(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】皮膚トリートメント装置
(51)【国際特許分類】
A45D 26/00 20060101AFI20240618BHJP
【FI】
A45D26/00 F
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020118620
(22)【出願日】2020-07-09
(62)【分割の表示】P 2018532634の分割
【原出願日】2016-12-05
【審査請求日】2020-08-11
【審判番号】
【審判請求日】2022-09-12
(32)【優先日】2015-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2016-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508117514
【氏名又は名称】ブラウン ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】タリク メハッデーネ
(72)【発明者】
【氏名】フリーダー グリーシェーバー
(72)【発明者】
【氏名】ベルンハルト クラウス
(72)【発明者】
【氏名】トーステン クレム
【合議体】
【審判長】北村 英隆
【審判官】窪田 治彦
【審判官】米倉 秀明
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-128728(JP,A)
【文献】特開2014-151124(JP,A)
【文献】特表2011-512221(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D26/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱毛器であって、
ユーザの皮膚に接触するための少なくとも1つの引き抜きシリンダと、
前記少なくとも1つの引き抜きシリンダを駆動するための駆動ユニットと、
前記脱毛器内に変位可能および枢動可能に載置される少なくとも1つの刺激要素と、
前記駆動ユニットの駆動を制御するための制御ユニットと
を備え、
前記少なくとも1つの引き抜きシリンダは、前記脱毛器内に変位可能及び枢動可能に載置され、
前記少なくとも1つの引き抜きシリンダは、少なくとも1つのばねによって付勢され、
前記少なくとも1つの引き抜きシリンダは、前記ユーザの前記皮膚と前記少なくとも1つの引き抜きシリンダとの接触によって印加される力によって、前記少なくとも1つのばねの付勢に対抗して移動可能であり、
前記少なくとも1つの引き抜きシリンダは、前記制御ユニットが前記ユーザの前記皮膚に接触して前記ばねの付勢に対抗して移動する前記少なくとも1つの引き抜きシリンダに応じて前記少なくとも1つの引き抜きシリンダを駆動する前記駆動ユニット
をオン及びオフにする前記制御ユニットに結合され、
前記制御ユニットは、前記駆動ユニットをオン及びオフにするための少なくとも1つのスイッチを備え、
前記ばねは前記
引き抜きシリンダおよび前記駆動ユニットの間に設置される、脱毛器。
【請求項2】
脱毛器であって、
ユーザの皮膚に接触するための少なくとも1つの引き抜きシリンダと、
前記少なくとも1つの引き抜きシリンダを駆動するための駆動ユニットと、
前記脱毛器内に変位可能および枢動可能に載置される少なくとも1つの刺激要素と、
前記駆動ユニットの駆動を制御するための制御ユニットと
を備え、
前記少なくとも1つの引き抜きシリンダは、前記脱毛器内に変位可能及び枢動可能に載置され、
前記少なくとも1つの刺激要素は、少なくとも1つのばねによって付勢され、
前記少なくとも1つの刺激要素は、前記ユーザの前記皮膚と前記少なくとも1つの刺激要素との接触によって印加される力によって、前記少なくとも1つのばねの付勢に対抗して移動可能であり、
前記少なくとも1つの刺激要素は、前記制御ユニットが前記ユーザの前記皮膚に接触して前記ばねの付勢に対抗して移動する前記少なくとも1つの刺激要素に応じて前記少なくとも1つの引き抜きシリンダを駆動する前記駆動ユニットをオン及びオフにする前記制御ユニットに結合され、前記制御ユニットは、前記駆動ユニットをオン及びオフにするための少なくとも1つのスイッチを備え、
前記刺激要素は、前記ユーザの前記皮膚に接触して前記ばねの付勢に対抗して移動するように構成され、前記ばねは前記刺激要素および前記駆動ユニットの間に設置される、脱毛器。
【請求項3】
前記少なくとも1つの引き抜きシリンダは、前記制御ユニットに作用するプランジャに結合され、
前記プランジャは、ヨークばねに接続され、
前記ヨークばねは、旋回軸を中心に前記少なくとも1つの引き抜きシリンダを枢動させることによって移動することを特徴とする、請求項1に記載の脱毛器。
【請求項4】
前記引き抜きシリンダは、軸を中心に回転するように前記駆動ユニットによって駆動されることを特徴とする、請求項1
または2に記載の脱毛器。
【請求項5】
前記制御ユニットはタイマーを備え、
前記制御ユニットは、前記ユーザの前記皮膚からの前記少なくとも1つの引き抜きシリンダの除去を検出した後に、定義された時間幅にわたって、前記少なくとも1つの引き抜きシリンダが前記駆動ユニットによって駆動されるように設計され、配設されていることを特徴とする、請求項1
または2に記載の脱毛器。
【請求項6】
前記少なくとも1つの刺激要素は、少なくとも1つの刺激ローラを備えることを特徴とする、請求項1
または2に記載の脱毛器。
【請求項7】
前記少なくとも1つの刺激要素は、前記ユーザの前記皮膚と接触するための曲面を備えることを特徴とする、請求項1
または2に記載の脱毛器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚トリートメント装置に関し、特に、好ましくは、毛を引き抜くためのはさみ様のクランプ要素を有する引き抜きシリンダによって体毛を除去するための脱毛器に関する。本皮膚トリートメント装置は、ユーザの皮膚に接触するための少なくとも1つの適用デバイス、例えば脱毛器の引き抜きシリンダと、少なくとも1つの適用デバイスを駆動するために駆動ユニットと、例えば駆動ユニットの作動を制御することによって、少なくとも1つの適用デバイスの移動を制御するための制御ユニットとを備える。
【背景技術】
【0002】
人間の皮膚から毛を引き抜くための脱毛器の形態のこの種の皮膚トリートメント装置は、例えば、国際公開第2005/092142(A1)号によって知られている。この装置は、適用デバイスを形成する引き抜きシリンダに歯車リングを介して結合される駆動ユニットとして、電気モータを備える。制御ユニットは、駆動ユニットをオン及びオフにするためのスイッチの形態を有することができる。
【0003】
脱毛器を使用した根毛除去は、通常、装置の異なる移動可能な機械的構成要素から、特に、毛を引き抜くためのそのはさみ様のクランプ要素を有する引き抜きシリンダから生じる過剰な騒音を伴う。この騒音は、ストレスを増加させる場合があり、また、ユーザの心地よい知覚に影響する。いくつかの事例において、この騒音は、痛みの感受性を増加させるような支障を来たし得る、望ましくない心理的及び生理的影響につながる恐怖感さえ起こす。
【0004】
欧州公告特許第EP 1 962 633 B1号では、脱毛器の引き抜きシリンダによるトリートメントの前又は後に皮膚を刺激するための刺激装置を提供することを提案している。この刺激装置は、引き抜きシリンダの両側に設けられたローラを備え、ローラは、いくつかの突起を備える。そのような刺激装置は、痛みの感受性を減少させるが、脱毛器のような皮膚トリートメントのための装置によって生成される騒音は、依然として、望ましくない心理的及び生理的影響を生じさせる。
【0005】
日本特許出願公開第JP2001/128728A号は、ばねによって構成された検出手段を有し、検出手段が本体ケーシングに対して枢動可能である、脱毛デバイスを開示している。更に、検出手段は、デバイスの駆動モータを停止するように配設されるスイッチを切ることにより電気回路を遮断する制御回路によって、過負荷を検出することができる。過負荷電圧は、ディスプレイ又はブザーによって示すことができる。
【0006】
更に、国際公開第2014/024084(A1)号は、皮膚接触要素が皮膚に対して押圧される圧力を検出するための圧力センサ又は接触センサに動作可能に接続され、また、圧力センサによって生成された圧力信号に依存してローターヘッドを回転可能に駆動するようモータを制御するように構成された、制御ユニットを有する皮膚トリートメント装置を開示している。一例において、ローターヘッドの回転又は振動の周波数は、接触圧力が増加するにつれて回転又は振動の周波数が増加し、一方で、いかなる皮膚との接触も検出されない場合にローターヘッドの回転又は振動が止まるように、接触圧力に依存させられる。
【0007】
国際公開第2010/066966(A1)号では、皮膚のトリートメントヘッドへの近接を検出するための手段と、トリートメントヘッドの近くで皮膚が検出された場合に、トリートメント手段の動作を少なくとも許可するのに適した電子機器制御ユニットとを備える、携帯型ボディケア機器を開示している。近接感知手段は、少なくとも、トリートメントヘッドの近くに位置付けられた近接感知ゾーンに面する光源と、少なくとも近接感知ゾーンからの光センサとを含む。
【0008】
その技術的起源を制限することによって、脱毛器によって生じる騒音を低減させることは、生産コストを低く保つという目的に反し得る大きな技術的難題を示す、新しい引き抜きシステムの開発を必要とする。加えて、毛を引き抜く手法を改良することは、毛を除去することの質に対して不利益な要因を有する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】国際公開第2005/092142(A1)号
【文献】欧州公告特許第EP 1 962 633 B1号
【文献】日本特許出願公開第JP2001/128728A号
【文献】国際公開第2014/024084(A1)号
【文献】国際公開第2010/066966(A1)号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本開示の目的は、既知のデバイスの欠点を回避する、改良された皮膚トリートメント装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の一態様によれば、皮膚トリートメント装置は、ユーザの皮膚に対する少なくとも1つの適用デバイスの接近を検出するための、又は少なくとも1つの適用デバイスとユーザの皮膚との接触を検出するための、少なくとも1つの検出器を更に備える。検出器は、制御ユニットに信号を伝達するために、制御ユニットに結合される。更に、制御ユニットは、検出器から受信される信号に応じて、駆動ユニット及び/又は少なくとも1つの適用デバイスの起動を制御するように設計され、配設される。換言すれば、少なくとも1つの適用デバイスの作動は、本皮膚トリートメント装置がユーザの皮膚と接触しているかどうか、又は少なくともユーザの皮膚と接触する寸前であるかどうかに依存する。この点で、起動という用語は、駆動ユニット及び/又は少なくとも1つの適用デバイスのスイッチをオン及び/又はオフにすることに限定されず、例えば、異なる動作モードの間で切り替えること、並びに/又は駆動ユニット及び/若しくは少なくとも1つの適用デバイスの速度を調整することを更に含むことができる。一態様によれば、制御ユニットは、駆動ユニットの速度を調整するための少なくとも1つのレギュレータを備えることができる。例えば、本装置は、駆動ユニットを低速で作動させるメインスイッチによってオンにすることができ、したがって、生じる騒音が少ない。本装置がユーザの皮膚に接近及び/又は接触した場合に、例えば効果的な脱毛のために必要とされる速度まで、速度を大幅に増加させる。ユーザの皮膚から装置を除去した後に、本装置は、再度、騒音の生成が少ない低速モードに変えられる。代替の例示的な一実施形態において、本装置は、ユーザの皮膚に接近した時点で低速モードに変えることができ、また、ユーザの皮膚と接触した時点で高速モードに切り替えることができる。更に、本装置は、センサを備える検出器を備え、センサは、例えば少なくとも1つの適用デバイスの作動に必要とされるトルクを測定することによって、少なくとも1つの適用デバイスの作動に対する抵抗を測定するのに、及び/又は駆動ユニット、例えばモータの電流消費を測定するのに適している。好ましくは、制御ユニットは、センサによる増加した抵抗及び/又は電流消費の検出に応じて、少なくとも1つのレギュレータが駆動ユニットの速度を増加させるように、並びにセンサによる減少した抵抗及び/又は電流消費の検出に応じて、少なくとも1つのレギュレータが駆動ユニットの速度を減少させるように設計され、配設される。
【0012】
より詳細には、制御ユニットは、回転速度ガバナを備えることができ、また、駆動ユニットの回転速度を予め定義された値に調節する制御アルゴリズムを備えることができ、予め定義された値は、好ましくは、動作電圧又は負荷への影響にかかわらず、必要に応じて設定することができる。制御ユニットは、好ましくは、負荷、例えばトルクに応じて、駆動ユニットの回転速度を増加及び減少させるように構成される。例えば、駆動ユニットは、最初に、装置の適切な動作には遅過ぎ得る低い速度に調整され、低い電流消費及び低減されたノイズをもたらす。制御ユニットが負荷の変化を検出した場合、アルゴリズムは、駆動ユニットを適切な動作に適したより高い速度に調整する。負荷が閾値未満に減少した時点で、アルゴリズムは、駆動ユニットを低速に戻すように調整する。アルゴリズムは、電流消費又はバッテリ電圧のような値を使用することができる。
【0013】
更に、制御ユニットは、最大負荷閾値に到達した場合に、警告フィードバックを生成することができる。低速と高速との間の切り替えは、緩加速及び/又は緩減速を含むことができる。加えて又は代替として、速度は、異なるステップで調節することができる。
【0014】
本皮膚トリートメント装置、例えば脱毛器が皮膚の上へ適用されると、装置が起動し、オフ状態又はアイドル状態からオン状態に変わり、引き抜きシリンダなどの適用デバイスを動作させる。一方で、皮膚トリートメント装置は、皮膚から持ち上げられた時点で、又はその直後にオフにすることができる。これは、装置の使用中の総合的な知覚騒音を大幅に低減させ、したがって、ユーザのストレスレベルを減少させることに寄与し、より気持ちの良いトリートメントエクスペリエンスを可能にする。ストレスを減少させることによってユーザの心地よさを増加させることは、痛覚を低減させることに寄与する。加えて、少なくとも1つの適用デバイスの実行時間を最小にすることによって、電流消費を大幅に低減させることができる。この特徴は、特に、水中での、例えば浴槽での使用に重要であり、その場合は、装置の乾式使用と比較して、少なくとも1つの適用デバイスの移動、例えば引き抜きシリンダの回転移動に対する抵抗、したがって、電流消費が大幅に高くなる。
【0015】
本開示の好ましい一態様によれば、制御ユニットは、駆動ユニットをオン及びオフにするための少なくとも1つのスイッチを備える。駆動ユニット及び、したがって、駆動ユニットに結合された少なくとも適用デバイスは、適用デバイスがユーザの皮膚に接触してない、又は接近していない限り、そのオフ状態又はアイドル状態である。一方で、ユーザの皮膚に接近又は接触することは、装置をオン状態に切り換え、駆動ユニットをオンにし、次に、適用デバイスを起動させる。
【0016】
機械式検出器、電気式又は電子式検出器、及びこれらの組み合わせを含む、皮膚トリートメント装置で使用するのに適した、種々の異なる種類の検出器がある。例えば、機械式検出器は、皮膚トリートメント装置又はその適用デバイスがユーザの皮膚に接近した時点で移動するピン又はレバーを含むことができる。換言すれば、検出器から制御ユニットに伝達される信号は、機械式検出器及び/又は機械式検出器に結合された伝達要素の移動であり得る。
【0017】
一態様によれば、少なくとも1つの適用デバイスは、機械式検出器、又は検出器、例えば機械式検出器の一部である。この点で、少なくとも1つの適用デバイスは、装置内に変位可能及び/又は枢動可能に載置され、少なくとも1つの適用デバイスの変位及び/又は枢動が制御ユニットに伝達される。プランジャなどの伝達要素を使用して、好ましくは脱毛器の引き抜きシリンダの回転軸を介して、少なくとも1つの適用デバイスをスイッチなどの制御ユニットに接続することができる。引き抜きシリンダの回転軸は、ばね荷重することができ、また、好ましくは、僅かな変位で、好ましくは1mm未満で移動することが可能である。この僅かな変位を使用して、スイッチを作動させることができる。ばね力は、僅かな圧力が作動に必要とされるように選択することができる。好ましくは、引き抜きシリンダの回転軸は、ばね荷重され、2つの対向する端部のガイドに沿って、又は1つのガイドのみに沿って変位可能である。代替として、引き抜きシリンダは、スイッチなどの制御ユニットを作動させるために比較的大きい、すなわち、1mmを超える変位が必要とされるように、好ましくはばね荷重の様態で、皮膚トリートメント装置に載置することができる。この実現形態は、脱毛器についてより軟らかい印象をユーザに伝え、また、高い接触圧力での摩擦を減少させることを補助することができる。
【0018】
更なる一実施形態によれば、本皮膚トリートメント装置は、装置内に変位可能及び/又は枢動可能に載置される少なくとも1つの刺激要素を更に備える。刺激要素の変位又は枢動は、少なくとも1つの伝達要素を介して、制御ユニットに直接的又は間接的に伝達することができる。換言すれば、刺激要素は、機械式検出器として、又はその一部として使用することができる。機械式検出器として少なくとも1つの適用デバイスを使用することとは対照的に、機械式検出器として刺激要素を使用することは、少なくとも1つの適用デバイスを皮膚上へ押圧するときに、少なくとも1つの適用デバイスとユーザの皮膚との間の摩擦を増加させないといった利益を有する。これは、デバイスの動作中にユーザの皮膚に接触する可動構成部分を有する、脱毛器又は他のデバイス、例えばマッサージデバイスにおいて特に有用である。
【0019】
少なくとも1つの適用デバイス及び/又は少なくとも1つの刺激要素が、機械式検出器として、又はその一部として使用される場合は、少なくとも1つの弾性変形可能な要素によって少なくとも1つの適用デバイス及び/又は少なくとも1つの刺激要素に付勢することが好ましい。適用デバイス及び/又は刺激要素は、好ましくは、ユーザの皮膚と適用デバイス及び/又は刺激要素との接触によって印加される力によって、少なくとも弾性変形可能な要素、好ましくは圧縮ばねの付勢に対抗して変位可能である。
【0020】
本開示の更に他の一態様において、皮膚トリートメント装置は、少なくとも1つの適用デバイスが本体内及び/又は上に枢動可能に載置された本体を備える。少なくとも1つの適用デバイスの枢動は、好ましくは、脱毛器内の引き抜きシリンダの回転軸に対して平行に位置付けることができる旋回軸を中心に生じる。適用デバイスは、少なくとも1つのばねなどの弾性変形可能な要素によって、アイドル状態に保持することができる。本皮膚トリートメント装置の使用中に、適用デバイスは、ばねなどの付勢に対抗して旋回軸を中心に枢動させることができる。この適用デバイスの旋回移動は、制御ユニットに、すなわち、スイッチなどに伝達され、適用デバイスの作動をトリガーする、及び/又は適用デバイスの速度を変化させることができる。より詳細には、少なくとも1つの適用デバイスは、制御ユニットに作用するプランジャに結合することができ、プランジャは、ヨークばねに接続される。このヨークばねは、旋回軸を中心に適用デバイスを枢動させることによって移動する。好ましくは、プランジャは、旋回移動又はヨークばねの移動に起因する変位を阻止するように、ばね荷重される。
【0021】
少なくとも1つの適用デバイスの旋回運動の使用は、装置が回転引き抜きシリンダを有する脱毛器である場合に特に有用である追加的な効果のために使用することができる。多くのユーザは、使用に際して皮膚トリートメント装置を前方に傾動させる傾向があり、それによって、適用デバイスと皮膚との完全な接触を妨げる。例えば、脱毛器を前方に傾動させることは、引き抜きシリンダと皮膚との完全な接触を妨げる。したがって、装置を起動させるために使用されている旋回運動の特徴を利用して、装置の正しい取り扱いを更に確実にすることができる。換言すれば、装置は、装置の取り扱いが正しい場合にのみ動作し、これは、皮膚に対する装置の正しい位置及び方向においてのみ生じる旋回運動によって評価される。
【0022】
更に他の一実施形態によれば、少なくとも1つの適用デバイスは、滑りクラッチを介して駆動ユニットに結合される。少なくとも1つの適用デバイスの変位及び/又は枢動を使用して、適用デバイス及び駆動ユニットを結合及び結合解除することができる。換言すれば、オン-オフスイッチを使用して、装置の状態を制御する代わりに、滑りクラッチを使用して、装置が皮膚と接触しているかどうかにかかわらず駆動ユニットのモータを連続的に動作させながら、少なくとも1つの適用デバイスの作動を制御すること、例えば引き抜きシリンダの回転を制御することができる。この点で、モータによって生成される騒音は、引き抜きシリンダなどの適用デバイスが駆動されていない限り、ユーザの心地よさに対して有害な影響を全く有しないか、又は単に限られた有害な影響だけを有することに留意されたい。適用デバイスは、好ましくは、装置が皮膚と接触していない場合には、適用デバイスが駆動ユニットから結合解除されるようにばね荷重され、一方で、装置が皮膚の上へ置かれた場合には、駆動ユニットが適用デバイスに結合され、適用デバイスを駆動するようにばね荷重される。この実施形態において、滑りクラッチは、適用デバイス及び駆動ユニットを結合及び結合解除することによって、少なくとも1つの適用デバイスの移動を制御する制御ユニットとみなすことができる。
【0023】
本開示の異なる一実施形態において、検出器は、圧力センサ、近接センサ、熱センサ、及び接触センサのうちの少なくとも1つを備えることができる。より詳細には、ユーザの皮膚と皮膚トリートメント装置との間の距離を、光センサ又は超音波センサによって測定して、装置の状態を制御することができる。例えば、脱毛器は、皮膚から離れて保持されている場合にはスイッチをオフにし、皮膚に接近又は皮膚と接触した場合にはオンにする。そのようなセンサは、ユーザの皮膚と装置の適用デバイスとの間の距離を直接検出するために使用ことができ、又は少なくとも1つの適用デバイス及び/若しくは刺激要素の移動を検出するために使用することができる。後者のオプションは、使用中の装置の正しい取り扱いを確実にするために更に使用することができる。例えば、適用デバイスの旋回移動は、適用デバイスを作動させることを必要とし得る。更に、本装置は、駆動ユニットを制御するための電気回路を特徴とすることができる。この回路は、容量の変化を検出することにより皮膚への近接を検出することの、外部抵抗の変化により皮膚への接触を検出することによって、動作させることができる。
【0024】
本開示による皮膚トリートメント装置は、好ましくは、少なくとも装置の本体内に水密の様態で密閉された制御ユニット及び/又は駆動ユニットを備える。特に、機械式検出器が使用される場合、スイッチなどの制御ユニットを膜で覆うことができる。これは、例えばシャワー又は浴槽での装置の使用を可能にする。
【0025】
好ましい実施形態によれば、本皮膚トリートメント装置は脱毛器であり、適用デバイスがユーザの皮膚から毛を除去するための引き抜きシリンダである。引き抜きシリンダは、駆動ユニット、例えば電気モータによって駆動されて、軸を中心に回転する。代替として、本装置は、電気カミソリ、又は皮膚トリートメントのためのマッサージデバイスとすることができる。
【0026】
制御ユニットに加えて、本皮膚トリートメント装置は、装置を作動及び停止させるための1つのスイッチを更に備えることができる。例えば、この追加的なスイッチを使用して、皮膚への接触にかかわらず、装置を完全にオフにすることができる。追加的なスイッチを更に使用して、装置を、制御ユニットによって制御される少なくとも1つの適用デバイスの作動を可能にするモードに変えることができる。なお更に、スイッチを使用して、皮膚への接触にかかわらず、装置を、適用デバイスが永続的に起動するモードに変えることができる。換言すれば、ユーザは、3つの異なるモード、すなわち、永続的にオフ、(皮膚上にあるかどうかにかかわらず)永続的にオン、及び皮膚に接近又は接触したときにのみ適用デバイスを作動させる自動モードの間で選択し、切り替えることができる。
【0027】
短いストロークで装置を使用するときに、そのような自動モードは、頻繁な間隔でのスイッチオン及びスイッチオフのため、ユーザにとって不便であり得る。好ましい実施形態によれば、装置を皮膚から持ち上げた後に短時間動作させ続ける様式で、時間遅延が提供される。遅延時間が過ぎた後に、装置をオフにする。換言すれば、制御ユニットは、ユーザの皮膚からの適用デバイスの除去を検出した後に、定義された時間幅にわたって、適用デバイスが駆動ユニットによって駆動されるように配設されたタイマーを備えることができる。
【0028】
更なる実施形態によれば、本装置は、装置の状態又はモードをユーザに示す、フィードバックデバイスを備える。これは、適用デバイスがユーザの皮膚に接近又は接触するまで、制御ユニットが駆動ユニットをオフにする場合に特に有用である。これは、ユーザによって、装置の故障として誤解される場合がある。しかしながら、フィードバック信号、例えば光フィードバック及び/又は音響フィードバックが生成された場合は、これを使用して、装置が、例えばその自動モードであることをユーザに知らせることができる。
【0029】
本開示の好ましい実施形態では、皮膚トリートメント装置を動作させるための方法が提供される。その方法は、ユーザの皮膚に接触するための少なくとも1つの適用デバイスを有する皮膚トリートメント装置と、少なくとも1つの適用デバイスを駆動するための駆動ユニットとを提供するステップと、少なくとも1つの適用デバイスのユーザの皮膚への接近及び/又は接触を検出するステップと、以前のステップからの結果に依存して、少なくとも1つの適用デバイスを作動させるステップとを含む。換言すれば、少なくとも1つの適用デバイス及び皮膚の接近又は接触の検出を使用して、装置をオン及びオフにするか、更には駆動ユニット及び/又は少なくとも1つの適用デバイスの速度を調整する。少なくとも1つの適用デバイスを皮膚から除去した後に、装置は、上でより詳細に説明したように、スイッチオフにするか、又はその速度を低減させることができる。
【0030】
一態様によれば、請求項13による脱毛器が提供される。
【0031】
更なる詳細及び本発明の特徴は、図面と併せて、実施形態の以下の説明から得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1a】スイッチオフ状態の、本発明の第1の実施形態による脱毛器の概略断面図である。
【
図1b】スイッチオン状態の、
図1aの脱毛器を示す図である。
【
図2】本発明の第2の実施形態による脱毛器の破断図である。
【
図3a】それぞれ、スイッチオフ状態及びスイッチオン状態における、本発明の第3の実施形態による脱毛器の概略断面図である。
【
図3b】それぞれ、スイッチオフ状態及びスイッチオン状態における、本発明の第3の実施形態による脱毛器の概略断面図である。
【
図4a】それぞれ、スイッチオフ状態及びスイッチオン状態における、本発明の第4の実施形態による脱毛器の概略断面図である。
【
図4b】それぞれ、スイッチオフ状態及びスイッチオン状態における、本発明の第4の実施形態による脱毛器の概略断面図である。
【
図5a】それぞれ、スイッチオフ状態及びスイッチオン状態における、本発明の第5の実施形態による脱毛器の概略断面図である。
【
図5b】それぞれ、スイッチオフ状態及びスイッチオン状態における、本発明の第5の実施形態による脱毛器の概略断面図である。
【
図6】本発明の第6の実施形態による脱毛器の破断図である。
【
図7】本発明の第7の実施形態による脱毛器の破断図である。
【
図8】本発明の第8の実施形態による脱毛器の概略断面図である。
【
図9】
図8の脱毛器のアルゴリズムのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1~
図7に示され、以下に説明される脱毛器は、例えば
図8及び
図9を参照して説明されるように、引き抜きシリンダなどの適用デバイスの作動に対する抵抗及び/又は駆動ユニットの電流消費を測定するセンサを備えることができる。制御ユニットは、センサによる増加した抵抗及び/又は電流消費の検出に応じて、レギュレータが駆動ユニットの速度を増加させるように、並びにセンサによる減少した抵抗及び/又は電流消費の検出に応じて、レギュレータが駆動ユニットの速度を減少させるように設計し、配設することができる。
【0034】
図1a及び1bの実施形態において、脱毛器1の形態の皮膚トリートメント装置は、本体2又はハウジングを備えて示される。駆動ユニットは、例えば充電式バッテリ3及び電気モータ4を備える本体2内に設けられる。電気モータ4は、歯車装置5(
図2を参照されたい)によって、引き抜きシリンダ6に、すなわち、ユーザの皮膚から毛を引き抜き、除去するための、例えばはさみ様のクランプ要素を有する脱毛器ドラムに結合される。脱毛器1は、引き抜きシリンダ6の両側に設けられたローラの形態で、2つの刺激要素7を更に備える。刺激要素7は、ハウジングの本体2に対して、
図1aに示されるようなアイドル状態に保持されている。
図1a及び
図1bの比較から分かるように、刺激要素7は、本体2に対して旋回移動を行うことができる。
【0035】
スイッチ8は、スイッチ8の作動が電気モータ4をオン及びオフにするように、バッテリ3と電気モータ4との間に介在して設けられる。スイッチ8は、ヨークばね9及び更なるばね10に接続され、これらのばねは、脱毛器1が
図1aに示されるようなそのアイドル状態であるときに、スイッチ8を開く、すなわち、電気モータ4をオフにするように配設される。
【0036】
図1a及び1bにおいて、脱毛器1が線11によって示されるユーザの皮膚に接近し、刺激要素7が皮膚11に接触すると、
図1bにおいて矢印12によって示されるように脱毛器1を僅かに傾動させて、刺激要素7並びに刺激要素の間に位置付けられた引き抜きシリンダ6の両方を皮膚11と接触させる。この傾動移動の結果、ヨークばね9及びばね10の移動によって、スイッチ8が閉じる。換言すれば、
図1bに示されるように、脱毛器1のスイッチをオンにして、ユーザの皮膚11に接触させ、脱毛器1の本体2を傾動させることによって、引き抜きシリンダ6を回転運動に設定する。換言すれば、刺激要素7は、ヨークばね及び更なるばね10と共に、引き抜きシリンダ6の接近及び/又は接触を検出するための検出器として作用する。
【0037】
図2は、更なるばね10を含むヨークばね9の僅かに改良した設計を有する、
図1a及び1bにおいて示される脱毛器1のより詳細な実施形態を表示する。刺激要素7は、図の実施例2において省略されているが、所望であれば、備えることができる。加えて、
図2は、本体2内で、制御ユニットを形成する駆動ユニット(バッテリ3及び電気モータ4)及びスイッチ8が防水様態で密閉されるように、スイッチ8を膜13によって覆うことができることを示す。
【0038】
図3a及び3bには、脱毛器1の別の実施例が示される。
図1a及び1bの実施形態に類似する様態で、スイッチ8(制御ユニット)は、検出器として作用する刺激要素7によって作動する。しかしながら、
図3a及び3bの実施形態において、脱毛器1をオン及びオフにするこのスイッチは、
図3a及び3bで分かるように、主に垂直方向の軸方向の変位である。この点で、刺激要素7は、ばね14によって付勢される変位可能な様態で、脱毛器1の本体2に載置される。これは、結果として、
図3aに示されるように刺激要素7が皮膚11と接触していない限り、脱毛器1はスイッチオフされている。しかしながら、引き抜きシリンダ6が皮膚に接触するまで、刺激要素7がばね14の付勢に対抗して軸方向に変位するように、
図3bに示されるように脱毛器1がユーザの皮膚11に対して押圧された場合は、スイッチ8が閉じられ、それによって、脱毛器1をオンにする。
【0039】
図4a及び4bに示される実施形態は、類似する代替例を示すが、図中、引き抜きシリンダ6は、検出器であり、これは、伝アームと共にスイッチ8を開き、又は閉じ、それによって、引き抜きシリンダ6によってユーザの皮膚に印加される圧力に応じて、脱毛器1をオン及びオフにする。この概念の更に詳細な実施形態は、
図6及び
図7に示され、図中、引き抜きシリンダ6は、
図6の実施形態において、1mm未満の小さい軸方向の変位のみが可能であり、一方で、
図7の実施形態では、1mmを超える、より大きい軸方向の変位が可能である。
【0040】
図5a及び5bの実施形態には、更に他の代替例が示される。この実施形態において、引き抜きシリンダ6及び駆動機構の構成部分は、脱毛器1の本体2に対して軸方向に変位可能であるユニットを形成する。スイッチ8、バッテリ3、及び電気モータ4は、
図5a及び5bの概略図において本体2の外側にあるように示されているが、これらの構成部分は、脱毛器1の本体2内に、好ましくは、本体2に対して軸方向に移動可能である引き抜きシリンダを備えるユニット内に設けることができる。ここでも、スイッチ8は、引き抜きシリンダをユーザの皮膚11の上へ押圧することによって閉じられ、それによって、脱毛器1を起動させる。
【0041】
図8は、引き抜きシリンダ6を駆動するためのモータ4を有する脱毛器1の概略図を示す。センサ16(検出器)は、制御ユニットのレギュレータ17、例えば速度ガバナと協働することを設けており、それにより、例えば引き抜きシリンダの回転速度、トルク、又は電流消費を測定することによって負荷を測定し、引き抜きシリンダ6を駆動し、及びレギュレータ17によって駆動ユニットの回転速度を設定する。例えば、制御ユニットのレギュレータ17は、駆動ユニットの回転速度を予め定義された値に調節する制御アルゴリズムを備えることができ、一方で、制御ユニットは、負荷に応じて駆動ユニットの回転速度を増加及び減少させるように構成される。
図9は、そのようなアルゴリズムのフローチャートの一実施例を示し、ここで、駆動ユニットは、最初に、低速に調整される。制御ユニットのセンサ16が電流消費の変化を検出した場合、アルゴリズムは、駆動ユニットをより高い速度に調整する。電流消費が閾値未満に低下するとすぐに、アルゴリズムは、駆動ユニットを低速に戻すように調整する。
【0042】
より詳細には、センサ16は、モータ4の電流消費Iモータを10ms毎に決定する。平均値I平均は、最後の16個の値を使用して算出される。電流消費Iモータは、平均値I平均及び予め定義された閾値オフセット_1と比較される。この閾値を使用して、電流消費の変化の感度を調節することができる。電流消費の変化が閾値オフセット_1によって平均値I平均を超えた場合、レギュレータ17は、モータ4の回転速度をより高い速度に調整し、平均値I平均を適応させる。速度の低減は、第2の閾値オフセット_2を使用して、類似する様態で達成される。このアルゴリズムは、絶対閾値を必要とせず、それによって、感度を増加させるといった利益を有する。
【0043】
本明細書に開示した寸法及び値は、記載された正確な数値に厳密に限定されるものと理解されるべきではない。むしろ、特に指定がない限り、そのような各寸法は、記載された値、及びその値の周辺の機能的に同等の範囲の両方を意味することを意図している。例えば「40mm」として開示される寸法は、「約40mm」を意味するものとする。
【0044】
参照番号
1脱毛器(皮膚トリートメント装置)
2本体
3バッテリ
4電気モータ
5歯車装置
6引き抜きシリンダ
7刺激要素
8スイッチ
9ヨークばね
10ばね
11皮膚
12矢印
13膜
14ばね
15プランジャ
16センサ
17レギュレータ