(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】動力発生装置搭載船
(51)【国際特許分類】
B63B 35/00 20200101AFI20240618BHJP
F03B 13/14 20060101ALI20240618BHJP
B63H 21/38 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
B63B35/00 T
F03B13/14
B63H21/38 Z
(21)【出願番号】P 2023199621
(22)【出願日】2023-11-27
【審査請求日】2023-12-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】317015401
【氏名又は名称】株式会社ウスイテクノス
(74)【代理人】
【識別番号】100067736
【氏名又は名称】小池 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100192212
【氏名又は名称】河野 貴明
(74)【代理人】
【識別番号】100200001
【氏名又は名称】北原 明彦
(72)【発明者】
【氏名】白石 康貴
【審査官】結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2015-0134481(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0077955(KR,A)
【文献】国際公開第2021/194009(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第115748582(CN,A)
【文献】特許第5139571(JP,B2)
【文献】特許第7018165(JP,B1)
【文献】“波力・浮力発電装置の実証実験による発電出力の調査及び研究”,STEPねっとわーく,日本,一般財団法人 四国産業・技術振興センター,2023年07月,2023夏号,p.5
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 35/00,13/00,
B63H 21/38,
F03B 13/12,
F03G 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
波や風による船の揺れから有益な動力を発生させる動力発生装置搭載船であって、
バラストタンクを有する船体において、
前記バラストタンク内に動力発生装置の設置室が設けられ、
前記設置室には前記動力発生装置を浮かべることが可能な量の液体が注入されており、
前記動力発生装置は、波や風による前記船の揺れに応じた前記設置室内の液体の上下動を利用して動力を発生させ
、
前記設置室内には前記液体が移動可能な隔壁が設けられ、
前記動力発生装置は前記隔壁の両側にそれぞれ設置されていることを特徴とする動力発生装置搭載船。
【請求項2】
波や風による船の揺れから有益な動力を発生させる動力発生装置搭載船であって、
バラストタンクを有する船体において、
前記バラストタンク内に動力発生装置の設置室が設けられ、
前記設置室には前記動力発生装置を浮かべることが可能な量の液体が注入されており、
前記動力発生装置は、波や風による前記船の揺れに応じた前記設置室内の液体の上下動を利用して動力を発生させ
、
複数の前記設置室が前記バラストタンク内に離間して設けられ、
それぞれの前記設置室同士には前記液体が移動可能な流路が設けられていることを特徴とする動力発生装置搭載船。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波や風による船の揺れから有益な動力を発生させる動力発生装置搭載船に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な動力発生装置は、主に化石燃料や原子力から得られるエネルギーあるいは再生可能エネルギーを有益な動力に変換して利用している。昨今の世界的な環境問題等から更なる省エネルギー化、高効率化が広く求められていると同時に、安定供給ができる再生可能エネルギーの動力発生装置に大きな期待がよせられている。このような自然等の力によって得られる往復上下動を有効に利用する動力発生装置が求められている。
【0003】
出願人は先に、特許文献1に記載の動力発生装置を提案している。この発明は、動力発生装置を支える向かい合った柱と、回転部材を回転させるために一方の柱側からもう一方の柱側へと傾斜を有し、両端に有する1以上のローラー部材及び柱に設けられたローラー受部材により柱に沿って上昇及び下降可能な1以上の可動式傾斜部材と、回転部材を回転させるためにもう一方の柱側から一方の柱側へと傾斜を有し、柱又は柱を支持する支持部材に設けられた1以上の固定式傾斜部材と、を備えることを特徴とする動力発生装置である。
【0004】
特許文献1に記載の発明によれば、可動式傾斜部材を上下させて、回転部材を回転させることにより動力を発生させ、省エネ化された動力発生装置を提供することができる。特に、電源を用いなくとも電力が供給されていない地域や場所でも、発生した動力を利用することができる。
【0005】
このような動力発生装置の利用場面として、例えば、海上に設置することで波による上下動を利用して動力を発生させることが挙げられる。本件出願人は、さらに他の場所でも利用することができないか鋭意検討を行い、船舶内の揺れを利用して、動力発生装置を活用することを見出した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記実情に鑑み見出されたものであり、船の揺れを利用して効率的に動力を発生させることができる動力発生装置搭載船を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、波や風による船の揺れから有益な動力を発生させる動力発生装置搭載船であって、バラストタンクを有する船体において、バラストタンク内に動力発生装置の設置室が設けられ、設置室には動力発生装置を浮かべることが可能な量の液体が注入されており、動力発生装置は、波や風による船の揺れに応じた設置室内の液体の上下動を利用して動力を発生させることを特徴とする。
【0009】
このとき、本発明の一態様では、設置室内には液体が移動可能な隔壁が設けられ、動力発生装置は隔壁の両側にそれぞれ設置されているとしてもよい。
【0010】
あるいは、本発明の一態様では、複数の設置室がバラストタンク内に離間して設けられ、それぞれの設置室同士には液体が移動可能な流路が設けられているとしてもよい。
【発明の効果】
【0011】
このように、本発明によれば、船の揺れを利用して効率的に動力を発生させることができる動力発生装置搭載船を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る動力発生装置搭載船の構成を示す概略図である。
【
図2】(A)、(B)は、隔壁で2つに区分された設置室内の動力発生装置の動作について説明するための概略図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る動力発生装置搭載船の他の構成を示す概略図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る動力発生装置搭載船の他の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る動力発生装置搭載船について詳細に説明する。なお、本発明は以下の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更可能である。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る動力発生装置搭載船の構成を示す概略図である。本発明の一態様は、波や風による船の揺れから有益な動力を発生させる動力発生装置搭載船10であって、バラストタンク11を有する船体において、バラストタンク11内に動力発生装置20の設置室12が設けられ、設置室12には動力発生装置20を浮かべることが可能な量の液体が注入されており、動力発生装置20は、波や風による船の揺れに応じた設置室12内の液体の上下動を利用して動力を発生させることを特徴とする。
【0015】
船舶、特にタンカー等の貨物船では積載貨物の重量により船の浮き沈みの度合い(喫水)が変化する。特に貨物を積載していないときには船舶の浮力が勝って海に沈んでいる部分が少なくなり、安定した航行ができなくなる。そのため、船舶にはバラストタンクと呼ばれる空間が用意されており、積載貨物が少ないとき、そこに海水を取り込んで重量を増やし、喫水を調節することが行われている。本発明では、このバラストタンク内の一部の空間を利用して動力を発生させるものである。
【0016】
動力発生装置搭載船10における設置室12は、例えば、バラストタンク11の一部を隔壁で区切って設けることができる。あるいは、コンテナ等の部屋状の空間をバラストタンク11内に設置したり、バラストタンク11の一部と置き換えるようにしてもよい。また、設置室12内には、動力発生装置20を浮かべることが可能な量の液体が注入されている。液体は例えば水であるが、バラストタンク11に注水された海水の一部を用いるようにしてもよい。あるいは、動力発生装置20に生じる浮力を大きくするために比重の大きな液体を充填してもよい。
【0017】
本発明では、動力発生装置20は、波や風による船の揺れに応じた設置室内の液体の上下動を利用して動力を発生させる。したがって、設置室12には動力発生装置20が液体上に浮かんだ状態で上下動するために必要な空間が確保されている。このような空間を確保するために、例えば、船舶の揺れの程度から、大きく揺れた場合でも動力発生装置20が天井に接触しない程度の高さと充填する液体の量を計算すればよい。
【0018】
動力発生装置20は、設置室12内に充填された液体の液面の変化に応じて上下動することにより動力を発生する装置であれば特に限定はされない。一例として、波力発電や潮力発電で用いられる種々の機構を備えた動力発生装置を用いることができる。
【0019】
また、本発明では、出願人が先に提案した特許文献1に記載の動力発生装置を利用することができる。特許文献1に記載の発明によれば、浮体などを用いて可動式傾斜部材を設置室内に充填された液体の液面の変化に応じて上下させて、回転部材を回転させることにより動力を効率的に発生させることができる。例えば、回転部材と可動式傾斜部材の動きによって、設置されたシリンダー等のアクチュエータのピストンを押し上げる動力源とし、シリンダー内の内容物(空気や液体)を圧縮して送り出す動作に変換することができる。本願の図では、一例として特許文献1の
図7に示す態様の動力発生装置を図示しているが、もちろんこの態様のみに限定されるわけではない。
【0020】
図2(A)、(B)は、隔壁で2つに区分された設置室内の動力発生装置の動作について説明するための概略図である。本発明の一態様では、設置室12内には液体が移動可能な隔壁15が設けられ、動力発生装置20は隔壁15の両側にそれぞれ設置されている態様とすることができる。本発明の一態様では、例えば、
図2(A)、(B)に示すように、隔壁15は、設置室12の下部は隔てないようにスペースを開けておくことにより、設置室12内の液体が2つの区分のどちらにも移動可能な状態となっている。
【0021】
このようにすることで、
図2(A)に示すように、船が左側に傾いた場合には、設置室12内の液体は左側の区分に移動するため、左側の区分の液体の液面h
Lが上昇し、逆に右側の区分の液面h
Rは下降する(h
L>h
R)。同様に、
図2(B)に示すように、船が右側に傾いた場合には、設置室内の液体は右側の区分に移動するため、右側の区分の液体の液面h
Rが上昇し、左側の区分の液面h
Lは下降する(h
R>h
L)。このようにして、船が進む際に波や風の力を受けて、船体が左右に揺れる状態が設置室12内では液体の液面の上下に変換され、この液面の上下動を動力発生装置20によって有用な動力に変換することが可能となる。
【0022】
図3は、本発明の一実施形態に係る動力発生装置搭載船の他の構成を示す概略図である。本発明では、上述の通り、設置室12を隔壁15によって2つに区分することで1つの設置室12に、2つの動力発生装置20を設置することができる。そして、本発明の一態様では、このような設置室12をバラストタンク11内に複数設置しても良い。例えば、設置室12を2つ設ければ、4つの動力発生装置20を設置することができ、
図3に示すように設置室12を3つ設ければ、6つの動力発生装置20を設置することができる。このように多くの動力発生装置20を設置することにより、船の揺れを利用して多くの動力を発生させることが可能となる。
【0023】
図4は、本発明の一実施形態に係る動力発生装置搭載船の他の構成を示す概略図である。本発明の一態様では、複数の設置室12がバラストタンク11内に離間して設けられ、それぞれの設置室12同士には液体が移動可能な流路17が設けられているとしてもよい。動力発生装置20を上下動させる原理は、
図2で示した場合と同様であるが、
図4の場合には、液体が直接2つの区分間を移動するのではなく、流路17を通って2つの区分間を移動することになる。なお、
図4では、設置室12の数を2つとしているが、例えば、バラストタンク11の中央部分にさらに設置室12を設けて、3つの区分間をそれぞれ接続する流路17を設けても良く、設置室の数を4以上としても良い。
【0024】
設置室12を離間して設置することにより、例えば、
図4に示すように、それぞれの設置室12をより船の側面側に配置することができるため、船の横揺れの影響をより大きく設置室12内の動力発生装置20に及ぼすことができる。また、船の搭載スペースなどの影響で、設置室12を設ける空間が限られるような場合でも、離間した状態で適切な位置にそれぞれの設置室12を設けることもできる。
【0025】
以上説明したように、本発明によれば船の揺れを利用して効率的に動力を発生させることができる動力発生装置搭載船を実現することができる。
【0026】
なお、上記のように本発明の一実施形態及び各実施例について詳細に説明したが、本発明の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは、当業者には、容易に理解できるであろう。従って、このような変形例は、全て本発明の範囲に含まれるものとする。
【0027】
例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また、動力発生装置搭載船の構成も本発明の一実施形態及び各実施例で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0028】
10 動力発生装置搭載船、11 バラストタンク、12 設置室、15 隔壁、17 流路、20 動力発生装置、hL 左側の区分の液面、hR 右側の区分の液面
【要約】
【課題】船の揺れを利用して効率的に動力を発生させることができる動力発生装置搭載船を提供する。
【解決手段】波や風による船の揺れから有益な動力を発生させる動力発生装置搭載船10であって、バラストタンク11を有する船体において、バラストタンク11内に動力発生装置20の設置室12が設けられ、設置室12には動力発生装置20を浮かべることが可能な量の液体が注入されており、動力発生装置20は、波や風による船の揺れに応じた設置室12内の液体の上下動を利用して動力を発生させることを特徴とする。
【選択図】
図1