(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】目地装置
(51)【国際特許分類】
E04B 1/68 20060101AFI20240618BHJP
【FI】
E04B1/68 100A
(21)【出願番号】P 2023028466
(22)【出願日】2023-02-27
【審査請求日】2023-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】512209760
【氏名又は名称】和田装備株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100146732
【氏名又は名称】横島 重信
(72)【発明者】
【氏名】和田 太郎
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-193824(JP,A)
【文献】特開2021-080770(JP,A)
【文献】特開2019-210754(JP,A)
【文献】特開2021-075853(JP,A)
【文献】特開2016-132932(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に並進運動が可能な第一の躯体と第二の躯体の間に形成される溝部の溝角部であって、第一の躯体に属する第一の面と第二の躯体に属する第三の面が形成する第一の溝部と、第一の躯体に属する第二の面と第二の躯体に属する第四の面が形成する第二の溝部とが交差することで形成される溝角部に設置される目地装置であって、
複数の伸縮可能な支持装置と、当該支持装置の一端を第一の躯体に取り付けるための第一の取付部材と、当該支持装置の他端を第二の躯体に取り付けるための第二の取付部材と、当該支持装置に固定されて溝部を覆うように保持される目地プレートを有し、
当該支持装置は、相互に平行な複数の第一のリンク部材と、相互に平行な複数の第二のリンク部材を、当該第一及び第二のリンク部材が交差する箇所を回転自在にリンク軸で取り付けることで構成されており、
当該第一及び第二の取付部材は、それぞれ第一の回転軸と第二の回転軸を有し、第一の回転軸は当該支持装置のリンク軸と並行に当該支持装置を構成するリンク部材に回転自在に取り付けられ、第二の回転軸は第一又は第二の躯体と回転自在に取り付けられており、上記第一の溝部内において、当該第一及び第二の取付部材の各第二の回転軸はそれぞれ直線上に配置され、且つ当該直線は相互に並行であり、上記第二の溝部内において、当該第一及び第二の取付部材の各第二の回転軸はそれぞれ直線上に配置され、且つ当該直線は相互に並行であり、
当該目地プレートが、上記第一の溝部内に設置される支持装置に含まれるリンク軸、及び上記第二の溝部内に設置される支持装置に含まれるリンク軸に固定されている目地装置。
【請求項2】
上記目地プレートは、上記第一の溝部内、又は第二の溝部内の少なくとも一方において、複数の支持装置に固定されている請求項1に記載の目地装置。
【請求項3】
上記第一及び第二の溝部の幅方向に複数の上記目地プレートを有する請求項1に記載の目地装置。
【請求項4】
上記支持装置のリンク軸との間に、リンク軸の変位の不均一を吸収するための部材を介して取り付けられた目地プレートを更に有する請求項1に記載の目地装置。
【請求項5】
上記第一及び第二の取付部材が有する第一の回転軸と第二の回転軸の間の距離が50mm以下である請求項1に記載の目地装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免震床の設置等に伴って設けられる可動躯体と固定躯体等の間の間隙部を覆うための目地装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
地震の際の建物の揺れを抑制する目的で、地盤面上に免震装置を設け、当該免震装置の上に建物を建造する構造が一般に使用されている。免震装置は、その地盤側の面と建物側の面との間に水平方向(X方向、Y方向)の自由度、及び垂直方向(Z方向)の自由度を持たせると共に、地盤と建物を弾性的に連結することで、地震によって地盤が振動した際に、当該振動によって建物に生じる加速度を軽減するように作用するものである。
【0003】
上記免震装置の作用に起因して、例えば、地盤側を基準にした場合には、建物が水平方向及び垂直方向に所定の量で変位を生じるため、当該変位を生じた際に建物と地盤が衝突しないように、当該変位量よりも大きな幅で建物と地盤の間に間隙部を設けることが必要とされる。
【0004】
当該間隙部の設け方の一つとして、建物の周囲に堀状の「溝部」を巡らせ、当該溝部を間隙部として、その内部で建物を移動可能とする手法が採られる。当該溝部によって間隙部を構成する際には、当該溝部によって地盤側と建物側との間の人や車等の出入りを妨げないように、当該溝部の上面に蓋状に目地プレートを配置することで地盤側と建物側との橋渡しを行い、人や車等が溝部の存在を認識せず出入り可能とすることが一般的である。
【0005】
上記目地プレートは、平常時には各種の荷重に耐えるように地盤側と建物側との橋渡しとして機能するように設置される一方で、地震の際には、建物の変位を阻害せず、且つ、目地プレート自体の破損を防ぐために、何らかの機構によって目地プレートが変形や移動が可能な状態で設置されることにより、地震の際の緩衝動作を可能とする必要がある。地震の際に目地プレートを変形、移動可能に保持する目地装置として、従来から各種の機構が提案されている。
【0006】
特許文献1には、目地プレートを溝部の上部を跨ぐように設置することで地盤側と建物側との橋渡しを行う際に、当該目地プレートの長さを溝部の幅よりも十分に長くする等によって建物が変位して溝部の幅が拡大した際にも目地プレートが溝部内に落下せず、また、建物が変位して溝部の幅が縮小する際には目地プレートが建物側(又は地盤側)の表面に乗り上げる等して、建物の変位を吸収して緩衝する目地装置が記載されている。
【0007】
また、特許文献2には、伸縮自在のリンク式支持装置を使用し、当該支持装置の両端をそれぞれ地盤側と建物側に固定すると共に、当該支持装置の上部に複数枚の目地プレートを相互に重なり合うように所定の形態で配置することにより、建物が変位して溝部の幅が変化した際に、目地プレート間の重なり合いの形態を変化させることで全体としての目地プレートの幅を変化させて、建物の変位を緩衝する機構を有する目地装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2021-75853号公報
【文献】特開2016-132932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
免震装置は地盤と建物との間に水平方向(X方向、Y方向)の自由度を与えることから、上記建物の周囲に設けられる堀状の溝部は、当該X方向とY方向への建物の変位を吸収可能な形態で設けられる必要がある。そして、主に、土木工事や建物の建築を行う際の簡便性の観点から、当該溝部は、直線的な溝部が相互に溝角部で連結することによって、全体として建物を囲う多角形を成すように形成されることが一般的である。
【0010】
このため、当該多角形の形状の溝部を覆う目地装置においては、溝部の直線部の他、溝部が屈曲する溝角部についても良好に覆うことが期待される。一方、当該溝部が屈曲する箇所においては、地震の際に目地プレートに期待される移動の様式が複雑であり、従来提案されていた機構によっては十分な目地プレートの緩衝動作が困難であった。
【0011】
例えば、上記特許文献1に記載の機構によれば、特に溝部の幅が縮小する動作の際に目地プレートが建物側(又は地盤側)の表面に乗り上げる動作が必要とされ、特に溝部が屈曲する溝角部において、どのように当該動作が可能になるかが明らかにされていない。また、近年は、建物の免震をより良好に行うために上記溝部の設定幅が拡大する傾向にあり、特許文献1に記載されるような溝部を単一の目地プレートで跨ぐように配置する形態を用いた場合、当該目地プレートの重量が大きくなり、目地プレートの上下動作が困難になることが予想される。
【0012】
また、上記特許文献2に記載の機構によれば、設定幅の広い溝部にも対応可能と考えられる一方、各目地プレートの動作が複雑であり、特に溝部が屈曲する溝角部において、どのように各目地プレートが設置されて動作するかが明らかにされていない。
本発明は、建物の溝角部等に設けられる屈曲した溝部に設置可能な新規の目地装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提供する。
<1>相互に並進運動が可能な第一の躯体と第二の躯体の間に形成される溝部の溝角部であって、第一の躯体に属する第一の面と第二の躯体に属する第三の面が形成する第一の溝部と、第一の躯体に属する第二の面と第二の躯体に属する第四の面が形成する第二の溝部とが交差することで形成される溝角部に設置される目地装置であって、複数の伸縮可能な支持装置と、当該支持装置の一端を第一の躯体に取り付けるための第一の取付部材と、当該支持装置の他端を第二の躯体に取り付けるための第二の取付部材と、当該支持装置に固定されて溝部を覆うように保持される目地プレートを有し、当該支持装置は、相互に平行な複数の第一のリンク部材と、相互に平行な複数の第二のリンク部材を、当該第一及び第二のリンク部材が交差する箇所を回転自在にリンク軸で取り付けることで構成されており、当該第一及び第二の取付部材は、それぞれ第一の回転軸と第二の回転軸を有し、第一の回転軸は当該支持装置のリンク軸と並行に当該支持装置を構成するリンク部材に回転自在に取り付けられ、第二の回転軸は第一又は第二の躯体と回転自在に取り付けられており、上記第一の溝部内において、当該第一及び第二の取付部材の各第二の回転軸はそれぞれ直線上に配置され、且つ当該直線は相互に並行であり、上記第二の溝部内において、当該第一及び第二の取付部材の各第二の回転軸はそれぞれ直線上に配置され、且つ当該直線は相互に並行であり、当該目地プレートが、上記第一の溝部内に設置される支持装置に含まれるリンク軸、及び上記第二の溝部内に設置される支持装置に含まれるリンク軸とに固定されている目地装置。
<2>上記目地プレートは、上記第一の溝部内、又は第二の溝部内の少なくとも一方において、複数の支持装置に固定されている上記の目地装置。
<3>上記支持装置のリンク軸との間に、リンク軸の変位の不均一を吸収するための部材を介して取り付けられた目地プレートを更に有する上記の目地装置。
<4>上記第一及び第二の取付部材が有する第一の回転軸と第二の回転軸の間の距離が50mm以下 である上記の目地装置。
<5>上記第一及び第二の溝部の幅方向に複数の上記目地プレートを有する上記の目地装置。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る目地装置によれば、免震装置の設置に伴って生じる溝部であって、特に溝部が屈曲した部分を良好に覆うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る目地装置の実施形態の一例について示す模式図である。
【
図2】上記実施形態に係る目地装置をY方向に並行に見た状態を示す模式図である。
【
図3】上記実施形態に係る目地装置において躯体間の距離を変位した際の状態を示す模式図である。
【
図4】上記実施形態に係る目地装置に使用される目地プレートについて示す模式図である。
【
図5】上記実施形態に係る目地装置において躯体1’を変位した際の様子を示す模式図である。
【
図6】本発明に係る目地装置の実施形態の他の一例について示す模式図である。
【
図7】本発明に係る目地装置の実施形態の他の一例について示す模式図である。
【
図8】上記実施形態に係る目地装置をY方向に並行に見た状態を示す模式図である。
【
図9】上記実施形態に係る目地装置に使用される目地プレートA~Cについて示す模式図である。
【
図10】目地プレート3A,Cの取付部32について例示的に示す模式図である。
【
図11】本発明に係る目地装置の実施形態の他の一例について示す模式図である。
【
図12】伸縮式支持装置の伸縮挙動の違いを示す模式図である。
【
図13】本発明に係る目地装置の実施形態の他の一例について示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、各種の図面を参照しながら本発明を詳細に説明するが、本発明は、当該図面に記載された形態に限定して把握されるべきものではない。
(第一の形態)
図1には、本発明に係る目地装置の実施形態の一例について模式的に示す。
図1において、躯体1’は免震装置に保持され、紙面内のX方向、Y方向、及びそれらに垂直なZ方向に並進的に移動可能な建物側の躯体であって、直角の出隅を有する躯体である。また、躯体1は、当該躯体1’の直角を成すZ面内の2面(1’Xと1’Y)にそれぞれ平行な2面(1Xと1Y)が交差(入隅)部位を有する地盤側の躯体である。当該躯体1の面1Xと当該躯体1’の面1’Xによってb軸側の溝が形成され、当該躯体1の面1Yと当該躯体1’の面1’Yによってa軸側の溝が形成されている。
【0017】
上記躯体1,1’は、それぞれ本発明における第一、第二の躯体に相当し、上記a軸側の溝、b軸側の溝は、それぞれ本発明における第一、第二の溝に相当する。また、
図1において、躯体1,1’の上面はX-Y面内で略同じ高さに設けられたものとして記載されている。
【0018】
当該a軸側の溝とb軸側の溝は、X-Y面内において交差して溝角部を形成している。本発明において、a軸側の溝とb軸側の溝が構成する「溝角部」と記載する場合(又は、単に「溝角部」と記載する場合)は、a軸側の溝とb軸側の溝が交差する部であって、躯体1の面1Xに対面する躯体1’の面1’Xが存在せず、且つ、躯体1の面1Yに対面する躯体1’の面1’Yが存在しない領域の少なくとも一部を含む部位を意味するものとし、当該領域に接続するa軸側の溝とb軸側の溝の一部を加えたものも溝角部に含むものとする。また、当該溝角部について、溝部が屈曲した部分等と記載する場合がある。
なお、躯体1,1’との間で並進運動による変位を生じる箇所であれば本発明に係る目地装置を設置することが可能であり、例えば、躯体1,1’の両方が免震装置上に設置された場合や、躯体1の側が免震装置上に設置されたものであっても、同様に本発明に係る目地装置を設置することができる。
【0019】
図1に記載の目地装置は、躯体1,1’にZ方向に平行に取り付けられた取付回転軸42の周りに回転自在に取り付けられた取付部材4と、当該取付部材4によって躯体1,1’に両端を取り付けられた伸縮式支持装置2と、当該伸縮式支持装置2の中央部に保持部材5を介して目地プレート固定部51で固定された目地プレート3によって構成される。なお、以下において、Z方向に平行な軸等について、「Z軸」等と記載する場合がある。また、目地装置を構成する部材間の接合等を行う形態に関係して、一般には部材を「取り付ける」等の記載を行い、特に接合等された当該間で回転や摺動等の自由度が許容されないように接合等を行う際には、当該接合について「固定する」等と記載して区別をする場合がある。
【0020】
図2には、
図1に記載の目地装置をY方向に並行に見た状態を模式的に示す。上記伸縮式支持装置2は、複数の相互に平行な第一のリンク部材22と、複数の相互に平行な第二のリンク部材23を、当該部材が交差する箇所を当該リンク部材と垂直なリンク軸21で回転自在に取り付けることで構成されたものである。当該構成によって隣接するリンク軸21間の距離が伸縮自在であると共に、当該伸縮の際に、直線上に存在する各リンク軸21間の直線性が保持され、また各リンク軸21間の距離の比率を均一に保持することが可能である。
【0021】
図1に記載の目地装置では、上記伸縮式支持装置2の両端部が、それぞれ取付部材4を介して躯体1,1’に対して取り付けられている。当該取付部材は、それぞれ第一の回転軸と第二の回転軸を有しており、第一の回転軸(保持支点41)は、上記伸縮式支持装置2のリンク軸21と並行であり、伸縮式支持装置2を構成する第一又は第二のリンク部材に回転自在に取り付けられている。また、取付部材4は、第二の回転軸(取付回転軸42)を介して、上記のように躯体1又は躯体1’に回転自在に取り付けられている。
取付部材4について、上記のような構成とすることにより、取付部材4の取付回転軸42によって伸縮式支持装置2がZ軸等の周りに回転可能であると共に、取付回転軸42を含む面内で伸縮式支持装置2が伸縮可能とすることができる。
【0022】
なお、本発明においては、特に明示する場合以外は、各目地装置に使用される各伸縮式支持装置2は、そのリンク軸21の間の距離等が略同一であり、同様の伸縮挙動を示すものとして以下の説明を行う。また、伸縮式支持装置2の両端に取り付けられる取付部材4における第一の回転軸と第二の回転軸間の距離を略等しくすることにより、各伸縮式支持装置2間において伸縮動作の対称性が確保される点で望ましい。また、
図1に示すように、a軸側及びb軸側の溝のそれぞれの内部において、躯体1側の第一の回転軸(保持支点41)と第二の回転軸(取付回転軸42)は、それぞれ直線上に配置され、且つ、躯体2側の第一の回転軸(保持支点41)と第二の回転軸(取付回転軸42)も、それぞれ直線上に配置されると共に、当該直線同士を並行とすることにより、各伸縮式支持装置2間において伸縮動作の対称性が確保される点で望ましい。
【0023】
なお、本発明において各構成要素間の関係が並行等と記載する際には、当該要素の動作において、当該要素が並行である場合と同様に動作可能であることを意味し、数学的に厳密な並行であることを要さず、また、各構成要素の外形形状等における並行性を要するものではない。また、本発明において各構成要素間の関係が直角、直行、垂直等と記載する際には、当該要素の動作において、当該要素が直角等である場合と同様に動作可能であることを意味し、数学的に厳密な直角等であることを要さず、また、各構成要素の外形形状等における直角等であることを要するものではない。
【0024】
図3には、
図2において躯体1,1’間の距離を狭く変位した際の状態を模式的に示す。
図3に示すように、上記の構成とすることで、躯体1,1’間の位置が変位する際に、X方向の変位は伸縮式支持装置2の伸縮により、Y方向の変位は取付回転軸42の回転と縮式支持装置2の伸縮により、Z方向の変位は保持支点41の回転と縮式支持装置2の伸縮により、それぞれ賄われることが可能であり、伸縮式支持装置2を構成するリンク部材22,23等の変形を生じることなく躯体1,1’間の変位に追従することが可能となる。
【0025】
また、
図1~3では、取付回転軸42がZ軸と並行であり、取付回転軸42と保持支点41の回転軸が相互に垂直である場合について示しており、当該構成によって躯体1,1’間の変位に対して伸縮式支持装置2の伸縮により追従可能となるが、本発明はこれに限定されず、躯体1,1’間の変位に対して伸縮式支持装置2の伸縮等が追従可能な範囲内において取付回転軸42と保持支点41の回転軸等を配置することができる。また、躯体1,1’間の変位に対する伸縮式支持装置2の追従性を確保する等の目的で、躯体1,1’と伸縮式支持装置2の間に、取付回転軸42と保持支点41の回転軸以外の回転軸を設けることができる。
【0026】
図1,2に示す構成においては、躯体1,1’間の変位に伴う伸縮式支持装置2の伸縮動作の間、上記リンク軸21の内、伸縮式支持装置2のX-Y面内での中央部に設けられるリンク軸21B等を、常に躯体1,1’間の中央部に位置させることが可能となる。また、特に、上記保持支点41を、リンク軸21A~Cの延長線上等のリンク軸21A~Cを含むX-Y面内に設けることにより、上記伸縮式支持装置2の伸縮動作を生じた際にもリンク軸21BのZ方向への変位を抑制することが可能である。
また、保持部材5をZ方向の下方に伸延して、リンク軸21Bの下方にある他のリンク軸21とスライド自在に固定することで、保持部材5をZ方向と並行に保持することが可能である。
【0027】
図1に示す目地装置においては、躯体1,1’間の溝部を覆う目地プレート3について、躯体1,1’間に設けられたa軸側の溝とb軸側の溝の双方にそれぞれ複数の伸縮式支持装置2を設置して、各伸縮式支持装置2の中央部のリンク軸21に取り付けられた保持部材5の目地プレート固定部51a1~3,51b1~3に対して、目地プレート3を固定する構造を有している。
【0028】
なお、本発明に係る目地装置においては、伸縮式支持装置2のリンク軸21に対して、保持部材5を介して目地プレート3を取り付ける構造の他、予め補助部材を接合する等した目地プレート3を使用して、実質的に保持部材5を介さずに目地プレート3をリンク軸21に対して直接に取り付けることが可能である。
【0029】
本明細書において、保持部材5等をリンク軸21に取り付ける等と記載する場合には、当該保持部材とリンク軸との取り付け位置がリンク軸の変位に従って変位するように取り付けることを意味し、リンク軸に対して保持部材を固定する他、保持部材を回転自在な状態でリンク軸に取り付ける等、適宜の構造を有することができるものとする。また、目地プレートの取付部32をリンク軸21に取り付ける等と記載する場合には、当該取付部とリンク軸との取り付け位置がリンク軸の変位に従って変位するように取り付けることを意味し、目地プレート3を直接にリンク軸21に取り付ける他、保持部材5等を介して目地プレート3の取付部32をリンク軸21に取り付ける等の形態も含むものとする。
【0030】
図4には、
図1に示す目地装置に使用される目地プレート3について模式的に示す。目地プレート3には、目地プレート3を上記各目地プレート固定部51a1~3,51b1~3に対して固定する際の取付部32(32a1~3,32b1~3)が設けられている。各取付部32として、例えば、所定の直径の円形の穴を設けることで、当該穴を通じてボルト等の締結部材を通して、対応する目地プレート固定部51に固定することができる。
【0031】
図5には、
図1,2に示す目地装置において、躯体1’をX-Y面内で変位した際の様子を示す。なお、簡単のために、
図5では目地プレート3は省略されている。
図5に示すように、躯体1’の変位に対して、各伸縮式支持装置2は、保持支点41の周囲での回転と、伸縮式支持装置2自体の伸縮動作によって当該変位に追従することが可能である。
【0032】
上記躯体1’のX方向とY方向の変位量について、例えば、(X,Y)=(P,Q)とした場合、各目地プレート固定部51は対応する保持支点41の中心に位置するように設けられていることから、a軸側とb軸側のいずれにおいても、当該目地プレート固定部51(51a1~3,51b1~3)の変位量は、いずれも(P/2,Q/2)となって、相互に等しいことが導かれる。また、躯体1’の変位がZ成分を含む場合にも、同様に目地プレート固定部51a1~3,51b1~3の変位量が相互に等しいことが導かれる。
【0033】
つまり、
図1に示す目地装置においては、躯体1,1’間での並進運動により変位した際にも、目地プレート固定部51a1~3,51b1~3の各変位量は相互に等しく、当該各目地プレート固定部51間で相対的な位置の変化を生じないため、
図4に示すような、躯体1,1’間の溝部の角部を構成するa軸とb軸の各溝に設けられた目地プレート固定部51に固定された目地プレート3を使用した際にも、当該目地プレート3は各目地プレート固定部51の変位に追従して変位可能であって、躯体1,1’間の変位を妨げず、躯体1,1’間の溝角部を良好に覆うことが可能な目地装置を構成することが可能である。
【0034】
上記のように、躯体間の溝の溝角部を覆うための目地プレートを支持する手段として、
図1,2に示すような機構を有する伸縮式支持装置2を使用することによって、当該溝角部に連結するa軸側の溝に設けられた伸縮式支持装置と、b軸側の溝に設けられた伸縮式支持装置2の両方に対して取り付けられた目地プレート3の使用が可能となり、躯体間の変位動作が複雑な溝角部に対して単純な構造の目地プレートを適用して溝角部を覆うことが可能となる。
【0035】
図1に示す目地装置では、a軸側の溝とb軸側の溝のそれぞれにおいて、複数の伸縮式支持装置2が躯体1,1’について等価な位置に設けられている。このため、当該伸縮式支持装置2の中央部に設けられる、及び/又は、当該リンク軸21Bに取り付けられる目地プレート固定部51(51a1~3,51b1~3)を結ぶ線は、それぞれ直線となる。このため、
図4に示す目地プレート3においては、目地プレート3をリンク軸21B、又は目地プレート固定部51に取り付けるための取付部32a1~3を結ぶ線31a、及び取付部32b1~3を結ぶ線31bはそれぞれ直線となり、取付部32を繋ぐ2本の直線31a,bが定義される。
【0036】
つまり、
図1に示す目地装置で使用される目地プレート3は、伸縮式支持装置2に固定されるための複数の取付部32を有するものであって、当該取付部32は相互に直線で繋ぐことが可能な2つの群に分類可能であって、各郡に属する取付部32を繋ぐ直線が目地プレート3の面内で相互に交差するものである。そして、伸縮式支持装置2に含まれるリンク軸21の内で、躯体1,1’間の変位を生じた際に等しい変位を示すリンク軸21に対して目地プレート3を取り付けることにより、当該躯体1,1’間の変位に追従可能な目地プレート3を構成することができる。
【0037】
なお、
図1に示す目地装置では、a軸側の溝とb軸側の溝のそれぞれにおいて、複数の伸縮式支持装置2に対して目地プレート3が取り付けられる場合を示すが、本発明はこれに限定されず、a軸側及びb軸側の溝に設けられた各一箇所の伸縮式支持装置2に対して目地プレート3が取り付けられることで良好な目地装置を構成することができる。一方、a軸側及びb軸側の溝内で、目地プレート3が取り付けられる伸縮式支持装置2を複数にすることにより、目地プレート3の剛性を確保することができる。
【0038】
また、
図1においては、躯体1,1’間の溝部として、a軸とb軸の2辺が直角に交差すると共に、a軸に沿う溝の幅とb軸に沿う溝の幅が等しい場合について示すが、本発明はこれに限定されず、a軸とb軸の2辺が直角以外の角度で交差する角部や、a軸とB軸に沿う溝の幅が異なる角部を覆うための目地装置として使用することができる。
また、
図1においては、a軸に沿う溝と、b軸に沿う溝の、それぞれ3箇所に伸縮式支持装置2を配置する様子を示しているが、本発明はこれに限定されず、目地プレート3の大きさや、目地プレート3に期待される強度等に応じて、伸縮式支持装置2の配置数を決定することができる。
【0039】
図6には、本発明に係る目地装置の実施形態の他の一例について模式的に示す。
図6に示す目地装置は、保持部材6を更に有することで
図2に示す目地装置と相違する。伸縮式支持装置2のリンク軸21A,Cに取り付けた保持部材6を使用して目地プレート3の裏面を支持することにより、目地プレート3に荷重が掛けられた際に目地プレート3が変形することを防止することができる。また、保持部材6と目地プレート3の接する面に潤滑性を付与することにより、保持部材6と目地プレート3がX-Y面内で変位する際の抵抗を軽減することが可能である。
【0040】
(第二の形態)
図7には、本発明に係る目地装置の実施形態の他の一例について模式的に示す。また、
図8には、当該目地装置をY方向と平行な方向から見た状態を模式的に示す。また、
図9には、
図7に記載する目地装置に使用される目地プレートA~Cについて模式的に示す。
【0041】
図7に示す目地装置では、躯体1,1’の間の溝角部を覆うための目地プレートとしてL字形状を有する目地プレート3A~Cの3枚を使用して、それぞれを保持部材5を使用する等して伸縮式支持装置2の異なるリンク軸21A~Cに取り付けることで、目地プレート3A~Cが協調して動作し、当該溝角部を覆うことができる。
図2等に示すような単一の目地プレート3によって溝角部を覆う場合と比較して、
図7に示すように躯体1,1’の間の溝部の幅方向に複数の目地プレートで覆う構造とすることにより、より大きい溝部の幅の変化に対応して溝角部を覆うことが可能となる。
【0042】
図7に示す目地装置において、目地プレート固定部51Ba1~3,51Bb1~3は、
図1に記載したものと同様に各伸縮式支持装置2の中央部に位置するリンク軸21Bに固定され、躯体1,1’が相互に変位した際の目地プレート固定部51Ba1~3,51Bb1~3は相互に等しい変位量で変位する。このため、当該目地プレート固定部51Ba1~3,51Bb1~3に取り付けられる目地プレート3Bは、
図4に示す目地プレート3と同様に、当該各目地プレート固定部に対応した位置に設けられる取付部32Ba1~3,32Bb1~3によって保持部材5に固定した場合にも、躯体1,1’間の変位に追従して移動可能である。
【0043】
一方、目地プレート3A,Cは、各伸縮式支持装置2の中央部以外に位置するリンク軸21A,Cに保持部材5A,Cを介して、目地プレート固定部51Aa1~3,51Ab1~3、51Ca1~3,51Cb1~3にそれぞれ取り付けられる。当該目地プレート固定部51Aa1~3,51Ab1~3、51Ca1~3,51Cb1~3は、特に取付部材4との取り合い等に起因して、例えば、躯体1’が躯体1に対してX方向に変位した際に、b軸側に設けられた目地プレート固定部51Ab1~3,51Cb1~3はX方向のみに変位する一方で、a軸側に設けられた目地プレート固定部51Aa1~3,51Ca1~3はX方向の変位に加えて、Y方向への変位を生じる結果、
図7における目地プレート固定部51Aa1~3の変位量と、目地プレート固定部51Ab1~3の変位量には違いを生じることとなる。
【0044】
このため、仮に、目地プレート3A,Cについて、目地プレート3Bと同様に特定の位置において目地プレート固定部51と固定した際には、当該目地プレート3A,Cによって伸縮式支持装置2の動作が妨げられるという問題を生じる。一方、目地プレート3A,Cにおいては、例えば、
図9に示すように、取付部32をいわゆる長穴形状にする等して、取付部32Aa1~3(32Ca1~3)と取付部32Ab1~3(32Cb1~3)の間でX,Y方向に所定の自由度を持たせることによって、L字型の目地プレートを使用して躯体1,1’間の溝部の角部を覆うための目地装置を構成することが可能である。
【0045】
図10には、目地プレート3A,Cについて、取付部32Aa1~3(32Ca1~3)と取付部32Ab1~3(32Cb1~3)の間でX,Y方向に自由度を持たせて、変位の不均一を吸収する機構について例示的に示す。
図10(a)に示すように、目地プレート固定部51に目地プレート3に設けた穴部(取付部32)を通じてボルト等で取り付ける際に、当該ボルト等の直径に応じて定まる長さ(α)を基準にして、a軸側の取付部32にb軸方向に所定の自由度を持たせ、b軸側の取付部32にa軸方向の自由度を有する構造にすることによって、目地プレート3A,Cに伸縮式支持装置2の動作に起因した目地プレート固定部51の変位の不均一を吸収可能として、良好に溝部の角部を覆うことが可能となる。
【0046】
また、
図10(b)に示すように、a軸側の取付部32にa軸方向に所定の自由度を持たせ、b軸側の取付部32にb軸方向の自由度を有する構造にすることによっても、同様に伸縮式支持装置2の動作に起因する目地プレート固定部51の変位の不均一を吸収することが可能である。その他、例えば、a軸側の取付部32に、a軸方向及びb軸方向の自由度を持たせ、b軸側の取付部32を変位困難に固定する構造にすることによっても目地プレート固定部51の変位の不均一を吸収可能である。
【0047】
目地プレート3A,Cの取付部32に上記のような目地プレート固定部51との接合の自由度を付与する方法として、上記のように、ボルト等によって目地プレート3に設けた穴部(取付部32)を通じて目地プレート固定部51に固定する際に、当該穴部の大きさを所定の方向に拡大する以外に、例えば、所定の方向に摺動して移動可能なスライド式の固定具を使用し、これを目地プレート固定部51又は目地プレート3の側に取り付ける等、変位の不均一を吸収するために適宜の手段を用いることが可能である。
【0048】
また、
図8に示す保持部材5Aのように、a軸側とb軸側の両方で保持部材5をリンク軸21に回転自在に取り付けることによっても、目地プレート固定部51AにX方向又はY方向の自由度を付加することが可能であり、目地プレート固定部51の変位の不均一を吸収可能である。
【0049】
なお、
図7においては、躯体1,1’間の溝部として、a軸とb軸の2辺が直角に交差すると共に、a軸に沿う溝の幅とb軸に沿う溝の幅が等しい場合について示すが、本発明はこれに限定されず、a軸とb軸の2辺が直角以外の角度で交差する角部や、a軸とb軸に沿う溝の幅が異なる角部を覆うための目地装置として使用することができる。
また、
図7においては、a軸に沿う溝とb軸に沿う溝に、それぞれ3個の伸縮式支持装置2を設ける例を示すが、本発明はこれに限定されず、目地プレートA~Cに加わる加重等に応じて伸縮式支持装置2を配置することができる。
【0050】
また、
図8においては、伸縮式支持装置2を構成するリンク機構について、特に最上部に位置するリンク軸21が3箇所(リンク軸21A~C)の場合を示すが、本発明はこれに限定されず、リンク部材22,23の増減によって、伸縮式支持装置2の最上部に位置するリンク軸21の数(奇数及び偶数)を適宜に設定して、当該最上部に位置するリンク軸21のそれぞれに目地プレートを固定する等により、溝を幅方向に覆う目地プレートの数を適宜に設定し、当該目地プレート群によって覆うことのできる溝の変動幅や、各目地プレートの動作量などを設定することができる。
【0051】
(第三の形態)
図11には、本発明に係る目地装置の実施形態の他の一例について模式的に示す。
図11に示す目地装置は、伸縮式支持装置2を躯体1,1’に取り付けるための取付部材4において、伸縮式支持装置2のリンク部材22,23を取付部材4に回転自在に取り付ける保持支点41を、取付部材4の取付回転軸42の軸上に設けた点で、
図8に示す目地装置と相違する。
【0052】
図12には、取付部材4における、保持支点41と取付回転軸42の位置関係によって生じる伸縮式支持装置2の伸縮挙動の違いを模式的に示す。
図12では、躯体1,1’間にY方向に平行に伸縮式支持装置2Y,2Y’を設けた状態から、躯体1’をX方向に変位させた際の、伸縮式支持装置2の挙動を示す。
【0053】
図8等に示す目地装置で使用される取付部材4(
図12中の(1))では、取付回転軸42を基準として、保持支点41が所定の間隔(
図12中のβ)でオフセットして設けられている。この結果、躯体1’がX方向に変位して取付回転軸42間の距離が伸長した際に、当該伸長分は保持支点41間の伸長によって賄われるため、保持支点41間の伸長率は取付回転軸42間の伸張率を上回ることとなる。これに起因して、伸縮式支持装置2Yの中央部である目地プレート固定部51B以外の目地プレート固定部51A,C等においては、躯体1’の変位がX方向であるにも関わらずY方向にも変位を生じる等、X方向に平行に設けられた伸縮式支持装置2Xの対応する目地プレート固定部と異なった変位量を生じることとなり、これを吸収するために目地プレートA,Cにおいては、例えば
図10に示すような変位の不均一を吸収する手段が必要となる。
【0054】
一方、
図12中の(2)に示す機構によれば、保持支点41’が取付部材4の取付回転軸42’の軸上に設けられているため、保持支点41’間の伸長率と取付回転軸42’間の伸張率が一致し、例えば、躯体1側の取付回転軸42’を頂点として、[1]躯体1’側の伸張前後の取付回転軸42’の間を底辺とする三角形と、[2]伸張前後の目地プレート固定部51C’を底辺とする三角形とを相似形とすることができる。このことにより、
図12に示すような躯体1’がX方向に変位した際に、Y方向に設けられた目地プレート固定部51A’~C’は、それぞれ躯体1側の取付回転軸42’からの距離に応じた量でX方向に変位し、当該変位量は、Y方向に設けられた対応する目地プレート固定部51A”~C”と等しくなる。
【0055】
上記の目地プレート固定部51の変位挙動は、躯体1’がY方向及びZ方向に変位した際にも同様であり、これにより
図12中の(2)に示す機構にすることで、伸縮式支持装置2の中央部である目地プレート固定部51B以外の目地プレート固定部51A,C等に固定される目地プレートA,C等においても、
図10に示すような変位の不均一を吸収する手段が不要となり、目地プレートBと同様に、目地プレート固定部51A,C等に所定の点で固定することが可能となり、目地プレートの安定性を向上することが可能となる。
【0056】
本発明に係る目地装置においては、必ずしも保持支点41を取付部材4の取付回転軸42の軸上に設ける必要はなく、取付部材4の具体的な構成に応じて、適宜のオフセットを設けることができる。上記保持支点41と取付回転軸42の軸のオフセットに起因して生じる各目地プレート固定部51間での変位の不均一量は、当該オフセット量及び、伸縮式支持装置2の全長や、躯体1,1’間の変位量に決定されるが、一般に保持支点41と取付回転軸42の軸のオフセット量を50mm以下にすることにより、
図10等に示すような緩衝手段により十分に吸収されて、目地装置を良好に機能させることができる。また、当該オフセット量を40mm~20mm程度の範囲にすることによって、当該不均一を吸収するための緩衝手段に起因する目地プレートの遊びを縮小して、目地プレートの剛性を高めることができる。
【0057】
更に、オフセット量を10mm以下、好ましくは5mm以下にすることによって、実質的に当該不均一を吸収するための緩衝手段を設けない場合にも、目地プレートの弾性変形等により不均一を吸収可能とすることができる。なお、保持支点41と取付回転軸42の軸のオフセット量(β)は、保持支点41の回転軸と取付回転軸42との軸の最短距離であって、両軸に垂直に交わる線分の長さを意味するものとする。
【0058】
(第四の形態)
図13には、本発明に係る目地装置の実施形態の他の一例について模式的に示す。
図13に記載の目地装置においては、各取付部材4において保持支点41を取付部材4の取付回転軸42の軸上に設けると共に、躯体1,1’の間の溝部の角部に、他の伸縮式支持装置2に対してX-Y面内において45度の角度を成すように伸縮式支持装置2XYを配置している。伸縮式支持装置2XYは、当該装置を構成するリンク構造に含まれるリンク軸21間の間隔を他の伸縮式支持装置2の√2倍にすることにより、保持支点41間の間隔を√2倍にすると共に、その取付回転軸42
*が他の伸縮式支持装置2の取付回転軸42と同一直線上に位置するように配置されている。
【0059】
上記の構成とすることにより、伸縮式支持装置2XYに含まれる目地プレート固定部51A*~C*は、他の伸縮式支持装置2の目地プレート固定部51A~Cと同一直線上に位置するように配置される。また、躯体1’が躯体1に対して変位した際に、目地プレート固定部51A*~C*は、対応する他の伸縮式支持装置2の目地プレート固定部51A~Cと同一の変位量を示すことから、目地プレートA~Cをそれぞれ当該目地プレート固定部51A*~C*に固定した場合にも、各伸縮式支持装置2の動作が拘束されず、良好な目地装置として機能することが可能である。
【0060】
溝部の角部に伸縮式支持装置2XYを配置することにより、特に溝部の外周部(躯体1側)に設けられる目地プレート固定部51の間隔を狭めることが可能であり、目地プレートC等の剛性を高めることができる。
【0061】
また、
図13においては、伸縮式支持装置2XYがa軸方向及びb軸方向の伸縮式支持装置2に対して45度を成すように配置されている。一方、伸縮式支持装置2XYの両端の取付回転軸42
*を他の伸縮式支持装置2の取付回転軸42と同一直線上に位置するように配置することにより、伸縮式支持装置2XYを他の伸縮式支持装置2に対して任意の角度で設置することが可能であり、その目地プレート固定部51A
*~C
*の変位量を、対応する他の伸縮式支持装置2の目地プレート固定部51A~Cと同一の変位量とした状態で、溝部の角部における目地プレート固定部51の間隔を狭めることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明に係る目地装置によれば、免震装置等によって地盤に対して変位可能とされた建物の周囲に設けられる溝部を良好に覆うことが可能となる。
【符号の説明】
【0063】
1 躯体
2 伸縮式支持装置
3 目地プレート
4 取付部材
5 保持部材
6 保持部材
21 リンク軸
22 第一のリンク部材
23 第二のリンク部材
31 取付部を繋ぐ直線
32 取付部
41 保持支点(第一の回転軸)
42 取付回転軸(第二の回転軸)
51 目地プレート固定部
【要約】
【課題】建物の周囲に設けられる屈曲した溝部に設置可能な新規の目地装置を提供すること。
【解決手段】建物の周囲に設けられる第一及び第二の溝部の間で屈曲した溝角部に設置される目地装置であって、複数の伸縮可能な支持装置と、当該支持装置の端部を躯体に取り付けるための第一及び第二の取付部材と、当該支持装置に固定されて溝部を覆うように保持される目地プレートを有し、当該支持装置は、相互に平行な複数の第一のリンク部材と第二のリンク部材が交差する箇所を回転自在にリンク軸で取り付けることで構成されており、当該目地プレートが、上記第一の溝部内に設置される支持装置に含まれる第一のリンク軸と、上記第二の溝部内に設置される支持装置に含まれる第二のリンク軸とに固定されている目地装置。
【選択図】
図1