(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】超音波撮像装置
(51)【国際特許分類】
A61B 8/14 20060101AFI20240618BHJP
【FI】
A61B8/14
(21)【出願番号】P 2020094167
(22)【出願日】2020-05-29
【審査請求日】2023-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】320011683
【氏名又は名称】富士フイルムヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000888
【氏名又は名称】弁理士法人山王坂特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 貞一郎
(72)【発明者】
【氏名】田中 智彦
【審査官】永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-525057(JP,A)
【文献】特許第6444518(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 ー 8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の超音波素子を含む超音波探触子に送信信号を出力して、被検体に超音波を送信させる送信部と、
前記超音波を送信された前記被検体からのエコー、または、前記被検体に挿入されたビーコンからの超音波を前記複数の超音波素子が受信して出力する受信信号を、受け取って処理する受信部とを有し、
前記受信部は、前記複数の超音波素子がそれぞれ出力する受信信号を受信ビームフォーミングすることにより予め定めた1以上の受信走査線に沿った高周波信号を生成する受信ビームフォーマと、前記高周波信号を処理して画像を生成する画像生成部と、SNR強調信号生成部とを備え、
前記SNR強調信号生成部は、前記ビーコンからの超音波を前記超音波素子が受信して出力した前記受信信号間のコヒーレンス値、もしくは、前記受信信号から生成された複数の前記高周波信号間のコヒーレンス値を求め、前記コヒーレンス値に応じた重みにより、前記受信信号または前記高周波信号を重み付けすることによりSNR強調信号を生成し、
前記SNR強調信号生成部は、前記SNR強調信号を用いて、前記ビーコンの位置および/または存在の確からしさを示す情報を生成するSNR強調信号処理部を含み、
前記SNR強調信号処理部は、前記情報に基づいて、前記被検体に送信される超音波を変化させるよう前記送信部をフィードバック制御するか、または、前記受信ビームフォーマが前記高周波信号を生成する範囲を変化させるフィードバック制御を行い、
前記画像生成部は、前記ビーコンからの超音波を前記超音波素子が受信して出力した前記受信信号から、前記受信ビームフォーマが生成した前記高周波信号を用いて、前記ビーコンの画像を生成し、
前記SNR強調信号処理部は、前記SNR強調信号を用いて前記ビーコンの強調されたSNR強調画像を生成し、
前記SNR強調信号処理部は、前記ビーコンの画像を、前記SNR強調画像の画素値に基づいて画像処理するビーコン画像処理部を有し、
前記ビーコン画像処理部は、前記ビーコン画像と、前記SNR強調画像とを重畳して表示させることを特徴とする超音波撮像装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の超音波撮像装置であって、前記ビーコン画像処理部は、前記ビーコン画像に対して、前記SNR強調画像を異なる色で重畳することを特徴とする超音波撮像装置。
【請求項3】
請求項
1に記載の超音波撮像装置であって、前記ビーコン画像処理部は、前記SNR強調画像の画素値が、予め定めておいた閾値より小さい場合、対応する前記ビーコン画像の画素値を低減させることを特徴とする超音波撮像装置。
【請求項4】
請求項
1に記載の超音波撮像装置であって、前記SNR強調信号処理部は、前記SNR強調信号が最も大きかった座標を、前記ビーコンの位置情報として算出することを特徴とする超音波撮像装置。
【請求項5】
請求項
4に記載の超音波撮像装置であって、前記画像生成部は、前記ビーコンからの超音波を前記超音波素子が受信して出力した前記受信信号から、前記受信ビームフォーマが生成した前記高周波信号を用いて、ビーコン画像を生成し、
前記SNR強調信号処理部は、前記SNR強調信号から求めた前記座標を示すマークを、前記ビーコン画像上に表示することを特徴とする超音波撮像装置。
【請求項6】
請求項
1に記載の超音波撮像装置であって、前記SNR強調信号処理部は、前記情報が示す前記ビーコンの位置が、前記送信部が送信させる超音波の送信範囲から外れている場合には、外れている方向に近い範囲のみに前記送信範囲を狭めるか、または、前記ビーコンの位置が含まれるように前記送信範囲をずらすことを特徴とする超音波撮像装置。
【請求項7】
請求項
1に記載の超音波撮像装置であって、前記SNR強調信号処理部は、前記情報が示す前記ビーコンの位置が、前記受信ビームフォーマの複数の受信走査線の設定された受信範囲内に位置する場合、前記ビーコンの位置が含まれるように前記受信範囲を狭めることを特徴とする超音波撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体内にデバイスを挿入しながら、超音波を用いて被検体およびデバイスの画像を撮像する超音波撮像技術に関する。
【背景技術】
【0002】
カテーテル手術や穿刺、腹腔鏡手術、ステント治療など生体内に針状のデバイスを挿入し診断や治療を行う低侵襲治療においては、生体内でのデバイスの現在位置および進行方向を把握し、目的とする方向および位置に向かってデバイスを挿入していくことが重要である。
【0003】
そのため例えば、医師が患者の血管内にカテーテルを挿入する場合、X線透視撮像装置により患者のカテーテル挿入部位を透視撮像するのが一般的である。これにより医師は、X線透視画像をリアルタイムで視認することができ、カテーテルの進行方向の血管の形状や分岐の有無、カテーテルの先端位置、カテーテルが血管内にあるかどうか、等を把握することができる。
【0004】
また、特許文献1では、生体内に挿入するデバイスの先端に超音波ビーコンを取り付けておき、デバイスが挿入された生体領域に対して、プローブから超音波を送受信する装置が提案されている。この装置は、プローブが位置する領域の超音波画像を取得するとともに、デバイスの超音波ビーコンから送信される超音波をプローブによって受信することにより、生体内の超音波ビーコンの位置を特定する。
【0005】
一方、特許文献2,3および4には、超音波撮像装置において、被検体に超音波を送信した後、被検体からの反射波等を複数の受信素子で受信して得た受信信号に対して適応処理を施すことにより、得られる画像の画質を向上させる技術が開示されている。例えば、特許文献2には、複数の受信素子の受信信号と参照信号との相関値の統計値を求め、複数の受信信号を加算した信号を相関値の統計値に応じて増幅することが開示されている。特許文献3には、複数の受信素子の受信信号間の類似度を求め、類似度から空間共分散行列を生成し、適応重みを求め、受信信号を適応重みを用いて整相する技術が開示されている。特許文献4には、複数の受信素子の受信信号間のコヒーレンス値を求め、コヒーレンス値に応じた重みによって、複数の受信信号を重み付けした後加算するか、または、複数の受信信号を加算後の信号を重み付けすることを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特表2016-508859号公報
【文献】特許第4503454号公報
【文献】特許第5813776号公報
【文献】特許第6444518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載されているように、生体内に挿入するデバイスの先端にビーコンを取り付けておき、離れた位置に配置したプローブによってビーコンからの超音波を受信して、ビーコンの先端位置を特定する技術は、X線を被検体に照射する必要がなく有用である。
【0008】
しかしながら、生体内に挿入されるデバイスのビーコンに供給可能な電力には、生体内に挿入可能な信号線の太さの上限や生体の安全性確保等の理由により制限がある。また、生体組織は不均質であるため、ビーコンから発せられた音波が、生体組織による散乱等によって乱されやすい。このため、プローブに到達する音波の強度が小さくなり、プローブにおいて十分な強度の受信信号が得られないことがある。この場合、精度よくビーコンの位置を特定することが困難になる。
【0009】
また、生体内のデバイスのビーコンから発せられた音波をプローブで受信した受信信号を用いて、画像を生成することにより、生体内におけるビーコンの画像を得ることができるが、グレーティングローブやサイドローブ等の偽像が発生することがある。この場合、本来のビーコン像を判別することが困難になる。
【0010】
本発明の目的は、生体内に挿入したビーコンからの信号をプローブによって受信して得る受信信号のSNR(SN比、Signal to Noise Ratio)を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明によれば、複数の超音波素子を含む超音波探触子に送信信号を出力して、被検体に超音波を送信させる送信部と、超音波を送信された被検体からのエコー、または、被検体に挿入されたビーコンからの超音波を複数の超音波素子が受信して出力する受信信号を、受け取って処理する受信部とを有する超音波撮像装置が提供される。受信部は、複数の超音波素子がそれぞれ出力する受信信号を受信ビームフォーミングすることにより予め定めた1以上の受信走査線に沿った高周波信号を生成する受信ビームフォーマと、高周波信号を処理して画像を生成する画像生成部と、SN強調信号生成部とを備える。SNR強調信号生成部は、ビーコンからの超音波を超音波素子が受信して出力する受信信号間のコヒーレンス値、もしくは、受信信号から生成された複数の高周波信号間のコヒーレンス値を求め、前記コヒーレンス値に応じた重みにより、前記受信信号または前記高周波信号を重み付けすることによりSNR強調信号を生成する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、生体内に挿入したビーコンからの信号をプローブによって受信して得る受信信号のSNRを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態1の超音波撮像装置の全体構成を示すブロック図。
【
図2】実施形態1の超音波撮像装置の動作を示すフローチャート。
【
図4】実施形態1の超音波撮像装置の受信部の詳しい構成例を示すブロック図。
【
図5】
図2のステップ210のSNR強調信号処理部の動作を示すフローチャート。
【
図6】実施形態1の超音波撮像装置で撮像される(a)ビーコン画像、(b)SNR強調画像、(c)加工後のビーコン画像、(d)被検体画像と加工後のビーコン画像との重畳画像、をそれぞれ示す説明図。
【
図7】実施形態2の超音波撮像装置のSNR強調信号処理部の動作を示すフローチャート。
【
図8】実施形態2の超音波撮像装置で撮像される(a)ビーコン画像、(b)SNR強調画像、(c)ビーコン画像とSNR強調画像の重畳画像、(d)被検体画像とビーコン画像とSNR強調画像の重畳画像、をそれぞれ示す説明図。
【
図9】実施形態3の超音波撮像装置の受信部の構成を示すブロック図。
【
図10】実施形態3の超音波撮像装置のSNR強調信号処理部の動作を示すフローチャート。
【
図11】実施形態3の超音波撮像装置で撮像される(a)ビーコン画像、(b)ビーコン位置のマークをビーコン画像に表示した画像。
【
図12】実施形態4の超音波撮像装置の受信部の構成を示すブロック図。
【
図13】実施形態4の超音波撮像装置のSNR強調信号処理部の動作を示すフローチャート。
【
図14】実施形態4の超音波撮像装置のSNR強調信号処理部が(a)ビーコン位置を算出する処理、(b)視野141を設定する処理、(c)送信範囲を設定する処理、(d)受信ビームフォーミング範囲を設定する処理、(e)視野の被検体画像とビーコン画像との重畳画像をそれぞれ示す説明図。
【
図15】実施形態4の超音波撮像装置のSNR強調信号処理部が(a)超音波探触子の超音波23の照射範囲外のビーコン位置を算出する処理、(b)視野141を設定する処理、(c)送信範囲を設定する処理、(d)受信ビームフォーミング範囲を設定する処理、(e)視野の被検体画像とビーコン画像との重畳画像をそれぞれ示す説明図。
【
図16】実施形態4の超音波撮像装置のSNR強調信号処理部が(a)超音波探触子の超音波23の照射範囲外のビーコン位置を算出する処理、(b)視野141を設定する処理、(c)送信範囲をずらして設定する処理、(d)受信ビームフォーミング範囲を設定する処理、(e)視野の被検体画像とビーコン画像との重畳画像をそれぞれ示す説明図。
【
図17】実施形態5の超音波撮像装置の全体構成を示すブロック図。
【
図18】実施形態5の超音波撮像装置のコヒーレンス値算出部151と重み付け部152の構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態の超音波撮像装置について説明する。
【0015】
<<実施形態1>>
実施形態1の超音波撮像装置1の概要について、
図1を用いて説明する。
図1は、超音波撮像装置の全体構成を示すブロック図である。
【0016】
図1に示すように、本実施形態の超音波撮像装置1は、送信部11と、受信部12と、制御部17と、送受分離部16とを備えて構成される。受信部12内には、受信ビームフォーマ13と、画像生成部14と、SNR強調信号生成部15と、画像合成部18とが備えられている。
【0017】
送信部11および受信部12には、複数の超音波素子が配列された超音波探触子22が送受分離部16を介して接続されている。
【0018】
また、被検体20には、先端にビーコン21aが取り付けられたカテーテルや術具等の針状のデバイス21が挿入される。ビーコン21aは内部に超音波(ビーコン信号)24を発信するビーコン信号発信部21bを有する。またビーコン21aには、被検体20の外部に配置され、ビーコン21aのオン/オフ制御を行うビーコン制御・信号生成部28が接続されており、ビーコン制御・信号生成部28は内部にビーコン制御部26およびビーコン信号生成部27を有する。
【0019】
ビーコン信号発信部21bから発せられるビーコン信号としての超音波24の発生原理は、圧電素子を用いた圧電型超音波発信でも、光音響変換素子を用いた超音波発信でもよい。
【0020】
ビーコン信号発信部21bから発せられる超音波24の発生原理が圧電型超音波発信の場合、ビーコン信号発信部21bは一般に圧電セラミクス(ジルコン酸チタン酸鉛、PZT)素子や単結晶圧電素子、圧電・単結晶コンポジット素子、および、CMUT素子(Capacitive Micromachined Ultrasonic Transducer)やPMUT(Piezoelectric Micromachined Ultrasonic Transducer)素子などのMEMS型圧電素子などで構成される。またデバイス21内には圧電素子を駆動する電気信号が伝達される。またビーコン信号生成部27は、ビーコン制御部26から送信された送信波形を増幅する増幅器(Amplifier)を含む。増幅された送信波形(電気信号)は、デバイス21により伝送され、ビーコン信号発信部21bに供給される。ビーコン信号発信部21bは、送信波形を超音波24に変換して出射する。
【0021】
一方、ビーコン信号発信部21bから発せられる超音波24の発生原理が光音響変換素子を用いた超音波発信の場合、ビーコン信号発信部21bとしては、一般的にインク・色素など光吸収作用を有する材料を固化した光音響変換素子などを用いる。光音響変換素子はこれに限らず、光の入力をうけて音響放射を行う光音響作用を有するいかなる材質であってもよい。デバイス21内には、光ファイバケーブルが具備され、光信号が伝達される。また、ビーコン信号生成部27は、ビーコン制御部26から送信された送信制御信号をレーザなどの光信号に変換するレーザ発信機・増幅器(Amplifier)を一般に含む。ビーコン信号生成部27により、増幅され、光信号に変換された送信波形は、デバイス21内の光ファイバケーブルにより伝送され、ビーコン信号発信部21bの光音響変換素子によって、音響信号(超音波24)に変換されて出射される。
【0022】
送信部11は、送信信号を生成し、送受分離部16を介して超音波探触子22の各超音波素子に対して出力する。これにより、超音波探触子22の超音波素子は、送信信号を超音波23に変換して被検体20に送信する。
【0023】
超音波を送信された被検体20からのエコー、または、被検体20に挿入されたビーコン21aから出射された超音波24は、超音波探触子22の複数の超音波素子によって受信される。受信部12は、複数の超音波素子が出力する受信信号を送受分離部16を介して受け取って処理する。
【0024】
具体的には、受信部12内の受信ビームフォーマ13は、各超音波素子がそれぞれ出力する受信信号をそれぞれ所定の遅延量ずつ遅延させて加算することにより、予め定めた1以上の受信走査線25上に設定した複数の受信焦点に対して順次焦点を合わせる受信ビームフォーミングを行う。これにより、受信ビームフォーマ13は、受信走査線25に沿った高周波信号(以下、RF信号と呼ぶ)13aを生成する。
【0025】
受信ビームフォーマ13は、被検体20について1画像を生成するために必要な数の受信走査線25についてRF信号13aを生成するまで受信ビームフォーミングを繰り返す。生成されたRF信号13aは、画像生成部14内のメモリ(不図示)に順次格納される。このとき、制御部17は、必要に応じて送信部11から超音波23の送信を複数回繰り返すように制御する。また、制御部17は、送信部20が送信信号の送信を行っている間、ビーコン21a中のビーコン信号発信部21bが超音波24を送信・発信しないようにビーコン制御部26を制御する。これにより、超音波探触子22から超音波23を送信してそのエコーを受信した受信信号から、受信ビームフォーマ13はRF信号13aを生成することができる。
【0026】
また、制御部17は、超音波探触子22による超音波23の送信を停止させるように送信部11を制御し、その状態でビーコン21aから超音波24を送信するようにビーコン制御部26を制御する。これにより、受信ビームフォーマ13は、ビーコン21aの画像を生成するために必要なRF信号13aを生成する。
【0027】
画像生成部14は、複数の受信走査線25について得たRF信号13aに所定の処理を施した後、並べることにより超音波画像を生成する。画像生成部14は、被検体画像生成部141とビーコン画像生成部142とを備え、2種類の画像を生成することが可能である。被検体画像生成部141は、ビーコン21aからの送信を停止させ、超音波探触子22から超音波23を送信してそのエコーを受信した受信信号のRF信号13aから、被検体20の画像(被検体画像と呼ぶ)を生成する。ビーコン画像生成部142は、超音波探触子22から超音波23の送信を停止させ、ビーコン21aから超音波24を送信して得た受信信号からビーコン画像を生成する。
【0028】
画像合成部18は、被検体20の画像と、ビーコン画像とを重畳する等した合成画像を生成し、接続されている表示装置19に表示させる。なお、画像合成部18は、必ずしも合成画像を生成しなければならないものではなく、いずれか一方のみを表示させたり、2つの画像を並べて表示させることももちろん可能である。
【0029】
SNR強調信号生成部15は、コヒーレンス値算出部151と、重み付け部152と、SNR強調信号処理部153とを備え、ビーコン21aの超音波24の受信信号から得たRF信号のSNRを強調した信号を生成する。
【0030】
すなわち、SNR強調信号生成部15のコヒーレンス値算出部151は、超音波探触子22からの超音波23の送信を停止した状態で、ビーコン21aから出射された超音波24を超音波探触子22が受信した受信信号から生成された各受信走査線25についてRF信号13a間で、コヒーレンス値を算出する。例えば、隣接する受信走査線25のRF信号13間でコヒーレンス値を算出する。コヒーレンス値としては、下記式(1)により算出されるコヒーレンスファクタを用いることができる。
【0031】
【数1】
ただし、式(1)において、kは、ビームフォーミングによってRF信号13aを生成するときに使用する超音波素子のチャンネル番号を、s(k)は、k番目の受信チャンネルで取得された受信信号(遅延処理後)を表す。pは、コヒーレンスファクタの効果を調整する調整係数である。Kは、ビームフォーミングに使用するチャンネル数の総数である。
【0032】
なお、コヒーレンス値は、RF信号13a間のコヒーレンスファクタに限られるものではなく、相互相関関数や類似度や相関係数(ピアソンの積率相関係数、順位相関係数)であってもよい。
【0033】
重み付け部152は、コヒーレンス値算出部151が算出したコヒーレンス値、または、コヒーレンス値に応じた値を重みとして、RF信号を重み付けすることにより、SNR強調信号を生成する。
【0034】
このようにして生成されるSNR強調信号は、受信走査線のRF信号間の位相がそろっており、かつ、RF信号の信号強度が大きい位置において、信号値が大きくなる。
【0035】
一般に、生体内に挿入されるビーコン21aに供給可能な電力には、生体内に挿入可能な信号線太さの上限や生体の安全性確保等の理由により制限があり、また、ビーコン21aから発せられた超音波24が、生体組織による散乱等されるため、超音波探触子22に到達する超音波24の強度が小さくなり、超音波探触子22において十分な強度の受信信号が得られないことがある。このため、ビーコン21aの超音波24のRF信号から、ビーコン21aの位置を特定することが困難であったり、ビーコン21aの超音波画像にグレーティングローブやサイドローブ等の偽像が発生することがある。
【0036】
SNR強調信号処理部153は、SNR強調信号を処理することにより、ビーコン21aの位置や、ビーコン21aの存在の確からしさを示す情報を生成することが可能である。具体的には、SNR強調信号を使って画像(SNR強調画像)を生成することが可能である。また、ビーコン21aの存在にかかわる属性(ビーコン21aが存在する/しない、存在の確からしさを示す値、存在する位置、ビーコン21aの超音波強度、ビーコン画像内のビーコン像が偽像(グレーティングローブ、サイドローブ)かどうかを示す情報(例えば偽像を0、偽像でなければ1))を生成することが可能である。
【0037】
また、SNR強調信号処理部153は、SNR強調画像や、ビーコン21aの存在にかかわる属性を示す情報を使って、ビーコン画像を画像処理して、偽像を消去し、真のビーコン像だけを残すことも可能である。また、ビーコン画像に、SNR強調画像を重ねて表示することも可能である。
【0038】
また、SNR強調信号処理部153は、ビーコン強調画像や、ビーコン21の存在にかかわる属性を示す情報に基づいて、送信部11および/または受信ビームフォーマ13をフィードバック制御することも可能である。例えば、SNR強調信号処理部153は、被検体20に送信される超音波を変化させるよう送信部11をフィードバック制御したり、受信ビームフォーマ13がRF信号を生成する範囲を変化させるフィードバック制御を行うことも可能である。
【0039】
これらにより、本実施形態では、ビーコン21aの存在の確からしさや位置を精度よく把握することができる。
【0040】
<超音波撮像装置の動作>
実施形態の超音波撮像装置1の動作の概要について、
図2のフローを用いて説明する。
【0041】
(ステップ201)
制御部17は、ビーコン制御部26を制御してビーコン21aの送信を停止させる。また、制御部17は、送信部11を制御し、超音波探触子22から被検体22に超音波23を送信させる(ステップ201)。
【0042】
(ステップ202)
超音波探触子22は、被検体22からのエコーを受信する。受信ビームフォーマ13は、超音波探触子22から受信信号を受け取って受信ビームフォーミングを行い、1以上の受信走査線についてRF信号を生成する。画像生成部14は、生成したRF信号を内蔵するメモリに格納する。
【0043】
(ステップ203)
上記ステップ201、202を送信回数は、予め定めたN回に到達するまで繰り返す。これにより、1枚の被検体画像を生成するのに必要な数のRF信号が得られる。
【0044】
(ステップ204)
制御部17は、送信部11を制御し、超音波探触子22からの送信を停止させる。制御部17は、ビーコン制御部26を制御し、ビーコン21aから超音波24を送信させる。
【0045】
(ステップ205)
超音波探触子22は、被検体22からのエコーを受信する。受信ビームフォーマ13は、超音波探触子22から受信信号を受け取って受信ビームフォーミングを行い、1以上の受信走査線についてRF信号を生成する。この1回の受信で生成するRF信号の数は、1枚のビーコン画像を生成するのに必要な数であってもよいし、その一部だけであってもよい。画像生成部14は、生成したRF信号を内蔵するメモリに格納する。一般に、ビーコンからの信号は球面状に拡散する伝搬プロセスで伝わるため一回の受信で1枚のビーコン画像を取得可能であるが、分解能を向上させるために、1回の受信で撮像するビーコン画像領域を小さくし、複数回のRF信号と合わせることで1枚のビーコン画像を生成してもよい。この場合メモリに蓄えられた複数回の受信で生成されたRF信号は以下のステップ209で合成して1枚のビーコン画像を生成する。
【0046】
(ステップ206)
コヒーレンス値算出部151は、ステップ205で得たRF信号間のコヒーレンス値を算出する。
【0047】
(ステップ207)
重み付け部152は、ステップ206で算出されたコヒーレンス値を重みとして、もしくは、コヒーレンス値に応じた重みを予め定めた数式等に基づいて算出して、ステップ205で生成されたRF信号を重み付けする。これにより、SNR強調信号を生成する。
【0048】
(ステップ208)
画像生成部14の被検体画像生成部141は、ステップ202で得たRF信号から被検体画像を生成する。
【0049】
(ステップ209)
画像生成部14のビーコン画像生成部142は、ステップ205で得たRF信号からビーコン画像を生成する。
【0050】
(ステップ210)
SNR強調信号処理部153は、SNR強調信号に基づいてビーコン画像を加工して偽像を低減させる等するか、または、SNR強調信号に基づき、送信部11および受信ビームフォーマ13をフィードバック制御して超音波送受信範囲を変更する等する。
【0051】
(ステップ211)
画像合成部18は、被検体画像とビーコン画像を必要に応じて合成して表示装置19に表示させる。
【0052】
これにより、表示装置19には、被検体画像とビーコン画像が例えば重畳されて
図3のように表示される。術者は、被検体画像によって被検体20の血管20bや臓器等の形状や位置を把握でき、かつ、ビーコン21aの像によりカテーテル等のデバイス21の先端位置を確認できるため、デバイス21の所望の経路に沿って、位置まで挿入していくことができる。
【0053】
このとき、本実施系形態では、SNR強調信号に基づいて、ビーコン21aの偽像を取り除いたり、その位置を強調して表示する等することができるため、術者は、デバイスの先端位置を精度よく把握することができる。
【0054】
また、SNR強調信号処理部153が超音波の送信範囲や受信範囲等の送受信条件を制御することにより、フレームレートを増加させたり、被検体画像の視野外にビーコン21aが存在する場合にその位置を把握する等が可能になる。
【0055】
なお、SNR強調信号生成部15は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサーと、メモリとを備えたコンピュータ等によって構成され、CPUが、メモリに格納されたプログラムを読み込んで実行することにより、コヒーレンス値算出部151、重み付け部152およびSNR強調信号処理部153の機能をソフトウエアにより実現する。なおコヒーレンス値算出部151、重み付け部152およびSNR強調信号処理部153の一部または全部をハードウエアによって実現することも可能である。例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)のようなカスタムICや、FPGA(Field-Programmable Gate Array)のようなプログラマブルICを用いて信号処理部7を構成し、信号処理部7の各部の機能を実現するように回路設計を行えばよい。
【0056】
<SNR強調信号処理部153の処理例>
以下、SNR強調信号処理部153の処理例を具体的に説明する。ここでは、SNR強調信号処理部153は、重み付け部19が生成したSNR強調信号を用いて、ビーコン21aが強調された画像(SNR強調画像)を生成する。
【0057】
具体的には、SNR強調信号処理部153は、
図4に示すように、SNR強調画像生成部154と、SNR強調画像を用いて、ビーコン画像生成部142が生成したビーコン画像を加工するビーコン画像処理部155とを備えている。
【0058】
SNR強調画像生成部154と、ビーコン画像処理部155の動作を
図5のフローを用いて説明する。
図5のフローは、
図2のフローのステップ210を具体的に説明したものである。
【0059】
なお、ここでは重み付け部152は、
図2のステップ207において、画像生成に必要な数の受信走査線25のRF信号をそれぞれ重み付けし、SNR強調信号を生成しているものとする。
【0060】
(ステップ221)
図5のステップ221においてSNR強調画像生成部154は、重み付け部152から受け取った各受信走査線25のSNR強調信号を並べ、SNR強調画像を生成する(
図6(b)参照)。SNR強調信号は、RF信号間の位相がそろった位置であって、かつ、RF信号の信号値が大きい位置において信号値が大きくなる。よって、SNR強調信号は、ビーコン21aの位置で信号値が大きく、生成されるSNR強調画像(
図6(b))は、ビーコン画像(
図6(a))と比較して、ビーコン21の位置で画素値が強調される。したがって、SNR強調画像には、強調されたビーコン像55が表示される。
【0061】
(ステップ222、223)
ビーコン画像処理部155は、ビーコン画像(
図6(a))を、SNR強調画像(
図6(b))の画素値に基づいて画像処理する。具体的には、ビーコン画像処理部155は、SNR強調画像の画素値が、予め定めておいた閾値より小さい画素は、対応する位置のビーコンの画像の画素値を低減させる。
【0062】
(ステップ224)
この処理を、SNR強調画像のすべての画素について終了するまで繰り返す。
【0063】
以上により、ビーコン画像(
図6(a))に含まれるグレーティングローブやサイドローブ等の偽像51,52の画素値を低減し、ビーコン像50のみを残すことができる(
図6(c))。
【0064】
ビーコン画像処理部155は、処理後のビーコン画像を画像合成部18に受け渡す。
【0065】
図2のステップ211に進み、画像合成部18は、処理後のビーコン画像を被検体画像と重畳して表示装置19に表示させる(
図6(d))。
【0066】
処理後のビーコン画像は、偽像の画素値が低減されているため、術者は、被検体内におけるビーコン21aの位置を容易に把握でき、ビーコン21aが取り付けられたデバイス21を進行させるべき方向を被検体の構造に応じて決定することができる。
【0067】
上記説明では、画素単位で処理を行っているが、領域単位で上記処理を行ってもよい。例えば、ビーコン画像(
図6(a))に信号値(画素値)の大きい3つの領域50,51,52がある場合、ビーコン画像処理部155は、SNR強調画像(
図6(b))の画素値が予め定めた閾値より大きいビーコン像55に対応する位置にある領域50のみ残し、他の領域51,52の画素値を低減させることも可能である(
図6(c))。その場合、
図6のステップ222において、ビーコン画像処理部155は、ビーコン画像を二値化、多値化のうえで、単純閾値法やPタイル法、連結領域のラベリング処理等をすることにより、信号値(画素値)の大きい3つの領域50,51,52を抽出した後、ステップ223において、SNR強調画像(
図6(b))の画素値が予め定めた閾値より小さい画素に対応する画素が含まれる領域51、52の画素値を低減させる画像処理を行う。これにより、ビーコン像55に対応する位置にある領域50のみ残し、偽像である領域51,52の画素値を低減させることができる(
図6(c))。
【0068】
<<実施形態2>>
実施形態2の超音波撮像装置について
図7、
図8を用いて説明する。
【0069】
実施形態2の超音波撮像装置は、実施形態1の装置と同様の構成であるが、ビーコン画像処理部154は、ビーコンの画像と、SNR強調画像とを重畳した画像を生成し、表示装置19に表示させる構成である点が実施形態1とは異なっている。
【0070】
ビーコン画像処理部155の動作を
図7のフローを用いて説明する。
図7のフローは、
図2のフローのステップ210を具体的に説明したものである。
【0071】
(ステップ271)
図7のステップ271においてSNR強調画像生成部154は、
図5のステップ221と同様にSNR強調信号からSNR強調画像を生成する(
図8(b)参照)。
【0072】
(ステップ272)
ビーコン画像処理部155は、ビーコン画像生成部142からビーコン画像(
図8(a))を取り込み、SNR強調画像(
図8(b))と重畳し、合成ビーコン画像を生成する。ビーコン画像処理部155は、この合成ビーコン画像を表示装置19に表示させる。
【0073】
また、
図2のステップ211に進み、画像合成部18は、合成ビーコン画像を被検体画像とさらに重畳して表示装置19に表示させる(
図8(d))。
【0074】
この合成ビーコン画像は、
図8(c)に示すように、SNR強調画像の強調されたビーコン像55が、ビーコン画像(
図8(a))に重畳される。よって、合成画像を見た術者は、ビーコン像55が重畳されたビーコン画像の領域50がビーコン21aが存在する確率が高い領域であり、領域51,52は偽像である確率が高いことを認識することができる。
【0075】
また、被検体画像とさらに重畳された合成ビーコン画像を術者が見ることにより、被検体内におけるビーコン21aの存在する確率が高い領域を容易に把握でき、ビーコン21aが取り付けられたデバイス21を進行させるべき方向を被検体の構造に応じて決定することができる。
【0076】
なお、ビーコン画像処理部155は、ビーコンの画像と異なる色にビーコン強調画像を着色してから、両者を重畳してもよい。これよりビーコン21aの存在する位置を術者はより把握しやすくなる。
【0077】
<実施形態3>
実施形態3の超音波撮像装置について
図9~
図11を用いて説明する。
【0078】
実施形態3の超音波撮像装置は、実施形態1の装置と同様の構成であるが、SNR強調信号処理部は、SNR強調信号が最も大きかった座標を、ビーコン21aの位置情報として算出し、この座標を示すマーク等を、ビーコン画像上に表示する。
【0079】
具体的には、SNR強調信号処理部153は、ビーコン位置座標算出部156と、ビーコンマーク表示部157とを備えている。
【0080】
SNR強調信号処理部153の動作を
図10のフローを用いて説明する。
図10のフローは、
図2のフローのステップ210を具体的に説明したものである。
【0081】
(ステップ281)
図10のステップ281においてSNR強調画像生成部154のビーコン位置座標算出部156は、SNR強調信号の信号値が最も大きい位置を検出し、その位置に対応するビーコン画像の座標をビーコン位置として算出する。なお、SNR強調信号からSNR強調画像を生成し、SNR強調画像上において最も信号値(画素値)が大きい座標をビーコン位置として求めてもよい。
【0082】
(ステップ282)
ビーコンマーク表示部157は、ステップ209で生成したビーコン画像(
図11(a))上の、ビーコン位置の座標に、予めを定めておいたマーク(ここでは星形)58を配置し、表示装置19に表示させる。
【0083】
また、
図2のステップ211に進み、画像合成部18は、マーク58が配置されたビーコン画像(
図11(b))を被検体画像とさらに重畳して表示装置19に表示させる。
【0084】
このように実施形態3では、SNR強調信号の信号値が最大になる位置がビーコン21aであるとして、その座標を算出してマーク58により表示することができる(
図11(b))。よって、表示装置19のビーコン画像を見た術者は、マーク58の位置の領域50がビーコン21aの存在位置であると認識することができる。
【0085】
なお、実施形態3では、ビーコン21aの座標をマーク58により表示したが、座標を数値として表示することも可能である。
【0086】
<実施形態4>
実施形態4の超音波撮像装置について
図12~
図16を用いて説明する。
【0087】
実施形態4の超音波撮像装置は、実施形態1の装置と同様の構成であるが、SNR強調信号処理部は、ビーコン21aの位置等の情報に基づいて、被検体20に送信される超音波を変化させるよう送信部11を変化させるか、または受信ビームフォーマ13が高周波信号を生成する範囲を変化させるフィードバック制御を行う。
【0088】
具体的には、
図12に示すように、ビーコン位置座標算出部156と、視野設定部158と、送信/受信範囲設定部159とを備えている。
【0089】
SNR強調信号処理部153の動作を
図13のフローを用いて説明する。
図13のフローは、
図2のフローのステップ210を具体的に説明したものである。
【0090】
(ステップ291)
ビーコン位置座標算出部156は、実施形態3と同様にSNR強調信号の信号値が最も大きい位置を検出し、ビーコン位置59を算出する(
図14(a))。
【0091】
(ステップ292)
視野設定部158は、算出したビーコン位置59を中心に予め定めた範囲を視野141として設定する(
図14(b))。
【0092】
(ステップ293)
送信/受信範囲設定部159は、送信部11に対してステップ201で送信する超音波の送信のスキャン範囲(送信範囲)を、視野141の範囲に設定する(
図14(c))。超音波の送信のスキャン範囲を視野141の範囲に狭めるため、送信に要する時間を短縮できる。
【0093】
(ステップ294)
送信/受信範囲設定部159は、受信ビームフォーマ13に対してステップ202で受信ビームフォーミングする深度範囲を、視野141の範囲に設定する。すなわち、視野141内の受信走査線25であって、かつ、視野141内の受信走査線25の範囲を受信ビームフォーミング範囲として設定する(
図14(d))。また、視野141よりも深い範囲の受信走査線25については、受信ビームフォーミングを行わないため、被検体20の深い位置からの超音波が超音波探触子22に到達するのを待つ必要がなく、受信ビームフォーミングに掛かる時間を短縮できる。
【0094】
これにより、ステップ211のあとステップ201,202に戻った際に、上記ステップ293,294で設定した送信範囲と受信ビームフォーミング範囲について送信および受信ビームフォーミングを行う。よって、ステップ208、209で生成される被検体画像およびビーコン画像は、視野141の範囲のみとなる(
図14(e))が、視野141はビーコン21aの位置を中心に設定されているため、狭めた視野141であっても、術者はビーコン21aの被検体20内における位置を把握することができる。しかも、ステップ201,202で送信および受信ビームフォーミングに要する時間が短縮されるため、被検体画像およびビーコン画像のフレームレートを向上させることができ、画質が向上する。よって、術者は、被検体画像から被検体20の血管等の構造を正確に把握してビーコン21aが取り付けられたデバイスを挿入することができる。
【0095】
なお、ステップ291において検出されたビーコン21aの位置59が、
図15(a)に示したように、送信部11が送信させる超音波23の送信範囲から外れている場合には、ステップ292において、ビーコン21aの外れている方向に近い範囲のみに狭めた視野141を設定してもよい。ステップ293、294では、設定した視野の範囲に送信のスキャン範囲および受信ビームフォーミングの範囲を設定する(
図15(b)~(d))。
【0096】
これにより、ビーコン21aに近い視野について、フレームレートの向上した画質に優れた被検体画像を表示することができる(
図15(e))。よって、術者は、ビーコン21aの進行方向にある被検体の構造を把握して、ビーコン21aが取り付けられたデバイス21を挿入することができる。
【0097】
また、ビーコン21aの位置59が、送信部11が送信させる超音波23の送信範囲から外れている場合(ステップ16(a))には、ステップ292において、ビーコンの位置が含まれるよう視野141を設定し、送信範囲をずらすことも可能である(
図16(b)~(d))。すなわち、ステップ293、294では、設定した視野141の範囲に送信のスキャン範囲および受信ビームフォーミングの範囲を設定する。
【0098】
これにより、ビーコン21aが通常、送信部11が送信させる超音波23の送信範囲から外れている場合であっても、送信範囲をずらして、被検体画像およびビーコン画像を生成できる。。よって、術者は、ビーコン21aの進行方向にある被検体の構造を把握して、ビーコン21aが取り付けられたデバイス21を挿入することができる。
【0099】
<実施形態5>
実施形態5の超音波撮像装置について説明する。
【0100】
実施形態5の超音波撮像装置は、実施形態1の装置と同様の構成であるが、
図17に示すように、SNR強調信号生成部15は、受信ビームフォーマ13が処理する前の受信信号間のコヒーレンス値を求めて、SNR強調信号を生成する構成である点が実施形態1とは異なっている。
【0101】
具体的には、重み付け部152は、受信信号ごと重みを乗算する乗算部152aと、複数の受信信号を束ねる加算部152bとを有する。
【0102】
コヒーレンス値算出部151は、複数の超音波素子からそれぞれ受け取った受信信号間のコヒーレンス値を求め、コヒーレンス値に応じた受信信号ごとの重み(w1~wk)を求める。乗算部152aは、重み(w1~wk)を各受信信号に乗算して重み付けする。加算部は、重み付け後の受信信号を加算して束ねる。これにより、SNR強調信号が得られる。
【0103】
実施形態5においては、コヒーレンス値に応じて受信信号を重み付けすることにより、受信信号間で位相がそろっている受信信号の信号値を大きく、位相がそろっていない受信信号の信号値が小さくなるため、SNR強調信号を生成することができる。
【0104】
コヒーレンス値算出部151が受信信号ごとに重み(w1~wk)を求める処理について以下説明する。
【0105】
コヒーレンス値算出部151への入力は、ビームフォーミングによってRF信号13aを生成するときに使用する超音波素子のk個のチャンネルで受信され、遅延処理を施された受信信号s1~skである。コヒーレンス値算出部151は、共分散行列R(t)を以下の式(2)を用いて作成する。なおtは受信時刻であるが、tの代わりに、撮像深度dもしくはサンプル点jの関数であってもよい。なお、式(2)において*は、共役複素数を表す。ただし、式(2)において、siは、i番目の送信で得た受信信号を表す。また、E[ ]は期待値を表す。
【0106】
【0107】
共分散行列を用いて、たとえばMVDR法による適応重みベクトルw(t)は、以下の式(3)から計算できる。pは、適応処理パラメータマップ(p)の値である。通常の適応重みベクトルw(t)には指数p=1である。
【0108】
【0109】
また、数値不安定性を排除するために相関行列(共分散行列R(t))に加える対角行列の大きさを式(4)のように変化させる。pは、適応処理パラメータマップ(p)の値である。式(4)の右辺第2項は、適応処理に数値安定性を付加するための対角行列Iである。第2項の大きさは、行列のサイズにも依存する。すなわち、加算数Kの違いによってIにかかる係数を変化させる必要がある。よって式(4)のようにパラメータマップ(p)の値によって決定される関数α(p)を対角行列Iに乗算することによって、処理結果のばらつきを抑制することができる。α(p)のもっとも簡単な例としては、任意の定数βを乗算したα=βpの形があげられる。
【0110】
【0111】
式(3)において、aはステアリングベクトルであり,入力されるベクトル(s)の方向に対する傾きであり,各送信番号n(=1、2・・・N)の位相関係から,式(5)のように表される。
【0112】
【0113】
式(5)において、θは,位相周りが各送信番号間でゼロである場合をθ=0としたときの位相シフト量を表し,fは超音波の周波数である。一般的にθ=0として考えると,a= [1, 1, …, 1]と全ての要素が1のベクトルで表現することができ,このベクトルをステアリングベクトル方向とする。
【0114】
コヒーレンス値算出部151においては、以上のプロセスから,送信番号1~kに対応する適応重みベクトルw(t) = [w1,w2 … wk]を算出することができる。
【0115】
なお、適応重みの演算方法は、MVDR法に限られるものではなく、APES法,MUSIC法,ESMV法など各種重み生成プロセスを用いてw(t)を算出しても構わない。
【符号の説明】
【0116】
1 超音波撮像装置
11 送信部
12 受信部
13 受信ビームフォーマ
14 画像生成部
15 SNR強調信号生成部
16 送受分離部
17 制御部
18 画像生成部
20 被検体
20b 血管
21 デバイス
21a ビーコン
21b ビーコン信号発信部
22 超音波探触子
24 ビーコンの超音波
25 受信走査線
26 ビーコン制御部
27 ビーコン信号生成部
28 ビーコン制御・信号生成部
141 被検体画像生成部
142 ビーコン画像生成部
151 コヒーレンス値算出部
152 重み付け部
153 SNR強調信号処理部