(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】二酸化炭素含有ガスの処理システム、および二酸化炭素含有ガスの処理方法
(51)【国際特許分類】
B01D 53/14 20060101AFI20240618BHJP
B01D 53/62 20060101ALI20240618BHJP
B01D 53/78 20060101ALI20240618BHJP
C01B 32/50 20170101ALI20240618BHJP
【FI】
B01D53/14 220
B01D53/62 ZAB
B01D53/78
C01B32/50
(21)【出願番号】P 2023067995
(22)【出願日】2023-04-18
【審査請求日】2023-04-18
(73)【特許権者】
【識別番号】500002423
【氏名又は名称】株式会社ジョンクェルコンサルティング
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】落合 茂
【審査官】壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-171706(JP,A)
【文献】特開2021-133318(JP,A)
【文献】特開2022-039025(JP,A)
【文献】特許第7458100(JP,B1)
【文献】特表2017-507771(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0121491(US,A1)
【文献】米国特許第5997833(US,A)
【文献】特表2019-525887(JP,A)
【文献】特表2018-530425(JP,A)
【文献】特開平08-024571(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0001265(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/14-53/18
B01D 53/34-53/73,53/74-53/85,53/92,53/96
C01B 32/00-32/991
C10L 3/00-3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素含有ガスの処理システムであって、
前記二酸化炭素含有ガスと、金属水酸化物およびアセトニトリルを含む水分散体と、を反応させて金属炭酸塩を生成させる二酸化炭素処理手段と、
前記二酸化炭素含有ガスを処理した後の分散体の固液分離を行い、前記金属炭酸塩を含む沈殿物とアセトニトリルを含む残液とを生成する分離手段と、
前記残液を前記二酸化炭素処理手段へ導入する残液導入手段と、
前記沈殿物を加熱分解して二酸化炭素と金属酸化物を生成する加熱手段と、
前記生成された二酸化炭素を加熱して、グラフェンを生成するグラフェン生成手段と、を備え、
前記残液におけるアセトニトリルの量に基づいて、前記残液とともに、前記二酸化炭素処理手段に導入する金属水酸化物およびアセトニトリルを含む水分散体におけるアセトニトリルの含有量が決定される、二酸化炭素含有ガスの処理システム。
【請求項2】
前記加熱手段において生成した金属酸化物を水と反応させて金属水酸化物を生成する金属水酸化物生成手段をさらに備え、前記金属水酸化物生成手段は、前記金属水酸化物を前記二酸化炭素処理手段へ導入する金属水酸化物導入手段を備える、請求項1に記載の二酸化炭素含有ガスの処理システム。
【請求項3】
前記二酸化炭素処理手段における処理済みガスを受容し、前記処理済みガスに残る二酸化炭素と、金属水酸化物およびアセトニトリルを含む水分散体と、を反応させて金属炭酸塩を生成させる二酸化炭素処理手段をさらに備える、請求項1に記載の二酸化炭素含有ガスの処理システム。
【請求項4】
前記二酸化炭素含有ガスは天然ガス由来によるものである、請求項1に記載の二酸化炭素含有ガスの処理システム。
【請求項5】
二酸化炭素含有ガスの処理方法であって、
前記二酸化炭素含有ガスと、金属水酸化物およびアセトニトリルを含む水分散体と、を反応させて金属炭酸塩を生成することと、
前記二酸化炭素含有ガスを処理した後の分散体の固液分離を行い、前記金属炭酸塩を含む沈殿物とアセトニトリルを含む残液とを生成することと、
前記沈殿物を加熱分解して二酸化炭素と金属酸化物を生成することと、
前記生成された二酸化炭素を加熱して、グラフェンを生成することと、を備え、
前記残液が、前記二酸化炭素含有ガスとは別の二酸化炭素含有ガスと反応させるために、前記水分散体とは別の金属水酸化物およびアセトニトリルを含む水分散体と混合される際に、前記残液におけるアセトニトリルの量に基づいて、前記残液と混合する前記別の金属水酸化物およびアセトニトリルを含む水分散体におけるアセトニトリルの含有量が決定される、二酸化炭素含有ガスの処理方法。
【請求項6】
前記加熱分解して生成した金属酸化物を水と反応させて金属水酸化物を生成することをさらに備え、前記金属水酸化物は、前記別の二酸化炭素含有ガスと反応させるために、前記別の金属水酸化物およびアセトニトリルを含む水分散体と混合される、請求項5に記載の二酸化炭素含有ガスの処理方法。
【請求項7】
処理された二酸化炭素含有ガスに残る二酸化炭素と、金属水酸化物およびアセトニトリルを含む水分散体と、を反応させて、金属炭酸塩を生成することとをさらに備える、請求項5に記載の二酸化炭素含有ガスの処理方法。
【請求項8】
前記二酸化炭素含有ガスは天然ガス由来によるものである、請求項5に記載の二酸化炭素含有ガスの処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素含有ガスの処理システム、および二酸化炭素含有ガスの処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化の原因の一つとされている二酸化炭素の削減は、世界的にも重要な課題となっている。二酸化炭素の排出の多くは、石油や石炭等をエネルギ源として使う火力発電からとされている。この火力発電における二酸化炭素の排出量を抑制する(低炭素化)ための方法として、二酸化炭素回収・貯留(CCS=Carbon dioxide Capture and Storage)、および二酸化炭素回収・有効利用・貯留(CCUS:Carbon dioxide Capture,Utilization and Storage)が開発および推進されている。
【0003】
また、天然ガスは、燃焼するときに発生する二酸化炭素の発熱量当りの発生量が少ないため、化石エネルギの中で環境への負荷が少ない燃料とされている。世界的に環境問題への対応やエネルギ資源の多様化への対策が求められる中、天然ガスは石油の代替燃料として注目されている。しかし、ガス田や油田から産出される天然ガスは、主成分のメタンに加えて、多くの場合二酸化炭素を含んでいる。そのため、天然ガスは、それに含まれる二酸化炭素が除去された後に、液化天然ガス等の原料としての製品ガスとして利用される。
【0004】
二酸化炭素の回収または除去技術としては、吸収液を用いた、化学吸収法、物理吸収法、膜分離法、吸着法等が知られており、代表的な回収技術は、アミン水溶液を用いる化学吸収法である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1は、水酸化マグネシウムおよびアセトニトリルを含む水分散体に二酸化炭素を送り込み、二酸化炭素を処理することを開示している。しかしながら、二酸化炭素の処理においては、それによって副産物が生成され、このような副産物の取り扱いを含む、環境に配慮された二酸化炭素の処理システムの構築が望まれていた。
【0007】
本発明の目的は、二酸化炭素の処理にかかる廃棄物を抑制することができる二酸化炭素含有ガスの処理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、
二酸化炭素含有ガスの処理システムであって、
前記二酸化炭素含有ガスと、金属水酸化物およびアセトニトリルを含む水分散体と、を反応させて金属炭酸塩を生成させる二酸化炭素処理手段と、
前記二酸化炭素含有ガスを処理した後の分散体の固液分離を行い、前記金属炭酸塩を含む沈殿物とアセトニトリルを含む残液とを生成する分離手段と、
前記残液を前記二酸化炭素処理手段へ導入する残液導入手段と、
前記沈殿物を加熱分解して二酸化炭素と金属酸化物を生成する加熱手段と、
前記生成された二酸化炭素を加熱して、グラフェンを生成するグラフェン生成手段と、を備え、
前記残液におけるアセトニトリルの量に基づいて、前記残液とともに、前記二酸化炭素処理手段に導入する金属水酸化物およびアセトニトリルを含む水分散体におけるアセトニトリルの含有量が決定される、二酸化炭素含有ガスの処理システムが、提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、二酸化炭素の処理にかかる廃棄物を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態に係る二酸化炭素含有ガスの処理システムの概略図。
【
図2】別の実施形態に係る二酸化炭素含有ガスの処理システムの概略図。
【
図3】さらに別の実施形態に係る二酸化炭素含有ガスの処理システムの概略図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0012】
[一実施形態に係る二酸化炭素含有ガスの処理システム]
一実施形態に係る二酸化炭素含有ガスの処理システムは、二酸化炭素含有ガスと、金属水酸化物およびアセトニトリルを含む水分散体と、を反応させて金属炭酸塩を生成させる二酸化炭素処理手段と、二酸化炭素含有ガスを処理した後の分散体の固液分離を行い、金属炭酸塩の沈殿物とアセトニトリルを含む残液とを生成する分離手段と、残液を二酸化炭素処理手段へ導入する残液導入手段と、沈殿物を加熱分解して二酸化炭素と金属酸化物を生成する加熱手段と、生成された二酸化炭素を加熱して、グラフェンを生成するグラフェン生成手段と、を備えるものである。
【0013】
さらに、一実施形態に係る二酸化炭素含有ガスの処理システムは、残液におけるアセトニトリルの量に基づいて、残液とともに、二酸化炭素処理手段に導入する金属水酸化物およびアセトニトリルを含む水分散体におけるアセトニトリルの含有量が決定されるものである。このように、二酸化炭素含有ガスを処理した後の分散体を、グラフェンとして製品に変換するとともに、使用済みのアセトニトリルを、二酸化炭素含有ガスを処理するための金属水酸化物およびアセトニトリルを含む水分散体において再利用することができる。そのため、二酸化炭素含有ガスの処理において、廃棄物を抑制することができ、さらに、アセトニトリルを再利用することで二酸化炭素含有ガスの処理にかかる費用を抑制することができる。
【0014】
図1は、一実施形態に係る二酸化炭素含有ガスの処理システムの概略図である。本実施形態に係る二酸化炭素含有ガスの処理システム100は、二酸化炭素処理手段10と、分離手段20と、加熱手段30と、グラフェン生成手段40と、を備えるものである。以下、各構成について説明する。
【0015】
<二酸化炭素処理手段>
二酸化炭素処理手段10は、処理容器を備えており、処理容器内で、二酸化炭素含有ガスと、金属水酸化物およびアセトニトリルを含む水分散体と、を反応させて、二酸化炭素含有ガスから二酸化炭素を取り除くとともに、金属炭酸塩を生成させるものである。処理容器は、二酸化炭素含有ガスが導入される二酸化炭素含有ガスの導入口と、金属水酸化物(Me(OH)2)およびアセトニトリル(C2H3N)を含む水分散体(以下、「水分散体」ということがある)が導入される水分散体の導入口と、を備えている。二酸化炭素含有ガスの導入口には、二酸化炭素含有ガスの導入ライン11が連結され、二酸化炭素含有ガスの導入ライン11に設けられたバルブ11aによって、二酸化炭素含有ガスの導入量が調節できるように構成されている。水分散体の導入口には、水分散体の導入ライン12が連結され、水分散体の導入ライン12に設けられたバルブ12a、12bによって、水分散体の導入量が調節できるように構成されている。また、水分散体における金属水酸化物およびアセトニトリルの含有量は、水分散体の導入ライン12に供給される前に調節され得る。
【0016】
処理容器は、その上部に、二酸化炭素含有ガスを処理した後の処理済みガスを取り出す取出口を備えており、処理済みガスの取出口には、処理済みガスの排出ライン71が連結され、処理済みガスの排出ライン71に設けられたバルブ71aによって、処理済みガスの排出量が調節できるように構成されている。さらに、処理容器は、その底部に、二酸化炭素含有ガスを処理した後の分散体を取り出す取出口を備えており、分散体の取出口には、分散体の導入ライン21が連結されている。
【0017】
処理容器は、二酸化炭素含有ガスを処理する際の圧力および温度等に耐え得る耐圧性と、水分散体等を保持する耐食性等を有していれば、特に限定されるものでない。一実施形態において、処理容器の材質は金属とすることができ、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、モネル、ハステロイ、およびニッケル等が例示される。また、処理容器の形状は、円筒状および直方体状の密閉できるものとすることができる。
【0018】
一実施形態において、処理容器は、それに収容される水分散体と接触する内面にライナを有するものとすることができる。ライナは、処理容器に収容される水分散体と常時接触していない内面にも設けてもよく、処理容器の全内面に設けてもよい。ライナはフッ素樹脂層であり、フッ素樹脂層は、例えば、パーフルオロアルコキシアルカン樹脂(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)等で形成される。
【0019】
また、処理容器は、二酸化炭素含有ガスの導入ライン11に接続され、二酸化炭素含有ガスを処理容器に導入する二酸化炭素含有ガス導入手段を有している。一実施形態において、二酸化炭素含有ガス導入手段は、二酸化炭素含有ガスを気泡状に放散させて水分散体と接触させるものとすることができ、例えば、導入管と、バルブと、噴出部と、で構成することができる。また、二酸化炭素含有ガスの導入量または導入速度は、作業者により調節されても、二酸化炭素含有ガス導入手段および二酸化炭素含有ガス源に制御装置を接続して自動で調節されてもよい。
【0020】
また、処理容器は、水分散体の導入ライン12に接続され、水分散体を処理容器に導入する水分散体導入手段を有している。水分散体導入手段は、水分散体を処理容器に導入することができれば特に限定されるものでないが、導入管とバルブで構成することができる。また、水分散体の導入量または導入速度は、作業者により調節されても、水分散体導入手段、水分散体源、および水分散体導入ポンプに制御装置を接続して自動で調節されてもよい。
【0021】
また、処理容器は、ガス採取手段を備えることもできる。ガス採取手段は、処理容器に設けれ、処理容器内の処理済みガスを採取するものである。ガス採取手段は、処理済みガスを処理容器から採取することができれば、特に限定されるものでないが、導出管と、バルブと、で構成することができる。処理容器から採取されたガスは、不図示のガス検知手段によって処理済みガス中の二酸化炭素の濃度を検知され得る。また、ガス検知手段は、ガス採取手段に接続されてもよい。ガス検知手段は、二酸化炭素を検知することができれば、特に限定されるものでなく、ガスクロマトグラフ(GC)、赤外分光光度計(IR)、質量分析計(MS)等が例示される。なお、ガス採取手段は、処理容器内の圧力を調節するためにガスを放出する手段として利用されることもできる。また、処理容器は、必要に応じて、加熱手段、および圧力計等を備えることもできる。
【0022】
<分離手段>
分離手段20は、二酸化炭素処理手段10において、二酸化炭素含有ガスを処理した後の分散体を受容するよう構成されている。分離手段20は、処理容器を備えており、処理容器は、二酸化炭素含有ガスを処理した後の分散体が導入される分散体の導入口を備えている。分散体の導入口には、分散体の導入ライン21が連結され、分散体の導入ライン21に設けられたバルブ21aによって、分散体の導入量が調節できるように構成されている。受容された分散体は、金属炭酸塩(MeCO3)と、アセトニトリルと、水と、を含むものであり、分離手段20は、分散体の固液分離を行い、金属炭酸塩を含む沈殿物と、アセトニトリルを含む残液とを生成させるものである。
【0023】
一実施形態において、分離手段20は、分散体の導入口の前に、分散体を一時的に貯留するタンクを備えてもよい。これにより、分離手段20における分散体の固液分離の完了を待たず、または処理容器が空になるのを待たず、二酸化炭素処理手段10において、二酸化炭素含有ガスの処理を続けて行っても、それにより生じた分散体をタンクで貯留することができる。
【0024】
また、処理容器は、その底部に、金属炭酸塩を含む沈殿物を取り出す取出口を備えており、沈殿物の取出口には、沈殿物の導入ライン31が連結されている。さらに、処理容器は、高さ方向における略中央に、アセトニトリルを含む残液を取り出す取出口を備えており、残液の取出口には、残液の導入ライン13が連結されている。
【0025】
処理容器は、二酸化炭素処理手段10の処理容器と同様に、耐食性等を有していれば、特に限定されるものでない。一実施形態において、処理容器の材質は金属とすることができ、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、モネル、ハステロイ、およびニッケル等が例示される。
【0026】
また、処理容器の形状は、円筒状および直方体状とすることができるが、金属炭酸塩を含む沈殿物を取り出しやすくするために、処理容器の底部は下方に向け凸となる四角錐の形状とすることができる。一実施形態において、処理容器の上部は、処理容器の内部を視認可能なように開放されていてもよい。
【0027】
また、処理容器は、二酸化炭素含有ガスを処理した後の分散体を攪拌する攪拌機や、残液中のアセトニトリルの濃度を検出する検出器を備えていてもよい。例えば、検出方法としては、ガスクロマトグラフィ/質量分析法が例示される。
【0028】
<残液導入手段>
分離手段20と水分散体の導入ライン12との間には、残液を二酸化炭素処理手段10へ導入するための残液導入手段が設けられている。残液導入手段は、残液を二酸化炭素処理手段10へ所望の量で導入するものであり、特に限定されるものでなく、残液の導入ライン13と、バルブ13aと、ポンプ(不図示)等で構成することができる。
【0029】
また、残液の導入量または導入速度は、残液中のアセトニトリルの濃度または量、および金属水酸化物およびアセトニトリルを含む水分散体におけるアセトニトリルの濃度等に応じて、作業者により調節されても、残液導入手段に制御装置を接続して、バルブ12a、12b、13a等を自動で調節するよう構成されてもよい。一実施形態において、残液の導入量または導入速度は一定として、残液中のアセトニトリルの量に基づいて、残液とともに導入される金属水酸化物およびアセトニトリルを含む水分散体におけるアセトニトリルの含有量を作業者または制御装置で決定される。その決定に基づいて、水分散体におけるアセトニトリルの含有量を調節して、二酸化炭素処理手段10へ残液と水分散体を導入してもよい。
【0030】
また、残液中のアセトニトリルの量は、残液の導入ライン13に、残液採取口を設けて、残液中のアセトニトリルの濃度を検出して求められ得る。または、分離手段20に設けられた残液中のアセトニトリルの濃度を検出する検出器によって、残液中のアセトニトリルの量が求められてもよい。
【0031】
また、制御装置は、処理部と、RAM、ROM等の記憶部と、外部デバイスと制御装置との信号の送受信を中継するインタフェース部と、を含んでいる。処理部は、CPUに代表されるプロセッサであり、記憶部に記憶されたプログラムを実行し、二酸化炭素含有ガスの処理システム100の構成を制御する。記憶部には、処理部が実行するプログラムの他、各種のデータが格納される。インタフェース部には、検出器の検出結果が提供され得、処理部は提供された検出結果に基づいて、金属水酸化物およびアセトニトリルを含む水分散体の導入手段等を制御することができる。
【0032】
<加熱手段>
加熱手段30は、分離手段20において分離された金属炭酸塩を含む沈殿物を受容するよう構成されている。加熱手段30は、加熱炉を備えており、加熱炉内で、受容された沈殿物における金属炭酸塩を加熱分解するものである。加熱炉は、金属炭酸塩を含む沈殿物が導入される沈殿物の導入口を備えている。沈殿物の導入口には、沈殿物の導入ライン31が連結され、沈殿物の導入ライン31に設けられたバルブ31aによって、沈殿物の導入量が調節できるように構成されている。分離手段20から加熱手段30まで、沈殿物の導入ライン31を通り移送されるものは、金属炭酸塩を含む沈殿物と少量の水を含む分散体である。分散体における金属炭酸塩の固形分濃度は、特に限定されるものでなく、沈殿物の導入ライン31を通り移送可能であればよい。
【0033】
一実施形態において、加熱手段30は、沈殿物の導入口の前に、金属炭酸塩を含む沈殿物を脱水するために、濾過機を備えてもよい。別の実施形態において、加熱手段30は、沈殿物の導入口の前に、金属炭酸塩を含む沈殿物を脱水乾燥するために、濾過機に加えて乾燥機、または噴霧乾燥器機を備えてもよい。これにより、加熱手段30における金属炭酸塩の加熱分解において、熱効率が向上する。
【0034】
また、加熱炉は、その上部に、二酸化炭素を含むガスを取り出す取出口を備えており、二酸化炭素の取出口には、二酸化炭素の導入ライン41が連結されている。また、加熱炉は、その底部に、金属酸化物(MeO)を取り出す取出口を備えている。
【0035】
加熱炉は、二酸化炭素処理手段10の処理容器と同様に、耐圧性および耐食性等を有していれば、特に限定されるものでない。一実施形態において、加熱炉の材質は金属とすることができ、例えば、ステンレス鋼等が例示される。
【0036】
加熱炉では、沈殿物における金属炭酸塩の脱炭酸反応が行われ、後述するように、生成した二酸化炭素はグラフェン生成に利用される。一実施形態において、沈殿物の加熱雰囲気を減圧雰囲気とすることで、加熱温度を低くすることができるとともに、沈殿物の加熱分解により生成するガスが主に二酸化炭素で構成されるため、グラフェンが効率よく生成される。そのため、加熱炉は、ヒータに加えて、減圧ポンプを備えることができる。
【0037】
<グラフェン生成手段>
グラフェン生成手段40は、加熱手段30において生成された二酸化炭素を受容するよう構成されている。グラフェン生成手段40は、加熱炉を備えており、加熱炉内で、二酸化炭素からグラフェンを生成するものである。加熱炉は、二酸化炭素が導入される二酸化炭素の導入口を備えている。二酸化炭素の導入口には、二酸化炭素の導入ライン41が連結され、二酸化炭素の導入ライン41に設けられたバルブ41aによって、二酸化炭素の導入量が調節できるように構成されている。また、加熱炉は、グラフェンを取り出す取出口を備えており、グラフェンの取出口には、グラフェンの排出ライン72が連結されている。
【0038】
一方、二酸化炭素ガスは、金属(例えば、マグネシウム、銅)の存在下で、所定温度(例えば、600℃)に加熱されると、グラフェンと金属酸化物が形成される(例えば、特開2014-527950号公報参照)。そのため、加熱炉は、その内部に金属を配置する手段を有している。
【0039】
加熱炉は、ヒータを備え、二酸化炭素処理手段10の処理容器と同様に、耐圧性および耐食性等を有していれば、特に限定されるものでない。一実施形態において、加熱炉の材質は金属とすることができ、例えば、ステンレス鋼等が例示される。
【0040】
このように、一実施形態に係る二酸化炭素含有ガスの処理システムは、グラフェン生成手段および残液導入手段を備えているので、廃棄物を抑制することができ、さらに、二酸化炭素含有ガスの処理にかかる費用を抑制することができる。
【0041】
[別の実施形態に係る二酸化炭素含有ガスの処理システム]
図2は、別の実施形態に係る二酸化炭素含有ガスの処理システムの概略図である。別の実施形態に係る二酸化炭素含有ガスの処理システム200は、
図1に示す二酸化炭素含有ガスの処理システム100の加熱手段30に金属水酸化物生成手段50が連結されたものである。以下、一実施形態に係る二酸化炭素含有ガスの処理システム100と異なる点を中心に説明する。また、同一の構成には同一の符号が付与されており、共通する構成の説明は省略する。
【0042】
<金属水酸化物生成手段>
金属水酸化物生成手段50は、加熱手段30において生成された金属酸化物を受容するよう構成されている。金属水酸化物生成手段50は、処理容器を備えており、処理容器内で、金属水酸化物と水との分散体を形成するものである。処理容器は、金属酸化物が導入される金属酸化物の導入口と、水が導入される水の導入口と、を備えている。金属酸化物の導入口には、金属酸化物の導入ライン51が連結され、金属酸化物の導入ライン51に設けられたバルブ51aによって、金属酸化物の導入量が調節できるように構成されている。水の導入口には、水の導入ライン52が連結され、水の導入ライン52に設けられたバルブ52aによって、水の導入量が調節できるように構成されている。また、処理容器は、金属水酸化物(Me(OH)2)と水の分散体(以下、「金属水酸化物の分散体」ということがある)を取り出す取出口を備えており、金属水酸化物の分散体の取出口には、金属水酸化物の分散体の導入ライン14が連結されている。
【0043】
処理容器は、二酸化炭素処理手段10の処理容器と同様に、耐食性等を有していれば、特に限定されるものでない。一実施形態において、処理容器の材質は金属とすることができ、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、モネル、ハステロイ、およびニッケル等が例示される。
【0044】
また、処理容器の形状は、円筒状および直方体状とすることができる。一実施形態において、処理容器の上部は、処理容器の内部を視認可能なように開放されていてもよい。また、処理容器は、金属酸化物と水とを混合するため、攪拌機を備えていてもよい。
【0045】
<金属水酸化物導入手段>
金属水酸化物生成手段50と、水分散体の導入ライン12との間には、金属水酸化物の分散体を二酸化炭素処理手段10へ導入するための金属水酸化物導入手段が設けられている。金属水酸化物導入手段は、金属水酸化物の分散体を二酸化炭素処理手段10へ所望の量で導入することができれば、特に限定されるものでなく、金属水酸化物の分散体の導入ライン14と、バルブ14aと、ポンプ(不図示)等で構成することができる。
【0046】
また、金属水酸化物の分散体の導入量または導入速度は、金属水酸化物の分散体中の金属水酸化物の濃度または量、および金属水酸化物およびアセトニトリルを含む水分散体における金属水酸化物の濃度等に応じて、作業者により調節されても、金属水酸化物の分散体の導入手段に制御装置を接続して、バルブ12a、12b、14a等を自動で調節するよう構成されてもよい。また、金属水酸化物の分散体中の金属水酸化物の量は、処理容器へ導入する金属酸化物と水の量から求められる。
【0047】
<残液導入手段と金属水酸化物導入手段>
一実施形態において、金属水酸化物の分散体中の金属水酸化物の量および残液におけるアセトニトリルの量に基づいて、金属水酸化物の分散体および残液とともに、二酸化炭素処理手段10に導入する金属水酸化物およびアセトニトリルを含む水分散体における金属水酸化物およびアセトニトリルの含有量を作業者または制御装置で決定される。その決定に基づいて、水分散体におけるアセトニトリルの含有量を調節して、二酸化炭素処理手段10へ残液と水分散体を導入してもよい。
【0048】
例えば、金属水酸化物の分散体の導入量または導入速度は一定として、さらに残液の導入量または導入速度は一定として、金属水酸化物の分散体中の金属水酸化物の量および残液中のアセトニトリルの量に基づいて、金属水酸化物の分散体および残液とともに導入される金属水酸化物およびアセトニトリルを含む水分散体における金属水酸化物およびアセトニトリルの含有量を作業者または制御装置で決定される。その決定に基づいて、水分散体における金属水酸化物およびアセトニトリルの含有量を調節して、二酸化炭素処理手段10へ金属水酸化物の分散体と、残液と、水分散体と、を導入してもよい。
【0049】
このように、別の実施形態に係る二酸化炭素含有ガスの処理システムは、金属水酸化物導入手段を備えているので、廃棄物を抑制することができ、さらに、二酸化炭素含有ガスの処理にかかる費用を抑制することができる。
【0050】
[さらに別の実施形態に係る二酸化炭素含有ガスの処理システム]
図3は、さらに別の実施形態に係る二酸化炭素含有ガスの処理システムの概略図である。さらに別の実施形態に係る二酸化炭素含有ガスの処理システム300は、
図2に示す別の実施形態に係る二酸化炭素含有ガスの処理システム200における二酸化炭素処理手段10に、別の二酸化炭素処理手段10aが連結されたものである。以下、別の実施形態に係る二酸化炭素含有ガスの処理システム200と異なる点を中心に説明する。また、同一の構成には同一の符号が付与されており、共通する構成の説明は省略する。
【0051】
<別の二酸化炭素処理手段>
別の二酸化炭素処理手段10aは、二酸化炭素処理手段10において処理された処理済みガスを受容するよう構成されている。別の二酸化炭素処理手段10aは、処理容器を備えており、処理容器内で、処理済みガスと、金属水酸化物およびアセトニトリルを含む水分散体と、を反応させて、処理済みガスから二酸化炭素を取り除くとともに、金属炭酸塩を生成させるものである。処理容器は、処理済みガスが導入される処理済みガスの導入口と、金属水酸化物(Me)およびアセトニトリル(C2H3N)を含む水分散体(以下、「水分散体」ということがある)が導入される水分散体の導入口と、を備えている。処理済みガスの導入口には、処理済みガスの導入ライン71が連結され、処理済みガスの導入ライン71に設けられたバルブ71aによって、処理済みガスの導入量が調節できるように構成されている。水分散体の導入口には、水分散体の導入ライン12が連結され、水分散体の導入ライン12に設けられたバルブ12a、12cによって、水分散体の導入量が調節できるように構成されている。
【0052】
また、処理容器は、その上部に、処理済みガスをさらに処理した後のガスを取り出す取出口を備えており、ガスの取出口には、ガスの排出ライン73が連結され、ガスの排出ライン73に設けられたバルブ73aによって、ガスの取出量が調節できるように構成されている。さらに、処理容器は、その底部に、処理済みガスを処理した後の分散体を取り出す取出口を備えており、分散体の取出口には、分散体の導入ライン22が連結されている。
【0053】
処理容器は、二酸化炭素処理手段10の処理容器と同様に、耐圧性および耐食性等を有するものとすることができ、処理容器の材質および形状も、二酸化炭素処理手段10の処理容器と同様にすることができる。さらに、二酸化炭素処理手段10の処理容器と同様に、処理容器は、内面にライナを有するものとすることができる。
【0054】
また、処理容器は、処理済みガスの導入ライン71に接続され、処理済みガスを処理容器に導入する処理済みガス導入手段を有している。処理済みガス導入手段は、二酸化炭素処理手段10の二酸化炭素含有ガス導入手段と同様に、導入管と、バルブと、噴出部と、で構成することができる。また、処理済みガスの導入量または導入速度は、作業者により調節されても、処理済みガス導入手段に制御装置を接続して自動で調節されてもよい。
【0055】
処理容器は、水分散体の導入ライン12に接続され、水分散体を処理容器に導入する水分散体導入手段を有している。水分散体導入手段は、二酸化炭素処理手段10と同様に、導入管とバルブで構成することができる。また、水分散体の導入量または導入速度は、作業者により調節されても、水分散体導入手段、水分散体源、および水分散体導入ポンプに制御装置を接続して自動で調節されてもよい。また、処理容器は、加熱手段、ガス採取手段、および圧力計等を備えることもできる。
【0056】
<分離手段>
分離手段20aは、二酸化炭素処理手段10および別の二酸化炭素処理手段10aにおいて、二酸化炭素含有ガスを処理した後の分散体、および処理済みガスをさらに処理した後の分散体を受容するよう構成されている。分離手段20aは、処理容器を備えており、処理容器は、二酸化炭素含有ガスを処理した後の分散体が導入される分散体の導入口、および処理済みガスをさらに処理した後の分散体が導入される分散体の導入口を備えている。二酸化炭素含有ガスを処理した後の分散体の導入口には、分散体の導入ライン21が連結され、分散体の導入ライン21に設けられたバルブ21aによって、分散体の導入量が調節できるように構成されている。また、処理済みガスをさらに処理した後の分散体の導入口には、分散体の導入ライン22が連結され、分散体の導入ライン22に設けられたバルブ22aによって、分散体の導入量が調節できるように構成されている。分離手段20aの他の構成は、上述した分離手段20と同様である。また、受容された分散体は、金属炭酸塩(MeCO3)と、アセトニトリルと、水と、を含むものであり、分離手段20aは、分散体の固液分離を行い、金属炭酸塩を含む沈殿物と、アセトニトリルを含む残液とを生成させる。
【0057】
<残液導入手段、および金属水酸化物導入手段>
残液導入手段、および金属水酸化物導入手段の構成は、二酸化炭素処理手段10に加えて、二酸化炭素処理手段10aへ金属水酸化物の分散体と残液を導入することを除き、上述した残液導入手段、および金属水酸化物導入手段と同様である。
【0058】
二酸化炭素処理手段10、および二酸化炭素処理手段10aへの残液の導入量または導入速度は、残液中のアセトニトリルの濃度または量、および金属水酸化物およびアセトニトリルを含む水分散体におけるアセトニトリルの濃度等に応じて、作業者により調節されても、残液導入手段に制御装置を接続して、バルブ12a、12b、12c、13a等を自動で調節するよう構成されてもよい。
【0059】
また、二酸化炭素処理手段10、および二酸化炭素処理手段10aへの金属水酸化物の分散体の導入量または導入速度は、金属水酸化物の分散体中の金属水酸化物の濃度または量、および金属水酸化物およびアセトニトリルを含む水分散体における金属水酸化物の濃度等に応じて、作業者により調節されても、金属水酸化物の分散体の導入手段に制御装置を接続して、バルブ12a、12b、14a等を自動で調節するよう構成されてもよい。
【0060】
一実施形態において、金属水酸化物の分散体中の金属水酸化物の量および残液におけるアセトニトリルの量に基づいて、金属水酸化物の分散体および残液とともに、二酸化炭素処理手段10および別の二酸化炭素処理手段10aに導入する金属水酸化物およびアセトニトリルを含む水分散体における金属水酸化物およびアセトニトリルの含有量を作業者または制御装置で決定される。その決定に基づいて、水分散体における金属水酸化物およびアセトニトリルの含有量を調節して、二酸化炭素処理手段10および別の二酸化炭素処理手段10aへ残液と水分散体を導入してもよい。
【0061】
例えば、金属水酸化物の分散体の導入量または導入速度は一定として、さらに残液の導入量または導入速度は一定として、金属水酸化物の分散体中の金属水酸化物の量および残液中のアセトニトリルの量に基づいて、金属水酸化物の分散体および残液とともに導入される金属水酸化物およびアセトニトリルを含む水分散体における金属水酸化物およびアセトニトリルの含有量を作業者または制御装置で決定される。その決定に基づいて、水分散体における金属水酸化物およびアセトニトリルの含有量を調節して、二酸化炭素処理手段10および別の二酸化炭素処理手段10aへ金属水酸化物の分散体と、残液と、水分散体と、を導入してもよい。
【0062】
このように、さらに別の二酸化炭素含有ガスの処理システムは、二酸化炭素処理手段10に加えて、別の二酸化炭素処理手段10aを備えているので、二酸化炭素含有ガス中の二酸化炭素の除去率が向上する。また、さらに別の二酸化炭素含有ガスの処理システムは、二酸化炭素処理手段を2つ有しているが、さらに、二酸化炭素処理手段を有するよう構成されてもよい。
【0063】
[一実施形態に係る二酸化炭素含有ガスの処理方法]
一実施形態に係る二酸化炭素含有ガスの処理方法は、上述した一実施形態に係る二酸化炭素含有ガスの処理システムを使用するものである。一実施形態に係る二酸化炭素含有ガスの処理方法は、二酸化炭素含有ガスと、金属水酸化物およびアセトニトリルを含む水分散体と、を反応させて金属炭酸塩を生成する工程と、二酸化炭素含有ガスを処理した後の分散体の固液分離を行い、金属炭酸塩を含む沈殿物とアセトニトリルを含む残液とを生成する工程と、沈殿物を加熱分解して二酸化炭素と金属酸化物を生成する工程と、生成された二酸化炭素を加熱して、グラフェンを生成する工程と、を備える。さらに、残液が、処理された二酸化炭素含有ガスとは別の二酸化炭素含有ガスと反応させるために、使用された水分散体とは別の金属水酸化物およびアセトニトリルを含む水分散体と混合される際に、残液におけるアセトニトリルの量に基づいて、残液と混合する別の金属水酸化物およびアセトニトリルを含む水分散体におけるアセトニトリルの含有量を決定する工程を備える。
【0064】
<金属炭酸塩を生成させる二酸化炭素含有ガスの処理工程>
(金属水酸化物とアセトニトリルとを含む水分散体)
金属水酸化物とアセトニトリルとを含む水分散体が、水分散体導入手段を介して、二酸化炭素処理手段10の処理容器に導入される。水分散体の導入量は、二酸化炭素含有ガス中の二酸化炭素の濃度をガス検知手段等により測定しておき、処理する二酸化炭素含有ガスの量と測定された二酸化炭素の濃度に応じて調節されることができる。また、水分散体における金属水酸化物およびアセトニトリルの含有量は、水分散体の導入ライン12に供給される前に調節され得る。
【0065】
水と、金属水酸化物と、アセトニトリルと、を含む水分散体に対する金属水酸化物の濃度は特に限定されるものでない。金属水酸化物の濃度は、その固形分含有量として、一実施形態において1重量%以上、別の実施形態において5重量%以上、さらに別の実施形態において10重量%以上、さらに別の実施形態において20重量%以上、さらに別の実施形態において30重量%以上であり得る。これにより、水分散体における二酸化炭素の吸収効率が向上する。また、金属水酸化物の濃度は、その固形分含有量として、一実施形態において80重量%以下、別の実施形態において70重量%以下、さらに別の実施形態において60重量%以下、さらに別の実施形態において50重量%以下、さらに別の実施形態において40重量%以下であり得る。これにより、水分散体が適切な粘度となり、金属水酸化物と二酸化炭素との反応が均一となる。
【0066】
水と、金属水酸化物と、アセトニトリルと、を含む水分散体に対するアセトニトリルの濃度は特に限定されるものでない。アセトニトリルの濃度は、一実施形態において1重量%以上、別の実施形態において5重量%以上、さらに別の実施形態において10重量%以上、さらに別の実施形態において20重量%以上であり得る。また、アセトニトリルの濃度は、一実施形態において60重量%以下、別の実施形態において50重量%以下、さらに別の実施形態において40重量%以下、さらに別の実施形態において30重量%以下であり得る。これにより、水分散体における二酸化炭素の吸収速度の調節が容易になる。
【0067】
金属水酸化物
金属水酸化物としては、水酸化カルシウム、および水酸化マグネシウムが例示される。さらに、これらの金属水酸化物に加えて、水酸化バリウム、水酸化亜鉛、および水酸化ナトリウムが追加され得る。特許第6905693号、特許第6905694号、および特許第7054431号に開示されるように、金属水酸化物は、その導入量によって、二酸化炭素含有ガス中の二酸化炭素の処理速度を調節することができるものである。
【0068】
一実施形態において、二酸化炭素との反応性の観点から、金属水酸化物としては、水酸化カルシウムが使用されることができる。水酸化カルシウムの純度は、一実施形態において80重量%以上、別の実施形態において90重量%以上、さらに別の実施形態において95重量%以上とすることができる。これにより、水分散体における二酸化炭素の吸収効率が向上する。
【0069】
一実施形態において、水酸化カルシウムは粉末であり得る。水酸化カルシウムの平均粒径(D50)は、一実施形態において1000μm以下、別の実施形態において500μm以下、さらに別の実施形態において100μm以下、さらに別の実施形態において50μm以下、さらに別の実施形態において1μm以下である。また、水酸化カルシウムの平均粒径(D50)は、一実施形態において0.01μm以上、別の実施形態において0.1μm以上、さらに別の実施形態において0.5μm以上、さらに別の実施形態において0.7μm以上、さらに別の実施形態において0.9μm以上である。水酸化カルシウムがこのような平均粒径を有することで、水酸化カルシウムと、二酸化炭素との反応が向上する。平均粒径(D50)は、レーザー回折・散乱法に基づく体積基準の粒度分布により得られる値であり、D50値は累積50%での粒径(メジアン径)を意味する。
【0070】
アセトニトリル
水分散体に含まれるアセトニトリルは、特に限定されるものでない。アセトニトリルの純度は、一実施形態において90重量%以上、別の実施形態において95重量%以上、さらに別の実施形態において98重量%以上、さらに別の実施形態において99重量%以上とすることができる。これにより、水分散体における二酸化炭素の吸収速度の調節が向上する。
【0071】
水分散体に含まれる水
水分散体に含まれる水は、溶媒として機能するもので、特に限定されるものでない。水の由来としては特に限定されず、水道水、地下水、蒸留水、イオン交換水等を用いることができる。
【0072】
添加物
一実施形態において、金属水酸化物とアセトニトリルとを含む水分散体は、種々の添加物、例えば分散剤を含むことができる。分散剤の材料は特に制限されるものでなく、例えば、無機化合物の分散剤、高分子界面活性剤等が例示される。これにより、金属水酸化物の固形分濃度が高い場合でも、金属水酸化物の分散性が向上し、金属水酸化物と二酸化炭素との反応が均一となる。
【0073】
(二酸化炭素含有ガス)
二酸化炭素含有ガスは、二酸化炭素含有ガス導入手段を介して、二酸化炭素処理手段10の処理装容器に導入される。二酸化炭素含有ガスの導入量および導入速度は、二酸化炭素含有ガス導入手段のバルブによって調節され得る。
【0074】
二酸化炭素含有ガスは、純粋な二酸化炭素に限らず、二酸化炭素を含むものであればよい。一実施形態において、天然ガスのガス田および天然ガス精製設備から排出されるガスには、高濃度の二酸化炭素が含まれており、二酸化炭素含有ガスとして、このような天然ガス由来のガスが挙げられる。また、二酸化炭素含有ガスとしては、例えば、火力発電所、製造所のボイラ、セメント工場のキルン、製鉄所の高炉および転炉、焼却炉等の各種施設や設備から排出されるガスも挙げられる。これらのガスには、液化天然ガス(LNG)および液化石油ガス(LP)等の気体燃料、重油、ガソリン、および軽油等の液体燃料、石炭等の固体燃料等を燃焼させて発生する二酸化炭素が含まれている。
【0075】
二酸化炭素含有ガス中における二酸化炭素の濃度は、特に限定されるものではない。二酸化炭素の濃度は、一実施形態において1体積%以上、別の実施形態において2体積%以上、さらに別の実施形態において10体積%以上、さらに別の実施形態において20体積%以上、さらに別の実施形態において40体積%以上であり得る。また、二酸化炭素の濃度は、一実施形態において70体積%以下、別の実施形態において65体積%以下、さらに別の実施形態において60体積%以下、さらに別の実施形態において55体積%以下、さらに別の実施形態において50体積%以下であり得る。これにより、十分な吸収速度および吸収量で、水分散体に二酸化炭素は吸収され得る。なお、ガス中には、二酸化炭素以外に水蒸気、NOx、SOx、CO、H2S、COS、H2、O2等が含まれ得る。
【0076】
(二酸化炭素含有ガスと水分散体との接触および反応)
二酸化炭素処理手段10の処理容器に導入された二酸化炭素含有ガスは、噴出部から水分散体中に噴出され、気泡状に放散させて水分散体と接触する。噴出した二酸化炭素含有ガス(または気泡)は、水分散体を攪拌する。
【0077】
水分散体と接触した二酸化炭素含有ガスの気泡は、水分散体中の金属水酸化物と反応して、金属炭酸塩を生成する。その際の水分散体の温度は、特に限定されるものでなく、常温(例えば、25±15℃)で行われ得る。これにより、二酸化炭素の吸収速度や吸収量が向上し得る。また、処理容器内の圧力は、圧力計で計測されることができる。処理容器内の圧力は、特に限定されるものでなく、例えば、大気圧以上の圧力に設定され得る。これにより、二酸化炭素含有ガスの水分散体に対する吸収速度や吸収量が向上し得る。または、二処理容器内の圧力は、大気圧未満の圧力に設定され得る。
【0078】
二酸化炭素含有ガスと水分散体の反応の終了は、予備実験等により予め決められた時間が経過したところとしてもよく、ガス採取手段により処理容器内の処理済みガスを所定時間後または所定時間毎に採取し、ガス検知手段により二酸化炭素の濃度を測定し、所定の二酸化炭素の濃度となったところとしてもよい。
【0079】
処理ガスの回収
二酸化炭素含有ガスと水分散体との反応が終了した後、処理容器内に存在する処理されたガスは、処理容器の上部に設けられた処理済みガスの排出ライン71を介して、処理容器から回収されることができる。二酸化炭素含有ガスが天然ガス精製設備から排出されるガス(天然ガス由来のガス)である場合は、回収されたガスは、液化天然ガス等の原料としての製品ガスとされる。二酸化炭素含有ガスが各種施設や設備から排出されるガスの場合は、回収されたガスは、必要に応じて、他の成分の除去や別の処理がなされ、その後、排出される。
【0080】
<分散体の固液分離工程>
二酸化炭素含有ガスを処理した後の分散体は、分離手段20の処理容器に導入される。分散体は、処理容器内で静置され、金属炭酸塩を含む沈殿物と、アセトニトリルを含む残液(上澄液)に分離される。静置中の分散体の温度および圧力は、特に限定されるものでなく、常温(例えば、25±15℃)および常圧(例えば、約101kPa)で行われ得る。また、一実施形態において、固液分離の促進の観点から、分散体に、凝集剤が添加されてもよく、その場合、分散体は、凝集剤を添加して撹拌されて、静置されてもよい。凝集剤は、特に限定されるものでなく、高分子凝集剤等の有機系凝集剤や、ポリ塩化アルミニウムや硫酸バンド等の無機系凝集等が使用され得る。
【0081】
<沈殿物の加熱分解工程>
分離手段20において分離された金属炭酸塩を含む沈殿物は、加熱手段30の加熱炉に導入される。沈殿物は、主に金属炭酸塩を含み、水およびアセトニトリル等を含むものであり、加熱炉に沈殿物を導入して、所定温度に加熱することで、沈殿物は、金属酸化物と二酸化炭素とに分解される。一方、熱効率の観点から、濾過機、濾過機および乾燥機、または噴霧乾燥器機等により、金属炭酸塩を含む沈殿物の含水率が、一実施形態において20%以下、別の実施形態において10%以下になるように、沈殿物を脱水してから、加熱炉で加熱分解してもよい。
【0082】
加熱炉における、沈殿物の加熱温度は、特に限定されるものでないが、一実施形態において600℃以上、別の実施形態において750℃以上、さらに別の実施形態において800℃以上とすることができ、一実施形態において1200℃以下、別の実施形態において1100℃以下、さらに別の実施形態において950℃以下とすることができる。
【0083】
加熱炉における、沈殿物の加熱時間は、特に限定されるものでないが、一実施形態において0.1時間以上、別の実施形態において0.5時間以上とすることができ、一実施形態において2時間以下、別の実施形態において1時間以下とすることができる。また、加熱炉内部は、二酸化炭素を多く含む雰囲気となっている。
【0084】
加熱手段30において生成された金属酸化物は、加熱炉の底部に設けられた金属酸化物の取出口から回収され得る。このようにして得られた金属酸化物は、吸湿剤、脱水剤、塩基性炉材、セメント材料、医薬品、食品、加硫促進剤、塗料・インキ用顔料、断熱材、耐熱部材、電子基板部材、絶縁部材等として利用され得る。
【0085】
<グラフェンの生成工程>
加熱手段30において生成された二酸化炭素は、グラフェン生成手段40の加熱炉に導入される。二酸化炭素は、主に二酸化炭素で構成されており、アセトニトリル等の分解により生成されたガスも含むものであるが、加熱炉内で、金属(例えば、マグネシウム、銅)の存在下で、二酸化炭素を所定温度に加熱することで、グラフェンが形成される(例えば、特開2014-527950号公報参照)。
【0086】
加熱炉における、二酸化炭素の加熱温度は、特に限定されるものでないが、一実施形態において650℃以上、別の実施形態において750℃以上、さらに別の実施形態において800℃以上とすることができ、一実施形態において1000℃以下、別の実施形態において950℃以下、さらに別の実施形態において900℃以下とすることができる。
【0087】
加熱炉における、二酸化炭素の加熱時間は、特に限定されるものでないが、一実施形態において0.1時間以上、別の実施形態において0.5時間以上とすることができ、一実施形態において2時間以下、別の実施形態において1時間以下とすることができる。
【0088】
生成したグラフェンは、加熱炉に設けられたグラフェンの排出ライン72から、バルブ72aを介して回収され得る。また、グラフェン生成において使用した金属は酸化され、金属酸化物が形成されるため、生成したグラフェンには、金属、酸化物等が含まれることがあるが、金属、酸化物等は、水および酸性水溶液の少なくとも1つと混合し、ろ過等することにより、グラフェンは、金属、酸化物等と分離され得る。このようにして得られたグラフェンは、導電性、光学特性、スピン輸送、磁場効果等有し、電子デバイス構成要素として利用され得る。
【0089】
<残液の再利用工程>
分離手段20において分離されたアセトニトリルを含む残液(上澄液)は、上記二酸化炭素含有ガスの処理工程において処理された二酸化炭素含有ガスとは別の二酸化炭素含有ガスと反応させるために、上記二酸化炭素含有ガスの処理工程において使用された水分散体とは別の金属水酸化物およびアセトニトリルを含む水分散体と混合されて、二酸化炭素処理手段10の処理容器に導入される。
【0090】
残液が、上記別の金属水酸化物およびアセトニトリルを含む水分散体と混合される際、残液におけるアセトニトリルの量に基づいて、残液と混合する別の金属水酸化物およびアセトニトリルを含む水分散体におけるアセトニトリルの含有量が決定されて、別の水分散体におけるアセトニトリルの含有量を調節して、二酸化炭素処理手段10へ残液と水分散体が導入される。
【0091】
一実施形態において、残液は、主に水とアセトニトリルを含み、金属炭酸塩等も含むものである。分離手段20における固液分離の条件にもよるが、残液には、上記二酸化炭素含有ガスの処理工程において導入された金属水酸化物とアセトニトリルとを含む水分散体中のアセトニトリルの量の40重量%程度またはそれ以下のアセトニトリルが含まれ得る。
【0092】
例えば、残液に、上記二酸化炭素含有ガスの処理工程において導入された金属水酸化物とアセトニトリルとを含む水分散体中のアセトニトリルの量の40重量%のアセトニトリルが含まれていた場合、残液と混合する別の金属水酸化物およびアセトニトリルを含む水分散体におけるアセトニトリルの含有量は、必要量のアセトニトリルの量から残液に含まれるアセトニトリルの量(40重量%)を差し引いた量となるよう決定されて、別の水分散体におけるアセトニトリルの含有量を調節して、二酸化炭素処理手段10へ残液と水分散体が導入される。
【0093】
このように、一実施形態に係る二酸化炭素含有ガスの処理方法は、副産物からグラフェンを生成し、アセトニトリルを再利用するので、廃棄物を抑制することができ、さらに、二酸化炭素含有ガスの処理にかかる費用を抑制することができる。
【0094】
[別の実施形態に係る二酸化炭素含有ガスの処理方法]
別の実施形態に係る二酸化炭素含有ガスの処理方法は、上述した別の実施形態に係る二酸化炭素含有ガスの処理システムを使用するものである。以下、一実施形態に係る二酸化炭素含有ガスの処理方法と異なる点を中心に説明する。
【0095】
別の実施形態に係る二酸化炭素含有ガスの処理方法は、加熱分解して生成した金属酸化物を水と反応させて金属水酸化物を生成して、金属水酸化物を、先の二酸化炭素含有ガスの処理工程において導入された二酸化炭素含有ガスとは別の二酸化炭素含有ガスと反応させるために、その先の二酸化炭素含有ガスの処理工程において導入された金属水酸化物およびアセトニトリルを含む水分散体とは別の金属水酸化物およびアセトニトリルを含む水分散体と混合される工程を備えるものである。
【0096】
<金属水酸化物の再利用工程>
水が金属水酸化物生成手段50の処理容器に導入され、加熱手段30において生成された金属酸化物が、金属水酸化物生成手段50の処理容器に導入される。これにより、処理容器内で、金属酸化物と水とが混合され、金属水酸化物と水との分散体が形成される。
【0097】
例えば、加熱手段30において生成された金属酸化物が酸化カルシウムであり、酸化カルシウムと水とが混合されて、水酸化カルシウムと水との分散体が形成される場合、酸化カルシウムと水との反応において、溶解熱が発生するため、処理容器内を加熱せず、常温(例えば、25±15℃)で行われ得る。また、例えば、加熱手段30において生成された金属酸化物が酸化マグネシウムであり、酸化マグネシウムと水とが混合されて、水酸化マグネシウムと水との分散体が形成される場合、酸化マグネシウムと水との反応において、熱は発生するが、反応速度が遅いため、例えば、処理容器内を80から90℃に加熱保温してもよい。
【0098】
金属水酸化物生成手段50において生成された金属水酸化物と水との分散体は、先の二酸化炭素含有ガスの処理工程において処理された二酸化炭素含有ガスとは別の二酸化炭素含有ガスと反応させるために、先の二酸化炭素含有ガスの処理工程において使用された水分散体とは別の金属水酸化物およびアセトニトリルを含む水分散体と混合されて、二酸化炭素処理手段10の処理容器に導入される。
【0099】
金属水酸化物と水との分散体が、上記別の金属水酸化物およびアセトニトリルを含む水分散体と混合される際、金属水酸化物と水との分散体における金属水酸化物の量に基づいて、金属水酸化物と水との分散体と混合する別の金属水酸化物およびアセトニトリルを含む水分散体における金属水酸化物の含有量が決定されて、別の水分散体における金属水酸化物の含有量を調節して、二酸化炭素処理手段10へ金属水酸化物と水との分散体と水分散体が導入される。
【0100】
一実施形態において、金属水酸化物と水との分散体は、主に水と金属水酸化物を含み、アセトニトリル等も含むものである。金属水酸化物と水との分散体における金属水酸化物の含有量は、金属水酸化物生成手段50の処理容器に導入する金属水酸化物と水の量で調節されることができる。金属水酸化物の濃度は、その固形分含有量として、一実施形態において1重量%以上、別の実施形態において5重量%以上、さらに別の実施形態において10重量%以上、さらに別の実施形態において20重量%以上、さらに別の実施形態において30重量%以上であり得る。
【0101】
例えば、金属水酸化物と水との分散体と混合する別の金属水酸化物およびアセトニトリルを含む水分散体における金属水酸化物の含有量は、二酸化炭素含有ガスの処理に必要な量の金属水酸化物の量から金属水酸化物と水との分散体に含まれる金属水酸化物の量を差し引いた量となるよう決定されて、別の水分散体における金属水酸化物の含有量を調節して、二酸化炭素処理手段10へ金属水酸化物と水との分散体と水分散体が導入される。
【0102】
<残液および金属水酸化物の再利用工程>
一実施形態において、残液および金属水酸化物と水との分散体が、上記別の金属水酸化物およびアセトニトリルを含む水分散体と混合される際、残液におけるアセトニトリルの量および金属水酸化物と水との分散体における金属水酸化物の量に基づいて、残液および金属水酸化物と水との分散体と混合する別の金属水酸化物およびアセトニトリルを含む水分散体におけるアセトニトリルおよび金属水酸化物の含有量が決定される。その決定に基づいて、別の水分散体におけるアセトニトリルおよび金属水酸化物の含有量を調節して、二酸化炭素処理手段10へ、残液と、金属水酸化物と水との分散体と、水分散体と、が導入される。
【0103】
例えば、残液および金属水酸化物と水との分散体と混合する別の金属水酸化物およびアセトニトリルを含む水分散体におけるアセトニトリルおよび金属水酸化物の含有量は、二酸化炭素含有ガスの処理に必要な量のアセトニトリルおよび金属水酸化物の量から、残液に含まれるアセトニトリルの量および金属水酸化物と水との分散体に含まれる金属水酸化物の量をそれぞれ差し引いた量となるよう決定される。その決定に基づいて、別の水分散体におけるアセトニトリルおよび金属水酸化物の含有量を調節して、二酸化炭素処理手段10へ金属水酸化物と水との分散体と水分散体が導入される。
【0104】
このように、別の実施形態に係る二酸化炭素含有ガスの処理方法は、副産物から金属水酸化物を生成するので、廃棄物を抑制することができ、さらに、二酸化炭素含有ガスの処理にかかる費用を抑制することができる。
【0105】
[さらに別の実施形態に係る二酸化炭素含有ガスの処理方法]
さらに別の実施形態に係る二酸化炭素含有ガスの処理方法は、上述したさらに別の実施形態に係る二酸化炭素含有ガスの処理システムを使用するものである。以下、一実施形態に係る二酸化炭素含有ガスの処理方法と異なる点を中心に説明する。
【0106】
さらに別の実施形態に係る二酸化炭素含有ガスの処理方法は、処理された二酸化炭素含有ガスに残る二酸化炭素と、金属水酸化物およびアセトニトリルを含む水分散体と、を反応させて、金属炭酸塩を生成させる二酸化炭素含有ガスの処理工程を備えるものである。
【0107】
<さらに金属炭酸塩を生成させる二酸化炭素含有ガスの処理工程>
二酸化炭素処理手段10において処理された処理済みガスが、処理済みガスの導入ライン71を介して別の二酸化炭素処理手段10aの処理容器に導入され、金属水酸化物とアセトニトリルとを含む水分散体が、水分散体導入手段を介して、別の二酸化炭素処理手段10aの処理容器に導入される。
【0108】
水分散体の導入量は、処理済みガス中の二酸化炭素の濃度をガス検知手段等により測定して、その二酸化炭素を処理可能な量に調節されることができる。また、水分散体における金属水酸化物およびアセトニトリルの含有量は、水分散体の導入ライン12に供給される前に調節され得る。
【0109】
金属水酸化物とアセトニトリルとを含む水分散体に含まれる金属水酸化物、アセトニトリル、および水は、[一実施形態に係る二酸化炭素含有ガスの処理方法]において説明したものと同様のものを使用することができる。
【0110】
別の二酸化炭素処理手段10aの処理容器に導入された処理済みガスは、二酸化炭素処理手段10と同様に、噴出部から水分散体中に噴出され、気泡状に放散させて水分散体と接触する。噴出した二酸化炭素含有ガス(または気泡)は、水分散体を攪拌する。
【0111】
水分散体と接触した処理済みガスの気泡は、水分散体中の金属水酸化物と反応して、金属炭酸塩を生成する。その際の水分散体の温度は、特に限定されるものでなく、常温(例えば、25±15℃)で行われ得る。これにより、二酸化炭素の吸収速度や吸収量が向上し得る。また、処理容器内の圧力は、圧力計で計測されることができる。処理容器内の圧力は、特に限定されるものでなく、例えば、大気圧以上の圧力に設定され得る。これにより、二酸化炭素含有ガスの水分散体に対する吸収速度や吸収量が向上し得る。または、二処理容器内の圧力は、大気圧未満の圧力に設定され得る。
【0112】
二処理済みガスと水分散体の反応の終了は、予備実験等により予め決められた時間が経過したところとしてもよく、ガス採取手段により処理容器内のガスを所定時間後または所定時間毎に採取し、ガス検知手段により二酸化炭素の濃度を測定し、所定の二酸化炭素の濃度となったところとしてもよい。
【0113】
処理済みガスと水分散体との反応が終了した後、処理容器内に存在する処理されたガスは、処理容器の上部に設けられたガスの排出ライン73を介して、処理容器から回収されることができる。二酸化炭素含有ガスが天然ガス精製設備から排出されるガス(天然ガス由来のガス)である場合は、回収されたガスは、液化天然ガス等の原料としての製品ガスとされる。二酸化炭素含有ガスが各種施設や設備から排出されるガスの場合は、回収されたガスは、必要に応じて、他の成分の除去や別の処理がなされ、その後、排出される。
【0114】
さらに別の実施形態に係る二酸化炭素含有ガスの処理方法では、処理済みガスを処理した後の分散体を固液分離する工程を備えてもよい。処理済みガスを処理した後の分散体は、二酸化炭素含有ガスを処理した後の分散体とともに、分離手段20aの処理容器に導入される。分散体は、処理容器内で静置され、金属炭酸塩を含む沈殿物と、アセトニトリルを含む残液(上澄液)に分離される。固液分離における条件等は、[一実施形態に係る二酸化炭素含有ガスの処理方法]において説明したものと同様のものを使用することができる。
【0115】
また、分離手段20aにおいて分離された金属炭酸塩を含む沈殿物は、[一実施形態に係る二酸化炭素含有ガスの処理方法]において説明したように、加熱手段30の加熱炉に導入され、所定温度に加熱することで、沈殿物は、金属酸化物と二酸化炭素とに分解される。
【0116】
分離手段20aにおいて分離されたアセトニトリルを含む残液(上澄液)は、先の二酸化炭素含有ガスの処理工程において処理された二酸化炭素含有ガスや処理済みガスとは別の二酸化炭素含有ガスや処理済みガスと反応させるために、先の二酸化炭素含有ガスの処理工程において使用された水分散体とは別の金属水酸化物およびアセトニトリルを含む水分散体と混合されて、二酸化炭素処理手段10および別の二酸化炭素処理手段10aの処理容器に導入される。
【0117】
さらに別の実施形態に係る二酸化炭素含有ガスの処理方法では、残液および金属水酸化物の再利用工程を備えてもよい。残液および金属水酸化物と水との分散体が、先の二酸化炭素含有ガスの処理工程において使用された金属水酸化物およびアセトニトリルを含む水分散体とは別の水分散体と混合される際、残液におけるアセトニトリルの量および金属水酸化物と水との分散体における金属水酸化物の量に基づいて、残液および金属水酸化物と水との分散体と混合する別の金属水酸化物およびアセトニトリルを含む水分散体におけるアセトニトリルおよび金属水酸化物の含有量が、二酸化炭素処理手段10および二酸化炭素処理手段10aのそれぞれに対して決定される。その決定に基づき、別の水分散体におけるアセトニトリルおよび金属水酸化物の含有量を調節して、二酸化炭素処理手段10および二酸化炭素処理手段10aへ、残液と、金属水酸化物と水との分散体と、水分散体と、が導入される。残液および金属水酸化物と水との分散体の導入方法は、[別の実施形態に係る二酸化炭素含有ガスの処理方法]において説明したものと同様のものを採用することができる。
【0118】
このように、さらに別の二酸化炭素含有ガスの処理方法は、二酸化炭素処理手段10に加えて、別の二酸化炭素処理手段10aを備えているので、二酸化炭素含有ガス中の二酸化炭素の除去率が向上する。
【0119】
<実施形態のまとめ>
本明細書の開示は、以下の二酸化炭素含有ガスの処理システムおよび二酸化炭素含有ガスの処理方法を含む。
【0120】
(項目1)
二酸化炭素含有ガスの処理システムであって、
前記二酸化炭素含有ガスと、金属水酸化物およびアセトニトリルを含む水分散体と、を反応させて金属炭酸塩を生成させる二酸化炭素処理手段と、
前記二酸化炭素含有ガスを処理した後の分散体の固液分離を行い、前記金属炭酸塩を含む沈殿物とアセトニトリルを含む残液とを生成する分離手段と、
前記残液を前記二酸化炭素処理手段へ導入する残液導入手段と、
前記沈殿物を加熱分解して二酸化炭素と金属酸化物を生成する加熱手段と、
前記生成された二酸化炭素を加熱して、グラフェンを生成するグラフェン生成手段と、を備え、
前記残液におけるアセトニトリルの量に基づいて、前記残液とともに、前記二酸化炭素処理手段に導入する金属水酸化物およびアセトニトリルを含む水分散体におけるアセトニトリルの含有量が決定される、二酸化炭素含有ガスの処理システム。
【0121】
(項目2)
前記加熱手段において生成した金属酸化物を水と反応させて金属水酸化物を生成する金属水酸化物生成手段をさらに備え、前記金属水酸化物生成手段は、前記金属水酸化物を前記二酸化炭素処理手段へ導入する金属水酸化物導入手段を備える、項目1に記載の二酸化炭素含有ガスの処理システム。
【0122】
(項目3)
前記二酸化炭素処理手段における処理済みガスを受容し、前記処理済みガスに残る二酸化炭素と、金属水酸化物およびアセトニトリルを含む水分散体と、を反応させて金属炭酸塩を生成させる二酸化炭素処理手段をさらに備える、項目1または2に記載の二酸化炭素含有ガスの処理システム。
【0123】
(項目4)
前記二酸化炭素含有ガスは天然ガス由来によるものである、項目1から3のいずれか一項目に記載の二酸化炭素含有ガスの処理システム。
【0124】
(項目5)
二酸化炭素含有ガスの処理方法であって、
前記二酸化炭素含有ガスと、金属水酸化物およびアセトニトリルを含む水分散体と、を反応させて金属炭酸塩を生成することと、
前記二酸化炭素含有ガスを処理した後の分散体の固液分離を行い、前記金属炭酸塩を含む沈殿物とアセトニトリルを含む残液とを生成することと、
前記沈殿物を加熱分解して二酸化炭素と金属酸化物を生成することと、
前記生成された二酸化炭素を加熱して、グラフェンを生成することと、を備え、
前記残液が、前記二酸化炭素含有ガスとは別の二酸化炭素含有ガスと反応させるために、前記水分散体とは別の金属水酸化物およびアセトニトリルを含む水分散体と混合される際に、前記残液におけるアセトニトリルの量に基づいて、前記残液と混合する前記別の金属水酸化物およびアセトニトリルを含む水分散体におけるアセトニトリルの含有量が決定される、二酸化炭素含有ガスの処理方法。
【0125】
(項目6)
前記加熱分解して生成した金属酸化物を水と反応させて金属水酸化物を生成することをさらに備え、前記金属水酸化物は、前記別の二酸化炭素含有ガスと反応させるために、前記別の金属水酸化物およびアセトニトリルを含む水分散体と混合される、項目5に記載の二酸化炭素含有ガスの処理方法。
【0126】
(項目7)
処理された二酸化炭素含有ガスに残る二酸化炭素と、金属水酸化物およびアセトニトリルを含む水分散体と、を反応させて、金属炭酸塩を生成することとをさらに備える、項目5または6に記載の二酸化炭素含有ガスの処理方法。
【0127】
(項目8)
前記二酸化炭素含有ガスは天然ガス由来によるものである、項目5から7のいずれか一項目に記載の二酸化炭素含有ガスの処理方法。
【0128】
以上、発明の実施形態について説明したが、発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0129】
10 二酸化炭素処理手段、10a 別の二酸化炭素処理手段、20、20a 分離手段、30 加熱手段、40 グラフェン生成手段、50 金属水酸化物生成手段、100、200、300 二酸化炭素含有ガスの処理システム
【要約】 (修正有)
【課題】二酸化炭素の処理にかかる廃棄物を抑制することができる二酸化炭素含有ガスの処理システムを提供する。
【解決手段】二酸化炭素含有ガスと、金属水酸化物およびアセトニトリルを含む水分散体と、を反応させて金属炭酸塩を生成させる二酸化炭素処理手段10と、二酸化炭素含有ガスを処理した後の分散体の固液分離を行い、金属炭酸塩を含む沈殿物とアセトニトリルを含む残液とを生成する分離手段20と、残液を二酸化炭素処理手段へ導入する残液導入手段と、沈殿物を加熱分解して二酸化炭素と金属酸化物を生成する加熱手段30と、生成された二酸化炭素を加熱して、グラフェンを生成するグラフェン生成手段40と、を備え、残液におけるアセトニトリルの量に基づいて、二酸化炭素処理手段に導入する金属水酸化物およびアセトニトリルを含む水分散体におけるアセトニトリルの含有量が決定される、二酸化炭素含有ガスの処理システム。
【選択図】
図1