(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】釣り用ルアー
(51)【国際特許分類】
A01K 85/00 20060101AFI20240618BHJP
【FI】
A01K85/00 G
(21)【出願番号】P 2023220839
(22)【出願日】2023-12-27
【審査請求日】2023-12-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】723004314
【氏名又は名称】玉木 碧
(72)【発明者】
【氏名】玉木 碧
【審査官】小林 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-208061(JP,A)
【文献】特開2021-108543(JP,A)
【文献】国際公開第2018/110424(WO,A1)
【文献】特開2000-139276(JP,A)
【文献】登録実用新案第3194952(JP,U)
【文献】特開平10-313735(JP,A)
【文献】実開昭53-142485(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 85/00-85/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凸部及び錘を備える前部ボディと、
前記凸部を挿嵌可能な凹部を備える後部ボディとを備え、
前記凸部は内部に前記錘が移動可能な空間を備え、前記凸部を前記凹部に挿嵌した状態において前記錘は前記後部ボディの内部を移動可能であり、
前記前部ボディの本体は、内部に前記凸部の前記空間と連続する空間を備え、前記錘は前記前部ボディの本体の内部の前記空間から前記凸部の内部の前記空間にかけてを移動可能であり、
前記前部ボディの素材は、硬質プラスチックであり、
前記後部ボディの素材は、軟質ゴム、ゲル又は軟質樹脂であり、
前記前部ボディは、溝部を有し、
当該ルアーは、魚を模した形状であり、頭を前、尾を後、背を上、腹を下として各方向を定めた場合に、
前記溝部は、上下方向が長さ方向で、左右方向が幅方向で、前後方向が深さ方向で、前側を溝底、後側を開口とする溝であり、
前記後部ボディは、上記溝部に挿嵌可能な部分を有し、
前記溝部の溝幅は一定ではなく、上記溝部は溝幅が狭い部分と溝幅が広い部分有し、
前記溝幅の広い部分が、前記溝幅の狭い部分に対し溝底側に位置することを特徴とするルアー。
【請求項2】
前記前部ボディは、孔を備え、前記孔と前記後部ボディとに一のピンが挿通されることを特徴とする請求項1に記載のルアー。
【請求項3】
前記凸部及び前記凹部の断面の形状は、略多角形又は略楕円形又は略半円形であり、
前記凸部を前記凹部に挿嵌していない状態において、前記凹部の内側部分の体積は、前記凸部の体積よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載のルアー。
【請求項4】
前記凸部の外側の表面に凸部を備えることを特徴とする請求項1に記載のルアー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本考案は、釣り用ルアーに関する。
【背景技術】
【0002】
コクチバス、オオクチバス、ナマズ、スズキ等の大型の魚は、ベイトとして魚やミミズ、エビ、ザリガニ、カエル、虫、ネズミ等の小動物を補食する。これら大型の魚を捕獲する手段としてルアーフィッシングが普及している。ルアーフィッシングではルアーが用いられる。ルアーには釣糸が連結される。ルアーは、キャストによって空中を飛行し、やがて着水する。ルアーは、釣糸が巻かれることによって水中や水面を泳ぐ。このルアーをベイトと勘違いした前記の魚は、ルアーに食いつく。ルアーに取り付けられた釣針が前記の魚に刺さり、前記の魚が釣り上げられる。
【0003】
従来、ルアーには、ボディ素材に硬質プラスチック、木、金属等の硬質な物質を用いたハードルアーと呼ばれるルアーと、ボディ素材に軟質プラスチック、ゴム、エラストマー等の可撓性のある物質を用いたソフトルアーと呼ばれるルアーとがある。
【0004】
また、ルアーをより遠くへキャストするための技術として、ルアー内部をルアーの前後方向に移動可能な錘をルアーに備え、キャスト時に慣性でルアーの後方へ錘が移動することで飛行姿勢が安定しルアーがより遠くへ飛び、リーリング時は錘がルアーの前方へ移動することによりルアーが安定して泳ぐ発明が(特許文献1)の
図1及び
図2等に開示されている。(特許文献1)のキャスト時に錘がルアーの後方へ移動する機構はルアーの飛距離向上において非常に効果的であり、一般に重心移動と呼ばれ、様々な派生技術を伴いながら今日のハードルアーに広く普及している。
【0005】
一方で、重心移動の搭載はハードルアーのみに限定され、ソフトルアーには普及していない。
重心移動がソフトルアーに普及していない理由は、ルアーボディを軟質素材で成形すると、キャスティング時に錘が移動するために設置した経路が変形し意図した通りに錘が移動しないことや、ソフトルアーは破損しやすく一般に消耗品であるため製品価格を安価に設定する必要があるが製造コストの高い重心移動の機構を搭載すると製品価格が高価になってしまうこと、現在普及しているソフトルアーの射出成形技術では錘が移動するための複雑な内部構造を備えたソフトルアーを成型することが困難なこと等が挙げられる。
【0006】
ソフトルアーに重心移動の機構を搭載したルアーとして、ルアーに内蔵した錘が前後に移動可能な移動経路が設けられ、重錘が前後に移動する移動経路の一部または全体には蛇腹状の凹凸形状やコイル形状やリング形状の特徴を有する構造によって移動経路保護措置が講じられ、ルアーが変形して内部の重錘の移動経路が曲がったりした場合であっても移動経路保護措置によって重錘が前後に移動できる空間が確保されるルアーが(特許文献2)の
図1等が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】実全昭63-020766
【文献】特開2021-108543
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、(特許文献2)で開示されているルアーは、複雑な重心移動の機構を製造する必要があること及び上記重心移動の機構を内部に組み込みソフトルアーのボディを成型する必要があるため極めて製造が困難であり製造コストが高かった。また、ソフトルアーのゴムやエラストマー部分(ボディ部分)は非常に破損しやすいため一般にソフトルアーは消耗品であり、ボディ部分と重心移動の機構が分離できない(特許文献2)のルアーは、ボディ部分が破損した場合、ルアー全体が機能しなくなるため、コストの高い重心移動の機構ごと廃棄する必要があり、製造コストの高さと製品寿命の短さゆえに実用的ではなかった。
【0009】
そこで、本発明は、可撓性のある素材でボディを成形しても、錘がルアー内部をルアーの前後方向に移動可能で、キャスト時に慣性でルアーの後方へ錘が移動することでルアーがより遠くへ飛び、リーリング時は錘がルアーの前方へ移動することによりルアーが安定して泳ぎ、かつ破損しやすい軟質素材の部分のみを交換可能で、あわせて製造が容易なルアーを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るルアーは、
凸部及び錘を備える前部ボディと、
前記凸部を挿嵌可能な凹部を備える後部ボディとを備え、
前記凸部は内部に前記錘が移動可能な空間を備え、前記凸部を前記凹部に挿嵌した状態において前記錘は前記後部ボディの内部を移動可能であることを特徴とする。
【0011】
好ましくは、
前記前部ボディの本体は、内部に前記凸部の前記空間と連続する空間を備え、前記錘は前記前部ボディの本体の内部の前記空間から前記凸部の内部の前記空間にかけてを移動可能であることを特徴とする。
【0012】
好ましくは、
前記前部ボディの素材は、硬質プラスチックであり、
前記後部ボディの素材は、軟質ゴム、ゲル又は軟質樹脂であることを特徴とする。
【0013】
好ましくは、
前記前部ボディは、孔を備え、前記孔と前記後部ボディとにピンが挿通されることを特徴とする。
【0014】
好ましくは、
前記凸部及び前記凹部の断面の形状は、多角形、楕円形、半円形、及び前記の形状に類する形状であり、
前記凸部を前記凹部に挿嵌していない状態において、前記凹部の内側部分の体積は、前記凸部の体積よりも小さいことを特徴とする。
【0015】
好ましくは、
前記前部ボディは、溝部を有し、
前記後部ボディは、上記溝部に挿嵌可能な部分を有し、
前記溝部の溝幅は一定ではなく、上記溝部は溝幅が狭い部分と溝幅が広い部分有し、
前記溝幅の広い部分が、前記溝幅の狭い部分に対し溝底側に位置することを特徴とする。
【0016】
好ましくは、
前記凸部の外側の表面に凸部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ソフトルアーの飛距離が向上し、かつ状況によって形状を変えることができ、さらに製造が容易なルアーを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本考案の第1実施形態に係る釣り用ルアーの断面図である。
【
図10】
図10は、本考案の第2実施形態に係る釣り用ルアーの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の第1実施形態のルアー1Aについて説明する。
【0020】
本第1実施形態のルアー1Aは、
図1及び
図2に示すように、凸部2aを有する前部ボディ2と上記凸部2aを挿嵌可能な凹部3aを有する後部ボディ3とを備える。又、
図8に示されるように、本第1実施形態のルアー1Aは、魚を模した形状である。以下、ルアー1Aの頭に向かう方向を前方向、尾に向かう方向を後方向、背に向かう方向を上方向、腹に向かう方向を下方向とし、前後方向に対して左右方向を規定する。
【0021】
本第1実施形態のルアー1Aにおいて、前部ボディ2の素材は、硬質プラスチックである。
(1)硬質プラスチック
硬質プラスチックとして例えばAS樹脂(SAN)、ABS樹脂(ABS)、ポリカーボネート(PC)、ポリ乳酸(PLA)、ポリアミド(PA)、ポリウレタン(PUR)炭素強化プラスチック(CFRP)などが挙げられる。
本第1実施形態のルアー1Aにおいて、後部ボディ4は、軟質ゴム、ゲル又は軟質樹脂で形成されている。
(2)軟質ゴム
軟質ゴムとしては例えばシリコーンゴム、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、ブタジエン-アクリロニトリルゴム(NBR)、ポリイソプレンゴム(IR)、ポリクロロプレンゴム(CR)、エチレン-プロピレン共重合ゴム(EPM)、エチレン-プロピレン-非共役ジエン共重合ゴム(EPDM)、ウレタンゴム、フッ素ゴムなどの合成ゴム、熱可塑性エラストマー(TPE)として、スチレン系TPE、オレフィン系TPE、塩化ビニル系TPE、ウレタン系TPE、エステル系TPE、アミド系TPE、塩素化ポリエチレン系TPE、Syn-1,2-ポリブタジエン系TPE、Trans-1,4ポリイソプレン系TPE、フッ素系TPEなどが挙げられる。
(3)ゲル
ゲルとしてはシリコーンゲル、アクリル樹脂ゲルなどが挙げられる。
(4)軟質樹脂
軟質樹脂としては例えば塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン等が挙げられる。以下においては、前記(2)から(4)の総称として軟質素材という言葉を用いる。
【0022】
図2に示されるように、凸部2aを凹部3aに挿嵌することによって、前部ボディ2と後部ボディ3は連結される。凸部2aを凹部3aに挿嵌することを挿嵌P1とする。凸部2aと凹部3aは嵌脱可能である。前部ボディ2は内部に錘4を備える。凸部2aは内部に空間を備える。前部ボディ本体2c(前部ボディ2の凸部2a以外の部分)は内部に空間を備える。凸部2aの内部の空間と前部ボディ本体2cの内部の空間は連続し、上記の連続した空間により移動経路部2bが形成される。移動経路部2bを錘4は移動可能であり、
図1の矢印Mで示されるように上記錘4は、前部ボディ本体2cの内部から凸部2aの内部にかけてを移動可能であり、凸部2aを凹部3aに挿嵌した状態でルアー1Aを側面から見た場合に、錘4は、前部ボディ2の内部から後部ボディ3の内部にかけてを移動可能である。
【0023】
上記の構造により、後部ボディ3の素材が軟質素材であっても、後部ボディ3の内部を錘4は移動可能である。後部ボディ3の素材が軟質素材であっても、移動経路部2bは従来の重心移動を搭載したルアーと同じく硬質プラスチックで成形され、移動経路部2bの形状が変形することがないので、軟質素材をボディ素材とするルアーに重心移動の機構を搭載する際の課題だった移動経路部の変形(湾曲、収縮等)により錘の移動が妨げられる点が解消され、軟質素材をボディ素材としながらも、キャスティング時に従来の硬質プラスチックのみで成形された重心移動を備えたルアーと同様にルアーの後部(ルアー1Aにおいては後部ボディ3の部分)まで錘が移動し同等レベルの飛距離を得ることができる。
【0024】
また、凸部2aと凹部3aが嵌脱可能であることにより、軟質素材のため破損しやすい後部ボディ3が損傷した場合は後部ボディ3のみを換装すること可能で、製造コストが高くかつ損傷しにくい前部ボディ2を後部ボディが損傷しても使い続けることができる。加えて
図3に示すように、異なる形状の後部ボディを用意することによって対象魚や釣り場の状況に応じて、例えば、後部ボディ3-1(ピンテール)、3-2(シャッドテール)、3-3(フィッシュテール)を自在に換装することができる。
【0025】
さらに、上記のように重心移動の機構を有する前部ボディを硬質プラスチックで成形し、後部ボディを軟質素材で成形する構造であれば、
図4に示すように、既存のハードルアーの製法(ボディを左右に分けて射出成形し接着する製法)を用いて複雑な重心移動機構の部分(前部ボディ)を製造し、複雑な構造を持たない後部ボディを既存のソフトルアーの製法を用いて製造可能することが可能であるため、軟質素材は重心移動機構等の複雑な内部構造の成形が困難で、ボディを軟性素材で成形したルアーは複雑な内部構造を備えられないという課題が解決され、かつ既存のハードルアー及びソフトルアーの製造に用いられている射出成形技術を用いて製造することが可能であるため安価に製造することが可能である。
【0026】
以下で、各部分の詳細な形状や構造、それらによって得られる効果を説明する。
【0027】
図1及び
図2に示されるように、前部ボディ2は、磁性体又は一部が磁性体の錘4と、前部ボディ本体2cの内部から凸部2aの内部にかけて前記錘4が移動可能な移動経路部2bとを備える。また、前部ボディ2は、前記錘を前記移動経路部の前端部に固定するための磁石5を備える。ルアーのリーリング時に前記磁石により前記錘は、前記移動経路部の前端部に固定され、キャスティング時の慣性により前記錘は上記磁石より離れ前記移動経路部の後端部に移動する。第1実施形態のルアー1Aにおいて前記移動経路部は筒状であり、
図4に示す様に半円註形状の錘4が
図1に示されるように前記移動経路部に沿って摺動可能であり、キャスティング時の慣性で前部ボディの前部から凸部2aまで錘4が移動する。移動経路部2b及び錘4の形状は、前記の形状に限定される必要はなく、例えば、
図10に示す第2実施形態のルアー1Bのように円筒形の移動経路部2bを球形の錘4が転がることで移動する構造であっても良い。また、錘に挿通されるシャフトを設け移動経路部2bの両端部にシャフトの両端部を係止しシャフトに沿って錘が移動可能な構造や、錘をルアーの前方向に付勢する弾性部材を備えた構造等でも良い。
【0028】
一般的にルアーは、リーリング時は前方(進行方向)に重心があることで泳ぎが安定しより魚が餌と勘違いしやすくなり、キャスティング時は後方(飛行方向)に重心があるこで安定した飛行姿勢となりより遠くへ飛ぶようになる。上記の理由から、リーリング時には錘がよりルアーの前方に位置しキャスティング時には錘がよりルアーの後方に位置することが好ましく、
図2に示されるように、前部ボディ本体2cの内部から凸部2aの内部にかけて連続した空間である移動経路部2bを備えることにより、錘4が前部ボディ2の前部から凸部2aの後端部までを移動可能であるため、ルアー1はリーリング時に安定して泳ぐこととキャスティング時によく飛ぶことが両立される。
【0029】
本第1実施形態のルアー1Aは、移動経路部2bが直線状であるが、移動経路部2bの形状は上記の形状のみに限定されず、錘が内部を移動可能であれば良く、例えば、
図12に示される第2実施形態のルアー1Bの様に屈折した形状や、他の湾曲した形状等であっても良い。
【0030】
図2に示されるように、後部ボディ3は凹部3aを備え、前記凹部に凸部2aを挿嵌することによって前部ボディ2と後部ボディ3は連結される。
図9に示されるように自然状態(前部ボディ2と後部ボディ3を分離させた状態)において凹部3aの内側部分の体積V2は凸部2aの体積V1よりも小さく、後部ボディ3を弾性変形させ凹部3aの幅を広げた状態で挿嵌P1を行い、前部ボディ2と後部ボディ3とが連結された状態において凹部3aは自然状態よりも広げられた状態になることで、凹部3aの収縮する力が凸部2aへ加わり凸部2aと凹部3a間の摩擦が大きくなることで前部ボディ2と後部ボディ3は強固に連結される。
【0031】
また、凸部2aは表面に凸部2a-2を備え、凸部2a-2によって凸部2aと凹部3a間の摩擦が大きくなり後部ボディ3が前部ボディ2より抜けることが防がれる。本第1実施形態及び第2実施形態のルアー1A、1Bは凸部2aの表面に凸部2a-2を備えることで後部ボディ3が前部ボディ2より抜けることを防いでいるが、例えば、挿嵌P1の方向と垂直又は垂直に近い角度で突出したワイヤー等によって後部ボディ3が前部ボディ2より抜けることを防いでも良い。
【0032】
図9に示されるように凸部2aの上下方向の断面S1と凹部3aの上下方向の断面S2が略半円形であることにより、後部ボディ3が前部ボディ2に対して凸部2aを軸(Z)として回転(R)することが防がれる。S1及びS 2の断面形状は略半円形に限られる必要はなく後部ボディ3が前部ボディ2に対して凸部2aを軸として回転することが防がれる形状、例えば、略多角形、略楕円形、であれば良い。
【0033】
図5に示されるように、前部ボディ2は溝部G1と溝部G2とを備え、溝部G1の上側の端部及び溝部G2の下側の端部は開かれている。溝部G1及び溝部G2は、前部ボディ2の後部分に上下方向に設けられ後方向に開いた直線状の溝であり(換言すると溝部G2は、前部ボディ2に備えられ、ルアー1の上下方向を長さ方向とし、左右方向を幅方向とし、前後方向を深さ方向とし、前側を溝底、後側を開口とした溝である) 、溝部G2は前部ボディ2の左右方向における中心に位置する。また、後部ボディ3は、溝部G1と溝部G2にそれぞれ挿嵌するための部分である係止部F1と係止部F2とを備える。前部ボディ2と後部ボディ3とを連結する際に係止部F1、F2を矢印Qで示す様にそれぞれ上下方向へ引き伸ばし(弾性変形させ)、矢印Jで示す様に溝部G1、G2の開かれた端部からそれぞれ溝部G1、G2へ挿嵌する。
図6に示されるように、溝部G1及び溝部G2は、溝幅が狭くなっている部分Nと、Nよりも溝幅が広くなっている部分Wとを有し、WがNに対して溝底B方向に位置する。また、係止部F1、F2は、左右方向に幅が広がっている部分Xを有し、XはWに挿嵌され、Nの溝幅K1がWの左右方向の幅K2よりも狭いため、例えばキャスティング時の慣性等により後部ボディ3が前部ボディより外れる方向(
図1における後方向)に力が加わった場合でも、NとXとの当接によって後部ボディ3は、前部ボディ2から後方向に抜けることなく前部ボディ2に固定されたままである。
【0034】
図5に示す様に、キャスティング時の慣性等により後部ボディ3に対して凸部2aと平行な方向(
図5における後方向)に力が加わった場合でも、NとXとが十分に当接し後部ボディ3が前部ボディ2から後方向に抜けることのないように溝部G1、G2と凸部2aとのなす角θは30°から150°の値が好ましい。
【0035】
本第1実施形態のルアー1Aにおいては、前部ボディ2は凸部2aの上側に位置する溝部G1と凸部2aの下側に位置する溝部G2との2つの溝部を有するが、溝部G1と溝部G2はどちらか一方のみを備えても良く、また、キャスティング時等に後部ボディ3が前部ボディ2より外れることなく連結されるのであれば、溝部G1と溝部G2はどちらとも備えなくて良い。
【0036】
以下、本第1実施形態のルアー1Aの製造方法について解説する。重心移動の機構を備えるルアーを製造するためには、ルアー内部に空間を設け可動式の錘を封入する必要があるため、ルアーの進行方向を前とした場合、ルアーボディを左右に分割した部品を先ず作り、上記左右の部品を接着しルアー内部に錘と錘が移動するための空間を封入する手法が好ましい。また、上記の接着の際は内部に水が侵入することを防ぐためにルアーを密閉する必要があるため、左右からクリップ等で強い圧力を加え接着を行う必要がある。しかし、従来の軟質素材製のルアーは圧力を加えると変形するため精密な接着を行うことが困難であり左右の部品を接着することで重心移動の機構を封入することは難しく重心移動の機構を備えることができなかったが、ルアー1Aは、前部ボディが硬質プラスチックであるため、
図4に示されるように前部ボディ2は、左右に分割された部品を接着することで従来の重心移動の機構を備えたハードルアーと同様の手法で製造することが可能であり射出成形による量産が可能である。
【0037】
図7に示されるルアー1Aは、前部ボディ2と後部ボディ3をより強固に連結する工夫をしたものである。前部ボディ2は、左右方向に孔hを備え、ピン10が後部ボディ3及び孔hに挿通されることにより後部ボディ3が前部ボディ2に対して動くことなく固定される。ピン10は、後部ボディ3の弾性により保持される。また孔hの方向は左右方向ではなく上下方向でも良い。
【0038】
以下、図面を参照して、本発明の第2実施形態のルアー1Bについて説明する。
【0039】
ルアー1Bは
図9、
図10、
図11に示されるように、ルアー1Aよりもボディ全体における後部ボディの割合を大きくし、トレブルフックを装着した例である。(一般にスイムベイトと呼ばれるジャンルのルアーである。)ルアー1Aと同様にルアー1Bの後部ボディ3の素材も軟質素材であり、ルアーボディの大半が軟質素材でありながらその軟質素材部分の内部を錘4が移動可能である。符号の説明についてはルアー1Aと同様である。
【0040】
図9、
図10、
図11に示されるように、ルアー1Bの前部ボディ2は、釣糸を係止するためのエイト環8aと釣針6を係止するためのエイト環8bとを備え、それぞれのエイト環がラインアイとフックアイとして機能する。前部ボディ2の製造方法はルアー1Aと同様であり左右の部材を合わせることで前部ボディ2を組み立てる。左右の部材を合わせる際にそれぞれのエイト環8を左右の部材で挟み込むことによってエイト環8は前部ボディ2に固定される。従来の軟質素材製のルアーは、エイト環を挟み込みエイト環をボディに固定することができなかったため、フックアイやラインアイを備えるためには内部にワイヤー等を組み込む必要があり、フックアイやラインアイを備えたルアー(一般にスイムベイトと呼ばれるルアー)は製造コストが高いという課題があった。しかし、ルアー1Bは、前部ボディ2を一般的なハードルアーと同様の素材と製法で製造することが可能なため一般的なハードルアーと同様にフックアイやラインアイをエイト環によって設けることができ、低いコストで製造することが可能である。
【0041】
本発明の第2実施形態のルアー1Bにおいては、三又のトレブルフックと呼ばれる釣針6を2つ備え、後部の釣針6をワイヤー9を介してエイト環8aに係止し、後部の釣針をボディに突き刺しているが、釣針の形状や数は上記に限定される必要はない。
【0042】
図9、
図10、
図11に示されるように、ルアー1Bの前部ボディ2は、リップ7を備える。リップ7は前部ボディ2と一体に成型される。リップは硬質素材で成形する必要があるため、従来の軟質素材製のルアーは、リップをボディと一体に成型することができず、リップとボディの結合強度に課題があったが、前部ボディ2の素材は硬質プラスチックであり一般的なハードルアーと同様の製法で製造することが可能なため一般的なハードルアーと同様に前部ボディ2とリップ7を一体に成型可能であるためリップとボディの結合の強度に優れる。
【符号の説明】
【0043】
1A、1B:ルアー
2:前部ボディ
2a:凸部
2b:移動経路部
2c:前部ボディ本体
3:後部ボディ
3-1:ピンテール
3-2:シャッドテール
3-3:フィッシュテール
3a:凹部
4:錘
5:磁石
6:釣針
7:リップ
8:エイト環
9:ワイヤー
10:ピン
【要約】
【課題】ソフトルアーであっても確実に錘が移動し優れた飛距離を得ることがが可能で、あわせて消耗の早い軟性素材部分を交換可能で、さらに製造が容易なルアーを提供する。
【解決手段】本第1実施形態のルアー1Aは、硬質素材で成形された前部ボディ2、軟質素材で成形された後部ボディ3を備える。前部ボディ2は、凸部2aを備え、凸部2aの内部は錘が移動可能な空間が有る。後部ボディ3は凹部3aを備え、凸部2aが凹部3aに挿嵌されることにより軟性素材で成形された後部ボディ3の内部を錘が移動可能となる。また、凸部2aと凹部3aは嵌脱自在であるため後部ボディ3を交換することが可能である。
【選択図】
図1