(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】ウエアラブルベストウェア
(51)【国際特許分類】
A41D 13/00 20060101AFI20240618BHJP
A41D 31/00 20190101ALI20240618BHJP
A41D 13/12 20060101ALI20240618BHJP
A41D 27/20 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
A41D13/00 102
A41D13/00 112
A41D31/00 503M
A41D13/12 181
A41D27/20 Z
(21)【出願番号】P 2020163526
(22)【出願日】2020-09-29
【審査請求日】2023-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】501270287
【氏名又は名称】帝人フロンティア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】澤村 悟
(72)【発明者】
【氏名】吉永 美紀
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-074258(JP,A)
【文献】特開2011-080163(JP,A)
【文献】登録実用新案第3200233(JP,U)
【文献】特開2019-085671(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D13/00-13/12
A41D27/20
A41D31/00
A61B5/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モーションセンサーを備えてなるベストウェアであって、外気側生地と肌側生地とを有し、前記外気側生地と肌側生地との間にセンサーを配してなり、
前記肌側生地がパワーネットから
なり、
前記肌側生地において、外気側生地側にポケットを有しており、該ポケットにモーションセンサーが配されており、
前記ポケットに配されたモーションセンサーが面ファスナーにより前記ポケット内で固定されており、
前記肌側生地がバックル付きベルトを有し、
ベストウェアの腰部と脇部に、単繊維径が50~3000nmの極細繊維を含む布帛を含むことを特徴とするウエアラブルベストウェア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエアラブルベストウェアに関し、さらに詳しくは、モーションセンサーを備えてなるベストウェアであって、着用者の動作においてもモーションセンサーの装着位置がずれにくいベストウェアに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モーションセンサーなどのセンサーを備えたウエアラブル衣料は提案されている(例えば、特許文献1)。
しかしながら、従来のものは、センサーのずれを防止するために、身体のサイズに対して非常に窮屈な構造であるため、着心地が悪いばかりか、着用者の動作を損ね、脱ぎ着もしづらいものであった。一方、窮屈な構造を改善しようとすれば、動作時にセンサーの装着位置がずれてしまい、センサーの検知機能が十分に発揮されないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記の背景に鑑みなされたものであり、モーションセンサーを備えてなるベストウェアであって、着用者の動作においてもモーションセンサーの装着位置がずれにくいベストウェアを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば「モーションセンサーを備えてなるベストウェアであって、外気側生地と肌側生地とを有し、前記外気側生地と肌側生地との間にセンサーを配してなり、前記肌側生地がパワーネットからなり、前記肌側生地において、外気側生地側にポケットを有しており、該ポケットにモーションセンサーが配されており、前記ポケットに配されたモーションセンサーが面ファスナーにより前記ポケット内で固定されており、前記肌側生地がバックル付きベルトを有し、ベストウェアの腰部と脇部に、単繊維径が50~3000nmの極細繊維を含む布帛を含むことを特徴とするウエアラブルベストウェア。」が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、モーションセンサーを備えてなるベストウェアであって、着用者の動作においてもモーションセンサーの装着位置がずれにくいベストウェアが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明のベストウェアの一例を示す図である。なお、ベストウェアの正面図において、背あてのバックル付きベルトを図示しているが、通常、外部からバックル付きベルトは見えない。また、ベストウェアの背面図において、背あてを図示しているが、通常、外部から背あては見えない。
【
図2】本発明のベストウェアを構成する、ポケットおよびベルトを有する背あて(肌側生地)の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のベストウェアについて詳細に説明する。
本発明のベストウェアはウエアラブルとして用いることのできる、ベスト型衣料(「ベスト」ということもある。)であり、外気側生地と肌側生地とを有し、前記外気側生地と肌側生地との間にモーションセンサーを備えている。その際、外気側生地が本体生地であり、肌側生地が背あてであることが好ましい。
【0010】
ここで、外気側生地としては、目付けが50~250g/m2の布帛が好ましい。該目付けが250g/m2より大きいと、ベストの重量が重くなり着用快適性が低下するおそれがある。逆に、該目付けが50g/m2より小さいと、布帛強度が低下するおそれがある。
【0011】
また、外気側生地のタテ方向またはヨコ方向において、JIS L1096-2010
8.16.1 B法にて測定した伸び率が1%以上(より好ましくは10~200%)であることが好ましい。かかる伸び率が1%未満の場合、柔軟性が低下するおそれがある。
【0012】
外気側生地を構成する繊維としては特に制限されず、ポリエステル繊維、ポリウレタン繊維、ポリエーテルエステル繊維、アクリル繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、アセテート繊維、さらには、綿、ウール、絹などの天然繊維やこれらを複合したものが使用可能である。捲縮繊維(ポリエステル仮撚捲縮加工糸など)、弾性繊維(ポリウレタン繊維、ポリエーテルエステル繊維など)、2成分がサイドバイサイド型もしくは偏心芯鞘型に貼り合わされた複合繊維(ポリトリメチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレートとの複合繊維など)などの伸縮性を有する繊維を用いてもよい。また、これらの伸縮性を有する繊維を芯部に配し、他の繊維を鞘部に配した芯鞘型複合糸(空気混繊糸、カバリング糸、合撚糸、複合紡績糸など)として生地に含ませてもよい。
【0013】
また、外気側生地を構成する繊維には、紫外線吸収剤や微細孔形成剤(有機スルホン酸金属塩)、着色防止剤、熱安定剤、難燃剤(三酸化二アンチモン)、蛍光増白剤、着色顔料、帯電防止剤(スルホン酸金属塩)、親水化剤、吸湿剤(ポリオキシアルキレングリコール)、抗菌剤、その他の無機粒子の1種以上が含まれていてもよい。
【0014】
前記外気側生地の組織は特に限定されず、編物、織物、不織布いずれでもよい。例えば、平織、綾織、サテンなどの織組織を有する織物や、天竺、スムース、フライス、鹿の子、そえ糸編、デンビー、ハーフなどの編組織を有する編物、不織布などが好適に例示されるが、これらに限定されるものではない。層数も単層でもよいし、2層以上の多層であってもよい。なかでも優れた柔軟性を得る上で編物が好ましい。特に経編または緯編(丸編)組織を有する編物が好ましい。
【0015】
一方、肌側生地としては、ベストウェアの保形性を向上させる上でパワーネットが好ましい。特に総繊度300~800dtex、フィラメント数5~40本のナイロン繊維とポリウレタン繊維を用いてなるパワーネットが好ましい。また、経編組織を有するパワーネットが好ましい。
【0016】
かかる肌側生地において、外気側生地側の面にポケットを有しており、該ポケットにモーションセンサー(「センサー」ということもある。)を備えていることが好ましい。その際、前記モーションセンサーとしては、加速度センサー、ジャイロセンサー、地磁気センサーなどの慣性センサー、光学式センサー、機械式センサー、磁気式センサー、画像式センサーなどが例示されるが特に限定されるものではない。なかでも慣性センサーが好ましい。例えば、特開2019-88469号公報に記載されているような、3軸方向の加速度と、3軸回りの角速度と、3軸方向の向きを検知することのできるセンサーが好ましい。
【0017】
また、前記ポケットに配されたセンサーが面ファスナーにより前記ポケット内で固定されていることが好ましい。ここで、前記面ファスナーとしては、例えば、特開2009-285144号公報に記載されているような単繊維径が1000nm以下(好ましくは100~800nm)のフィラメント糸Aを含む布帛aと、立毛布帛bとで構成される面ファスナーを用い、布帛aと立毛布帛bとのうち一方を前記ポケットの内側に取り付け、他方をセンサーに取り付けることが好ましい。センサーのずれを防止するのみならず、脱着に力も必要とせず、脱着操作も非常に容易であり好ましい。また、前記肌側生地がバックル付きベルトを有すると、センサーの取り付け位置がさらにずれにくくなり好ましい。
【0018】
なお、本発明のベストウェアにおいて、単数でも良いが、複数(好ましくは2~5個)のセンサーを備えていてもよい。その際、センサーを背中部と腹部に配置してもよい。
【0019】
本発明のベストウェアにおいて、ベストウェアと身体との密着性を向上させるため、滑り止め用布帛として、例えば、特開2019-85671号公報に記載されているような、ヨコ方向およびタテ方向のうち少なくともどちらか一方のストレッチ性が10~250%の範囲内でありかつ単繊維径が50~3000nm(好ましくは100~800nm)の極細繊維を含む布帛をさらに用いてもよい。例えば、かかる滑り止め用布帛を、腰部や脇部に用いてもよい。また、本発明のベストウェアにおいて、外気側生地(本体生地)にベルトを取り付けてもよい。
【0020】
本発明のベストウェアは前記構成を有するので、モーションセンサーを備えてなるベストウェアであって、着用者の動作においてもモーションセンサーの装着位置がずれにくいベストウェアが提供され、着用者の動作によりセンサーの取り付け位置がずれにくく、ゴルフやテニスなどのスポーツ、ダンス、舞踊などの振り付けなどの用途にウエアラブルベストウェアとして好適に使用される。
【実施例】
【0021】
以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、これらには限定はされない。
【0022】
[実施例1]
まず、ポリウレタン繊維に紫外線吸収剤を含有するポリエステル繊維をカバリングした複合糸を用いて、ベストの本体生地を得た。その際、本体生地は前開きとし、ファスナーを取り付けた。
【0023】
一方、
図2に示すような、ナイロン製パワーネットからなる背あて(肌側生地)を得た。かかる背あてにおいて、外気側生地側にポケットを取り付け、該ポケットにモーションセンサーを配した。その際、センサーを面ファスナー(帝人フロンティア社製ファスナーノ(登録商標))によりポケット内に固定した。
【0024】
次いで、かかる背あてを前記本体生地に取り付けてベストを得て、ゴルフ用ベストウェアとした。
かかるベストは、モーションセンサーを備えてなる、ウエアラブルのベストウェアであって、着用者の動作においてもモーションセンサーの装着位置がずれにくいベストウェアであった。
【0025】
[実施例2]
特開2019-85671号公報の記載に従い、以下の滑り止め用布帛を得た。
(滑り止め用布帛の製造方法)
ポリエステル仮撚捲縮加工糸33dtex/36filとポリウレタン弾性糸 44dtex/1filと以下の海島型複合繊維56dtex/10filを用いて28Gダブル丸編機を使用してハニカムベア組織の編地を編成した。
【0026】
かかる海島型複合繊維は下記のようにして製造した。島成分としてポリエチレンテレフタレート(280℃における溶融粘度が1200ポイズ)、海成分として5-ナトリウムスルホイソフタル酸6モル%と数平均分子量4000のポリエチレングリコール6重量%を共重合したポリエチレンテレフタレート(280℃における溶融粘度が1750ポイズ)を用い(溶解速度比(海/島)=230)、海:島=30:70、島数=836の海島型複合未延伸繊維を、紡糸温度280℃、紡糸速度1500m/分で溶融紡糸して一旦巻き取った。得られた未延伸糸を、延伸温度80℃、延伸倍率2.5倍でローラー延伸し、次いで150℃で熱セットして巻き取った。得られた海島型複合延伸糸は56dtex/10filであり、透過型電子顕微鏡TEMによる繊維横断面を観察したところ、島の形状は丸形状でかつ島の径は700nmであった。
【0027】
そして、該編地に通常の染色仕上げ加工および減量加工を行い、海島型複合繊維を単繊維径700nmの極細繊維とした。なお、減量加工は2.5%NaOH水溶液で、70℃にて30%アルカリ減量した。次いで、ファイナルセット工程で吸水加工を施した。なお、かかる吸水加工としては、親水化剤(ポリエチレンテレフタレート-ポリエチレングリコール共重合体)を編地に編地重量に対して0.30重量%付着させた。
【0028】
かくして得られた編地において、目付け177g/m
2、密度82コース/2.54cm、52ウェール/2.54cm、伸縮性:タテ52.9%、ヨコ42.5%、伸長回復性:タテ91.7%、ヨコ92.7%、摩擦係数:2.18であった
次いで、実施例1で得られたベストウェアにおいて、かかる滑り止め用布帛を、腰部には胴回りを一周するよう、脇部はパワーネットの一部を覆うように滑り止め用布帛の高摩擦抵抗面が肌側に位置するように縫製した。また、腰部にベルトを取り付け、
図1に示すベストを得て、ゴルフ用ベストウェアとした。
かかるベストウェアは、着用者の動作によりセンサーの取り付け位置がずれにくいベストウェアであり、センサーでの計測も非常に安定していた。
【0029】
[比較例1]
肌側生地を用いず、本体生地にポケットを取り付け、その中にモーションセンサーを入れること以外は実施例1と同じとした。かかるベストウェアは脱ぎ着が容易で着心地は実施例1と同等であったものの、着用者の動作によりセンサーの取り付け位置がずれやすく、センサーの計測も不充分なベストウェアであった。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明によれば、モーションセンサーを備えてなるベストウェアであって、着用者の動作においてもモーションセンサーの装着位置がずれにくいベストウェアが得られ、その工業的価値は極めて大である。
【符号の説明】
【0031】
1a:ベストの正面
1b:ベストの背面
2:ベルト
3:背あて(肌側生地)