(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】シート状ゴム部材の接合装置及び接合方法
(51)【国際特許分類】
B29D 30/06 20060101AFI20240618BHJP
B29D 30/30 20060101ALI20240618BHJP
B29C 65/56 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
B29D30/06
B29D30/30
B29C65/56
(21)【出願番号】P 2020128996
(22)【出願日】2020-07-30
【審査請求日】2023-04-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】船山 幸多
(72)【発明者】
【氏名】山田 洋子
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-320196(JP,A)
【文献】特表2017-523926(JP,A)
【文献】特開2013-071304(JP,A)
【文献】特開昭64-031628(JP,A)
【文献】特開2013-086308(JP,A)
【文献】国際公開第2013/069235(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D 30/06
B29D 30/30
B29C 65/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴムを素材としてシート状に形成され、端部同士が突き合わせ配置されたシート状ゴム部材の端部同士を接合するシート状ゴム部材の接合装置であって、
互いに噛み合い同期した回転を可能とするギア部を有し、シート状ゴム部材の端部上で回転しながら前記ギア部が互いに噛み合う歯間でシート状ゴム部材の端部同士を噛み込んで接合する一対のローラと、
前記一対のローラのうち少なくとも一方を回転駆動させるローラ回転駆動手段と、
前記一対のローラの回転により生じる自走方向に沿って前記一対のローラを移動させるローラ移動手段と、を備え、
前記一対のローラは、突き合わせ配置されたシート状ゴム部材の端部の延長方向に対して直交方向に並べて配置され、
各ローラは、円錐台状に形成され、各ローラにおける回転軸に対して所定角度傾斜する周面に、円周方向に所定ピッチで凹凸が連続するとともに、ローラにおける外径寸法の大きい下底面の外周を形成するように露出するギア部を備え、
周面に形成されたギア部を噛み合わせたときに、下底に露出するギア部の噛み合い領域が最もシート状ゴム部材の側に位置するように下底面をシート状ゴム部材に向けて配置され、
前記噛み合い領域を、突き合わせ状態で配置されたシート状ゴム部材の端部に接触させた状態で前記一対のローラを回転させなが
ら端部同士が突き合わされた延長方向に沿って移動さ
せ、端部同士を接合することを特徴とするシート状ゴム部材の接合装置。
【請求項2】
前記一対のローラは、前記シート状ゴム部材の両面に設けられたことを特徴とする請求項1に記載のシート状ゴム部材の接合装置。
【請求項3】
前記ローラ回転駆動手段及び前記ローラ移動手段を制御し、前記一対のローラの移動速度と前記一対のローラの回転速度との速度比を可変とする制御装置を備えた請求項1又は請求項2に記載のシート状ゴム部材の接合装置。
【請求項4】
ゴムを素材としてシート状に形成され、端部同士が突き合わせ配置されたシート状ゴム部材の端部同士を
、ギア部の噛み合いにより同期して回転する一対のローラをシート状ゴム部材の端部上で自転させ、当該自転により該一対のローラに生じる自走方向に沿う駆動力を付与しながら、ギア部が互いに噛み合う歯間でシート状ゴム部材の端部同士を噛み込んで接合するシート状ゴム部材の接合方法であって、
一対のローラを、突き合わせ配置されたシート状ゴム部材の端部の延長方向に対して直交方向に並べて配置し、
各ローラを、円錐台状に形成し、各ローラにおける回転軸に対して所定角度傾斜する周面に、円周方向に所定ピッチで凹凸が連続し、ローラにおける外径寸法の大きい下底面の外周を形成するように露出するギア部を設け、
周面に形成されたギア部を噛み合わせたときに、下底面に露出するギア部の噛み合い領域が最もシート状ゴム部材の側に位置するように下底面をシート状ゴム部材に向けて配置し、
前記噛み合い領域を、突き合わせ状態で配置されたシート状ゴム部材の端部に接触させた状態で前記一対のローラを回転させながら端部同士が突き合わされた延長方向に沿って移動させ、端部同士を接合することを特徴とするシート状ゴム部材の接合方法。
【請求項5】
前記一対のローラを前記シート状ゴム部材の両面に設け、両面側から接合することを特徴とする請求項4
に記載のシート状ゴム部材の接合方法。
【請求項6】
前記一対のローラの回転速度に応じて前記一対のローラの移動速度を制御するようにした請求項4又は請求項5に記載のシート状ゴム部材の接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状ゴム部材の接合装置及び接合方法に関し、特に、シート状に形成されたゴム部材の端部同士を突き合せて接合するための接合装置及び接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ゴムを主たる素材として形成されるタイヤの製造工程では、シート状に成型したゴムを素材とする複数の部材を成型ドラムの外周に所定の順序で巻き付けることで加硫成型前のグリーンタイヤとして成型される。
成型ドラムに巻き付けられたシート状の部材は、巻き付けの始端と終端とが重ならないように所定の隙間を有するように突き合せた状態にあり、接合装置によって隙間をなくすように、端部同士が接合される。接合装置は、ギヤロールやジップロール等と呼ばれる部材の寄せ付け機構を備え、巻き付けの始端と終端との突き合せ部分に沿って移動させることでジップロールを従動的に回転させることで始端と終端とを寄せ付けて接合する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ジップロールは、接合装置の移動に伴なう部材との間で生じる摩擦によって従動的に回転するため、回転開始時に部材から受ける抵抗により、部材を変形させてしまう。このため、突き合せ部分の延長方向の端部から接合することが困難であった。その回避策として、部材の端部を保持して接合するようにしたり、ジップロールを自転させて当該自転によって接合装置を移動させるようにする等が考えられるが、コードをゴムで被覆した部材などでは、ゴムの剥げなどが発生することがあった。
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、シート状に形成されたゴム部材の端部同士の突き合せ接合において、突き合せ部分の延長方向の端部からの接合を可能とする接合装置及び接合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するためのシート状ゴム部材の接合装置の構成として、ゴムを素材としてシート状に形成され、端部同士が突き合わせ配置されたシート状ゴム部材の端部同士を接合するシート状ゴム部材の接合装置であって、互いに噛み合い同期した回転を可能とするギア部を有し、シート状ゴム部材の端部上で回転しながらギア部が互いに噛み合う歯間でシート状ゴム部材の端部同士を噛み込んで接合する一対のローラと、一対のローラのうち少なくとも一方を回転駆動させるローラ回転駆動手段と、一対のローラの回転により生じる自走方向に沿って一対のローラを移動させるローラ移動手段とを備え、前記一対のローラは、突き合わせ配置されたシート状ゴム部材の端部の延長方向に対して直交方向に並べて配置され、各ローラは、円錐台状に形成され、各ローラにおける回転軸に対して所定角度傾斜する周面に、円周方向に所定ピッチで凹凸が連続するとともに、ローラにおける外径寸法の大きい下底面の外周を形成するように露出するギア部を備え、周面に形成されたギア部を噛み合わせたときに、下底に露出するギア部の噛み合い領域が最もシート状ゴム部材の側に位置するように下底面をシート状ゴム部材に向けて配置され、前記噛み合い領域を、突き合わせ状態で配置されたシート状ゴム部材の端部に接触させた状態で前記一対のローラを回転させながら端部同士が突き合わされた延長方向に沿って移動させ、端部同士を接合する構成とした。
本構成によれば、接合端部の延長方向の端部から接合することができる。
また、一対のローラをシート状ゴム部材の両面に設けるようにしても良い。また、ローラ回転駆動手段及びローラ移動手段を制御し、一対のローラの移動速度と一対のローラの回転速度との速度比を可変とする制御装置を備えるようにしても良い。
また、上記の課題を解決するためのシート状ゴム部材の接合方法の態様として、ゴムを素材としてシート状に形成され、端部同士が突き合わせ配置されたシート状ゴム部材の端部同士を、ギア部の噛み合いにより同期して回転する一対のローラをシート状ゴム部材の端部上で自転させ、当該自転により該一対のローラに生じる自走方向に沿う駆動力を付与しながら、ギア部が互いに噛み合う歯間でシート状ゴム部材の端部同士を噛み込んで接合するシート状ゴム部材の接合方法であって、一対のローラを、突き合わせ配置されたシート状ゴム部材の端部の延長方向に対して直交方向に並べて配置し、各ローラを、円錐台状に形成し、各ローラにおける回転軸に対して所定角度傾斜する周面に、円周方向に所定ピッチで凹凸が連続し、ローラにおける外径寸法の大きい下底面の外周を形成するように露出するギア部を設け、周面に形成されたギア部を噛み合わせたときに、下底面に露出するギア部の噛み合い領域が最もシート状ゴム部材の側に位置するように下底面をシート状ゴム部材に向けて配置し、前記噛み合い領域を、突き合わせ状態で配置されたシート状ゴム部材の端部に接触させた状態で前記一対のローラを回転させながら端部同士が突き合わされた延長方向に沿って移動させ、端部同士を接合するようにした。また、一対のローラをシート状ゴム部材の両面に設け、両面側から接合しても良い。また、一対のローラの回転速度に応じて前記一対のローラの移動速度を制御するようにすると良い。
【0006】
なお、上記発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではなく、特徴群を構成する個々の構成もまた発明となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】シート状ゴム部材の接合装置の適用例を示した図である。
【0008】
以下、発明の実施形態を通じて本発明を詳説するが、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明される特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本実施形態に係るシート状ゴム部材の接合装置1の適用例を示した図であり、タイヤの製造工程において、ゴムを素材とするシート状のゴム部材からなるタイヤ構成部材4を成型ドラム2に巻き付け、端部同士を接合するときに用いられる。タイヤ構成部材4は、円筒状の成型ドラム2の外周面上に直接的、或いは、間接的に巻き回される。
【0010】
タイヤ構成部材4は、例えば、所定長さに成形された状態でコンベヤ等により成型ドラム2まで搬送される。搬送されたタイヤ構成部材4は、搬送方向下流側の端部4Aを成型ドラム2に貼付し、例えば成型ドラム2を
図1(b)中の矢印で示すように回転させ、成型ドラム2で巻き取るようにして上流側の端部4Bまでが成型ドラム2に貼付される。この成型ドラム2への巻き付けでは、搬送方向下流側の端部4A及び上流側の端部4Bは、互いに対向する突き合わせ状態にあるとともに、成型ドラム2の軸線Cと実質的に平行とされる。なお、以下の説明では、搬送方向下流側の端部4Aを巻き始めの端部或い始端、上流側の端部4Bを巻き終わりの端部或いは終端などともいう。
【0011】
タイヤ構成部材4には、例えば、製品タイヤの空気漏れを防止する機能を有する気体透過性の低いゴムからなるインナーライナー素材や、複数本の引き揃えコードを未加硫ゴムで被覆してなるカーカスプライ素材等がある。そして、インナーライナー素材を成型ドラム2の外周面に巻き回して貼着させた後、そのインナーライナー素材の周面上にカーカスプライ素材が巻き回されて積層される。
【0012】
例えば、インナーライナー素材や、カーカスプライ素材は、長さが成型ドラム2の外周長の略1周分とされ、成型ドラム2への巻き始めの端部4Aと、巻き終わりの端部4Bとが突き合わせ状態となるように巻き回される。ここでいう突き合わせ状態とは、巻き始めの端部4Aと、巻き終わりの端部4Bとが重ならない関係をいい、例えば、成型ドラム2への巻き始めの端部4Aと、巻き終わりの端部4Bとの間に全体的に所定の隙間がある状態や、部分的に隙間や接触がある状態を含むものとする。
【0013】
接合装置1は、突き合わせ状態にある端部4A;4B同士を近接させ、端部4A;4B同士を接合(接触)させる装置であって、引き寄せ機構を構成する一対のローラ10;10を有するヘッドユニット12と、ヘッドユニット12を成型ドラム2の軸線Cに沿って移動させる移動手段40と、一対のローラ10;10を回転させる図外の回転手段と、移動手段40及び回転手段の動作を制御する制御装置50とを備える。
【0014】
ヘッドユニット12は、図外のシリンダー等の昇降手段によって、成型ドラム2の半径方向に昇降変位可能に構成される。タイヤ構成部材4の端部同士の接合時には、昇降手段を動作させて、成型ドラム2に向けて下降変位させることで、一対のローラ10;10をタイヤ構成部材4に当接させる。また、タイヤ構成部材4を成型ドラム2にタイヤ構成部材4を巻き付ける作業をするときには、ヘッドユニット12を成型ドラム2から上昇変位させることで、巻き付け作業の妨害を回避することができる。
【0015】
昇降手段は、ヘッドユニット12を下降させたときの下降位置を調整可能とする調整機構を有することが好ましい。これにより、前述のように、成型ドラム2にタイヤ構成部材4を積層するときの接合対象となるタイヤ構成部材4の位置の変化や、タイヤ構成部材4に一対のローラ10;10が接触したときの接触圧力をタイヤ構成部材4の構造や組成に応じて調整することができ、接合の不良を防止することができる。
【0016】
図1に示すように、ヘッドユニット12は、例えば、成型ドラム2の半径方向上方において、成型ドラム2の軸線Cに沿って延長して設けられ、ガイドと当該ガイドに沿って移動可能に取り付けられるブロックを有するリニアガイドのような直線状の軌道を有する移動手段40のブロックに取り付けられる。ブロックは、リニアガイドに内蔵されたボールねじ機構とモータとを組み合わせた駆動手段によって、ヘッドユニット12を成型ドラム2の軸線Cに沿って往復移動可能に構成され、間接的に一対のローラ10;10を軸線Cに沿って移動させるローラ移動手段として機能する。
【0017】
図2は、
図1(b)において、一対のローラ10;10がタイヤ構成部材4の端部4A;4Bに接触している部分の拡大図である。
図2に示すように、本実施形態に係る一対のローラ10;10は、同一のものが用いられる。ローラ10は、タイヤ構成部材4に接触し、突き合せ状態にある両方の端部4A;4Bを引き寄せる引き寄せ部14と、軸部16とを備える。
【0018】
引き寄せ部14は、円錐台状に形成され、回転軸Xに対して所定角度傾斜する周面に、円周方向に所定ピッチで凹凸が連続するギア部18を備える。引き寄せ部14の外形寸法の大きい下底は、ギア部18側から外向きに膨出する半球状に形成される。また、外径寸法の小さい上底には、回転軸Xに沿って延長する軸部16が設けられる。軸部16は、ヘッドユニット12によってローラ10を回転可能に保持される。
【0019】
ギア部18は、互いに噛み合わせたときに、ベベルギアのように各ローラ10の回転軸Xが交差するように形成される。本実施形態では、一対のローラ10;10は、
図2(a)に示すようにヘッドユニット12を下降させて軸方向視したときに、突き合わせ部分の延長方向に対して直交方向に並ぶように配置され、ギア部18;18の噛み合い領域Rが最もタイヤ構成部材4側に位置し、平坦状となるように各下底面が形成されている。
【0020】
一方のローラ10の軸部16には、当該ローラ10を回転駆動(自転)させるためのローラ回転駆動手段が連結される。ローラ回転駆動手段が連結されたローラ10を回転させることにより、ギア部18の噛み合いを介して他方のローラ10を従動的に同期して回転させる。
【0021】
ローラ回転駆動手段は、ヘッドユニット12に設けられ、例えば、モータと、モータの回転をローラ10に伝達する伝達機構により構成することができる。
このように、ローラ回転駆動手段により一対のローラ10;10を回転可能に構成し、一対のローラ10;10をタイヤ構成部材4の端部4A;4B上で回転させると、ギア部18;18とタイヤ構成部材4との摩擦により、一対のローラ10;10の回転巻き込み方向と逆向きに移動させる力が作用する。この力は、ローラ10;10の回転に伴って回転巻き込み方向と逆向き方向に自走可能であることを意味する。なお、回転巻き込み方向とは、ギア部18;18の噛み合いが移動する方向をいう
【0022】
したがって、ローラ回転駆動手段が、一対のローラ10;10をタイヤ構成部材4の端部4A;4B上で回転させることで、タイヤ構成部材4上に当接するギア部18;18が各端部4A;4Bを近接させるように引き寄せながら、突き合わせ部分の延長方向に沿って移動しつつ、ギア部18;18の互いに噛み合う歯間で端部4A;4B同士を噛み込んで接合させることが可能とされる。
【0023】
制御装置50は、移動手段40及びローラ回転駆動手段と電気的に接続され、これらの移動手段40及びローラ回転駆動手段の動作を制御可能に構成される。制御装置50は、例えば、移動手段40及び回転手段を制御するためのプログラムが記憶される記憶手段や、記憶手段に記憶されたプログラムを実行し、処理するCPUからなる演算処理手段、演算処理手段による処理によって得られた制御値を移動手段40及び回転手段に電気的な信号として出力する出力手段や、プログラムの実行におけるパラメータを設定するための入力手段等を備える所謂コンピュータとして機能する。
【0024】
制御装置50は、ヘッドユニット12の移動速度やローラ10の回転速度が所定の速度比となるように、移動手段40を構成するモータや、回転手段を構成するモータに信号を出力する。
【0025】
制御装置50は、例えば、ヘッドユニット12の移動速度を100%とした場合に、ローラ10の回転速度がその90%~100%となるように、移動手段40及びローラ回転駆動手段を制御することが好ましい。
ローラ10の回転速度とは、一対のローラ10;10を回転させたときに得られる自走力によって、タイヤ構成部材4上を実際に移動させ、ローラ10の回転回数から得た自走距離に基づいて換算を行い、さらに所定の補正係数を加味して得られるものであって、ローラ10を回転させるモーターの回転数を意味するものではない。なお、ローラ10の1回転の長さ(ローラ10が1回転したときの自走距離)は、例えば、
図3に示すように、ローラ10の回転軸Xからギア部18;18同士の噛み合い中心Hまでの距離Rを半径とする円の周長が設定される。
例えば、補正係数を2とし、速度比を100%とした時には、移動距離500mmの時にローラ10の自走距離(回転回数)が1000mmとなるように制御を行う。
補正係数は、例えば、タイヤ構成部材4の組成や厚みなどに応じて設定される。
【0026】
図4は、接合装置1による端部同士の接合動作を示す図である。なお、同図では、接合装置1の一対のローラ10;10以外の構成については省略した。
図4(a)に示すように、端部4A;4B同士が突き合わせられたその延長方向の一方の外側に配置される。また、端部4A;4Bの突き合わせ部分に対する一対ローラ10;10の位置合わせが行われる。この位置合わせは、例えば、ヘッドユニット12を下降させたときの一対のローラ10:10の噛み合い中心Hが、タイヤ構成部材4の端部4A;4Bの突き合わせ部分の隙間に対応するように行われる。
【0027】
また、この位置合わせには、タイヤ構成部材4に対して噛み合い中心Hを示す位置表示手段を利用すると良い。位置表示手段には、例えば、成型ドラム2の半径方向に向け、成型ドラム2の幅方向にシート状のレーザー光を照射可能な2次元レーザーなどを利用することができる。
また、ヘッドユニット12を下降させたときに、ローラ10:10の噛み合い部から接合対象のタイヤ構成部材4の表面までの距離を計測する距離測定手段を利用することで、一対のローラ10;10がタイヤ構成部材4に接触する圧力を調整することができる。例えば、前述の位置表示手段に2次元レーザーを用いた場合、タイヤ構成部材4に照射された2次元レーザーの反射を処理することで、タイヤ構成部材4の表面までの距離を計測することができ、照距離測定手段として利用することができる。
【0028】
次に、作業者が、制御装置50に接続された入力手段を操作し、制御装置50に接合の開始を入力することで、制御装置50から移動手段40及びローラ回転駆動手段に信号が出力され、一対のローラ10;10が回転を開始するとともに、ヘッドユニット12が図中矢印M方向に移動を開始する。これにより、
図2(b)に示すように、突き合わせ状態にある端部4A;4Bの延長方向の一端側から連続的に端部4A;4B同士が接合される。そして、
図4(b)に示すように、一対のローラ10:10が突き合わせ状態にある端部4A;4Bの延長方向の他端側を過ぎるようにヘッドユニット12が移動することにより、突き合わせ配置された端部4A;4Bの延長方向一端側から他端側まで端部4A;4B同士を段差なく接合することができる。
【0029】
このように、端部4A;4Bの寄せ付け機構として機能する一対のローラ10;10を自転させながら、一対のローラ10;10に対し、一対のローラ10;10の自転により生じる自走力の方向と同一方向に駆動力を付与して一対のローラ10;10を移動させることにより、突き合わせ部分の延長方向の一端側から他端側まで端部4A;4B同士を段差なく接合することができる。
即ち、ヘッドユニット12の移動に伴って発生する部材とローラ10;10間の走行方向の抵抗が、ローラ10;10の自転による自走作用により相殺されることで部材の変形を抑制できる。
【0030】
なお、上記実施形態では、成型ドラム2上に巻き付けられたタイヤ構成部材4の端部4A;4Bを接合するため、シート状ゴム部材の一方の面側から端部同士を接合する接合装置1の形態を示したが、接合対象となるシート状ゴム部材は、成型ドラム2上において接合する場合に限定されない。
【0031】
図5は、接合装置1の他の形態を示す図である。
図5に示す接合装置1は、シート状ゴム部材(以下、シート状部材という)の両面側から端部同士を接合するように構成される。即ち、本実施形態の接合装置1は、端部5T;6T同士が突き合わせ状態にある2つのシート状部材5;6の上面側に一対のローラ10u;10uを有するヘッドユニット12uと、ヘッドユニット12uを突き合せ状態にある端部5T;6Tの延長方向沿って移動させる移動手段40uと、一対のローラ10u;10uを回転させる図外の回転手段とが設けられ、下面側に一対のローラ10d;10dを有するヘッドユニット12dと、ヘッドユニット12dを突き合せ状態にある端部5T;6Tの延長方向沿って移動させる移動手段40dと、一対のローラ10d;10dを回転させる図外の回転手段とが設けられる。一対のローラ10u;10uと一対のローラ10d;10dは、シート状部材5;6を挟んで対向配置され、同期した接合動作を行う。
【0032】
このように、接合対象である2つのシート状部材5;6を両側から接合することにより、例えば、先の実施形態で示したような片面側からの接合では、うまくいかないような厚みのあるものであっても確実に端部5T;6T同士を接合することができる。
【0033】
図6は、本実施形態に係る接合装置1による接合の効果を確かめるために検証を行ったときの検証条件と、検証結果を纏めたグラフ及び表を示している。
検証実験では、一対のローラ10;10を自転させながら突き合わせ部分の延長方向に沿って移動手段40に駆動力を付与しながら移動させたとき(以下、これを併用という)の接合状態と、それに対する比較例として、一対のローラ10;10を自転させながら自転による自走力のみによって突き合わせ部分に沿って移動させたとき(以下、これを自走という)の接合状態と、一対のローラ10;10を自由回転可能とし、移動手段40に突き合わせ部分の延長方向に沿って移動させる駆動力を付与したとき(以下、これを横行という)の接合状態とを比較した。
実験条件は、併用、自走及び横行に対して
図6(a)の表に示す数値を設定した。また、自走では、ローラ10をシート状ゴム部材に押し付ける圧力[kg/MPa]を30/0.1とし、横行では、同圧力[kg/MPa]を70/0.2とした。さらに、接合動作の開始にあたっては、自走では、端部から40mm、横行では、端部から90mmの位置を仮押さえし、一部が接合された後に押さえを開放した。
また、検証実験では、片面側から接合を行う
図1に示す接合装置、両面側から接合を行う
図5に示す接合装置を用い、装置の違いの影響についても調べた。
評価には、接着、変形、ゴム剥げの3つの項目について評価し、各評価項目について、不可:1点、一部不可:2点、問題なし:3点を与えた。
図6(b)は、片面側から接合を行う接合装置を用いたときの評価結果、
図6(c)は、両面側から接合を行う接合装置を用いたときの評価結果である。
図6(b)に示すように、片面側から接合を行う接合装置を用いた場合には、自走と併用のときに良好な結果が得られた。即ち、一対のローラ10;10を自転させ、この自転による自走力を利用することで良好な接合が得られることが分かった。
一方で、両面側から接合を行う接合装置を用いた場合には、併用のときにもっとも良好な接合が得られることが分かった。この結果から、片面側から接合した場合では、上記実施形態で示した本願発明に係る装置の効果について隠れていたものが、両面側から接合することによって明らかとなった。
【0034】
そこで、両面側からの接合装置を用いて、
図6(d),(e)の表に示す条件下で併用によるさらなる検証実験を行い、その結果を〇,△,×により評価した。
〇は、良好な接合を示し、△はやや変形等が見られるものの接合はされていることを示し、×は、変形や十分な接合が得られていないものを示している。
図6(d)に示す実験では、併用においてローラ10;10の自転により生じる自走による自走距離を、移動装置により駆動力を付与して移動させる横行距離の85%~100%とすることで、概ね良好な接合されることが分かった。また、部材の突き合わせ部分の延長方向の一端部よりも外側から他端部の外側まで良好に接合できることが分かった。さらに、
図6(e)に示すように、同じ自走距離及び横行距離において、横行速度を上げた場合でも良好な接合が得られることが分かった。この結果から本実施形態に係る方法の併用により接合する場合、ローラ10;10の自転により生じる自走による自走距離を、移動装置により駆動力を付与して移動させる横行距離の85%~100%、好ましくは90%~100%とすることで、部材の突き合わせ部分の延長方向の一端部よりも外側から他端部の外側まで良好に接合できる。
【0035】
以上説明したように、ゴムを素材としてシート状に形成され、端部同士が突き合わせ配置されたシート状ゴム部材の端部同士を接合する接合装置において、互いに噛み合い同期した回転を可能とするギア部を有し、シート状ゴム部材の端部上で回転しながらギア部が互いに噛み合う歯間でシート状ゴム部材の端部同士を噛み込んで接合する一対のローラと、一対のローラのうち少なくとも一方を回転駆動させるローラ回転駆動手段と、一対のローラの回転により生じる自走方向に沿って前記一対のローラを移動させるローラ移動手段とを備えるように構成し、一対のローラを回転させながら該一対のローラを端部同士が突き合わされた延長方向に沿って移動させて端部同士を接合するように構成することにより、シート状ゴム部材の端部同士の接合において、端部同士が突き合わせ配置された延長方向の一方の端部から他方の端部まで段差を生じさせたり、傷つけることなく接合することができる。
また、一対のローラをシート状ゴム部材の両面に設け、両面側から接合することにより、例えば、厚みのあるシート状ゴム部材であってもより確実に端部同士を接合することができる。
加えて、ローラ回転駆動手段及びローラ移動手段を制御し、一対のローラの移動速度と前記一対のローラの回転速度との速度比を可変とする制御装置を備えるように構成することにより、シート状ゴム部材の種類に応じて接合することができる。
【0036】
即ち、ゴムを素材としてシート状に形成され、端部同士が突き合わせ配置されたシート状ゴム部材の端部同士を接合するシート状ゴム部材の接合方法であって、ギア部の噛み合いにより同期して回転する一対のローラをシート状ゴム部材の端部上で自転させながら、当該自転により該一対のローラに生じる自走方向に沿う駆動力を付与しながら、ギア部が互いに噛み合う歯間でシート状ゴム部材の端部同士を噛み込んで接合することで、端部同士が突き合わせ配置された延長方向の一方の端部から他方の端部まで段差を生じさせたり、傷つけることなく接合することが可能となる。また、一対のローラをシート状ゴム部材の両面に設け、両面側から接合することにより、例えば、厚みのあるシート状ゴム部材であってもより確実に端部同士を接合することができる。さらに、一対のローラの回転速度に応じて前記一対のローラの移動速度を制御すれば、シート状ゴム部材の種類に応じた接合を可能となる。
【0037】
なお、上記実施形態では、移動手段40やローラ回転駆動手段のそれぞれに駆動源として設けられたモータを制御装置50により両方を電気的に制御するものとして説明したが、これに限定されない。例えば、ローラ回転駆動手段のみに駆動源としてのモータを設け、当該モータの駆動力をギアやベルトなどの伝達機構により移動手段40を構成したり、移動手段40のみに駆動源としてのモータを設け、当該モータの駆動力をギアやベルトなどの伝達機構によりローラ回転駆動手段を構成したりし、一つのモータを制御装置50により制御するようにしても良い。
また、駆動源としてのモータを一切用いることなく、前述の移動手段40を構成するガイドレールにおいてレールに対するブロックの移動を歯車等の伝達機構で取り出し、この伝達機構で取り出された回転力を、さらに別の伝達機構によりローラ10に伝達するように構成することで電力を不要とすることができる。なお、ローラ10への伝達機構の減速比は、前述のローラ10の回転速度(自走距離)と、ブロックの移動速度(横行距離)との関係が得られるように設定すれば良い。そして、この減速比を変更すれば、ローラ10の回転速度(自走距離)と、ブロックの移動速度(横行距離)との関係を自在に変更することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 接合装置、4 タイヤ構成部材、4A;4B 端部、10 ローラ、
12 ヘッドユニット、18 ギア部、40 移動手段、50 制御装置。