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特許7505872磁気共鳴イメージング方法及び磁気共鳴イメージング装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】磁気共鳴イメージング方法及び磁気共鳴イメージング装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20240618BHJP
【FI】
A61B5/055 311
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019184912
(22)【出願日】2019-10-08
(65)【公開番号】P2021058434
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】朽名 英明
(72)【発明者】
【氏名】竹島 秀則
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0276909(US,A1)
【文献】特表2014-502910(JP,A)
【文献】国際公開第2019/072719(WO,A1)
【文献】特表2013-521955(JP,A)
【文献】特開2001-046354(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0242086(US,A1)
【文献】Keigo Kawaji et al.,Whole Heart Coronary Imaging with Flexible Acquisition Window and Trigger Delay,PLOS ONE,2015年02月26日,Vol.10 No.1,pp.1-14,doi.org/10.1371/journal.pone.0112020
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
G01R 33/20-33/64
JSTPlus/JMEDPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気共鳴イメージング装置により実行される磁気共鳴イメージング方法であって、
撮像対象の被検体から生体情報を取得し、
非カルテシアン座標系において、前記生体情報の周期に基づいて、互いに回転角度の異なる複数のトラジェクトリを設定し、前記設定された互いに回転角度の異なる複数のトラジェクトリで収集したk空間データを配置し、
前記トラジェクトリが異なる複数の収集パターンから、前記生体情報の周期における1周期あたりのk空間の分散性を評価することで、収集パターンを選択し、
前記k空間データを再構成して画像を生成することを含み、
前記収集パターンを選択するステップは、
前記1周期あたりのスポーク数の値を算出し、前記値を中心とした範囲における前記分散性を評価することで前記収集パターンを選択する、磁気共鳴イメージング方法。
【請求項2】
前記生体情報は呼吸に関する情報である、請求項に記載の磁気共鳴イメージング方法。
【請求項3】
前記生体情報は心拍に関する情報である、請求項に記載の磁気共鳴イメージング方法。
【請求項4】
前記収集パターンを選択するステップは、
前記複数の収集パターンの中から、前記被検体への安全性にかかる指標値に応じて、収集パターンを選択する、
請求項1~3のいずれか一つに記載の磁気共鳴イメージング方法。
【請求項5】
前記収集パターンを選択するステップでは、Bを高周波磁場として、前記指標値としてdB/dtを用いる、
請求項に記載の磁気共鳴イメージング方法。
【請求項6】
前記複数のトラジェクトリでk空間データを収集する前に、前記回転角度を決定するパラメータと、前記生体情報の周期とに基づいて、前記k空間データの収集シーケンスのパラメータを調整する、
請求項に記載の磁気共鳴イメージング方法。
【請求項7】
前記複数のトラジェクトリでk空間データを収集する前に、前記回転角度を決定するパラメータと、前記生体情報の周期とに基づいて、前記k空間データの収集シーケンスのパラメータの調整候補値を提示する、
請求項に記載の磁気共鳴イメージング方法。
【請求項8】
前記複数の収集パターンは、自然数をNとし、ψ=1.618として、前記回転角度が、180°/(N+1/ψ)となる、請求項4又は5に記載の磁気共鳴イメージング方法。
【請求項9】
圧縮センシングを用いて前記k空間データを再構成して画像を生成する、
請求項1~のいずれか一つに記載の磁気共鳴イメージング方法。
【請求項10】
前記非カルテシアン座標系は、ラジアル座標系であり、
前記ラジアル座標系で収集された前記k空間データの一部を用いて再構成を行い動的に前記画像を生成する、請求項1~のいずれか一つに記載の磁気共鳴イメージング方法。
【請求項11】
撮像対象の被検体から生体情報を取得する取得部と、
非カルテシアン座標系において、前記生体情報の周期に基づいて、互いに回転角度の異なる複数のトラジェクトリを設定する制御部と、
前記設定された互いに回転角度の異なる複数のトラジェクトリで収集したk空間データを配置する生成部とを
備え、
前記制御部は、前記トラジェクトリが異なる複数の収集パターンから、前記生体情報の周期おける1周期あたりのk空間の分散性を評価することで収集パターンを選択し、
前記生成部は、前記k空間データを再構成して画像を生成し、
前記制御部は、前記1周期あたりのスポーク数の値を算出し、前記値を中心とした範囲における前記分散性を評価することで前記収集パターンを選択
する、磁気共鳴イメージング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書等に開示の実施形態は、磁気共鳴イメージング方法及び磁気共鳴イメージング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ラジアル系の収集シーケンスを用いて磁気共鳴イメージングを行う場合、収集を、互いに角度を黄金角GA(約111.25°)だけ回転角度をずらしながら、k空間の原点を通る複数のスポークで行う方法が知られている。このような収集方法を取ることで、分散性のよいk空間データを得ることができる。
【0003】
しかしながら、例えば、実際の撮像状況下では、呼吸や心拍など、周期的な変動がある。ここで、これらの周期的な変動と、撮像の周期とが同期してしまうと、画質の劣化につながる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-5289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
明細書等に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、画質を向上させることである。ただし、本明細書等に開示の実施形態により解決される課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を、本明細書等に開示の実施形態が解決する他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る磁気共鳴イメージング方法は、磁気共鳴イメージング装置により実行される磁気共鳴イメージング方法であって、撮像対象の被検体から生体情報を取得し、非カルテシアン座標系において、生体情報の周期に基づいて設定された互いに回転角度の異なる複数のトラジェクトリで収集したk空間データを配置し、k空間データを再構成して画像を生成する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置を示す図である。
図2図2は、実施形態の背景について説明した図である。
図3図3は、第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置が行う処理の手順を示したフローチャートである。
図4A図4Aは、比較例に係る磁気共鳴イメージング方法について説明した図である。
図4B図4Bは、第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング方法について説明した図である。
図4C図4Cは、第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング方法について説明した図である。
図5図5は、その他の実施形態に係る磁気共鳴イメージング方法について説明した図である。
図6A図6Aは、その他の実施形態に係る磁気共鳴イメージング方法について説明した図である。
図6B図6Bは、その他の実施形態に係る磁気共鳴イメージング方法について説明した図である。
図6C図6Cは、その他の実施形態に係る磁気共鳴イメージング方法について説明した図である。
図6D図6Dは、変形例に係る磁気共鳴イメージング方法について説明した図である。
図7図7は、変形例に係る磁気共鳴イメージング方法について説明した図である。
図8図8は、第2の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置が行う処理の手順を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。ここで、互いに同じ構成には共通の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置100を示すブロック図である。図1に示すように、磁気共鳴イメージング装置100は、静磁場磁石101と、静磁場電源(図示しない)と、傾斜磁場コイル103と、傾斜磁場電源104と、寝台105と、寝台制御回路106と、送信コイル107と、送信回路108と、受信コイル109と、受信回路110と、シーケンス制御回路120(シーケンス制御部)と、コンピューター130(「画像処理装置」とも称される)とを備える。なお、磁気共鳴イメージング装置100に、被検体P(例えば、人体)は含まれない。また、図1に示す構成は一例に過ぎない。例えば、シーケンス制御回路120及びコンピューター130内の各部は、適宜統合若しくは分離して構成されてもよい。
【0010】
静磁場磁石101は、中空の略円筒形状に形成された磁石であり、内部の空間に静磁場を発生する。静磁場磁石101は、例えば、超伝導磁石等である。別の例として、静磁場磁石101は、永久磁石でもよい。
【0011】
傾斜磁場コイル103は、中空の略円筒形状に形成されたコイルであり、静磁場磁石101の内側に配置される。傾斜磁場コイル103は、互いに直交するX、Y、及びZの各軸に対応する3つのコイルが組み合わされて形成されており、これら3つのコイルは、傾斜磁場電源104から個別に電流の供給を受けて、X、Y、及びZの各軸に沿って磁場強度が変化する傾斜磁場を発生する。傾斜磁場コイル103によって発生するX、Y、及びZの各軸の傾斜磁場は、例えば、スライス用傾斜磁場Gs、位相エンコード用傾斜磁場Ge、及びリードアウト用傾斜磁場Grである。傾斜磁場電源104は、傾斜磁場コイル103に電流を供給する。
【0012】
寝台105は、被検体Pが載置される天板105aを備え、寝台制御回路106による制御の下、天板105aを、被検体Pが載置された状態で、傾斜磁場コイル103の空洞(撮像口)内へ挿入する。通常、寝台105は、長手方向が静磁場磁石101の中心軸と平行になるように設置される。寝台制御回路106は、コンピューター130による制御の下、寝台105を駆動して天板105aを長手方向及び上下方向へ移動する。
【0013】
送信コイル107は、傾斜磁場コイル103の内側に配置され、送信回路108からRFパルスの供給を受けて、高周波磁場を発生する。送信回路108は、対象とする原子の種類及び磁場強度で定まるラーモア(Larmor)周波数に対応するRFパルスを送信コイル107に供給する。
【0014】
受信コイル109は、傾斜磁場コイル103の内側に配置され、高周波磁場の影響によって被検体Pから発せられる磁気共鳴信号(以下、必要に応じて、「MR信号」と呼ぶ)を受信する。受信コイル109は、磁気共鳴信号を受信すると、受信した磁気共鳴信号を受信回路110へ出力する。
【0015】
なお、上述した送信コイル107及び受信コイル109は一例に過ぎない。送信機能のみを備えたコイル、受信機能のみを備えたコイル、若しくは送受信機能を備えたコイルのうち、1つ若しくは複数を組み合わせることによって構成されればよい。
【0016】
受信回路110は、受信コイル109から出力される磁気共鳴信号を検出し、検出した磁気共鳴信号に基づいて磁気共鳴データを生成する。具体的には、受信回路110は、受信コイル109から出力される磁気共鳴信号をデジタル変換することによって磁気共鳴データを生成する。また、受信回路110は、生成した磁気共鳴データをシーケンス制御回路120へ送信する。なお、受信回路110は、静磁場磁石101や傾斜磁場コイル103等を備える架台装置側に備えられてもよい。さらには、受信回路110の有する機能の一部、例えば磁気共鳴信号のデジタル変換を、受信コイル109に設けても構わない。
【0017】
シーケンス制御回路120は、コンピューター130から送信されるシーケンス情報に基づいて、傾斜磁場電源104、送信回路108及び受信回路110を駆動することによって、被検体Pの撮像を行う。ここで、シーケンス情報は、撮像を行うための手順を定義した情報である。シーケンス情報には、傾斜磁場電源104が傾斜磁場コイル103に供給する電流の強さや電流を供給するタイミング、送信回路108が送信コイル107に供給するRFパルスの強さやRFパルスを印加するタイミング、受信回路110が磁気共鳴信号を検出するタイミング等が定義される。例えば、シーケンス制御回路120は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)等の電子回路である。なお、シーケンス制御回路120が実行するパルスシーケンスの詳細については、後述する。
【0018】
さらに、シーケンス制御回路120は、傾斜磁場電源104、送信回路108及び受信回路110を駆動して被検体Pを撮像した結果、受信回路110から磁気共鳴データを受信すると、受信した磁気共鳴データをコンピューター130へ転送する。
【0019】
コンピューター130は、磁気共鳴イメージング装置100の全体制御や、画像の生成等を行う。コンピューター130は、メモリ132、入力装置134、ディスプレイ135、処理回路150を備える。処理回路150は、インタフェース機能131、制御機能133、及び生成機能136を備える。
【0020】
第1の実施形態では、インタフェース機能131、制御機能133、生成機能136にて行われる各処理機能は、コンピューターによって実行可能なプログラムの形態でメモリ132へ記憶されている。処理回路150はプログラムをメモリ132から読み出し、実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路150は、図1の処理回路150内に示された各機能を有することになる。なお、図1においては単一の処理回路150にて、インタフェース機能131、制御機能133、生成機能136にて行われる処理機能が実現されるものとして説明するが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路150を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより機能を実現するものとしても構わない。換言すると、上述のそれぞれの機能がプログラムとして構成され、1つの処理回路150が各プログラムを実行する場合であってもよい。別の例として、特定の機能が専用の独立したプログラム実行回路に実装される場合であってもよい。なお、図1において、インタフェース機能131、制御機能133、生成機能136は、それぞれ受付部、制御部、生成部の一例である。また、シーケンス制御回路120は、シーケンス制御部の一例である。
【0021】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphical Processing Unit)或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサはメモリ132に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。
【0022】
また、メモリ132にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、寝台制御回路106、送信回路108、受信回路110等も同様に、上記のプロセッサ等の電子回路により構成される。
【0023】
処理回路150は、インタフェース機能131により、シーケンス情報をシーケンス制御回路120へ送信し、シーケンス制御回路120から磁気共鳴データを受信する。また、磁気共鳴データを受信すると、インタフェース機能131を有する処理回路150は、受信した磁気共鳴データをメモリ132に格納する。
【0024】
メモリ132に格納された磁気共鳴データは、制御機能133によってk空間に配置される。この結果、メモリ132は、k空間データを記憶する。
【0025】
メモリ132は、インタフェース機能131を有する処理回路150によって受信された磁気共鳴データや、制御機能133を有する処理回路150によってk空間に配置されたk空間データ、生成機能136を有する処理回路150によって生成された画像データ等を記憶する。例えば、メモリ132は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等である。
【0026】
入力装置134は、操作者からの各種指示や情報入力を受け付ける。入力装置134は、例えば、マウスやトラックボール等のポインティングデバイス、モード切替スイッチ等の選択デバイス、あるいはキーボード等の入力デバイスである。ディスプレイ135は、制御機能133を有する処理回路150による制御の下、撮像条件の入力を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)や、生成機能136を有する処理回路150によって生成された画像等を表示する。ディスプレイ135は、例えば、液晶表示器等の表示デバイスである。
【0027】
処理回路150は、制御機能133により、磁気共鳴イメージング装置100の全体制御を行い、撮像や画像の生成、画像の表示等を制御する。例えば、制御機能133を有する処理回路150は、撮像条件(撮像パラメータ等)の入力をGUI上で受け付け、受け付けた撮像条件に従ってシーケンス情報を生成する。また、制御機能133を有する処理回路150は、生成したシーケンス情報をシーケンス制御回路120へ送信する。
処理回路150は、生成機能136により、k空間データをメモリ132から読み出し、読み出したk空間データにフーリエ変換等の再構成処理を施すことで、画像を生成する。
【0028】
次に、実施形態に係る背景について簡単に説明する。
【0029】
ラジアル系の収集シーケンスを用いて磁気共鳴イメージングを行う場合、収集を、互いに角度を黄金角GA(約111.25°)または黄金角GAから導かれる角度である180°-GA,360°-2×GA,2×GAなどだけ回転角度をずらしながら、k空間の原点を通る複数のスポークで行う方法が知られている。このような収集方法をとることで、k空間に充填されたスポーク同士の間隔が、最悪でも3種類以下に抑制され、結果として、k空間のどの方向に対しても、まんべんなくk空間データを収集することができる。すなわち、分散性のよいk空間データを得ることができる。また、これらの収集は、どの時刻においても一定の角度でスポークが回転していくので、撮像中のデータをどの時刻で一部切り出してきても、分散性の良いk空間データを収集できるという利点を有する。
【0030】
一方で、黄金角GAだけスポークの回転角度を変化させながら磁気共鳴イメージングを行う場合、黄金角GAは固定された角度であるので、撮像の自由度には限界がある。換言すると、黄金角GA、または、黄金角GAから導かれる角度である180°-GA,360°-2×GA,2×GAなどのなかから選ばれる固定的なスポークの回転角度を用いただけでは、画質の高い画像を得られない場合がある。例えば、実際の撮像状況下では、呼吸や心拍などの周期的な変動があるので、このような周期的な変動と、撮像の周期とが同期してしまうと、画質の劣化につながる場合がある。すなわち、呼吸や心拍などの変動の周期によっては、黄金角GAを利用した回転角度を設定した撮像であっても、k空間データの分散性が十分に担保できない場合がある。
【0031】
図2に、k空間データの分散性についての例を説明する図が示されている。図2において、収集10Aは、シーケンス制御回路120が1呼吸周期あたり11スポークのk空間データを収集する場合において、呼気時に収集されるk空間データの一例を示している。これに対して、収集10Bは、シーケンス制御回路120が1呼吸周期あたり11スポークのk空間データを収集する場合において、吸気時に収集されるk空間データの一例を示している。また、収集11Aは、シーケンス制御回路120が1呼吸周期あたり20スポークのk空間データを収集する場合において、呼気時に収集されるk空間データの一例を示している。また、収集11Bは、シーケンス制御回路120が1呼吸周期あたり20スポークのk空間データを収集する場合において、吸気時に収集されるk空間データの一例を表している。ここで、図2において、点線の一つ一つは、収集される一つ一つのスポークを示す。
【0032】
図2に示されるように、1呼吸周期当たり11スポークの収集を行う場合、吸気時のみ、あるいは呼気時のみを考えると、収集されるk空間の位置が、k空間の特定の方向に偏っている。また、1呼吸周期当たり20スポークの収集を行う場合、1呼吸周期当たり11スポークの収集を行う場合と比較すると状況は改善されているものの、吸気時のみあるいは呼気時のみを考えると、収集されるk空間の位置が、依然としてk空間の特定の方向に偏っている。ここで、1呼吸周期を通じて撮像を行う場合、得られる画像は、呼気時のk空間データより得られた画像と、吸気時のk空間データより得られた画像とを合成した画像と考えられるが、呼気時と吸気時とでは、動きなどの影響により、撮像対象の位置が変化する。従って、吸気時のみあるいは呼気時のみを考えたときに、収集されるk空間の位置がk空間の特定の方向に偏っていてk空間の分散性が悪い場合、画質が劣化する可能性がある。
【0033】
以上のように、呼吸などの周期的な変動が存在する場合において、呼吸などの変動の周期と、撮像の周期との関係まで考慮すると、黄金角GAを用いたラジアル系のサンプリングを行ったとしても、画質が劣化する可能性がある。一方で、黄金角GAを用いたサンプリングが有する、k空間データの高い分散性という利点があるので、活用する余地がある。
【0034】
かかる背景に基づいて、実施形態に係る磁気共鳴イメージング方法では、処理回路150は、制御機能133により、非カルテシアン座標系において、スポークの回転角度が異なる複数の収集パターンの中から収集パターンを選択する。シーケンス制御回路120は、選択された収集パターンでパルスシーケンスを実行してk空間データを収集し、処理回路150は、生成機能136により、当該k空間データを再構成して画像を生成する。ここで、処理回路150は、制御機能133により、収集パターンにおけるトラジェクトリのスポークを回転させる角度を、黄金角を一般化した以下の式に基づいて設定する。下式で定義されるスポークの回転角度を、以下便宜上「プラチナ角(Platinum Angle: PA)」と称することにする。
【数1】
【0035】
ここで、Nは自然数であり、PA(N)は、Nに対応するプラチナ角であり、φは黄金比に基づく定数である。ここで、N=1でPA(N)は約111.25°となり上述した黄金角になることから、プラチナ角は黄金角の一般化と考えられる。そのため、シーケンス制御回路120は、プラチナ角を用いたラジアルサンプリングを行うことで、黄金角を用いたラジアルサンプリングと同様、高いk空間データの分散性を保持することができる。一方で、プラチナ角は黄金角と異なりパラメータNの自由度があるので、処理回路150がパラメータNを適切に選択することで、シーケンス制御回路120が、個々の被検体の生体情報に応じた適切なパルスシーケンスを実行することでき、画質が向上する。
【0036】
かかる構成について、図3及び図4A~4Cを用いて説明する。
【0037】
図3は、第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置が行う処理の手順を示したフローチャートである。
【0038】
はじめに、ステップS100において、処理回路150は、制御機能133により、撮像対象の被検体から、例えば呼吸情報収集装置や心電計等を通じて、呼吸に関する情報や、心拍に関する情報等の、生体情報を取得する。
【0039】
続いて、ステップS110Aにおいて、処理回路150は、制御機能133により、対象とする変動の周期を測定し、並行して、スキャン条件から、単位時間当たりに収集されるスポーク数を計算する。例えば、処理回路150は、制御機能133により、ステップS100で得られた撮像対象の被検体の生体情報である呼吸に関する情報に基づいて、対象とする変動の周期である呼吸周期が、「4秒」であると測定する。また、これと並行して、処理回路150は、制御機能133により、シーケンス制御回路120からスキャン条件を取得し、1秒あたりに収集されるスポーク数を、例えば、「4.0」と算出する。
【0040】
続いて、ステップS120において、処理回路150は、制御機能133により、変動1周期当たりのスポーク数を計算する。例えば、対象とする変動の周期である呼吸周期が「4秒」であり、1秒あたりに収集されるスポーク数が「4.0」である場合、処理回路150は、制御機能133により、変動1周期当たりのスポーク数、すなわち1呼吸周期あたりのスポーク数を、4.0×4=16.0と算出する。
【0041】
続いて、ステップS130において、処理回路150は、制御機能133により、互いに回転角度の異なる複数のトラジェクトリにおける、回転角度が異なる複数の収集パターンを参照し、参照した収集パターンの中から、適切な収集パターンを選択する。一例として、処理回路150は、制御機能133により、回転角度であるプラチナ角PA(N)が異なる複数のプラチナ角サンプリングパターンを当該複数の収集パターンとして参照し、参照した収集パターンの中から、配置されるk空間データの分布に応じて、最適なプラチナ角PA(N)となるようなサンプリングパターンを選択する。一例として、処理回路150は、制御機能133により、プラチナ角PA(N)が異なる複数の収集パターンの中から、例えば呼気時など特定の時相のデータを抽出した場合における、k空間の分散性を表す指標(分散指標値)に基づいて、最適なNを選択することにより、最適な収集パターンを選択する。
【0042】
ここで、k空間の分散性をあらわす指標(分散指標値)は、例えば、黄金角またはプラチナ角サンプリングを行った場合のSNR(Signal to Noise Ratio)であるSNRGOLDENRATIOの、隣接してk空間に配置されるスポークの間隔が等しくなるようにサンプリングした場合のSNRであるSNRuniformに対する比であり、当該指標は、以下の式で計算できる。
【数2】
【0043】
ここで、Pは、データ収集が行われるスポークの本数であり、Δφは、黄金角(プラチナ角)サンプリングを行って収集したスポークを、基準となる始線となす角の大きさの順でソートした場合における、i番目のスポークと、i+1番目のスポークとの角度差である。
【0044】
上述の分散指標値は、k空間に配置されるスポークが、k空間にスポークが等間隔で配置されている状態に近づくほど大きくなり、分散指標値は大きいほど好適であると考えられる。黄金角(プラチナ角)サンプリングを行ってk空間に配置された、隣接するスポークがなす角度の分散値が小さいほど、分散指標値は大きくなる。
【0045】
ここで、一呼吸あたりのスポーク数が18本であると想定した比較例を図4A図4B図4Cを用いて説明する。呼吸周期が常に安定しているとは限らないため、例えば18±2スポークの範囲における分散性指標値の平均が最大となるNを最適なNとして選択することとする。
【0046】
図4Aにおいて、グラフ1は、比較例として、一呼吸周期のうち呼気時の時相において、黄金角サンプリングを行った場合の分散指標値の値を、一呼吸周期あたりのスポーク数の関数としてプロットしたものである。一呼吸周期のうち呼気時など、特定の時相のデータを抽出した場合、1呼吸周期あたりのスポーク数が16~20となる領域2において、分散指標値が減少傾向にある。すなわち、領域2では、k空間データに配置されるスポークの分布が偏っており、画質の劣化が想定される。従って、処理回路150は、制御機能133により、ステップS120で計算された「変動1周期当たりのスポーク数」において、Nを変化させてプラチナ角PA(N)でサンプリングをした場合の分散指標値が最大となるようなNの値を、最適なNとして選択する。
【0047】
図4Bにおいて、グラフ1aは、一呼吸周期のうち呼気時の時相のデータを抽出した場合における、N=4におけるプラチナ角PA(N)でシーケンス制御回路120がサンプリングをした場合の上述の分散指標値の値を、一呼吸周期当たりのスポーク数の関数としてプロットしたものである。図4Bに示されるように、N=4においては、1呼吸周期当たりのスポーク数が16~20となる領域では分散指標値が減少傾向にあることから、この領域ではN=4は適切なサンプリングでない。
【0048】
一方、図4Cにおいて、グラフ1bは、一呼吸周期のうち呼気時の時相のデータを抽出した場合における、N=5におけるプラチナ角PA(N)でシーケンス制御回路120がサンプリングをした場合の上述の分散指標値の値を、一呼吸周期当たりのスポーク数の関数としてプロットしたものである。図4Cに示されるように、N=5においては、1呼吸周期当たりのスポーク数が16~20となる領域2では、N=4の場合と比較して分散指標値の値が改善されていることから、この領域ではN=5はN=4と比較して望ましいサンプリングことがわかる。処理回路150は、制御機能133により、さまざまなNについて同様の計算を行った上で、N=5を、最適な収集パターンとして選択する。
【0049】
なお、図4A図4B図4Cを用いた説明においては、一呼吸周期のうち、呼気時の時相データを用い、分散指標値が最大となるNを収集パターンの決定に用いている。これは、呼気時において最適なNの値は、吸気時のデータにおいても最適となる場合が多いという仮定に基づくものである。したがって、吸気時のデータにおいて最適となるNを別途計算することを排除することは意図しておらず、吸気時のデータにおいて最適な収集パターンを別途計算しても良い。
【0050】
続いて、ステップS140において、シーケンス制御回路120は、ステップS130で選択された収集パターンに基づいて、非カルテシアン座標系において、生体情報の周期に基づいてステップS130で設定された互いに回転角度の異なる複数のトラジェクトリでデータ収集を行う。例えば、シーケンス制御回路120は、ステップS130で選択されたNに係るプラチナ角PA(N)により定められる、互いに回転角度の異なる複数のトラジェクトリで、2Dラジアル収集のパルスシーケンスを実行してデータ収集を行う。
【0051】
続いて、ステップS150において、処理回路150は、生成機能136により、ステップS140で収集したk空間データを配置し、当該k空間データを再構成して磁気共鳴画像を生成する。
【0052】
以上述べたように、第1の実施形態においては、処理回路150が制御機能133により最適な収集パターンを分散指標値に基づいて選択した上で、シーケンス制御回路120が選択されたプラチナ角でラジアルサンプリングを行った。これにより、呼吸などの周期的な変動であって、例えば被検体ごとに個人差があるような状況等において、個々の被検体について、k空間データの分散性を向上することができ、画質を向上することができる。
【0053】
(変形例1)
第1の実施形態では、図3のステップS100及びステップS110Aにおいて、処理回路150が被検体の生体情報を、例えば呼吸情報収集装置や心電計等を通じて収集する場合について説明した。実施形態はこれに限られず、処理回路150は、制御機能133により、ユーザから生体情報の入力を受け付けても良い。図5に、そのような場合のフローチャートが示されている。
【0054】
変形例1にかかる実施形態では、図3におけるステップS100及びステップS110Aの代わりに、ステップS110Bにおいて、処理回路150は、制御機能133により、入力装置134を通じてユーザから被検体の呼吸特性等の生体情報を受け付けるとともに、スキャン条件から、単位時間当たりに収集されるスポーク数を計算する。ステップS120~ステップS150においては、第1の実施形態と同様の処理を行う。
【0055】
制御機能133は、例えば、呼吸の周期をユーザに入力させ、生体情報として受け付ける。また、生体情報は、「呼吸が浅い」「通常」「呼吸が深い」といった定性的な選択肢を入力装置134がユーザに提示し、ユーザがいずれかの選択肢を選ぶことにより、制御機能133が選択肢に関連付けられた呼吸の周期を、生体情報として受け付けてもよい。なお、呼吸の周期に関して入力例を示したが、他の生体情報を受け付けるようにしてもよい。例えば、心拍や脈波の情報を入力装置134で受け付けられるようにする場合は、事前に計測しておいた心拍数を入力できるようにしたり、「脈が早い」「通常」「脈が遅い」といった選択肢から選べるようにしたりすることが例として考えられる。
【0056】
変形例1にかかる実施形態によれば、呼吸情報収集装置や心電計といった生体情報を収集する装置を被検体に装着していなくても、ユーザの入力により最適な収集パターンを選択することができる。また、被検体にとって生体情報を収集する装置を装着する負荷がなくなるとともに、装置を被検体に装着させる手順がなくワークフローの改善にもつながる。
【0057】
(変形例2)
第1の実施形態では、ステップS130において、処理回路150の制御機能133が分散指標値の値に基づいて最適な収集パターンを選択した。実施形態はこれに限られず、ステップS130において、処理回路150は、制御機能133により、複数の収集パターンの中から、被検体への安全性に係る指標値に応じて、適切な収集パターンを選択してもよい。
【0058】
変形例2にかかる実施形態では、処理回路150は、制御機能133により、安全性に係る指標値の一例として、磁場の時間変化率dB/dtに基づいて、収集パターンを選択する。例えば、スポークの回転角度が大きくなると傾斜磁場の時間変化率が大きくなるため、dB/dtを考慮して収集パターンを選択することが必要となる場合がある。例えば、処理回路150は、制御機能133により、dB/dtが閾値を下回る収集パターンを選択する。閾値は、例えば安全規格で定められた最大dB/dtの値や任意に設定した値を用いることができる。また、別の例として、処理回路150は、制御機能133により、dB/dtを最小化する収集パターンを選択してもよい。さらに、別の例として、処理回路150は、制御機能133により、分散指標値の値と、安全性に係る指標値との両方とに基づいて、適切な収集パターンを選択してもよい。一例として、処理回路150は、制御機能133により、安全性に係る指標値が正常範囲に収まる収集パターンの中で、もっとも分散指標値が良い収集パターンを、適切な収集パターンとして選択する。
【0059】
変形例2にかかる実施形態によれば、安全性に係る指標値を用いて最適な収集パターンを選択することができる。これによれば、ユーザが意識せずとも、MRI装置に要求される安全規格に準拠した範疇で画質の高い画像を得ることができる。また、安全性に係る指標値と分散指標値とを併用して収集パターンを決定すれば、最適な収集パターンを決定するまでのワークフローをより短縮することができる。
【0060】
(変形例3)
ステップ130で選択される最適な収集パターン及びステップS140で実行される撮像については、第1の実施形態で説明したものに限られない。変形例3に係る実施形態では、収集パターンのバリエーションについて示す。
【0061】
プラチナ角PA(N)を用いた収集のバリエーションを図6A図6Dに示した。図6Aは、k番目の収集のスポーク3とk+1番目の収集のスポーク4との間の回転角度5aが、プラチナ角PA(N)となる基本パターンを示す。これに対して、図6B図6Dは、図6Aの基本パターンの拡張である。図6Bは、k番目の収集のスポーク3とk+1番目の収集のスポーク4との間の回転角度5bが、180°-PA(N)である場合のパターンを示している。図6Cは、k番目の収集のスポーク3とk+1番目の収集のスポーク4との間の回転角度5cが、2×PA(N)である場合のパターンを示している。図6Dは、k番目の収集のスポーク3とk+1番目の収集のスポーク4との間の回転角度5dが、360°-2×PA(N)である場合のパターンを示している。
【0062】
シーケンス制御回路120は、プラチナ角PA(N)そのものではなく、プラチナ角PA(N)に近似する角度である疑似プラチナ角(Pseudo Platinum Angle)を用いて収集を行ってもよい。ここで、疑似プラチナ角は、例えばプラチナ角に近い有理数であって、分子及び分数が比較的小さい整数となる角度として構成される。また、別の例として、シーケンス制御回路120は、プラチナ角の回転角度ずつ回転したn本のスポークを、基準となる始線となす角の大きさの順でソートし、そのi番目のスポークの角度が、360°×(i/n)となるように等間隔に改めて配置されたスポークについて、収集シーケンスを実行してもよい。
【0063】
また、ステップ130で選択される最適な収集パターン及びステップS140で実行される撮像については、そのほかにも、さまざまなバリエーションが考えられる。
【0064】
例えば、ステップS140において、シーケンス制御回路120は、単純N分割、すなわち、i番目のスポークの角度が360°×(i/N)となるようなスポークで収集シーケンスを実行してもよい。この場合、ステップS130において、処理回路150は、制御機能133により、各Nについて分散指標値を算出し、算出された分散指標値に基づいて、最適な収集パターンを選択する。
【0065】
また、ステップS140において、シーケンス制御回路120は、N/M周期での分割、すなわち、i番目のスポークの角度が360°×(i/N*M)となるようなスポークで収集シーケンスを実行してもよい。この場合、ステップS130において、処理回路150は、制御機能133により、各N及びMについて分散指標値を算出し、算出された分散指標値に基づいて、最適な収集パターンを選択する。
【0066】
また、ステップS140において、シーケンス制御回路120は、Grouped Golden Angle、すなわち、1セットの複数の収集を、黄金角ずつ角度をずらしながら収集するシーケンスで収集シーケンスを実行してもよい。図7に、1セットが3スポークである場合のGrouped Golden Angleの例が示されている。図7において、互いに120度間隔で並んだスポーク7a,7b,7c と、スポーク8a,8b,8cとがそれぞれ1セットの収集となり、例えばスポーク7aとスポーク8aとの間の角度が黄金角となる。シーケンス制御回路120は、例えばスポーク7a,7b,7cで1セットの収集を行い、続いて、スポーク8a,8b,8cで1セットの収集を行う。ステップS130において、処理回路150は、制御機能133により、1セットがnスポークである場合のGrouped Golden Angleでの収集において、各nにおいて分散指標値を算出し、算出された分散指標値に基づいて、最適な収集パターンを選択する。
【0067】
また、ステップS140において、シーケンス制御回路120は、Bit Reversed Orderで収集シーケンスを実行してもよい。ここで、例えばN,M,Lを自然数としてこれらの自然数の組(N,M,L)で特徴づけられるBit Reversed Orderの収集シーケンスとは、第1ステップとして、1周をN分割したN本のスポークで順次収集を行い、第2ステップとして、1周をN×M分割したスポークのうち、第1ステップで収集されなかったスポークで順次収集を行い、第3ステップとして、1周をN×M×L分割したスポークのうち、第2ステップまでで収集されなかったスポークで順次収集を行う収集シーケンスであって、特定の順序で行われる収集シーケンスである。ステップS130において、処理回路150は、制御機能133により、Bit Reversed Orderの収集シーケンスを特徴づけるパラメータを変化させたときの分散指標値を算出し、算出された分散指標値に基づいて、最適な収集パターンを選択する。
【0068】
また、ステップS130の処理の別の例として、処理回路150は、制御機能133により、黄金角とそのバリエーションごとに分散指標値を算出し、算出された分散指標値に基づいて、最適な収集パターンを選択してもよい。例えば、処理回路150は、制制御機能133により、黄金角GAと、そのバリエーションである180°-GA, 2×GA, 360°-2×GAのそれぞれの回転角度のパルスシーケンスごとに、分散指標値を算出し、算出された分散指標値に基づいて、最適なバリエーションを選択してもよい。
【0069】
また、実施形態では、シーケンス制御回路120が2Dラジアル収集を行う場合について説明したが、実施形態は、2Dラジアル収集に限られず、一定の周期でエンコード方向を変えながら非カルテシアン座標で収集を行うさまざまな収集シーケンス、例えば、2Dスパイラル収集などの2D系収集シーケンス、及び、Stack Of Stars収集、UTE(ultrashort TE)撮像などで用いられるKoosh Ball型の収集、Cone Trajectoryでの収集などに例示される、3D系収集シーケンスに適用可能である。また、複数の並行したトラジェクトリが構成する帯状領域であるブレードを回転させて収集するJETやPROPELLER(Periodically Rotated Overlapping Parallel Lines with enhanced reconstruction )などの2D系収集シーケンスにも適用可能である。つまり、1本のスポークを収集するたびに回転角度を変化させる場合に限らず、実施形態に係る発明は適用可能である。
【0070】
変形例3にかかる実施形態によれば、黄金角、プラチナ角それぞれを利用した回転角度を拡張させた収集パターンを設定できるため、撮像シーケンスの種類に柔軟に対応することが可能となる。また、黄金角を用いた公知のいくつかの収集パターン間で、被検体の生体情報およびスキャン条件を用いて最適なパターンを選択することも可能であり、公知技術を用いた撮像法を高画質化することも可能である。
【0071】
(再構成方法・撮像方法について)
第1の実施形態に係る発明は、圧縮センシング(CS:Compressed Sensing)などの各種画像再構成アルゴリズムやDynamic撮像と併用してもよい。
【0072】
圧縮センシングなど、画像再構成アルゴリズムによっては、前述の分散指標値が画質の評価指標として相応しくない場合があり得る。その場合には、再構成アルゴリズムに適応した別の指標値を設定し、それに基づき最適な収集パターンを選択してもよい。
【0073】
ステップS130で選択された最適な収集パターンは、単位時間あたりの角度の増加の割合が一定であるので、どの時刻でデータを切り出してきてもk空間データの分散性が良好となる。従って、Dynamic再構成などのようにラジアルスキャンで取得したデータを複数のフレームに分割し、別個の画像として再構成する場合に適している。すなわち、非カルテシアン座標系として、ラジアル座標系を選択する場合、処理回路150は、生成機能136により、当該ラジアル座標系で収集されたk空間データの一部を用いて再構成を行い動的に画像を生成してもよい。
【0074】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、ステップS130において、処理回路150は、制御機能133により、分散指標値の値に基づいて、最適な収集パターンを選択した。実施形態はこれに限られず、処理回路150は、制御機能133により、ステップS140で実行されるパルスシーケンスの最適化を行ってもよい。
【0075】
すなわち、第2の実施形態においては、処理回路150は、制御機能133により、プラチナ角P(N)におけるNの値を固定したまま、TR(Repetition Time)やTE(Echo Time)などのパラメータが最適になるように、ステップS140で実行されるパルスシーケンスの最適化を行う。
【0076】
かかる処理の一例が、図8に示されている。
【0077】
第1の実施形態と同様に、ステップS100において、処理回路150は、制御機能133により、撮像対象の被検体から、呼吸に関する情報や、心拍に関する情報等の、生体情報を取得する。続いて、ステップS110Cにおいて、処理回路150は、制御機能133により、対象とする変動の周期を測定する。続いて、ステップS120において、処理回路150は、制御機能133により、変動1周期当たりのスポーク数を計算する。
【0078】
続いて、ステップS130Bにおいて、処理回路150は、制御機能133により、分散指標値等の値に基づいて、実行されるパルスシーケンスのパラメータを変化させ、ステップS140で実行されるパルスシーケンスの最適化を行う。例えば、処理回路150は、制御機能133により、ステップS140において互いに回転角度の異なる複数のトラジェクトリでk空間データを収集する前に、回転角度を決定するパラメータと、ステップS110Aで測定された生体情報の周期と、ステップS140で実行されるk空間データの収集シーケンスのパラメータごとに算出された分散指標値の値に基づいて、TR(Repetition Time)やTE(Echo Time)等のk空間データの収集シーケンスのパラメータを調整する。一例として、処理回路150は、制御機能133により、算出された分散指標値の値が、最も好ましい値となるようなTRやTEの値を、ステップS140において実行される収集シーケンスのパラメータとして算出する。このように、収集シーケンスのパラメータごとに分散指標値が算出されることで、シーケンス制御回路120は、変動1周期あたりのスポーク数が適切な値となるような収集シーケンスのパラメータを算出することができる。
【0079】
また、処理回路150は、制御機能133により、ディスプレイ135を通じてユーザにk空間データの収集シーケンスのパラメータの調整候補値を提示してもよい。
【0080】
続いて、ステップS140において、シーケンス制御回路120は、ステップS130で選択された最適なTRやTEに基づいて、非カルテシアン座標系においてパルスシーケンスを実行してデータ収集を行う。
【0081】
続いて、ステップS150において、処理回路150は、生成機能136により、ステップS140で収集したk空間データを配置し、当該k空間データを再構成して磁気共鳴画像を生成する。
【0082】
このように、第2の実施形態によれば、例えば、呼吸など、周期的な変動がある場合において、実行するパルスシーケンスを最適化することができ、これにより画質を向上することができる。
【0083】
(プログラム)
また、上述した実施形態の中で示した処理手順に示された指示は、ソフトウェアであるプログラムに基づいて実行されることが可能である。汎用コンピューターが、このプログラムを予め記憶しておき、このプログラムを読み込むことにより、上述した実施形態の磁気共鳴イメージング装置100による効果と同様の効果を得ることも可能である。上述した実施形態で記述された指示は、コンピューターに実行させることのできるプログラムとして、磁気ディスク(フレキシブルディスク、ハードディスクなど)、光ディスク(CD-ROM、CD-R、CD-RW、DVD-ROM、DVD±R、DVD±RWなど)、半導体メモリ、又はこれに類する記録媒体に記録される。コンピューター又は組み込みシステムが読み取り可能な記憶媒体であれば、その記憶形式は何れの形態であってもよい。コンピューターは、この記録媒体からプログラムを読み込み、このプログラムに基づいてプログラムに記述されている指示をCPUで実行させれば、上述した実施形態の磁気共鳴イメージング装置100と同様の動作を実現することができる。また、コンピューターがプログラムを取得する場合又は読み込む場合は、ネットワークを通じて取得又は読み込んでもよい。
【0084】
また、記憶媒体からコンピューターや組み込みシステムにインストールされたプログラムの指示に基づきコンピューター上で稼働しているOS(Operating System)や、データベース管理ソフト、ネットワーク等のMW(Middleware)等が、上述した実施形態を実現するための各処理の一部を実行してもよい。更に、記憶媒体は、コンピューターあるいは組み込みシステムと独立した媒体に限らず、LAN(Local Area Network)やインターネット等により伝達されたプログラムをダウンロードして記憶又は一時記憶した記憶媒体も含まれる。また、記憶媒体は1つに限られず、複数の媒体から、上述した実施形態における処理が実行される場合も、実施形態における記憶媒体に含まれ、媒体の構成は何れの構成であってもよい。
【0085】
なお、実施形態におけるコンピューター又は組み込みシステムは、記憶媒体に記憶されたプログラムに基づき、上述した実施形態における各処理を実行するためのものであって、パソコン、マイコン等の1つからなる装置、複数の装置がネットワーク接続されたシステム等の何れの構成であってもよい。また、実施形態におけるコンピューターとは、パソコンに限らず、情報処理機器に含まれる演算処理装置、マイコン等も含み、プログラムによって実施形態における機能を実現することが可能な機器、装置を総称している。
【0086】
以上述べた少なくとも一つの実施形態によれば、画質を向上させることができる。
【0087】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0088】
120 シーケンス制御回路
133 制御機能
136 生成機能
150 処理回路
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図7
図8