(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】機器固定部材、機器固定部構造の施工方法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/41 20060101AFI20240618BHJP
E04F 15/12 20060101ALN20240618BHJP
【FI】
E04B1/41 502N
E04F15/12 Z
(21)【出願番号】P 2020094247
(22)【出願日】2020-05-29
【審査請求日】2023-04-10
(73)【特許権者】
【識別番号】323005120
【氏名又は名称】センクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】弓削 貴史
(72)【発明者】
【氏名】小林 佑太
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-105560(JP,A)
【文献】特開2019-028780(JP,A)
【文献】実公昭46-008070(JP,Y1)
【文献】特開平04-108901(JP,A)
【文献】特開2017-172239(JP,A)
【文献】特開2008-206755(JP,A)
【文献】特開平05-280202(JP,A)
【文献】特開2001-279681(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/41
E04F 15/00-15/22
E02D 27/00
G06F 1/16
A47B 53/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器を固定するための機器固定部材であって、
機器を固定可能なレール部材と、
前記レール部材の下方に配置されるアンカーボルトと、
前記アンカーボルトが挿通される孔を有する金具と、
前記アンカーボルトに螺合する
とともに、前記アンカーボルトが前記孔に挿通された状態において、前記金具における上方側に配置されるナットと、
を具備し、
前記ナットによって、
前記アンカーボルトの高さを変えて、前記レール部材の高さ調整が可能であることを特徴とする機器固定部材。
【請求項2】
前記レール部材は、支持部材に接合され、前記アンカーボルトは、前記支持部材の下方に接合されることを特徴とする請求項1記載の機器固定部材。
【請求項3】
前記支持部材は、躯体に固定される固定部と、前記固定部の両側部に起立する壁部とを有し、前記レール部材は、前記固定部に固定され、前記壁部の上端と前記レール部材の上面とが略同一高さであることを特徴とする請求項2記載の機器固定部材。
【請求項4】
前記レール部材の幅方向の中心位置が把握可能な目印が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の機器固定部材。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の機器固定部材を用いた機器固定部構造の施工方法であって、
前記金具を設置場所に固定するとともに、前記孔に前記アンカーボルトを挿入する工程と、
前記ナットによって、前記レール部材の高さ調整を行う工程と、
前記金具に前記アンカーボルトを固定する工程と、
前記レール部材の周囲であって、前記アンカーボルトが埋設されるようにコンクリートを打設する工程と、
を具備することを特徴とする機器固定部構造の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電算機などの機器を床上に設置する際に用いられる機器固定部材及び機器固定部構造の施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電算機などの機器類は、ほこりや振動に弱く、また、発熱も多いことから、空調の効いた電算機室やクリーンルームなどに集約して設置される場合がある。この際、それぞれの機器は、地震時などの際に転倒しないように、床等に確実に固定される必要がある。
【0003】
このような機器用の部屋は、多くの配線や空調を行うため、スラブ床から所定の高さに設置されたフリーアクセスフロアが用いられるのが一般的である。フリーアクセスフロアを構成するフロアパネルは、スラブ床に固定された支持体の上に配置され、フロアパネル下には空間が形成される。このフロアパネル下は、配線等を配置したり空気を流したりするために用いられる。
【0004】
このようなフリーアクセスフロアにおいて、機器類を固定する方法が各種提案されている(例えば特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭54-80619号公報
【文献】特開2005-42411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、配線などは、壁や天井に沿って配設することが可能な場合もある。このような場合には、従来のようなフリーアクセスフロア上への機器類の設置ではなく、より低床での機器の設置方法が要求される。
【0007】
しかし、機器を直接スラブ床に固定する方法では、機器を搬入して設置してから固定用のアンカーの打設などの作業を行う必要がある。前述したように、機器は振動や埃に弱いため、機器を搬入した後には、スラブ床へのアンカーの打設等の作業を行うのは望ましくない。
【0008】
また、事前にアンカー位置を測定して、アンカーの設置を行った後に機器を搬入できたとしても、その後、一部の機器のみを入れ替える際には、新たな機器のサイズに応じてアンカーを再度打設する必要がある。このため、他の機器への影響が懸念される。
【0009】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、スペース効率良く機器を設置することが可能な機器固定部構造及び機器固定部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述した目的を達成するため、第1の発明は、機器を固定可能な機器固定部材であって、機器を固定可能なレール部材と、前記レール部材の下方に配置されるアンカーボルトと、前記アンカーボルトが挿通される孔を有する金具と、前記アンカーボルトに螺合するとともに、前記アンカーボルトが前記孔に挿通された状態において、前記金具における上方側に配置されるナットと、を具備し、前記ナットによって、前記アンカーボルトの高さを変えて、前記レール部材の高さ調整が可能であることを特徴とする機器固定部材である。
【0011】
前記レール部材は、支持部材に接合され、前記アンカーボルトは、前記支持部材の下方に接合されてもよい。
【0012】
前記支持部材は、躯体に固定される固定部と、前記固定部の両側部に起立する壁部とを有し、前記レール部材は、前記固定部に固定され、前記壁部の上端と前記レール部材の上面とが略同一高さであってもよい。
【0013】
前記レール部材の幅方向の中心位置が把握可能な目印が形成されてもよい。
【0014】
第1の発明によれば、機器を固定可能なレール部材が床に直接固定されるので、低い位置に機器を設置することができる。さらに、機器を固定可能なレール部材を用いるので、機器のサイズに応じて、固定位置を容易に変更することができる。
【0015】
特に、レール部材の下方にアンカーボルトが配置されるため、レール部材を配置した状態でコンクリートを打設することにより、容易に躯体にレール部材を固定することができる。この際、アンカーボルトに螺合するナットの位置によって、レール部材の高さ調整が可能であるため、レール部材の設置の際の高さ調整が容易である。
【0016】
また、レール部材の下方に支持部材が接合されれば、レール部材に直接アンカーボルトを固定する必要がないため、製造が容易である。
【0017】
また、支持部材の両側部に起立する壁部の上面が、レール部材の上面と略同一高さに形成されることで、コンクリートをレール部材の上面まで打設することができる。この際、コンクリートの縁部の割れ等を抑制することができる。
【0018】
また、レール部材の幅方向の中心位置が把握可能な目印が形成されれば、レール部材の設置の際の位置合わせが容易である。
【0019】
第2の発明は、第1の発明にかかる機器固定部材を用いた機器固定部構造の施工方法であって、前記金具を設置場所に固定する工程と、前記孔に前記アンカーボルトを挿入する工程と、前記ナットによって、前記レール部材の高さ調整を行う工程と、前記金具に前記アンカーボルトを固定する工程と、前記レール部材の周囲であって、前記アンカーボルトが埋設されるようにコンクリートを打設する工程と、を具備することを特徴とする機器固定部構造の施工方法である。
【0020】
第2の発明によれば、レール部材の高さ調整が容易であるため、機器固定部構造を容易に施工することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、スペース効率良く機器を設置することが可能な機器固定部構造及び機器固定部材を提供することを目的とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図2】(a)は、機器固定部材10の平面拡大図、(b)は(a)のA-A線断面図。
【
図3】機器固定部材10の使用方法を示す分解斜視図。
【
図4】(a)、(b)、(c)は、機器固定部材10の設置方法を示す図。
【
図5】(a)、(b)は、機器固定部材10の設置方法を示す図。
【
図6】(a)、(b)は、機器固定部材10aの設置方法を示す図。
【
図7】(a)は、
図6(b)のC-C線断面図、(b)は、
図6(b)のD-D線断面図。
【
図8】(a)、(b)は、機器固定部材10aの設置方法を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第1の実施形態)
以下、図面に基づいて本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態にかかる機器固定部構造1を示す平面図であり、
図2(a)は、機器固定部材10の拡大平面図である。また、
図2(b)は、
図2(a)のA-A線断面図である。
【0024】
機器固定部構造1は、例えばスラブ床などの床9上に機器固定部材10が設置されて形成される。機器固定部材10は、主にレール部材3、アンカーボルト7、ナット8等から構成される。機器固定部材10を構成するレール部材3の上方には、図示しない機器を設置して固定することができる。すなわち、機器固定部材10によって機器を床9に固定することができる。なお、以下の実施形態において機器固定部材10が床9に固定される例を示すが、壁や天井など、床以外の他のコンクリート製の躯体の一部であってもよい。
【0025】
また、図示した例では、機器固定部構造1において、機器固定部材10が互いに平行に2列に配置される例を示すが、3列以上であってもよい。また、各列において3本の機器固定部材10が一列に並ぶように配置されるが、1本であってもよく、複数本であってもよい。また、機器固定部材10は互いに平行な方向のみに配置するのではなく、直交する方向にさらに機器固定部材10を配置してもよい。このように、機器固定部材10の配置は、固定される機器の寸法等に応じて適宜決定される。
【0026】
図2(b)に示すように、長手方向に垂直な断面において、レール部材3は、上方に突出する一対の側部4cと、側部4cの上端部において、互いに対向する方向に屈曲する係止爪4aと、側部4cの下端側に形成され、一対の側部4cを連結する底部4bとを有する。
【0027】
また、レール部材3の底部4bの下方には、レール部材3の長手方向に対して所定の間隔でアンカーボルト7が配置される。アンカーボルト7とレール部材3は、例えば溶接等で接合される。アンカーボルト7にはナット8が螺合する。すなわち、ナット8は、アンカーボルト7の軸方向に移動可能である。
【0028】
レール部材3の両端部には、マーク13が形成されている。マーク13は、例えば底部4bの幅方向の略中心に形成された切欠きである。マーク13は、レール部材3の幅方向の中心位置を把握可能な目印として機能する。なお、マーク13は、切欠きでなくてもよく、レール部材3の幅方向の中心位置が把握可能であれば、けがき線や着色などいずれの形態であってもよい。
【0029】
次に、機器固定部材10の使用方法について説明する。
図3は、機器固定部材10の使用方法の一例を示す図である。図示した例では、機器固定部材10を固定するための固定金具15が用いられる。
【0030】
固定金具15は、例えば板状部材を屈曲して形成される。固定金具15の両端部には、デッキプレート等に固定される固定部16aが形成され、固定部16aの間において、固定部16aよりも上方に突出する固定部16bを有する。固定部16bは、機器固定部材10が固定される部位であり、孔19が形成される。孔19の内径は、アンカーボルト7の外径よりも大きく、ナット8の外径よりも小さい。なお、固定金具15の形状は特に限定されないが、それぞれ少なくとも1つの固定部16a、16bを有すればいずれの形態でも良い。
【0031】
次に、機器固定部材10と固定金具15を用いた機器固定部構造の施工方法について説明する。まず、
図4(a)に示すように、孔19(
図3参照)を有する固定金具15を設置場所に固定する。図示した例では、固定金具15は、デッキプレート23上に固定される。デッキプレート23は、その上方にコンクリートが打設されて、コンクリート床スラブの型枠と構造体とを兼ねる部材である。このため、デッキプレート23上には、鉄筋21が設置される。固定金具15及び機器固定部材10は、鉄筋21を避ける位置に配置される。
【0032】
次に、固定金具15の上方から、固定部16bに形成された孔19(
図3参照)に機器固定部材10のアンカーボルト7を挿通させる。前述したように、アンカーボルト7には、ナット8が螺合する。このため、アンカーボルト7は、ナット8の位置まで固定部16bに挿通される。したがって、アンカーボルト7の長手方向に対するナット8の位置を変えることで、アンカーボルト7の挿通長さを変えることができる。すなわち、ナット8によって、機器固定部材10(レール部材3)の高さを調整することが可能である。
【0033】
なお、前述したように、レール部材3の両端部にはマーク13が形成される。このため、レール部材3は、マーク13を目安にして所定の位置に正確に配置される。したがって、固定金具15を固定する際には、レール部材3の幅方向の位置を確実に合わせ、このレール部材3に合わせるようにして、固定金具15の固定位置が設定される。
【0034】
なお、アンカーボルト7を挿通した状態の固定金具15を設置場所に固定してもよい。すなわち、本工程では、固定金具15の固定とアンカーボルト7の孔19への挿入とは、いずれが先でも良く、固定金具15を設置場所に固定するとともに、孔19にアンカーボルト7を挿入できればよい。なお。孔19とアンカーボルト7との間にクリアランスがあれば、固定金具15を設置した後に、レール部材3の位置の微調整が可能である。
【0035】
ナット8によって、レール部材3の高さ調整及び水平度等を調整した後、
図4(b)に示すように、アンカーボルト7の下端からナット8aを螺合させる。ナット8とナット8aにより固定金具15の固定部16bを挟み込むことで、機器固定部材10(アンカーボルト7)が固定金具15に固定される。すなわち、レール部材3の高さ及び位置を固定することができる。
【0036】
この状態から、
図4(c)に示すように、さらにアンカーボルト7の下端からナット8bを取り付ける。ナット8bは、コンクリートを打設した際に定着部として機能する。このため、定着に必要なアンカーボルト7の長さ(図中B)にナット8bが配置される。すなわち、ナット8bの上部から、レール部材3の下面までの長さが、定着長さとなる。
【0037】
次に、
図5(a)に示すように、レール部材3の周囲であって、アンカーボルト7等が埋設されるようにコンクリート17を打設する。この際、コンクリート17は、レール部材3の上面近傍まで打設される。このため、レール部材3のほとんどが、コンクリート17に埋設される。また、固定金具15とともに、鉄筋21もコンクリート17に埋設されて一体化する。以上により、床スラブに配置された機器固定部構造1を得ることができる。
【0038】
なお、コンクリート17を打設する際には、レール部材3の両端面には、端面全体を塞ぐようにシール部材(図示省略)が配置され、レール部材3の上面側にも必要に応じてカバー(図示省略)が配置される。このようにすることで、コンクリート17がレール部材3の内部に浸入することを防止することができる。
【0039】
なお、前述したように、ナット8の位置によって、レール部材3の高さは容易に調整可能であるため、例えば、
図5(b)に示すように、床面の高さが低い場合には、ナット8、8aの位置を変えることで、様々なコンクリート17の打設高さに対応可能である。なお、この場合にも、ナット8bは、レール部材3の下面までの長さが定着長さBとなる位置に配置される。
【0040】
前述したように、機器固定部構造1が施工された後、機器を搬入して、機器をレール部材3上に固定する。レール部材3への機器の固定は、ボルト等の固定部材で行うことができる。以上により、機器固定部構造1への機器の固定が完了する。
【0041】
以上、第1の実施形態によれば、従来のフリーアクセスフロアのように床上に空間を確保することがなく、床9と略同等の高さで機器を設置することができる。このため、低床で機器を設置することができる。
【0042】
また、機器を設置する際には、機器をレール部材3に対して固定部材によって固定することで、機器の設置の際に、その都度アンカー打設を行う必要がない。このため、機器の設置が容易であり、機器の設置の際に埃が発生することもない。また、機器を入れ替える際にも、レール部材3の設置範囲においては、異なる機器のサイズにも適用可能である。
【0043】
また、コンクリート17の打設高さに合わせて、レール部材3の高さ調整を容易に行うことが可能であるため、機器固定部材10の設置が容易である。また、レール部材3にマーク13が形成されているため、位置合わせも容易である。
【0044】
また、レール部材3の下面から所定の位置にナット8bを配置することで、アンカーボルト7を確実にコンクリート17に定着させることができる。このように、高さ調整用のナット8と、固定金具15への固定用のナット8aと、定着用のナット8bを用いることで、確実に機器固定部材10を所定の高さに設置して固定することができる。
【0045】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。
図6(a)、
図6(b)は、第2の実施形態にかかる機器固定部材10aの長手方向断面図であり、
図6(a)は分解図、
図6(b)は組立図である。また、
図7(a)は、
図6(b)のC-C線断面図、
図7(b)は、
図6(b)のD-D線断面図である。なお、以下の説明において、第1の実施形態と同様の機能を奏する構成については、
図1~
図5等と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0046】
機器固定部材10aは、主に、レール部材3、支持部材5、アンカーボルト7、ナット8等から構成される。レール部材3の下方には、複数のボルト11が長手方向に所定の間隔で配置される。なお、ボルト11は、例えばレール部材3の下面に溶接によって固定される。
【0047】
支持部材5は、レール部材3(床9)と固定される固定部6aと、固定部6aの両側部に起立する壁部6bを有する。すなわち、支持部材5は、略コの字状に形成され、レール部材3の底部4bと側部4cとを覆うように形成される。レール部材3は、固定部6aにボルト11で固定される。この際、側部4cの上端とレール部材3(係止爪4a)の上面とが略同一高さとなる。
【0048】
支持部材5の固定部6aには、長手方向に所定の間隔で孔18が形成される。
図7(a)に示すように、支持部材5をレール部材3と対向させた際に、支持部材5の孔18とレール部材3のボルト11とは互いに対応する位置に配置される。このため、レール部材3を支持部材5に組み合わせると、ボルト11は、孔18に挿入される。支持部材5の下方に突出するボルト11にナット12を固定することで、レール部材3と支持部材5とが接合されて固定される。
【0049】
なお、レール部材3と支持部材5との接合は、ボルト11及びナット12による方法には限られない。例えば、レール部材3と支持部材5とを、溶接や接着で接合してもよい。
【0050】
図7(b)に示すように、支持部材5の固定部6aの下方には、支持部材5の長手方向に対して所定の間隔でアンカーボルト7が配置される。アンカーボルト7と支持部材5は、例えば溶接等で接合される。アンカーボルト7にはナット8が螺合する。すなわち、ナット8は、アンカーボルト7の軸方向に移動可能である。なお、この場合には、アンカーボルト7が支持部材5の下面に固定されるため、アンカーボルト7は、レール部材3とは直接接合されていない。しかし、この場合でも、本発明では、アンカーボルト7が、レール部材3の下方に配置されているものとする。
【0051】
なお、支持部材5と床9とのアンカーボルト7による固定位置と、支持部材5とレール部材3とのボルト11による固定位置は、レール部材3の長手方向にずれて配置される。このため、ボルト11とアンカーボルト7とが干渉することがない。
【0052】
また、前述したように、レール部材3の上方には機器が固定される。ここで、機器に外力等が働いた際に、レール部材3には、部分的な引張力を受ける場合がある。この際、アンカーボルト7に対して、機器からの直接的な引張力が1点に集中すると、アンカーボルト7がコンクリートから抜けてしまう恐れがある。これは、アンカーボルト7周辺のコンクリートの破損によって、アンカーボルト7が抜けやすく、アンカーボルト7の床9への固定力が、金属同士のボルト接合と比較して弱いためである。
【0053】
これに対し、本実施形態では、例えばボルト11の直上に引張力がかかった場合であっても、ボルト11は、鋼材同士を確実に固定しているため、レール部材3と支持部材5との接合を維持することができる。一方、支持部材5に伝達された力は、両側のアンカーボルト7に分散されるため、アンカーボルト7に対しては、機器からの直接的な引張力が1点に集中することがない。
【0054】
同様に、仮にアンカーボルト7の直上に引張力がかかった場合であっても、まず、ボルト11によるレール部材3と支持部材5との接合部に引張力が分散し、さらに、支持部材5に伝達された力は、その両側のアンカーボルト7に分散される。このため、この場合でも、アンカーボルト7に対しては、機器からの直接的な引張力が1点に集中することがない。この結果、アンカーボルト7のコンクリートからの抜けを抑制することができる。
【0055】
次に、機器固定部材10aを用いた機器固定部構造の施工方法について説明する。機器固定部材10aは、固定金具15と共に前述した方法で設置することができるが、以下、他の方法について説明する。
【0056】
図8(a)に示すように、コンクリートの打設予定位置には、鉄筋21が配置される。まず、一部の鉄筋21に、金具固定鉄筋21aを固定する。金具固定鉄筋21aには、固定金具15aが溶接等により固定される。固定金具15aは板状の部材であり、固定金具15と同様に孔が形成されており、アンカーボルト7を挿通可能である。なお、固定金具15aを直接鉄筋21へ固定してもよい。
【0057】
次に、
図8(b)に示すように、固定金具15aに形成された孔に機器固定部材10aのアンカーボルト7を挿通させる。前述したように、ナット8によって、機器固定部材10a(レール部材3)の高さを調整が可能である。したがって、ナット8によって、レール部材3の高さ調整及び水平度等を調整することができる。
【0058】
次に、前述したように、ナット8aにより固定金具15aに固定する。機器固定部材10a(アンカーボルト7)をナット8aで固定金具15aに固定した状態で、
図9に示すように、レール部材3の周囲であって、アンカーボルト7等が埋設されるようにコンクリート17を打設する。この際、コンクリート17は、支持部材5の上面近傍まで打設される。このため、レール部材3が、コンクリート17に埋設される。また、固定金具15aとともに、鉄筋21等もコンクリート17に埋設されて一体化する。以上により、床スラブに配置された機器固定部構造1aを得ることができる。
【0059】
ここで、前述したように、機器固定部材10aの周囲にコンクリート17が打設する際、支持部材5の壁部6bの高さが、係止爪4aの上面の高さとほぼ一致するため、係止爪4aの高さまでコンクリート17を打設することができる。
【0060】
例えば、支持部材5を用いない場合には、レール部材3の上面までコンクリート17を打設すると、係止爪4aと側部4cとの境界部の角R部において、コンクリート17の厚みが薄くなり、ひび割れ等の要因となる。このため、この場合には、コンクリート17の打設高さを、わずかにレール部材3の高さよりも低くする必要がある。この結果、コンクリート17と機器固定部材10との間に小さな段差が生じる恐れがある。
【0061】
これに対し、
図9に示す機器固定部材10aの場合には、支持部材5の上端部ぎりぎりまでコンクリート17を打設しても、コンクリートの薄肉部が形成されない。このため、コンクリート17と機器固定部材10aとの間に段差が生じることを抑制することができる。
【0062】
第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、支持部材5を用いることで、レール部材3にかかる力が、直接アンカーボルト7へ伝わることを抑制することができる。また、支持部材5の上端部をレール部材3の上端部まで延ばすことで、コンクリート17と機器固定部材10aとの間に段差が生じることを抑制することができる。
【0063】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0064】
例えば、上記の各構成は、互いに組み合わせることができることは言うまでもない。また、前述したように、床以外の壁や天井への機器の設置に対しても、上記の各実施形態は適用可能であり、いずれもスペース効率良く機器を設置することが可能である。
【符号の説明】
【0065】
1、1a………機器固定部構造
3………レール部材
4a………係止爪
4b………底部
4c………側部
5………支持部材
6a………固定部
6b………壁部
7………アンカーボルト
8、8a、8b………ナット
9………床
10、10a………機器固定部材
11………ボルト
12………ナット
13………マーク
15、15a………固定金具
16a、16b………固定部
17………コンクリート
18、19………孔
21………鉄筋
21a………金具固定鉄筋
23………デッキプレート