらの血中フェニルアラニンレベルが、BH4(フェニルアラニンヒドロキシラーゼによって触媒されるフェニルアラニンのヒドロキシル化における必須の補因子である、(6R)-L-エリスロ-5,6,7,8-テトラヒドロビオプテリンまたはテトラヒドロビオプテリンとしても公知)による薬理学的治療下で減少するか、またはさらには正常化するという点で、BH4の経口投与から利益を得る。BH4反応性の頻度は、非PKUのHPA、または残留酵素活性を可能にするPAH変異から生じる軽度のPKUを有する患者において最も高い。反対に、古典的PKUを有する患者の間での反応の割合は、より低い。
【0010】
PKUのための薬物療法は依然として初期段階であるので、PKUの治療は、主に食事療法、すなわち、天然タンパク質の摂取量を減少させること、および天然タンパク質を、フェニルアラニンを欠くタンパク質源または修飾低タンパク質食品に置き換えることによる、フェニルアラニン摂取量の制限である。この治療は、一生の間維持することが困難であり、食事の違反はよくあることである。
【0011】
薬物療法に関して、天然に存在するテトラヒドロビオプテリン(BH4)の二塩酸塩の合成調製物であるサプロプテリン二塩酸塩は、PKUの治療のための最初の薬理作用のある薬剤であり、2007年にFDAによって承認された。
【0012】
大型中性アミノ酸(LNAA)は、腸からの、および血液脳関門でのフェニルアラニンの取り込みを遮断するそれらの能力に基づいて、PKUのための治療として提案されている。それにもかかわらず、大型中性アミノ酸による治療は、血中フェニルアラニンレベルを胎児の発育のために安全な範囲まで十分に低下させないので、妊婦における単剤療法として禁忌である。
【0013】
また、ポリエチレングリコールコンジュゲートフェニルアラニンアンモニアリアーゼ(PEG-PAL)は、血中フェニルアラニンレベルを低下させるのに効果があると思われるが、いくつかの免疫学的反応がこの薬物について報告されており、これは、毎日の皮下注射として投与されなければならない。それにもかかわらず、2018年に、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)-メトキシポリエチレングリコールにコンジュゲートされた組換えフェニルアラニンアンモニアリアーゼ(rAvPAL)で構成されるパリンジック(ペグバリアーゼ-pqpz)が、PKUを有する成人のためにFDAによって承認された。
【発明の概要】
【0014】
PKUの治療のための薬理作用のある薬剤の少ない選択肢に起因して、および既存のものの副作用にも起因して、PKUの治療のために有用な新たな薬理作用のある薬剤についての必要性がある。
【0015】
本発明者らは、驚くべきことに、フェニルケトン尿症の治療のための新たな薬理学的戦略を見出した。これらの化合物は、野生型および変異した酵素(BH4に応答する最も頻繁な変異体であるArg261Gln)の両方において、その安定性および/または活性における、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ酵素の活性に対する有益な効果を示した。
【0016】
そのため、一態様において、本発明は、フェニルケトン尿症(PKU)の治療および/または予防における使用のための、トリアムテレン、ノラトレキセド、スルトプリドおよびヒドラスチニン、またはそれらの薬学的に許容される塩、好ましくは、トリアムテレン、ノラトレキセド、またはそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される化合物に関する。
【0017】
別の態様において、本発明は、フェニルケトン尿症(PKU)の治療および/または予防のための医薬の製造における、トリアムテレン、ノラトレキセド、スルトプリドおよびヒドラスチニン、またはそれらの薬学的に許容される塩、好ましくは、トリアムテレン、ノラトレキセド、またはそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される化合物の使用に関する。
【0018】
別の態様において、本発明は、対象においてフェニルケトン尿症(PKU)を治療および/または予防する方法であって、前記対象に、治療有効量の、トリアムテレン、ノラトレキセド、スルトプリドおよびヒドラスチニン、またはそれらの薬学的に許容される塩、好ましくは、トリアムテレン、ノラトレキセド、またはそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される化合物を投与する工程を含む、方法にも関する。
【0019】
さらなる態様において、本発明は、フェニルケトン尿症の治療および/または予防における使用のための、トリアムテレン、ノラトレキセド、スルトプリド、ヒドラスチニン、ブフラロール、バルガンシクロビル、リコベンダゾール、アルベンダゾール、バラシクロビル、ミノキシジル、ロキソリビン、サプロプテリン、セピアプテリン、オキシトリプタン、ピリメタミン、ペグバリアーゼ、またはそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される1つ以上の化合物を含む組み合わせ物であって、少なくとも1つの化合物が、トリアムテレン、ノラトレキセド、スルトプリドおよびヒドラスチニン、またはそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される、好ましくは、少なくとも1つの化合物が、トリアムテレンおよびノラトレキセド、またはそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される、組み合わせ物に関する。
【0020】
別の態様において、本発明は、フェニルケトン尿症(PKU)の治療および/または予防のための医薬の製造における、トリアムテレン、ノラトレキセド、スルトプリド、ヒドラスチニン、ブフラロール、バルガンシクロビル、リコベンダゾール、アルベンダゾール、バラシクロビル、ミノキシジル、ロキソリビン、サプロプテリン、セピアプテリン、オキシトリプタン、ピリメタミン、ペグバリアーゼ、またはそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される1つ以上の化合物を含む組み合わせ物の使用であって、少なくとも1つの化合物が、トリアムテレン、ノラトレキセド、スルトプリドおよびヒドラスチニン、またはそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される、好ましくは、少なくとも1つの化合物が、トリアムテレンおよびノラトレキセド、またはそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される、組み合わせ物の使用に関する。
【0021】
別の態様において、本発明は、対象におけるフェニルケトン尿症(PKU)を治療および/または予防する方法であって、前記対象に、治療有効量の、トリアムテレン、ノラトレキセド、スルトプリド、ヒドラスチニン、ブフラロール、バルガンシクロビル、リコベンダゾール、アルベンダゾール、バラシクロビル、ミノキシジル、ロキソリビン、サプロプテリン、セピアプテリン、オキシトリプタン、ピリメタミン、ペグバリアーゼ、またはそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される1つ以上の化合物を含む組み合わせ物を投与する工程を含み、少なくとも1つの化合物が、トリアムテレン、ノラトレキセド、スルトプリドおよびヒドラスチニン、またはそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される、好ましくは、少なくとも1つの化合物が、トリアムテレンおよびノラトレキセド、またはそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される、方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
第1の態様において、本発明は、フェニルケトン尿症(PKU)の治療および/または予防における使用のための、トリアムテレン、ノラトレキセド、スルトプリドおよびヒドラスチニン、またはそれらの薬学的に許容される塩、好ましくは、トリアムテレン、ノラトレキセド、またはそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される化合物に関する。
【0023】
本発明は、フェニルケトン尿症(PKU)の治療および/または予防のための医薬の製造における、トリアムテレン、ノラトレキセド、スルトプリドおよびヒドラスチニン、またはそれらの薬学的に許容される塩、好ましくは、トリアムテレン、ノラトレキセド、またはそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される化合物の使用にも関する。
【0024】
本発明は、対象においてフェニルケトン尿症(PKU)を治療および/または予防する方法であって、前記対象に、治療有効量の、トリアムテレン、ノラトレキセド、スルトプリドおよびヒドラスチニン、またはそれらの薬学的に許容される塩、好ましくは、トリアムテレン、ノラトレキセド、またはそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される化合物を投与する工程を含む、方法にも関する。
【0025】
本発明は、フェニルケトン尿症の治療および/または予防における使用のための、ブフラロール、バルガンシクロビル、リコベンダゾール、アルベンダゾール、バラシクロビル、ミノキシジルおよびロキソリビン、またはそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される化合物も開示する。
【0026】
本発明は、フェニルケトン尿症(PKU)の治療および/または予防のための医薬の製造における、ブフラロール、バルガンシクロビル、リコベンダゾール、アルベンダゾール、バラシクロビル、ミノキシジルおよびロキソリビン、またはそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される化合物の使用も開示する。
【0027】
本発明は、対象におけるフェニルケトン尿症(PKU)を治療および/または予防する方法であって、前記対象に、治療有効量の、ブフラロール、バルガンシクロビル、リコベンダゾール、アルベンダゾール、バラシクロビル、ミノキシジルおよびロキソリビン、またはそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される化合物を投与する工程を含む、方法にも関する。
【0028】
「治療すること」および「治療」という用語は、本明細書で使用される場合、そのような用語が適用される疾患もしくは状態、またはそのような疾患もしくは状態の1つ以上の症状を、反転させること、軽減すること、その進行を阻害すること、例えば、治療前レベルに対して血中フェニルアラニンを低下させることを意味する。
【0029】
「予防すること」および「予防」という用語は、本明細書で使用される場合、そのような用語が適用される疾患もしくは状態の1つ以上の症状の開始を回避すること、または阻害すること、例えば、120μmol/Lを上回る血中フェニルアラニンの上昇を阻害することを意味する。
【0030】
好ましくは、本明細書に開示の化合物は、PKUの治療のために使用される。
【0031】
トリアムテレンまたは2,4,7-トリアミノ-6-フェニルプテリジンは、下記に表される化学構造を有する。
【化1】
【0032】
この化合物は、利尿剤として開発された。この化合物は、市販されており、または英国特許出願公開第982360号に開示される方法などの好適な調製方法を使用して、合成されてもよい。
【0033】
ノラトレキセドまたは2-アミノ-6-メチル-5-(4-ピリジルチオ)-4(3H)-キナゾリノンは、下記に表される化学構造を有する。
【化2】
【0034】
この化合物は、抗新生物剤として、特に肝細胞癌の治療のために開発された。この化合物は、市販されており、または米国特許第5,430,148号に開示される方法(ノラトレキセドは、この文献の化合物14Aに相当する)などの好適な調製方法を使用して、合成されてもよい。
【0035】
スルトプリドまたはN-[(1-エチル-2-ピロリジニル)メチル]-5-(エチルスルホニル)-o-アニスアミドは、下記に表される化学構造を有する。
【化3】
【0036】
この化合物は、抗うつ薬として開発された。この化合物は、市販されており、または中国特許出願公開第1706825A号に開示される方法などの好適な調製方法を使用して、合成されてもよい。
【0037】
ヒドラスチニンまたは6-メチル-7,8-ジヒドロ-5H-[1,3]ジオキソロ[4,5-g]イソキノリン-5-オールは、下記に表される化学構造を有する。
【化4】
【0038】
この化合物は、強心薬および止血剤として開発された。この化合物は、市販されており、または英国特許出願公開第14120号に開示される方法などの好適な調製方法を使用して、合成されてもよい。
【0039】
ブフラロールまたは2-(tert-ブチルアミノ)-1-(7-エチル-1-ベンゾフラン-2-イル)エタン-1-オールは、下記に表される化学構造を有する。
【化5】
【0040】
この化合物は、ベータ-アドレナリン受容体アンタゴニストとして開発され、市販されている。これは、好ましくは、塩酸塩として使用される。この化合物は、ラセミ体、または(S)もしくは(R)-エナンチオマーとしてのいずれか、好ましくは、(S)-エナンチオマーとして使用してもよい。
【0041】
バルガンシクロビルまたは(2S)-2-アミノ-3-メチルブタン酸[2-[(2-アミノ-6-オキソ-3H-プリン-9-イル)メトキシ]-3-ヒドロキシプロピル]は、下記に表される化学構造を有する。
【化6】
【0042】
この化合物は、HIV/AIDSを有する対象において、または臓器移植後に、サイトメガロウイルス感染症を治療するために使用される抗ウイルス医薬として開発され、市販されている。この化合物は、好ましくは、塩酸塩として使用される。
【0043】
リコベンダゾールまたは[5-(プロパン-1-スルフィニル)-1H-ベンゾイミダゾール-2-イル]カルバミン酸メチルは、下記に表される化学構造を有する。
【化7】
【0044】
この化合物は、駆虫薬として開発され、市販されている。この化合物は、好ましくは、遊離塩基として使用される。リコベンダゾールは、アルベンダゾールまたは(5-(プロピルチオ)-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)カルバミン酸メチルエステルの重要な代謝物の1つである。アルベンダゾールは、下記に表される化学構造を有する。
【化8】
【0045】
アルベンダゾールも、駆虫薬として開発され、市販されている。この化合物は、リコベンダゾールのプロドラッグとして使用することができ、好ましくは、遊離塩基として使用される。
【0046】
バラシクロビルまたは(2S)-2-アミノ-3-メチルブタン酸2-[(2-アミノ-6-オキソ-3H-プリン-9-イル)メトキシ]エチルは、下記に表される化学構造を有する。
【化9】
【0047】
この化合物は、ヘルペス感染症を治療するために使用される抗ウイルス医薬として開発され、市販されている。この化合物は、好ましくは、塩酸塩として使用される。
【0048】
ミノキシジルまたは2,6-ジアミノ-4-(ピペリジン-1-イル)ピリミジン1-オキシドは、下記に表される化学構造を有する。
【化10】
【0049】
この化合物は、高血圧および脱毛の治療のために開発され、市販されている。この化合物は、好ましくは、遊離塩基として使用される。
【0050】
ロキソリビンまたは2-アミノ-9-[(2R,3R,4S,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)オキソラン-2-イル]-7-プロパ-2-エニルl-3H-プリン-6,8-ジオンは、下記に表される化学構造を有する。
【化11】
【0051】
この化合物は、免疫賦活活性および免疫調節活性を有し、市販されている。この化合物は、好ましくは、遊離塩基として使用される。
【0052】
「薬学的に許容される」という用語は、ヒトに投与された場合に、生理学的に耐容可能であり、かつ典型的には、異常亢進、眩暈などのようなアレルギー反応または類似の有害反応を生じない、分子体および組成物を指す。好ましくは、本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される」という用語は、動物、より具体的にはヒトにおける使用のために、連邦政府もしくは州政府の規制機関によって承認されること、または米国薬局方もしくは他の一般に認識される薬局方に列挙されることを意味する。
【0053】
さらに、「薬学的に許容される塩」という用語は、レピシエントへの投与の際に、本明細書に記載の化合物を(直接的または間接的に)提供することができる任意の塩を指す。例えば、本明細書に提供される化合物の薬学的に許容される塩は、酸付加塩、塩基付加塩または金属塩であり得、それらは、従来の化学方法によって、塩基または酸部分を含む親化合物から合成することができる。一般に、そのような塩は、例えば、これらの化合物の遊離酸または遊離塩基の形態を、水中もしくは有機溶媒中、またはその2つの混合物中で、化学量論量の適切な塩基または酸と反応させることよって調製される。一般に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノールまたはアセトニトリルのような非水性媒体が好ましい。酸付加塩の例としては、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩などの鉱酸付加塩、ならびに例えば、酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩およびp-トルエンスルホン酸塩などの有機酸付加塩が挙げられる。アルカリ付加塩の例としては、例えば、アンモニウムなどの無機塩、および例えば、エチレンジアミン、エタノールアミン、N,N-ジアルキレンエタノールアミン、トリエタノールアミン、グルカミンなどの有機アルカリ塩、ならびに塩基性アミノ酸塩が挙げられる。金属塩の例としては、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウムおよびリチウムの塩が挙げられる。
【0054】
別の特定の実施形態において、本発明による使用のための化合物は、トリアムテレンまたはその薬学的に許容される塩、好ましくは、トリアムテレン(すなわち、トリアムテレン遊離塩基)である。
【0055】
特定の実施形態において、本発明による使用のための化合物は、ノラトレキセドまたはその薬学的に許容される塩、好ましくは、ノラトレキセド二塩酸塩である。
【0056】
別の特定の実施形態において、本発明による使用のための化合物は、スルトプリドまたはその薬学的に許容される塩、好ましくは、スルトプリド塩酸塩である。
【0057】
別の特定の実施形態において、本発明による使用のための化合物は、ヒドラスチニンまたはその薬学的に許容される塩、好ましくは、ヒドラスチニン塩酸塩である。
【0058】
別の特定の実施形態において、フェニルケトン尿症は、バリアントフェニルケトン尿症、非フェニルケトン尿症(または軽度)の高フェニルアラニン血症、および古典的フェニルケトン尿症から選択される、好ましくは、バリアントフェニルケトン尿症および非フェニルケトン尿症(または軽度)の高フェニルアラニン血症から選択される、さらにより好ましくは、バリアントフェニルケトン尿症である。
【0059】
本発明のさまざまな態様の別の特定の実施形態において、フェニルケトン尿症を患っている対象は、R261Q、R408W、IVS10、E390G、D415N、R241H、I306V、L348V、V388M、R158Q、Y414C、A300S、R297H、L48S、I65T、V245A、V106A、A403V、E280K、R252W、P281L、S349PおよびIVS12;好ましくは、R261Q、R408W、IVS10、E390G、D415N、R241H、I306V、L348V、V388M、R158Q、Y414C、A300S、R297H、L48S、I65T、V245A、V106AおよびIVS12からなる群から選択される;より好ましくは、R261Q、R408W、IVS10、E390G、D415N、R241H、I306V、L348V、V388M、R158Q、Y414C、A300S、R297H、L48SおよびI65Tからなる群から選択される;さらにより好ましくは、R261Qである、PAH酵素の1つ以上の改変体を発現する。
【0060】
上記の変異のために使用される命名法は、野生型ヒトPAH酵素におけるアミノ酸を(1文字アミノ酸コードを使用して)指定する最初の文字、野生型ヒトPAH酵素のアミノ酸配列のその位置を指定する数字、および変異したPAH酵素中のその位置に存在するアミノ酸を指定する最後の文字であり、例えば、R261Qは、261位のアルギニン(R)がグルタミン(Q)に変化していることを意味する。R408Wは、408位のアルギニン(R)がトリプトファン(W)に変化していることを表す。E390Gは、390位のグルタミン(E)がグリシン(G)に変化していることを表す。D415Nは、415位のアスパラギン酸(D)がアスパラギン(N)に変化していることを表す。R241Hは、241位のアルギニン(R)がヒスチジン(H)に変化していることを表す。I306Vは、306位のイソロイシン(I)がバリン(V)に変化していることを表す。L348Vは、348位のロイシン(L)がバリン(V)に変化していることを表す。V388Mは、388位のバリン(V)がメチオニン(M)に変化していることを表す。R158Qは、158位のアルギニン(R)がグルタミン(Q)に変化していることを表す。Y414Cは、414位のチロシン(Y)がシステイン(C)に変化していることを表す。A300Sは、300位のアラニン(A)がセリン(S)に変化していることを表す。R297Hは、297位のアルギニン(R)がヒスチジン(H)に変化していることを表す。L48Sは、48位のロイシン(L)がセリン(S)に変化していることを表す。I65Tは、65位のイソロイシン(I)がトレオニン(T)に変化していることを表す。V245Aは、245位のバリン(V)がアラニン(A)に変化していることを表す。V106Aは、106位のバリン(V)がアラニン(A)に変化していることを表す。A403Vは、403位のアラニン(A)がバリン(V)に変化していることを表す。E280Kは、280位のグルタミン酸(E)がリジン(K)に変化していることを表す。R252Wは、252位のアルギニン(R)がトリプトファン(W)に変化していることを表す。P281Lは、281位のプロリン(P)がロイシン(L)に変化していることを表す。S349Pは、349位のセリン(S)がプロリン(P)に変化していることを表す。
【0061】
変異IVS10は、エクソン10およびエクソン11の正常な配列の間に挿入された9ヌクレオチドを有する転写物をもたらす異常なスプライシングを引き起こす、イントロン10中の新規なスプライスアクセプター部位を作り出す。これは、残基Q355およびY356の間に挿入される3個の余分なアミノ酸(Gly-Leu-Gln)を有するタンパク質に対応する。
【0062】
変異IVS12は、RNAスプライシングの間に先行するエクソンのスキッピングをもたらす、イントロン12の5-プライムスプライスドナー部位でのGTからATへの置換に対応する。対応するメッセンジャーRNAは、エクソン12に正確に対応する内部の116塩基の欠失を示し、C末端の52アミノ酸を欠く切断型タンパク質の合成をもたらす。
【0063】
野生型ヒトPAH酵素は、UniProtデータベースのエントリーP00439(2019年12月11日からのバージョン237)に提供される以下の配列:MSTAVLENPGLGRKLSDFGQETSYIEDNCNQNGAISLIFSLKEEVGALAKVLRLFEENDVNLTHIESRPSRLKKDEYEFFTHLDKRSLPALTNIIKILRHDIGATVHELSRDKKKDTVPWFPRTIQELDRFANQILSYGAELDADHPGFKDPVYRARRKQFADIAYNYRHGQPIPRVEYMEEEKKTWGTVFKTLKSLYKTHACYEYNHIFPLLEKYCGFHEDNIPQLEDVSQFLQTCTGFRLRPVAGLLSSRDFLGGLAFRVFHCTQYIRHGSKPMYTPEPDICHELLGHVPLFSDRSFAQFSQEIGLASLGAPDEYIEKLATIYWFTVEFGLCKQGDSIKAYGAGLLSSFGELQYCLSEKPKLLPLELEKTAIQNYTVTEFQPLYYVAESFNDAKEKVRNFAATIPRPFSVRYDPYTQRIEVLDNTQQLKILADSINSEIGILCSALQKIK(配列番号1)を有する。
【0064】
本発明による使用のための化合物は、経口(例えば、経口、舌下など)、非経口(例えば、皮下、筋肉内、静脈内、筋肉内など)、経膣、直腸、経鼻、局所、眼(ophtalmic)など、好ましくは、経口または非経口、より好ましくは、経口などの任意の適切な経路によって(を介して)投与され得る。
【0065】
特に、本発明による使用のための化合物は、対応する(活性)化合物および1つ以上の薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物として投与される。
【0066】
「薬学的に許容される賦形剤」という用語は、活性成分とともに投与される、媒体、希釈剤または補助剤を指す。そのような薬学的賦形剤は、水、ならびにピーナッツ油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油および同様のものなどの、石油、動物、植物または合成起源のものを含む油などの無菌液体であり得る。特に注射液用の、水または生理食塩水溶液、ならびに水性のデキストロースおよびグリセロール溶液が、媒体として好ましくは使用される。好適な薬学的媒体は、当業者に公知である。
【0067】
本発明の所望の医薬組成物を製造するために必要な薬学的に許容される賦形剤は、他の要因の中でも、選択される投与経路に依存する。前記医薬組成物は、当業者に公知の従来の方法にしたがって製造され得る。
【0068】
本発明による使用のための化合物は、「治療有効量」、すなわち、非毒性であるが、所望の効果を提供するのに十分な、対応する化合物の量で投与され得る。「有効」である量は、個体の年齢および全身状態、投与される特定の化合物などに応じて、対象ごとに異なる。そのため、正確な「治療有効量」を特定することは常に可能というわけではない。しかしながら、任意の個々の場合における適切な量は、日常的な実験を使用して、当業者によって決定され得る。
【0069】
本発明による使用のための化合物は、典型的には、1日に1回以上、例えば、1日に1、2、3または4回、特定の化合物および疾患の重症度に応じ、かつ当業者によって容易に決定され得る、典型的な総1日用量で投与される。例として、スルトプリドまたはその薬学的に許容される塩の典型的な総1日用量は、0.1~18000mg/日(スルトプリド遊離塩基として表す)、好ましくは、0.1~1800mg/日、さらにより好ましくは、1~1800mg/日の範囲内である。経口経路によって投与されるノラトレキセドまたはその薬学的に許容される塩の典型的な総1日用量は、0.2~14000mg/日(ノラトレキセド遊離塩基として表す)、好ましくは、0.2~1400mg/日、さらにより好ましくは、1~1400mg/日の範囲内である。非経口経路によって投与されるノラトレキセドまたはその薬学的に許容される塩の典型的な総1日用量は、0.1~8000mg/m/日(ノラトレキセド遊離塩基として表す)、好ましくは、0.1~800mg/m/日、さらにより好ましくは、1~800mg/m/日の範囲内である。トリアムテレンまたはその薬学的に許容される塩の典型的な総1日用量は、0.1~10000mg/日(トリアムテレン遊離塩基として表す)、好ましくは、0.1~300mg/日、さらにより好ましくは、1~300mg/日の範囲内である。ヒドラスチンまたはその薬学的に許容される塩の典型的な総1日用量は、0.1~5000mg/日(ヒドラスチン遊離塩基として表す)、好ましくは、0.1~500mg/日、さらにより好ましくは、1~500mg/日の範囲内である。ブフラロールまたはその薬学的に許容される塩の典型的な総1日用量は、0.1~1200mg/日(ブフラロール遊離塩基として表す)、好ましくは、0.1~120mg/日、さらにより好ましくは、1~120mg/日の範囲内である。バルガンシクロビルまたはその薬学的に許容される塩の典型的な総1日用量は、0.1~18000mg/日(バルガンシクロビル遊離塩基として表す)、好ましくは、0.1~1800mg/日、さらにより好ましくは、1~1800mg/日の範囲内である。アルベンダゾールもしくはリコベンダゾール、またはそれらの薬学的に許容される塩の典型的な総1日用量は、0.1~4000mg/日(リコベンダゾールまたはアルベンダゾールの遊離塩基として表す)、好ましくは、0.1~400mg/日、さらにより好ましくは、1~400mg/日の範囲内である。バラシクロビルまたはその薬学的に許容される塩の典型的な総1日用量は、0.1~20000mg/日(バラシクロビル遊離塩基として表す)、好ましくは、0.1~2000mg/日、さらにより好ましくは、1~2000mg/日の範囲内である。ミノキシジルまたはその薬学的に許容される塩の典型的な総1日用量は、0.1~1000mg/日(ミノキシジル遊離塩基として表す)、好ましくは、0.1~100mg/日、さらにより好ましくは、1~100mg/日の範囲内である。ロキソリビンまたはその薬学的に許容される塩の典型的な総1日用量は、0.1~100mg/日(ロキソリビン遊離塩基として表す)、好ましくは、0.1~10mg/日、さらにより好ましくは、1~10mg/日の範囲内である。
【0070】
医薬組成物は、スペインおよび米国薬局方、ならびに類似の参照テキストに記載の方法、またはそこで言及される方法などの標準的な方法を使用して調製され得る。
【0071】
「対象」という用語は、哺乳動物、例えば、ヒトを指す。
【0072】
本発明による使用のための化合物は、単一の活性成分として、または他の活性成分と組み合わせて、投与され得る。特定の実施形態において、化合物は、単一の活性成分として使用される。別の特定の実施形態において、化合物は、他の活性成分と組み合わせて使用される。
【0073】
別の態様において、本発明は、フェニルケトン尿症の治療および/または予防における使用のための、トリアムテレン、ノラトレキセド、スルトプリド、ヒドラスチニン、ブフラロール、バルガンシクロビル、リコベンダゾール、アルベンダゾール、バラシクロビル、ミノキシジル、ロキソリビン、サプロプテリン、セピアプテリン、オキシトリプタン、ピリメタミン、ペグバリアーゼ、またはそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される1つ以上の化合物を含む組み合わせ物であって、少なくとも1つの化合物が、トリアムテレン、ノラトレキセド、スルトプリドおよびヒドラスチニン、またはそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される、好ましくは、少なくとも1つの化合物が、トリアムテレンおよびノラトレキセド、またはそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される、組み合わせ物に関する。
【0074】
本発明は、フェニルケトン尿症(PKU)の治療および/または予防のための医薬の製造における、トリアムテレン、ノラトレキセド、スルトプリド、ヒドラスチニン、ブフラロール、バルガンシクロビル、リコベンダゾール、アルベンダゾール、バラシクロビル、ミノキシジル、ロキソリビン、サプロプテリン、セピアプテリン、オキシトリプタン、ピリメタミン、ペグバリアーゼ、またはそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される1つ以上の化合物を含む組み合わせ物の使用であって、少なくとも1つの化合物が、トリアムテレン、ノラトレキセド、スルトプリドおよびヒドラスチニン、またはそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される、好ましくは、少なくとも1つの化合物が、トリアムテレンおよびノラトレキセド、またはそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される、組み合わせ物の使用にも関する。
【0075】
本発明は、対象におけるフェニルケトン尿症(PKU)を治療および/または予防する方法であって、前記対象に、治療有効量の、トリアムテレン、ノラトレキセド、スルトプリド、ヒドラスチニン、ブフラロール、バルガンシクロビル、リコベンダゾール、アルベンダゾール、バラシクロビル、ミノキシジル、ロキソリビン、サプロプテリン、セピアプテリン、オキシトリプタン、ピリメタミン、ペグバリアーゼ、またはそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される1つ以上の化合物を含む組み合わせ物を投与する工程を含み、少なくとも1つの化合物が、トリアムテレン、ノラトレキセド、スルトプリドおよびヒドラスチニン、またはそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される、好ましくは、少なくとも1つの化合物が、トリアムテレンおよびノラトレキセド、またはそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される、方法にも関する。
【0076】
「組み合わせ物」という用語は、単一組成物、またはいくつかの組成物(または単位)のいずれか中に1つ以上の定義された化合物を含む生成物を指し、この場合において、対応する化合物は、いくつかの組成物間で分配される。好ましくは、組み合わせ物は、特に、組み合わせ物の化合物(上記で定義された化合物)ごとに1つの組成物(または単位)を含む、いくつかの組成物を指す。組み合わせ物を特徴付ける場合の「1つ以上」という語句は、少なくとも1つ、好ましくは、1、2、3、4または5つの化合物、より好ましくは、1、2または3つの化合物、さらにより好ましくは、1または2つの化合物を指す。
【0077】
組み合わせ物が単一組成物の形態である場合、組み合わせ物中に存在する化合物は、常に、同時に投与される。
【0078】
組み合わせ物がいくつかの組成物(または単位)の形態であり、それらのそれぞれが、組み合わせ物の少なくとも1つの化合物を有する場合、組成物または(単位)は、同時に、連続して、または別々に投与され得る。
【0079】
同時投与とは、化合物または組成物(または単位)が、同じ時に投与されることを意味する。
【0080】
連続投与とは、化合物または組成物(または単位)が、順番に交互の様式で、異なる時点で投与されることを意味する。
【0081】
別々の投与とは、化合物または組成物(または単位)が、互いに独立した異なる時点で投与されることを意味する。
【0082】
トリアムテレン、ノラトレキセド、スルトプリド、ヒドラスチニン、ブフラロール、バルガンシクロビル、リコベンダゾール、アルベンダゾール、バラシクロビル、ミノキシジル、ロキソリビンは、それらの薬学的に許容される塩を含んで、上記に詳細に記載した。
【0083】
サプロプテリンまたは(-)-(6R)-2-アミノ-6-((1R,2S)-1,2-ジヒドロキシプロピル)-5,6,7,8-テトラヒドロ-4(3H)-プテリジノンは、下記に表される化学構造を有する。
【化12】
【0084】
この化合物は、PKUを有する患者における高フェニルアラニン血症(hyperphenylalaninaemia)、および/またはテトラヒドロビオプテリン欠乏症の治療のために開発され、市販されている。この化合物は、好ましくは、塩酸塩、特に、二塩酸塩として使用される。
【0085】
セピアプテリンまたはS-(-)-2-アミノ-7,8-ジヒドロ-6-(2-ヒドロキシ-1-オキソプロピル)-4(1H)-プテリジノンは、下記に表される化学構造を有する。
【化13】
【0086】
この化合物は、テトラヒドロビオプテリンの安定な前駆体であり、前記化合物に細胞内で変換される。この化合物は、市販されている。セピアプテリンは、好ましくは、遊離塩基として使用される。
【0087】
オキシトリプタンまたは(2S)-2-アミノ-3-(5-ヒドロキシ-1H-インドール-3-イル)プロパン酸は、下記に表される化学構造を有する。
【化14】
【0088】
この化合物は、市販されており、いくつかの市場(台湾)において、PKUの治療のために使用される。オキシトリプタンは、現在、抗うつ薬および食欲抑制薬として開発中である。
【0089】
ピリメタミンまたは5-(4-クロロフェニル)-6-エチルピリミジン-2,4-ジアミンは、下記に表される化学構造を有する。
【化15】
【0090】
この化合物は、トキソプラズマ症を治療するために使用される抗寄生虫化合物であり、市販されている。これは、以前はマラリアのために使用されていたが、PKUの治療においていくつかの効果を有することが示されている。この化合物は、好ましくは、遊離塩基として使用される。
【0091】
ペグバリアーゼは、フェニルアラニンを無害な代謝物であるトランス-ケイ皮酸およびアンモニアに変換するペグ化組換えフェニルアラニンアンモニアリアーゼであり、フェニルアラニンのレベルを低減する。この製品は、PKUの治療のために使用され、市販されている。
【0092】
組み合わせ物は、トリアムテレン、ノラトレキセド、スルトプリドおよびヒドラスチニン、またはそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される少なくとも1つの化合物、好ましくは、トリアムテレンおよびノラトレキセド、またはそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される少なくとも1つの化合物を含む。
【0093】
好ましい実施形態において、組み合わせ物は、少なくともトリアムテレンまたはその薬学的に許容される塩、好ましくは、トリアムテレン(すなわち、トリアムテレン遊離塩基)を含む。したがって、組み合わせ物は、トリアムテレンまたはその薬学的に許容される塩(好ましくは、トリアムテレン遊離塩基)、およびノラトレキセド、スルトプリド、ヒドラスチニン、ブフラロール、バルガンシクロビル、リコベンダゾール、アルベンダゾール、バラシクロビル、ミノキシジル、ロキソリビン、サプロプテリン、セピアプテリン、オキシトリプタン、ピリメタミン、ペグバリアーゼ、またはそれらの薬学的に許容される塩から選択される1つ以上(好ましくは1つ)の化合物を含む。
【0094】
別の好ましい実施形態において、組み合わせ物は、少なくともノラトレキセドまたはその薬学的に許容される塩、好ましくは、ノラトレキセド二塩酸塩を含む。したがって、組み合わせ物は、ノラトレキセドまたはその薬学的に許容される塩(好ましくは、ノラトレキセド二塩酸塩)、およびトリアムテレン、スルトプリド、ヒドラスチニン、ブフラロール、バルガンシクロビル、リコベンダゾール、アルベンダゾール、バラシクロビル、ミノキシジル、ロキソリビン、サプロプテリン、セピアプテリン、オキシトリプタン、ピリメタミン、ペグバリアーゼ、またはそれらの薬学的に許容される塩から選択される1つ以上(好ましくは1つ)の化合物を含む。
【0095】
別の好ましい実施形態において、組み合わせ物は、少なくともスルトプリドまたはその薬学的に許容される塩、好ましくは、スルトプリド塩酸塩を含む。したがって、組み合わせ物は、スルトプリドまたはその薬学的に許容される塩(好ましくは、スルトプリド塩酸塩)、およびトリアムテレン、ノラトレキセド、ヒドラスチニン、ブフラロール、バルガンシクロビル、リコベンダゾール、アルベンダゾール、バラシクロビル、ミノキシジル、ロキソリビン、サプロプテリン、セピアプテリン、オキシトリプタン、ピリメタミン、ペグバリアーゼ、またはそれらの薬学的に許容される塩から選択される1つ以上(好ましくは1つ)の化合物を含む。
【0096】
別の好ましい実施形態において、組み合わせ物は、ヒドラスチニンまたはその薬学的に許容される塩、好ましくは、ヒドラスチニン塩酸塩を含む。したがって、組み合わせ物は、ヒドラスチニンまたはその薬学的に許容される塩(好ましくは、ヒドラスチニン塩酸塩)、およびトリアムテレン、ノラトレキセド、スルトプリド、ブフラロール、バルガンシクロビル、リコベンダゾール、アルベンダゾール、バラシクロビル、ミノキシジル、ロキソリビン、サプロプテリン、セピアプテリン、オキシトリプタン、ピリメタミン、ペグバリアーゼ、またはそれらの薬学的に許容される塩から選択される1つ以上(好ましくは1つ)の化合物を含む。
【0097】
特に、本発明による使用のための組み合わせ物は、前に定義された対応する(活性)化合物および薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物として投与される。
【0098】
本発明による使用のための組み合わせ物は、典型的には、1日に1回以上、例えば、1日に1、2、3または4回、特定の化合物および疾患の重症度に応じ、かつ当業者によって容易に決定され得る、典型的な総1日用量で投与される。
【0099】
本発明による使用のための化合物および組み合わせ物は、好ましくは、フェニルアラニン制限食と併用され、フェニルアラニンの摂取は、天然タンパク質を制限すること、およびフェニルアラニンを欠くがチロシンが富化されているタンパク質代替品を代わりに提供することによって、部分的または完全に除去される。
【0100】
好ましい実施形態において、フェニルケトン尿症は、バリアントフェニルケトン尿症、非フェニルケトン尿症(または軽度)の高フェニルアラニン血症、および古典的フェニルケトン尿症から選択される、好ましくは、バリアントフェニルケトン尿症および非フェニルケトン尿症(または軽度)の高フェニルアラニン血症から選択される、さらにより好ましくは、バリアントフェニルケトン尿症である。
【0101】
特定の実施形態において、フェニルケトン尿症を患っている対象は、R261Q、R408W、IVS10、E390G、D415N、R241H、I306V、L348V、V388M、R158Q、Y414C、A300S、R297H、L48S、I65T、V245A、V106A、A403V、E280K、R252W、P281L、S349PおよびIVS12;好ましくは、R261Q、R408W、IVS10、E390G、D415N、R241H、I306V、L348V、V388M、R158Q、Y414C、A300S、R297H、L48S、I65T、V245A、V106AおよびIVS12からなる群から選択される;より好ましくは、R261Q、R408W、IVS10、E390G、D415N、R241H、I306V、L348V、V388M、R158Q、Y414C、A300S、R297H、L48SおよびI65Tからなる群から選択される;さらにより好ましくは、R261Qである、PAH酵素の1つ以上の改変体を発現する。前記改変体は、前に定義されている。
【0102】
以下の実施例は、本発明の詳細な実施形態を表す。それらは、本明細書に定義される本発明の範囲を決して限定することを意図するものではない。
【実施例
【0103】
材料および方法
1.熱的安定性シフトアッセイ
Thorolfssonら(Biochemistry,2002,41(24),7573-7585)は、PAHの熱変性が、3つの段階:(i)低温熱量測定転移の原因である4つの制御ドメインのアンフォールディング;(ii)高温転移の原因である(4つのうち)2つの触媒ドメインのアンフォールディング;および(iii)不可逆的なタンパク質変性で起こることを記載している。安定化のための最も重要なドメインは、制御ドメインである。
【0104】
そのため、標的タンパク質の熱安定性に対する化合物の効果を試験するために、熱安定性シフトアッセイ(示差走査蛍光定量法(DSF)とも呼ばれる)を行った[Niesen F.H.ら,Nat Protoc.,2007,2(9),2212-2221;Gersting S.W.ら,Human Molecular Genetics,2010,19(10),2039-2049;およびGersting S.W.ら,J.Biol Chem. 2010,285(40),30686-30697]。DSFは、蛍光色素(SYPRO Orange;λexc=465nm、λem=610nm)の存在下でタンパク質の熱的アンフォールディングを監視し、リアルタイムPCR装置(Applied BioSystems 7000HT FastリアルタイムPCRシステム)を使用して行った。熱変性の中点(Tm)を増加させる化合物は、タンパク質に結合し、安定化すると考えられる。
【0105】
簡潔には、精製された野生型またはArg261Gln(BH4に応答する最も頻繁な変異である)PAHタンパク質(20mMのNaHEPES、pH7.0および200mMのNaCl、2mMのDTT中に2mg/mlになるように希釈)を試料あたり0.2mg/mlタンパク質の最終濃度で使用した。化合物を、30μMの最終濃度で試験した。化合物なし対照(NCC)を、2%の最終濃度で化合物の溶媒(HO、DMSO、エタノール、メタノール)にしたがって使用した。陽性対照として、我々は、100mMのジチオスレイトール(DTT)中で安定化された天然補因子の6R-L-エリスロ-5,6,7,8-テトラヒドロビオプテリン(BH4、CAS 69056-38-8)を、43μMの最終濃度で使用した。色素に対する化合物の非特異的な効果を排除するために、タンパク質なし対照(NPC)を加えた(緩衝液、化合物、色素)。測定を二反復で行い、試料を、20~75℃の温度範囲で、0.5℃/分の走査速度で走査することによって変性させた
【0106】
データを正規化し、それぞれのT値を、二相性の式によって計算して、半分の変性が起こる温度を決定した(ソフトウェアGraphPadPrism)。標的タンパク質の熱安定性に対する化合物の特異的効果を同定するために、参照T(NCC)を使用して、処理された化合物および処理されていないタンパク質の間の温度シフト(T-TmNCC)を二反復から計算し、転移中点シフト(ΔTm1およびΔTm2)を提供した。Tm1およびTm2は、四量体タンパク質であるPAHがそのドメインに起因して2工程でアンフォールドするので、タンパク質のアンフォールディングプロセスの2つの異なる転移中点である。Tm1の2℃のシフトは、制御ドメインにおける熱安定性の関連する増加を反映し、したがって、肯定的な結果とみなされる。
【0107】
2.フェニルアラニンヒドロキシラーゼ酵素活性アッセイ
このアッセイは、化合物の存在下で酵素活性を分析するために、細胞培養物において終了した。簡潔には、野生型またはArg261Gln PAHコンストラクトを、96ウェルフォーマット中のCOS7細胞において一過的に発現させて(COS7細胞株は内因性PAHを有さない)、PAH遺伝子型を反映させた。細胞を、10μMの最終濃度の化合物で処理し、PAHの酵素活性をトランスフェクションの48時間後に分析した。残留酵素活性に対する化合物の効果を、未処理細胞(NCC、化合物溶媒の最終0.1%のみ)との比較において決定した。細胞のバックグラウンドシグナルを正規化するために、非トランスフェクト細胞(NT対照)を、化合物または溶媒で同様に48時間処理した。陽性対照として、我々は、100mMのDTT中で安定化されたBH4の安定な前駆体であるセピアプテリン(CAS 17094-01-8)を5μMの最終濃度で使用した。
【0108】
PAH活性を、以前に記載の通り(Gersting,S.W.,J.Biol.Chem.,2010,285(40),30686-30697)、修正を伴なって、25℃でアッセイした。標準混合物は、最終で、22.35mMのNaHepes、pH7.0、2U/μl mg/mLのカタラーゼ、10μMの硫酸第一鉄アンモニウム、および1mMのL-Phe(L-フェニルアラニン)を含有した。アッセイ混合物および細胞培養物の酵素を5分間プレインキュベートし、反応を、最終で75μMのBH4(100mMのジチオスレイトール中で安定化)の添加によって開始し、60分間行い、酢酸によって停止させた。L-チロシン産生の量を測定し、HPLCによって定量化し、三反復でアッセイした。
【0109】
PAH酵素活性に対する化合物の効果を、三反復から以下の通り計算した:NT細胞のバックグラウンドをトランスフェクト細胞(処理またはNCC)から最初に減算し、次いで、NCCに対する処理(化合物)のパーセンテージを決定した。100%を超える酵素活性は、NCCに対して酵素活性の増加を表す。
【0110】
HPLCは、以下の実験条件を使用して行った:
1)装置:
HPLC:UltiMate 3000(Dionex)
カラム:ODS-2 Hypersil(商標);50×4.6mm;粒子径3μm;Thermo Scientific(カタログ番号31603-054630)
プレカラム:Accucore XL C18、4μm、10×4mm;Thermo Scientific(カタログ番号74104-014001)。
2)PAH HPLCランニング緩衝液(pH4.6):
15.7mlのNH、20mlの酢酸、脱イオン化HOで1Lに調整(必要により、酢酸でpHを調整)
3)チロシン標準:
0.1MのHCl中、60μM、30μM、15μM、7.5μM、3.75μMのチロシン
4)実行条件:
チロシンの蛍光検出:UltiMate 3000 RSを使用して、励起275nm、発光305nm
蛍光検出器(Dionex)
溶離液:PAH HPLCランニング緩衝液
流速:2ml/分
実行時間(標準):1分
実行時間(PAH試料):2.5分
チロシンピークの溶出:およそ0.7分
実行の間、試料は、オートサンプラー中で4℃に保たれる。
カラム区画は25℃に保たれる。
【0111】
3.フェニルアラニンヒドロキシラーゼ残留タンパク質の量
残留PAHタンパク質の量の分析は、修正を伴って、Gersting S.W.ら,Human Molecular Genetics,2010,19(10),2039-2049に記載の方法に基づいた。
【0112】
残留PAHタンパク質の量の検出は、一過的にトランスフェクトされたCOS-7細胞(野生型PAHまたはPAH改変体を有する)が化合物に48時間曝露された場合に細胞培養物から得られる溶解物を使用して、ドットブロットとして行った。実験を、酵素活性を測定するために使用されるものと同じ試料から実施した。
【0113】
2μlの溶解物を、ニトロセルロース膜上に滴下した。膜を、室温で30分間風乾させ、続いて、TBS-Tween中の5%のミルクで40分間ブロッキングした(室温)。膜を、PAHに特異的なマウスモノクローナル一次抗体(Millipore、カタログ番号MAB5278、TBS-Tween中の5%のミルクで1:1000希釈)とともに4℃で終夜インキュベートした。次に、膜を、洗浄し(TBS-Tween中で3×10分)、二次HRPコンジュゲート抗体(抗マウス抗体;Santa Cruz Botechnology,Inc.、カタログ番号sc-2005;TBS-Tween中の5%のミルクで1:1000希釈)とともにインキュベートし、続いて、TBS-Tween(3×10分)および蒸留水(1×10分)中で徹底的に洗浄した。ブロットを、Pierce(商標)ECL基質(ThermoFisher Scientific、カタログ番号32106)を用いて可視化し、化学発光を、DIANA IIIイメージングシステムまたはChemiDoc(商標)MPイメージングシステム(BioRad)で監視した。PAHタンパク質の量に対する化合物の効果を分析するために、濃度測定分析を、ImageJソフトウェアを使用して行った。
【0114】
PAHタンパク質の量に対する化合物の効果を三反復から計算した。酵素活性の決定に関して、非トランスフェクト細胞(NT)のバックグラウンドを、トランスフェクト細胞(NCCまたは化合物処置)から減算した。次の工程において、化合物処理細胞に対するNCCのデルタを計算した。100%を超える残留タンパク質の量は、NCCに対して酵素の安定性の増加を表す。
【0115】
4.等温滴定熱量測定
等温滴定熱量測定(ITC)は、低分子の、タンパク質または他のより大きな分子への結合親和性を決定するために使用される定量的な物理的技術である[Freyer M.W.およびLewis E.A.,Methods in Cell Biology,2008,4巻,4章,79-113頁]。測定は、分子が相互作用し、分子の相互作用の結合キネティクスおよび熱力学プロファイルを生じる場合に、発生または吸収される熱の変化を検出する。以下のパラメーターを決定する:KD(平衡解離定数)、N(相互作用の化学量論(リガンドのmol/複合体のmol))、ΔH(エンタルピー変化)、ΔG(ギブズエネルギー)、T(温度)およびΔS(エントロピー変化)。
【0116】
ITC実験を、MicroCal PEAQ-ITCマイクロ熱量計(Malvern)を使用して、25℃で行った。PAHタンパク質を、化合物希釈物の最終DMSO濃度に一致させるために、5%のDMSOを含有するHEPES緩衝液(HEPES 20mMのHepes、0.2MのNaCl、1mMのDTT、pH 7.0)中で調製した。使用したタンパク質濃度(30μM)を、280nmでの紫外(UV)吸収を使用して決定した。化合物(500mM)を、正確に同じ緩衝液を使用して調製した。試料細胞(タンパク質を含有する)への、3μLの化合物/リガンドの12の注入を、31分にわたって750rpmの撹拌スピードで滴定した。データは、化合物の緩衝液への同等の注入から得られたバックグラウンドを減算することによってベースライン調整した。滴定曲線を、同一の結合部位のセットを仮定するモデルを使用して、MicroCal PEAQ-ITC分析ソフトウェア(バージョン1.1.0.1262、Malvern Instruments Ltd.)を使用して分析し、ここで、溶液の総熱量は、
【数1】
(式中、nは、結合部位の数であり、Mは、細胞中の総タンパク質濃度であり、ΔHは、リガンド結合のモル熱であり、Xは、リガンドの総濃度であり、Kは結合定数である(K=1/KD))として計算される。注入(i)あたりに放出される熱ΔQ(i)は、下記の式にしたがって計算され、これは、それぞれの注入において添加される体積(ΔVi)を相殺する。Vは、細胞における初期体積である。
【数2】
【0117】
パラメーターのn、KおよびΔHは、レーベンバーグ-マーカートアルゴリズムを使用する非線形二乗フィッティングを使用して決定する。
【0118】
5.試験化合物
トリアムテレン(Santa Cruz Biotechnology)、ノラトレキセド二塩酸塩(nolatretex dihycrochloride)(Carbosynth)、スルトプリド塩酸塩(Carbosynth)、ヒドラスチニン塩酸塩(Sant Cruz Biotechnology)、ブフラロール塩酸塩(Santa Cruz Biotechnology)、S-ブフラロール塩酸塩(Santa Cruz Biotechnology)、リコベンダゾール(Santa Cruz Biotechnology)、ロキソリビン(Tocris、Biogen)、バルガンシクロビル塩酸塩(Santa Cruz Biotechnology)、バラシクロビル塩酸塩(Santa Cruz Biotechnology)およびミノキシジル(Sigma Aldrich)を、上記に記載の1つ以上のアッセイにしたがって試験した。セピアプテリン(Santa Cruz Biotechnology)またはBH4(Carbosynth)を、参照化合物として使用した。
【0119】
結果
実施例1.熱的安定性シフトアッセイ
化合物で処理された(30μg)標的タンパク質である野生型PAH(WT PAH)およびArg261Gln(R261Q PAH)の転移中点1および2のシフト(ΔTm1およびΔTm2)を決定した。6R-L-エリスロ-5,6,7,8-テトラヒドロビオプテリン(43μM)を陽性対照として使用した。結果を下記の表に示す。
【0120】
【表1】
【0121】
結果は、これらの化合物が、天然補因子であるBH4と同様の効力で酵素を安定化することができることを示し、これは、熱安定性研究において、野生型タンパク質に対してよりも変異体PAHに対してより高い安定化活性を示す。PKU治療としての適用のために、最も関連する結果は、変異体タンパク質、特に、制御ドメインの安定化(Tm1)についてのものである。
【0122】
実施例2.フェニルアラニンヒドロキシラーゼ酵素活性アッセイ
野生型PAH(WT PAH)またはArg261Gln(R261Q)を一過的に発現する細胞におけるPAH酵素活性に対する、48時間にわたる化合物の効果を決定した。結果を下記の表に示す。データは、未処理細胞(NCC)と比較した、化合物処理細胞(10μM)のT-チロシン形成のパーセンテージの平均および標準偏差(SD)を表す。セピアプテリン(5μM)を陽性対照として使用した。
【0123】
【表2】
【0124】
結果は、上記化合物による処理が、COS7細胞において発現した野生型および変異体PAHの酵素活性を有意に増加させるが、陽性対照として使用されたセピアプテリンよりも低い程度であることを示す。
【0125】
実施例3.フェニルアラニンヒドロキシラーゼ残留タンパク質の量
野生型PAH(WT PAH)またはArg261Gln(R261Q)を一過的に発現する細胞におけるPAHタンパク質レベルに対する、48時間にわたる化合物の効果を決定した。結果を下記の表に提示する。データは、未処理細胞(NCC)と比較した、化合物処理細胞(10μM)のPAH免疫ブロットシグナルのパーセンテージの平均および標準偏差(SD)を表す。セピアプテリン(5μM)を陽性対照として使用した。
【0126】
【表3】
【0127】
結果は、上記化合物による処理が、COS7細胞において発現した野生型および変異体PAHのタンパク質レベルを有意に増加させることを示し、PAHタンパク質の安定性またはタンパク質合成の増加を示唆する。
【0128】
実施例4.等温滴定熱量測定
野生型PAH(WT PAH)に対するトリアムテレンおよびヒドラスチニン塩酸塩の滴定についての等温熱量測定データおよび分析を行った。BH4を陽性対照として使用した。結果を下記の表に示す。
【0129】
【表4】
【0130】
結果は、トリアムテレンおよびヒドラスチニン塩酸塩が、低マイクロモル濃度範囲におけるKdで、組換えPAHに高親和性で結合することを示す。
【配列表】
0007505790000001.xml