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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】マスク
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/11 20060101AFI20240618BHJP
【FI】
A41D13/11 A
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2022538505
(86)(22)【出願日】2020-07-20
(86)【国際出願番号】 JP2020028097
(87)【国際公開番号】W WO2022018796
(87)【国際公開日】2022-01-27
【審査請求日】2023-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】509035532
【氏名又は名称】株式会社スリーダイン
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】萩平 浩二
【審査官】原田 愛子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-142937(JP,A)
【文献】特開2016-093318(JP,A)
【文献】特開2011-229876(JP,A)
【文献】特開2021-179051(JP,A)
【文献】特開2021-075830(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 13/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスク本体の下部左右両端を三角形に折り返して、
この三角の折り返し部中に穿設した挿通孔に紐状の引き寄せ体を挿通して折り返し部間に架設状態とすることにより、
装着者の耳に係止紐を掛けた場合、マスク本体の両側部を中央に引き寄せ可能に構成すると共に、
引き寄せ体の中央部は弾性体としその両側部は非弾性体で構成したことを特徴とした、
マスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用などに使用するマスクの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マスクは多種の用途に使用されるが主体的にはインフルエンザなどの感染症から防御するために着用して使用されることが多い。
【0003】
かかる通常のマスクは布や不織布で構成された略方形のマスク本体で鼻と口を被覆して
使用されるが、着用者が呼吸しやすいようにマスク本体に様々な工夫がされている。
【0004】
例えば、マスク裏面と口、鼻との間隔を可及的にとれるようにマスク本体の内側にスペーサを配設するのも一つの例である。
【0005】
【文献】実用新案登録第3222103号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、マスク本体の内側に呼吸空間形成のための加工を施すと呼吸するための空気流通が妨げられる場合があり、またマスク加工が煩雑で高価になり使い捨てマスクには応用することができない欠点があり、更にはマスクの保管や携帯に嵩張って使用しづらい等の欠点があった。
【0007】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、左右両端近傍に弾性体等の引張り機能を有する引き寄せ体両端部を架設することによりマスク本体中央部が前方に膨出状となるように形成することで上記課題を解決した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記従来の課題を解決するために、本発明に係るマスクは、マスク本体の内側において左右両端近傍に引っ張り機能を有する引き寄せ体の両端部を架設してマスク本体の両側部を引き寄せることによりマスク本体中央部が前方に膨出状となるように構成したことを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係るマスクは以下の点にも特徴を有する。
(2)マスク本体の両端部に架設する引き寄せ体はマスク本体の下縁左右両端を折り返してこの折返し部に引き寄せ体の両端部を連設して構成したこと。
(3)マスク本体の両端部に架設する引き寄体の両端部はマスク本体の左右側に着脱自在に連設したこと。
(4)引き寄せ体は中央部を弾性体で、その両側部を非弾性体で構成したこと。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、マスク本体の内側において左右両端近傍に引っ張り機能を有する引き寄せ体の両端部を架設してマスク本体の両側部を引き寄せることによりマスク本体中央部が前方に膨出状となるように構成したことにより、内側空間に呼吸自由空間を形成することになり着用者は自由にかつ楽に呼吸が行えることになりマスク着用に伴う呼吸のしづらい状況を回避することができる効果がある。
【0011】
また、近年コロナウイルス感染防止として云われる「社会的距離」を保ちマスク着用状態にて会話をするとマスク内で声がこもり聞き取りづらいといった問題点があったが、内側空間に呼吸自由空間を形成することで声がこもらず会話が聞き取りやすきなる効果がある。
【0012】
また、内側空間に呼吸自由空間を形成することにより、着用時にマスク内部で熱気がこもることがないため、夏季に運動を行う際に熱中症のリスクを減らすことのできる効果がある。
【0013】
請求項2の発明によれば、マスク本体の両端部に架設する引き寄せ体はマスク本体の下縁左右両端を折り返してこの折返し部に引き寄せ体の両端部を連設して構成したことにより、鼻頂部による持ち上がりで形成された鼻孔下方の空間と鼻孔下方において引き寄せ体により形成されたマスク下部の膨出空間とにより効果的に呼吸自由空間が形成できる効果がある。
【0014】
また、引き寄せ体がマスク本体の下部に張設されることでマスクの装着時に引き寄せ体が顎を横断する位置に配されると同時に顎表面に当接されるため、マスク本体と顎表面との間にも呼吸のための空気流通空間が生起され、上記呼吸自由空間と該空気流通空間との相乗機能によって着用者は鼻と口を被覆したマスクでありながら鼻と口から自由に、かつ楽に呼吸動作を行うことができる効果がある。
【0015】
また、マスクの下部を顎に掛け装着する従来のマスクでは、会話等で顎を動かすとマスクが下方へ下がり鼻が露出する等の欠点があったが、引き寄せ体が顎の表面に当接しマスク下部が膨出することでマスク本体が顎の動きに影響を受けずマスクがずれることを防ぐ効果がある。
【0016】
請求項3の発明によれば、マスク本体の両端部に架設する引き寄せ体の両端部はマスク本体の左右側に着脱自在に連設したことにより、必要に応じて引き寄せ体を除去してマスクのみの着用とすることもできる。
【0017】
また、引き寄せ体の両端部はマスク本体の左右側に着脱自在に連設したことにより、取り外すことで搬送時や保管時に嵩張ることを抑えることができる効果がある。
【0018】
請求項4の発明によれば、引き寄せ体は中央部を弾性体で、その両側部を非弾性体で構成したことにより、可及的にマスクの中央部を集中的に緊縮してその両側部分は平常か弛緩した状態とすることにより特にマスク本体中央部の緊縮に伴う膨出を容易にし、より効果的に呼吸自由空間が形成できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明のマスクを示す背面図である。
図2】本発明のマスクを示す正面である。
図3】本発明のマスクを示す底面図である。
図4】本発明のマスクの使用状態を示す模式的側面図である。
図5】本発明のマスクの使用状態を示す模式的底面図である。
図6】本発明のマスクにかかる他の実施例を示す背面図である。
図7】本発明のマスクにかかる他の実施例を示す背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
この発明の要旨は、マスク本体の内側において左右両端近傍に引っ張り機能を有する引き寄せ体の両端部を架設してマスク本体の両側部を引き寄せることによりマスク本体中央部が前方に膨出状となるように構成したことにある。
【0021】
また、マスク本体の両端部に架設する引き寄せ体はマスク本体の下縁左右両端を折り返してこの折返し部に引き寄せ体の両端部を連設して構成したこと、また、マスク本体の両端部に架設する引き寄せ体の両端部はマスク本体の左右側に着脱自在に連設したこと、また、引き寄せ体は中央部を弾性体で、その両側部を非弾性体で構成したことも特徴とする。
【0022】
以下、本発明に係るマスクの実施例を図面に基づいて詳説する。
図1は、本発明のマスクの背面図であり、本発明のマスクの基本的な構成を有する。図2は本発明のマスクの正面図、図3は本発明のマスクの底面図であり本発明のマスクの態様を表すものである。図4は使用状態の模式的側面図、図5は使用状態の模式的底面図であり本発明のマスクの作用効果を表す図である。図6は、本発明のマスクにかかる他の実施例を示す背面図である。
【0023】
すなわち、図1に示すように、ガーゼや不織布等の材料によって形成した方形状のマスク本体Mにおいてその両側縁部には紐挿通用の折返し部1を形成しており、折返し部1には環状の係止紐2が挿通されており、装着者の耳に係止紐2を掛けて口元をマスク本体Mで被覆することによりマスク装着を行うように構成している。
【0024】
本発明の要点はかかるマスクにおいて、図2及び図3に示すように、マスク本体Mの内側で左右両端3近傍に引っ張り機能を有する引き寄せ体5の両端を架設してマスク本体Mの両側部を中央に引き寄せることによりマスク本体M中央部4が前方に膨出状となるように構成したことにある。
【0025】
引き寄せ体5は弾性体で紐状或いは帯状に形成しており、従って引き寄せ体5の両端部9をマスク本体Mの内側でマスク本体Mの左右両端3近傍に架設すればマスク本体Mの両側部が中央に引き寄せられることになる。
【0026】
かかるマスク中央部4の突出形状の形成は本件発明の目的とする技術課題であり、一般のマスクにおける着用形態ではマスク裏側は鼻と口を直接覆った状態であるが、本発明では図4に示すように、着用状態でマスク本体M中央部4が前方に膨出状に突出しているためこの突出部分の内側空間に呼吸自由空間S1を形成することになり着用者は自由にかつ楽に呼吸が行えることになりマスク着用に伴う呼吸のしづらい状況を回避することができる。
【0027】
また、図1に示すように、マスク本体Mの左右両端3に架設する引き寄せ体5はマスク本体Mの下縁部の左右両端3、すなわちマスク本体Mの下部左右両端3の角部を三角形に折り返してこの三角の折返し部1に引き寄せ体5の両端部9を連結して構成することができる。
【0028】
引き寄せ体5両端部9の連結形態は図1に示すような折返し部1に穿設した挿通孔6を用いる場合や縫製して固定する場合や接着剤で固着する場合等その連結手段は問わない。
【0029】
引き寄せ体5両端部9におけるマスクとの連設位置をこのようにマスク本体Mの下縁部の左右両端3とすることによりマスク本体Mの引っ張り形態がマスク本体Mの下部左右に限定されることになるために方形状のマスクの下部ほど引っ張り代が大きくなり上部に至るに従い引っ張り代は小さくなっていく。
【0030】
かかる状態では、図4に示すように、鼻頂部7により持ち上がったマスク上部と、鼻頂部7による持ち上がりで形成された鼻孔下方の空間s1と、鼻孔下方において引き寄せ体5により形成されたマスク下部の膨出空間s2とにより呼吸自由空間S1が形成される。
【0031】
このように引き寄せ体5の配置位置によって呼吸自由空間S1の位置と形状が変わることになり、特に上記したようにマスク本体Mの下縁左右端に引き寄せ体5を連結することにより効果的に呼吸自由空間S1が形成される。
【0032】
更には、引き寄せ体5がマスク本体Mの下部に張設されると、図5に示すように、マスクの装着時に引き寄せ体5が顎8を横断する位置に配され、かつ顎8表面に当接されるため、マスク本体Mと顎8表面との間にも呼吸のための空気流通空間S2が生起されることになる。
【0033】
従って、本件発明のマスクを装着するとマスク本体M中央部4の呼吸自由空間S1とマスク本体M下部の上記したS2との相乗機能によって着用者は鼻と口を被覆したマスクでありながら鼻と口から自由に、かつ楽に呼吸動作を行うことができる。
【0034】
また、鼻から口を覆う従来のマスクはマスク本体の下部が顎に掛かるため会話等で顎を動かすと顎の動きによってマスクが下方にずれ鼻が露出する等の欠点があるが、本発明のマスクでは引き寄せ体5が顎に掛かると同時にマスク本体Mの下部が膨出し顎に当接しなくなるため顎を動かす動作でマスク本体Mが影響を受けずマスクがずれていくのを防ぐことができる。
【0035】
他の実施例としてマスク本体Mの左右両端3に架設する引き寄せ体5の両端部9は図6に示すように、マスク本体Mの左右側に着脱自在に連設することができる。このように構成することによりマスクを顔面過半に密着状に装着する必要がない場合は4を除去してマスクのみの着用とすることもできる。
【0036】
また、引き寄せ体3は中央部10を弾性体で、その両端部9を非弾性体で構成することができる。
【0037】
すなわち、このように構成することにより可及的にマスク本体Mの中央部4を集中的に緊縮してその両側部分は平常か弛緩した状態とすることにより特にマスク本体M中央部4の緊縮に伴う膨出を容易にし、呼吸自由空間S1の形成を容易にすることができる。
【0038】
また、他の実施例としてマスク本体Mの係止紐2と引き寄せ体5とを図7a及びbに示すように、一本の共通紐体11にてループ状に形成することができる。
【0039】
共通紐体11は、方形状のマスク本体Mの四つ角のそれぞれに穿設して形成した挿通孔12に挿通される。
【0040】
前記挿通に際しては、マスク本体Mの上方両端に穿設した挿通孔12のどちらか一方を始点として挿通し、もう一方の挿通孔12を終点として順に挿通する。
【0041】
すなわち、右上側の挿通孔12を始点とした際では、該挿通孔12にマスク本体Mの表から共通紐体11を挿通して、次に右下側の挿通孔12に裏から表へ挿通される。
右下側の挿通孔12に挿通された共通紐体11は次に左下側の挿通孔12へマスク本体Mの表側から挿通され、最後に左上側の挿通孔12に裏から表へ挿通される。
【0042】
上記のように共通紐体11を挿通孔12に挿通することで、右側及び左側のそれぞれ2箇所に穿設された挿通孔12に挿通された共通紐体11が係止紐2を、下方両端の挿通孔12に挿通された共通紐体11が引き寄せ体5をそれぞれ形成する。
【0043】
挿通孔12は、その孔の補強としてハトメ金具等を用いるとよい。また、上方の挿通孔12は共通紐体11の両端部を固定するためのもので、挿通孔12ではなく例えば熱溶着を用いマスク本体Mに直接固着させるものであってもよい。
【0044】
また、係止紐2の中途部には長さを調整するための調整具13を取り付ける。該調整具13は着用者一人一人のサイズに合わせるサイズ調整機能と調整度合いにより膨出空間s2の形成を行う機能とを有する。
【0045】
上記のように、係止紐2と引き寄せ体5を共通紐体11により一体として形成することで、一人一人のサイズに係わらず快適に装着することができる。
【0046】
また、膨出空間s2の形成機能は、呼吸自由空間S1の不要な時には調整具13を下方に緩めて通常のマスクとして使用でき、呼吸自由空間S1の必要な時には調整具13を上方に締めることで速やかに変更を可能とする。
【0047】
また、マスクを長時間着用していると、耳の裏側に痛みを感じることがあるが、係止紐2と引き寄せ体5を共通紐体11によって形成し、かつ調整具13によって締付け具合を調整できることで、長時間の着用による耳の裏側への痛みを緩和することができる。
【0048】
図7bは調整具13を引き寄せ体5の左右にそれぞれ設けたことで、より細かい調整を可能としたものである。
【0049】
すなわち係止紐2を左右でそれぞれ調節を可能することで、より一人一人に適切な締付けを可能とすることができる。
【0050】
以上、上述した実施例を通して本発明を説明してきたが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、上述した各種効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本実施例に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0051】
M マスク本体
1 折返し部
2 係止紐
3 左右両端
4 (マスク)中央部
5 引き寄せ体
S1 呼吸自由空間
6 挿通孔
7 鼻頂部
s1 鼻孔下方の空間
s2 膨出空間
8 顎
S2 空気流通空間
9 両端部
10 (引き寄せ体)中央部
11 共通紐体
12 挿通孔
13 調整具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7