(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】リーク電流を低減可能なIII族窒化物トランジスタ構造及びその作製方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/338 20060101AFI20240618BHJP
H01L 29/812 20060101ALI20240618BHJP
H01L 29/778 20060101ALI20240618BHJP
H01L 21/337 20060101ALI20240618BHJP
H01L 29/808 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
H01L29/80 E
H01L29/80 H
H01L29/80 Q
H01L29/80 C
(21)【出願番号】P 2022568406
(86)(22)【出願日】2022-03-03
(86)【国際出願番号】 CN2022078927
(87)【国際公開番号】W WO2023115701
(87)【国際公開日】2023-06-29
【審査請求日】2022-11-09
(31)【優先権主張番号】202111577242.3
(32)【優先日】2021-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516082763
【氏名又は名称】中国科学院蘇州納米技術与納米▲ファン▼生研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】魏 星
(72)【発明者】
【氏名】張 暁東
(72)【発明者】
【氏名】趙 徳勝
(72)【発明者】
【氏名】張 宝順
【審査官】岩本 勉
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-2114157(KR,B1)
【文献】特開2012-104599(JP,A)
【文献】特開2012-109444(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/778
H01L 29/812
H01L 29/808
H01L 21/338
H01L 21/337
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リーク電流を低減可能なIII族窒化物トランジスタ構造であって、
高抵抗材料及び/又は介在層を介して電気的に分離される、積層された第1ヘテロ接合と第2ヘテロ接合と、
前記第1ヘテロ接合と組み合わせられる第1電極、第2電極及び第1ゲートであって、前記第1電極と第2電極が第1ヘテロ接合内の第1二次元電子ガスを介して電気的に接続されるとともに、前記第1ゲートと第1ヘテロ接合との間に第3半導体が設けられ、前記第3半導体がその下方に位置する前記第1二次元電子ガスの一部を空乏化し、前記第1ゲートがさらに第1電極に電気的に接続される第1電極、第2電極及び第1ゲートと、
前記第2ヘテロ接合と組み合わせられるソース、ドレイン及び第2ゲートであって、前記ソースとドレインが第2ヘテロ接合内の第2二次元電子ガスを介して電気的に接続され、前記ソースとドレインがさらに前記第1ゲートと第2電極にそれぞれ電気的に接続されるとともに、前記第2ゲートと第2ヘテロ接合との間に第6半導体が設けられ、前記第6半導体がその下方に位置する前記第2二次元電子ガスの一部を空乏化するソース、ドレイン及び第2ゲートと、を含むことを特徴とするIII族窒化物トランジスタ構造。
【請求項2】
所定の方向に順次成長させて成形された第1半導体、第2半導体、高抵抗材料層又は介在層、第4半導体、第5半導体を含み、
所定の方向に順次成長させて形成された第4半導体、第5半導体、高抵抗材料層又は介在層、第1半導体、第2半導体を含み、
所定の方向に順次成長させて形成された第1半導体、第2半導体、高抵抗材料層、介在層、第4半導体、第5半導体を含み、又は
所定の方向に順次成長させて形成された第4半導体、第5半導体、高抵抗材料層、介在層、第1半導体、第2半導体を含み、
前記第1半導体と第2半導体は組み合わせられて第1ヘテロ接合を形成し、前記第4半導体と第5半導体は組み合わせられて第2ヘテロ接合を形成することを特徴とする請求項1に記載のIII族窒化物トランジスタ構造。
【請求項3】
前記高抵抗材料層は連続した第3半導体層の第1領域が転化したものであり、前記第3半導体は前記第3半導体層の第2領域内に分布しており、又は、
前記第3半導体は連続した高抵抗材料層の第2領域が転化したものであり、前記高抵抗材料は前記高抵抗材料層の第1領域内に分布していることを特徴とする請求項2に記載のIII族窒化物トランジスタ構造。
【請求項4】
前記第3半導体はp型
III族窒化物、p型多結晶シリコン、p型モルファスシリコン、p型酸化物、p型ダイヤモンド又はp型半導体重合体を含み
、前記p型III族窒化物はp型GaN、p型AlGaN、p型InGaN又はp型InNを含み、
前記高抵抗材料は高抵抗GaN、高抵抗AlGaN、高抵抗Ga
2O
3、高抵抗InGaN又は高抵抗InNを含むことを特徴とする請求
項3に記載のIII族窒化物トランジスタ構造。
【請求項5】
前記第3半導体は間隔を空けて設けられた複数の長尺状p型半導体を含み、前記複数の長尺状p型半導体はアレイ状に分布していことを特徴とする請求項4に記載のIII族窒化物トランジスタ構造。
【請求項6】
前記第3半導体のドープ濃度は10
16
~10
20
cm
-3
であり、前記第3半導体の厚さは10nm~500nmであることを特徴とする請求項4に記載のIII族窒化物トランジスタ構造。
【請求項7】
前記高抵抗材料層は連続した第6半導体層の第3領域が転化したものであり、前記第6半導体は前記第6半導体層の第4領域内に分布しており、又は、
前記第6半導体は連続した高抵抗材料層の第4領域が転化したものであり、前記高抵抗材料は前記高抵抗材料層の第3領域内に分布していることを特徴とする請求項2に記載のIII族窒化物トランジスタ構造。
【請求項8】
前記第6半導体はp型
III族窒化物、p型多結晶シリコン、p型モルファスシリコン、p型酸化物、p型ダイヤモンド又はp型半導体重合体を含み
、前記p型III族窒化物はp型GaN、p型AlGaN、p型InGaN又はp型InNを
含むことを特徴とする請求項
7に記載のIII族窒化物トランジスタ構造。
【請求項9】
前記高抵抗材料は高抵抗GaN、高抵抗AlGaN、高抵抗Ga
2
O
3
、高抵抗InGaN又は高抵抗InNを含むことを特徴とする請求項2、3または7に記載のIII族窒化物トランジスタ構造。
【請求項10】
前記高抵抗材料層は前記第3半導体と第2電極との間に分布しており、前記第3半導体はさらに前記高抵抗材料を介して第2電極と電気的に分離され、又は、
前記高抵抗材料層は前記第6半導体とソース、ドレインとの間に分布しており、前記第6半導体はさらに前記高抵抗材料を介してソース、ドレインと電気的に分離さ
れることを特徴とする請求項2に記載のIII族窒化物トランジスタ構造。
【請求項11】
前記第6半導体上に二次元材料がさらに設けられ、前記ソース及びドレインは前記二次元材料上に設けられ、
又は、前記第3半導体上に二次元材料が設けられ、
又は、前記二次元材料の層数は1~100層であり、前記二次元材料は単一種類の二次元材料又は二次元材料ヘテロ接合であり、前記二次元材料はグラフェン、MoS
2
、WS
2
のうちのいずれか1種又は2種以上の組み合わせを含むことを特徴とする請求項10に記載のIII族窒化物トランジスタ構造。
【請求項12】
前記介在層は金属層、誘電体層、二次元材料層のうちのいずれか1種を含み、
前記金属層は単層金属層又は積層された多層金属層を含み、前記金属層の材質はMo、Mg、Alのうちのいずれか1種を含み、前記金属層の厚さは2nm~10μmであり、
前記誘電体層の材質はAlN、BN、AlBN、AlPN、BCN、高抵抗AlGaN、高抵抗GaNのうちのいずれか1種を含み、前記誘電体層の厚さは0.5nm~1μmであり、
前記二次元材料層の材質はBN、グラフェン、フッ化グラフェン、酸化グラフェン、黒リンのうちのいずれか1種を含み、前記二次元材料層の厚さは0.5nm~500nmであることを特徴とする請求項2に記載のIII族窒化物トランジスタ構造。
【請求項13】
前記第2ヘテロ接合上に絶縁誘電体層がさらに設けられ、前記ソース、ドレインは前記絶縁誘電体層上に設けられ、
前記絶縁誘電体層の厚さは1~1000nmであり
、前記絶縁誘電体層の材質はSiO
2、AlN、Si
3N
4のうちのいずれか1種又は2種以上の組み合わせを
含むことを特徴とする請求項2に記載のIII族窒化物トランジスタ構造。
【請求項14】
前記第1半導体と第2半導体との間及び/又は第4半導体と第5半導体との間に第7半導体がさらに設けられ、
前記第1半導体及び第4半導体の材質はGaN又はGaAsを含み
、前記第2半導体及び第5半導体の材質はAlGaN又はAlGaAsを含み
、前記第7半導体の材質はAlNを含むことを特徴とする請求項2に記載のIII族窒化物トランジスタ構造。
【請求項15】
リーク電流を低減可能なIII族窒化物トランジスタ構造の作製方法であって、
所定の方向に積層された第1ヘテロ接合、高抵抗材料及び/又は介在層と第2ヘテロ接合を作製するステップであって、前記第1ヘテロ接合と第2ヘテロ接合は前記高抵抗材料及び/又は介在層を介して電気的に分離されるステップと、
第1ヘテロ接合と組み合わせられる第1電極、第2電極、第1ゲート及び第3半導体を作製するステップであって、前記第1電極と第2電極は前記第1ヘテロ接合内の第1二次元電子ガスを介して電気的に接続され、前記第3半導体は前記第1ゲートと第1ヘテロ接合との間に設けられ、前記第1ゲートはさらに第1電極に電気的に接続され、前記第3半導体はその下方に位置する前記第1二次元電子ガスの一部を空乏化するステップと、
第2ヘテロ接合と組み合わせられるソース、ドレイン、第2ゲート及び第6半導体を作製するステップであって、前記ソースとドレインは前記第2ヘテロ接合内の第2二次元電子ガスを介して電気的に接続され、前記第6半導体は前記第2ゲートと第2ヘテロ接合との間に設けられ、前記第6半導体はその下方に位置する前記第2二次元電子ガスの一部を空乏化するステップと、
前記第1ゲートとソースを電気的に接続し、前記第2電極とドレインを電気的に接続するステップと、を含むことを特徴とする作製方法。
【請求項16】
具体的には、
所定の方向に順次成長させて積層された第1半導体、第2半導体、高抵抗材料層又は介在層、第4半導体、第5半導体を含み、
所定の方向に順次成長させて積層された第4半導体、第5半導体、高抵抗材料層又は介在層、第1半導体、第2半導体を含み、
所定の方向に順次成長させて積層された第1半導体、第2半導体、高抵抗材料層、介在層、第4半導体、第5半導体を含み、又は
所定の方向に順次成長させて積層された第4半導体、第5半導体、高抵抗材料層、介在層、第1半導体、第2半導体を含み、
前記第1半導体と第2半導体は組み合わせられて第1ヘテロ接合を形成し、前記第4半導体と第5半導体は組み合わせられて第2ヘテロ接合を形成することを特徴とする請求項1
5に記載の作製方法。
【請求項17】
具体的には、第1領域と第2領域を含む連続した第3半導体層を前記第2半導体上に形成し、前記第1領域を転化処理して前記高抵抗材料層を形成するステップ、又は、第1領域と第2領域を含む連続した高抵抗材料層を前記第2半導体上に形成し、前記第2領域を転化処理して前記第3半導体を形成するステップを含むことを特徴とする請求項1
6に記載の作製方法。
【請求項18】
具体的には、第3領域と第4領域を含む連続した第6半導体層を前記第5半導体上に形成し、前記第3領域を転化処理して前記高抵抗材料層を形成するステップ、又は、第3領域と第4領域を含む連続した高抵抗材料層を前記第5半導体上に形成し、前記第4領域を転化処理して前記第6半導体を形成するステップを含むことを特徴とする請求項1
6に記載の作製方法。
【請求項19】
前記転化処理を行う方法は、Hイオン注入、Hプラズマ処理、Hドープアニーリング、Nイオン注入、Fイオン注入、Arイオン注入、Feイオン注入、Oプラズマ処理、熱酸化のうちのいずれか1種又は複数種の組み合わせを含み、及び/又は
前記第3半導体をパターン化処理して、前記第3半導体を長尺状アレイ構造に加工するステップをさらに含み、及び/又は、
前記第2半導体の特定領域に前記第3半導体及び高抵抗材料層をエピタキシャル成長させるステップ、又は、前記第5半導体の所定領域に前記第6半導体及び高抵抗材料層をエピタキシャル成長させるステップをさらに含
むことを特徴とする請求項1
7又は1
8に記載の作製方法。
【請求項20】
前記高抵抗材料層上に介在層を形成した後、前記介在層上に第1ヘテロ接合又は第2ヘテロ接合を作製するステップをさらに含み、及び/又は、
前記介在層は金属層、誘電体層、二次元材料層のうちのいずれか1種を含み、
前記金属層は単層金属層又は積層された多層金属層を含み、前記金属層の材質はMo、Mg、Alのうちのいずれか1種を含み、前記金属層の厚さは2nm~10μmであり、
前記誘電体層の材質はAlN、BN、AlBN、AlPN、BCN、高抵抗AlGaN、高抵抗GaNのうちのいずれか1種を含み、前記誘電体層の厚さは0.5nm~1μmであり、
前記二次元材料層の材質はBN、グラフェン、フッ化グラフェン、酸化グラフェン、黒リンのうちのいずれか1種を含み、前記二次元材料層の厚さは0.5nm~500nmであることを特徴とする請求項19に記載の作製方法。
【請求項21】
前記第3半導体はまた前記高抵抗材料を介して第2電極と電気的に分離され、又は、前記第6半導体はまた前記高抵抗材料を介してソース、ドレインと電気的に分離され、及び/又は、前記第3半導体と第6半導体はp型半導体であり、
前記p型半導体はp型III族窒化物
、p型多結晶シリコン、p型モルファスシリコン、p型酸化物、p型ダイヤモンド又はp型半導体重合体を含み、
前記p型III族窒化物はp型GaN、p型AlGaN、p型InGaN又はp型InNを含むことを特徴とする請求項1
6に記載の作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は2021年12月22日に提出された出願番号が202111577242.3、発明の名称が「リーク電流を低減可能なIII族窒化物トランジスタ構造及びその作製方法」である中国特許出願の優先権を主張している。
【0002】
(技術分野)
本願はトランジスタ構造に関し、特にリーク電流を低減可能なIII族窒化物トランジスタ構造及びその作製方法に関し、半導体の技術分野に属する。
【背景技術】
【0003】
III族窒化物(例えばGaN窒化ガリウム)は、大きなバンドギャップ、高い破壊電界強度、高い電子移動度、高い電子飽和ドリフト速度等の優れた材料特性を有し、次世代パワーエレクトロニクスシステムへの応用に非常に適していると考えられる。同期電圧降下又は電圧上昇コンバータのようなパワーエレクトロニクスシステムでは、トランジスタデバイスは必然的に逆導通状態で動作する。一方、GaN系高電子移動度トランジスタ(HEMT)では、バルクダイオードがないため、逆回復速度が速いが、ソース・ドレイン間の電圧降下がゲートバイアスに依存するため、Si系やSiC系のパワーデバイスに比べて高い値を達成し、電力損失をもたらしている。したがって、GaN HEMTの逆伝導能力を向上させることは、GaN系パワーエレクトロニクスシステムの電力損失をさらに低減するのに不可欠である。
【0004】
現在、いくつかの方法が報告されており、例えば、オンSi GaN HEMT構造では、基板Siを用いてショットキーダイオード(SBD)を作製し、HEMTのドレインをSBDのカソードと共通のものとするが、Si系SBDは材料特性の制限によりGaNの優位性を発揮することができず、また、信頼性などの問題をもたらし、ここで、HEMTとSBDや横方向整流器の交差構造は有効であるが、占有面積が大きくなるのは避けられない課題となっており、また、逆導通に必要なソース・ドレイン電圧降下はゲートバイアスに依存して、しかも数値が大きいので、高い消費電力を招く。横方向集積SBDは通常、リーク電流の増加、又はHEMTの順方向の導通抵抗の増加を引き起こす。垂直方向集積SBDはリーク電流による制御も容易ではなく、基板のSiショットキーダイオードと集積していることが報告されており、GaN材料の優位性を発揮できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願の主な目的は従来技術の欠陥を解決するために、リーク電流を低減可能なIII族窒化物トランジスタ構造及びその作製方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述発明目的を実現するために、本願が採用する技術的解決手段は以下を含む。
【0007】
本願の実施例の一態様は、
高抵抗材料及び/又は介在層を介して電気的に分離される、積層された第1ヘテロ接合及び第2ヘテロ接合と、
前記第1ヘテロ接合と組み合わせられる第1電極、第2電極及び第1ゲートであって、前記第1電極と第2電極が第1ヘテロ接合内の第1二次元電子ガスを介して電気的に接続されるとともに、前記第1ゲートと第1ヘテロ接合との間に第3半導体が設けられ、前記第3半導体がその下方に位置する前記第1二次元電子ガスの一部を空乏化し、前記第1ゲートがさらに第1電極に電気的に接続される第1電極、第2電極及び第1ゲートと、
前記第2ヘテロ接合と組み合わせられるソース、ドレイン及び第2ゲートであって、前記ソースとドレインが第2ヘテロ接合内の第2二次元電子ガスを介して電気的に接続され、前記ソースとドレインがさらに前記第1ゲートと第2電極にそれぞれ電気的に接続されるとともに、前記第2ゲートと第2ヘテロ接合との間に第6半導体が設けられ、前記第6半導体能がその下方に位置する前記第2二次元電子ガスの一部を空乏化するソース、ドレイン及び第2ゲートと、を含むリーク電流を低減可能なIII族窒化物トランジスタ構造を提供する。
【0008】
本願の実施例はまた、
所定の方向に積層された第1ヘテロ接合、高抵抗材料及び/又は介在層と第2ヘテロ接合を作製するステップであって、前記第1ヘテロ接合と第2ヘテロ接合は前記高抵抗材料及び/又は介在層を介して電気的に分離されるステップと、
第1ヘテロ接合と組み合わせられる第1電極、第2電極、第1ゲート及び第3半導体を作製するステップであって、前記第1電極と第2電極は前記第1ヘテロ接合内の第1二次元電子ガスを介して電気的に接続され、前記第3半導体は前記第1ゲートと第1ヘテロ接合との間に設けられ、前記第1ゲートはさらに第1電極に電気的に接続され、前記第3半導体はその下方に位置する前記第1二次元電子ガスの一部を空乏化するステップと、
第2ヘテロ接合と組み合わせられるソース、ドレイン、第2ゲート及び第6半導体を作製するステップであって、前記ソースとドレインは前記第2ヘテロ接合内の第2二次元電子ガスを介して電気的に接続され、前記第6半導体は前記第2ゲートと第2ヘテロ接合との間に設けられ、前記第6半導体はその下方に位置する前記第2二次元電子ガスの一部を空乏化するステップと、
前記第1ゲートとソースを電気的に接続し、前記第2電極とドレインを電気的に接続するステップと、を含むリーク電流を低減可能なIII族窒化物トランジスタ構造の作製方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
従来技術に比べて、本願の利点は以下のことを含む。
1)本願の実施例によるIII族窒化物トランジスタ構造では、ダイオードとトライオードが基板に垂直な方向に集積され、III族窒化物トランジスタのウエハに占める面積をより小さくし、デバイスの小型化により有利である。
2)本願の実施例によるIII族窒化物トランジスタ構造では、デバイスの全体構造に直接成長及びプロセス互換性などの特徴があり、デバイスの複雑さ及び製造コストが効果的に低下する。
3)本願の実施例によるIII族窒化物トランジスタ構造は、デバイスのリーク電流を効果的に削減させ、消費電力を低下させ、デバイスの信頼性や安定性を向上させることができる。
4)本願の実施例によるIII族窒化物トランジスタ構造は、プロセス互換性がより良好であり、より設計されやすい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1a】本願の実施例1によるリーク電流を低減可能なIII族窒化物トランジスタ構造の構造概略図である。
【
図1b】本願の実施例1によるリーク電流を低減可能なIII族窒化物トランジスタ構造及び従来のトランジスタのTCADシミュレーションテスト結果である。
【
図2a】本願の実施例1におけるリーク電流を低減可能なIII族窒化物トランジスタ構造の作製流れの構造概略図である。
【
図2b】本願の実施例1におけるリーク電流を低減可能なIII族窒化物トランジスタ構造の作製流れの構造概略図である。
【
図2c】本願の実施例1におけるリーク電流を低減可能なIII族窒化物トランジスタ構造の作製流れの構造概略図である。
【
図2d】本願の実施例1におけるリーク電流を低減可能なIII族窒化物トランジスタ構造の作製流れの構造概略図である。
【
図2e】本願の実施例1におけるリーク電流を低減可能なIII族窒化物トランジスタ構造の作製流れの構造概略図である。
【
図2f】本願の実施例1におけるリーク電流を低減可能なIII族窒化物トランジスタ構造の作製流れの構造概略図である。
【
図2g】本願の実施例1におけるリーク電流を低減可能なIII族窒化物トランジスタ構造の作製流れの構造概略図である。
【
図3】本願の実施例2によるリーク電流を低減可能なIII族窒化物トランジスタ構造の構造概略図である。
【
図4】本願の実施例3によるリーク電流を低減可能なIII族窒化物トランジスタ構造の構造概略図である。
【
図5】比較例1におけるデバイスの性能テスト結果である。
【
図6】比較例2におけるデバイスの性能テスト結果である。
【
図7】本願の実施例4によるリーク電流を低減可能なIII族窒化物トランジスタ構造の構造概略図である。
【
図8】本願の実施例5によるリーク電流を低減可能なIII族窒化物トランジスタ構造の構造概略図である。
【
図9】P型層内の正孔分布、H原子分布とp-GaN間隔との対応曲線である。
【
図10】P型層内の電界強度とp-GaN間隔との対応曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
従来技術の欠陥に対して、本発明者らは長期間の研究及び大量の実践を通じて、本願の技術的解決手段を提案している。以下、この技術的解決手段、その実施過程及び原理などについてさらに解釈して説明する。
【0012】
本願の実施例はリーク電流を低減可能なIII族窒化物トランジスタ構造を提供し、トランジスタ構造の伝導特性を向上させ、トランジスタ構造の逆導通電圧降下を低下させるために、本願の実施例はトランジスタとダイオードを並列接続したデバイス構造を提供する。デバイスのウエハに占める面積をできるだけ小さくするために、本願の実施例はトランジスタとダイオードを垂直に積層しており、垂直方向の集積を実現し、横方向における面積の増大の問題を回避する。さらに、リーク電流が増加するという問題を回避するために、本願の実施例は、HEMTデバイス構造と類似しており、かつプロセス互換性があるハイブリッド陽極ダイオード構造を採用し、該ダイオードは現場での高抵抗不動態化層(高抵抗材料として理解してもよい)を有するので、デバイスの表面のリーク電流を大幅に低減させる。また、GaNデバイスの優位性を発揮するために、本願の実施例はHEMTデバイス構造と類似しており、かつプロセス互換性があるハイブリッド陽極ダイオード構造を採用し、該ダイオードも横方向の整流デバイスとして、GaN材料とAlGaN/GaNヘテロ接合を基本的な構造とする。
【0013】
本願の実施例では、第1ヘテロ接合と第2ヘテロ接合は高抵抗材料及び/又は介在層を介して電気的に分離され、該介在層はまた応力を減少させることができ、本発明者らは研究した結果、エピタキシャル対象の材料構造の厚さが大きいが、厚いエピタキシャル材料構造によりサンプルに割れ等が発生することから、材料エピタキシャルでは垂直方向の集積が実現されにくく、一方、第1ヘテロ接合と第2ヘテロ接合との間に介在層が設けられるとサンプル割れの問題を効果的に緩和できることを見出した。
【0014】
本願の実施例の一態様は、
高抵抗材料及び/又は介在層を介して電気的に分離される、積層された第1ヘテロ接合と第2ヘテロ接合と、
前記第1ヘテロ接合と組み合わせられる第1電極、第2電極及び第1ゲートであって、前記第1電極と第2電極が第1ヘテロ接合内の第1二次元電子ガスを介して電気的に接続されるとともに、前記第1ゲートと第1ヘテロ接合との間に第3半導体が設けられ、前記第3半導体がその下方に位置する前記第1二次元電子ガスの一部を空乏化し、前記第1ゲートがさらに第1電極に電気的に接続される第1電極、第2電極及び第1ゲートと、
前記第2ヘテロ接合と組み合わせられるソース、ドレイン及び第2ゲートであって、前記ソースとドレインが第2ヘテロ接合内の第2二次元電子ガスを介して電気的に接続され、前記ソースとドレインがさらに前記第1ゲートと第2電極にそれぞれ電気的に接続されるとともに、前記第2ゲートと第2ヘテロ接合との間に第6半導体が設けられ、前記第6半導体がその下方に位置する前記第2二次元電子ガスの一部を空乏化するソース、ドレイン及び第2ゲートと、を含むリーク電流を低減可能なIII族窒化物トランジスタ構造を提供する。
【0015】
1つの特定実施形態では、前記III族窒化物トランジスタ構造は所定の方向に順次成長させて形成された第1半導体、第2半導体、高抵抗材料層又は介在層、第4半導体、第5半導体を含み、所定の方向に順次成長させて形成された第4半導体、第5半導体、高抵抗材料層又は介在層、第1半導体、第2半導体を含み、所定の方向に順次成長させて形成された第1半導体、第2半導体、高抵抗材料層、介在層、第4半導体、第5半導体を含み、又は、所定の方向に順次成長させて形成された第4半導体、第5半導体、高抵抗材料層、介在層、第1半導体、第2半導体を含み、
前記第1半導体と第2半導体は組み合わせられて第1ヘテロ接合を形成し、前記第4半導体と第5半導体は組み合わせられて第2ヘテロ接合を形成する。
【0016】
1つの特定実施形態では、前記高抵抗材料層は連続した第3半導体層の第1領域が転化したものであり、前記第3半導体は前記第3半導体層の第2領域内に分布しており、又は、
前記第3半導体は連続した高抵抗材料層の第2領域が転化したものであり、前記高抵抗材料は前記高抵抗材料層の第1領域内に分布している。
【0017】
1つの特定実施形態では、前記第3半導体はp型半導体である。
【0018】
1つの特定実施形態では、前記第3半導体の材質はp型ワイドバンドギャップ半導体を含む。
【0019】
1つの特定実施形態では、前記p型ワイドバンドギャップ半導体はp型III族窒化物を含む。
【0020】
1つの特定実施形態では、前記p型III族窒化物はp型GaN、p型AlGaN、p型InGaN又はp型InN等を含む。
【0021】
1つの特定実施形態では、前記p型半導体はp型多結晶シリコン、p型モルファスシリコン、p型酸化物、p型ダイヤモンド又はp型半導体重合体等を含む。
【0022】
1つの特定実施形態では、前記第3半導体は間隔を空けて設けられた複数の長尺状p型半導体を含み、該複数の長尺状p型半導体はアレイ状に分布している。
【0023】
1つの特定実施形態では、前記第3半導体のドープ濃度は1016~1020cm-3である。
【0024】
1つの特定実施形態では、前記第3半導体の厚さは10nm~500nmである。
【0025】
1つの特定実施形態では、前記高抵抗材料は高抵抗GaN、高抵抗AlGaN、高抵抗Ga2O3、高抵抗InGaN又は高抵抗InN等を含む。
【0026】
1つの特定実施形態では、前記高抵抗材料層は連続した第6半導体層の第3領域が転化したものであり、前記第6半導体は前記第6半導体層の第4領域内に分布しており、
又は、前記第6半導体は連続した高抵抗材料層の第4領域が転化したものであり、前記高抵抗材料は前記高抵抗材料層の第3領域内に分布している。
【0027】
1つの特定実施形態では、前記第6半導体はp型半導体である。
【0028】
1つの特定実施形態では、前記第6半導体の材質はp型ワイドバンドギャップ半導体を含む。
【0029】
1つの特定実施形態では、前記p型ワイドバンドギャップ半導体はp型III族窒化物を含む。
【0030】
1つの特定実施形態では、前記p型III族窒化物はp型GaN、p型AlGaN、p型InGaN又はp型InN等を含む。
【0031】
1つの特定実施形態では、前記p型半導体はp型多結晶シリコン、p型モルファスシリコン、p型酸化物、p型ダイヤモンド又はp型半導体重合体等を含む。
【0032】
1つの特定実施形態では、前記高抵抗材料は高抵抗GaN、高抵抗AlGaN、高抵抗Ga2O3、高抵抗InGaN又は高抵抗InN等を含む。
【0033】
1つの特定実施形態では、前記高抵抗材料層は前記第3半導体と第2電極との間に分布しており、前記第3半導体はさらに前記高抵抗材料を介して第2電極と電気的に分離され、又は、
前記高抵抗材料層は前記第6半導体とソース、ドレインとの間に分布しており、前記第6半導体はさらに前記高抵抗材料を介してソース、ドレインと電気的に分離される。
【0034】
1つの特定実施形態では、前記介在層は金属層、誘電体層、二次元材料層のうちのいずれか1種を含む。
【0035】
1つの特定実施形態では、前記金属層は単層金属層又は積層された多層金属層を含み、前記金属層の材質はMo、Mg、Alのうちのいずれか1種を含むが、これらに限定されない。
【0036】
1つの特定実施形態では、前記金属層の厚さは2nm~10μmである。
【0037】
1つの特定実施形態では、前記誘電体層の材質はAlN、BN、AlBN、AlPN、BCN、高抵抗AlGaN、高抵抗GaNのうちのいずれか1種を含むが、これらに限定されない。
【0038】
1つの特定実施形態では、前記誘電体層の厚さは0.5nm~1μmである。
【0039】
1つの特定実施形態では、前記二次元材料層の材質はBN、グラフェン、フッ化グラフェン、酸化グラフェン、黒リンのうちのいずれか1種を含むが、これらに限定されない。
【0040】
1つの特定実施形態では、前記二次元材料層の厚さは0.5nm~500nmである。
【0041】
1つの特定実施形態では、前記第2ヘテロ接合上に絶縁誘電体層がさらに設けられ、前記ソース、ドレインは前記絶縁誘電体層上に設けられる。
【0042】
1つの特定実施形態では、前記絶縁誘電体層の厚さは1~1000nmである。
【0043】
1つの特定実施形態では、前記絶縁誘電体層の材質はSiO2、AlN、Si3N4のうちのいずれか1種又は2種以上の組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0044】
1つの特定実施形態では、前記第6半導体上に二次元材料がさらに設けられ、前記ソース及びドレインは前記二次元材料上に設けられる。
【0045】
1つの特定実施形態では、前記第3半導体上に二次元材料が設けられる。
【0046】
1つの特定実施形態では、前記二次元材料の層数は1~100層である。
【0047】
1つの特定実施形態では、前記二次元材料は単一種類の二次元材料又は二次元材料ヘテロ接合である。
【0048】
1つの特定実施形態では、前記二次元材料はグラフェン、MoS2、WS2のうちのいずれか1種又は2種以上の組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0049】
1つの特定実施形態では、前記第1半導体と第2半導体との間及び/又は第4半導体と第5半導体との間に第7半導体がさらに設けられる。
【0050】
1つの特定実施形態では、前記第1半導体、第2半導体、第4半導体及び第5半導体の材質は全てIII-V族化合物から選ばれる。
【0051】
1つの特定実施形態では、前記第1半導体及び第4半導体の材質はGaN又はGaAsを含むが、これらに限定されない。
【0052】
1つの特定実施形態では、前記第2半導体及び第5半導体の材質はAlGaN又はAlGaAsを含むが、これらに限定されない。
【0053】
1つの特定実施形態では、前記第7半導体の材質はAlNを含むが、これらに限定されない。
【0054】
1つの特定実施形態では、前記第1ヘテロ接合は第1電極、第2電極と組み合わせられてダイオードを形成し、前記第2ヘテロ接合はソース、ドレイン、ゲートと連結してトランジスタ(トライオードとして理解してもよい。下同)を形成し、前記第1電極は陽極であってもよく、前記第2電極は陰極であってもよい。
【0055】
1つの特定実施形態では、前記第3半導体は、p型ドープ濃度を低く設定する及び/又はp型材料の厚さを小さくすることで、2DEGチャネル1に対する制御を低減させ、ダイオードの導通電圧降下を低下させてもよく、ダイオードの導通電圧降下が低下すると、トランジスタが逆導通すれば、ダイオードは優先的に導通し、すなわち、第1ヘテロ接合内の第1二次元電子ガスで形成される第1通道は先に導通し、このため、トランジスタのうち逆導通するソース・ドレインの電圧降下が低下する。
【0056】
1つの特定実施形態では、前記第1電極とソースとの電気的接続はチップにおける金属を介した相互接続であってもよいし、外部回路が金属を介して接続されてもよい。前記第2電極とドレインとの電気的接続はチップにおける金属を介した相互接続であってもよいし、外部回路が金属を介して接続されてもよい。
【0057】
1つの特定実施形態では、前記ゲートの厚さは10~1000nmであり、前記ゲートの材質はTi、Al、Ni、Au、Cr、Pt、Mo、Pd等のうちのいずれか1種又は2種以上の組み合わせであってもよく、例えば、Ni/Au、Mo/Au、Cr/Au、Pd/Auからなる群から選ばれてもよいが、これらに限定されない。前記第1電極、第2電極、ソース、ドレインの厚さは10~1000nmであってもよく、前記第1電極、第2電極、ソース、ドレインの材質はAu、Cr、Pt、Ag、Ti、Al、TiNのうちのいずれか1種又は2種以上で形成される合金であってもよく、例えば、Ti/Al/Ni/Au、Ti/Al/Ti/Au、Ti/Al/Ti/TiNからなる群から選ばれてもよいが、これらに限定されない。
【0058】
1つの特定実施形態では、前記第1ヘテロ接合又は第2ヘテロ接合は基板上に形成され、かつ、前記第1ヘテロ接合又は第2ヘテロ接合と基板との間に緩衝層がさらに分布している。
【0059】
なお、前記トランジスタは垂直方向にダイオード上に積層されてもよく、又は、前記ダイオードは垂直方向にトランジスタ上に積層されてもよく、両方の垂直方向の相対位置は互いに交換され得る。
【0060】
本願の実施例はまた、
所定の方向に積層された第1ヘテロ接合、高抵抗材料及び/又は介在層と第2ヘテロ接合を作製するステップであって、前記第1ヘテロ接合と第2ヘテロ接合は前記高抵抗材料及び/又は介在層を介して電気的に分離されるステップと、
第1ヘテロ接合と組み合わせられる第1電極、第2電極、第1ゲート及び第3半導体を作製するステップであって、前記第1電極と第2電極は前記第1ヘテロ接合内の第1二次元電子ガスを介して電気的に接続され、前記第3半導体は前記第1ゲートと第1ヘテロ接合との間に設けられ、前記第1ゲートはさらに第1電極に電気的に接続され、前記第3半導体はその下方に位置する前記第1二次元電子ガスの一部を空乏化するステップと、
第2ヘテロ接合と組み合わせられるソース、ドレイン、第2ゲート及び第6半導体を作製するステップであって、前記ソース、ドレインは前記第2ヘテロ接合内の第2二次元電子ガスを介して電気的に接続され、前記第6半導体は前記第2ゲートと第2ヘテロ接合との間に設けられ、前記第6半導体はその下方に位置する前記第2二次元電子ガスの一部を空乏化するステップと、
前記第1ゲートとソースを電気的に接続し、前記第2電極とドレインを電気的に接続するステップと、を含むリーク電流を低減可能なIII族窒化物トランジスタ構造の作製方法を提供する。
【0061】
1つの特定実施形態では、前記作製方法は、具体的には、
所定の方向に順次成長させて積層された第1半導体、第2半導体、高抵抗材料層又は介在層、第4半導体、第5半導体を含み、所定の方向に順次成長させて積層された第4半導体、第5半導体、高抵抗材料層又は介在層、第1半導体、第2半導体を含み、所定の方向に順次成長させて積層された第1半導体、第2半導体、高抵抗材料層、介在層、第4半導体、第5半導体を含み、又は、所定の方向に順次成長させて積層された第4半導体、第5半導体、高抵抗材料層、介在層、第1半導体、第2半導体を含み、
前記第1半導体と第2半導体は組み合わせられて第1ヘテロ接合を形成し、前記第4半導体と第5半導体は組み合わせられて第2ヘテロ接合を形成する。
【0062】
1つの特定実施形態では、前記作製方法は、具体的には、
第1領域と第2領域を含む連続した第3半導体層を前記第2半導体上に形成し、前記第1領域を転化処理して前記高抵抗材料層を形成するステップ、又は、第1領域と第2領域を含む連続した高抵抗材料層を前記第2半導体上に形成し、前記第2領域を転化処理して前記第3半導体を形成するステップを含む。
【0063】
1つの特定実施形態では、前記作製方法は、具体的には、
第3領域と第4領域を含む連続した第6半導体層を前記第5半導体上に形成し、前記第3領域を転化処理して前記高抵抗材料層を形成するステップ、又は、
第3領域と第4領域を含む連続した高抵抗材料層を前記第5半導体上に形成し、前記第4領域を転化処理して前記第6半導体を形成するステップを含む。
【0064】
1つの特定実施形態では、前記転化処理を行う方法は、Hイオン注入、Hプラズマ処理、Hドープアニーリング、Nイオン注入、Fイオン注入、Arイオン注入、Feイオン注入、Oプラズマ処理、熱酸化のうちのいずれか1種又は複数種の組み合わせを含む。
【0065】
例えば、前記第3半導体及び第6半導体は一般にp-GaN材料を採用し、特定領域の活性化又はNH3アニーリング、Hプラズマ処理、Hイオン注入、Oプラズマ処理、熱酸化、二次エピタキシャル、イオン注入などの方式で原位置置不動態化を行ってもよく、原位置不動態化方法は、2DEGに対する制御を弱め、ダイオードの導通電圧降下を低下させることから、所定領域の不動態化とする。
【0066】
もちろん、前記第3半導体及び第6半導体はp型多結晶シリコン、p型酸化物などのp型材料を採用してもよく、これらの材料はスパッタリング、LPCVD、PECVDなどにより堆積されてもよく、その濃度が堆積条件によって制御されてもよく、後でイオン注入、アニーリングなどの手段で調整されて、ダイオードの電圧降下を調整してもよい。
【0067】
なお、第1電極の第2部分の下方にあるp型半導体(第3半導体)をパターン化処理してから、NH3アニーリング、Hプラズマ処理、Hイオン注入、Oプラズマ処理、熱酸化などにより部分的に原位置不動態化又はドライエッチング(ICP、RIE、NLDなど)又はウェットエッチング(PECエッチング、KOHなど)を行って一部を除去し、その下方のトレンチの電子の濃度を調整し、ダイオードの電圧降下を制御してもよい。
【0068】
1つの特定実施形態では、第3半導体に対しては、NH3アニーリング、Hプラズマ処理、Hイオン注入、Oプラズマ処理、熱酸化などにより原位置不動態化を行って、リーク電流を低下させてもよく、第6半導体に関しては、ポストアニーリング活性化によって特定領域の活性化を行って、第2ゲートの下方の第6半導体以外、残りの部分を未活性化状態の高抵抗領域として維持することで、リーク電流を低下させる。
【0069】
1つの特定実施形態では、前記作製方法は、前記第3半導体をパターン化処理して、前記第3半導体を長尺状アレイ構造に加工するステップをさらに含む。
【0070】
1つの特定実施形態では、前記作製方法は、
前記第2半導体の特定領域に前記第3半導体及び高抵抗材料層をエピタキシャル成長させるステップ、又は、
前記第5半導体の特定領域に前記第6半導体及び高抵抗材料層をエピタキシャル成長させるステップをさらに含む。
【0071】
1つの特定実施形態では、前記作製方法は、前記高抵抗材料層上に介在層を形成した後、前記介在層上に第1ヘテロ接合又は第2ヘテロ接合を作製するステップをさらに含む。
【0072】
1つの特定実施形態では、前記介在層は金属層、誘電体層、二次元材料層のうちのいずれか1種を含む。
【0073】
1つの特定実施形態では、前記金属層は単層金属層又は積層された多層金属層を含み、前記金属層の材質はMo、Mg、Alのうちのいずれか1種を含むが、これらに限定されない。
【0074】
1つの特定実施形態では、前記金属層の厚さは2nm~10μmである。
【0075】
1つの特定実施形態では、前記誘電体層の材質はAlN、BN、AlBN、AlPN、BCN、高抵抗AlGaN、高抵抗GaNのうちのいずれか1種を含むが、これらに限定されない。
【0076】
1つの特定実施形態では、前記誘電体層の厚さは0.5nm~1μmである。
【0077】
1つの特定実施形態では、前記二次元材料層の材質はBN、グラフェン、フッ化グラフェン、酸化グラフェン、黒リンのうちのいずれか1種を含むが、これらに限定されない。
【0078】
1つの特定実施形態では、前記二次元材料層の厚さは0.5nm~500nmである。
【0079】
1つの特定実施形態では、前記第3半導体はまた前記高抵抗材料を介して第2電極と電気的に分離され、又は、前記第6半導体はまた前記高抵抗材料を介してソース、ドレインと電気的に分離される。
【0080】
1つの特定実施形態では、前記第3半導体と第6半導体はp型半導体である。
【0081】
1つの特定実施形態では、前記第3半導体と第6半導体の材質はp型ワイドバンドギャップ半導体を含む。
【0082】
1つの特定実施形態では、前記p型ワイドバンドギャップ半導体はp型III族窒化物を含む。
【0083】
1つの特定実施形態では、前記p型III族窒化物はp型GaN、p型AlGaN、p型InGaN又はp型InNを含む。
【0084】
1つの特定実施形態では、前記p型半導体はp型多結晶シリコン、p型モルファスシリコン、p型酸化物、p型ダイヤモンド又はp型半導体重合体等を含む。
【0085】
1つの特定実施形態では、前記第1高抵抗材料及び第2高抵抗材料は高抵抗GaN、高抵抗AlGaN、高抵抗Ga2O3、高抵抗InGaN又は高抵抗InNなどを含む。
【0086】
なお、本願の実施例によるリーク電流を低減可能なIII族窒化物トランジスタでは、トランジスタ部分とダイオード部分は同一ウエハ上で作製されてもよく、個別のウエハ上にそれぞれ作製されてから、ボーディングによって垂直方向に集積されてもよく、ここでは、垂直方向における上層デバイス部分のp型半導体は全体の活性化により得られ、後でエッチングや不動態化により特定領域を残してもよくが、もちろん、p型半導体は特定領域のエピタキシャル又は横方向エピタキシャルにより得られてもよい。
【0087】
以下、図面及び特定実施例を参照して該技術的解決手段、その実施プロセス及び原理などについてさらに詳細に説明し、特に断らない限り、本願の実施例に使用される堆積、エピタキシャル、エッチングなどのプロセスは全て当業者に公知のことであってもよい。
【0088】
実施例1
図1aに示すように、III族窒化物トランジスタの構造は、
基板上に順次積層された第1緩衝層、第1トレンチ層(すなわち、前述第1半導体、下同)1、第1バリア層(すなわち、前述第2半導体、下同)2、第1p型層(すなわち、前述第3半導体、下同)3及び第1高抵抗層(すなわち、第1高抵抗材料又は第1高抵抗材料層、下同)、介在層(もちろん、介在層が設けられなくてもよい)、第2緩衝層、第2トレンチ層(すなわち、前述第4半導体、下同)4、第2バリア層(すなわち、前述第5半導体、下同)5、第2p型層(すなわち、前述第6半導体、下同)6、及び第2高抵抗層(すなわち、第2高抵抗材料又は第2高抵抗材料層、下同)を含んでもよく、前記第1トレンチ層1と第1バリア層2は組み合わせられて第1ヘテロ接合を形成し、前記第1トレンチ層1と第1バリア層2との間に第1二次元電子ガス(2DEG)が形成され、前記第2トレンチ層4と第2バリア層5は組み合わせられて第2ヘテロ接合を形成し、前記第2トレンチ層4と第2バリア層5との間に第2二次元電子ガス(2DEG)が形成され、
前記第1バリア層2上には、陽極(すなわち、前述第1電極、下同)と陰極(すなわち、前述第2電極、下同)とが間隔を空けて設けられ、前記陰極と陽極は第12DEGを介して電気的に接続され、前記第1p型層上に第1ゲート(すなわち、図に示すgゲート1、下同)がさらに設けられ、前記第1ゲートは陽極に電気的に接続され、前記第1p型層を完全に覆い、前記第1ゲートは前記第1p型層に電気的に接触し、前記第1p型層と陰極はまた前記第1高抵抗層を介して電気的に分離され、
前記第2バリア層5上には、ソースとドレインとが間隔を空けて設けられ、前記ソースとドレインは第22DEGを介して電気的に接続され、前記第2p型層上に第2ゲート(図におけるゲート2)が設けられ、前記第2p型層とソース、ドレインはまた第2高抵抗層を介して電気的に分離され、及び
前記第1ヘテロ接合と第2ヘテロ接合は前記第1高抵抗層と介在層を介して電気的に分離され、前記第1ゲートはさらにソースに電気的に接続され、前記陰極はさらにドレインに電気的に接続される。
【0089】
なお、前記第1ヘテロ接合は陽極、陰極及び第1ゲートと組み合わせられてダイオードを形成し、前記第2ヘテロ接合はソース、ドレイン及び第2ゲートと組み合わせられてトランジスタを形成し、前記III族窒化物トランジスタの構造の表面に不動態化層がさらに被覆されている。
【0090】
具体的には、前記介在層は金属層、誘電体層、二次元材料層のうちのいずれか1種であってもよく、前記金属層は単層金属層又は積層された多層金属層を含み、前記金属層の材質はMo、Mg、Alのうちのいずれか1種を含み、前記金属層の厚さは2nm~10μmである。
【0091】
具体的には、金属Mg層は、窒素ガス雰囲気で熱アニーリングされ、下層の材料と合金化されてもよく、熱アニーリングの温度は400~800℃、時間は5~120minとしてもよく、金属Al層は、酸素ガス雰囲気で熱アニーリングされ、酸化されてもよく、温度は室温~800℃、時間は5~120minとしてもよく、もちろん、金属Al層はその後プラズマ処理を受けてもよく、プラズマ処理に使用されるプラズマはN2、N2O、NH3、NOなどであってもよく、装置はICP、RIE、PECVDなどであてもよく、金属Al層はその後紫外線オゾン処理を受けてもよく、処理時間は30min~300minとしてもよく、ここで、介在層の金属は裏電極として機能してもよく、その一般的な用途には電圧印加や温度検知が含まれる。積層金属例えば(Mg/Mo/Mg等)によってデバイスの放熱能力を高めてもよい。
【0092】
具体的には、前記誘電体層の材質はAlN、BN、AlBN、AlPN、BCN、高抵抗AlGaN、高抵抗GaNのうちのいずれか1種を含み、前記誘電体層の厚さは0.5nm~1μmであり、前記二次元材料層の材質はBN、グラフェン、フッ化グラフェン、酸化グラフェン、黒リンのうちのいずれか1種を含み、前記二次元材料層の厚さは0.5nm~500nmである。
【0093】
図2a~
図2gに示すように、本実施例によるIII族窒化物トランジスタ構造の作製方法は、以下のステップ1)~7)を含んでもよい。
【0094】
1)金属有機化合物化学気相堆積(MOCVD)、分子ビームエピタキシャル(MBE)や水素化物気相エピタキシャル(HVPE)などのエピタキシャル技術を用いて、
図2aに示すような基板/第1緩衝層/第1トレンチ層/第1バリア層/第1高抵抗層/第2緩衝層/第2トレンチ層/第2バリア層/第2高抵抗層の材料構造を成長させる。
【0095】
ここで、前記基板はシリコンウエハ、サファイアなどであってもよく、第1/第2トレンチ層の材質はGaN又はGaAsなどであってもよく、第1/第2バリア層の材質はAlGaN又はAlGaAsなどであってもよく、前記第1トレンチ層と第1バリア層との間に第1二次元電子ガスが形成され、第2トレンチ層と第2バリア層との間に第2二次元電子ガスが形成されている。第1/第2バリア層の導電性が劣り、例えばAlGaNの電気伝導率は10Ω/m又は10Ω/m以上であり、前記第1/第2高抵抗層は未活性化p型ドープ層であり、材質がMgドープGaNとしてもよく、第1/第2高抵抗層の導電性が劣り、前記第1/第2緩衝層の材質は当業者にとって公知のものであってもよい。
【0096】
2)反応性イオンエッチング技術を用いて指定領域の第2緩衝層/第2トレンチ層/第2バリア層/第2高抵抗層の一部を除去し、第1高抵抗層を露出させ、
図2bに示す材料構造を形成する。
【0097】
3)反応性イオンエッチング技術を用いてソース領域、ドレイン領域の第2高抵抗層及び陰極領域と陽極領域の第1高抵抗層を除去し、また、ソース領域、ドレイン領域/陰極領域及び陽極領域に位置する第1/第2バリア層の一部又は全部を除去してもよく、さらに第1/第2トレンチ層の一部をエッチングしてもよい。
【0098】
電子ビーム蒸発やスパッタリングなどの金属堆積技術を用いて、ソース領域、ドレイン領域、陰極領域、陽極領域に対応してソース、ドレイン、陰極及び陽極を作製し、アニーリング温度500~1000℃で高速アニーリング処理を0.1~100min行い、ソース、ドレイン、陰極及び陽極とこれらに接触する材料とでオーム接触を形成しながら、ソースとドレインを第2二次元電子ガスに電気的に接続し、第1二次元電子ガスを介して前記陰極と陽極を電気的に接続させ、
図2cに示すような電極が形成されたデバイス構造を作製する。
【0099】
ここで、前記ソース/ドレイン/陰極/陽極の厚さは10~1000nmであり、ソース/ドレイン/陰極/陽極の材質はTi/Al/Ni/Au、Ti/Al/Ti/Au、Ti/Al/Cr/Au、Ti/Al/Pt/Au、Ti/Al/Mo/Au、Ti/Al/Pd/Auのうちのいずれか1種であってもよく、なお、前記陽極と陰極は第1二次元電子ガスを介して電気的に接続される。
【0100】
4)PECVD、ALD、LPCVDなどの薄膜堆積技術を用いて
図2cに示すデバイス構造の表面に保護層を堆積し、保護層の厚さは10~1000nmであり、保護層の材質はSiO
2、AlN、Si
3N
4のうちのいずれか1種又は複数種の組み合わせを含んでもよいが、これらに限定されない。
【0101】
次に、反応性イオンエッチングやイオンビームエッチングなどのエッチング方法を用いて、保護層の一部を除去し、活性化対象の第1高抵抗層/第2高抵抗層の部分を露出させる。
【0102】
高速アニーリング炉やMOCVDなどの高温装置を用いて、露出させた第1高抵抗層/第2高抵抗層についてp型材料をアニーリングして活性化し、第1高抵抗層/第2高抵抗層の対応する領域を第1p型層/第2p型層に転化し、ここで、アニーリング温度は300~1000℃であり、形成されたデバイス構造は
図2dに示される。
【0103】
5)前記保護層を除去し、電子ビーム蒸発やスパッタリングなどの金属堆積技術を用いて、第1p型層上に第1ゲート(図におけるゲート1)を作製し、第2p型層上に第2ゲート(図におけるゲート2)を作製し、前記第1ゲートを陽極に電気的に接続し、前記第1ゲートを第1p型層に電気的に接触し、前記第1p型層を完全に被覆させる。
【0104】
ここで、前記第2ゲート及び第1ゲートの厚さは10~1000nmであり、材質はTi、Al、Ni、Au、Cr、Pt、Mo、Pdのうちのいずれか1種又は2種以上の組み合わせであってもよく、通常、Ni/Auを用い、形成されたデバイス構造は
図2eに示される。
【0105】
6)PECVD、ALD、LPCVDなどの薄膜堆積技術を用いて、
図2eに示すデバイス構造の表面に不動態化層を堆積し、不動態化層の厚さは10~1000nmであり、材質はSiO
2、AlN、Al
2O
3、Si
3N
4のうちのいずれか1種又は複数種の組み合わせを含んでもいが、これらに限定されない。形成されたデバイス構造は
図2fに示される。
【0106】
7)反応性イオンエッチングやイオンビームエッチングなどのエッチング方法を用いて、陽極の第2部分及びソースに対応する領域の不動態化層の一部を除去し、第1ゲート及びソースを露出させた後、電子ビーム蒸発やスパッタリングなどの金属堆積技術を用いて、相互接続金属電極を堆積し、前記相互接続金属電極を第1ゲート、ソースにそれぞれ電気的に接続する。
【0107】
ここで、前記相互接続金属電は、厚さが500~3000nmであり、材質がTi、Al、Ni、Au、Cr、Pt、Mo、Pd、Cuのうちのいずれか1種又は2種以上の組み合わせを含み、通常、Cu又はTi/Alを用い、形成されたデバイス構造は
図2gに示される。
【0108】
比較例1
比較例1はZhang, H. , and R. S. Balog . "Loss analysis during dead time and thermal study of galliumnitride devices." Applied Power Electronics Conference & Exposition IEEE, 2015.で開示された市販EPCデバイスであり、このデバイスのテスト結果は
図5に示される
【0109】
比較例2
該図は本課題チームによるp-GaNゲートトランジスタのテストデータであり、比較例2は「▲ハオ▼ 栄暉.新型増強型p-GaNゲートHEMTパワースイッチデバイスの研究[D].南京理工大学,2019.」で開示されたp-GaNゲートトランジスタであり、そのテスト結果は
図6に示される。
【0110】
実施例2
該実施例によるIII族窒化物トランジスタ構造の構造は
図3に示され、該実施例によるIII族窒化物トランジスタ構造は、実施例1のトランジスタと比較して、第1ヘテロ接合が陽極、陰極、第1ゲートと組み合わせられて形成したダイオード部分は第2ヘテロ接合がソース、ドレイン及び第2ゲートと組み合わせられて形成したトランジスタの位置と異なる点が相違し、該実施例によるIII族窒化物トランジスタ構造の製造方法は実施例1とほぼ同様である。
【0111】
実施例3
該実施例によるIII族窒化物トランジスタ構造の構造は
図4に示され、実施例1のIII族窒化物トランジスタと比較して、第2緩衝層は高抵抗材料を採用してもよい点が相違し、該実施例によるIII族窒化物トランジスタ構造の製造方法は実施例1とほぼ同様である。
【0112】
実施例4
該実施例によるIII族窒化物トランジスタ構造の構造は
図7に示され、III族窒化物トランジスタ構造は、第1基板上に順次積層された第1緩衝層、第1トレンチ層、第1バリア層、第1p型層と第1高抵抗層、不動態化層、第2p型層と第2高抵抗層、第2バリア層、第2トレンチ層、第2緩衝層、第2基板を含み、前記第1トレンチ層と第1バリア層は組み合わせられて第1ヘテロ接合を形成し、前記第1トレンチ層と第1バリア層との間に第1二次元電子ガス(2DEG)が形成され、前記第2トレンチ層と第2バリア層は組み合わせられて第2ヘテロ接合を形成し、前記第2トレンチ層と第2バリア層との間に第2二次元電子ガス(2DEG)が形成されている。
【0113】
前記第2バリア層には、陽極(すなわち、前述第1電極、下同)と陰極(すなわち、前述第2電極、下同)が間隔を空けて設けられ、前記陰極と陽極は第22DEGを介して電気的に接続され、前記第2p型層には第2ゲート(すなわち、図におけるゲート2、下同)がさらに設けられ、前記第2ゲートは陽極に電気的に接続され、前記第2p型層を完全に覆い、前記第2ゲートは前記第2p型層に電気的に接触され、さらに、前記第2p型層と陰極は前記第2高抵抗層を介して電気的に分離される。
【0114】
前記第1バリア層にはソースとドレインが間隔を空けて設けられ、前記ソースとドレインは第12DEGを介して電気的に接続され、前記第1p型層に第1ゲート(図におけるゲート1)が設けられ、さらに、前記第1p型層とソース、ドレインとは第1高抵抗層を介して電気的に分離される。
【0115】
また、前記第2ゲートとソース、前記陰極とドレインは相互接続金属を介して電気的に接続される。
【0116】
なお、前記第2ヘテロ接合は陽極、陰極、第2ゲートと組み合わせられてダイオードを形成し、前記第1ヘテロ接合はソース、ドレイン及び第1ゲートと組み合わせられてトランジスタを形成する。
【0117】
実施例5
該実施例によるIII族窒化物トランジスタ構造の構造は
図8に示され、実施例1のIII族窒化物トランジスタの構造とほぼ同様であり、両方の相違点としては、上層に位置するダイオード又はトランジスタの第1高抵抗層又は第2高抵抗層内に複数のP型層が間隔を空けて設けられ、この複数のP型層の材質はこれらを含むトランジスタ又はダイオードの第1又は第2P型層の材質と同じであってもよく、この複数のP型層の体積及び間隔は全て第1ゲート又は第2ゲートから離れるに従って減少する。
【0118】
例えば、本実施例では、前記p型層はp-GaNであり、ここで、複数のp-GaNの間の間隔はHプラズマ不動態化処理を採用し、Hプラズマの拡散はガウス分布に合致する。
【0119】
【0120】
ただし、Cは濃度、xは間隔のサイズ、QはHの含有量、Lは拡散幅である。
【0121】
本発明者らは、研究した結果、複数のp-GaNの間の間隔が第1ゲート又は第2ゲートから離れるに従って減少することによって、拡散方式を利用して複数のp型層に濃度勾配を生じさせることを見出し、
図9から分かるように、複数のp-GaNが特定の間隔を空けて設けられることによって、p型層の濃度分布を効果的に調整することができ、
図10から分かるように、複数のp-GaNが特定の間隔を空けて設けられ、かつ、その濃度が所定の形態で分布する場合、III族窒化物トランジスタの電界強度が徐々に低下しているが、プラットフォーム特性を保持し、このため、高電圧に耐えられる。
【0122】
本願の実施例によるIII族窒化物トランジスタ構造では、ダイオードとトライオードが基板に垂直な方向に集積されることによって、III族窒化物トランジスタのウエハに占める面積がより小さくなり、デバイスの小型化に有利である。また、デバイスの全体構造に直接成長及びプロセス互換性などの特徴があり、デバイスの複雑さ及び製造コストが効果的に低下する。さらに、本願の実施例によるIII族窒化物トランジスタ構造は、デバイスのリーク電流を効果的に削減させ、消費電力を低下させ、デバイスの信頼性や安定性を向上させることができる。
【0123】
(付記)
(付記1)
リーク電流を低減可能なIII族窒化物トランジスタ構造であって、
高抵抗材料及び/又は介在層を介して電気的に分離される、積層された第1ヘテロ接合と第2ヘテロ接合と、
前記第1ヘテロ接合と組み合わせられる第1電極、第2電極及び第1ゲートであって、前記第1電極と第2電極が第1ヘテロ接合内の第1二次元電子ガスを介して電気的に接続されるとともに、前記第1ゲートと第1ヘテロ接合との間に第3半導体が設けられ、前記第3半導体がその下方に位置する前記第1二次元電子ガスの一部を空乏化し、前記第1ゲートがさらに第1電極に電気的に接続される第1電極、第2電極及び第1ゲートと、
前記第2ヘテロ接合と組み合わせられるソース、ドレイン及び第2ゲートであって、前記ソースとドレインが第2ヘテロ接合内の第2二次元電子ガスを介して電気的に接続され、前記ソースとドレインがさらに前記第1ゲートと第2電極にそれぞれ電気的に接続されるとともに、前記第2ゲートと第2ヘテロ接合との間に第6半導体が設けられ、前記第6半導体がその下方に位置する前記第2二次元電子ガスの一部を空乏化するソース、ドレイン及び第2ゲートと、を含むことを特徴とするIII族窒化物トランジスタ構造。
【0124】
(付記2)
所定の方向に順次成長させて成形された第1半導体、第2半導体、高抵抗材料層又は介在層、第4半導体、第5半導体を含み、
所定の方向に順次成長させて形成された第4半導体、第5半導体、高抵抗材料層又は介在層、第1半導体、第2半導体を含み、
所定の方向に順次成長させて形成された第1半導体、第2半導体、高抵抗材料層、介在層、第4半導体、第5半導体を含み、又は
所定の方向に順次成長させて形成された第4半導体、第5半導体、高抵抗材料層、介在層、第1半導体、第2半導体を含み、
前記第1半導体と第2半導体は組み合わせられて第1ヘテロ接合を形成し、前記第4半導体と第5半導体は組み合わせられて第2ヘテロ接合を形成することを特徴とする付記1に記載のIII族窒化物トランジスタ構造。
【0125】
(付記3)
前記高抵抗材料層は連続した第3半導体層の第1領域が転化したものであり、前記第3半導体は前記第3半導体層の第2領域内に分布しており、又は、
前記第3半導体は連続した高抵抗材料層の第2領域が転化したものであり、前記高抵抗材料は前記高抵抗材料層の第1領域内に分布していることを特徴とする付記2に記載のIII族窒化物トランジスタ構造。
【0126】
(付記4)
前記第3半導体はp型半導体であり、好ましくは、前記第3半導体の材質はp型ワイドバンドギャップ半導体を含み、より好ましくは、前記p型ワイドバンドギャップ半導体はp型III族窒化物を含み、より好ましくは、前記p型III族窒化物はp型GaN、p型AlGaN、p型InGaN又はp型InNを含み、好ましくは、前記p型半導体はp型多結晶シリコン、p型モルファスシリコン、p型酸化物、p型ダイヤモンド又はp型半導体重合体を含み、より好ましくは、前記第3半導体は間隔を空けて設けられた複数の長尺状p型半導体を含み、この複数の長尺状p型半導体はアレイ状に分布しており、
好ましくは、前記第3半導体のドープ濃度は1016~1020cm-3であり、好ましくは、前記第3半導体の厚さは10nm~500nmであり、
好ましくは、前記高抵抗材料は高抵抗GaN、高抵抗AlGaN、高抵抗Ga2O3、高抵抗InGaN又は高抵抗InNを含むことを特徴とする付記2又は3に記載のIII族窒化物トランジスタ構造。
【0127】
(付記5)
前記高抵抗材料層は連続した第6半導体層の第3領域が転化したものであり、前記第6半導体は前記第6半導体層の第4領域内に分布しており、又は、
前記第6半導体は連続した高抵抗材料層の第4領域が転化したものであり、前記高抵抗材料は前記高抵抗材料層の第3領域内に分布していることを特徴とする付記2に記載のIII族窒化物トランジスタ構造。
【0128】
(付記6)
前記第6半導体はp型半導体であり、好ましくは、前記第6半導体の材質はp型ワイドバンドギャップ半導体を含み、より好ましくは、前記p型ワイドバンドギャップ半導体はp型III族窒化物を含み、より好ましくは、前記p型III族窒化物はp型GaN、p型AlGaN、p型InGaN又はp型InNを含み、好ましくは、前記p型半導体はp型多結晶シリコン、p型モルファスシリコン、p型酸化物、p型ダイヤモンド又はp型半導体重合体を含み、
好ましくは、前記高抵抗材料は高抵抗GaN、高抵抗AlGaN、高抵抗Ga2O3、高抵抗InGaN又は高抵抗InNを含むことを特徴とする付記5に記載のIII族窒化物トランジスタ構造。
【0129】
(付記7)
前記高抵抗材料層は前記第3半導体と第2電極との間に分布しており、前記第3半導体はさらに前記高抵抗材料を介して第2電極と電気的に分離され、又は、
前記高抵抗材料層は前記第6半導体とソース、ドレインとの間に分布しており、前記第6半導体はさらに前記高抵抗材料を介してソース、ドレインと電気的に分離され、及び/又は、
前記介在層は金属層、誘電体層、二次元材料層のうちのいずれか1種を含み、
好ましくは、前記金属層は単層金属層又は積層された多層金属層を含み、前記金属層の材質はMo、Mg、Alのうちのいずれか1種を含み、好ましくは、前記金属層の厚さは2nm~10μmであり、
好ましくは、前記誘電体層の材質はAlN、BN、AlBN、AlPN、BCN、高抵抗AlGaN、高抵抗GaNのうちのいずれか1種を含み、好ましくは、前記誘電体層の厚さは0.5nm~1μmであり、
好ましくは、前記二次元材料層の材質はBN、グラフェン、フッ化グラフェン、酸化グラフェン、黒リンのうちのいずれか1種を含み、好ましくは、前記二次元材料層の厚さは0.5nm~500nmであることを特徴とする付記2に記載のIII族窒化物トランジスタ構造。
【0130】
(付記8)
前記第2ヘテロ接合上に絶縁誘電体層がさらに設けられ、前記ソース、ドレインは前記絶縁誘電体層上に設けられ、
好ましくは、前記絶縁誘電体層の厚さは1~1000nmであり、好ましくは、前記絶縁誘電体層の材質はSiO2、AlN、Si3N4のうちのいずれか1種又は2種以上の組み合わせを含み、
好ましくは、前記第6半導体上に二次元材料がさらに設けられ、前記ソース及びドレインは前記二次元材料上に設けられ、
好ましくは、前記第3半導体上に二次元材料が設けられ、
好ましくは、前記二次元材料の層数は1~100層であり、好ましくは、前記二次元材料は単一種類の二次元材料又は二次元材料ヘテロ接合であり、好ましくは、前記二次元材料はグラフェン、MoS2、WS2のうちのいずれか1種又は2種以上の組み合わせを含むことを特徴とする付記2に記載のIII族窒化物トランジスタ構造。
【0131】
(付記9)
前記第1半導体と第2半導体との間及び/又は第4半導体と第5半導体との間に第7半導体がさらに設けられ、
好ましくは、前記第1半導体、第2半導体、第4半導体及び第5半導体の材質は全てIII-V族化合物から選ばれ、好ましくは、前記第1半導体及び第4半導体の材質はGaN又はGaAsを含み、好ましくは、前記第2半導体及び第5半導体の材質はAlGaN又はAlGaAsを含み、好ましくは、前記第7半導体の材質はAlNを含むことを特徴とする付記2に記載のIII族窒化物トランジスタ構造。
【0132】
(付記10)
リーク電流を低減可能なIII族窒化物トランジスタ構造の作製方法であって、
所定の方向に積層された第1ヘテロ接合、高抵抗材料及び/又は介在層と第2ヘテロ接合を作製するステップであって、前記第1ヘテロ接合と第2ヘテロ接合は前記高抵抗材料及び/又は介在層を介して電気的に分離されるステップと、
第1ヘテロ接合と組み合わせられる第1電極、第2電極、第1ゲート及び第3半導体を作製するステップであって、前記第1電極と第2電極は前記第1ヘテロ接合内の第1二次元電子ガスを介して電気的に接続され、前記第3半導体は前記第1ゲートと第1ヘテロ接合との間に設けられ、前記第1ゲートはさらに第1電極に電気的に接続され、前記第3半導体はその下方に位置する前記第1二次元電子ガスの一部を空乏化するステップと、
第2ヘテロ接合と組み合わせられるソース、ドレイン、第2ゲート及び第6半導体を作製するステップであって、前記ソースとドレインは前記第2ヘテロ接合内の第2二次元電子ガスを介して電気的に接続され、前記第6半導体は前記第2ゲートと第2ヘテロ接合との間に設けられ、前記第6半導体はその下方に位置する前記第2二次元電子ガスの一部を空乏化するステップと、
前記第1ゲートとソースを電気的に接続し、前記第2電極とドレインを電気的に接続するステップと、を含むことを特徴とする作製方法。
【0133】
(付記11)
具体的には、
所定の方向に順次成長させて積層された第1半導体、第2半導体、高抵抗材料層又は介在層、第4半導体、第5半導体を含み、
所定の方向に順次成長させて積層された第4半導体、第5半導体、高抵抗材料層又は介在層、第1半導体、第2半導体を含み、
所定の方向に順次成長させて積層された第1半導体、第2半導体、高抵抗材料層、介在層、第4半導体、第5半導体を含み、又は
所定の方向に順次成長させて積層された第4半導体、第5半導体、高抵抗材料層、介在層、第1半導体、第2半導体を含み、
前記第1半導体と第2半導体は組み合わせられて第1ヘテロ接合を形成し、前記第4半導体と第5半導体は組み合わせられて第2ヘテロ接合を形成することを特徴とする付記10に記載の作製方法。
【0134】
(付記12)
具体的には、第1領域と第2領域を含む連続した第3半導体層を前記第2半導体上に形成し、前記第1領域を転化処理して前記高抵抗材料層を形成するステップ、又は、第1領域と第2領域を含む連続した高抵抗材料層を前記第2半導体上に形成し、前記第2領域を転化処理して前記第3半導体を形成するステップを含むことを特徴とする付記11に記載の作製方法。
【0135】
(付記13)
具体的には、第3領域と第4領域を含む連続した第6半導体層を前記第5半導体上に形成し、前記第3領域を転化処理して前記高抵抗材料層を形成するステップ、又は、第3領域と第4領域を含む連続した高抵抗材料層を前記第5半導体上に形成し、前記第4領域を転化処理して前記第6半導体を形成するステップを含むことを特徴とする付記11に記載の作製方法。
【0136】
(付記14)
前記転化処理を行う方法は、Hイオン注入、Hプラズマ処理、Hドープアニーリング、Nイオン注入、Fイオン注入、Arイオン注入、Feイオン注入、Oプラズマ処理、熱酸化のうちのいずれか1種又は複数種の組み合わせを含み、及び/又は
前記第3半導体をパターン化処理して、前記第3半導体を長尺状アレイ構造に加工するステップをさらに含み、及び/又は、
前記第2半導体の特定領域に前記第3半導体及び高抵抗材料層をエピタキシャル成長させるステップ、又は、前記第5半導体の所定領域に前記第6半導体及び高抵抗材料層をエピタキシャル成長させるステップをさらに含み、
好ましくは、前記高抵抗材料層上に介在層を形成した後、前記介在層上に第1ヘテロ接合又は第2ヘテロ接合を作製するステップをさらに含み、及び/又は、
前記介在層は金属層、誘電体層、二次元材料層のうちのいずれか1種を含み、
好ましくは、前記金属層は単層金属層又は積層された多層金属層を含み、前記金属層の材質はMo、Mg、Alのうちのいずれか1種を含み、好ましくは、前記金属層の厚さは2nm~10μmであり、
好ましくは、前記誘電体層の材質はAlN、BN、AlBN、AlPN、BCN、高抵抗AlGaN、高抵抗GaNのうちのいずれか1種を含み、好ましくは、前記誘電体層の厚さは0.5nm~1μmであり、
好ましくは、前記二次元材料層の材質はBN、グラフェン、フッ化グラフェン、酸化グラフェン、黒リンのうちのいずれか1種を含み、好ましくは、前記二次元材料層の厚さは0.5nm~500nmであることを特徴とする付記12又は13に記載の作製方法。
【0137】
(付記15)
前記第3半導体はまた前記高抵抗材料を介して第2電極と電気的に分離され、又は、前記第6半導体はまた前記高抵抗材料を介してソース、ドレインと電気的に分離され、及び/又は、前記第3半導体と第6半導体はp型半導体であり、好ましくは、前記第3半導体と第6半導体の材質はp型ワイドバンドギャップ半導体を含み、より好ましくは、前記p型ワイドバンドギャップ半導体はp型III族窒化物を含み、より好ましくは、前記p型III族窒化物はp型GaN、p型AlGaN、p型InGaN又はp型InNを含み、好ましくは、前記p型半導体はp型多結晶シリコン、p型モルファスシリコン、p型酸化物、p型ダイヤモンド又はp型半導体重合体を含み、
好ましくは、前記第1高抵抗材料及び第2高抵抗材料は高抵抗GaN、高抵抗AlGaN、高抵抗Ga2O3、高抵抗InGaN又は高抵抗InNを含むことを特徴とする付記11に記載の作製方法。