(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】分断装置および分断方法
(51)【国際特許分類】
B23D 15/04 20060101AFI20240618BHJP
【FI】
B23D15/04
(21)【出願番号】P 2018145882
(22)【出願日】2018-08-02
【審査請求日】2021-01-26
【審判番号】
【審判請求日】2023-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】榊原 信幸
(72)【発明者】
【氏名】三浦 将行
(72)【発明者】
【氏名】橋本 貴浩
【合議体】
【審判長】刈間 宏信
【審判官】堀内 亮吾
【審判官】鈴木 貴雄
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-225730(JP,A)
【文献】特開2006-212755(JP,A)
【文献】特開2009-241160(JP,A)
【文献】特開2004-66429(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23D 15/04,23/00,33/02,33/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板材を分断予定線に沿って分断する分断装置であって、
前記板材が設置可能に構成され、前記板材の分断予定線に対する一方側に配置される下型と、
前記下型に対して昇降可能に構成された上刃と、
前記板材の分断予定線に対する他方側に配置される支持部材とを備え、
前記上刃の刃部は、鉛直方向に延びる刃面と、前記刃面の下端から斜め上方に延びる先端面とを有し、
前記刃面と前記先端面とのなす角が鋭角に設定され、
前記支持部材は、前記上刃の昇降方向から見た場合に前記上刃と対応しない位置に配置されており、前記板材が分断される際に、前記板材の分断予定線に対する他方側の倒れ込みを抑制しながら、分断された板材を下方に逃がすことが可能なように構成され、
前記下型に対して前記上刃が最も下降された場合における前記上刃の前記板材に対する食い込み量は、前記板材の厚みの50%以上75%以下に設定され、
前記板材が前記下型および前記支持部材によって支持された状態で、前記下型に対して前記上刃が下降される場合に、前記上刃によって前記板材の分断予定線に切れ目が形成されるとともに、その切れ目の形成に伴い亀裂が形成されることにより、前記板材が分断予定線に沿って分断されるように構成されていることを特徴とする分断装置。
【請求項2】
請求項1に記載の分断装置において、
前記下型には、下刃が設けられていることを特徴とする分断装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の分断装置において、
前記下型に対して昇降可能に構成され、前記板材を前記下型に押さえ付けるパッドを備え、
前記上刃は前記パッドに取り付けられ、前記刃部が前記パッドよりも下方に突出されていることを特徴とする分断装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1つに記載の分断装置において、
前記板材の分断予定線に対する一方側は、成形品部分であり、
前記板材の分断予定線に対する他方側は、スクラップ部分であることを特徴とする分断装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1つに記載の分断装置において、
前記板材は、アルミニウム合金製であることを特徴とする分断装置。
【請求項6】
板材を分断予定線に沿って分断する分断方法であって、
前記板材を下型に設置することにより、前記板材の分断予定線に対する一方側を前記下型によって支持させるとともに、前記板材の分断予定線に対する他方側を支持部材によって支持させる工程と、
前記板材が前記下型および前記支持部材によって支持された状態で、前記下型に対して上刃を下降させることにより、前記上刃によって前記板材の分断予定線に切れ目を形成するとともに、その切れ目の形成に伴い亀裂を形成して、前記板材を分断予定線に沿って分断する工程とを備え、
前記上刃の刃部は、鉛直方向に延びる刃面と、前記刃面の下端から斜め上方に延びる先端面とを有し、
前記刃面と前記先端面とのなす角が鋭角に設定され、
前記支持部材は、前記上刃の昇降方向から見た場合に前記上刃と対応しない位置に配置されており、前記板材が分断される際に、前記板材の分断予定線に対する他方側の倒れ込みを抑制しながら、分断された板材を下方に逃がすことが可能なように構成され、
前記下型に対して前記上刃が最も下降された場合における前記上刃の前記板材に対する食い込み量は、前記板材の厚みの50%以上75%以下に設定されていることを特徴とする分断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分断装置および分断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、板材からスクラップ部分(不要部分)を取り除くトリミング加工を行うトリミング装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1のトリミング装置は、下型と押さえ板との間にアルミニウム合金板が挟持された状態で、下型に対して上型を下降させることにより、下型からはみ出したスクラップ部分を切断して除去するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、従来のトリミング装置では、スクラップ部分を切断して除去する際に切粉が発生する場合がある。そこで、
図5~
図7を参照して、従来例のトリミング装置200によるトリミング加工について詳細に説明する。
【0006】
トリミング装置200は、
図5に示すように、板材250が設置可能な下型201と、板材250を下型201に押さえ付けるパッド202と、下型201に対して昇降可能な上型203とを備えている。板材250は、たとえばアルミニウム合金製であり、成形品部分250aおよびスクラップ部分250bを有する。成形品部分250aの下方には下型201が配置され、スクラップ部分250bが下型201からはみ出している。すなわち、スクラップ部分250bの下方に下型201が配置されておらず、スクラップ部分250bが浮いた状態になっている。
【0007】
そして、下型201に対して上型203が下降され、上型203の刃部203aにより板材250が切断されるときに、
図6に示すように、板材250のスクラップ部分250bが倒れ込む(スクラップ部分250bの自由端側(
図6における右側)が下方に落ち込む)ので、刃部203aによるせん断面の先(下方)に湾曲した亀裂251が形成される。これにより、板材250の成形品部分250aの切断端面252に、スクラップ部分250b側に突出する突状部252aが形成される。
【0008】
次に、板材250が切断されてスクラップ部分250bが取り除かれた後に、
図7に示すように、下型201に対して上型203が上昇される際に、上型203の刃部203aにより突状部252a(
図6参照)が削られるので、切粉253が発生する。なお、このような課題は未公知である。
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、板材を分断する際に切粉が発生するのを抑制することが可能な分断装置および分断方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による分断装置は、板材を分断予定線に沿って分断するものであり、板材が設置可能に構成され、板材の分断予定線に対する一方側に配置される下型と、下型に対して昇降可能に構成された上刃と、板材の分断予定線に対する他方側に配置される支持部材とを備える。上刃の刃部は、鉛直方向に延びる刃面と、刃面の下端から斜め上方に延びる先端面とを有し、刃面と先端面とのなす角が鋭角に設定されている。支持部材は、上刃の昇降方向から見た場合に上刃と対応しない位置に配置されており、板材が分断される際に、板材の分断予定線に対する他方側の倒れ込みを抑制しながら、分断された板材を下方に逃がすことが可能なように構成されている。下型に対して上刃が最も下降された場合における上刃の板材に対する食い込み量は、板材の厚みの50%以上75%以下に設定されている。分断装置は、板材が下型および支持部材によって支持された状態で、下型に対して上刃が下降される場合に、上刃によって板材の分断予定線に切れ目が形成されるとともに、その切れ目の形成に伴い亀裂が形成されることにより、板材が分断予定線に沿って分断されるように構成されている。
【0011】
このように構成することによって、板材が分断される際に、板材の分断予定線に対する他方側が支持部材により支持されるので、板材の分断予定線に対する他方側の倒れ込みを抑制することができる。これにより、亀裂が直線状に形成されるので、板材の分断予定線に対する一方側の切断端面が平坦化され、切粉の発生を抑制することができる。また、上刃が下型に擦られないようにしながら、板材に切れ目を適切に形成することができる。
【0016】
上記分断装置において、下型には、下刃が設けられていてもよい。
【0017】
このように構成すれば、下刃による切れ目により、板材を分断しやすくすることができる。
【0018】
上記分断装置において、下型に対して昇降可能に構成され、板材を下型に押さえ付けるパッドを備え、上刃はパッドに取り付けられ、刃部がパッドよりも下方に突出されるようにしてもよい。
【0019】
このように構成すれば、板材に対する上刃の刃部の食い込み量を容易に調整することができる。
【0020】
上記分断装置において、板材の分断予定線に対する一方側は、成形品部分であり、板材の分断予定線に対する他方側は、スクラップ部分であってもよい。
【0021】
このように構成すれば、板材を分断してスクラップ部分を取り除くことができる。
【0022】
上記分断装置において、板材は、アルミニウム合金製であってもよい。
【0023】
このように構成すれば、アルミニウム合金製の板材を分断することができる。
【0024】
本発明による分断方法は、板材を分断予定線に沿って分断するものであり、板材を下型に設置することにより、板材の分断予定線に対する一方側を下型によって支持させるとともに、板材の分断予定線に対する他方側を支持部材によって支持させる工程と、板材が下型および支持部材によって支持された状態で、下型に対して上刃を下降させることにより、上刃によって板材の分断予定線に切れ目を形成するとともに、その切れ目の形成に伴い亀裂を形成して、板材を分断予定線に沿って分断する工程とを備える。上刃の刃部は、鉛直方向に延びる刃面と、刃面の下端から斜め上方に延びる先端面とを有し、刃面と先端面とのなす角が鋭角に設定されている。支持部材は、上刃の昇降方向から見た場合に上刃と対応しない位置に配置されており、板材が分断される際に、板材の分断予定線に対する他方側の倒れ込みを抑制しながら、分断された板材を下方に逃がすことが可能なように構成されている。下型に対して上刃が最も下降された場合における上刃の板材に対する食い込み量は、板材の厚みの50%以上75%以下に設定されている。
【0025】
このように構成することによって、板材が分断される際に、板材の分断予定線に対する他方側が支持部材により支持されるので、板材の分断予定線に対する他方側の倒れ込みを抑制することができる。これにより、亀裂が直線状に形成されるので、板材の分断予定線に対する一方側の切断端面が平坦化され、切粉の発生を抑制することができる。また、上刃が下型に擦られないようにしながら、板材に切れ目を適切に形成することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の分断装置および分断方法によれば、板材を分断する際に切粉が発生するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本実施形態によるトリミング装置を説明するための模式図である。
【
図2】本実施形態のトリミング装置によるトリミング加工を説明するための図であって、上刃によるせん断が開始される状態を示した模式図である。
【
図3】本実施形態のトリミング装置によるトリミング加工を説明するための図であって、亀裂が直線状に形成された状態を示した模式図である。
【
図4】本実施形態のトリミング装置によるトリミング加工を説明するための図であって、板材が分断された状態を示した模式図である。
【
図5】従来例によるトリミング装置を説明するための模式図である。
【
図6】従来例のトリミング装置によるトリミング加工を説明するための図であって、湾曲した亀裂が形成された状態を示した模式図である。
【
図7】従来例のトリミング装置によるトリミング加工を説明するための図であって、スクラップ部分が取り除かれた後に上型が上昇されるときの状態を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下では、分断装置の一例であるトリミング装置に本発明を適用した場合について説明する。
【0029】
まず、
図1を参照して、本発明の一実施形態によるトリミング装置100について説明する。
【0030】
トリミング装置100は、
図1に示すように、下型1と上刃2と支持部材3とパッド4とを備え、板材150からスクラップ部分(不要部分)150bを取り除くトリミング加工を行うように構成されている。このトリミング装置100は、下型1および支持部材3によって支持される板材150に対して上刃2およびパッド4がプレスされることにより、板材150が分断予定線150cに沿って分断されるように構成されている。
【0031】
板材150は、たとえば、アルミニウム合金製であり、車両用のボディパネルである。この板材150は、成形品部分150aおよびスクラップ部分150bを有しており、その成形品部分150aおよびスクラップ部分150bの境界部に分断予定線150cが設定されている。
図1の例では、板材150が平板状であり、成形品部分150aが一方側(X1方向側)に配置されるとともに、スクラップ部分150bが他方側(X2方向側)に配置されており、分断予定線150cが
図1の紙面に対する垂直方向に延びている。すなわち、分断予定線150cは、平面的に見て直線状になっている。なお、成形品部分150aは、本発明の「板材の分断予定線に対する一方側」の一例であり、スクラップ部分150bは、本発明の「板材の分断予定線に対する他方側」の一例である。
【0032】
下型1は、設置面1aを有し、その設置面1aに板材150を設置可能に構成されている。下型1に板材150が設置された場合には、成形品部分150aの下方(Z1方向)に下型1が配置され、スクラップ部分150bの下方に下型1が配置されていない。すなわち、成形品部分150aが下型1に載置され、スクラップ部分150bが下型1からはみ出すようになっている。
【0033】
また、下型1の設置面1aの端部(X2方向側の端部)には下刃11が設けられ、その下刃11が板材150の分断予定線150cに沿って延びる刃部11aを有する。この刃部11aは、分断予定線150cの下方に配置され、
図1の紙面に対する垂直方向に延びるように形成されている。なお、下型1の設置面1aに対する下刃11の刃面の角度θは、たとえば、90度であるが、80~100度であってもよい。
【0034】
支持部材3は、板材150のスクラップ部分150bを支持するように構成されている。すなわち、支持部材3がスクラップ部分150bの下方に配置され、支持部材3にスクラップ部分150bが載置されている。支持部材3は、たとえば、分断予定線150cから離れた位置に配置され、スクラップ部分150bの端部(X2方向側の端部)に配置されている。
【0035】
上刃2はパッド4に取り付けられ、パッド4は板材150を下型1に押さえ付けるために設けられている。パッド4は、下型1に対して昇降可能に構成され、上刃2は、パッド4とともに下型1に対して昇降可能に構成されている。パッド4は、板材150に当接される押さえ面4aを有し、下型1の上方すなわち成形品部分150aの上方(Z2方向)に配置されている。
【0036】
上刃2は、パッド4に取り付けられる本体部21と、本体部21から下方に突出する刃部22とを有する。本体部21の下端部が押さえ面4aと面一にされ、刃部22が押さえ面4aよりも下方に突出されている。刃部22は、板材150の分断予定線150cに沿って延びるように形成されている。刃部22は、分断予定線150cの上方に配置され、
図1の紙面に対する垂直方向に延びるように形成されている。また、刃部22は、鉛直方向に延びる刃面22aと、刃面22aの先端(下端)から斜め上方に延びる先端面22bとを有する。刃面22aと先端面22bとのなす角は、たとえば45度に設定されている。なお、上刃2の刃部22と下刃11の刃部11aとのクリアランスは、たとえば、ゼロから±0.1mmまでの間の値に設定されている。
【0037】
ここで、上刃2の刃部22は、押さえ面4aに対する突出量が、板材150の厚みtの1/2以上に設定されるとともに、板材150の厚みt以下に設定されている。このため、下型1に対して上刃2が最も下降された場合における刃部22の板材150に対する食い込み量が、板材150の厚みtの1/2以上に設定されるとともに、板材150の厚みt以下に設定されている。
【0038】
-トリミング装置によるトリミング加工(分断方法)-
次に、
図1~
図4を参照して、本実施形態のトリミング装置100によるトリミング加工(トリミング装置100の動作例)について説明する。なお、
図2~
図4では、板材150の分断予定線150cの近傍を拡大して示している。
【0039】
まず、
図1に示すように、下型1の設置面1aに板材150が設置される。これにより、板材150の成形品部分150aが下型1に支持されるとともに、板材150のスクラップ部分150bが支持部材3に支持される。このとき、下刃11の刃部11aの上方に板材150の分断予定線150cが配置されるとともに、板材150の分断予定線150cの上方に間隔を隔てて上刃2の刃部22が配置されている。そして、パッド4が下型1に対して下降(Z1方向に移動)されることにより、上刃2が下降される。
【0040】
次に、
図2に示すように、上刃2の刃部22が板材150の分断予定線150cに突き当たり、上刃2および下刃11によるせん断が開始される。このとき、支持部材3(
図1参照)によりスクラップ部分150bが支持されていることから、スクラップ部分150bが倒れ込まない。すなわち、下型1からはみ出す板材150のスクラップ部分150bが上刃2によって押されてもほぼ水平な状態で保たれる。つまり、支持部材3により、板材150の姿勢の変化が抑制される。
【0041】
そして、上刃2がさらに下降されることにより、
図3に示すように、上刃2によって板材150の上面に切れ目(せん断面)151aが形成されるとともに、切れ目151aの形成に伴い亀裂152が形成される。この亀裂152は、切れ目151aから下方に直線状に延びるように形成される。つまり、亀裂152は、ほぼ鉛直方向に延びるように形成される。また、下刃11によって板材150の下面に切れ目151bが形成される。なお、亀裂152は板材150の脆性によって形成される。
【0042】
その後、上刃2がさらに下降され、亀裂152と切れ目151bとが繋がることにより、
図4に示すように、板材150が分断予定線150c(
図1参照)で分断され、スクラップ部分150bが取り除かれる。このとき、パッド4により板材150の成形品部分150aが下型1に押さえ付けられている。また、上刃2の刃部22の先端が板材150の成形品部分150aの下面よりも上方に配置されている。そして、成形品部分150aの切断端面153aおよびスクラップ部分150bの切断端面153bがほぼ平坦になっている。
【0043】
-効果-
本実施形態では、上記のように、板材150のスクラップ部分150bを支持する支持部材3を設けることによって、板材150が分断される際に、スクラップ部分150bが支持部材3により支持されるので、スクラップ部分150bの倒れ込みを抑制することができる。これにより、亀裂152が直線状に形成されるので、成形品部分150aの切断端面153aが平坦化され、切粉の発生を抑制することができる。その結果、板材150からスクラップ部分150bが除去された成形品部分150aの品質向上を図ることができる。
【0044】
また、本実施形態では、上刃2の刃部22の押さえ面4aに対する突出量を板材150の厚みt以下にすることによって、上刃2の刃部22が下刃11の刃部11aに擦られないようにすることができるので、凝着しにくくすることができる。
【0045】
また、本実施形態では、上刃2の刃部22の押さえ面4aに対する突出量を板材150の厚みの1/2以上にすることによって、板材150に切れ目151aおよび亀裂152を適切に形成することができる。
【0046】
また、本実施形態では、下型1に下刃11を設けることによって、下刃11による切れ目151bにより、板材150を分断しやすくすることができる。
【0047】
また、本実施形態では、上刃2がパッド4に取り付けられることによって、板材150に対する上刃2の刃部22の食い込み量を容易に調整することができる。また、上刃がパッドに取り付けられておらず、上刃がパッドとは個別に駆動される場合に比べて、トリミング装置100の小型化を図ることができる。
【0048】
-実験例-
次に、本実施形態の効果を確認するために行った実験例1~3について説明する。実験例1~3で用いる板材150は、アルミニウム合金製であり、厚みtが1.6mmである。
【0049】
[実験例1]
実験例1では、板材150に対する上刃2の食い込み量を調整して板材150の分断の可否を確認した。この実験例1では、下型1の設置面1aに対する下刃11の刃面の角度θを90度にした。すなわち、下刃11は、刃面が鉛直方向に延びている。実験例1による実験結果を表1に示した。なお、表1において、板材150が分断されたものを○とし、板材150が分断されなかったものを×とした。
【0050】
【0051】
表1に示すように、上刃2の食い込み量が板材150の厚みの1/2以上である実施例1~5による試料では、板材150が分断されていたのに対して、上刃2の食い込み量が板材150の厚みの1/2未満である比較例1および2による試料では、板材150が分断されていなかった。
【0052】
[実験例2]
実験例2では、板材150に対する上刃2の食い込み量を調整して板材150の分断の可否を確認した。この実験例2では、下型1の設置面1aに対する下刃11の刃面の角度θを80度にした。すなわち、下刃11は、下刃11の下側が内側(X1方向側)に配置されるように傾斜されている。実験例2による実験結果を表2に示した。なお、表2において、板材150が分断されたものを○とし、板材150が分断されなかったものを×とした。
【0053】
【0054】
表2に示すように、上刃2の食い込み量が板材150の厚みの1/2以上である実施例6~10による試料では、板材150が分断されていたのに対して、上刃2の食い込み量が板材150の厚みの1/2未満である比較例3および4による試料では、板材150が分断されていなかった。
【0055】
[実験例3]
実験例3では、板材150に対する上刃2の食い込み量を調整して板材150の分断の可否を確認した。この実験例3では、下型1の設置面1aに対する下刃11の刃面の角度θを100度にした。すなわち、下刃11は、下刃11の下側が外側(X2方向側)に配置されるように傾斜されている。実験例3による実験結果を表3に示した。なお、表3において、板材150が分断されたものを○とし、板材150が分断されなかったものを×とした。
【0056】
【0057】
表3に示すように、上刃2の食い込み量が板材150の厚みの1/2以上である実施例11~15による試料では、板材150が分断されていたのに対して、上刃2の食い込み量が板材150の厚みの1/2未満である比較例5および6による試料では、板材150が分断されていなかった。
【0058】
したがって、板材150がアルミニウム合金製である場合には、下型1の設置面1aに対する下刃11の刃面の角度θにかかわらず、上刃2の食い込み量が板材150の厚みの1/2以上であれば、板材150を分断することができることが判明した。
【0059】
-他の実施形態-
なお、今回開示した実施形態は、すべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、本発明の技術的範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0060】
たとえば、上記実施形態では、トリミング装置100に本発明を適用する例を示したが、これに限らず、トリミング装置以外の分断装置に本発明を適用するようにしてもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、板材150の材料がアルミニウム合金である例を示したが、これに限らず、切れ目の形成に伴い直線状の亀裂が形成されて分断されるものであれば、板材の材料がアルミニウム合金以外であってもよい。
【0062】
また、上記実施形態では、板材150が車両用のボディパネルである例を示したが、これに限らず、板材が車両用のボディパネル以外であってもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、板材150が平板状である例を示したが、これに限らず、板材の形状がどのようなものであってもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、分断予定線150cの平面形状が直線状である例を示したが、これに限らず、分断予定線の平面形状がどのようなものであってもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、下型1に下刃11が設けられる例を示したが、これに限らず、上刃のみで分断可能であれば、下型に下刃が設けられていなくてもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、支持部材3がスクラップ部分150bの端部に配置される例を示したが、これに限らず、支持部材がスクラップ部分の端部以外の位置に配置されていてもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、上刃2がパッド4に取り付けられる例を示したが、これに限らず、上刃がパッドに取り付けられておらず、上刃がパッドとは個別に駆動されるようにしてもよい。この場合には、パッドにより板材を下型に押さえ付けた状態で、上刃を下降させて切れ目および亀裂が形成されるようにしてもよい。上刃の食い込み量は、たとえば、ダイハイトによって調整可能である。
【0068】
また、上記実施形態では、刃部22が刃面22aおよび先端面22bを有するとともに、刃面22aおよび先端面22bの角度が45度である例を示したが、これに限らず、刃部の形状はどのようなものであってもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、上刃2の刃部22の突出量が板材150の厚みtの1/2以上板材150の厚みt以下に設定される例を示したが、これに限らず、上刃の刃部の突出量が板材の厚みの1/2未満であってもよいし、上刃の刃部の突出量が板材の厚みを超過していてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、板材を分断予定線に沿って分断する分断装置および分断方法に利用可能である。
【符号の説明】
【0071】
1 下型
2 上刃
3 支持部材
4 パッド
11 下刃
22 刃部
100 トリミング装置(分断装置)
150 板材
150a 成形品部分(板材の分断予定線に対する一方側)
150b スクラップ部分(板材の分断予定線に対する他方側)
150c 分断予定線
151a 切れ目
152 亀裂