(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】無人探査車
(51)【国際特許分類】
B60B 19/00 20060101AFI20240618BHJP
【FI】
B60B19/00 A
(21)【出願番号】P 2022555242
(86)(22)【出願日】2020-10-09
(86)【国際出願番号】 JP2020038365
(87)【国際公開番号】W WO2022074839
(87)【国際公開日】2022-04-14
【審査請求日】2023-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】522092572
【氏名又は名称】株式会社ダイモン
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中島 紳一郎
【審査官】浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-117743(JP,A)
【文献】特開平06-191494(JP,A)
【文献】実開平04-089402(JP,U)
【文献】独国特許出願公告第01137966(DE,B2)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0000641(KR,A)
【文献】MOON ROBO,月面ロボ YAOKI PV 「誕生編」 "超小型な月面探査車YAOKIのデビューPV",https://www.youtube.com/watch?v=_H0AIg_X2ng
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60B 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と、前記本体部の幅方向両端において同軸上に配置された一対の車輪と、前記本体部の後方に設けられ、地面に接地する接地体と、を備える無人探査車であって、前記本体部の幅方向両端には、膨らみを持つ一対の膨張部が形成され、前記車輪は、前記膨張部を覆って配置されていて、前記膨張部の外周面は、正の曲率の曲面で形成され、前記車輪の前記膨張部を覆っている領域の内周面は、前記膨張部の正の曲率の曲面に沿った、負の曲率の曲面で形成され、前記車輪の前記膨張部を覆っている領域の外周面は、前記車輪の前記膨張部を覆っている領域の内周面の前記負の曲率の曲面に沿った、正の曲率の曲面で形成されていて、前記膨張部の外周面と、車輪の内周面との間に、前記膨張部の外周面と前記車輪の内周面とのいずれか一面、又は、両面から、対向する面方向に凸状部が形成されていて、前記凸状部の先端と、前記凸状部と対向する面との間に間隔が空いているように形成されていることを特徴とする、無人探査車。
【請求項2】
前記凸状部が、前記膨張部の外周面に、前記車輪の内周面方向に突出するように形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の無人探査車。
【請求項3】
前記凸状部が、前記車輪の内周面に、前記膨張部の外周面方向に突出するように形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の無人探査車。
【請求項4】
前記凸状部が、その形成されている面上に分散して形成されていることを特徴とする、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の無人探査車。
【請求項5】
前記凸状部が、その形成されている面上に一体連続して形成されていることを特徴とする、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の無人探査車。
【請求項6】
前記凸状部が、前記本体部の前記膨張部の幅方向に対する周方向に沿って、又は、前記車輪の前記膨張部を覆っている領域の内周面に、前記車輪の周方向に沿って、形成されていることを特徴とする、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の無人探査車。
【請求項7】
前記凸状部が、前期膨張部の膨張面の、前期車輪が本体部を覆う開口部の周縁部に対向する部分と、正の曲率の曲面で形成される部分とに、前記膨張部の幅方向に対する周方向に沿って、又は、前記車輪の前記膨張部を覆っている領域の前記内周面の、前記本体部を覆う開口部の周縁部と、前記車輪の前記膨張部を覆っている領域の内周面の前記負の曲率の曲面に沿った部分とに、前記車輪の周方向に沿って、形成されていることを特徴とする、請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の無人探査車。
【請求項8】
前記凸状部の先端と、前記凸
状部と対向する面との間隔が0.3mmないし0.7mm、又は、0.2mmないし0.8mmであるか、又は、凸状部の先端とその対
向する面との間の間隔が車輪直径の0.2%ないし0.8%であるように形成されていることを特徴とする、請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の無人探査車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不整地を走行して探査を行う無人探査車に関する。
【背景技術】
【0002】
無人探査車が、砂や石等で覆われた不整地を走行して探査を行う場合、不整地は、砂や石等の粒子の集積体であって崩れやすいため、無人探査車の駆動車輪は、不整地に対してスリップを引き起こし易い。駆動車輪がスリップすると、駆動車輪が過剰に回転して不整地の砂や岩を掻き出し、駆動車輪は不整地に埋まっていく。駆動車輪が不整地に埋まっていくに従って、駆動車輪が不整地から受ける走行抵抗が大きくなり、走行に要する駆動エネルギーを余分に消費したり、さらには、その走行抵抗の増加や、接地駆動力の低下によって、それ以上の走行を継続することが困難になる、といった不具合がある。
【0003】
一般に、砂や石で覆われた不整地に対して駆動車輪のスリップを抑制する手段として、駆動車輪の表面に半径方向放射状に複数の凸状の爪を設け、この爪を不整地に食い込ませる事で走破性を増そうとする手段があるが、駆動車輪が一旦スリップをし始めると、この車輪表面の爪が、より多くの砂や石を掻き出すこととなり、駆動車輪は、より深く不整地に埋まっていく、という課題があるが、従来の無人探査車では、本体部が不整地に接地することを想定しておらず、本体部の形状が不整地に接地した際の滑り抵抗を低減するような形状にはなっていないため、駆動車輪が不整地に埋まって本体部が不整地に接触すると、無人探査車には、不整地から本体部が受ける接触抵抗が急激に加わることとなり、さらなる駆動車輪のスリップを誘発し、駆動車輪は、さらに深く不整地に埋まり、走行不能に至ってしまう、という課題もある。
【0004】
一方、無人探査車を、例えば宇宙に運ぶためには、その打ち上げや着陸等にかかる費用が莫大なものとなっており、この費用削減のために、無人探査車の小型軽量化が、重要な課題となっている。
【0005】
本体部の張り出し部は、平面状の板で囲われて形成されているような従来の無人探査車では、登坂等、走行抵抗が大きくて厳しい走行条件の不整地を走行する場合、駆動車輪はスリップをし始め、駆動車輪は不整地に埋まっていき、胴体の張り出し部が不整地に接触する。すると、駆動車輪に対して大きな抵抗となって作用し、さらなる駆動車輪のスリップを加速させ、やがて、平面で囲われて形成された張り出し部の表面が不整地に食い込むように接地し、最終的には、無人探査車が走行不能に陥る可能性がある。
【0006】
また、そのような従来の無人探査車では、本体部の幅方向両端に設けられている張り出し部は、本体部の他の部位よりも上下前後方向に小さく形成されており、この張り出し部の内部の搭載スペースが少なくなっていて、また、走行車輪は、本体部の幅方方向両端に設けられている張り出し部を被せるようにして配置されているが、この本体部の張り出し部との隙間(活用されていない空間)が大きいため、無人探査車全体の大型化を招いてしまう。また、この走行車輪と張り出し部との隙間に、不整地の砂等が多く侵入し易いため、走行抵抗が増加して、無人探査車の走行性能を低下させる可能性もある。
【0007】
上記の課題を解決するために、特許文献1には本体部と、前記本体部の幅方向両端において同軸上に配置された一対の車輪と、前記車輪の外周面に設けられた複数の爪と、本体部の後方に設けられ、地面に接地する接地体と、を備える無人探査車であって、本体部の幅方向両端には、膨らみを持つ一対の膨張部が形成され、車輪は、膨張部を覆って配置されたことを特徴とする、無人探査車が記載されている。
【0008】
しかし、特許文献1に記載の無人探査車においては、不整地の起伏が大きく高い崖上の起伏から転落したときに、本体部の幅方向両端に形成された膨張部を車輪が覆うように配置されているため、車輪に大きな力が加わったときに、車輪が破損し、その力が破損した車輪を介して本体に伝わり、さらには本体も破損してしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、小型軽量で、高い不整地に於ける走行性能を備えながら、破損しにくい無人探査車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような目的に応えるために、本発明に係る無人探査車は、本体部と、本体部の幅方向両端において同軸上に配置された一対の車輪と、本体部の後方に設けられ、地面に接地する接地体と、を備える無人探査車であって、本体部の幅方向両端には、膨らみを持つ一対の膨張部が形成され、車輪は、膨張部を覆って配置されていて、膨張部の外周面は、正の曲率の曲面で形成され、車輪の前記膨張部を覆っている領域の内周面は、膨張部の正の曲率の曲面に沿った、負の曲率の曲面で形成され、車輪の前記膨張部を覆っている領域の外周面は、車輪の前記膨張部を覆っている領域の内周面の負の曲率の曲面に沿った、正の曲率の曲面で形成されていて、膨張部の外周面と、車輪の内周面との間に、膨張部の外周面と車輪の内周面とのいずれか一面、又は、両面から、対向する面方向に凸状部が形成されていて、凸状部の先端は、凸状部と対向する面との間に間隔が空いているように形成されていることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る無人探査車では、この凸状部が、本体部の膨張部の外周面に形成されていることを特徴とするものと、車輪の内周面に形成されていることを特徴とするものとが考えられる。
【0013】
本発明に係る無人探査車では、この凸状部が、分散して形成されていることを特徴とするものと、一体連続して形成されていることを特徴とするものとが考えられる。
【0014】
そして、本発明に係る無人探査車は、この凸状部が、本体部の膨張部の膨張面に、膨張部の幅方向に対する周方向に沿って、又は、車輪の、本体部の膨張部を覆っている領域の内周面に、車輪の周方向に沿って、形成されていることを特徴とする。
【0015】
特に、本発明に係る無人探査車は、この凸状部が、本体部の膨張部の膨張面の、車輪内周面の本体部を覆う開口部の周縁部と対向する部分と、正の曲率の曲面で形成される部分とに、膨張部の幅方向に対する周方向に沿って、又は、車輪の、本体部の膨張部を覆っている領域の内周面の、本体部を覆う開口部の周縁部と、車輪の、本体部の膨張部を覆っている領域の内周面の負の曲率の曲面に沿った部分とに、車輪の周方向に沿って形成されていることを特徴とする。
【0016】
さらに、本発明に係る無人探査車は、この凸状部が、凸状部の先端とその対向する面との間の間隔が0.2mmないし0.8mmであるか、又は、凸状部の先端とその対向する面との間の間隔が車輪直径の0.2%ないし0.8%であるように形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の無人探査車によれば、本体部の膨張部の膨張面から、車輪の、本体部の膨張部を覆っている領域の内周面方向に凸状部が設けられていることにより、又は、車輪の、本体部の膨張部を覆っている領域の内周面から本体部の膨張部方向に凸状部が設けられていることにより、車輪の内周面と本体部の膨張部との間で緩衝材の役割を果たすので、無人探査車が高所から固い地面に落下した際に、車輪に加わった落下の衝撃が、本体部の膨張部から車輪の内周面方向に設けられた凸状部を介して、又は、車輪の、本体部の膨張部を覆っている領域の内周面から本体部の膨張面方向に設けられた凸状部を介して、その衝撃力を緩和しながら本体部の膨張部に分散して伝わるため、車輪と本体部の膨張部との破損を防ぐことができる。
【0018】
また、無人探査車が固い地面に落下した際には、落下エネルギーを逃がすために、膨張部を覆っている車輪の地面に接した側が、本体部の中心へと近づく方向にずれる。その際に本体部の膨張部と車輪の内周面の間の間隔が縮まり、そこへさらに落下のエネルギーが加わるため車輪が大きく変形して破損するが、本発明の無人探査車によれば、車輪が大きく変形する前に、本体部の膨張部の膨張面に設けられた凸状部が、車輪の、本体部の膨張部を覆っている領域の内周面に接触して衝撃力を本体部の膨張部に分散することで、又は、車輪の、本体部の膨張部を覆っている車輪の内周面に設けられた凸状部が、本体部の膨張部に接触して衝撃力を本体部の膨張部に分散することで、車輪の内周面と本体部の膨張部との間で緩衝材の役割を果たすので、車輪と本体部の膨張部の破損を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施の形態に係る無人探査車を示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る無人探査車を示す平面図である。
【
図4】
図3の2点鎖線で囲まれた部分の拡大図である。
【
図5】
図1ないし
図4で示された無人探査車1の本体部10のみの斜視図である。
【
図6】
図5の実施の形態のバリエーションの無人探査車1の本体部10のみの斜視図である。
【
図7】
図1の無人探査車1の車輪20のみの斜視図である。
【
図8】本発明にかかる無人探査車1に設けられた突起17を備えていない無人探査車3について
図3と同様に作成した断面図である。
【
図9】
図8の2点鎖線からなる円に囲まれた部分の拡大図である。
【
図10】
図8で示された無人探査車3の本体部30のみの斜視図である。
【
図11】
図8で示された無人探査車3の車輪40のみの斜視図である。
【
図12】本発明にかかる無人探査車1に設けられた突起17を備えていない無人探査車3が地面90に落下し着地した状態について
図3と同様に作成した断面図である。
【
図13】本発明にかかる無人探査車1に設けられた突起17を備えていない無人探査車3が地面90に落下し着地した後の状態について
図3と同様に作成した断面図である。
【
図14】
図3ないし
図7の構成の無人探査車1が鉛直方向に落下して、地面90に着地した状態について
図3と同様に作成した断面図である。
【
図15】本発明にかかる無人探査車1が地面90に落下し着地した後の状態について
図3と同様に作成した断面図である。
【
図16】本発明に係る無人探査車の第2の実施の形態について
図3と同様に作成した断面図である。
【
図17】
図16の2点鎖線からなる円に囲まれた部分の拡大図である。
【
図18】
図16で示された無人探査車5の本体部50のみの斜視図である。
【
図19】
図16で示された無人探査車5の車輪60のみの斜視図である。
【
図20】
図16の実施の形態のバリエーションの無人探査車5の車輪60のみの斜視図である。
【
図21】
図16ないし
図20の構成の無人探査車5が鉛直方向に落下して、地面90に着地した状態について
図3と同様に作成した断面図である。
【
図22】本発明にかかる無人探査車5が地面90に落下し着地した後の状態について
図3と同様に作成した断面図である。
【
図23】本発明に係る無人探査車の第3の実施の形態について
図4と同様に作成した断面図であり、前方から見た断面が示されている。
【
図24】本発明に係る無人探査車の第3の実施の形態についてのバリエーションを
図4と同様に作成した断面図であり、前方から見た断面が示されている。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係る無人探査車の実施の形態について、
図1~24を参照して説明する。
【0021】
また、以下の説明に於いて、水平面に対して垂直な鉛直方向を「上下方向」といい、水平面と同一の方向を「水平方向」というものする。また、無人探査車1には車輪20が設けられているが、車輪20の回転軸方向を「幅方向」といい、車輪20の回転軸方向に対して垂直な水平面方向を「前後方向」というものとする。また、幅方向に於いて、無人探査車1の中心部側(中心に近い側)を「内側」といい、無人探査車1の端部側(中心から遠い側)を「外側」というものとする。さらに、無人探査車1は接地体19のある側を「後方」というものとし、その反対側を「前方」というものとする。
【0022】
図1は、本発明に係る無人探査車の第1の実施の形態の斜視図であり、無人探査車1の全体が示されている。
【0023】
図1において、本体部10は、薄板状の部材で囲われた容器体として形成されている。本体部10の中央領域には、幅方向に平行に伸びる略円筒状の中央部11が形成され、中央部11の幅方向両端領域には、中央部11よりも大なる径の略球状の一対の膨張部12が形成されている。車輪20は中空構造で、内側向きに開口部26が設けられ、膨張部12を覆うように形成されている。なお、接地体19は、不整地との接触面圧を常に適切に保ちつつ、不整地との接触抵抗を抑制して、不整地での走行性能を向上させるものである。
【0024】
図2は、本発明に係る無人探査車1の平面図であり、
図3は、
図2のA―A’線断面図であり、前方から見た断面が示されている。
【0025】
図3で示されるように、車輪20は中空構造で、車輪20の開口部26は本体部10の中央部11寄りにあり、車輪20は内周面21で膨張部12を覆うように形成されている。駆動モーター14は、膨張部12の内部に配置され、駆動モーター14の回転動力は、車軸13に伝達される。車軸13は、膨張部12の一端に設けられた側面12bを貫通して、側面12bから幅方向外側に突出している。車軸嵌入部22は、車軸13が側面12bを貫通して、側面12bから幅方向外側に突出し、車輪20に嵌入されている部分である。また、膨張部12の内部には、駆動モーター14に電力を供給するバッテリー16が設置されている。駆動モーター14、及び、バッテリー16は、膨張部12の内部に配置されている。すなわち、膨張部12は、無人探査車1の比較的重量の大きい部品を内蔵している。
【0026】
図3で示されるように、車軸13、駆動モーター14は、それぞれ左右一対で左右対称に設けられており、一対の車軸13の回転軸は同軸に配置されている。なお、一対の車軸13の回転軸は、一対の車輪20の回転軸でもあり、以下の説明に於いて、この車軸13の回転軸を単に「回転軸」というものとする。
【0027】
図4は、
図3の2点鎖線からなる円に囲まれた部分の拡大図であり、
図3の車輪20の内周面21、及び、膨張面12aに設けられた突起17の位置関係が示されている。
【0028】
図4で示されるように、正の曲率の曲面で形成される膨張部12の外周面である膨張面12aの一部には、頂部が略平面状に形成された突起17が設けられている。車輪20の内周面21と膨張面12aとの間の間隔を膨張面・内周面間隔23というものとする。突起17の頂部と車輪20の内周面21との間の間隔を突起・内周面間隔24というものとする。突起17は、膨張面12aの車輪20の内周面21の負曲面25に対向する部分と、膨張面12aの車輪20の内周面21の開口部26の開口部周縁部26a寄りの部分に対向する部分とに、回転軸の周方向に沿って設けられている。
【0029】
図3及び
図4における実施の形態において、このように構成することにより、車輪20の外部から強い衝撃が加えられても、膨張面・内周面間隔23より突起・内周面間隔24の間隔が小さいことによって衝撃が分散されるため、内周面21と突起17が衝突したときでも大きな衝撃を生じにくい。
【0030】
図5は、
図1ないし
図4で示された無人探査車1の本体部10のみの斜視図である。
図6は、
図5の実施の形態のバリエーションの無人探査車1の本体部10のみの斜視図である。
【0031】
図5に示すように、突起17aは膨張面12aに突出する略楕円柱状に形成され、
図4に示す内周面21の、開口部周縁部26aに沿った部分に対向する部分と、負曲面25に対向する部分とに、回転軸の周方向に沿って、所定の間隔をあけて設けられている。このように構成することにより、突起17全体の重量が抑制されながら、
図3に示す車輪20の外部から伝えられる衝撃が、略楕円柱状の突起17aを介して内周面21と膨張面12aとに分散されるため、
図3に示す内周面21や膨張面12aの破損を防ぐことができる。また、このように構成することで、車輪20の内周面21と本体部10の膨張面12aとの間に侵入した砂を排出させることができる。
【0032】
図6に示すように、突起17bは膨張面12aに突出するように形成され、
図4に示す車輪20の内周面21の、開口部周縁部26aに沿った部分に対向する部分と、負曲面25に対向する部分とに、回転軸の周方向に沿って、一体連続に設けられている。このように構成することにより、
図3に示す車輪20の外部から伝えられる衝撃が分散されるとともに、突起17bの形成が容易で、膨張部12の強度が補強される。
【0033】
図7は、
図1の無人探査車1の車輪20のみの斜視図である。車輪20は、内側向きに開口部26が設けられ、
図5・
図6の本体部10の膨張部12を覆うように形成されている。
【0034】
図8は、本発明にかかる無人探査車1に設けられた突起17を備えていない無人探査車3について
図3と同様に作成した断面図であり、前方から見た断面が示されている。
図9は、
図8の2点鎖線からなる円に囲まれた部分の拡大図である。車輪40の内周面41と膨張面32aとの間の間隔を膨張面・内周面間隔43というものとする。
【0035】
図10は、
図8で示された無人探査車3の本体部30のみの斜視図である。
図11は、
図8で示された無人探査車3の車輪40のみの斜視図である。
図11の車輪40は、内側向きに開口部46が設けられ、
図10の本体部30の膨張部32を覆うように形成されている。
【0036】
図12は、本発明にかかる無人探査車1に設けられた突起17を備えていない無人探査車3が地面90に落下し着地した状態について
図3と同様に作成した断面図であり、前方から見た断面が示されている。落下により本体30に生じた衝撃力91が本体30から、車軸33が車輪40に嵌入されている部分である車輪嵌入部42を介して車輪40に伝わり、衝撃力92が車輪40に生じる。
【0037】
図13は、本発明にかかる無人探査車1に設けられた突起17を備えていない無人探査車3が地面90に落下し着地した後の状態について
図3と同様に作成した断面図であり、前方から見た断面が示されている。衝撃力92と、着地した地面90から車輪40に生じる反力93とが合わさって、車輪40下部に横力94が生じる。横力94は車軸嵌入部42を支点として車輪40上部に横力95として伝わり、車輪40下部の内周面41はこの横力95が車軸嵌入部42を支点として伝わってきた力と反力93との合成により強く膨張面32aに衝突し、その衝撃で車輪40に亀裂47が生じる。また、この衝撃の力により膨張面32aが破損することにもつながる。車輪40に弾性率の小さい素材を使用すると、車輪40が柔軟になるが、走行中に車輪40に歪みが生じやすくなり、その結果、内周面41と膨張面32aの間に摩擦が生じやすくなって、走行性が低下することになってしまう。
【0038】
図14は、
図3ないし
図7の構成の無人探査車1が鉛直方向に落下して、地面90に着地した状態について
図3と同様に作成した断面図であり、前方から見た断面が示されている。落下により本体部10に生じた衝撃力91が本体部10から、車軸13が車輪20に嵌入されている部分である車輪嵌入部22を介して車輪20に伝わり、衝撃力92が車輪20に生じる。
【0039】
図15は、本発明にかかる無人探査車1が地面90に落下し着地した後の状態について
図3と同様に作成した断面図であり、前方から見た断面が示されている。衝撃力92と、着地した地面90から車輪20に生じる反力93とが合わさって、車輪20下部に横力94が生じる。横力94は車軸嵌入部22を支点として車輪上部に横力95として伝わり、車輪20下部の内周面21はこの横力95が車軸嵌入部22を支点として伝わってきた力と反力93との合成により膨張面12aに衝突する方向に動く。しかし
図4に示すように膨張面・内周面間隔23より突起・内周面間隔24の間隔が小さいことによって衝突の衝撃力は分散され、大きな衝撃とはならないので、亀裂などは生じることがない。なお、無人探査車1が傾いて落下した場合においても、一方の車輪20でほぼ同様の事象が生じるため、車輪20に大きな衝撃は生じないので、亀裂などは生じることがない。
【0040】
図16は、本発明に係る無人探査車の第2の実施の形態について
図3と同様に作成した断面図であり、前方から見た断面が示されている。
図17は、
図16の2点鎖線からなる円に囲まれた部分の拡大図であり、膨張面52aと、車輪60の内周面61、及び、内周面61に設けられた突起62の位置関係が示されている。膨張面52aと内周面61の間の間隔を膨張面・内周面間隔63と、突起62の頂部と膨張面52aとの間の間隔を膨張面・突起間隔64というものとする。
【0041】
図18は、
図16で示された無人探査車5の本体部50のみの斜視図である。
図19は、
図16で示された無人探査車5の車輪60のみの斜視図である。
図19において車輪53は、
図18の本体部50の膨張部52を覆うように形成されている。
図20は
図19の実施の形態のバリエーションの無人探査車5の本体部50のみの斜視図である。
【0042】
図19において、車輪60の内周面61の一部には頂部が略平面状に形成された突起62aが設けられている。突起62aは、内周面61の開口部周縁部66aに沿った部分と、内周面61の膨張面52aと対向する部分とに、回転軸の周方向に沿って、所定の間隔をあけて形成されている。このように構成することにより、突起62aの緩衝効果を保ちつつ突起全体の軽量化を図ることができる。また、このように構成することで、車輪60の内周面61と本体部50の膨張面52aとの間に侵入した砂を排出させることができる。
【0043】
図20においては、突起62bは、内周面61の、開口部周縁部66aに沿った部分と、膨張面52aと対向する部分に、回転軸の周方向に沿って、連続一体に形成されている。この構成においては、突起62bが竜骨のような役割を果たし、車輪の強度を補強することができる。
【0044】
図21は、
図16ないし
図20の構成の無人探査車5が鉛直方向に落下して、地面90に着地した状態について
図3と同様に作成した断面図であり、前方から見た断面が示されている。落下により本体50に生じた衝撃力91が本体50から、車軸53が車輪60に嵌入されている部分である車輪嵌入部67を介して車輪60に伝わり、衝撃力92が車輪60に生じる。
【0045】
図22は、本発明にかかる無人探査車5が地面90に落下し着地した後の状態について
図3と同様に作成した断面図であり、前方から見た断面が示されている。衝撃力92と、着地した地面90から車輪60に生じる反力93とが合わさって、車輪60下部に横力94が生じる。横力94は車軸嵌入部67を支点として車輪上部に横力95として伝わり、車輪60下部の内周面61はこの横力95が車軸嵌入部67を支点として伝わってきた力と反力93との合成により膨張面52aに衝突する方向に動く。しかし
図17に示すように膨張面・内周面間隔63より突起・内周面間隔64の間隔が小さいことによって、衝突の衝撃力は分散され、大きな衝撃を生じないので、亀裂などは生じることがない。なお、無人探査車5が傾いて落下した場合においても、一方の車輪60でほぼ同様の事象が生じるため、車輪60に大きな衝撃は生じないので、亀裂などは生じることがない。
【0046】
図23及び
図24は、本発明に係る無人探査車の第3の実施の形態について
図4と同様に作成した断面図であり、前方から見た断面が示されている。それぞれの図に、本体部の膨張面72aと、車輪80の内周面81、及び、膨張面72aに設けられた突起77と、内周面81に設けられた突起82の位置関係が示されている。
【0047】
この実施の形態においても、第1の実施の形態、第2の実施の形態と同様の作用効果により、無人探査車が落下しても破損が生じにくい。
【0048】
さらに、本発明に係る無人探査車においては、上記の突起の頂部とその対向する面との間隔が、0.3mmないし0.7mm、又は、0.2mmないし0.8mmであるか、又は、凸状部の先端とその対向する面との間の間隔が車輪直径の0.2%ないし0.8%であるように形成されていることが望ましい。
【0049】
この間隔より広い場合、無人探査車が落下等の外部からの衝撃を受けたときに、突起の頂部とその対向する面との間隔が広すぎて衝撃を分散できず破損につながり、これより狭い場合、突起の頂部とその対向面が容易に接触してしまい、走行性能の低下を招くからである。さらに、最適には、0.4mmないし0.6mm、又は、凸状部の先端とその対向する面との間の間隔が車輪直径の0.4%ないし0.6%であるようにあるように形成されていることが望ましい。
【0050】
なお、本発明は、上述した実施の形態で説明した構造には限定されず、実施の形態を適宜変形、変更し得るものであり、本発明の技術的範囲は、この具体的態様に限定されるものではない。
【0051】
例えば、膨張面に形成された突起は、必ずしも軸方向に対する周方向に沿わなくてもよい。突起を車輪の内周面に形成する場合、突起を等分配置しないと、車輪重心が回転軸とずれて、回転アンバランスを生じるが、突起を本体部の外周面に設置する場合は、突起の配置を等分に限らず、自由に配置しても回転アンバランスの問題は生じない。
【符号の説明】
【0052】
1…無人探査車、3…無人探査車、5…無人探査車、7…無人探査車、10…本体部、11…中央部、12…膨張部、12a…膨張面、12b…側面、13車軸、14…駆動モーター、16…バッテリー、17…突起、17a…突起(断続)、17b…突起(連続)、19…接地体、20…車輪、21…内周面、22…車軸嵌入部、23…膨張面・内周面間隔、24…突起・内周面間隔、25…負曲面、26…開口部、26a…開口部周縁部、30…本体部、32…膨張部、32a…膨張面、32b…側面、33車軸、40…車輪、41…内周面、42…車軸嵌入部、43…膨張面・内周面間隔、46…開口部、47…亀裂、50…本体部、51…中央部、52…膨張部、52a…膨張面、52b…側面、53車軸、54…駆動モーター、55…軸受、56…バッテリー、57…突起、57a…突起(断続)、57b…突起(連続)、60…車輪、61…内周面、62…車軸嵌入部、63…膨張面・内周面間隔、64…膨張面・突起間隔、65…負曲面、66…開口部、66a…開口部周縁部、67…車軸嵌入部、72a…膨張面、77…突起、80…車輪、81…内周面、82…突起、83…膨張面・内周面間隔、84a…膨張面・突起間隔、84b…突起・内周面間隔、90…地面 91…衝撃力 92…衝撃力、93…反力、94…横力 95…横力