(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】茶抽出液の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23F 3/16 20060101AFI20240618BHJP
【FI】
A23F3/16
(21)【出願番号】P 2020011949
(22)【出願日】2020-01-28
【審査請求日】2022-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】596126465
【氏名又は名称】アサヒ飲料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 慈
(72)【発明者】
【氏名】橋本 未来
【審査官】吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-151064(JP,A)
【文献】粉末緑茶入り煎茶, [online],2018年08月26日,[2023年11月20日検索], Retrieved from the internet:<URL: https://web.archive.org/web/20180826091319/https://www.isecha.com/funmaturyokucha.htm>
【文献】日本食品科学工学会誌,2003年,Vol.50,No.10,pp.468-473
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23F
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抽出用茶葉の総重量の0.1質量%~
10質量%の煎茶の粉砕茶葉を、粉砕していない茶葉と混合し、その混合茶葉を該抽出用茶葉として抽出
した後に、
抽出液中の該粉砕茶葉を取り除く、
茶抽出液の製造方法。
【請求項2】
抽出温度を55℃以上として抽出する、
請求項
1に記載の茶抽出液の製造方法。
【請求項3】
前記粉砕茶葉は、一番茶及び二番茶のうちの少なくとも1種を含む、
請求項1
又は2に記載の茶抽出液の製造方法。
【請求項4】
前記粉砕茶葉の50%積算質量粒子径(D50)が5μm~50μmである、
請求項1~
3のいずれか一項に記載の茶抽出液の製造方法。
【請求項5】
前記粉砕茶葉の90%積算質量粒子径(D90)が120μm以下である、
請求項1~
3のいずれか一項に記載の茶抽出液の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、茶葉から抽出される茶抽出液の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の嗜好性の多様化により、容器詰め飲料には苦渋味を強くし飲みごたえを訴求した飲料や、旨み、甘味を強くし緑茶らしい味わいを訴求した飲料など、多岐にわたる飲料が販売されている。
【0003】
例えば、旨みや甘味を強化するためには、茶期の早い茶葉や、旨み・甘味の強い茶葉を選択する方法があるが、抽出時に旨みや甘味を「選択的」に強化することは難しく、苦渋味が伴って強くなり、また緑茶らしいグリーン感に乏しくなる、という課題がある。
【0004】
なお、特許文献1には、コク味が改善された茶飲料の製造に関する技術が開示されており、グリセロ糖脂質を有効成分とする呈味改善剤を含有させることで、茶飲料のコク味を増強させるとともに、苦みや渋味をマスキングする技術が示されている。また、特許文献2には、渋味が抑えられ、旨み・コク味が強化された容器詰緑茶飲料に関する技術が開示されており、茶葉として碾茶を水で抽出して碾茶抽出液を得て、それを加熱殺菌処理する技術が示されている。
【0005】
商品設計の自由度の観点から、様々な方法により、苦渋味を過度に強めることなく、旨みや甘味が強化され、緑茶らしいグリーン感も良好に感じられるようにできることが好ましく、そのため、更なる新規な方法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2009/116538号
【文献】特開2011-10640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、苦渋味を過度に強めることなく、旨みや甘味が強化され、緑茶らしいグリーン感も良好に感じられる茶抽出液を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上述した課題を解決するために鋭意検討を重ねた。その結果、抽出用茶葉を用いた抽出に際して、抽出用茶葉の総重量に対して特定の割合を粉砕茶葉で構成し、その粉砕茶葉と粉砕していない茶葉とを混合した混合茶葉を抽出用茶葉として抽出することで、苦渋味を強めず、旨みや甘味が強化され、緑茶らしいグリーン感を感じられる茶抽出液が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は、以下のものを提供する。
【0009】
<1>抽出用茶葉の総重量の0.1質量%~70質量%の煎茶の粉砕茶葉を、粉砕していない茶葉と混合し、その混合茶葉を該抽出用茶葉として抽出する、茶抽出液の製造方法。
【0010】
<2>上記抽出用茶葉の総重量に対する上記粉砕茶葉の割合が10質量%以下である、<1>に記載の茶抽出液の製造方法。
【0011】
<3>抽出温度を55℃以上として抽出する、<1>又は<2>に記載の茶抽出液の製造方法。
【0012】
<4>上記粉砕茶葉は、一番茶及び二番茶のうちの少なくとも1種を含む、<1>~<3>のいずれか一つに記載の茶抽出液の製造方法。
【0013】
<5>前記粉砕茶葉の50%積算質量粒子径(D50)が5μm~50μmである、<1>~<4>のいずれか一つに記載の茶抽出液の製造方法。
【0014】
<6>前記粉砕茶葉の90%積算質量粒子径(D90)が120μm以下である、<1>~<4>のいずれか一つに記載の茶抽出液の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、苦渋味を過度に強めることなく、旨みや甘味が強化され、緑茶らしいグリーン感も良好に感じられる茶抽出液を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明する。本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更が可能である。なお、本明細書において、「X~Y」(X、Yは任意の数値)との表記は、「X以上Y以下」の意味である。
【0017】
本実施形態に係る茶抽出液の製造方法は、煎茶の茶葉を用いた緑茶抽出液を得る方法である。具体的に、この茶抽出液の製造方法は、抽出用茶葉の総重量の0.1質量%~70質量%の煎茶の粉砕茶葉を、粉砕していない茶葉と混合し、その混合茶葉を抽出用茶葉として抽出することを特徴としている。当該構成を満足するように抽出することで、得られる茶抽出液は、苦渋味を過度に強めることなく、旨みや甘味が強化され、緑茶らしい風味(グリーン感)も良好に感じられる。
【0018】
ここで、「茶葉」とは、摘茶後の生茶葉を製茶加工したものを意味する。なお、生茶葉の製茶加工は、公知の方法により行われるものであり、例えば以下のような蒸熱工程及び粗揉工程が行われる。
【0019】
(蒸熱工程)
蒸熱工程は、原料茶葉を蒸気により蒸す工程である。これにより、原料茶葉中の酸化酵素の活性を失わせて、茶の青臭を除くことができ、また、原料茶葉の柔軟性を増加させて茶の色を保つことができ、更に、香味を高めることができる。蒸熱に使用する蒸気の温度は、例えば、原料茶葉の温度が100~140℃となるように行うことができる。また、蒸熱に必要な蒸気量も、原料茶葉の量に応じて適宜設定してもよく、例えば、原料茶葉1kgあたりに、200~400gの蒸気を用いて蒸熱することができる。また、蒸熱の時間も、特に限定されず、例えば、20秒~160秒間蒸熱を行うことができる。
【0020】
(粗揉工程)
粗揉工程は、蒸熱工程後の原料茶葉を、蒸風の中で撹拌、揉圧する工程である。これにより、蒸熱工程で蒸した原料茶葉について、原料茶葉の温度の上昇による変色を防ぎつつ、原料茶葉の風味、色調を可能な限り保ちながら、乾燥して効率的に原料茶葉から水分を取り除くことができる。粗揉工程も、従来の公知の方法により行うことができる。例えば、70~100℃の熱風によって、30~50分間行うことができる。また、粗揉後の原料茶葉の水分含量も特に限定されず、例えば30~60%となるように調整できる。
【0021】
[粉砕茶葉]
本実施形態に係る茶抽出液の製造方法は、上述したように、抽出用茶葉として、煎茶の粉砕茶葉を所定の割合で混合して用いることを特徴としている。
【0022】
粉砕茶葉とは、原料となる煎茶の茶葉を所定の粉砕機等により粉砕した茶葉をいう。
【0023】
粉砕茶葉とする原料の茶葉については、通常使用できる茶葉を用いることができ、品種、産地、摘採方法、栽培方法等が限定されるものではない。品種、産地、摘採方法、栽培方法等は限定されない。茶葉の種類についても、種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、茶葉の採取時期も特に限定されず、一番茶、二番茶、三番茶、秋冬番茶や、これらの混合物等であってもよい。本発明の効果が奏されやすいという観点からは、粉砕茶葉は、一番茶及び二番茶のうちの少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0024】
粉砕茶葉は、上述したように、原料の茶葉を、粉砕機等を用いて粉砕することで調製できる。粉砕に用いる粉砕機等は特に限定されず、例えば、ジェットミル、ボールミル、ビーズミル、遊星ミル、ハンマーミル、ピンミル、ロールミル、カッターミル等を用いることができる。
【0025】
また、粉砕茶葉の形状は、例えば、粉末状とすることができる。また、粉末状であることに限られず、粉砕機によって、方形状、円形状等に裁断したものであってもよい。
【0026】
また、粉砕茶葉の大きさは特に限定されないが、本発明の効果が奏されやすく、ハンドリングが容易という観点から、粉砕茶葉の50%積算質量粒子径(D50)が、5μm~50μmであることが好ましく、10μm~45μmであることがより好ましい。また、粉砕茶葉の90%積算質量粒子径(D90)は、120μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましい。
【0027】
本明細書において、50%積算質量粒子径(D50)、90%積算質量粒子径(D90)は、いずれも、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置LA-960(株式会社堀場製作所製)を用いて測定した。
【0028】
[粉砕していない茶葉]
粉砕していない茶葉とは、粉砕機等により粉砕していない茶葉、つまり生茶葉に対する製茶加工後の茶葉そのものを意味する。
【0029】
粉砕していない茶葉としては、粉砕茶葉の原料茶葉と同じものを用いることができる。また、煎茶であれば、粉砕茶葉の原料茶葉と、品種、産地、摘採方法、栽培方法等が限定されるものではない。品種、産地、摘採方法、栽培方法等が異なるものであってもよい。なお、茶葉の採取時期も特に限定されず、一番茶、二番茶、三番茶、秋冬番茶、被せ茶等や、これらの混合物であってもよい。
【0030】
[抽出用茶葉の総重量に対する粉砕茶葉の割合]
本実施形態に係る茶飲料の製造方法では、粉砕茶葉を、粉砕していない茶葉と所定の割合で混合し、その混合茶葉を抽出用茶葉として用いて抽出する。
【0031】
具体的に、粉砕茶葉の混合割合は、抽出用茶葉の総重量に対する粉砕茶葉の割合が0.1質量%~70質量%の範囲内となるように、粉砕茶葉を粉砕していない茶葉に混合する。また、その混合割合に関しては、旨みや甘味を増強しつつ、苦渋味の抑制効果をより高めるという観点から、上限は、50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが更に好ましい。また、下限は、0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましい。
【0032】
[抽出工程]
抽出工程では、茶葉等から抽出液を得るために通常採用される条件等を用いることができる。
【0033】
抽出溶媒としては特に限定されないが、例えば、水、エタノール等が挙げられる。用いる抽出溶媒の量は、得ようとする抽出液の濃度等に応じて適宜設定できる。
【0034】
また、抽出温度も特に限定されず、例えば、55℃~80℃の範囲内の温度で抽出することができる。このような温度で抽出を行うことで、旨みや甘味を強化させつつ、苦渋味を抑制することができる。
【0035】
ここで、茶の抽出においては、一般的に、抽出温度を上げることにより抽出時間を短縮化させることができる。ところが、高い抽出温度で抽出した場合、茶抽出液に生じる苦渋味が強くなる。この点、後述する実施例にて示すように、本実施形態に係る茶抽出液の製造方法を採用することで、例えば80℃といった高い抽出温度で抽出しても苦渋味を抑制することができ、これにより抽出時間の短縮化を図ることもできる。
【0036】
抽出工程を行った後に、抽出液中の粉砕茶葉を取り除いてもよいが、取り除かなくてもよい。また、粉砕茶葉を取り除いた後に、抽出液に新たに粉砕茶葉を加えてもよい。
【0037】
[調合工程]
得られた抽出液は、そのまま茶飲料として提供することができるが、得られた抽出液に対して、pHや可溶性固形分の調整及び/又は希釈等を適宜行ってもよい。また、必要に応じて、例えば、酸化防止剤、香料、各種エステル類、有機酸類、有機酸塩類、無機酸類、無機酸塩類、無機塩類、色素類、乳化剤、保存料、調味料、品質安定剤等の各種添加剤を添加してもよい。
【0038】
[殺菌工程・容器詰め工程]
得られた抽出液は、適宜加熱殺菌等を行ってもよく、容器に充填して保存する。容器としては、ポリエチレンテレフタレートを主成分とする成形容器(いわゆるペットボトル)、金属箔やプラスチックフィルムと複合された紙容器、金属缶、瓶等が挙げられる。金属缶や瓶のように容器に充填後、加熱殺菌できる場合は、レトルト殺菌(110~140℃、1~数十分間)により製造されるが、ペットボトルや紙容器のようにレトルト殺菌できないものについては、あらかじめレトルト殺菌と同等の殺菌条件、例えばプレート式熱交換機等で高温短時間殺菌(UHT殺菌:110~150℃、1~数十秒間)し、一定の温度まで冷却後、容器に充填する等の方法が選択できる。
【実施例】
【0039】
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
【0040】
[試験1:茶葉の粉砕の有無による検証]
(基準サンプル(基準品)の作製)
「国産煎茶(秋冬番茶)の茶葉(本明細書において、「茶葉A」ともいう。)」の8gを、65℃の純水200gで7分間抽出し、ステンレスメッシュ(80メッシュ)で濾過して茶殻を除き、更に2号濾紙で濾過した後、冷却して抽出液を得た。得られた抽出液に、L-アスコルビン酸ナトリウム0.4g、L-アスコルビン酸0.3g、重炭酸ナトリウム0.27gをそれぞれ添加し、純水で1000gに定容して調合液を得た。得られた調合液をUHT殺菌(140℃、30秒間)した後、無菌的にPETボトルに充填し、緑茶サンプル(基準品)を得た。
【0041】
(茶葉の粉砕)
「国産煎茶(1番茶及び2番茶)の茶葉(本明細書において、「茶葉B」ともいう。)」をジェットミルにより粉砕し、得られた粉砕茶葉を「茶葉C」として官能評価に用いた。
【0042】
得られた茶葉Cの大きさを、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置LA-960(株式会社堀場製作所製)を用いてレーザ回折散乱法で測定した結果、50%積算質量粒子径(D50)は10.9μmであり、90%積算質量粒子径(D90)は17.8μmであった。
【0043】
(試験サンプル(実施例1~5、比較例1~5)の作製)
基準サンプルの作製と同様の方法で、使用する抽出用茶葉として茶葉A~Cの混合茶葉を用いて、試験サンプルを得た。なお、抽出液中の粉砕茶葉は濾過処理により除去した。
【0044】
(官能評価)
作製した試験サンプルについて、専門パネル6名にて官能評価を行った。基準品を評点5点とした10段階評価により比較評価した。
【0045】
具体的には、試験サンプルである緑茶抽出液の評価を行い、「旨みの強さ」、「甘味の強さ」、「グリーン感の強さ」について、それぞれ点数化してその平均値を算出し、基準品の評点5点に対して、点数が大きいほど基準品よりも強い・良いと評価し、点数が小さいほど基準品よりも弱い・悪いと評価した。また併せて、「後味の良さ」、「おいしさ」についても、それぞれ点数化してその平均値を算出し、基準品の評点5点に対して、点数が大きいほど基準品よりも強い・良いと評価し、点数が小さいほど基準品よりも弱い・悪いと評価した。
【0046】
また、「苦渋味の強さ」については、同様にそれぞれ点数化してその平均値を算出し、基準品の評点5点に対して、点数が大きいほど基準品よりも強いと評価し、点数が小さいほど基準品よりも弱いと評価した。
【0047】
下記表1に、基準品及び各試験サンプルを得るために用いた抽出用茶葉の配合と、官能評価の結果を示す。また、基準品及び各試験サンプル100mLに含まれるタンニンの含有量も併せて示す。なお、タンニン含有量は、日本食品分析センター編、「五訂 日本食品標準成分分析マニュアルの解説」、中央法規、2001年7月、252頁に記載の公定法(酒石酸鉄試薬法)に従って測定したときの値である。
【0048】
【0049】
表1に示されるとおり、茶葉Cを配合したいずれの実施例においても、基準品や同量の茶葉Bを配合した各比較例と比べて、旨み、甘味、及びグリーン感が増強され、苦渋味が過度に強まることが抑制された。また、後味の良さやおいしさも良好となることが示された。
【0050】
一方で、実施例4や実施例5のように粉砕茶葉の割合が多くなると、旨み、甘味、及びグリーン感が増強され、苦渋味が過度に強まることは抑制されたが、苦渋味がやや強くなる傾向が示された。よって、苦渋味の抑制効果をより高めるためには、粉砕茶葉の割合を10質量%以下とすることが好ましいことがわかった。
【0051】
[試験2:粉砕茶葉の粒子径の違いによる検証]
茶葉Bを機械式の粉砕機を用いて粉砕し、ふるい分けして微粉を除去した。得られた粉砕茶葉を「茶葉D」として官能評価に用いた。茶葉Dの粒子径を試験1と同様の方法で測定した結果、50%積算質量粒子径(D50)が42μm、90%積算質量粒子径(D90)が100μmであった。
【0052】
(試験サンプル(実施例6)の作製)
基準サンプルの作製と同様の方法で、使用する抽出用茶葉として茶葉A及びDの混合茶葉を用いて、試験サンプルを得た。なお、実施例6の抽出用茶葉の総重量に対する前記粉砕茶葉の割合は、試験1における実施例2の割合と同じである。また、抽出液中の粉砕茶葉は濾過処理により除去した。
【0053】
(官能評価)
作製した試験サンプルについて、試験1と同様の方法で官能評価を行った。
【0054】
下記表2に、基準品及び試験サンプルを得るために用いた抽出用茶葉の配合と、官能評価の結果を示す。
【0055】
【0056】
表2に示されるとおり、配合する粉砕茶葉の粒子径を変更した場合であっても、基準品と比べて、旨み、甘味、及びグリーン感が増強され、苦渋味が抑制された。また、後味の良さやおいしさも良好となった。
【0057】
[試験3:抽出温度の違いによる検証]
下記表3に示すように配合した抽出用茶葉8gを、80℃の純水240gで5分間抽出し、ステンレスメッシュ(80メッシュ)で濾過して茶殻を除き、更に2号濾紙で濾過した後、冷却して抽出液を得た。得られた抽出液に、L-アスコルビン酸ナトリウム0.4g、L-アスコルビン酸0.3g、重炭酸ナトリウム0.27gをそれぞれ添加し、純水で1000gに定容して調合液を得た。得られた調合液をUHT殺菌(140℃、30秒間)した後、無菌的にPETボトルに充填し、試験サンプルを得た。なお、茶葉の配合について、比較例6は試験1における比較例2と、実施例7は試験1における実施例2と同じである。また、抽出液中の粉砕茶葉は濾過処理により除去した。
【0058】
(官能評価)
作製した試験サンプルについて、専門パネル6名にて官能評価を行った。本評価では、「旨みの強さ」、「甘味の強さ」、「苦渋味の強さ」、「グリーン感の強さ」については、どちらのサンプルが「強い」と感じたかを評価し、「後味の良さ」、「おいしさ」については、どちらのサンプルが「良い」と感じたかを評価した。
【0059】
下記表3に、各試験サンプルを得るために用いた抽出用茶葉の配合と、官能評価において「強い」又は「良い」と感じた人数を示す。また、各試験サンプル100mLに含まれるタンニンの含有量も併せて示す。比較例6と比較例2のタンニンの含有量は同じであり、また、実施例7と実施例2の同含有量も同じであることが確認された。
【0060】
【0061】
表3に示されるとおり、茶葉Cを配合した実施例7では同量の茶葉Bを配合した比較例6と比べて、旨み、甘味が強いと感じた人数が多く、苦渋味は弱いと感じた人数が多かった。この結果より、80℃といった高い抽出温度で、タンニンの含有量が同量となるように抽出した場合であっても、本実施形態に係る茶抽出液の製造方法を用いることにより、旨み、甘味が増強され、苦渋味が抑制されることがわかった。