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特許7505908スプレーガンを用いた補修用塗料の塗装方法と塗装装置
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  • 特許-スプレーガンを用いた補修用塗料の塗装方法と塗装装置 図1
  • 特許-スプレーガンを用いた補修用塗料の塗装方法と塗装装置 図2
  • 特許-スプレーガンを用いた補修用塗料の塗装方法と塗装装置 図3
  • 特許-スプレーガンを用いた補修用塗料の塗装方法と塗装装置 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】スプレーガンを用いた補修用塗料の塗装方法と塗装装置
(51)【国際特許分類】
   B05D 1/02 20060101AFI20240618BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20240618BHJP
   B05B 7/16 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
B05D1/02 G
B05D3/00 D
B05B7/16
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020073623
(22)【出願日】2020-04-16
(65)【公開番号】P2021169070
(43)【公開日】2021-10-28
【審査請求日】2023-03-05
(73)【特許権者】
【識別番号】305021786
【氏名又は名称】株式会社ウエノコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100134533
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 夏香
(74)【代理人】
【識別番号】100186451
【弁理士】
【氏名又は名称】梅森 嘉匡
(72)【発明者】
【氏名】上野 信
【審査官】山本 晋也
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-123666(JP,A)
【文献】米国特許第06138922(US,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0099186(KR,A)
【文献】特開2003-326212(JP,A)
【文献】登録実用新案第3133845(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D
B05B
B05C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホースを通ってスプレーガンに供給される圧縮空気の温度を、前記スプレーガンに組み付けられた温度計により測定する工程と、
前記温度計により測定された圧縮空気の温度Tが所定値T1以下である場合に、前記ホース内の略全長にわたって取り付けられた電熱線に電力を供給して前記ホース内を加熱する工程と、
前記温度計により測定された圧縮空気の温度Tが所定値T2以上である場合に、前記電熱線への電力供給を停止する工程と、
前記温度計により測定された圧縮空気の温度Tが所定値T3以上である場合に、前記ホースに連結された冷風発生機を作動させる工程と、
前記温度計により測定された圧縮空気の温度Tが所定値T4以下である場合に、前記冷風発生機の作動を停止する工程と、
を含むことを特徴とする補修用塗料の塗装方法。
【請求項2】
ホース内の略全長にわたって取り付けられ、外部電源に接続される電熱線と、
前記ホースに連結される冷風発生機と、
前記ホースが接続されるスプレーガンに取り付けられ、前記ホースを介して前記スプレーガン内に供給された圧縮空気の温度を測定する温度計と、
を有することを特徴とするスプレーガンを用いた補修用塗料の塗装装置。
【請求項3】
前記ホース内に挿通され、一端が高電圧発生器に接続され他端が前記スプレーガンに連結されるケーブルを有することを特徴とする請求項2記載のスプレーガンを用いた補修用塗料の塗装装置。
【請求項4】
加熱器と冷却器とを備え、前記ホースに連結されるタンクを有することを特徴とする請求項2又は3記載のスプレーガンを用いた補修用塗料の塗装装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプレーガンを用いた補修用塗料の塗装方法と塗装装置に関し、特に、自動車補修工場において、補修用(水性又は有機)塗料を車両に吹き付けて補修する際に用いられて好適なスプレーガンを用いた補修用塗料の塗装方法と塗装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護意識の高まりから、自動車補修工場においても、補修用塗料として、水希釈型塗料等と称される水性塗料の利用が図られている。水性塗料の希釈剤には水とアルコール類が用いられるため、塗装の仕上がり品質を向上させるためには、塗装時の温度を管理して希釈剤である水の蒸発速度をコントロールすることが重要である。
【0003】
水性塗料を補修車両に吹き付ける際の用具として、従来、塗装ガン等と称されるスプレーガンが知られている(例えば、特許文献1参照)。スプレーガンは長尺(例えば約10m)のホース等を介して圧縮空気供給源に接続されており、供給された圧縮空気によりスプレーガンのノズルから塗料を噴射して塗装するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-043870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、スプレーガンに供給される圧縮空気は、自動車補修工場内に設置されたコンプレッサー(圧縮空気供給源)により生産されるが、生産直後の圧縮空気は水分を含むとともに熱を帯びているため、冷却能力を備えるドライヤー工程において冷却されるとともに、余分な水分が除去される。一般の自動車補修工場においては、ビニールカーテンで区画された塗装ブースやプッシュプル型の塗装ブース内で塗装作業を行なっており、外気温の影響を遮断することが困難である。そのため、コンプレッサーにより生産された圧縮空気は、ドライヤー工程で冷却された後、フィルターや補助タンク、真鍮製のエア配管や地面に置かれたホースを通ってスプレーガンに供給される過程で外気温の影響を受けて、塗装に適さない温度に変化してしまうことがある。
【0006】
塗装の仕上がり品質を向上させるためには、各塗料の性状等に応じた好適な温度で塗装することが求められることから、塗料自体の温度管理に加えて、圧縮空気の温度を調節することが重要である。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、塗装の作業性を損なうことなく塗装の仕上がり品質を向上させることが可能な、スプレーガンを用いた補修用塗料の塗装方法と塗装装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るスプレーガンを用いた補修用塗料の塗装方法は、
ホースを通ってスプレーガンに供給される圧縮空気の温度を、前記スプレーガンに組み付けられた温度計により測定する工程と、
前記温度計により測定された圧縮空気の温度Tが所定値T1以下である場合に、前記ホース内の略全長にわたって取り付けられた電熱線に電力を供給して前記ホース内を加熱する工程と、
前記温度計により測定された圧縮空気の温度Tが所定値T2以上である場合に、前記電熱線への電力供給を停止する工程と、
前記温度計により測定された圧縮空気の温度Tが所定値T3以上である場合に、前記ホースに連結された冷風発生機を作動させる工程と、
前記温度計により測定された圧縮空気の温度Tが所定値T4以下である場合に、前記冷風発生機の作動を停止する工程と、
を含むことを特徴とする。
【0009】
本発明に係るスプレーガンを用いた補修用塗料の塗装装置は、
ホース内の略全長にわたって取り付けられ、外部電源に接続される電熱線と、
前記ホースに連結される冷風発生機と、
前記ホースが接続されるスプレーガンに取り付けられ、前記ホースを介して前記スプレーガン内に供給された圧縮空気の温度を測定する温度計と、
を有することを特徴とする。
【0010】
本発明に係るスプレーガンを用いた補修用塗料の塗装装置は、上記構成に加えて、前記ホース内に挿通され、一端が高電圧発生器に接続され他端が前記スプレーガンに連結されるケーブルを有するようにしても良い。さらに、本発明に係るスプレーガンを用いた補修用塗料の塗装装置は、加熱器と冷却器とを備え、前記ホースに連結されるタンクを有するものであっても良い。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、塗装の作業性を損なうことなく塗装の仕上がり品質を向上させることが可能な、スプレーガンを用いた補修用塗料の塗装方法と塗装装置を提供することができる。すなわち、本発明によれば、塗料を噴射するための圧縮空気の温度を、塗装に適した所望の温度域内に収まるように調節することが可能であり、寒冷地や屋外等の外気温度の影響を受けやすい場所においても、それぞれの補修用塗料に適した温度で吹き付け作業を行なうことができ、塗装の仕上がり品質を向上させることができる。塗装作業時にはホースを取り回すことになるが、電熱線がホース内に取り付けられているため、塗装の作業性を損なうことがない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係るスプレーガンを用いた補修用塗料の塗装装置の構成等を模式的に示す図である。
図2図1に示すホースの内部構成を模式的に示す拡大図である。
図3】本発明に係る第1の実施の形態であるスプレーガンを用いた補修用塗料の塗装方法の工程を示すフロー図である。
図4】本発明に係る第2の実施の形態であるスプレーガンを用いた補修用塗料の塗装方法の工程を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、適宜図面を参照しつつ本発明の実施の形態を具体的に説明するが、本発明は図面に示す実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない限りにおいて適宜変更可能である。
【0014】
図1は、スプレーガンを用いた補修用塗料の塗装装置1の構成等を模式的に示す図である。本発明に係る塗装装置1は、自動車補修工場等において、水性塗料を車両(被塗物C)に吹き付けて塗装補修する際に用いられて好適な装置である。図1に示す場合には、塗装装置1は、コンプレッサー20により生産された圧縮空気が流れる真鍮製のエア配管24に連結されている。前述のとおり、コンプレッサー20により生産された圧縮空気は、ドライヤー21により乾燥・冷却され、粉塵等を除去するフィルター22、エア量を確保するための補助タンク23、真鍮製のエア配管24等を通る過程で、外気温の影響を受けて変化してしまう。この点、以下の構成を有する塗装装置1によれば、スプレーガン4に供給される圧縮空気の温度を、水性塗料の吹き付け塗装に好適な温度に昇温等することができ、被塗物Cに吹き付けられた水性塗料の仕上がり品質を向上させることができる。
【0015】
すなわち、塗装装置1は、ホース2内の略全長にわたって取り付けられ、外部電源に接続される電熱線3と、ホース2に連結される冷風発生機10と、ホース2が接続されるスプレーガン4に取り付けられ、ホース2を介してスプレーガン4内に供給された圧縮空気の温度を測定する温度計5と、を有する。以下、各構成につき順次説明する。
【0016】
ホース2は、長尺(例えば全長約10m)であるウレタン製の可撓性部材であり、流出側端部2bにはスプレーガン4が接続されている。なお、本実施の形態においては、ホース2は、後述するタンク15に接続されているが、タンク15の設置は任意的である。また、ホース2としては、例えば、各種のエアホースを用いることができるが、耐熱性に優れたホースを選択することが好ましい。
【0017】
図2は、図1に示すホース2の内部構成を模式的に示す拡大図である。ホース2の内部には、その略全長にわたって、より具体的には、流入側端部2aから挿入され流出側端部2b近傍でU字状に折り返されるようにして、電熱線3が挿入されることにより取り付けられている。電熱線3には電線6aを介して外部電源6が接続されており、外部電源6を作動させることによりホース2内全体を加熱して、ホース2内の圧縮空気を昇温又は保温することができる。かかる電熱線3としては、例えば、ニクロム線を用いることができる。長尺(例えば全長約10m)のホース2の略全長にわたって電熱線3を取り付けることにより、スプレーガン4で使用するのに十分な量の圧縮空気を加熱することができる。電熱線3は、コイル状に巻かれたものを用いても良い。
【0018】
ホース2の流入側端部2aは、T字状に分岐した筒状の連結部材7の一端(ホース接続用孔7b)に嵌入されている。T字型コネクタ7は、端子7aと、ホース2が嵌入されるホース接続用孔7b及び連結管接続用孔7cとを備えている。端子7aは圧縮空気が流出しないように封止されるとともに、電線6a、11bの差し込み口が設けられており、電気的に外部と接続できるようになっている。電熱線3は、端部が端子7aに接続されホース接続用孔7bを通ってホース2内に取り付けられており、端子7aに着脱可能に接続された外部電源6を作動させることにより電熱線3に電力を供給することができる。また、連結管接続用孔7cには圧縮空気供給源側に連なる連結管8が接続されており、エア配管24を介して供給される圧縮空気は、後述の圧力弁25及びバルブ16を操作することにより、連結管接続用孔7c及びホース接続用孔7bを通ってホース2内に流れ込むようになっている(圧縮空気の流れを、図2中矢印で示す。)。
【0019】
スプレーガン4は、トリガー4aを引くことにより、ノズル4bから塗装を噴射することができる、塗装の現場において汎用されている器具である。スプレーガン4の持ち手部にはホース接続孔4cが設けられており、銃身部には水性塗料が収容された容器9が装着されており、持ち手部及び銃身部の内部には一端がホース接続孔4cに開口し他端がノズル4bに開口する圧縮空気供給通路4dが形成されている。さらに、銃身部には一端が容器9に連通し他端がノズル4bに連通する塗料供給通路が形成されており、トリガー4aを操作して圧縮空気供給通路4dを開閉することにより、圧縮空気に混合された水性塗料を被塗物Cに向けて噴射することができる。
【0020】
冷風発生機10は、流入空気を冷却して排出することが可能な器具であり、連結管8に取り付けることにより、ホース2に連結されている。冷風発生機10としては、例えば、日本精器株式会社製の冷風発生装置(商品名「ジェットクーラー」)を用いることができる。なお、冷風発生機10は、ホース2の流入側端部2aや連結部材7に装着するようにしても良い。
【0021】
スプレーガン4の持ち手部下端側には、温度計5を構成するセンサ部5aが組み込まれており、ホース2を通ってスプレーガン4(圧縮空気供給通路4d)内に供給される圧縮空気の温度Tを測定することができる。温度計5は、センサ部5aと表示部5bとを備え、測定結果が表示部5bに表示される。
【0022】
上記構成を有する本発明によれば、スプレーガン4には温度計5が組み付けられているため、測温結果を確認しながら、電熱線3又は冷風発生機10を作動させることにより、塗料を噴射するための圧縮空気が所望の温度域内に収まるように調節することができ、寒冷地や屋外等の外気温度の影響を受けやすい場所においても、それぞれの補修用塗料に適した温度で吹き付け作業を行なうことができる。ホース2内において温度が調節された圧縮空気は、トリガー4aを引いたときにスプレーガン4を通って噴射されるまで電熱線3が組み込まれたホース2内に留まっており、外気温の影響を受けにくい。また、塗装作業時にはホース2を取り回すことになるが、電熱線3がホース2内に取り付けられているため、塗装の作業性を損なうことがない。
【0023】
上記構成を有する本発明によれば、塗装の作業性を損なうことなく塗装の仕上がり品質を向上させることが可能な、スプレーガンを用いた補修用塗料の塗装装置1を提供することができる。
【0024】
本発明に係る塗装装置を用いて静電塗装を行う場合には、次の構成を有するようにしても良い。すなわち、スプレーガン4として、いわゆる静電ガンを用いる場合には、塗装装置1は、ホース2内に挿通され、一端が高電圧発生器11に接続され他端がスプレーガン4に連結されるケーブル12を有するようにしても良い。このように静電塗装のためのケーブル12をホース2内に挿通することにより、ホース2と別々に配線する場合に比べて塗装作業の邪魔にならず、作業性が向上する。本実施の形態においては、ケーブル12は、その一端がT字型コネクタ7の端子7aに着脱可能に接続され、他端がホース2内を通ってスプレーガン4に連結されている。ケーブル12は耐熱性材料で被覆されている。高電圧発生器11は、アース線11aと、端子7aを介してケーブル12に接続される電線11bとを備えており、高電圧発生器11を作動させることにより、静電塗装用の電力を、ケーブル12を介してスプレーガン4に供給することができる。なお、スプレーガン4を金属製とし、ケーブル12をスプレーガン4に接続して帯電させることにより、スプレーガン4を用いて静電塗装を行うことも可能である。
【0025】
塗装装置1は、任意的に、加熱器13と冷却器14とを備え、ホース2が連結されたタンク15を有するようにしても良い。かかるタンク15を設けることにより、ホース2に供給される圧縮空気の温度をタンク15内でも昇温又は冷却することができ、電熱線3等と併用することにより、スプレーガン4に供給される圧縮空気の温度をより短時間で調節することができる。
【0026】
タンク15は中空の容体であり、給気孔15aと排気孔15bとが設けられている。給気孔15aには、エア配管24が接続されており、圧力弁25を操作することにより、タンク15内に圧縮空気を充填・収容することができる。また、排気孔15bには、連結管8が接続されており、バルブ16を操作することにより、連結管接続用孔7cを通じてタンク15内の圧縮空気をホース2に向けて圧送することができる。タンク15内には、通常一般に使用される加熱器13(例えば、シーズヒーター)及び冷却器14が組み込まれている。
【0027】
次に、本発明に係るスプレーガンを用いた補修用塗料の塗装方法について説明する。
【0028】
図3は、第1の実施の形態であるスプレーガンを用いた補修用塗料の塗装方法の工程を示すフロー図であり、ホース2を通ってスプレーガン4に供給される圧縮空気の温度を、スプレーガン4に組み付けられた温度計5により測定する工程(S1)と、温度計5により測定された圧縮空気の温度Tが所定値T1以下である場合に、ホース2内に取り付けられた電熱線3に電力を供給してホース2内を加熱する工程(S2)と、温度計5により測定された圧縮空気の温度Tが所定値T2以上である場合に、電熱線3への電力供給(加熱)を停止する工程(S3)と、温度計5により測定された圧縮空気の温度Tが所定値T3以上である場合に、ホース2の端部に取り付けられた冷風発生機10を作動させる工程(S4)と、温度計5により測定された圧縮空気の温度Tが所定値T4以下である場合に、冷風発生機10の作動を停止する工程(S5)と、を含む。各工程は、前述した塗装装置1により実行することができる。以下、各工程(S1~S5)につき説明する。
【0029】
<S1>先ず、ホース2を通ってスプレーガン4に供給される圧縮空気の温度を、スプレーガン4に組み付けられた温度計5により測定する。
【0030】
<S2>本工程では、温度計5により測定された圧縮空気の温度Tが所定値T1以下であるか否かを判定し、温度Tが所定値T1以下である場合には、外部電源6を作動させて電熱線3に電力を供給し、ホース2内を加熱する。所定値T1は、水性塗料の性状や被塗物Cまでの噴射距離等に応じて設定される(例えば、T1=13℃)。供給される電力は、目標温度や電熱線3の長さ等に応じて設定される。
【0031】
<S3>本工程では、当該温度Tが所定値T2以上であるか否かを判定し、所定値T2以上である場合には、電熱線3への電力供給(加熱)を停止する。所定値T2は、T1より高い温度で、水性塗料の性状等に応じて設定される(例えば、T2=20℃)。
【0032】
<S4>本工程では、温度計5により測定された圧縮空気の温度Tが所定値T3以上であるか否かを判定し、温度Tが所定値T3以上である場合に、ホース2の端部に取り付けられた冷風発生機10を作動させる。所定値T3は、水性塗料の性状等に応じて設定される。なお、T2<T3となるように設定することにより、本工程(S4)実行中は、ホース2内部に組み込まれた電熱線3への電力供給(加熱)が停止されるようにする。
【0033】
<S5>本工程では、温度計5により測定された圧縮空気の温度Tが所定値T4以下であるか否かを判定し、温度Tが所定値T4以下である場合に、冷風発生機10の作動を停止する。所定値T4は、T3より低い温度で、水性塗料の性状等に応じて設定される。
【0034】
S5工程終了後、塗装作業継続中である場合には、任意の時間をおいて、S1工程に戻り、各工程(S1~S5)を再実行する。かかる工程(S1~S5)を繰り返し実行することにより、スプレーガン4に供給される圧縮空気の温度を調節する。図3に示す場合には、S1、S2、S3、S4及びS5工程の順序で実行しているが、S2~S5工程の実行順序は問わない(例えば、S2及びS3工程に先だってS4及びS5工程を実行しても良いし、S2,S4,S3、S5工程の順で実行しても良い。)。温度Tが所定値T1以下である限り、電熱線3への電力の供給、即ち、ホース2内の加熱状態が継続し、温度Tが所定値T3以下である限り、冷風発生機10の作動、即ち、圧縮空気の冷却状態が継続する。本実施の形態に係る塗装方法によれば、塗料を噴射するための圧縮空気が所望の温度域内に収まるように調節することができ、水性塗料の塗装に適する温度で塗装することができる。
【0035】
図4は、第2の実施の形態であるスプレーガンを用いた補修用塗料の塗装方法の工程を示すフロー図であり、上記各工程(S1~S5)に加えて、次の各工程(S6,S7)、即ち、温度計5により測定された圧縮空気の温度Tが所定値T5以下である場合に、ホース2が接続されたタンク15に取り付けられた加熱器13を作動させて、タンク15内を加熱する工程(S6)と、温度計5により測定された圧縮空気の温度Tが所定値T6以上である場合に、加熱器13の作動を停止する工程(S7)と、を含むものである。所定値T5及びT6は、電熱線3の加熱能力等に応じて設定される。
【0036】
上記工程(S6~S7)は、測温工程(S1)後に実行されるが、S2~S7工程の実行順序は問わない。例えば、加熱器13を電熱線3の補助として使用する場合には、T1<T5、T2<T6となるように設定のうえ、図4に示すように、S2工程後にS6工程を実行し、S7工程後にS3工程を実行するようにしても良い。温度Tが所定値T5以下である限り、加熱器13の作動、即ち、タンク15内の加熱状態が継続する。上記工程(S1~S7)を含む塗装方法によれば、スプレーガン4に供給される圧縮空気の温度を、ホース2に取り付けられた電熱線3とタンク15に取り付けられた加熱器13とを併用して昇温することができる。
【0037】
本発明は、上記実施の形態ないし実施例に限定されず、その発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形実施が可能である。例えば、本発明は水性塗料以外の補修用塗料にも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、スプレーガンを用いた補修用塗料の塗装方法、又は、スプレーガンを用いた補修用塗料の塗装装置として利用することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 塗装装置
2 ホース
2a 流入側端部
2b 流出側端部
3 電熱線
4 スプレーガン
4a トリガー
4b ノズル
4c ホース接続孔
4d 圧縮空気供給通路
5 温度計
6 外部電源
7 コネクタ
7a 端子
7b ホース接続用孔
7c 連結管接続用孔
8 連結管
9 容器
10 冷風発生機
11 高電圧発生器
12 ケーブル
13 加熱器
14 冷却器
15 タンク
15a 給気孔
15b 排気孔
16 バルブ
20 コンプレッサー
21 ドライヤー
22 フィルター
23 補助タンク
24 エア配管
25 圧力弁
C 被塗物
図1
図2
図3
図4