(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】脂質の抗微生物効果を増大する相乗効果
(51)【国際特許分類】
A61K 31/23 20060101AFI20240618BHJP
A61K 9/02 20060101ALI20240618BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20240618BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240618BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20240618BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20240618BHJP
A61K 9/12 20060101ALI20240618BHJP
A61K 9/72 20060101ALI20240618BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240618BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20240618BHJP
A61K 47/40 20060101ALI20240618BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20240618BHJP
A61P 31/10 20060101ALI20240618BHJP
A61P 31/16 20060101ALI20240618BHJP
A23L 33/115 20160101ALN20240618BHJP
A23L 33/12 20160101ALN20240618BHJP
【FI】
A61K31/23
A61K9/02
A61K9/06
A61K9/08
A61K9/10
A61K9/107
A61K9/12
A61K9/72
A61K47/10
A61K47/24
A61K47/40
A61P31/00
A61P31/10
A61P31/16
A23L33/115
A23L33/12
(21)【出願番号】P 2019523209
(86)(22)【出願日】2017-06-19
(86)【国際出願番号】 IS2017050010
(87)【国際公開番号】W WO2017221276
(87)【国際公開日】2017-12-28
【審査請求日】2020-06-17
【審判番号】
【審判請求日】2022-06-01
(32)【優先日】2016-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IS
(73)【特許権者】
【識別番号】519014501
【氏名又は名称】カプレット エーホーエフ.
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【氏名又は名称】中村 和広
(72)【発明者】
【氏名】スベインビヨルン ギズラルソン
(72)【発明者】
【氏名】ヘルガ ヘルガドッティル
(72)【発明者】
【氏名】ソーディス クリストムンズドッティル
(72)【発明者】
【氏名】ハルドル トルマル
(72)【発明者】
【氏名】シーグルドゥル グズムンドソン
【合議体】
【審判長】前田 佳与子
【審判官】渕野 留香
【審判官】原田 隆興
(56)【参考文献】
【文献】特表2001-504461(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0275030(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0058673(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K9/00-47/69
A61P1/00-43/00
A23L33/00-33/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬抗微生物液体製剤であって、以下:
a. 当該製剤中に溶解又は懸濁した、0.01~5%の範囲内の濃度の、グリセロールモノカプレート、グリセロールモノカプリレート、グリセロールモノラウレート、プロピレングリコールモノカプレート、プロピレングリコールモノカプリレート、プロピレングリコールモノラウレート、グリセロールジカプリン、グリセロールジカプリレート、グリセロールジラウレート、グリセロールトリカプリン、グリセロールトリカプリレート、及びグリセロールトリラウレート、並びにそれらのいずれかの組合せからなる群から選択される抗微生物活性脂質、
b. 0.2~3%の範囲内の濃度のエタノール、
c. メトキシポリエチレングリコール、及び
d. 生理的に許容されるビヒクル、
を含有する、医薬抗微生物液体製剤。
【請求項2】
前記抗微生物活性脂質の濃度が0.05%~2%である、請求項1に記載の医薬抗微生物液体製剤。
【請求項3】
溶液、軟膏、スプレー、エアロゾル、霧、点滴剤、クリーム、ゲル、坐剤及び膣坐剤(vagitory)からなる群から選択される、請求項1又は2のいずれかに記載の医薬抗微生物液体製剤。
【請求項4】
前記メトキシポリエチレングリコールが、式(I):
【化1】
で表され、式中、nが1~25の整数である、請求項1に記載の医薬抗微生物液体製剤。
【請求項5】
前記メトキシポリエチレングリコールの濃度が0.1%~60%である、請求項1~4のいずれか1項に記載の医薬抗微生物液体製剤。
【請求項6】
更に、吸収促進剤、水吸収ポリマー、微小球、油、エマルジョン、リポソーム、酵素的分解を阻害する物質、アルコール、有機溶媒、水、界面活性剤、疎水剤、pH調整剤、保存料及び浸透圧調整剤、シクロデキストリン及び推進剤又はそれらの混合物からなる群から選択される1つ以上の賦形剤を含有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の医薬抗微生物製剤。
【請求項7】
更に、ポリエチレングリコール、緩衝剤、殺精子剤、及びキレート剤を含有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の医薬抗微生物製剤。
【請求項8】
皮膚への局所適用、口腔への投与、鼻粘膜への投与、眼球投与、耳(otal)投与、咽頭
への投与、喉頭
への投与、
副鼻腔への投与、膣内投与、直腸内投与及び爪への局所投与から選択される投与用に製剤化される、請求項1~7のいずれか1項に記載の医薬抗微生物液体製剤。
【請求項9】
10mL以下の用量単位で提供される、請求項1~8のいずれか1項に記載の医薬抗微生物液体製剤。
【請求項10】
哺乳類、例えば人間の、鼻、眼球、耳、咽頭、喉頭、
副鼻腔、口腔、膣又は皮膚表面の、
シュードモナス・アエルギノサ(Pseudomonas aeruginosa
)、
スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus
)、
ストレプトコッカス・ニューモニア(Streptococcus pneumoniae
)及び
ヘモピルス・インフルエンザ(Haemopilus influenza
)からなる群から選択される微生物による感染から選択される、疾患又は症状の治療のための医薬組成物であって、グリセロールモノカプレート、グリセロールモノカプリレート、グリセロールモノラウレート、プロピレングリコールモノカプレート、プロピレングリコールモノカプリレート、プロピレングリコールモノラウレート、グリセロールジカプリン、グリセロールジカプリレート、グリセロールジラウレート、グリセロールトリカプリン、グリセロールトリカプリレート、及びグリセロールトリラウレート、並びにそれらのいずれかの組合せからなる群から選択される抗微生物活性脂質を含有し
、生理的に許容されるビヒクル中に、
0.01%~5%の濃度の当該脂質、0.2%~4%の範囲内の濃度のエタノール、及びメトキシポリエチレングリコールを含有する、医薬組成物。
【請求項11】
医薬製剤中の、グリセロールモノカプレート、グリセロールモノカプリレート、グリセロールモノラウレート、プロピレングリコールモノカプレート、プロピレングリコールモノカプリレート、プロピレングリコールモノラウレート、グリセロールジカプリン、グリセロールジカプリレート、グリセロールジラウレート、グリセロールトリカプリン、グリセロールトリカプリレート、及びグリセロールトリラウレート、並びにそれらのいずれかの組合せからなる群から選択される抗微生物脂質の、
シュードモナス・アエルギノサ(Pseudomonas aeruginosa
)、
スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus
)、
ストレプトコッカス・ニューモニア(Streptococcus pneumoniae
)及び
ヘモピルス・インフルエンザ(Haemopilus influenza
)からなる群から選択される微生物に対する殺微生物又は抗微生物効果
が増大した医薬製剤を製造する方法であって、当該製剤中に0.2~3%の範囲内の濃度のエタノール、メトキシポリエチレングリコール及び生理的に許容されるビヒクルを混合する工程を含
み、当該医薬製剤が、0.01%~5%の濃度の当該脂質を含有する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殺微生物脂質の活性を増大する、殺微生物脂質及びエタノールを含有する新規製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
乳脂質の抗ウイルス及び抗細菌活性に関する幾つかの報告がある(J. K. Welsh et al. Use of Semliki Forest virus to identify lipid-mediated antiviral activity and anti-alphavirus immunoglobulin A in human milk, Infect. Immun. 19, 395-401, 1978; J. K. Welsh et al. Effect of antiviral lipids, heat and freezing on the activity of viruses in human milk, J. Infect. Dis. 140,322-328,1979; J. J. Kabara, Fatty acids and derivatives as antimicrobial agents. In: The pharmacological effect of lipids. Edited by J. J. Kabara. The American Oil Chemists Society, St.Louis, Mo., 1978, pp. 1-13; C. E. Isaacs, H. Thormar et al., Membrane disruptive effect of human milk: Inactivation of enveloped viruses, J. Infect. Dis. 154, 966-971, 1986; C. E. Isaacs and H. Thormar, Human milk lipids inactivate enveloped viruses. In: Breast feeding, Nutrition, Infection and Infant Growth in Developed and Emerging Countries. Edited by S. A. Atkinson, L. A. Hanson, R. K. Chandra. ARTS Biomedical Publ. St. Johns, Newfoundland, Canada. 1990, pp. 161-174; C. E. Isaacs et al., Antiviral and antibacterial lipids in human milk and infant formula feeds, Arch. Dis. Childhood 65, 861-864, 1990; C. E. Isaacs and H. Thormar, The role of milk-derived antimicrobial lipids as antiviral and antibacterial agents. In: Immunology of Milk and the Neonate. Edited by J. Mestecky et al. Plenum Press, 1991, pp. 159-165; C. E. Isaacs et al., Addition of lipases to infant formulas produces antiviral and antibacterial activity, J. Nutr. Biochem. 3, 304-308, 1992; C. E. Isaacs et al. Antimicrobial activity of lipids added to human milk, infant formula, and bovine milk, Nutr. Biochem. 6, 362-366, 1995)。ここで、活性脂質は、乳リパーゼまたは胃腸管のリパーゼにより乳中のトリグリセリドから解離した遊離の脂肪酸およびモノグリセリドである。
【0003】
精製された脂質の殺ウイルス効果が細胞培養培地中で研究されてきた(H. Thormar, C. E. Isaacs et al., Inactivation of enveloped viruses and killing of cells by fatty acids and monoglycerides. Antimicr. Agents Chemother. 31, 27-31, 1987; H. Thormar, C. E. Isaacs et. al., Inactivation of visna virus and other enveloped viruses by free fatty acids and monoglycerides. Ann. N.Y. Acad. Sci. 724, 465-471, 1994)。
【0004】
単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)、水疱性口内炎ウイルス(VSV)およびビスナウイルスのような包膜ウイルスは長鎖不飽和及び中鎖飽和脂肪酸により不活性化されるが、長鎖飽和及び短鎖脂肪酸は試験された最も高い濃度でも殺ウイルス効果がないか極めて低いことが見出されている。中鎖不飽和脂肪酸の1-モノグリセリドは対応する遊離の脂肪酸よりも強い殺ウイルス効果を示した。従って、カプリン酸1-モノグリセライド(10:0)(以下、カプリン酸1-モノグリセライドはモノカプリン又はMCと表わされる)及びラウリン酸1-モノグリセライド(12:0)は、カプリン酸及びラウリン酸より10倍活性が強い(指標(X:Y)により、脂肪部分が炭素数Xからなり、Y個の二重結合を有することを意味する)。細胞培養媒体中、37℃で30分間培養したとき、カプリン酸1-モノグリセライドは2mMの濃度で、またラウリン酸1-モノグリセライドは1mMの濃度で、HSV-1、VSV及びビスナウイルスの力価を3000倍~10,000倍も減少させた。脂肪酸のジグリセライドは、殺ウイルス活性を示さなかった。ネガテイブ染色技術を用いた電子顕微鏡での研究は、殺ウイルス脂肪酸がVSVのウイルス包膜の漏出を引き起こし、より高い濃度では包膜及びウイルス分子の完全な崩壊を引き起こすことを示した。それらはまた組織培養細胞の原形質膜の崩壊を引き起こし、細胞の溶解及び死をもたらした(H. Thormar et al. Antimicrob. Agents Chemother. 31, 27-31, 1987)。脂質による細胞及びウイルスの膜の崩壊のメカニズムは知られていない。
【0005】
脂質の殺微生物及び殺細胞活性並びに体液中の微生物を殺すためのそれらの潜在的な利用が、米国特許第4,997,851号および第5,434,182号に記載されている。コンタクトレンズを消毒するためのそれらの利用が、米国特許第5,624,958号に記載され、粘膜及び皮膚の感染に対抗するためのそれらの利用が、特許出願第10/408235号に記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、少量のエタノールによって殺微生物脂質の抗微生物効果が強化され得るという、発明者らの驚異的かつ実質的な相乗効果の発見に基づく。本発明は、特に、哺乳類の、鼻、眼球、耳、咽頭、喉頭、洞、口腔、膣又は皮膚表面の、ウイルス、病原性細菌又は真菌による感染を予防するための、殺微生物効果の強化に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明において、0.1~4%、好ましくは0.2~4%及びより好ましくは0.5~3%の範囲内の少量のエタノールが、殺微生物脂質によって誘導される抗微生物効果について驚異的な増強効果を有することが見出された。エタノール(エチルアルコール)及び脂質を含有する製剤は、哺乳類の、鼻、眼球、耳、咽頭、喉頭、洞、口腔、膣又は皮膚表面の、ウイルス、病原性細菌又は真菌により引き起こされる感染を治療又は予防するのに使用される、殺微生物脂質と組み合わされたときに、驚くべき強力な殺微生物効果を有していた。
【0008】
特定の製剤又は組成物(本文中では両用語は同義である)は、0.2~5%、好ましくは0.5~3%エタノールと共に、0.2~5%、好ましくは0.5~3%の濃度で製剤中に溶解した、殺微生物脂質を含有しており、当該脂質が、鼻、眼球、耳、咽頭、喉頭、洞、口腔、膣又は皮膚表面等の哺乳類の体表で行き渡っている水性環境中でのその殺効果を発揮することを可能とする。
【0009】
本発明の更なる側面は、皮膚又は粘膜における、ウイルス、細菌又は真菌により引き起こされる感染、特に、鼻、眼球、耳、咽頭、喉頭、洞、口腔、膣又は皮膚表面における感染を予防又は治療する方法に関し、当該方法は、有効成分として1つ以上の殺微生物脂質を含有する製剤を有効量投与することを含む。
【0010】
発明の詳細な記載
「殺微生物脂質」は、ウイルス及び/又は細菌及び/又は真菌を殺すことの出来る脂質を意味する。上記のように、そのような脂質は公知であり、殺細胞効果も有することが見出されている。ウイルスを殺すとは、前記脂質に効果的に暴露されたウイルスが細胞に感染出来なくすること、即ちそのウイルスが、その遺伝材料がその中で再生産され得る細胞の中に遺伝材料を導入出来なくすることを意味する。細菌又は細胞を殺すとは、前記脂質に効果的に暴露された細菌又は細胞が、生命の基本的機能を実行出来なくすること;特に細菌又は細胞が、細胞の生理的完全性を維持するために必要な栄養素を取得出来なくすることを意味する。特許請求の範囲及び本明細書の説明に見られるように、前記脂質が同様に強力な殺真菌効果を有することを想像することは、意図され、及び正当と考えられる。
【0011】
本発明の製剤は、一般に、液体、半液体又は固体の製剤である。現在好ましい製剤は、溶液、エマルジョン、懸濁物、粘液、半液体、例えば限定されないが、ゲル又はゲル状組成物、特にハイドロゲル、又は坐剤若しくは膣坐剤を含み、これらは、哺乳類の鼻、眼球、耳、咽頭、喉頭、洞、口腔、膣又は皮膚表面に適用され、又は接触が維持される。多くの粘膜表面において、水溶液が有用である。
【0012】
前記製剤の中で水溶液は、製剤の成分、通常は主要成分として、水を有することにより好ましくは提供されるが、水溶液は、場合によっては、様々な賦形剤、例えば限定されないが、可溶化剤、生体接着剤及び界面活性剤等によっても提供され得ることが想定される。
【0013】
前記抗微生物脂質又はグリセリドを含有する製剤に、0.01重量%以上の量のエタノール(エチルアルコール)が添加され、又はその中に抗微生物脂質又はグリセリドが添加される。最終製剤中に、エタノールは、好ましくは、約0,1%、例えば約0,2%以上、例えば約0,3%以上、例えば約0,4%以上、例えば約0,5%以上、例えば約4%以下、例えば約3%以下、例えば約2,5%の濃度範囲内、例えば限定されないが、約0,2%、約0,3%、約0,4%、約0,5%、約0,8%、約1,0%、約1,2%、約1,5%、約1,7%、約2%、約2,25、及び約2,5%の濃度で存在する。
【0014】
他に言及の無い限り、全ての重量パーセントは、「使用できる状態」又は「使用時」の組成物の合計重量に基づく重量/重量パーセンテージである。
【0015】
好ましくは、前記抗微生物脂質成分は、1位にC8-C12脂肪酸を有するモノエステルを有する、S-異性体若しくはR-異性体又はそれらの組合せである。本発明において2位に脂肪酸を有するモノエステルも使用され得、当該脂質は、追加的に、少量のジグリセリド、トリグリセリド、純グリセロール及び純脂肪酸を含み得る。
【0016】
本発明のエタノール(エチルアルコール)を含有する医薬組成物は、幾つかの態様において、限定されないが、グリセロールモノカプレート、グリセロールモノカプリレート、グリセロールモノラウレート、プロピレングリコールモノカプレート、プロピレングリコールモノカプリレート、グリセロールジカプリン、グリセロールジカプリレート、グリセロールジラウレート、グリセロールトリカプリン、グリセロールトリカプリレート、グリセロールトリラウレート、オクチルグリセロール、モノミリスチン、モノパルミトレイン、モノオレイン、プロピレングリコールモノラウレート、ココアバター及びそれらの組合せからなる群から選択される生体活性脂質を含有し得る。
【0017】
上記方法のいずれかのような活性脂質成分は、典型的には、約0.01%以上、例えば約0,05%以上、例えば約0,1%以上、例えば約0,2%以上、約5%以下、例えば約2,5%又は2%以下、例えば約1,5%以下、例えば約1%以下の濃度範囲内である。選択される濃度は、本明細書中に更に記載されるように、想定される送達形態(溶液、スプレー、ゲル等)及び想定される適用部位に依存し得る。幾つかの態様において、前記脂質物質は、約0,1%、又は約0,2%、又は約0,25%、又は約0,3%、又は約0,4%、又は約0,5%、又は約0,6%、又は約0,7%、又は約0,8%、又は約0,9%、又は約1,0%の濃度で存在する。
【0018】
本発明の抗微生物脂質及び製剤は、適切には、以下のウイルスの1つ以上(限定されない):ヘルペスウイルス1型及びヘルペスウイルス2型(HSV-2)、HIV、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、インフルエンザAウイルス及びパラインフルエンザウイルス2型、アデノウイルス、コロナウイルス、ライノウイルス、エンテロウイルス、ヒトメタ肺炎ウイルス、水痘帯状ヘルペスウイルス、ジカウイルス;また限定されないが以下の細菌の1つ以上: Staphylococcus aureus、Staphylococcus epidermis、Streptococci A、Streptococci pyogenes、Haemophilus influenzae、Streptococcus D、Streptococcus mutans、Streptococcus pneumoniae、Corynebacteria sp. Nococardia asteroides、Micrococcus sp. Pseudomonas aeruginosa、Listeria monocytogenes、Lactobacillus jensenii、Chlamydia trachomatis、Neisseria gonorrhoeae、Helicobacter pylori、Campylobacter jejuni、Mycobacterium tuberculosis、Moraxella catarrhalis、Veillonella parvula、Klebsiella species、Bordetella pertussis、Bordetella bronchiseptica、Corynebacterium diphtheria、Bacillus anthracis;限定されないが以下の真菌:Candida albicans、C. albicans、C. tripicalis、C. parapsilosis、C. glabrata、C. parakrusei、C. guillermondi、C. dubliniensis、Trichophyton rubrum、Malassezia;及び/又は限定されないが以下のプリオン:狂牛病;を殺すのに適切に使用される。
【0019】
勿論、これらの抗微生物脂質の塩、代謝前駆体、誘導体、及びそれらの混合物も必要に応じて使用され得る。
【0020】
既に指摘されたように、前記活性物質は、幾つかの態様において、意図される使用及び適用部位に依存して、10ml未満、好ましくは1000μL未満の全体積以内の有効量で存在し、特定の表面において、500μL未満の全体積が好ましく、又はより好ましくは50~150μLの範囲内である。従って、本発明の製剤は、幾つかの態様において、上記の範囲及び量の範囲内の単位用量を提供する用量単位で提供される。
【0021】
従って、本発明の医薬調製品は、医薬として許容される賦形剤、例えば限定されないが、メトキシポリエチレングリコール(例えばmPEG350)を更に含有し得、これは各送達経路又は部位に適し、好ましくはその濃度は、約0.0001%以上、例えば約0,01%以上、例えば約0,1%以上、例えば約99%以下、例えば約95%以下、例えば約90%以下、例えば約80%以下、例えば約75%以下、例えば約70%以下、例えば約60%以下、例えば約50%以下、例えば約40%以下、例えば約20%以下、例えば約15%以下、例えば約10%以下、例えば約5%以下、例えば約4%以下、又は約3%以下、又は約2%以下の範囲内、例えば限定されないが、約1%、約1,5%、約2%、約2,5%、約3%、又は約3,5%である。
【0022】
幾つかの態様において、前記医薬調製品は、追加で、吸収促進剤、水吸収ポリマー、微小球、油、エマルジョン、リポソーム、酵素的分解を阻害する物質、アルコール、有機溶媒、水、界面活性剤、疎水剤、pH調整剤、保存料及び浸透圧調整剤、シクロデキストリン及び推進剤又はそれらの混合物からなる群から選択される1つ以上の物質を少量含有する。
【0023】
本明細書中、メトキシポリエチレングリコールは、末端にメチル基を有するポリエチレングリコールポリマーを一般に意味する。この用語は、mPEGと略され得る。式(I)に示されるように、本発明で用いられるメトキシポリエチレングリコール物質は、nが1~25の整数、例えば約2以上、又は約3以上、又は約4以上、約25以下、例えば約22以下、又は約20以下、又は約25以下、又は約12以下、又は約10以下の範囲内のポリマー鎖長を有する。mPEGは、相対的に均一なポリマー長を有しても良く、又は所定の範囲内で、異なるポリマー長の分布を有してもよい。幾つかの態様において、当該分布の好ましい平均分子量は、例えば約350、約450、約550又は約650であり、それぞれ平均のnが約7.2、約9.5、約11.7、及び約14となる。一つの態様において、式Iで表される1つ以上の物質を含有する製剤において使用される組合せ製品は、メトキシポリエチレングリコール350(mPEG350、例えばCarbovax(商標)(DOW Chemical Company))であり、他の態様において、使用される組合せは、メトキシポリエチレングリコール550(mPEG550、例えばCarbovax(商標))である。350及び550の数字は、それぞれ各物質の平均分子量を意味する。
【0024】
本発明のビヒクル組成物に使用するために特に好ましいのはCarbovax(商標)Sentry(商標)(mPEG 350及びmPEG 550)であり、これはnが主にそれぞれx及びyである上記式Iのポリマーの市販の溶媒を意味し、The Dow Chemical Company製である。mPEG350及びmPEG550は、水、アルコール、例えばメタノール、エタノール、n-プロパノール、グリセロール、及び様々な油とあらゆる比率で混和する無色の液体であり、b.p.は約155℃である。mPEG350及びmPEG550のいずれも、Dow Chemicalsが示すように、局所投与用の組成物に無希釈形態で用いる場合、非刺激性であることが報告されている。
【0025】
本発明に用いるメトキシポリエチレングリコールは、例えばメトキシ-ジエチレングリコール(2mEG)、メトキシ-トリエチレングリコール(m3EG)、メトキシ-テトラエチレングリコール(m4EG)、メトキシ-ペンタエチレングリコール(m5EG)、メトキシ-ヘキサエチレングリコール(m6EG)、メトキシ-ヘプタエチレングリコール(m7EG)、メトキシ-オクタエチレングリコール(m8EG)、メトキシ-ノナエチレングリコール(m9EG)、メトキシ-デカエチレングリコール(m10EG)、メトキシ-ウンデカエチレングリコール(m11EG)、メトキシ-ドデカエチレングリコール(m12EG)、メトキシ-トリデカエチレングリコール(m13EG)、メトキシ-テトラデカエチレングリコール(m14EG)であり得る。前記エチレングリコールは、単一の化合物、又は2つ以上のメトキシ-n-エチレングリコールの混合物、例えば市販品、例えばCarbovax(商標)Sentry(商標)(mPEG 350又はmPEG 550)の形態で用いられ得る。
【0026】
メトキシポリエチレングリコールは、様々な品質のものが利用出来る。特に好ましくは高純度品であり、例えばThe Dow Chemical Company製Carbovax(商標)Sentry(商標)mPEG350である。
【0027】
好ましくは、前記ポリマーは、平均分子量200~7500のメトキシ-ポリエチレングリコール(mPEG)及び/又はポリエチレングリコール(PEG)、又はプロピレングリコール(PG)、又はそれらの混合物、又は単エチレングリコール、例えばテトラエチレングリコール(4EG)及びペンタエチレングリコール(5EG)である。
【0028】
限定されないが膣坐剤又は直腸送達等の本発明の好ましい側面において、前記組成物は、平均分子量200~7500のポリエチレングリコールを99%(w/w)未満含有する。
【0029】
一つの態様において、本発明は、約0.01~約5%の濃度で、溶解又は懸濁状態の、本明細書中に規定する抗微生物的に活性の脂質、濃度約0.1~約4%のエタノールを含有し、口腔内に投与されるようにチョコレート基材中に製剤化された、抗微生物食品を提供する。
【0030】
従って、前記活性脂質成分及びエタノールは、幾つかの態様において、限定されないが、ミルクチョコレート又はダークチョコレート等のチョコレートベースに添加されて、そのような製品の抗微生物活性を達成するために口腔に投与される固形製剤が提供される。そのような製剤の非限定的な例は、実施例3に例示されている。そのような製剤は、前記活性脂質成分を、例えば上記濃度、好ましくは約0.1~1%、より好ましくは約0.1%~約0.5%で、及びエタノールを上記範囲、好ましくは、約1%、約1,5%、約2%、約2,25%、又は約2,5%で、及び90~95%の公知のチョコレートを含有し、そして幾つかの態様において、前記製剤の残りは、チョコレート基材で出来ている。
【0031】
本発明は、ペット:限定されないが犬、猫、兎、モルモット等、家畜:限定されないが馬、羊、豚、牛、鶏等、又は捕獲された野生動物等の動物を、有効量の生物活性脂質及びエタノールを用いて治療する方法にも関し、ここで、投与単位量の生物活性脂質及びエタノールが、本発明における製剤に配合されて、動物の表面に適用される。各動物、投与部位に投与される量は、好ましくは、ヒト/治療される動物の表面積の比率に基づいて計算されるべきである。
【0032】
また、本発明は、細菌、ウイルス、真菌又はプリオンを排除すべき、産業的表面、壁、テーブル、床、装備、装置、又はエアロゾルを処理する方法にも関する。
【0033】
本発明の医薬調製品を投与する粘膜は、前記生物活性脂質が与えられる哺乳類の任意の粘膜であってもよく、例えば、鼻、洞、膣、眼球、耳、口、口腔、咽頭、生殖管、肺、胃腸管又は直腸の粘膜であり、好ましくは、鼻、口の洞(頬、舌、舌下、又は硬口蓋)、咽頭、喉頭、膣、子宮及び気管の粘膜である。前記医薬調製品は、皮膚及び爪に投与されてもよい。
【0034】
本発明の医薬組成物は、舌下飴若しくはトローチ、又は口腔、咽頭、耳、洞若しくは鼻スプレー又は点滴剤の形態で、任意で水中の溶液、ミセル、ナノエマルジョンの形態で、及び/又はポリエチレングリコール又はプロピレングリコール等のポリマーと共に、任意で僅かに粘性の溶液の形態で、又は坐剤若しくは膣坐剤の形態の固体又は半固体として、投与され得る。
【0035】
幾つかの態様において、本発明の製剤は、追加で、式(II)
【化1】
(式中、
R
1、R
2及びR
3は、C
6~C
22脂肪酸(-OCO-C
5-21H
11-43)、ポリオキシエチレングリコール(PEG)((-O-CH
2-CH
2-)
n-H)ポリマー及び水素からなる群から独立して選択され、但し1つ以上のC
6~C
22脂肪酸及び1つ以上のPEG基を有する)
で表されるポリオキシエチレングリセリドを含有する。
【0036】
本発明において、ポリオキシエチレングリセリドは、モノ又はジグリセリド、即ちグリセロール骨格に1つ又は2つの脂肪酸部分が連結し、そして当該グリセリドのグリセロール骨格上の残った1つ又は2つの部位の1つ又は両方に1つ又は2つのポリオキシエチレングリコール基が連結したものを意味する。ポリオキシエチレングリセリドと表記する物質は、ポリオキシエチレングリコールグリセリド、ポリオキシエチレンモノ及びジグリセリド、又はポリオキシエチレングリセロールモノ及びジグリセリド、PEG-グリセリド又はPEGモノ及びジグリセリドとも表記される。従って、本発明において使用されるポリオキシエチレングリセロールモノグリセリドは、適切には式I及び上記定義によって規定される。
【0037】
上記のように、PEG-グリセリドの脂肪酸成分は、飽和又は不飽和C6-C22脂肪酸及び好ましくはC6-C18脂肪酸、例えばC6-C14脂肪酸、C8又はC10脂肪酸又はそれらの組合せを有する。上記式(II)の脂肪酸R1、R2及びR3に適したC6~C18カルボン酸の例は、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、オレイン酸、パルミチン酸及びステアリン酸である。特に本発明に適切なものは、カプリン酸及びカプリル酸であり、独立して又は一緒に用いられる。幾つかの態様において、ポリオキシエチレングリコールグリセリドは、ポリオキシエチレングリコール(PEG)-脂肪酸モノ又はジグリセリド、例えばマクロゴール-6-グリセロールカプリロカプレート、ポリオキシエチレングリコールエステルのモノ及びジエステルの混合物、例えばCremer GmbH (Germany)製Softigen 767又はカプリロカプロイルマクロゴール-8グリセリド、モノ、ジ及びトリグリセリドとポリエチレングリコールのモノ及びジ脂肪酸エステルの混合物、例えばGattefosse (France)製Labrasolである、式IIで表される1つ又はそれ以上の物質を含有する組合せ物から選択される。
【0038】
吸収促進剤の形成において使用されるポリオキシエチレングリコール(PEG又はPEO)成分は、典型的には、分子量約200~約2000、例えば約300~約600の中~高分子量材料である。好ましい態様において、適切なPEGグリセリドは、約2、3、4、5、6以上、約30、例えば約20,15、12、10、8以下の範囲内のエチレンオキシド単位を有するPEG成分を有し、例えば限定されないが、平均で約5、6、7、8、又は10のエチレンオキシド単位を有する。例えば、上記成分マクロゴール-6-グリセロールカプリロカプレートは、平均のエチレンオキシドの含量が分子あたり6単位である、主にカプリル(オクタン)及びカプリン(デカン)酸を有する、主にポリオキシエチレングリコールエーテルのモノ及びジエステルの混合物である。マクロゴール6グリセロールカプリロカプレートは、グリセロールのエトキシ化及び蒸留ココナッツ又はパーム核脂肪酸によるエステル化により、又はカプリル酸及びカプリン酸のモノ及びジグリセリドのエトキシ化によって得られ得る。Labrasol(登録商標)は、本発明に有用なPEG-グリセリドの他の例である。Labrasolは、平均で約8のエチレンオキシド単位を有するPEG成分を有する主にカプリル(オクタン)及びカプロン(ヘキサン)である脂肪酸成分を有するカプリロカプロイルマクロゴール-8グリセリドとして製造者によって定義される。
【0039】
PEGグリセロールは、好ましくは、約0,1%以上、例えば約0,2%以上、例えば約0,5%以上、より好ましくは約1%以上、例えば約2%以上、例えば約4%以上、例えば約5%以上、約60%以下、例えば約50%以下、例えば約40%以下、例えば約30%以下、又は約25%以下、例えば約20%以下、例えば約15%以下、例えば約10%以下、例えば限定されないが約2%、約5%、約7,5%、約10%、約12%、約15%、約20%の濃度で存在する。
【0040】
式Iのメトキシポリエチレングリコール及びポリオキシエチレングリコール(PEG)-脂肪酸モノ又はジグリセリドのいずれも、医薬として許容される担体、特に粘膜及び皮膚(表面)投与用の医薬として許容される担体と見なされる。本発明の他の側面において、メトキシポリエチレングリコール及びポリオキシエチレングリコール(PEG)-脂肪酸モノ又はジグリセリドは、共にエタノールと混合され得る。
【0041】
必要な場合、本発明の医薬組成物は、任意で、治療剤の溶解度を向上させる追加の化合物を含有し得る。そのような化合物の例は:アルコールおよびポリオール、例えばイソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオールおよびその異性体、グリセロール、ペンタエリトリトール、ソルビトール、マンニトール、transcutol、ジメチルイソソルビド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよび他のセルロース誘導体、シクロデキストリン誘導体;平均分子量約200~約6000を有するポリエチレングリコールのエーテルまたはテトラヒドロフルフリルアルコールPEGエーテル(商品名TetraglycolでBASF社から市販されているグリコフロール);2-ピロリドン、2-ピペリドン、イプシロンカプロラクタム、N-アルキルピロリドン、N-ヒドロキシアルキルピロリドン、N-アルキルピペリドン、N-アルキルカプロラクタム、ジメチルアセトアミド、およびポリビニルピロリドンなどのアミド;プロピオン酸エチル、クエン酸トリブチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、クエン酸トリエチル、オレイン酸エチル、カプリル酸エチル、酪酸エチル、トリアセチン、酢酸プロピレングリコール、二酢酸プロピレングリコール、イプシロンカプロラクトンおよびその異性体、デルタバレロラクトンおよびその異性体、ベータブチロラクトンおよびその異性体などのエステル;および当技術分野で公知の他の可溶化剤、例えばジメチルアセトアミド、ジメチルイソソルビド(Arlasolve DMI(ICI))、N-メチルピロリドン(Pharmasolve(ISP))、モノオクタノイン、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(商品名TranscutolでGattefosse社から市販)、及び水が挙げられる。
【0042】
坐剤又は膣坐剤の製造において、又は追加の脂肪が必要な場合、前記製剤は、カカオバター、高分子量のポリエチレングリコール、ヒマシ油、パラフィン油、及びadeps solidusから選択される1つ以上の物質を追加で含有し得る。
【0043】
可溶化剤の混合物も、本発明の範囲内である。明示されていない限り、これらの化合物は、標準的な商業的供給源から容易に入手可能である。
【0044】
好ましい可溶化剤として、トリアセチン、クエン酸トリエチル、オレイン酸エチル、カプリル酸エチル、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、N-ヒドロキシエチルピロリドン、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルシクロデキストリン、エタノール、メトキシポリエチレングリコール350-1500、ポリエチレングリコール200-1000、グリコフロール、トランスクトール、プロピレングリコール、及びジメチルイソソルビドが挙げられる。特に好ましい可溶化剤は、ソルビトール、グリセロール、トリアセチン、エチルアルコール、mPEG350-500、PEG-300-400、グリコフロール及びプロピレングリコールを含む。
【0045】
本発明の組成物中に含まれ得る可溶化剤の量は、特に限定されない、当然、患者にそのような組成物が最終的に投与される場合、与えられる可溶化剤の量は生理的に許容される量に限定され、それは、当業者が容易に決定出来る。幾つかの状況において、例えば治療剤の濃度を最大にするために、生理的に許容される量をはるかに超える量の可溶化剤を含むことが有利であり得、例えば蒸留又は蒸発等の公知の技術を用いて患者に当該組成物を提供する前に過剰な可溶化剤を除去する。典型的には、前記可溶化剤は、約1~100%、より具体的には約5~75重量%、又は約5~25重量%で存在し得る。
【0046】
前記製剤に要し得る他の賦形剤として、以下のものが挙げられる:pH調整剤、例えば硝酸、リン酸又は酢酸、クエン酸:保存料及び浸透圧調整剤、例えばグリセロール、塩化ナトリウム、パラオキシ安息香酸メチル、又は安息香酸;粉末組成物、例えばアルファ、ベータ、及びガンマシクロデキストリン、セルロース及びその誘導体;マイクロスフィア、ナノスフィア、ウイロソーム(virosome)、プロテオソーム、リポソーム及びエマルジョン組成物、例えば澱粉、アルブミン、ゼラチン又はレシチン又はリゾレシチン;マイクロカプセル製剤;推進剤、例えばブタン;水。
【0047】
実施例に提示する実験に基づいて、前記脂質は、カプリン酸1-モノグリセリド、ラウリン酸及び/又はそれらの混合物から選択されるのが好ましい。これらはエタノールと共に非常に高い相乗的な殺微生物活性が示されているからである。目下最も好ましい脂質は本発明のカプリン酸1-モノグリセリド又はラウリン酸1-モノグリセリドとエタノールである。
【0048】
本発明の方法に用いる製剤において、殺微生物脂質は、好ましくは、製剤中に、約1ミリモル、例えば約2ミリモル以上、又は約5ミリモル以上、約40ミリモル以下、例えば約30ミリモル以下、又は約25ミリモル以下の合計濃度で存在する。好ましくは、約5~30ミリモルの濃度で存在する。
【0049】
前記製剤は、殺精子剤、例えば限定されないが、界面活性剤、例えばノノキシノール-9、キレート剤、例えばエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、チャンネル形成イオノフォア、例えばグラミシジン、及び他の殺精子剤、例えば塩化ベンザルコニウム、ドキュセートナトリウム及びコール酸(cholatc acid)及びその塩も含有する。
【0050】
本発明の製剤及び方法によって治療又は予防され得る感染の例は、本発明で記載する殺微生物脂質が効果的である細菌、ウイルス又は真菌によって引き起こされる皮膚又は粘膜の任意の感染であり得る。粘膜又は表面は、口、耳、鼻、肺、胃腸、膣又は直腸の粘膜(及びその周囲)であり得、また皮膚は、無傷の皮膚又は何らかの負傷した皮膚であり得る。皮膚又は粘膜の感染を引き起こし得るそのような真菌、細菌及びウイルスは、例えば、真菌、例えば皮膚糸状菌、黒色砂毛(Black piedra)、白色砂毛(White piedra)、黒色輪癬(Tines nigra)及び癜風(Tines versicolor);細菌、例えばEscherichia coli、Pseudomonas aerginosa、及びStaphylooccus aureus;ウイルス、例えばインフルエンザウイルスA、インフルエンザウイルスB、インフルエンザウイルスC、パラインフルエンザウイルス、ムンプスウイルス、ニューカッスル病ウイルス、牛疫のウイルス、犬ジステンパーウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、狂犬病ウイルス、1型単純ヘルペス、2型単純ヘルペス、陰部ヘルペス、水痘帯状ヘルペス、サイトメガロウイルス、及びエプスタインバーウイルスが挙げられる。
【0051】
前記脂質は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、肉腫ウイルス、白血病ウイルス及びヒトリンパ向性ウイルス1型及び2型等のレトロウイルスによる感染の予防及び治療、及び/又は後天性免疫不全症候群(AIDS)の予防又は治療に有用であることも想定される。
【実施例】
【0052】
以下の実施例は、本発明の具体的な動作の態様を、その範囲を限定せず例示するために提供される。
【0053】
実施例1
製剤は、鼻、咽頭、喉頭、洞、外耳道、外耳等の感染を予防及び/又は対抗するための、鼻、咽頭、喉頭及び洞スプレー又は耳点滴剤として使用されるように調製され、以下の組成を有する。
【表1】
【0054】
ここで、モノカプリン及びモノラウリンは、撹拌、超音波、熱及び/又は他の標準的な方法を用いてmPEG中に溶解され、エタノールが添加され、当該混合物は標準的な方法を用いて確り撹拌されて、均一な透明溶液が得られる。
【0055】
抗微生物試験は、製剤I、II及びIIIは、Pseudomonas aeruginosa、Staphylococcus aureusに加えStreptococcus pneumoniae及びHaemopilus influenzaの100%の死滅を誘導した。しかしながら製剤IVは、S. pneumoniae及びH. influenzaのみ死滅させた。
【0056】
実施例2
本発明の製剤は、鼻、洞、外耳道、外耳等の感染を予防及び/又は対抗するための、鼻スプレー又は耳点滴剤として使用されるように調製された。これらは以下の製剤を含有し得る:
【表2】
【0057】
ここで、mPEG、プロピレングリコール、ポリソルベート80、エタノール(製剤II)及びLabrasol又はSoftigen767は一緒に混合され、この混合物中にモノカプリンとモノラウリンが、撹拌、超音波、熱及び/又は他の標準的な方法を用いて溶解された。当該混合物に水が添加され、標準的な方法を用いてゆっくり撹拌されて、均一な透明溶液が得られる。
【0058】
抗微生物試験は、製剤IIは、製剤Iよりも、Pseudomonas aeruginosa及びStaphylococcus aureusの死滅により効果的であったことを示した。
【0059】
実施例3
本発明の製剤は、例えば義歯による口腔内の感染又は真菌に対抗するため口腔(口)内で融解するように調製され、以下の製剤を含有し得る:
【表3】
【0060】
ここで、モノカプリン、モノラウリン及びエタノールは、温和な加熱及び/又は他の標準的な方法を用いてチョコレート基材中に溶解されて、均一な塊が得られる。
【0061】
実施例4
製剤は、実施例1、2及び3の通りに、鼻、咽頭、喉頭、洞、眼球、口腔、外耳道、外耳等の感染を予防及び/又は対抗するための、鼻スプレー及び耳点滴剤として使用されるように調製される。しかしながら、モノカプリン0.15-0.5%及びモノラウリン0.15-0.5%の混合物に代えて、モノカプリン0.5-1%のみ又はモノラウリン0.5-1%のみが添加される。
【0062】
実施例5
本発明の製剤は、Staphylococcus aureus (ATCC 25923)、Streptococcus pneumoniae (ATCC 49619)、Haemophilus influenza (NCTC 8468)の3つの細菌株に対して試験された。これらの細菌は、寒天を敷いたペトリ皿状に薄層状に展開された。2枚のプレートを、各製剤20μLで湿らせた。細菌を37℃で24時間培養した。H. influenzae及びS. pneumoniaeはCO2下で培養したが、S. aureusは通常大気下で培養した。結果の読取りは、24時間後に行われた。
【0063】
以下の製剤が試験された:
対照:メトキシポリエチレングリコール(mPEG)95%及びエタノール5%
試験1:モノカプリン0.15%、モノラウレート0.35%、mPEG94.5%及びエタノール5%
試験2:モノカプリン0.15%、モノラウレート0.35%、mPEG95.5%及びエタノール4%
試験3:モノカプリン0.15%、モノラウレート0.35%、mPEG97.5%及びエタノール2%
試験4:モノカプリン0.15%、モノラウレート0.35%、mPEG98.5%及びエタノール1%
【0064】
結果:
対照寒天プレートでは強力な増殖が見られた。一方、試験1、2、3及び4は、以下のような結果になった。
Staphylococcus aureus =それぞれ17 mm; 19 mm; 18.9 mm; 15.3 mm
Streptococcus pneumoniae =それぞれ7.9 mm; 8.4 mm; 15.4 mm; 14.1 mm
Haemophilus influenza =それぞれ8.0 mm; 8.5 mm; 7.2 mm; 11.0 mm
【0065】
これは、本発明で用いるのと同等又はそれより僅かに高い濃度のエタノールは、試験された細菌に対し基本的に効果を有しないことを示す。
【0066】
本明細書及び特許請求の範囲中、他に言及の無い限り、単数形は複数形、複数形は単数形も含むものと解釈される。従って、本明細書中、他に明確な言及の無い限り、「a」、「an」及び「the」は、複数の参照を含む。
【0067】
本明細書及び特許請求の範囲中、「含む」、「有する」、「含有する」等は、「含むが限定されない」ことを意味すると理解されるべきで、他の要素を除外することを意図しない。
【0068】
本発明は、用語、特徴、数値及び範囲等が、「約」、「辺り」、「一般に」、「実質的に」、「基本的に」、「少なくとも」等の語句と繋げて用いられる場合、その用語、特徴、数値及び範囲そのものも含む(即ち「約3」は3そのものも含み、「実質的に一定」は全くの一定も含む)。
【0069】
本発明の態様のバリエーションは、本発明の範囲内に尚も納まりつつなされ得る。他に言及の無い限り、本明細書中に開示された特徴は、同一、同等又は類似の目的を果たす代わりの特徴によって置き換えられる。従って、他に言及の無い限り、開示されている各特徴は、一般的な一連の同等又は類似の特徴の一例を表す。
【0070】
「例えば」、「等」等の例示的用語は、単に本発明をより良く示すことのみを意図し、請求項にそのような限定の無い限り、本発明の範囲に対する限定を示さない。本明細書中に記載された工程は、その前後において明確に他の示唆をしていない限り、任意の順序で又は同時に実施され得る。