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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】緑茶飲料
(51)【国際特許分類】
   A23F 3/16 20060101AFI20240618BHJP
【FI】
A23F3/16
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020026084
(22)【出願日】2020-02-19
(65)【公開番号】P2021129509
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2023-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】312017444
【氏名又は名称】ポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100176773
【弁理士】
【氏名又は名称】坂西 俊明
(72)【発明者】
【氏名】岩城 理
【審査官】吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-212759(JP,A)
【文献】特開2011-155876(JP,A)
【文献】特開2014-212760(JP,A)
【文献】特開2016-041026(JP,A)
【文献】特開2019-187276(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23F
A23L
C12G
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/BIOSIS/EMBASE/FSTA/AGRICOLA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非重合カテキン、単糖、二糖及び三糖を含有し、
非重合カテキンの含有量が336.6mg/L以下であり、かつ
単糖、二糖及び三糖の合計含有量が100mg/L以上200mg/L以下である、緑茶飲料。
【請求項2】
非重合カテキンの含有量が155mg/L以上336.6mg/L以下である、請求項1に記載の緑茶飲料。
【請求項3】
酸性アミノ酸を含有し、
酸性アミノ酸の含有量に対する非重合カテキンの含有量の比(非重合カテキンの含有量/酸性アミノ酸の含有量)が18以上29以下である、請求項1又は2に記載の緑茶飲料。
【請求項4】
酸性アミノ酸の含有量に対する非重合カテキンの含有量の比が20以上27以下である、請求項3に記載の緑茶飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緑茶飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
緑茶飲料は、消費者の健康志向の高まりを受けて消費量が増加している。一方、緑茶は独特の苦渋味を有しており、これを苦手とする消費者も少なからず存在する。
【0003】
そこで、苦渋味が低減された緑茶飲料の検討も進められている。例えば、特許文献1には、すっきり感及び緑茶感を併せ持つ緑茶飲料として、420nmにおける吸光度が0.35以下である緑茶飲料であって、前記緑茶飲料中の非重合体カテキンの含有量が0.01ppm以上300ppm以下であり、前記緑茶飲料中のアミノ酸の含有量が0.01ppm以上500ppm以下であり、前記緑茶飲料中のキナ酸の含有量が0.005ppm以上500ppm以下であり、前記非重合体カテキンの含有量に対する前記キナ酸の含有量の比率が0.5以上であり、前記アミノ酸の含有量に対する前記キナ酸の含有量の比率が0.5以上である、緑茶飲料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-187276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
緑茶の苦渋味は、非重合カテキン等のタンニンに主に由来する。緑茶中のタンニン量を低減することで苦渋味を抑え、すっきりとした清涼感のある緑茶を得ることができる。一方、タンニン量を低減することに伴い緑茶本来の甘み等も損なわれてしまい、水っぽく感じられる、飲み応えに欠けるなどといった問題があった。
【0006】
本発明は、苦渋味を抑えながらも充分な甘みが感じられると共に、苦渋味と甘みのバランスが良い緑茶飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、非重合カテキン、単糖、二糖及び三糖を含有し、非重合カテキンの含有量が350mg/L以下であり、かつ単糖、二糖及び三糖の合計含有量が100mg/L以上200mg/L以下である、緑茶飲料に関する。
【0008】
本発明に係る緑茶飲料は、非重合カテキンの含有量が低いことで苦渋味が低減されている一方で、単糖、二糖及び三糖の合計含有量が特定の範囲内にあることで充分な甘みが感じられると共に、苦渋味と甘みのバランスに優れている。また、当該緑茶飲料は、苦渋味と甘みのバランスが良いため、飲み応えがあり、水っぽく感じられないとの効果も奏する。
【0009】
上記緑茶飲料は、非重合カテキンの含有量が155mg/L以上350mg/L以下であることが好ましい。これにより、上述の甘みと苦渋味に関する効果に加えて、緑茶本来の旨みが充分に感じられると共に、苦渋味と旨みのバランスが優れたものになる。
【0010】
上記緑茶飲料は、酸性アミノ酸を含有し、酸性アミノ酸の含有量に対する非重合カテキンの含有量の比(非重合カテキンの含有量/酸性アミノ酸の含有量)が18以上29以下であることが好ましい。これにより、上述の甘みと苦渋味に関する効果に加えて、緑茶本来の旨みが充分に感じられると共に、苦渋味と旨みのバランスが優れたものになる。
【0011】
上記緑茶飲料は、酸性アミノ酸の含有量に対する非重合カテキンの含有量の比が20以上27以下であることが好ましい。これにより、上述の甘みと苦渋味に関する効果がより顕著になることに加え、緑茶本来の旨みが充分に感じられると共に、苦渋味と旨みのバランスに優れたものになる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、苦渋味を抑えながらも充分な甘みが感じられると共に、苦渋味と甘みのバランスが良い緑茶飲料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0014】
本実施形態に係る緑茶飲料は、非重合カテキン、単糖、二糖及び三糖を含有し、非重合カテキンの含有量が350mg/L以下であり、かつ単糖、二糖及び三糖の合計含有量が100mg/L以上200mg/L以下である。
【0015】
本明細書において「緑茶飲料」とは、一般に緑茶飲料として分類されるものであればよく、緑茶茶葉を抽出して得られる緑茶抽出物を含む液体である。緑茶飲料は、緑茶抽出物に加え、例えば、種々の添加剤、水等を含んでいてもよい。緑茶茶葉は、公益社団法人日本茶業中央会が「緑茶の表示基準」(平成31年3月18日改正)において定める緑茶、すなわち、茶葉(一部茎を含む)を蒸熱又は釜炒り等の方法により茶葉中の酵素を失活させた後、飲食用に供せられる状態に製造したものであってよく、例えば、煎茶、玉露、かぶせ茶、玉緑茶、番茶、焙茶であってよい。緑茶抽出物は、液状であってもよく、粉末状等の固形状であってもよい。緑茶抽出物は、緑茶茶葉を抽出して得られる抽出液の濃縮物であってもよい。本実施形態に係る緑茶飲料は、アルコール飲料(アルコール度数が1v/v%以上である飲料)であってもよく、ノンアルコール飲料(アルコール度数が1v/v%未満である飲料)であってもよい。また、本実施形態に係る緑茶飲料は、炭酸飲料であってもよい。
【0016】
本明細書において「非重合カテキン」とは、重合していないカテキン類を指す。カテキン類とは、具体的には、ガロカテキン(GC)、エピガロカテキン(EGC)、カテキン(C)、エピガロカテキンガレート(EGCG)、エピカテキン(EC)、ガロカテキンガレート(GCG)、エピカテキンガレート(ECG)及びカテキンガレート(CG)である。非重合カテキンの含有量は、これら8種の化合物の合計含有量である。
【0017】
本実施形態に係る緑茶飲料における非重合カテキンの含有量は、350mg/L以下である。非重合カテキンの含有量の下限に特に制限はないが、苦渋味が低減されてすっきりとしつつも、苦渋味を感じることができるという観点から、100mg/L以上であってよく、125mg/L以上であってよく、150mg/L以上であってよい。また、甘みがより感じられると共に、苦渋味と甘みのバランスがより優れたものになるという観点から、155mg/L以上であってよく、175mg/L以上であってよく、200mg/L以上であってよく、225mg/L以上であってよく、250mg/L以上であってよい。
【0018】
非重合カテキンの含有量は、例えば、緑茶飲料に非重合カテキンを添加すること、緑茶飲料から非重合カテキンを除去すること、緑茶茶葉の抽出条件(例えば、茶葉の使用量、抽出温度、抽出時間)を適切に設定すること、及びこれらを組み合わせた方法等により調整することができる。
【0019】
非重合カテキンの含有量は、例えば、後述の実施例に記載の方法により、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用して測定することができる。
【0020】
本実施形態に係る緑茶飲料は、単糖、二糖及び三糖の合計含有量が100mg/L以上200mg/L以下である。
【0021】
本明細書において「単糖」とは、グルコース及びフルクトースを意味する。すなわち、単糖の含有量は、グルコース及びフルクトースの合計含有量である。本明細書において「二糖」とは、スクロースを意味する。すなわち、二糖の含有量は、スクロースの含有量である。本明細書において「三糖」とは、ラフィノースを意味する。すなわち、三糖の含有量は、ラフィノースの含有量である。
【0022】
単糖、二糖及び三糖の合計含有量(すなわち、グルコース、フルクトース、スクロース及びラフィノースの合計含有量)は、上述した甘みと苦渋味に関する効果が顕著に奏されるという観点から、100mg/L以上であってよく、110mg/L以上であってよく、120mg/L以上であってよく、125mg/L以上であってよく、130mg/L以上であってよい。同様の観点から、単糖、二糖及び三糖の合計含有量は、200mg/L以下であってよく、190mg/L以下であってよく、180mg/L以下であってよく、170mg/L以下であってよく、160mg/L以下であってよく、155mg/L以下であってよい。
【0023】
単糖、二糖及び三糖の合計含有量は、例えば、緑茶飲料に単糖、二糖及び/又は三糖を添加すること、緑茶飲料から単糖、二糖及び/又は三糖を除去すること、緑茶茶葉の抽出条件(例えば、茶葉の使用量、抽出温度、抽出時間)を適切に設定すること、及びこれらを組み合わせた方法等により調整することができる。
【0024】
単糖、二糖及び/又は三糖の合計含有量は、例えば、後述の実施例に記載の方法により、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用して測定することができる。
【0025】
本実施形態に係る緑茶飲料は、酸性アミノ酸を含有するものであってよい。本明細書において「酸性アミノ酸」とは、アスパラギン酸及びグルタミン酸を指す。酸性アミノ酸の含有量は、アスパラギン酸及びグルタミン酸の合計含有量である。
【0026】
本実施形態に係る緑茶飲料は、酸性アミノ酸の含有量に対する非重合カテキンの含有量の比(以下、単に「含有量比」ともいう。)が18以上29以下であることが好ましい。含有量比がこの範囲内にあることで、上述の甘みと苦渋味に関する効果に加えて、緑茶本来の旨みが充分に感じられると共に、苦渋味と旨みのバランスが優れたものになる。含有量比は、具体的には、下記式で算出される値である。
含有量比=非重合カテキンの含有量(mg/L)/酸性アミノ酸の含有量(mg/L)
【0027】
含有量比は、上述の効果がより顕著に奏されるという観点から、18.5以上であってよく、19以上であってよく、19.5以上であってよく、20以上であってよく、20.5以上であってよい。同様の観点から、含有量比は、28.5以下であってよく、28以下であってよく、27.5以下であってよく、27以下であってよい。
【0028】
含有量比は、例えば、緑茶飲料に非重合カテキン及び/又は酸性アミノ酸を添加すること、緑茶飲料から非重合カテキン及び/又は酸性アミノ酸を除去すること、緑茶茶葉の抽出条件(例えば、茶葉の使用量、抽出温度、抽出時間)を適切に設定すること、及びこれらを組み合わせた方法等により調整することができる。
【0029】
酸性アミノ酸の含有量は、例えば、後述の実施例に記載の方法により、アミノ酸分析計を使用して測定することができる。
【0030】
本実施形態に係る緑茶飲料のタンニンの含有量は、例えば、25mg/L以上45mg/L以下であってよい。また、本実施形態に係る緑茶飲料は、タンニンに対する非重合カテキンの重量比(非重合カテキン(mg/L)/タンニン(mg/L))が、例えば、0.70以上0.85以下であってよい。なお、タンニンの含有量は、緑茶の公定分析法(「茶の公定分析法」茶業試験場報告、第6号、169-170頁、1970年)に従って測定される値である。
【0031】
本実施形態に係る緑茶飲料のpHは、例えば、5.0以上であってよく、より好ましくは、5.5以上であってよい。また、本実施形態に係る緑茶飲料のpHは、例えば、8.0以下であってよく、7.5以下あってよい。より好ましくは、7.0以下であってもよく、6.5以下であってもよい。
【0032】
本実施形態に係る緑茶飲料には、本発明の効果に影響を与えない程度において、飲料用として公知の添加剤を含有させることができる。添加剤としては、特に限定されないが、例えば、酸化防止剤、香料、無機塩類、着色料、保存料、酸味料、pH調整剤等が挙げられる。これら添加剤は、単独で、又は併用して配合することができる。
【0033】
本実施形態に係る緑茶飲料は、容器に入れて提供することができる。容器は密閉できるものであればよく、例えば、金属製(例えば、アルミニウム製、スチール製)のいわゆる缶容器及び樽容器、ガラス容器、ペットボトル容器、紙容器、パウチ容器等であってよい。中でも、緑茶飲料の色が視認可能な透明容器であるガラス容器、ペットボトル容器が好ましい。また、容器の容量は特に限定されるものではなく、現在流通しているどのようなものも適用することができる。
【0034】
本実施形態に係る緑茶飲料は、例えば、抽出溶媒に緑茶茶葉を接触させて緑茶抽出物を得る抽出工程を少なくとも備える製造方法により得ることができる。緑茶飲料中の非重合カテキン、単糖、二糖及び三糖の含有量は、例えば、抽出工程を、使用する緑茶茶葉の量に対して、通常よりも抽出時間を短くする抽出条件(後述)で実施することで調整することができる。また、異なる抽出条件で得られた緑茶抽出物を混合して緑茶飲料中の非重合カテキン、単糖、二糖及び三糖の含有量を調整すること、得られた緑茶抽出物に非重合カテキン、単糖、二糖及び三糖を添加する、若しくは除去して緑茶飲料中の非重合カテキン、単糖、二糖及び三糖の含有量を調整すること、又はこれらを組み合わせて緑茶飲料中の非重合カテキン、単糖、二糖及び三糖の含有量を調整してもよい。酸性アミノ酸の含有量も同様にして調整してよい。
【0035】
抽出工程は、抽出溶媒に緑茶茶葉を接触させて緑茶抽出物を得る工程である。抽出溶媒と緑茶茶葉の接触の態様は、緑茶抽出物が得られる限り特に限定されず、例えば、抽出溶媒に緑茶茶葉を浸漬する態様を例示できる。
【0036】
抽出工程で使用する抽出溶媒は、通常、水である。水の温度は、例えば、30~100℃であってよく、好ましくは40~80℃であり、より好ましくは45~65℃である。
【0037】
緑茶茶葉の重量に対する抽出溶媒の重量の倍率(浴比)は、例えば、10~50倍であってよく、好ましくは20~40倍であり、より好ましくは30~40倍である。
【0038】
抽出時間は、例えば、1分間以上50分間以下であってよく、好ましくは1.5分間以上30分間以下であり、より好ましくは1.5分間以上10分間以下であり、更に好ましくは1.5分間以上6分間以下である。なお、抽出時間は、抽出溶媒に緑茶茶葉が接触している時間である。
【0039】
一実施形態において、使用する緑茶茶葉の量に対して、通常よりも抽出時間を短くすることで、非重合カテキン、単糖、二糖及び三糖の含有量を、本発明に係る緑茶飲料で特定している範囲内に調整することができる。本実施形態において、抽出工程は、例えば、緑茶茶葉を45~55℃の水(浴比30~40倍)に1.5分以上6分以下浸漬して緑茶抽出物を得る工程であってよい。抽出時間(浸漬時間)は、好ましくは2分以上5.5分以下である。このような抽出工程を備える製造方法によれば、緑茶飲料中の非重合カテキン、単糖、二糖及び三糖の含有量を更に調整する手間を省略できる場合が多い。
【0040】
抽出工程では、抽出時間の経過後直ちに抽出溶媒(緑茶抽出物)と緑茶茶葉を分離することが好ましい。抽出溶媒(緑茶抽出物)と緑茶茶葉の分離は、例えば、ろ過等により実施することができる。
【0041】
本実施形態に係る製造方法は、抽出工程の後、添加工程及び後処理工程を更に備えていてもよい。
【0042】
添加工程は、緑茶抽出物に、必要に応じて水及び/又は添加剤を添加する工程である。添加剤としては、上述したものを使用することができる。添加工程は、例えば、混合タンクに緑茶抽出物、並びに必要に応じて水及び/又は添加剤を添加して混合することにより実施することができる。また、添加工程では、必要に応じて、非重合カテキン、単糖、二糖及び/又は三糖を添加して、緑茶飲料中の非重合カテキン、単糖、二糖及び三糖の含有量を調整してもよい。
【0043】
後処理工程は、例えば、緑茶飲料の殺菌、緑茶飲料の容器への充填等の処理を必要に応じて選択的に行ってよい。
【実施例
【0044】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例により限定されるものではない。
【0045】
〔試験例:緑茶飲料の調製及び評価〕
(緑茶飲料の調製)
表1に示す条件で緑茶(茶葉)をお湯で抽出することによって緑茶飲料を調製した。
【0046】
調製した緑茶飲料のpHをpHメーター(F-72、株式会社堀場製作所製)で測定した。緑茶飲料のpHはいずれも6.2~6.3であった。
【0047】
(含有量の分析)
各緑茶飲料の各種成分の含有量は、以下に示す方法で分析した。分析結果を表1に示す。
【0048】
<単糖及び二糖>
各緑茶飲料を、0.45μmの酢酸セルロースフィルターでろ過したものを、以下の条件で分析して求めた。定量は絶対検量線法で実施した。
使用機器:Ultimate3000 LC(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)
検出器:コロナCAD検出器
カラム:Asahipak NH2P-50(4.6×250mm)(Shodex社製)
移動相A:超純水
移動相B:アセトニトリル
カラム温度:40℃
注入量:5μL
流速:1mL/min
グラジエントB:75%(0min)-75%(30min)-10%(45min)-10%(60min)
なお、検出された単糖は、フルクトース及びグルコースのみであった。検出された二糖は、スクロースのみであった。検出された三糖は、ラフィノースのみであった。
【0049】
<非重合カテキン>
各緑茶飲料を、超純水で10倍希釈し、0.45μmの親水性混合セルロースエステルフィルターでろ過したものを測定試料とした。測定にはHPLC(島津prominence、株式会社島津製作所製)を用いた。測定条件は下記のとおりとした。
カラム:WakoPak Navi C18-5、4.6×150mm(富士フィルム和光純薬株式会社製)
注入量:20μL
流量:1mL/分
移動相A:超純水:リン酸:アセトニトリル=1000:2.5:2.5(v/v/v)移動相B:メタノール
0~2分:移動相A93.3%、移動相B6.7%→37分:移動相A73.3%、移動相B26.7%→37.1~47分:移動相A0%、移動相B100%→47.1~55分:移動相A93.3%、移動相B6.7%
ストップタイム:55分
ポストタイム:0分
オーブン温度:40℃
UV検出器波長:測定242nm及び272nm
蛍光検出器:励起波長280nm、蛍光波長310nm
定量方法:絶対検量線法
なお、表1中、非重合カテキンの含有量は、ガロカテキン(GC)、エピガロカテキン(EGC)、カテキン(C)、エピガロカテキンガレート(EGCG)、エピカテキン(EC)、ガロカテキンガレート(GCG)、エピカテキンガレート(ECG)及びカテキンガレート(CG)の合計含有量である。
【0050】
<アミノ酸>
各緑茶飲料を、超純水で2倍希釈し、0.45μmの酢酸セルロースフィルターでろ過したものを測定試料とした。アミノ酸アナライザー(JCL-500/V2、日本電子株式会社製)を用いて各アミノ酸の含有量を定量した。
なお、表1中、酸性アミノ酸の含有量は、アスパラギン酸及びグルタミン酸の合計含有量である。アミノ酸の含有量は、酸性アミノ酸を含む全アミノ酸の合計含有量である。
【0051】
<タンニン>
タンニンの含有量は、緑茶の公定分析法(「茶の公定分析法」茶業試験場報告、第6号、169-170頁、1970年)に従って測定した。
【0052】
(官能評価)
各緑茶飲料を訓練されたパネル5名による官能評価に供した。官能評価は、各緑茶飲料を飲用したときの「苦渋味」、「甘み」及び「苦渋味と甘みのバランス」、並びに「旨み」及び「苦渋味と旨みのバランス」の評価項目について、各緑茶飲料同士の相対値として以下のように点数化した(各評価項目とも1~5点の間で0.5点刻みで点数化)。なお、「苦渋味」の評価項目については、比較例2の緑茶飲料の評点を5点に固定した。
苦渋味:1点(弱い)~5点(強い)
甘み:1点(弱い)~5点(強い)
苦渋味と甘みのバランス:1点(バランスが取れていない)~5点(バランスがよく取れている)
旨み:1点(弱い)~5点(強い)
苦渋味と旨みのバランス:1点(バランスが取れていない)~5点(バランスがよく取れている)
なお、「苦渋味と甘みのバランス」の評価項目は、苦渋味と甘みの両方が明確に感じられるものを「バランスが取れている」と評価し、苦渋味と甘みの一方の呈味が相対的に強く、他方の呈味を感じにくいものを「バランスが取れていない」と評価した。同様に、「苦渋味と旨みのバランス」の評価項目は、苦渋味と旨みの両方が明確に感じられるものを「バランスが取れている」と評価し、苦渋味と旨みの一方の呈味が相対的に強く、他方の呈味を感じにくいものを「バランスが取れていない」と評価した。
【0053】
各評価項目について、訓練を受けたパネル5名の評点の平均値を評価結果とした。評価結果を表1に示す。
【表1】
【0054】
非重合カテキンの含有量が350mg/L以下であり、かつ単糖、二糖及び三糖の合計含有量が100mg/L以上200mg/L以下である実施例1~5の緑茶飲料は、これらの条件を満たしていない比較例1~3の緑茶飲料と比べて、苦渋味が低減され、かつ充分な甘みが感じられると共に、苦渋味と甘みのバランスに優れていた。