(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】駆動装置及び搬送装置
(51)【国際特許分類】
H02P 5/46 20060101AFI20240618BHJP
H02P 29/028 20160101ALI20240618BHJP
【FI】
H02P5/46 J
H02P5/46 H
H02P29/028
(21)【出願番号】P 2020168004
(22)【出願日】2020-10-02
【審査請求日】2023-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】成相 一志
(72)【発明者】
【氏名】前田 健吾
(72)【発明者】
【氏名】藤田 章吾
【審査官】安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-202102(JP,A)
【文献】特開2006-042483(JP,A)
【文献】特開2013-081282(JP,A)
【文献】特開昭56-083285(JP,A)
【文献】特開2009-106034(JP,A)
【文献】特開平09-086638(JP,A)
【文献】国際公開第2014/045407(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第111130400(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 5/46
H02P 29/028
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能な駆動軸と、
前記駆動軸を回転駆動可能に配置される第1モータと、
前記駆動軸を回転駆動可能に配置される第2モータと、
前記第1モータ及び前記第2モータの駆動を制御する駆動コントローラとを備え、
前記駆動コントローラは、デュアルモードとシングルモードとを切り替えて制御することができるように構成され、
前記駆動コントローラは、前記デュアルモードでは、前記第1モータ及び前記第2モータを一緒に駆動し、
前記駆動コントローラは、前記シングルモードでは、前記第1モータ及び前記第2モータのうちの一方である駆動対象モータを駆動し
、
前記駆動コントローラは、前記デュアルモードにおいて前記第1モータ及び前記第2モータの異常を検出するように構成され、
前記駆動コントローラは、前記第1モータ及び前記第2モータに印加される電流値のいずれもが、前記第1モータ及び前記第2モータの目標電流値よりも大きい、又は、前記第1モータ及び前記第2モータの目標電流値よりも小さい場合、前記第1モータの異常を決定し、
前記駆動コントローラは、前記第1モータに印加される電流値が前記第1モータの目標電流値よりも大きく且つ前記第2モータに印加される電流値が前記第2モータの目標電流値よりも小さい、又は、前記第1モータに印加される電流値が前記第1モータの目標電流値よりも小さく且つ前記第2モータに印加される電流値が前記第2モータの目標電流値よりも大きい場合、前記第2モータの異常を決定する
駆動装置。
【請求項2】
回転可能な駆動軸と、
前記駆動軸を回転駆動可能に配置される第1モータと、
前記駆動軸を回転駆動可能に配置される第2モータと、
前記第1モータ及び前記第2モータの駆動を制御する駆動コントローラとを備え、
前記駆動コントローラは、デュアルモードとシングルモードとを切り替えて制御することができるように構成され、
前記駆動コントローラは、前記デュアルモードでは、前記第1モータ及び前記第2モータを一緒に駆動し、
前記駆動コントローラは、前記シングルモードでは、前記第1モータ及び前記第2モータのうちの一方である駆動対象モータを駆動し、前記駆動対象モータの回転速度、回転加速度及び回転減速度の少なくとも1つを前記デュアルモードよりも低くするように制御し、
前記駆動コントローラは、前記デュアルモードにおいて前記第1モータ及び前記第2モータの異常を検出するように構成され、
前記駆動コントローラは、前記第1モータ及び前記第2モータに印加される電流値のいずれもが、前記第1モータ及び前記第2モータの目標電流値よりも大きい、又は、前記第1モータ及び前記第2モータの目標電流値よりも小さい場合、前記第1モータの異常を決定し、
前記駆動コントローラは、前記第1モータに印加される電流値が前記第1モータの目標電流値よりも大きく且つ前記第2モータに印加される電流値が前記第2モータの目標電流値よりも小さい、又は、前記第1モータに印加される電流値が前記第1モータの目標電流値よりも小さく且つ前記第2モータに印加される電流値が前記第2モータの目標電流値よりも大きい場合、前記第2モータの異常を決定
し、
前記駆動コントローラは、前記第1モータ及び前記第2モータのうちの一方に異常がある場合に前記シングルモードで動作し、前記第1モータ及び前記第2モータのうちの正常なモータを前記駆動対象モータとして駆動する
駆動装置。
【請求項3】
前記第1モータの回転量を検出する第1回転センサと、
前記第2モータの回転量を検出する第2回転センサとをさらに備え、
前記駆動コントローラは、前記デュアルモードにおいて、前記第1回転センサの検出結果に基づき、前記第1モータの回転位置を制御する第1制御を前記第1モータに行い、前記第1回転センサ及び前記第2回転センサの検出結果に基づき、前記第2モータの回転速度を前記第1モータの回転速度に同調させる第2制御を前記第2モータに行うように構成される
請求項1
又は2に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記駆動コントローラは、前記シングルモードにおいて前記第1モータを駆動する場合、前記第1制御を前記第1モータに行い、
前記駆動コントローラは、前記シングルモードにおいて前記第2モータを駆動する場合、前記第2回転センサの検出結果に基づき前記第2モータの回転位置を制御する第3制御を前記第2モータに行う
請求項
3に記載の駆動装置。
【請求項5】
回転可能な駆動軸と、
前記駆動軸を回転駆動可能に配置される第1モータと、
前記駆動軸を回転駆動可能に配置される第2モータと、
前記第1モータ及び前記第2モータの駆動を制御する駆動コントローラと、
前記第1モータの回転量を検出する第1回転センサと、
前記第2モータの回転量を検出する第2回転センサとを備え、
前記駆動コントローラは、デュアルモードとシングルモードとを切り替えて制御することができるように構成され、
前記デュアルモードでの前記駆動コントローラは、
前記第1モータ及び前記第2モータを一緒に駆動し、
前記第1回転センサの検出結果に基づき、前記第1モータの回転位置を制御する第1制御を前記第1モータに行い、前記第1回転センサ及び前記第2回転センサの検出結果に基づき、前記第2モータの回転速度を前記第1モータの回転速度に同調させる第2制御を前記第2モータに行うように構成され、
前記シングルモードでの前記駆動コントローラは、
前記第1モータ及び前記第2モータのうちの一方である駆動対象モータを駆動し、前記駆動対象モータの回転速度、回転加速度及び回転減速度の少なくとも1つを前記デュアルモードよりも低くするように制御し、
前記第1モータを駆動する場合、前記第1制御を前記第1モータに行い、
前記第2モータを駆動する場合、前記第2回転センサの検出結果に基づき前記第2モータの回転位置を制御する第3制御を前記第2モータに行うように構成され、
前記駆動コントローラは、前記第1制御及び前記第3制御のための信号を入出力する第1入出力インタフェースと、前記第2制御のための信号を入出力する第2入出力インタフェースとを含み、
前記駆動コントローラは、前記第1入出力インタフェース及び前記第2入出力インタフェースのそれぞれに、前記第1モータ及び前記第2モータが電気的に接続される場合、前記デュアルモードでの制御を実行し、
前記駆動コントローラは、前記第1入出力インタフェースのみに前記第1モータが電気的に接続される場合、前記シングルモードにおいて前記第1モータに前記第1制御を行い、
前記駆動コントローラは、前記第1入出力インタフェースのみに前記第2モータが電気的に接続される場合、前記シングルモードにおいて前記第2モータに前記第3制御を行う
駆動装置。
【請求項6】
前記駆動コントローラは、前記第1モータ、前記第2モータ、前記第1回転センサ及び前記第2回転センサに異常がない場合、前記デュアルモードで制御を行うように構成され、
前記駆動コントローラは、前記第2モータ及び前記第2回転センサの少なくとも1つに異常がある場合、前記シングルモードにおいて前記第1モータを駆動するように構成され、
前記駆動コントローラは、前記第1モータ及び前記第1回転センサの少なくとも1つに異常がある場合、前記シングルモードにおいて前記第2モータを駆動するように構成される
請求項
4又は5に記載の駆動装置。
【請求項7】
前記駆動コントローラは、前記第1回転センサから受け取る信号の状態に基づき、前記第1回転センサの異常を検出し、前記第2回転センサから受け取る信号の状態に基づき、前記第2回転センサの異常を検出するように構成される
請求項
6に記載の駆動装置。
【請求項8】
前記第1入出力インタフェースと前記第2入出力インタフェースと前記第1モータと前記第2モータとの間の電気的な接続を切り替える切替器をさらに備える
請求項
5に記載の駆動装置。
【請求項9】
前記駆動コントローラは、制御プログラムにより各モードでの制御系統を切り替えるように構成され、
前記駆動コントローラは、
前記デュアルモードでは、前記第1制御及び前記第2制御のための第1制御系統で制御を実行し、
前記第1モータを駆動する前記シングルモードでは、前記第1制御のための第2制御系統で制御を実行し、
前記第2モータを駆動する前記シングルモードでは、前記第3制御のための第3制御系統で制御を実行する
請求項
4、請求項4を引用する請求項6、及び請求項4を引用する請求項7のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項10】
前記第1モータは、第1電気モータと前記第1回転センサとを含むサーボモータであり、
前記第2モータは、第2電気モータと前記第2回転センサとを含むサーボモータであり、
前記駆動コントローラは、前記第1回転センサ及び前記第2回転センサの検出結果と、前記第1電気モータ及び前記第2電気モータに印加される電流値とをフィードバック情報として用いて、前記第1電気モータ及び前記第2電気モータをサーボ制御する
請求項
3~9のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項11】
ロボットが取り扱うワークを搬送する搬送装置であって、
請求項1~10のいずれか一項に記載の駆動装置と、
前記駆動装置によって駆動されることで前記ワークを移動する移動機構とを備える
搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、駆動装置及び搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、工場の生産ライン等で使用され且つワーク等を搬送する搬送装置は、継続的に休止することなく稼働する。何らかの原因で搬送装置が停止すると、生産ライン全体が影響を受け得る。例えば、特許文献1は、コンベヤベルト用ダブルモータ牽引装置を備えるラボラトリ自動化システムを開示する。牽引装置は、コンベヤベルトを作動するように構成された2つのモータを備える。当該システムの中央制御ユニットは、牽引装置の通常運転時、第1モータのみを作動し、第1モータが故障した場合又は寿命に達しそうなタイミングで、第1モータを停止すると共に第2モータを始動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように1つの装置に通常運転時に稼働しないモータを搭載することは、スペース効率及びコストのいずれの点にでも、非効率である。例えば、規格を外れるようなモータの大型化を回避するために、装置の同じ駆動軸を2つのモータで同時に駆動する構成が用いられる場合がある。例えば、一方のモータに異常が発生すると、モータの出力が不足し、装置の稼働を継続できないおそれがある。
【0005】
本開示は、同じ駆動軸を同時に駆動する2つのモータの少なくとも1つに異常が発生した場合に駆動軸の駆動を継続することを可能にする駆動装置及び搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る駆動装置は、回転可能な駆動軸と、前記駆動軸を回転駆動可能に配置される第1モータと、前記駆動軸を回転駆動可能に配置される第2モータと、前記第1モータ及び前記第2モータの駆動を制御する駆動コントローラとを備え、前記駆動コントローラは、デュアルモードとシングルモードとを切り替えて制御することができるように構成され、前記駆動コントローラは、前記デュアルモードでは、前記第1モータ及び前記第2モータを一緒に駆動し、前記駆動コントローラは、前記シングルモードでは、前記第1モータ及び前記第2モータのうちの一方である駆動対象モータを駆動し、前記駆動対象モータの回転速度、回転加速度及び回転減速度の少なくとも1つを前記デュアルモードよりも低くするように制御する。
【0007】
本開示の技術によれば、同じ駆動軸を同時に駆動する2つのモータの少なくとも1つに異常が発生した場合で駆動軸の駆動を継続することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態に係るロボットシステムの構成の一例を示す概略図
【
図2】実施の形態に係る搬送装置の駆動機構の構成の一例を示す平面図
【
図3】実施の形態に係るロボットシステムのハードウェア構成の一例を示すブロック図
【
図4】実施の形態に係る駆動コントローラの機能的な構成の一例を示すブロック図
【
図5A】駆動コントローラがマスタモータの異常を決定する第1ケースでのマスタモータの電流値の挙動の一例を示す図
【
図5B】駆動コントローラがマスタモータの異常を決定する第1ケースでのスレーブモータの電流値の挙動の一例を示す図
【
図6A】駆動コントローラがマスタモータの異常を決定する第2ケースでのマスタモータの電流値の挙動の一例を示す図
【
図6B】駆動コントローラがマスタモータの異常を決定する第2ケースでのスレーブモータの電流値の挙動の一例を示す図
【
図7A】駆動コントローラがスレーブモータの異常を決定する第3ケースでのスレーブモータの電流値の挙動の一例を示す図
【
図7B】駆動コントローラがスレーブモータの異常を決定する第3ケースでのマスタモータの電流値の挙動の一例を示す図
【
図8A】駆動コントローラがスレーブモータの異常を決定する第4ケースでのスレーブモータの電流値の挙動の一例を示す図
【
図8B】駆動コントローラがスレーブモータの異常を決定する第4ケースでのマスタモータの電流値の挙動の一例を示す図
【
図9】第1サーボモータを用いる第1シングルモードでの駆動コントローラの機能的な構成の一例を示すブロック図
【
図10】第2サーボモータを用いる第2シングルモードでの駆動コントローラの機能的な構成の一例を示すブロック図
【
図11A】実施の形態に係る駆動コントローラの動作の一例を示すフローチャート
【
図11B】実施の形態に係る駆動コントローラの動作の一例を示すフローチャート
【
図12】変形例1に係る駆動コントローラのハードウェア構成の一例を示す図
【
図13】変形例2に係る駆動コントローラのハードウェア構成の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施の形態)
以下において、本開示の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的又は具体的な例を示すものである。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、添付の図面における各図は、模式的な図であり、必ずしも厳密に図示されたものでない。さらに、各図において、実質的に同一の構成要素に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化される場合がある。また、本明細書及び特許請求の範囲では、「装置」とは、1つの装置を意味し得るだけでなく、複数の装置からなるシステムも意味し得る。
【0010】
[ロボットシステムの構成]
実施の形態に係るロボットシステム1の構成を説明する。
図1は、実施の形態に係るロボットシステム1の構成の一例を示す概略図である。
図1に示すように、ロボットシステム1は、少なくとも1つの搬送装置100と、少なくとも1つのロボット200と、統合コントローラ300(図示略)と、入出力装置400とを含む。これに限定されないが、本実施の形態では、ロボットシステム1は、製造ラインPLに配置される。
【0011】
図1では、2つの搬送装置100が示されるが、製造ラインPLでは、複数の搬送装置100が、その搬送方向D1に隣り合って配置される。例えば、
図1の2つの搬送装置100に対して方向D1とその反対方向D2とに他の搬送装置100が配置される。各搬送装置100の周りに少なくとも1つのロボット200が配置される。
図1では、2つのロボット200が、1つの搬送装置100に対して方向D1の片側のみに配置されているが、2つ以上のロボット200が両側に配置されてもよい。搬送装置100は、方向D1での隣の搬送装置100にワークWを搬送するように構成されている。各ロボット200は、搬送装置100上のワークWに対して作業を行う。本実施の形態では、ワークWは、自動車の車体であり、ワークWに対する作業はスポット溶接作業である。ワークWは自動車の車体以外の物体であってもよく、作業はスポット溶接以外の作業であってもよい。
【0012】
[ロボットの構成]
図1に示すように、各ロボット200は、ロボットアーム210と、エンドエフェクタ220と、ロボットコントローラ230とを含む。ロボットアーム210は、少なくとも1つの関節を有し、少なくとも1つの自由度を有する。エンドエフェクタ220は、ワークWに作用を加えることができるように構成され、本実施の形態ではスポット溶接ガンである。ロボットアーム210の先端は、エンドエフェクタ220が取り付けられるように構成される。ロボットアーム210は、エンドエフェクタ220の位置及び姿勢を自在に変更することができる。本実施の形態では、ロボットアーム210の型式は、垂直多関節型であるが、これに限定されず、いかなる型式であってもよく、例えば、水平多関節型、極座標型、円筒座標型又は直角座標型等であってもよい。
【0013】
ロボットコントローラ230は、ロボットアーム210の動作及びエンドエフェクタ220の動作を含むロボット200の動作全体を制御する。ロボットコントローラ230は、ロボットアーム210及びエンドエフェクタ220への指令を生成するコンピュータ装置を含み、さらに、ロボットアーム210及びエンドエフェクタ220に供給する電力を制御するための電気回路を含み得る。ロボットコントローラ230は、ロボットアーム210及びエンドエフェクタ220と有線通信又は無線通信を介して接続される。これらの間の通信は、いかなる有線通信及び無線通信であってもよい。
【0014】
[搬送装置の構成]
図1に示すように、搬送装置100は、ワークWを支持するレール103を搬送するように構成される。搬送装置100は、本体110と、駆動機構120と、駆動コントローラ130(図示略)とを含む。駆動機構120及び駆動コントローラ130は、駆動装置150を構成する。本体110は、基台101と、複数のレールガイド102と、複数のレール103と、複数の昇降装置104とを備える。複数のレールガイド102、複数のレール103及び複数の昇降装置104は、ワークWを移動させる移動機構160を構成する。
【0015】
複数のレールガイド102は、矩形板状の基台101上において、基台101の長手方向である方向D1に対する基台101の両縁それぞれの近傍で、方向D1に間隔をあけて一列に配列される。各レールガイド102は、上下方向に延びる。これに限定されないが、本実施の形態では、基台101の一方の縁のレールガイド102と他方の縁のレールガイド102とは、方向D1の軸に関して対称に配置される。
【0016】
なお、本明細書及び特許請求の範囲において、「上方向D3」、「下方向D4」及び「上下方向D3及びD4」は、基台101が設置される支持面に垂直な方向であり、「上方向D3」は支持面から離れる方向であり、「下方向D4」は支持面に向かう方向である。本実施の形態では、支持面は略水平な面である。
【0017】
搬送装置100は、1つのワークWを搬送するための2つのレール103を含む。以下において、2つのレール103を区別する場合に「レール103A及び103B」と表現し、区別しない場合に「レール103」と表現することがある。レール103A及び103Bはそれぞれ、レール本体103aと、第1駆動部材103bと、少なくとも1つの支持ピース103cとを含む。
【0018】
基台101の一方の縁の複数のレールガイド102は、レール103Aのレール本体103aと係合し、当該レール本体103aを方向D1にスライド可能に支持する。基台101の他方の縁の複数のレールガイド102は、レール103Bのレール本体103aと係合し、当該レール本体103aを方向D1にスライド可能に支持する。レール103A及び103Bのレール本体103aは、方向D1に互いに平行に延びる。レール103A及び103Bそれぞれのレール本体103aは、当該レール本体103aの上に配置される複数の支持ピース103cを介してワークWを支持する。例えば、2つの支持ピース103cが、ワークWの所定の場所を支持する位置に配置される。
【0019】
レール103A及び103Bはそれぞれ、レール本体103aの下部に第1駆動部材103bを含む。各第1駆動部材103bは、各レール本体103aに固定される。各第1駆動部材103bは、各レール本体103aと同様に方向D1に延びる柱状の部材であり、当該レール本体103aよりも方向D1及びD2それぞれに突出する。各第1駆動部材103bは、レール本体103aの駆動のための係合部分としてギヤ歯を下部に含み、ラックを構成する。
【0020】
複数の昇降装置104は、基台101の両縁の複数のレールガイド102の間で方向D1に間隔をあけて配置される。各昇降装置104は、上下方向D3及びD4に伸縮することができるように構成され、ワークWに下方から当接して伸縮することでワークWを上昇及び下降させることができる。例えば、昇降装置104は、昇降装置104の昇降動作を駆動する電動のアクチュエータを含む。
【0021】
図2は、実施の形態に係る搬送装置100の駆動機構120の構成の一例を示す平面図である。
図1及び
図2に示すように、駆動機構120は、第2駆動部材121と、第1駆動器122と、第2駆動器123とを含む。
【0022】
第2駆動部材121は、円柱状の部材であり、回転可能な駆動軸の一例である。第2駆動部材121は、基台101上で方向D1と交差する方向、具体的には垂直な方向に延びる軸部121aを含む。軸部121aは、基台101上に配置された2つの軸受部材124a及び124bによって、その軸心を中心に回転可能に支持される。第2駆動部材121は、円筒歯車121b、121c及び121dをさらに含む。円筒歯車121b及び121cは、軸部121aの軸心を中心に一体に回転するように、軸部121aの両端に固定される。円筒歯車121dは、軸部121aの軸心を中心に一体に回転するように、円筒歯車121b及び121cの間で軸部121aに固定される。円筒歯車121b及び121cはそれぞれ、レール103A及び103Bの第1駆動部材103bとギヤ係合し、ピニオンを構成する。第1駆動部材103b及び第2駆動部材121はラック・アンド・ピニオン構造を形成する。
【0023】
駆動器122及び123は、方向D1及びD2での軸部121aの両側に配置される。駆動器122及び123はそれぞれ、サーボモータ122a及び123aと、サーボモータ122a及び123aの回転軸に配置される円筒歯車122b及び123bとを含む。円筒歯車122b及び123bはそれぞれ、軸心を中心に一体に回転するようにサーボモータ122a及び123aの回転軸に固定される。円筒歯車122b及び123bはいずれも、円筒歯車121dとギヤ係合する。
【0024】
これに限定されないが、本実施の形態では、サーボモータ122a及び123aは、同様の構成を有する。サーボモータ122a及び123aはそれぞれ、電気モータ(図示略)と、電気モータの回転数を検出するエンコーダ等の回転センサ(図示略)とを含む。例えば、定格出力及び特性等を含むサーボモータ122a及び123aの電気モータの構成及び能力が同じである。サーボモータ122a及び123aはそれぞれ、回転センサの検出信号を駆動コントローラ130に送るように構成される。
【0025】
なお、駆動コントローラ130は、サーボモータ122a及び123aの動作を制御する。駆動コントローラ130は、サーボモータ122a及び123aへの指令を生成するコンピュータ装置を含み、さらに、サーボモータ122a及び123aに供給する電力を制御するための電気回路を含み得る。駆動コントローラ130は、サーボモータ122a及び123aと有線通信又は無線通信を介して接続される。これらの間の通信は、いかなる有線通信及び無線通信であってもよい。
【0026】
駆動コントローラ130の制御によって、サーボモータ122a及び123aは、一方向又はその反対方向に同じ回転方向で回転駆動する。このように回転駆動するサーボモータ122a及び123aは、円筒歯車122b及び123bを介して円筒歯車121d及び軸部121aを一方向又はその反対方向に協同して回転させる。軸部121aは、円筒歯車121b及び121cを介して、レール103A及び103Bそれぞれの第1駆動部材103bを方向D1又はD2に移動させる。よって、レール103A及び103Bは、搭載されるワークWと共に方向D1又はD2に移動し、ワークWを搬送する。
【0027】
本実施の形態では、第1駆動部材103bは、方向D1で基台101よりも長い。このため、駆動機構120がレール103A及び103Bを方向D1に移動させると、レール103A及び103Bの第1駆動部材103bの方向D1での端部が、方向D1で隣り合う他の搬送装置100の駆動機構120の円筒歯車122b及び123bに係合することができる。このとき、第1駆動部材103bの方向D2での端部は、第1駆動部材103bを移動させている駆動機構120の円筒歯車122b及び123bと係合している。よって、搬送装置100間のレール103A及び103Bの移動が可能である。
【0028】
[入出力装置の構成]
図1に示すように入出力装置400は、ユーザ等による指令、情報及びデータ等の入力を受け付け、統合コントローラ300等に出力する。入出力装置400は、統合コントローラ300等から送られる情報及びデータ等を受け取り、当該情報及びデータ等をユーザに提示する。入出力装置400は、入力装置と、ディスプレイ等の提示装置とを含む。入力装置は公知のいかなる入力装置であってもよく、提示装置は、視覚及び聴覚等を通じてユーザに知覚可能な情報を与えるいかなる装置であってもよい。例えば、入出力装置400は、搬送装置100及びロボット200の所定の動作を教示するための教示データを生成可能である教示装置、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、スマートウォッチ及びタブレット端末等のスマートデバイス、その他の端末装置、又は、ラインコントローラ(「工程制御盤」又は「ライン制御盤」とも呼ばれる)等であってもよい。
【0029】
[ロボットシステムのハードウェア構成]
ロボットシステム1のハードウェア構成を説明する。
図3は、実施の形態に係るロボットシステム1のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図3に示すように、統合コントローラ300は、全ての搬送装置100の動作を制御する。統合コントローラ300は、複数の搬送装置100を互いに連携させて動作させるように制御することができる。統合コントローラ300は、入出力装置400に入力される指令、情報及びデータ等を入出力装置400から受け取り、指令、情報及びデータ等に従って制御を行う。統合コントローラ300は、入出力装置400に、ロボットシステム1の様々な情報及びデータ等を出力する。
【0030】
統合コントローラ300は、各搬送装置100の駆動コントローラ130と、入出力装置400と有線通信又は無線通信を介して接続される。これらの間の通信は、いかなる有線通信及び無線通信であってもよい。統合コントローラ300は、複数の駆動コントローラ130を連携させて制御する。例えば、統合コントローラ300は、複数の駆動軸の駆動を同期して制御可能であるように構成され、上記複数の駆動軸は、複数の駆動コントローラ130それぞれによって駆動制御される第2駆動部材121を含む。例えば、統合コントローラ300は、ロボットコントローラ230とI/O通信等により信号を送受信し、当該信号に基づき各駆動コントローラ130の動作を制御してもよい。統合コントローラ300はコンピュータ装置を含む。
【0031】
例えば、統合コントローラ300及び駆動コントローラ130のコンピュータ装置はそれぞれ、プロセッサPとメモリMとを含む。コンピュータ装置は、各種データを記憶するストレージをさらに含んでもよい。ストレージは、ハードディスクドライブ及びSSD(Solid State Drive)等の記憶装置で構成されてもよい。プロセッサP及びメモリMは演算器を構成する。演算器は、他の装置との指令、情報及びデータ等の送受信を行う。演算器は、各種機器からの信号の入力及び各制御対象への制御信号の出力を行う。
【0032】
メモリMは、プロセッサPが実行するプログラム、及び各種固定データ等を記憶する。メモリMは、揮発性メモリ及び不揮発性メモリなどの半導体メモリ等の記憶装置で構成されてもよい。これに限定されないが、本実施の形態では、メモリMは、揮発性メモリであるRAM(Random Access Memory)と不揮発性メモリであるROM(Read-Only Memory)とを含む。
【0033】
プロセッサPは、RAM及びROMと一緒にコンピュータシステムを形成する。コンピュータシステムは、プロセッサPがRAMをワークエリアとして用いてROMに記録されたプログラムを実行することによって、コンピュータ装置の機能を実現してもよい。コンピュータ装置の機能の一部又は全部は、上記コンピュータシステムにより実現されてもよく、電子回路又は集積回路等の専用のハードウェア回路により実現されてもよく、上記コンピュータシステム及びハードウェア回路の組み合わせにより実現されてもよい。コンピュータ装置は、単一のコンピュータ装置による集中制御により各処理を実行してもよく、複数のコンピュータ装置の協働による分散制御により各処理を実行してもよい。
【0034】
これに限定されないが、例えば、プロセッサPは、CPU(中央処理装置:Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、マイクロプロセッサ(microprocessor)、プロセッサコア(processor core)、マルチプロセッサ(multiprocessor)、ASIC(Application-Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等を含み、IC(集積回路)チップ、LSI(Large Scale Integration)等に形成された論理回路又は専用回路によって各処理を実現してもよい。複数の処理は、1つ又は複数の集積回路により実現されてもよく、1つの集積回路により実現されてもよい。
【0035】
なお、統合コントローラ300は、駆動コントローラ130の機能の少なくとも一部を含むように構成されてもよく、ロボットコントローラ230の機能の少なくとも一部を含むように構成されてもよい。
【0036】
[駆動コントローラの機能的構成]
サーボモータ122a及び123aの制御に関する駆動コントローラ130の機能的構成を説明する。
図4は、実施の形態に係る駆動コントローラ130の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
図4に示すように、駆動コントローラ130は、第1サーボモータ122a及び第2サーボモータ123aの駆動を、第1サーボモータ122a及び第2サーボモータ123aの回転位置、回転速度及び印加電流値の少なくとも1つの情報をフィードバック情報として用いてサーボ制御する。
【0037】
駆動コントローラ130は、サーボモータ122a及び123aの両方が正常である場合にデュアルモードで動作し、サーボモータ122a及び123aの両方に駆動させる。駆動コントローラ130は、第1サーボモータ122aをマスタモータとして制御し、第1サーボモータ122aの第1電気モータ122aaの回転位置及び回転速度を制御する位置制御を行う。当該位置制御は第1制御の一例である。
【0038】
駆動コントローラ130は、第2サーボモータ123aをスレーブモータとして制御し、第1電気モータ122aaの回転速度に回転速度を同調させるように、第2サーボモータ123aの第2電気モータ123aaの回転速度を制御する速度制御を行う。当該速度制御は第2制御の一例である。なお、本明細書及び特許請求の範囲において、位置制御は、電気モータの回転位置及び回転速度のうちの少なくとも回転位置の制御を含み、本実施の形態では、回転位置及び回転速度の両方の制御を含む。
【0039】
駆動コントローラ130は、サーボモータ122a及び123aの一方に異常がある場合にシングルモードで動作し、サーボモータ122a及び123aのうち正常なサーボモータをマスタモータとして制御し、異常なサーボモータを停止する。つまり、駆動コントローラ130は、正常なサーボモータ122a又は123aの位置制御を行う。
【0040】
駆動コントローラ130は、減算器131a~131dと、位置制御器132と、速度制御器133と、電流制御器134と、差分検出器135と、駆動回路136a及び136bと、位置検出器137a及び137bと、速度検出器138a及び138bと、異常検出器139aと、モード切替器139bとを機能的構成要素として含む。構成要素間を結ぶ実線の矢印は、デュアルモードでの制御の流れを示す。破線の矢印で示される構成要素間の制御の流れは、シングルモードで用いられる。なお、駆動回路136a及び136bは、駆動コントローラ130とは別個の構成要素として設けられてもよい。
【0041】
位置検出器137aは、第1サーボモータ122aがマスタモータである場合に機能する。位置検出器137aは、第1サーボモータ122aの第1回転センサ122abから検出信号を受け取り、当該検出信号を処理して第1電気モータ122aaの回転位置を検出する。位置検出器137aは、当該回転位置の情報を減算器131aに送る。
【0042】
位置検出器137bは、第2サーボモータ123aがマスタモータである場合に機能する。位置検出器137bは、第2サーボモータ123aの第2回転センサ123abから検出信号を受け取り、当該検出信号を処理して第2電気モータ123aaの回転位置を検出する。位置検出器137aは、当該回転位置の情報を減算器131aに送る。
【0043】
速度検出器138aは、第1サーボモータ122aがマスタモータである場合に機能する。速度検出器138aは、第1回転センサ122abから検出信号を受け取り、当該検出信号を処理して第1電気モータ122aaの回転速度を検出する。速度検出器138aは、デュアルモードでは当該回転速度の情報を減算器131b及び差分検出器135に送り、シングルモードでは当該回転速度の情報を減算器131bに送る。
【0044】
速度検出器138bは、デュアルモードの場合と、シングルモードで第2サーボモータ123aがマスタモータである場合とに機能する。速度検出器138bは、第2回転センサ123abから検出信号を受け取り、当該検出信号を処理して第2電気モータ123aaの回転速度を検出する。速度検出器138bは、デュアルモードでは当該回転速度の情報を差分検出器135に送り、シングルモードでは当該回転速度の情報を減算器131bに送る。
【0045】
減算器131aは、統合コントローラ300から目標搬送位置を指令する位置指令を受け取るように構成される。目標搬送位置は、レール103A及び103Bの移動目標の位置である。例えば、減算器131aは、所定の時間ステップ毎に位置指令を受け取る。
【0046】
第1サーボモータ122aがマスタモータである場合、減算器131aは、目標搬送位置での第1電気モータ122aaの目標の回転位置から、位置検出器137aから受け取る第1電気モータ122aaの現状の回転位置を減算し、第1電気モータ122aaの回転角の角度偏差を生成する。
【0047】
第2サーボモータ123aがマスタモータである場合、減算器131aは、目標搬送位置での第2電気モータ123aaの目標の回転位置から、位置検出器137bから受け取る第2電気モータ123aaの現状の回転位置を減算し、第2電気モータ123aaの回転角の角度偏差を生成する。
【0048】
減算器131aは、電気モータ122aa又は123aaの現状の回転位置の情報をフィードバック情報として用いて角度偏差を生成し、当該角度偏差の情報を位置制御器132に送る。
【0049】
位置制御器132は、減算器131aから受け取る角度偏差の情報と、位置指令のタイミングである所定の時間ステップの情報とを用いて演算処理を行い、サーボモータの電気モータの目標の回転速度を示す速度指令値を生成し減算器131bに送る。位置制御器132は、第1サーボモータ122aがマスタモータである場合には第1電気モータ122aaの速度指令値を生成し、第2サーボモータ123aがマスタモータである場合には第2電気モータ123aaの速度指令値を生成する。
【0050】
減算器131bは、第1サーボモータ122aがマスタモータである場合に、位置制御器132から受け取る第1電気モータ122aaの速度指令値から、速度検出器138aから受け取る第1電気モータ122aaの現状の回転速度を減算し、第1電気モータ122aaの速度偏差を生成する。
【0051】
減算器131bは、第2サーボモータ123aがマスタモータである場合に、位置制御器132から受け取る第2電気モータ123aaの速度指令値から、速度検出器138bから受け取る第2電気モータ123aaの現状の回転速度を減算し、第2電気モータ123aaの速度偏差を生成する。
【0052】
減算器131bは、電気モータ122aa又は123aaの現状の回転速度の情報をフィードバック情報として用いて速度偏差を生成し、当該速度偏差の情報を速度制御器133に送る。
【0053】
速度制御器133は、減算器131bから受け取る速度偏差の情報を用いて演算処理を行い、サーボモータの電気モータの電流指令値を生成する。電流指令値は、電気モータの目標の電流値及び電流の目標の周波数等を含み得る。電気モータの目標の電流値及び電流の目標の周波数は、電気モータの目標の回転トルク及び回転速度に対応する。速度制御器133は、第1サーボモータ122aがマスタモータである場合に、第1電気モータ122aaの速度偏差を用いて電流指令値を生成する。速度制御器133は、第2サーボモータ123aがマスタモータである場合に、第2電気モータ123aaの速度偏差を用いて電流指令値を生成する。
【0054】
速度制御器133は、デュアルモードでは、電流指令値を減算器131c及び電流制御器134に送る。本実施の形態では、電気モータ122aa及び123aaの構成及び能力が同様であるため、減算器131c及び電流制御器134に送られる電流指令値は同じである。例えば、電気モータ122aa及び123aaの構成及び/又は能力が異なる場合、速度制御器133は、速度偏差に基づき、電気モータ122aa及び123aaそれぞれに対応する電流指令値を生成し、減算器131c及び電流制御器134に送ってもよい。速度制御器133は、シングルモードで第1サーボモータ122aがマスタモータである場合、電流指令値を減算器131cのみに送る。速度制御器133は、シングルモードで第2サーボモータ123aがマスタモータである場合、電流指令値を、電流制御器134を介して減算器131dのみに送る。
【0055】
差分検出器135は、デュアルモードでのみ機能する。差分検出器135は、速度検出器138aから受け取る第1電気モータ122aaの現状の回転速度の情報と、速度検出器138bから受け取る第2電気モータ123aaの現状の回転速度の情報とを用いて、2つの回転速度の差分を検出し、当該差分の情報を電流制御器134に送る。
【0056】
電流制御器134は、デュアルモードにおいて機能し、差分検出器135から受け取る差分の情報を用いて、速度制御器133から受け取る電流指令値を修正する。つまり、電流制御器134は、回転速度の差分を補償する処理を行う。具体的には、電流制御器134は、第2電気モータ123aaの回転速度を第1電気モータ122aaの回転速度に一致させるように、電流指令値に含まれる目標の電流値及び電流の目標の周波数等を修正し、修正後の目標の電流値及び電流の目標の周波数等を含む修正電流指令値を生成する。電流制御器134は、修正電流指令値を減算器131dに送る。
【0057】
電流制御器134は、シングルモードにおいて第2サーボモータ123aがマスタモータである場合にも機能し、速度制御器133から受け取る電流指令値を、修正電流指令値として減算器131dに送る。
【0058】
減算器131cは、駆動回路136aが第1サーボモータ122aに出力する電流の出力値を、駆動回路136aから受け取るように構成される。なお、駆動回路136aと第1サーボモータ122aとの間に電流センサが設けられ、減算器131cは、電流センサによって検出される電流の出力値を受け取るように構成されてもよい。電流の出力値は、出力される電流値及び電流の周波数等を含み得る。減算器131cは、速度制御器133から受け取る電流指令値から、第1サーボモータ122aへの現状の電流の出力値を減算し、電流偏差を生成する。減算器131cは、第1サーボモータ122aへの現状の電流の出力値の情報をフィードバック情報として用いて電流偏差を生成し、当該電流偏差を駆動回路136aに送る。
【0059】
減算器131dは、駆動回路136bが第2サーボモータ123aに出力する電流の出力値を、駆動回路136bから受け取るように構成される。なお、駆動回路136bと第2サーボモータ123aとの間に電流センサが設けられ、減算器131dは、電流センサによって検出される電流の出力値を受け取るように構成されてもよい。減算器131dは、電流制御器134から受け取る修正電流指令値から、第2サーボモータ123aへの現状の電流の出力値を減算し、電流偏差を生成する。減算器131dは、第2サーボモータ123aへの現状の電流の出力値の情報をフィードバック情報として用いて電流偏差を生成し、当該電流偏差を駆動回路136bに送る。
【0060】
駆動回路136aは、第1電気モータ122aaに電流を印加し、駆動回路136bは、第2電気モータ123aaに電流を印加する。例えば、駆動回路136a及び136bは、コンバータ、インバータ及びアンプ等を含み得る。駆動回路136aは、第1電気モータ122aaの電流偏差に従って印加電流の電流値及び周波数を変動させるように、第1電気モータ122aaへの印加電流を制御する。駆動回路136bは、第2電気モータ123aaの電流偏差に従って印加電流の電流値及び周波数を変動させるように、第2電気モータ123aaへの印加電流を制御する。
【0061】
異常検出器139aは、デュアルモードで機能する。異常検出器139aは、サーボモータ122a及び123aに生じる異常を検出する。異常検出器139aは、第1電気モータ122aa、第1回転センサ122ab、第2電気モータ123aa及び第2回転センサ123abに生じる異常を検出する。異常検出器139aは、回転センサ122ab及び123abそれぞれが出力する検出信号を受け取るように構成され、検出信号の異常の有無に基づき、回転センサ122ab及び123abそれぞれの異常の有無を決定する。例えば、異常検出器139aは、検出信号を受け取る時間間隔の変化、検出信号の不検出、検出信号が示す最大値及び最小値の変化、検出信号の波形などの挙動等に基づき、異常の有無を決定してもよい。
【0062】
異常検出器139aは、電気モータ122aa及び123aaへの電流指令値(目標値)と印加電流の出力値とを取得するように構成される。例えば、異常検出器139aは、減算器131c及び131dから電流指令値を受け取り、駆動回路136a及び136bから印加電流の出力値を受け取る。異常検出器139aは、電流指令値と印加電流との差異に基づき、電気モータ122aa及び123aaの異常の有無を決定する。例えば、上記差異は、電流指令値の経時的な変化と印加電流の経時的な変化との差異であってもよい。
【0063】
例えば、異常検出器139aは、電気モータ122aa及び123aaへの印加電流値のいずれもが、電気モータ122aa及び123aaの電流指令値の目標電流値よりも大きい第1ケースの場合に、第1電気モータ122aaの異常を決定する。第1ケースにおける異常の判定基準は任意に設定され得る。例えば、判定基準は、第1ケースの所定時間以上の継続、第1ケースの瞬間的な発生、所定時間内での第1ケースの発生頻度、所定時間内での第1ケースの継続時間、及びこれらの組み合わせ等であってもよい。
【0064】
異常検出器139aは、電気モータ122aa及び123aaへの印加電流値のいずれもが、電気モータ122aa及び123aaの目標電流値よりも小さい第2ケースの場合に、第1電気モータ122aaの異常を決定する。第2ケースにおける異常の判定基準は任意に設定され得る。例えば、第2ケースにおける異常の判定基準は第1ケースと同様であってもよい。
【0065】
異常検出器139aは、第1電気モータ122aaへの印加電流値が第1電気モータ122aaの目標電流値よりも大きく且つ第2電気モータ123aaへの印加電流値が第2電気モータ123aaの目標電流値よりも小さい第3ケースの場合に、第2電気モータ123aaの異常を決定する。第3ケースにおける異常の判定基準は任意に設定され得る。例えば、第3ケースにおける異常の判定基準は第1ケース及び/又は第2ケースと同様であってもよい。
【0066】
異常検出器139aは、第1電気モータ122aaへの印加電流値が第1電気モータ122aaの目標電流値よりも小さく且つ第2電気モータ123aaへの印加電流値が第2電気モータ123aaの目標電流値よりも大きい第4ケースの場合に、第2電気モータ123aaの異常を決定する。第4ケースにおける異常の判定基準は任意に設定され得る。例えば、第4ケースにおける異常の判定基準は第1ケース~第3ケースと同様であってもよい。
【0067】
これに限定さないが、本実施の形態では、異常検出器139aは、瞬間的な印加電流値と目標電流値とを比較せずに、印加電流値の経時的な挙動を示す波形と目標電流値の経時的な挙動を示す波形とを比較する。例えば、異常検出器139aは、レール103A及び103Bをある点から別の点に移動する1つの動作のような少なくとも1つの動作の過程での印加電流値及び目標電流値の波形を比較する。
【0068】
図5A及び
図5Bはそれぞれ、第1ケースでの第1電気モータ122aa(マスタモータ)及び第2電気モータ123aa(スレーブモータ)の電流値の挙動の一例を示す図である。
図5A、
図5B~
図8A及び
図8Bにおいて、印加電流値の経時的な波形が実線で示され、目標電流値の経時的な波形が破線で示される。
図5Aに示すように、第1電気モータ122aaに、印加電流値が目標電流値よりも大きくなる異常がある場合、電流制御器134は、回転速度の差分を補償するために、第2電気モータ123aaの目標電流値に増加の修正を施した修正電流指令値を生成する。このため、
図5Bに示すように、第2電気モータ123aaの印加電流値は、目標電流値よりも大きくなる波形を示す。このように、電気モータ122aa及び123aaの両方において印加電流値の波形が目標電流値の波形よりも大きい場合、異常検出器139aは、第1電気モータ122aaの異常を決定することができる。
【0069】
図6A及び
図6Bはそれぞれ、第2ケースでの第1電気モータ122aa(マスタモータ)及び第2電気モータ123aa(スレーブモータ)の電流値の挙動の一例を示す図である。
図6Aに示すように、第1電気モータ122aaに、印加電流値が目標電流値よりも小さくなる異常がある場合、電流制御器134は、回転速度の差分を補償するために、第2電気モータ123aaの目標電流値に減少の修正を施した修正電流指令値を生成する。このため、
図6Bに示すように、第2電気モータ123aaの印加電流値は、目標電流値よりも小さくなる波形を示す。このように、電気モータ122aa及び123aaの両方において印加電流値の波形が目標電流値の波形よりも小さい場合、異常検出器139aは、第1電気モータ122aaの異常を決定することができる。
【0070】
図7A及び
図7Bはそれぞれ、第3ケースでの第2電気モータ123aa(スレーブモータ)及び第1電気モータ122aa(マスタモータ)の電流値の挙動の一例を示す図である。
図7Aに示すように、第2電気モータ123aaに、印加電流値が目標電流値よりも小さくなる異常がある場合、第2電気モータ123aaの回転トルクが過小になり、第1電気モータ122aaに要求される回転トルクが増加する。これにより、
図7Bに示すように、減算器131cによって生成される電流偏差が大きくなり、第1電気モータ122aaの印加電流値は、目標電流値よりも大きくなる波形を示す。このように、第1電気モータ122aaの印加電流値の波形が目標電流値の波形よりも大きく且つ第2電気モータ123aaの印加電流値の波形が目標電流値の波形よりも小さい場合、異常検出器139aは、第2電気モータ123aaの異常を決定することができる。
【0071】
図8A及び
図8Bはそれぞれ、第4ケースでの第2電気モータ123aa(スレーブモータ)及び第1電気モータ122aa(マスタモータ)の電流値の挙動の一例を示す図である。
図8Aに示すように、第2電気モータ123aaに、印加電流値が目標電流値よりも大きくなる異常がある場合、第2電気モータ123aaの回転トルクが過大になり、第1電気モータ122aaに要求される回転トルクが減少する。これにより、
図8Bに示すように、減算器131cによって生成される電流偏差が小さくなり、第1電気モータ122aaの印加電流値は、目標電流値よりも小さくなる波形を示す。このように、第1電気モータ122aaの印加電流値の波形が目標電流値の波形よりも小さく且つ第2電気モータ123aaの印加電流値の波形が目標電流値の波形よりも大きい場合、異常検出器139aは、第2電気モータ123aaの異常を決定することができる。
【0072】
モード切替器139bは、デュアルモードにおいて異常検出器139aによってサーボモータ122a又は123aの異常が検出されると、制御モードをシングルモードに切り替える。モード切替器139bは、第2電気モータ123aa又は第2回転センサ123abの異常が検出される場合、マスタモータを第1サーボモータ122aとする第1シングルモードを実行する。モード切替器139bは、第1電気モータ122aa又は第1回転センサ122abの異常が検出される場合、マスタモータを第2サーボモータ123aとする第2シングルモードを実行する。これに限定されないが、本実施の形態では、モード切替器139bは、ソフトウェア的に制御系統を切り替えることで、デュアルモードからシングルモードへの切り替えを行う。
【0073】
例えば、デュアルモードでは、駆動コントローラ130は、
図4に示すような第1制御系統で動作する。
【0074】
例えば、第1シングルモードでは、駆動コントローラ130は、
図9に示すような第2制御系統で動作する。
図9は、第1サーボモータ122aを用いる第1シングルモードでの駆動コントローラ130の機能的な構成の一例を示すブロック図である。第2制御系統では、第2サーボモータ123aに関連する処理が停止される。
図9において、第2制御系統で実行される制御の流れは、実線の矢印で示され、第2制御系統で実行されない制御の流れは、破線の矢印で示される。第2制御系統では、駆動コントローラ130は、第1電気モータ122aaの位置制御(第1制御)を行う。
【0075】
モード切替器139bは、第1電気モータ122aaの過負荷を抑制するために、第1電気モータ122aaの回転速度、回転加速度及び回転減速度の少なくとも1つをデュアルモードでの運転時の回転速度、回転加速度及び回転減速度よりも低くする指令を、位置制御器132及び速度制御器133に出力する。つまり、第1電気モータ122aaの回転速度及び/又は回転トルクが低くされる。例えば、モード切替器139bは、第1電気モータ122aaの出力を一定の低出力に固定する指令を出力してもよい。
【0076】
例えば、モード切替器139bは、第1電気モータ122aaの目標回転速度、目標回転加速度及び回転減速度の上限値の少なくとも1つを、デュアルモードでの目標回転速度、目標回転加速度及び回転減速度の上限値よりも低く設定してもよい。
【0077】
例えば、第2シングルモードでは、駆動コントローラ130は、
図10に示すような第3制御系統で動作する。
図10は、第2サーボモータ123aを用いる第2シングルモードでの駆動コントローラ130の機能的な構成の一例を示すブロック図である。第3制御系統では、第1サーボモータ122aに関連する処理が停止される。
図10において、第3制御系統で実行される制御の流れは、実線の矢印で示され、第3制御系統で実行されない制御の流れは、破線の矢印で示される。第3制御系統では、駆動コントローラ130は、第2電気モータ123aaの位置制御を行う。当該位置制御は第3制御の一例である。第3制御系統では、第2サーボモータ123aに関連する構成要素のうち、差分検出器135の機能が停止し、位置検出器137bが機能するようになる。
【0078】
位置検出器137bは、位置制御のために第2電気モータ123aaの回転位置を初期設定する、つまりゼロイングする。位置検出器137bは、位置検出器137aから第1電気モータ122aaの回転位置を取得し、第2回転センサ123abから取得される第2電気モータ123aaの回転位置と第1電気モータ122aaの回転位置との関係に基づき、第2電気モータ123aaの回転位置を初期設定してもよい。又は、駆動コントローラ130は、第1電気モータ122aaの回転位置が基準位置になるように、第2電気モータ123aaを駆動し、位置検出器137bは、第1電気モータ122aaの回転位置が基準位置にあるときの第2電気モータ123aaの回転位置を初期位置とするように初期設定してもよい。
【0079】
モード切替器139bは、第2電気モータ123aaの過負荷を抑制するために、第2電気モータ123aaの回転速度、回転加速度及び回転減速度の少なくとも1つをデュアルモードでの運転時の回転速度、回転加速度及び回転減速度よりも低くする指令を、位置制御器132及び速度制御器133に出力する。つまり、第2電気モータ123aaの回転速度及び/又は回転トルクが低くされる。例えば、モード切替器139bは、第2電気モータ123aaの出力を一定の低出力に固定する指令を出力してもよい。
【0080】
例えば、モード切替器139bは、第2電気モータ123aaの目標回転速度、目標回転加速度及び回転減速度の上限値の少なくとも1つを、デュアルモードでの第1電気モータ122aaの目標回転速度、目標回転加速度及び回転減速度の上限値よりも低く設定してもよく、デュアルモードでの第2電気モータ123aaの目標回転速度、目標回転加速度及び回転減速度の上限値よりも低く設定してもよい。
【0081】
このように、モード切替器139bは、サーボモータ122a又は123aに異常がある場合、異常があるサーボモータを停止させ、正常なサーボモータの電気モータをデュアルモードよりもスペックダウンした状態で駆動させ続ける。
【0082】
[駆動コントローラの動作]
実施の形態に係る駆動コントローラ130の動作を説明する。具体的には、サーボモータ122a又は123aの異常検出及び制御モードの切り替えに関する駆動コントローラ130の動作を説明する。
図11A及び
図11Bは、実施の形態に係る駆動コントローラ130の動作の一例を示すフローチャートである。
図11A及び
図11Bに示すように、駆動コントローラ130は、統合コントローラ300の指令に従って、搬送装置100に通常運転させ、デュアルモードでサーボモータ122a及び123aを制御する(ステップS1)。駆動コントローラ130は、第1サーボモータ122aに位置制御を実行し、第2サーボモータ123aに速度制御を実行する。
【0083】
次いで、駆動コントローラ130は、第1サーボモータ122aの第1回転センサ122abの異常を未検出である場合(ステップS2でYes)にステップS3に進み、当該異常を検出した場合(ステップS2でNo)にステップS4に進む。
【0084】
ステップS4において、駆動コントローラ130は、第1回転センサ122abの異常の通知を入出力装置400に送り、入出力装置400に当該通知をユーザに提示させ、ステップS7に進む。
【0085】
ステップS3において、駆動コントローラ130は、第2サーボモータ123aの第2回転センサ123abの異常を未検出である場合(ステップS3でYes)にステップS5に進み、当該異常を検出した場合(ステップS3でNo)にステップS6に進む。
【0086】
ステップS6において、駆動コントローラ130は、第2回転センサ123abの異常の通知を入出力装置400に送り、入出力装置400に当該通知をユーザに提示させ、ステップS10に進む。
【0087】
ステップS5において、駆動コントローラ130は、サーボモータ122a及び123aの印加電流値が第1ケースに該当する場合(ステップS5でYes)にステップS7に進み、非該当の場合(ステップS5でNo)にステップS8に進む。
【0088】
ステップS8において、駆動コントローラ130は、サーボモータ122a及び123aの印加電流値が第2ケースに該当する場合(ステップS8でYes)にステップS7に進み、非該当の場合(ステップS8でNo)にステップS9に進む。
【0089】
ステップS9において、駆動コントローラ130は、サーボモータ122a及び123aの印加電流値が第3ケースに該当する場合(ステップS9でYes)にステップS10に進み、非該当の場合(ステップS9でNo)にステップS11に進む。
【0090】
ステップS11において、駆動コントローラ130は、サーボモータ122a及び123aの印加電流値が第4ケースに該当する場合(ステップS11でYes)にステップS10に進み、非該当の場合(ステップS11でNo)にステップS1に戻る。
【0091】
ステップS7において、駆動コントローラ130は、第1サーボモータ122aの異常を決定する。次いで、駆動コントローラ130は、制御モードを、デュアルモードから、第2サーボモータ123aのシングルモードに切り替える(ステップS12)。次いで、駆動コントローラ130は、第1サーボモータ122aを停止し、統合コントローラ300の指令に従って第2サーボモータ123aのみに、スペックダウンした状態の位置制御を実行する(ステップS13)。
【0092】
駆動コントローラ130は、修理等が施されることによって、第1サーボモータ122aの異常の解消を検出する(ステップS14でYes)とステップS15に進み、未検出の場合(ステップS14でNo)にステップS13に戻る。例えば、駆動コントローラ130は、ユーザによって入出力装置400に入力される異常解消の情報に基づき、異常解消を検出するように構成されてもよい。ステップS15において、駆動コントローラ130は、制御モードを、第2サーボモータ123aのシングルモードからデュアルモードに切り替え、ステップS1に戻る。
【0093】
ステップS10において、駆動コントローラ130は、第2サーボモータ123aの異常を決定する。次いで、駆動コントローラ130は、制御モードを、デュアルモードから、第1サーボモータ122aのシングルモードに切り替える(ステップS16)。次いで、駆動コントローラ130は、第2サーボモータ123aを停止し、統合コントローラ300の指令に従って第1サーボモータ122aのみに、スペックダウンした状態の位置制御を実行する(ステップS17)。
【0094】
駆動コントローラ130は、第2サーボモータ123aの異常の解消を検出する(ステップS18でYes)とステップS19に進み、未検出の場合(ステップS18でNo)にステップS17に戻る。ステップS19において、駆動コントローラ130は、制御モードを、第1サーボモータ122aのシングルモードからデュアルモードに切り替え、ステップS1に戻る。
【0095】
駆動コントローラ130は、搬送装置100の制御を停止する指令を受け取るまで、ステップS1~S19の処理を繰り返す。
【0096】
(変形例1)
変形例1に係る駆動コントローラ130Aは、デュアルモードとシングルモードとの間の制御モードをハードウェア的に切り替えるように構成される点で、実施の形態と異なる。以下、変形例1について、実施の形態と異なる点を中心に説明し、実施の形態と同様の点の説明を適宜省略する。
【0097】
図12は、変形例1に係る駆動コントローラ130Aのハードウェア構成の一例を示す図である。
図12に示すように、駆動コントローラ130Aは、第1入出力I/F(インタフェース:Inter Face)130A1及び第2入出力I/F130A2を備える。プロセッサP、メモリM並びに駆動回路136a及び136bは、バス及び有線等を介して相互に電気的に接続される。入出力I/F130A1及び130A2は、サーボモータ122a及び123aのいずれにも電気的に接続可能である。
【0098】
第1入出力I/F130A1は駆動回路136aと電気的に接続される。第1入出力I/F130A1は位置制御のための信号を入出力するインタフェースである。駆動コントローラ130Aは、第1入出力I/F130A1に電気的に接続されるサーボモータ122a又は123aを位置制御するように構成される。
【0099】
第2入出力I/F130A2は駆動回路136bと電気的に接続される。第2入出力I/F130A2は速度制御のための信号を入出力するインタフェースである。駆動コントローラ130Aは、第2入出力I/F130A2に電気的に接続されるサーボモータ122a又は123aを速度制御(第2制御)するように構成される。
【0100】
駆動コントローラ130Aは、入出力I/F130A1及び130A2の両方にサーボモータ122a又は123aが電気的に接続される場合にデュアルモードで制御を実行する。駆動コントローラ130Aは、第1入出力I/F130A1のみに第1サーボモータ122aが電気的に接続される場合に、シングルモードで第1サーボモータ122aを位置制御(第1制御)する。駆動コントローラ130Aは、第1入出力I/F130A1のみに第2サーボモータ123aが電気的に接続される場合に、シングルモードで第2サーボモータ123aを位置制御(第3制御)する。駆動コントローラ130Aは、第2入出力I/F130A2のみにサーボモータ122a又は123aが電気的に接続される場合に制御を実行しない。
【0101】
入出力I/F130A1及び130A2の構成は、サーボモータ122a及び123aとの電気的な接続を可能する構成であればよい。例えば、入出力I/F130A1及び130A2は、サーボモータ122a及び123aから延びる電気ケーブルのコネクタ又は端子と接続可能であるコネクタ又は端子であってもよい。
【0102】
変形例1に係る駆動コントローラ130Aは、入出力I/F130A1及び130A2に電気的に接続されるサーボモータ122a及び123aに応じて、サーボモータ122a及び123aのいずれもマスタモータとして制御することができる。さらに、入出力I/F130A1及び130A2の接続を変更することにより制御モードの切り替えが可能であるため、制御モードの切り替えのための構成が簡易である。なお、入出力I/F130A1及び130A2の位置は、
図12の位置に限定されない。例えば、入出力I/F130A1及び130A2は、駆動回路136a及び136bとコンピュータ装置(プロセッサP及びメモリM等)との間に設けられてもよい。
【0103】
(変形例2)
変形例2に係る駆動コントローラ130Bは、入出力I/F130B1及び130B2とサーボモータ122a及び123aとの電気的な接続を切り替える切替器130B3を備える点で、変形例1と異なる。以下、変形例2について、実施の形態及び変形例1と異なる点を中心に説明し、実施の形態及び変形例1と同様の点の説明を適宜省略する。
【0104】
図13は、変形例2に係る駆動コントローラ130Bのハードウェア構成の一例を示す図である。
図13に示すように、駆動コントローラ130Bは、変形例1の駆動コントローラ130Aと同様に、入出力I/F130B1及び130B2を備える。駆動コントローラ130Bは、入出力I/F130B1及び130B2とサーボモータ122a及び123aとの間に切替器130B3をさらに備える。
【0105】
切替器130B3は、入出力I/F130B1及び130B2並びにサーボモータ122a及び123aと電気的に接続される。切替器130B3は、第1入出力I/F130B1と第2入出力I/F130B2と第1サーボモータ122aと第2サーボモータ123aとの間の電気的な接続を切り替えることができるように構成される。切替器130B3は、入出力I/F130B1及び130B2とサーボモータ122a及び123aとの間で、任意の1対1の組み合わせで、電気的な接続の確立と電気的な接続の切断とを可能にする。
【0106】
駆動コントローラ130Aは、切替器130B3による電気的な接続の切り替えによって、デュアルモードでのサーボモータ122a及び123aの制御と、シングルモードでの第1サーボモータ122aの制御と、シングルモードでの第2サーボモータ123aの制御とを選択的に行うことができる。
【0107】
切替器130B3の構成は、入出力I/F130B1及び130B2とサーボモータ122a及び123aとの電気的な接続関係を変更することができる構成であればよい。例えば、切替器130B3は、人による操作が可能な切替スイッチであってもよく、駆動コントローラ130A等によって動作制御される切替スイッチであってもよい。
【0108】
変形例2に係る駆動コントローラ130Aは、切替器130B3によって確立される電気的な接続に応じて、サーボモータ122a又は123aをマスタモータとするデュアルモードでの制御が可能であり、サーボモータ122a又は123aを駆動するシングルモードでの制御が可能である。なお、切替器130B3の構成は、入出力I/F130B1及び130B2とサーボモータ122a及び123aとの電気的な接続を単に断接する構成であってもよい。
【0109】
(その他の実施の形態)
以上、本開示の実施の形態の例について説明したが、本開示は、上記実施の形態及び変形例に限定されない。すなわち、本開示の範囲内で種々の変形及び改良が可能である。例えば、各種変形を実施の形態及び変形例に施したもの、及び、異なる実施の形態及び変形例における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本開示の範囲内に含まれる。
【0110】
例えば、実施の形態及び変形例において、駆動装置150は搬送装置100を駆動するように構成されるが、これに限定されない。駆動装置150は、2つのモータで1つの駆動軸を一緒に駆動する構成を有すればよい。また、搬送装置100も、ロボット200と共に用いられる構成に限定されず、駆動装置150を備えればよい。ロボット200は、産業用のロボットに限定されず、いかなるロボットであってもよい。
【0111】
また、本開示の技術の各態様例は、以下のように挙げられる。本開示の一態様に係る駆動装置は、回転可能な駆動軸と、前記駆動軸を回転駆動可能に配置される第1モータと、前記駆動軸を回転駆動可能に配置される第2モータと、前記第1モータ及び前記第2モータの駆動を制御する駆動コントローラとを備え、前記駆動コントローラは、デュアルモードとシングルモードとを切り替えて制御することができるように構成され、前記駆動コントローラは、前記デュアルモードでは、前記第1モータ及び前記第2モータを一緒に駆動し、前記駆動コントローラは、前記シングルモードでは、前記第1モータ及び前記第2モータのうちの一方である駆動対象モータを駆動し、前記駆動対象モータの回転速度、回転加速度及び回転減速度の少なくとも1つを前記デュアルモードよりも低くするように制御する。
【0112】
上記態様によると、駆動コントローラは、通常運転時にデュアルモードでの制御を行い、モータの一方に異常が発生した場合にシングルモードでの制御を行うことができる。シングルモードでは、駆動対象モータが回転速度、回転加速度及び回転減速度の少なくとも1つを低下させた状態で駆動するため、駆動対象モータに作用する過負荷が抑えられる。よって、駆動装置は稼働を継続することができる。例えば、駆動装置が製造ラインの駆動に用いられる場合、製造ラインの通常の駆動に2つのモータの駆動が必要であっても、駆動装置は、一方のモータに異常が発生したときに製造ラインを停止することなく、スペックダウンした状態で駆動を継続することができる。
【0113】
本開示の一態様に係る駆動装置は、前記第1モータの回転量を検出する第1回転センサと、前記第2モータの回転量を検出する第2回転センサとをさらに備え、前記駆動コントローラは、前記デュアルモードにおいて、前記第1回転センサの検出結果に基づき、前記第1モータの回転位置を制御する第1制御を前記第1モータに行い、前記第1回転センサ及び前記第2回転センサの検出結果に基づき、前記第2モータの回転速度を前記第1モータの回転速度に同調させる第2制御を前記第2モータに行うように構成されてもよい。
【0114】
上記態様によると、駆動コントローラは、第1モータの駆動を緻密に制御し、第2モータを第1モータに追従させるように制御する。よって、駆動コントローラの制御系統の簡略化が可能になる。例えば、駆動コントローラは、第1モータをマスタモータとして制御し、第2モータをマスタモータのスレーブモータとして制御することができる。
【0115】
本開示の一態様に係る駆動装置において、前記駆動コントローラは、前記シングルモードにおいて前記第1モータを駆動する場合、前記第1制御を前記第1モータに行い、前記駆動コントローラは、前記シングルモードにおいて前記第2モータを駆動する場合、前記第2回転センサの検出結果に基づき前記第2モータの回転位置を制御する第3制御を前記第2モータに行ってもよい。上記態様によると、駆動コントローラは、シングルモードにおいて、駆動対象のモータが第1モータ及び第2モータのいずれであっても、緻密に制御することができる。
【0116】
本開示の一態様に係る駆動装置において、前記駆動コントローラは、前記第1モータ、前記第2モータ、前記第1回転センサ及び前記第2回転センサに異常がない場合、前記デュアルモードで制御を行うように構成され、前記駆動コントローラは、前記第2モータ及び前記第2回転センサの少なくとも1つに異常がある場合、前記シングルモードにおいて前記第1モータを駆動するように構成され、前記駆動コントローラは、前記第1モータ及び前記第1回転センサの少なくとも1つに異常がある場合、前記シングルモードにおいて前記第2モータを駆動するように構成されてもよい。
【0117】
上記態様によると、駆動コントローラは、第1モータ、第2モータ、第1回転センサ及び第2回転センサのいずれかの構成要素に異常がある場合、異常がある構成要素と関連のないモータをシングルモードで駆動する。シングルモードでの適正な駆動装置の稼働が可能になる。
【0118】
本開示の一態様に係る駆動装置において、前記駆動コントローラは、前記デュアルモードにおいて前記第1モータ及び前記第2モータの異常を検出するように構成され、前記駆動コントローラは、前記第1モータ及び前記第2モータに印加される電流値のいずれもが、前記第1モータ及び前記第2モータの目標電流値よりも大きい、又は、前記第1モータ及び前記第2モータの目標電流値よりも小さい場合、前記第1モータの異常を決定し、前記駆動コントローラは、前記第1モータに印加される電流値が前記第1モータの目標電流値よりも大きく且つ前記第2モータに印加される電流値が前記第2モータの目標電流値よりも小さい、又は、前記第1モータに印加される電流値が前記第1モータの目標電流値よりも小さく且つ前記第2モータに印加される電流値が前記第2モータの目標電流値よりも大きい場合、前記第2モータの異常を決定してもよい。
【0119】
上記態様によると、駆動コントローラは、第1モータ及び第2モータのいずれに異常があるかを検出することができる。例えば、第1モータの電流値に異常がある場合、駆動コントローラは、第1モータと第2モータとの速度差分に基づき、第1モータの異常な電流値に合わせて、第2モータの電流値を制御する。よって、駆動コントローラは、第1モータ及び第2モータの電流値の両方が目標電流値よりも大きい又は小さい場合に第1モータの異常を決定することができる。例えば、第2モータの電流値に異常がある場合、第2モータのトルクの過不足が生じため、駆動コントローラは、トルクの過不足を補うように第1モータ及び第2モータの電流値を制御するが、第2モータの電流値は駆動コントローラの制御に従わない。よって、駆動コントローラは、第1モータ及び第2モータの電流値の一方が目標電流値よりも大きく且つ他方が目標電流値よりも小さい場合に第2モータの異常を決定することができる。
【0120】
本開示の一態様に係る駆動装置において、前記駆動コントローラは、前記第1回転センサから受け取る信号の状態に基づき、前記第1回転センサの異常を検出し、前記第2回転センサから受け取る信号の状態に基づき、前記第2回転センサの異常を検出するように構成されてもよい。上記態様によると、駆動コントローラが回転センサの異常を検出し、検出結果に応じた制御を行うことができる。
【0121】
本開示の一態様に係る駆動装置において、前記駆動コントローラは、前記第1制御及び前記第3制御のための信号を入出力する第1入出力インタフェースと、前記第2制御のための信号を入出力する第2入出力インタフェースとを含み、前記駆動コントローラは、前記第1入出力インタフェース及び前記第2入出力インタフェースのそれぞれに、前記第1モータ及び前記第2モータが電気的に接続される場合、前記デュアルモードでの制御を実行し、前記駆動コントローラは、前記第1入出力インタフェースのみに前記第1モータが電気的に接続される場合、前記シングルモードにおいて前記第1モータに前記第1制御を行い、前記駆動コントローラは、前記第1入出力インタフェースのみに前記第2モータが電気的に接続される場合、前記シングルモードにおいて前記第2モータに前記第3制御を行ってもよい。
【0122】
上記態様によると、第1及び第2入出力インタフェースと第1及び第2モータとの間の電気的な接続を変更することにより、モードの変更が可能になる。よって、モードの変更のための構成が簡易になる。例えば、上記の電気的な接続の変更が人によって手動で行うことができるように構成されてもよい。
【0123】
本開示の一態様に係る駆動装置は、前記第1入出力インタフェースと前記第2入出力インタフェースと前記第1モータと前記第2モータとの間の電気的な接続を切り替える切替器をさらに備えてもよい。
【0124】
上記態様によると、切替器は、第1及び第2入出力インタフェース並びに第1及び第2モータの間の電気的な接続を切り替えるハードウェアを構成する。よって、モードの切り替えがハードウェアにより可能であり、モードの切り替えのための構成の簡略化が可能になる。例えば、切替器の電気的な接続の切り替えが、回路等により自動で行うことができるように構成されてもよく、人によって手動で行うことができるように構成されてもよい。
【0125】
本開示の一態様に係る駆動装置において、前記駆動コントローラは、制御プログラムにより各モードでの制御系統を切り替えるように構成され、前記駆動コントローラは、前記デュアルモードでは、前記第1制御及び前記第2制御のための第1制御系統で制御を実行し、前記第1モータを駆動する前記シングルモードでは、前記第1制御のための第2制御系統で制御を実行し、前記第2モータを駆動する前記シングルモードでは、前記第3制御のための第3制御系統で制御を実行してもよい。上記態様によると、モードの切り替えがソフトウェアにより可能である。切り替えのためのハードウェアが不要になり、駆動装置の構造の簡略化及び省スペース化が可能になる。
【0126】
本開示の一態様に係る駆動装置において、前記第1モータは、第1電気モータと前記第1回転センサとを含むサーボモータであり、前記第2モータは、第2電気モータと前記第2回転センサとを含むサーボモータであり、前記駆動コントローラは、前記第1回転センサ及び前記第2回転センサの検出結果と、前記第1電気モータ及び前記第2電気モータに印加される電流値とをフィードバック情報として用いて、前記第1電気モータ及び前記第2電気モータをサーボ制御してもよい。上記態様によると、駆動コントローラは、第1モータ及び第2モータを緻密に制御することができる。特に、駆動コントローラは、位置制御を緻密に行うことができる。
【0127】
本開示の一態様に係る搬送装置は、ロボットが取り扱うワークを搬送する搬送装置であって、本開示の一態様に係る駆動装置と、前記駆動装置によって駆動されることで前記ワークを移動する移動機構とを備える。上記態様によると、本開示の一態様に係る駆動装置と同様の効果が得られる。
【0128】
また、上記で用いた序数、数量等の数字は、全て本開示の技術を具体的に説明するために例示するものであり、本開示は例示された数字に制限されない。また、構成要素間の接続関係は、本開示の技術を具体的に説明するために例示するものであり、本開示の機能を実現する接続関係はこれに限定されない。
【0129】
また、機能ブロック図におけるブロックの分割は一例であり、複数のブロックを一つのブロックとして実現する、一つのブロックを複数に分割する、及び/又は、一部の機能を他のブロックに移してもよい。また、類似する機能を有する複数のブロックの機能を単一のハードウェア又はソフトウェアが並列又は時分割に処理してもよい。
【符号の説明】
【0130】
1 ロボットシステム
100 搬送装置
122,123 モータ
122a,123a サーボモータ
122aa,123aa 電気モータ
122ab,123ab 回転センサ
130,130A,130B 駆動コントローラ
130A1,130A2,130B1,130B2 入出力I/F
130B3 切替器
150 駆動装置
160 移動機構
200 ロボット
300 統合コントローラ