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特許7505861運行管理装置、運行管理システム、労務管理システム及び運行記録装置
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  • 特許-運行管理装置、運行管理システム、労務管理システム及び運行記録装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】運行管理装置、運行管理システム、労務管理システム及び運行記録装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20240618BHJP
   G07C 5/00 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
G08G1/00 D
G07C5/00 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019034410
(22)【出願日】2019-02-27
(65)【公開番号】P2020140356
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2022-01-18
【審判番号】
【審判請求日】2023-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】輿 弦
【合議体】
【審判長】八木 誠
【審判官】山本 信平
【審判官】青木 良憲
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-32273(JP,A)
【文献】自動運転日報、日本、株式会社オンラインコンサルタント、2015年6月15日、https://web.archive.org/web/20180615062254/https://doutaikanri.com/good_point/dayreport/
【文献】デジタコ支援ソフト「DTASS」でより高精度な運行管理を、運送業向け管理システム「Trasport」、日本、株式会社エコシステムズ、2016年3月4日、https://web.archive.org/web/20160304152621/https://www.transport-ecosystems.com/software.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K19/00-19/18
G06Q10/00-10/10
G06Q30/00-30/08
G06Q50/00-50/20
G06Q50/26-99/00
G07C 1/00-15/00
G08G 1/00-99/00
G16Z99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗務員が運転する第一車両の出庫から入庫までの一連の運行データを記録する運行管理装置であって、
前記第一車両に搭載され前記一連の運行データを収集する第一運行記録装置と、
第二車両に搭載された第二運行記録装置が収集した、前記第一車両の出庫から入庫までの間における、前記乗務員が運転する前記第二車両の運行データを、前記一連の運行データの一部として記録する記録部と、
前記第二車両の運行データを含む前記一連の運行データに基づいて、前記乗務員の労務時間を表す日報を生成する生成部と、を備え、
前記日報に含まれる複数の行のうちの第1の行には、前記第一車両の運行データのみから算出された前記乗務員が前記第一車両を運転していない時間帯から前記第二車両の運行データのみから得られた前記乗務員が前記第二車両を運転した時間帯を除いた時間帯が、横方向の時刻の推移に対して、当該時間帯の開始時刻から終了時刻まで横方向に延びる帯状の表示を配置することによって表示され、前記日報に含まれる複数の行のうちの前記第1の行とは異なる第2の行には、前記第一車両及び前記第二車両の各速度の推移が、横方向の時刻の推移に対して、速度の大きさを表す縦方向に延びる棒グラフを横方向に並べることによって表示される
ことを特徴とする運行管理装置。
【請求項2】
前記乗務員に対応付けられた認証用端末の前記第二運行記録装置への接近又は前記乗務員を識別する情報の入力を検知することにより、前記乗務員を認証する認証部を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の運行管理装置。
【請求項3】
前記認証部は、前記第二運行記録装置に設けられた、作業の開始を示す操作を受け付ける操作部が操作されたことを検知して、前記乗務員の認証を完了する
ことを特徴とする請求項2に記載の運行管理装置。
【請求項4】
請求項1に記載の運行管理装置と、
前記第二運行記録装置と、を備え、
前記記録部は、前記第一運行記録装置と別体に設けられ、
前記第一運行記録装置は、前記第一車両の運行データを前記記録部に逐次送信し、前記第二運行記録装置は、前記第二車両の運行データを前記記録部に逐次送信する
ことを特徴とする運行管理システム。
【請求項5】
請求項4に記載の運行管理システムを備え、
前記運行管理装置は、前記第二車両の運行データを含む前記一連の運行データに基づいて、前記乗務員の労務時間を表す日報を生成する前記生成部を備える
ことを特徴とする労務管理システム。
【請求項6】
第一車両に搭載され、乗務員が運転する前記第一車両の出庫から入庫までの一連の運行データを収集して記録する運行記録装置であって、
第二車両に搭載された第二運行記録装置が収集した、前記第一車両の出庫から入庫までの間における、前記乗務員が運転する前記第二車両の運行データを、前記第二運行記録装置から受信する受信部と、
受信した前記第二車両の運行データを、前記一連の運行データの一部として記録する記録部と、
前記第二車両の運行データを含む前記一連の運行データに基づいて、前記乗務員の労務時間を表す日報を生成する生成部と、を備え、
前記日報に含まれる複数の行のうちの第1の行には、前記第一車両の運行データのみから算出された前記乗務員が前記第一車両を運転していない時間帯から前記第二車両の運行データのみから得られた前記乗務員が前記第二車両を運転した時間帯を除いた時間帯が、横方向の時刻の推移に対して、当該時間帯の開始時刻から終了時刻まで横方向に延びる帯状の表示を配置することによって表示され、前記日報に含まれる複数の行のうちの前記第1の行とは異なる第2の行には、前記第一車両及び前記第二車両の各速度の推移が、横方向の時刻の推移に対して、速度の大きさを表す縦方向に延びる棒グラフを横方向に並べることによって表示される
ことを特徴とする運行記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運行管理装置、運行管理システム、労務管理システム及び運行記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トラック、バス、タクシー車両などの運行を管理する企業等においては、各車両の運行状態を管理し、各車両を運転する乗務員毎に労務管理や安全運転管理を行う必要がある。したがって、実際の車両の運行状況を把握可能にするために、運行記録計であるデジタルタコグラフのような車載器が各車両に搭載される。このような車載器は、様々な運行データを自動的に収集し、例えばメモリカードのような記録媒体に運行データを記録し保存する。また、車載器が収集した運行データは、記録媒体から事務所PCに読み取られたり、通信ネットワークを介して事務所PCに送信されたりして、事務所PCに保存される。運行記録計を用いた運行管理に関する技術として、例えば、特許文献1~2に記載されたものがある。また、デジタルタコグラフを用いて運転者の労働状態を管理する技術として、特許文献3に記載されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-138555号公報
【文献】特開2000-185676号公報
【文献】特開2017-91585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、今日では、多くのトラックに運行記録計(車載器)が設置されているため、乗務員がトラックのみを運転している場合には、その車載器によって運転時間の管理がされる。しかしながら、例えば、目的地までトラックを運転した乗務員が、フォークリフトに乗り換えて作業を行う場合のように、乗務員が一日のうちに複数の車両を運転した場合、車載器による運転時間の管理が困難であった。仮にトラックとフォークリフトのそれぞれに車載器を搭載して、各車両の運行データをそれぞれ収集したとしても、運行データを記録するフォーマットが各車載器によって異なるため、各車両の運行データを合算することは容易でないからである。このため、乗務員がトラックとフォークリフトとを運転した場合、車載器で管理されるトラックの運行時間に、フォークリフトの運転時間を、乗務員自らもしくは運行管理者が手動で合計していた。特に運行記録計が搭載されていないフォークリフトの運行時間は、乗務員が手動で把握するため、運行管理内容に間違いが生じたり、トラックの運行時間との合計に間違いが生じる場合があった。さらに、トラックの運行時間とフォークリフトの運行時間とを合計する作業が必要であるため、管理者が乗務員の勤務状態を即座に把握することができず、運行管理のための日報を即日作成することが困難であった。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、複数の車両をまたいで運転する乗務員の運行データを容易に把握して、適切な労務管理を可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明に係る運行管理装置、運行管理システム、労務管理システム及び運行記録装置は、下記(1)~(6)を特徴としている。
(1) 乗務員が運転する第一車両の出庫から入庫までの一連の運行データを記録する運行管理装置であって、
前記第一車両に搭載され前記一連の運行データを収集する第一運行記録装置と、
第二車両に搭載された第二運行記録装置が収集した、前記第一車両の出庫から入庫までの間における、前記乗務員が運転する前記第二車両の運行データを、前記一連の運行データの一部として記録する記録部と、
前記第二車両の運行データを含む前記一連の運行データに基づいて、前記乗務員の労務時間を表す日報を生成する生成部と、を備え、
前記日報に含まれる複数の行のうちの第1の行には、前記第一車両の運行データのみから算出された前記乗務員が前記第一車両を運転していない時間帯から前記第二車両の運行データのみから得られた前記乗務員が前記第二車両を運転した時間帯を除いた時間帯が、横方向の時刻の推移に対して、当該時間帯の開始時刻から終了時刻まで横方向に延びる帯状の表示を配置することによって表示され、前記日報に含まれる複数の行のうちの前記第1の行とは異なる第2の行には、前記第一車両及び前記第二車両の各速度の推移が、横方向の時刻の推移に対して、速度の大きさを表す縦方向に延びる棒グラフを横方向に並べることによって表示される
ことを特徴とする運行管理装置。
(2) 前記乗務員に対応付けられた認証用端末の前記第二運行記録装置への接近又は前乗務員を識別する情報の入力を検知することにより、前記乗務員を認証する認証部を備える
ことを特徴とする上記(1)に記載の運行管理装置。
(3) 前記認証部は、前記第二運行記録装置に設けられた、作業の開始を示す操作を受け付ける操作部が操作されたことを検知して、前記乗務員の認証を完了する
ことを特徴とする上記(2)に記載の運行管理装置。
(4) 上記(1)に記載の運行管理装置と、
前記第二運行記録装置と、を備え、
前記記録部は、前記第一運行記録装置と別体に設けられ、
前記第一運行記録装置は、前記第一車両の運行データを前記記録部に逐次送信し、前記第二運行記録装置は、前記第二車両の運行データを前記記録部に逐次送信する
ことを特徴とする運行管理システム。
(5) 上記(4)に記載の運行管理システムを備え、
前記運行管理装置は、前記第二車両の運行データを含む前記一連の運行データに基づいて、前記乗務員の労務時間を表す日報を生成する生成部を備える
ことを特徴とする労務管理システム。
(6) 第一車両に搭載され、乗務員が運転する前記第一車両の出庫から入庫までの一連の運行データを収集して記録する運行記録装置であって、
第二車両に搭載された第二運行記録装置が収集した、前記第一車両の出庫から入庫までの間における、前記乗務員が運転する前記第二車両の運行データを、前記第二運行記録装置から受信する受信部と、
受信した前記第二車両の運行データを、前記一連の運行データの一部として記録する記録部と、
前記第二車両の運行データを含む前記一連の運行データに基づいて、前記乗務員の労務時間を表す日報を生成する生成部と、を備え、
前記日報に含まれる複数の行のうちの第1の行には、前記第一車両の運行データのみから算出された前記乗務員が前記第一車両を運転していない時間帯から前記第二車両の運行データのみから得られた前記乗務員が前記第二車両を運転した時間帯を除いた時間帯が、横方向の時刻の推移に対して、当該時間帯の開始時刻から終了時刻まで横方向に延びる帯状の表示を配置することによって表示され、前記日報に含まれる複数の行のうちの前記第1の行とは異なる第2の行には、前記第一車両及び前記第二車両の各速度の推移が、横方向の時刻の推移に対して、速度の大きさを表す縦方向に延びる棒グラフを横方向に並べることによって表示される
ことを特徴とする運行記録装置。
【0007】
上記(1)の構成の運行管理装置によれば、乗務員が例えばトラック(第一車両)とフォークリフト(第二車両)といった複数の車両をまたいで運転した場合であっても、第一及び第二運行記録装置によってそれらの運行データが途切れることなく記録され、第二車両の運行データが第一車両の一連の運行データの一部として記録される。すなわち、第二車両の運行データが第一車両の運行データに合算されて記録される。これにより、第一車両及び第二車両双方の運行時間や乗務員の休憩時間を一括して把握できるため、乗務員についての労務管理を適切に行うことができる。また乗務員が自ら運行データを管理(合計)する必要がないので、運行データに間違いが生ずることがない。
【0008】
上記(2)の構成の運行管理装置によれば、第一車両の乗務員と同一の乗務員が第二車両の運転を開始したことを確実に把握できるため、第一車両及び第二車両双方における運行時間や休憩時間を一括して把握して、当該乗務員についての正確な労務管理が可能となる。例えば、ビーコン等の認証用端末を所持した乗務員が第二車両に乗り込むことにより、認証用端末の接近を検知できる。また、乗務員が認証用端末の所持を忘れた場合には、乗務員が第二運行記録装置に対して識別情報を入力することにより直接乗務員設定を行うことができる。
【0009】
上記(3)の構成の運行管理装置によれば、第二車両において乗務員が実際に作業を開始した時点を正確に検知できるため、一層正確な労務管理が可能となる。また、認証用端末の接近又は識別情報の入力の検知により乗務員認証を行った場合において、操作部が操作されないまま第二車両が走りだしたときには、第二運行記録装置から警報を発して、乗務員に操作を促すことが可能となる。
【0010】
上記(4)の構成の運行管理システムによれば、第一及び第二運行記録装置によって収集された運行データがリアルタイムに管理されるため、運行管理者が乗務員の勤務状態を即座に把握することができる。
【0011】
上記(5)の構成の労務管理システムによれば、運行管理者が乗務員の労務状態を即座に把握することができ、運行管理のための日報を即日作成できる。
【0012】
上記(6)の構成の運行記録装置によれば、第一車両(例えばトラック)に搭載された運行記録装置において、第一車両の乗務員と同一の乗務員が運転する第二車両(例えばフォークリフト)の運行データを、第一車両の運行データに合算して記録できる。このため第一車両に搭載された運行記録装置において、第一車両及び第二車両双方の運行時間や乗務員の休憩時間を一括して把握でき、乗務員についての労務管理を適切に行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複数の車両をまたいで運転する乗務員の運行データを容易に把握して、適切な労務管理が可能となる。
【0014】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本実施形態の労務管理システムの構成を示す図である。
図2図2は、乗務員が複数の車両を運転する具体例を示すフローチャートである。
図3図3は、乗務員の運行実績表の具体例を示す図である。
図4図4は、乗務員の労務状況を示す日報の具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0017】
図1は、本実施形態の労務管理システムの構成を示す図である。本実施形態の労務管理システムは、例えばトラック運送会社等の事業者の設備として導入される。労務管理システムは、トラックやフォークリフト等の車両の運行状況、及び、乗務員の労務状況を管理するものであり、各車両に搭載した状態で使用されるデジタルタコグラフ(以下、車載器という)10A,10Bと運行管理センター30とを含む。本実施形態では、同一の乗務員が、一日のうちに、トラックとフォークリフトという複数の車両を運転する場合を想定する。
【0018】
車載器10Aは、トラック(第一車両)に搭載され、トラックの出庫から入庫までの一連の運行データを収集して記録するデジタルタコグラフである。車載器10Bは、フォークリフト(第二車両)に搭載され、フォークリフトの運行データを収集して記録するデジタルタコグラフである。運行管理センター30は、事務所に設置された汎用のコンピュータ装置で構成され、車載器10A,10Bが収集した各車両の運行データに基づいて、車両の運行状況の管理及び乗務員の労務管理を行う。インターネット網70は、車載器10A,10Bと広域通信を行う無線基地局8や運行管理センター30が接続されるパケット通信網であり、車載器10A,10Bと運行管理センター30との間で行われるデータ通信を中継する。車載器10A,10Bと無線基地局8との間の通信は、LTE(Long Term Evolution)/4G((4th Generation)等のモバイル通信網(携帯回線網)で行われてもよいし、無線LAN(Local Area Network)で行われてもよい。
【0019】
車載器10Aは、出入庫時刻、走行距離、走行時間、走行速度、速度オーバー、エンジン回転数オーバー、急発進、急加速、急減速等の運行データを記録する。車載器10Aは、CPU11、ディスプレイ12、操作ボタン13、プログラムデータ用メモリ14、ワークデータ用メモリ15、不揮発性メモリ16、電源インターフェイス(I/F)17、スピーカ18、車両信号I/F19、外部I/F20、本体スイッチ21、GPSI/F22及び広域通信モジュール23を備える。
【0020】
CPU11は、車載器10Aの各部を統括的に制御する。ディスプレイ12は、LCD(liquid crystal display)で構成され、通信や動作の状態の他、警報等を表示する。操作ボタン13は、出庫ボタン、入庫ボタン等の各種ボタンのON/OFF信号をCPU11に入力する。プログラムデータ用メモリ14は、CPU11によって実行される動作プログラム等を格納するメモリであり、例えばROM(Read Only Memory)で構成される。ワークデータ用メモリ15は、プログラムの実行中に得られたデータを一時的に記憶するメモリである。不揮発性メモリ16は、プログラムの実行により得られた運行データを記憶するメモリである。
【0021】
電源I/F17は、イグニッションスイッチのオン等により車載器10Aの各部に電源電力を供給する。また、電源I/F17は、イグニッションスイッチのオンオフ状態を表す二値信号をCPU11に出力する。スピーカ18は、警報等の音声を発する。車両信号I/F19は、ブレーキ信号、左右ウインカ信号、車速パルス信号、エンジン回転信号、リバース信号、アナログ信号、各種スイッチ(SW)信号等の車両信号をCPU11に入力する。外部I/F20は、本体スイッチ21のON/OFF信号をCPU11に入力する。
【0022】
GPSI/F22は、GPSアンテナ22aに接続され、GPS衛星から送信される信号を受信し、現在位置(GPS位置情報)を取得する。広域通信モジュール23は、通信アンテナ23aに接続されて広域通信を行い、携帯回線網(モバイル通信網)を介して無線基地局8に接続されると、無線基地局8と繋がるインターネット網70を介して、運行管理センター30と通信を行う。
【0023】
車載器10Bは、車載器10Aと同等の構成及び機能を有し、トラックの出庫から入庫までの間におけるフォークリフトの運行データ(第二車両の運行データ)を収集して記録する。以下、車載器10Bについて、車載器10Aと異なる点について説明する。車載器10Bは、ブルートゥース(登録商標)モジュール24を備え、操作ボタン13として作業開始ボタン及び作業終了ボタンを有する。ブルートゥースモジュール24は、各乗務員が所持する、乗務員自動認証用ビーコン(以下、ビーコンと称する。)40と近距離無線通信を行う。各ビーコン40-1,40-2,…は、各乗務員A,B,…と紐づけられ、それぞれ予め定められた信号をブロードキャスト送信する。CPU11は、ビーコン40-1を所持した乗務員Aが車載器10Bに近づき、ビーコン40-1との距離が所定距離(例えば数十センチメートル)以内となると、ビーコン40-1が発する信号を検知してビーコン40-1を認識し、ビーコン40-1に紐づけられた乗務員Aの認証を開始する。CPU11は、乗務員Aがフォークリフトに乗り込み、作業開始ボタン(操作ボタン13)を押下すると、運行管理センター30に対して、ビーコン40-1を持つ乗務員Aがフォークリフトの作業を開始したことを伝える。これにより、乗務員認証が完了する。尚、乗務員がビーコン40の所持を忘れた場合の対策として、車載器10Bは、操作ボタン13から乗務員を識別する情報が入力され、乗務員が車載器10Bに対して直接乗務員設定を行うことで、乗務員認証を行ってもよい。
【0024】
一方、運行管理センター30は、汎用のオペレーティングシステムで動作するPCにより構成されている。運行管理センター30は、運行管理装置及び労務管理装置として機能し、記憶装置31及び制御部32を有する。記憶装置31は制御部32が実行するプログラム等を格納し、車載器10A,10Bから受信した運行データ等を記憶する。制御部32は、運行管理センター30の各部を統括的に制御する。運行管理センター30は、トラックに搭載された車載器10Aが収集した、乗務員が運転するトラックの出庫から入庫までの一連の運行データを記録する。また、運行管理センター30は、トラックの出庫から入庫までの間における、この乗務員が運転するフォークリフトの運行データを、(トラックの)一連の運行データの一部として記録する。すなわち、運行管理センター30は、フォークリフトの運行データをトラックの運行データに合算して記憶装置31に記録する。また、運行管理センター30は、制御部32の指示により、合算された運行データ(フォークリフトの運行データが含まれる、トラックの一連の運行データ)を車載器10Aに送信する。尚、運行管理センター30は、合算された運行データを車載器10Bに送信してもよい。さらに、運行管理センター30は、合算された運行データに基づいて、乗務員の労務時間を表す日報を生成する機能を有する。
【0025】
図2図4を参照して、乗務員Aがトラック及びフォークリフトに乗車する場合の労務管理システムの動作を説明する。図2は、乗務員Aが複数の車両を運転する具体例を示すフローチャートである。図3は、乗務員の運行実績表の具体例を示す図である。図4は、乗務員Aの労務状況を示す日報の具体例を示す図である。乗務員Aは、ビーコン40-1を所持しており、運行管理センター30は、ビーコン40-1と乗務員Aとの対応を把握している。
【0026】
図2に示すように、まず、乗務員Aがトラックに乗り込み(ステップS1)、車載器10Aの出庫ボタン(操作ボタン13)が押下され(ステップS2)、トラックの移動が開始される(ステップS3)。ステップS2において、車載器10Aは、出庫ボタンが押下されたことを運行管理センター30に通知して、トラックが出庫したことを知らせる(図4のT1)。運行管理センター30は、車載器10Aと定期的に通信を行っているため、トラックの位置、速度等の情報を常に把握している。トラックが目的地に到着すると(ステップS4)、乗務員Aはトラックを降り、一時間の休憩をとる(ステップS5)。車載器10Aは、休憩が開始されたことを運行管理センター30に通知する(図4のT2)。このときトラックは停止しているが、出庫状態のままである。その後、乗務員Aがフォークリフトに乗り込むと(ステップS6)、車載器10Bが、乗務員Aに所持されるビーコン40-1を認識し、乗務員Aの認証を開始する(ステップS7)。乗務員認証により、トラックの乗務員と同一の乗務員Aがフォークリフトの運転を開始したことを確実に把握できる。尚、乗務員Aがビーコンの所持を忘れた場合は、乗務員が車載器10Bに対して直接乗務員設定を行うことで乗務員認証が可能となる。
【0027】
そして、フォークリフトに乗り込んだ乗務員Aが車載器10Bの作業開始ボタン(操作ボタン13)を押下する(ステップS8)と、車載器10Bは、運行管理センター30に対して、ビーコン40-1を持つ乗務員Aがフォークリフトの作業を開始したことを伝える(図4のT3)。これにより、乗務員認証が完了する。運行管理センター30が作業開始ボタンの押下を検知して乗務員認証を完了することにより、乗務員Aが実際に作業を開始した時点を正確に検知して、乗務員認証を行うことができる。仮にビーコン40-1の検知により乗務員認証が開始された場合に作業開始ボタンが操作されないままフォークリフトが走りだしたときには、車載器10Bからアラームや音声による警報を発して、乗務員に作業開始ボタンの操作を促すことができる。フォークリフトの作業中(ステップS9)、すなわち、車載器10Bの作業開始ボタンが押下されてから作業終了ボタン(操作ボタン13)が押下されるまでの間、車載器10Bは、運行管理センター30と定期的に通信を行っている。このため、フォークリフトの作業中においては、トラックの車載器10Aには、車載器10Bから運行管理センター30を介して、乗務員Aがフォークリフトの作業中であるという情報が定期的に送られていることになる。
【0028】
フォークリフトの作業が終了すると(ステップS10)、乗務員Aは車載器10Bの作業終了ボタンを押下して(ステップS11)、フォークリフトを降りて車載器10Bから離れる(ステップS12)。このとき車載器10Bは、作業終了ボタンが押下されていること、かつ、ビーコン40-1が車載器10Bから離れたことを検知して、乗務員認証を解除し、乗務員Aのフォークリフト作業が終了したことを運行管理センター30に通知する(ステップS13、図4のT4)。そして、乗務員Aが再度トラックに乗り込み(ステップS14)、トラックが目的地への移動を開始すると(ステップS15)、車載器10Aは、トラックが移動を開始したことを運行管理センター30に通知する(図4のT5)。トラックが目的地に到着すると(ステップS16)、乗務員Aは車載器10Aの入庫ボタン(操作ボタン13)を押下して(ステップS17)、トラックを降りその日の作業を終了する(ステップS18)。ステップS17において、車載器10Aは、入庫ボタンが押下されたことを検知して、トラックが入庫したことを運行管理センター30に通知する(図4のT6)。車載器10A,10Bが運行管理センター30と定期的に通信を行い、リアルタイムに運行データが管理されるため、運行管理者が乗務員の勤務状態を即座に把握することができる。尚、各車載器10A,10BにWiFi(登録商標)等の狭域無線通信ユニットを搭載し、車載器10Bが収集したフォークリフトの運行データを、インターネット網70を介さず、直接車載器10Aに送信してもよい。
【0029】
図3に示した運行実績表において、下から二行は、図2に示した具体例における乗務員Aの運行実績を示す。図3において、下から二行目は、車載器10Aが収集したトラックの運行データを示し、一番下の行は、車載器10Bが収集したフォークリフトの運行データを示す。図3に示されるように、乗務員Aがトラックを運転した時間は、11:30から14:00まで(図4のT1からT2)と16:15から17:30まで(図4のT5からT6)の二回であるが、トラックを運転していない間である15:00から16:00まで(図4のT3からT4)に、乗務員Aはフォークリフトを運転している。この運行実績表は、各車載器10A,10Bが収集した運行データをそれぞれ表示しているため、トラックとフォークリフトの双方を運転した乗務員Aの労務時間、すなわち運転時間及び休憩時間が把握しづらい。
【0030】
図4は、運行管理センター30が生成した、図2に示した具体例における乗務員Aの労務時間を表す日報を示す。図4の日報において、一行目は車載器10Aが収集したトラックの運行データに基づく乗務員Aの運転時間、二行目は車載器10Bが収集したフォークリフトの運行データに基づく乗務員Aの運転時間、三行目はトラックの出庫状態、四行目は車両(トラック及びフォークリフト)の速度、五行目は乗務員Aの休憩時間をそれぞれ示す。また、欄外に、トラックの運行データのみから算出した休憩時間を参考用に示す。
【0031】
図4の四行目及び五行目において、車載器10Aが収集した、乗務員Aが運転するトラックの出庫から入庫までの一連の運行データ(図4の一行目参照)に、車載器10Bが収集した、乗務員Aが運転するフォークリフトの運行データ(図4の二行目参照)が合算された結果に基づいて、車両の速度及び乗務員Aの休憩時間がそれぞれ表示されている。すなわち、図4の四行目には、乗務員Aが運転したトラック及びフォークリフトの各速度が示される。また、図4の五行目には、乗務員Aの実質的な休憩時間、つまり、乗務員Aがトラックを運転していない時間(トラックの運行データのみから算出した休憩時間)からフォークリフトの運転時間を除いた時間、が示されている。この日報により、図3に示す運行実績表からはわかりにくかった、乗務員Aの実質的な運転時間及び休憩時間を、容易に把握することができる。このように、運行管理センター30は、トラックの出庫から入庫までの一連の運行データに、フォークリフトの運行データを合算し、合算された運行データに基づいて日報を即日生成できる。このため、運行管理者は、乗務員Aの運転時間及び休憩時間(労務状態)を容易に把握して、乗務員Aの労務管理を適切に行うことができる。
【0032】
以上説明したように、本実施形態によれば、乗務員が例えばトラックとフォークリフトといった複数の車両をまたいで運転した場合であっても、車載器10A,10Bによってそれらの運行データが途切れることなく記録され、フォークリフトの運行データがトラックの一連の運行データの一部として記録される。すなわち、フォークリフトの運行データがトラックの運行データに合算されて記録される。これにより、トラック及びフォークリフト双方の運行時間や乗務員の休憩時間を一括して把握できるため、乗務員についての労務管理を適切に行うことができる。また乗務員が自ら運行データを管理(合計)する必要がないので、運行データに間違いが生ずることがない。
【0033】
尚、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、前述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。例えば、本実施形態では、トラックとフォークリフトという異なる車種が異なる複数の車両をまたいで運転する例について説明したが、トラックとトラックのように、同じ車種の複数の車両をまたいで運転する場合にも、各車両の運行データを合算することができる。また、トラックの車載器10Aにブルートゥースモジュール24を搭載し、車載器10Aにおいても乗務員認証を行ってもよい。
【0034】
また、本実施形態では、車載器10A,10Bが収集した運行データの合算を運行管理センター30で行ったが、車載器10Aで行ってもよい。この場合、広域通信網(インターネット網70)を介して、車載器10Bが収集した運行データを車載器10Aに送信し、車載器10Aで合算された運行データを車載器10Bに送信してもよい。また、各車載器10A,10Bに狭域通信ユニットを搭載して、直接車載器10A,10B間で運行データ(各車載器10A,10Bが収集した運行データ、及び合算された運行データ)をやり取りしてもよい。
【0035】
また、本実施形態では、車載器10Bは作業開始ボタンの押下によって、フォークリフトの運転開始を検知したが、これに限らない。車載器10Bは、施設内の例えば積荷作業所に設置されたビーコン受信機においてビーコンの接近が検知された場合、又は、フォークリフトが所定距離走行したことを検知した場合に、フォークリフトが運転を開始したことを検知してもよい。
【0036】
また、本実施形態では、車載器10Aは、車両の速度が時速0kmである時間が所定時間継続した場合に、休憩時間として扱うが、この所定時間は、10分、15分、20分など、運行管理センター30にて自由に設定できる。尚、車載器10Aは休憩開始ボタンが押下されてから、休憩終了ボタンが押下されるまでの間を休憩時間として扱ってもよい。
【0037】
また、本実施形態では、入出庫ボタンの押下によりトラックの入出庫を検知したが、これに限らない。例えば、トラックが所定距離走行した時点で出庫を検知したり、施設内の例えばゲートに設置されたビーコン受信機がビーコンの接近を検知した時点で出庫又は入庫を検知したりしてもよい。
【0038】
さらに、運行管理センター30は、車載器10Bが収集したフォークリフトの運行データを、車載器10Aが収集したトラックの運行データの一部として記録した運行データ(合算した運行データ)に基づいて、図3に示した運行実績表に、乗務員Aの実質的な運転時間及び休憩時間を示す情報を含めた運行実績表を作成し提示してもよい。
【0039】
ここで、上述した本発明の実施形態に係る運行管理装置、運行管理システム、労務管理システム及び運行記録装置の特徴をそれぞれ以下[1]~[6]に簡潔に纏めて列記する。
[1]乗務員が運転する第一車両(トラック)の出庫から入庫までの一連の運行データを記録する運行管理装置(車載器10A、運行管理センター30)であって、
前記第一車両(トラック)に搭載され前記一連の運行データを収集する第一運行記録装置(車載器10A)と、
第二車両(フォークリフト)に搭載された第二運行記録装置(車載器10B)が収集した、前記第一車両の出庫から入庫までの間における、前記乗務員が運転する前記第二車両の運行データを、前記一連の運行データの一部として記録する記録部(運行管理センター30(記憶装置31、制御部32))を備える
ことを特徴とする運行管理装置。
[2] 前記乗務員に対応付けられた認証用端末(ビーコン40)の前記第二運行記録装置への接近又は前記乗務員を識別する情報の入力を検知することにより、前記乗務員を認証する認証部(車載器10BのCPU11、運行管理センター30の制御部32)を備える
ことを特徴とする上記[1]に記載の運行管理装置。
[3] 前記認証部は、前記第二運行記録装置に設けられた、作業の開始を示す操作を受け付ける操作部(車載器10Bの作業開始ボタン(操作ボタン13))が操作されたことを検知して、前記乗務員の認証を完了する
ことを特徴とする上記[2]に記載の運行管理装置。
[4] 上記[1]に記載の運行管理装置(車載器10A、運行管理センター30)と、
前記第二運行記録装置(車載器10B)と、を備え、
前記記録部は、前記第一運行記録装置と別体に設けられ、
前記第一運行記録装置は、前記第一車両の運行データを前記記録部に逐次送信し、前記第二運行記録装置は、前記第二車両の運行データを前記記録部に逐次送信する
ことを特徴とする運行管理システム。
[5] 上記[4]に記載の運行管理システムを備え、
前記運行管理装置は、前記第二車両の運行データを含む前記一連の運行データに基づいて、前記乗務員の労務時間を表す日報を生成する生成部(制御部32)を備える
ことを特徴とする労務管理システム。
[6] 第一車両(トラック)に搭載され、乗務員が運転する前記第一車両の出庫から入庫までの一連の運行データを収集して記録する運行記録装置(車載器10A)であって、
第二車両(フォークリフト)に搭載された第二運行記録装置(車載器10B)が収集した、前記第一車両の出庫から入庫までの間における、前記乗務員が運転する前記第二車両の運行データを、前記第二運行記録装置から受信する受信部(車載器10Aの広域通信モジュール23)と、
受信した前記第二車両の運行データを、前記一連の運行データの一部として記録する記録部(車載器10AのCPU11、不揮発性メモリ16)と、を備える
ことを特徴とする運行記録装置。
【符号の説明】
【0040】
8 無線基地局
10A,10B デジタルタコグラフ(車載器)
11 CPU
12 ディスプレイ(LCD)
13 操作ボタン
14 プログラムデータ用メモリ
15 ワークデータ用メモリ
16 不揮発性メモリ
17 電源インターフェイス(I/F)
18 スピーカ
19 車両信号インターフェイス(I/F)
20 外部インターフェイス(I/F)
21 本体スイッチ
22a アンテナ
23 広域通信モジュール
23a 通信アンテナ
24 ブルートゥース(登録商標)モジュール
30 運行管理センター
31 記憶装置
32 制御部
40,40-1,40-2 乗務員自動認証用ビーコン(ビーコン)
70 インターネット網
図1
図2
図3
図4