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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】壁貫通配管装置、及び区画壁の貫通構造
(51)【国際特許分類】
   F16L 5/00 20060101AFI20240618BHJP
   E04B 1/94 20060101ALI20240618BHJP
   F16L 5/02 20060101ALI20240618BHJP
   F16L 5/04 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
F16L5/00 G
E04B1/94 T
F16L5/02 F
F16L5/04
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020194017
(22)【出願日】2020-11-24
(65)【公開番号】P2022082869
(43)【公開日】2022-06-03
【審査請求日】2023-06-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000243803
【氏名又は名称】未来工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】加藤 佳志
【審査官】豊島 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-070199(JP,A)
【文献】特開2019-056403(JP,A)
【文献】特開2018-192268(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 1/00 - 7/02
A62C 2/00 - 99/00
E04B 1/62 - 1/99
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外圧により圧縮変形する断熱材により管が覆われた断熱材付管と、
区画壁を壁厚方向に貫通する貫通孔内に少なくとも一部が配置され、かつ前記断熱材付管を取り囲む枠体と、
前記断熱材付管の外面と、当該外面に対向する前記枠体の内面との間に充填され、前記断熱材に比べて圧縮変形しやすい充填部材と、を備え
前記枠体は、前記断熱材付管の周方向に並べられて四角枠状を形成する複数の枠体構成体を有し、
前記枠体で囲まれる内部空間が開口する方向を貫通方向とすると、
複数の前記枠体構成体の各々は、前記貫通方向に幅を有する金属板により形成され、
前記枠体の四つの側壁のうち、少なくとも対向する二つの側壁を構成する二つの前記枠体構成体は、前記枠体の周方向に隣り合う状態で前記枠体構成体の先端部同士を前記金属板の板厚方向に重合させた状態で、前記周方向への重合量を調節可能であり、
前記枠体の外面と、前記貫通孔の内面との間に配置され、前記枠体構成体における前記金属板の板厚方向への寸法よりも大きい厚さを有し、かつ厚さ方向に前記枠体構成体の板厚以上の圧縮量で圧縮変形可能な外側閉塞部材を備えることを特徴とする壁貫通配管装置。
【請求項2】
熱により膨張する熱膨張性能を有し、かつ前記断熱材付管の外周面に巻き付け可能な帯状の熱膨張部材を備える請求項に記載の壁貫通配管装置。
【請求項3】
区画壁を壁厚方向に貫通する貫通空間は、外圧により圧縮変形する断熱材により管が覆われた断熱材付管が貫通して配置されている区画壁の貫通構造であって、
区画壁を壁厚方向に貫通する貫通孔内には、前記断熱材付管を取り囲む枠体の少なくとも一部が配置されるとともに、前記枠体内に前記貫通空間が画定され、
前記断熱材付管の外面と、当該外面に対向する前記枠体の内面との間の隙間には、前記断熱材に比べて圧縮変形しやすい充填部材が圧縮変形した状態で充填され
前記枠体の外面と、前記貫通孔の内面との間に、圧縮変形された外側閉塞部材が介在していることを特徴とする区画壁の貫通構造。
【請求項4】
前記充填部材において前記区画壁の壁表に臨む面は、非通気性の材質の被覆部材によって被覆されている請求項に記載の区画壁の貫通構造。
【請求項5】
前記断熱材付管の外周面と、当該外周面に対向する前記充填部材の内面との間には、熱により膨張する熱膨張性能を有する熱膨張部材が、少なくとも一部が前記枠体に囲まれた状態で配置されている請求項3又は請求項に記載の区画壁の貫通構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁貫通配管装置、及び区画壁の貫通構造に関する。
【背景技術】
【0002】
大型の冷蔵庫に冷媒を供給する流体管は、金属製であり、断熱材によって覆われて外気から断熱されている。断熱材で覆われた流体管を防火区画壁に貫通させるために、防火区画壁には、当該防火区画壁を壁厚方向に貫通した貫通空間が形成されている。防火区画壁には、貫通空間と断熱材との間の隙間が、防火区画壁の一方側で発生した火災等の火炎、煙、有毒ガスの他方側への侵入経路となることを阻止するための構造が設けられている。
【0003】
このような防火区画壁の構造としては、例えば、特許文献1に開示の防火区画壁の貫通構造が挙げられる。特許文献1の防火区画壁の貫通構造において、貫通空間としての貫通孔を貫通した流体管の外面には、独立発泡材製の断熱材が巻き付けられている。また、断熱材の外周面には耐火部材が巻き付けられている。断熱材に巻き付けられた耐火部材の外周面と、この耐火部材の外周面に対向した貫通孔の内周面との間には、モルタル、耐熱パテといった充填部材としての充填材が充填されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-56403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1の防火区画壁の貫通構造において、充填材の充填圧によって、断熱材が押し潰されてしまい、断熱性能が低下する虞がある。このため、充填材の充填の際、充填材の充填量の調整、充填材の充填の仕方に配慮を払う必要があり、充填材の充填作業が面倒である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するための壁貫通配管装置は、外圧により圧縮変形する断熱材により管が覆われた断熱材付管と、区画壁を壁厚方向に貫通する貫通孔内に少なくとも一部が配置され、かつ前記断熱材付管を取り囲む枠体と、前記断熱材付管の外面と、当該外面に対向する前記枠体の内面との間に充填され、前記断熱材に比べて圧縮変形しやすい充填部材と、を備え、前記枠体は、前記断熱材付管の周方向に並べられて四角枠状を形成する複数の枠体構成体を有し、前記枠体で囲まれる内部空間が開口する方向を貫通方向とすると、複数の前記枠体構成体の各々は、前記貫通方向に幅を有する金属板により形成され、前記枠体の四つの側壁のうち、少なくとも対向する二つの側壁を構成する二つの前記枠体構成体は、前記枠体の周方向に隣り合う状態で前記枠体構成体の先端部同士を前記金属板の板厚方向に重合させた状態で、前記周方向への重合量を調節可能であり、前記枠体の外面と、前記貫通孔の内面との間に配置され、前記枠体構成体における前記金属板の板厚方向への寸法よりも大きい厚さを有し、かつ厚さ方向に前記枠体構成体の板厚以上の圧縮量で圧縮変形可能な外側閉塞部材を備えることを要旨とする。
【0010】
壁貫通配管装置について、熱により膨張する熱膨張性能を有し、かつ前記断熱材付管の外周面に巻き付け可能な帯状の熱膨張部材を備えていてもよい。
上記問題点を解決するための区画壁の貫通構造は、区画壁を壁厚方向に貫通する貫通空間は、外圧により圧縮変形する断熱材により管が覆われた断熱材付管が貫通して配置されている区画壁の貫通構造であって、区画壁を壁厚方向に貫通する貫通孔内には、前記断熱材付管を取り囲む枠体の少なくとも一部が配置されるとともに、前記枠体内に前記貫通空間が画定され、前記断熱材付管の外面と、当該外面に対向する前記枠体の内面との間の隙間には、前記断熱材に比べて圧縮変形しやすい充填部材が圧縮変形した状態で充填され、前記枠体の外面と、前記貫通孔の内面との間に、圧縮変形された外側閉塞部材が介在していてもよい。
【0011】
画壁の貫通構造について、前記充填部材において前記区画壁の壁表に臨む面は、非通気性の材質の被覆部材によって被覆されていてもよい。
【0012】
区画壁の貫通構造について、前記断熱材付管の外周面と、当該外周面に対向する前記充填部材の内面との間には、熱により膨張する熱膨張性能を有する熱膨張部材が、少なくとも一部が前記枠体に囲まれた状態で配置されていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、隙間に対し充填部材を容易に充填できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】防火中空壁の貫通構造を示す斜視図。
図2】防火中空壁の貫通構造を示す断面図。
図3】枠体を示す斜視図。
図4】屈曲部材を示す斜視図。
図5】防火中空壁の貫通構造の構成部材を示す分解斜視図。
図6】貫通孔の内面に外側閉塞部材を沿わせて配置した状態の正面図。
図7】第1屈曲部材を貫通孔内に配置した状態を示す斜視図。
図8】貫通孔内に枠体を配置した状態を示す正面図。
図9】断熱材付管を枠体に挿通した状態を示す斜視図。
図10】充填部材を充填する状態を示す斜視図。
図11】充填部材を防水テープで覆う状態を示す斜視図。
図12】防水テープを位置決めテープで覆う状態を示す斜視図。
図13】別例の枠体を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、区画壁の貫通構造の形成方法、壁貫通配管装置、及び区画壁の貫通構造を具体化した一実施形態を図1図12にしたがって説明する。
図1又は図2に示すように、区画壁としての防火中空壁Wは、複数本の軽量形鋼材10と、軽量形鋼材10を挟むようにして立設された第1間仕切り壁11及び第2間仕切り壁12と、から構築されている。第1間仕切り壁11及び第2間仕切り壁12は、例えば石膏ボードが採用される。
【0016】
軽量形鋼材10を挟んで相対向する第1間仕切り壁11と第2間仕切り壁12との間には空洞部Sが形成されている。
次に、防火中空壁Wを貫通する貫通空間Tを断熱材付管13が貫通する防火中空壁Wの貫通構造について説明する。防火中空壁Wの貫通構造は、防火中空壁Wを壁厚方向に貫通する貫通空間Tに壁貫通配管装置25を配置することで構成されている。そして、防火中空壁Wの貫通構造においては、防火中空壁Wを壁厚方向に貫通する貫通空間Tに、断熱材付管13が貫通して配置されている。
【0017】
図2に示すように、壁貫通配管装置25は、断熱材付管13と、貫通孔14内に配置され、かつ断熱材付管13を取り囲む枠体20と、断熱材付管13の断熱材17の外面と、当該外面に対向する枠体20の内面との間に形成された隙間Mに充填される充填部材15と、を備える。
【0018】
図1又は図2に示すように、断熱材付管13は、管としての流体管24と、流体管24の外周面を覆う円筒状の断熱材17と、を有する。断熱材付管13は、断熱材17の軸線方向の2箇所を覆う熱膨張部材18を備えさせてもよい。
【0019】
断熱材17は、流体管24内の流体を外気から断熱する。断熱材17は、軽量かつ柔軟な特殊エラストマ(EPDM合成ゴム)製である。断熱材17は、独立した微細な気泡を多数有する独立発泡材製である。独立発泡材製の断熱材17においては、断熱効果を高めるほど、独立気泡がより微細になり、かつ気泡がより多くなる。断熱材17は、外圧により圧縮変形する材質である。
【0020】
熱膨張部材18は、長四角形状のシート状である。熱膨張部材18は、図示しない熱膨張性耐火材層を備える。熱膨張部材18は、火災等の熱を受けて膨張する材料製である。断熱材17に巻き付けられた熱膨張部材18は、線材19によって断熱材付管13の周方向へ締め付けられることで、断熱材17に巻き付けられている。
【0021】
貫通孔14は、防火中空壁Wを壁厚方向に貫通する。防火中空壁Wの壁厚方向は、第1間仕切り壁11と第2間仕切り壁12が並設された方向である。
貫通孔14は、第1間仕切り壁11が備える第1孔11aと、第2間仕切り壁12が備える第2孔12aと、空洞部Sとが連通して形成されている。第1間仕切り壁11を壁表側から見た正面視では第1孔11aは四角形状であり、第2間仕切り壁12を壁表側から見た正面視では第2孔12aは四角形状である。第1孔11aの中心点P1と、第2孔12aの中心点P2とは、防火中空壁Wの壁厚方向に一致する。
【0022】
図6に示すように、壁厚方向に防火中空壁Wを見た貫通孔14において、貫通孔14の四つの角のうちの一つを第1角14aとし、水平方向に第1角14aに隣り合う別の角を第2角14bとし、鉛直方向に第2角14bに隣り合う別の角を第3角14cとし、第1角14aと第3角14cに隣り合う別の角を第4角14dとする。
【0023】
貫通孔14の内面において、第1角14aを挟む一対の内面のうち、第1角14aと第4角14dとの間に位置する一方の内面を第1内面141とし、他方の内面を第2内面142とする。貫通孔14の内面のうち、第2角14bを挟む一対の内面のうち、一方の内面は第2内面142であり、他方の内面を第3内面143とする。貫通孔14の内面のうち、第3角14cを挟む一対の内面のうち、一方の内面は第3内面143であり、他方の内面を第4内面144とする。そして、貫通孔14の内面のうち、第4角14dを挟む一対の内面のうちの一方の内面は第4内面144であり、他方の内面は第1内面141である。貫通孔14において、第1内面141と、第2内面142と、第3内面143と、第4内面144とを繋ぐ方向を貫通孔14の周方向とする。
【0024】
次に、貫通孔14内に配置され、かつ貫通孔14内に貫通空間Tを画定する枠体20について説明する。
図3及び図5に示すように、枠体20は、枠体構成体の一例である屈曲部材30を四つ組み合わせて構成される周壁21を備える。つまり、枠体20は、断熱材付管13の周方向に並べられて四角枠状の周壁21を形成する四つの屈曲部材30を有する。図5の周壁21は、図3に示す周壁21のサイズを縮小させたものである。
【0025】
周壁21は四角枠状である。周壁21の内側には内部空間Kが画定される。周壁21の中心軸線Lの延びる方向は、内部空間Kが開口する方向であり、中心軸線Lの延びる方向を貫通方向Zとする。周壁21は、四つの側壁22と、隣り合う側壁22の交差部に形成された角23と、を有する。四つの側壁22の各々は、長四角板状である。枠体20において、内部空間Kを囲む方向を周方向とする。
【0026】
次に、屈曲部材30について説明する。四つの屈曲部材30は形状及びサイズが同じであるため、一つの屈曲部材30について具体的に説明する。
図4に示すように、屈曲部材30は、板厚方向に見て細長四角状の金属板をL形状に屈曲させて形成されている。屈曲部材30は、長四角板状の第1板部31と、第1板部31に対し直交する第2板部32と、第1板部31と第2板部32の交差部に位置する角形成部33と、を有する。したがって、屈曲部材30は、貫通方向Zに沿って見てL形状であり、かつ貫通方向Zに一定幅を有する金属板製である。また、屈曲部材30は、角形成部33と、当該角形成部33から互いに直交して突出方向へ突出し、かつ突出方向へ一定幅を有する二つの板部を備え、一方の板部が第1板部31であり、他方の板部が第2板部32である。
【0027】
第1板部31は、板厚方向の一面に長四角形状の第1内面31aを有し、板厚方向の他面に長四角形状の第1外面31bを有する。第2板部32は、板厚方向の一面に長四角形状の第2内面32aを有し、板厚方向の他面に長四角形状の第2外面32bを有する。
【0028】
第1板部31の第1内面31aと、第2板部32の第2内面32aとは直交する。第1板部31の第1外面31bと、第2板部32の第2外面32bとは直交する。第1板部31を板厚方向に見た場合、第1内面31a及び第1外面31bの長辺が延びる方向を第1板部31の第1方向H1とする。第1方向H1は、第1板部31の2本の長縁部の延びる方向である。第1方向H1は、第1板部31が第2板部32から突出する突出方向である。
【0029】
第2板部32を板厚方向に見た場合、第2内面32aと第2外面32bの短辺が延びる方向を第2板部32の第2方向H2とする。第2方向H2は、第2板部32の2本の短縁部の延びる方向である。第2方向H2は、第2板部32が第1板部31から突出する突出方向である。
【0030】
第1内面31a及び第1外面31bの短辺の延びる方向と、第2内面32a及び第2外面32bの長辺の延びる方向とは同じであり、これらの方向を幅方向H3とする。第1板部31の幅方向H3への寸法は、第1方向H1に一定である。このため、第1板部31は、角形成部33からの突出方向である第1方向H1に沿って幅が変化しない一定幅である。第2板部32の幅方向H3への寸法は、第2方向H2に一定である。このため、第2板部32は、角形成部33からの突出方向である第2方向H2に沿って幅が変化しない一定幅である。第1板部31の幅方向H3への寸法は、第2板部32の幅方向H3への寸法と等しい。第1方向H1に沿った第1板部31の基端から先端までの寸法は、第2方向H2に沿った第2板部32の基端から先端までの寸法より長い。つまり、第1方向H1に沿った第1板部31の寸法は、第2方向H2に沿った第2板部32の寸法と異なる。
【0031】
角形成部33は、第1板部31と第2板部32の交差する部位である。屈曲部材30において、第1板部31及び第2板部32の基端は、角形成部33に位置し、第1板部31と第2板部32の境界に位置している。第1板部31において、第1板部31の先端に位置する縁を第1先端縁31cとし、第2板部32の先端に位置する縁を第2先端縁32cとする。第1先端縁31c及び第2先端縁32cは、板厚方向に薄い寸法を有し、幅方向H3に、板厚方向への寸法より大きい寸法を有する。
【0032】
上記したように、周壁21は、上記屈曲部材30を四つ組み合わせることで形成されている。具体的には、図3又は図5に示すように、周壁21は、四つの屈曲部材30を四角枠状をなすように並べることで形成されている。周壁21の四つの角23は、四つの屈曲部材30の角形成部33によって構成されている。
【0033】
各側壁22は、周方向に隣り合う二つの屈曲部材30のうちの一方の第1板部31と、他方の第2板部32とを組み合わせて形成されている。つまり、各側壁22は、周方向に隣り合う一方の屈曲部材30の第1板部31の先端部と、他方の屈曲部材30の第2板部32の先端部とを隣接させることで形成されている。
【0034】
ここで、第1板部31の第1先端縁31cと、第2板部32の第2先端縁32cとを突き合わせて側壁22を形成しつつ、周壁21を形成する方法を基準方法とする。図3は、基準方法によって形成された周壁21を示す。
【0035】
一方、図5に示すように、隣り合う二つの屈曲部材30のうちの一方の屈曲部材30の第1板部31の先端部と、他方の屈曲部材30の第2板部32の先端部とを隣接させ、かつ各板部31,32の板厚方向に重合させて側壁22を形成しつつ、周壁21を形成する方法を縮小方法とする。
【0036】
このとき、四つの側壁22の各々で、第1板部31と第2板部32のいずれを重合方向の外側にするかを統一させるのが好ましい。ただし、第1板部31と第2板部32のいずれを重合方向の外側にするかは任意である。第1板部31を第2板部32よりも重合方向の外側にした場合、第2外面32bに第1内面31aが接触し、第2板部32を第1板部31よりも重合方向の外側にした場合、第1外面31bに第2内面32aが接触する。
【0037】
四つの屈曲部材30を組み合わせて周壁21を形成した場合、基準方法で側壁22を形成すると、四つの側壁22の各々の周方向への寸法は最大となる。一方、縮小方法で側壁22を形成すると、四つの側壁22の各々の周方向への寸法は、基本方法で形成した場合の側壁22よりも小さくなる。
【0038】
縮小方法で側壁22を形成した場合、第1板部31と第2板部32とを重合させる量を周方向に沿って多くするほど、周方向への側壁22の寸法を小さくできる。そして、縮小方法によって形成される周壁21において、第1板部31と第2板部32との重合長を増減させることにより、周壁21の内部空間Kを拡縮できる。
【0039】
周壁21は、四つの側壁22において互いに対向する二つの側壁22の組を二組備えるが、組を構成する二つの側壁22同士で重合長を同じとする。二つの組同士で重合長を同じにすると、貫通方向Zに見て、周壁21は正方形の四角枠状に形成され、二つの組で重合長を異ならせると、貫通方向Zに見て、周壁21は長方形の四角枠状に形成される。
【0040】
周壁21の四つの側壁22の各々において、第1板部31の先端部と、第2板部32の先端部とは、接合部材50によって接合されている。本実施形態では、接合部材50はアルミテープである。
【0041】
基準方法及び縮小方法において、接合部材50は、第1板部31の先端部における第1内面31aと、第2板部32の先端部における第2内面32aとに亘って貼着される、又は、第1板部31の先端部における第1外面31bと第2板部32の先端部における第2外面32bに亘って貼着される。周壁21において、各側壁22に第1板部31の先端部と第2板部32の先端部とが隣接する箇所が一箇所ずつ形成されている。このため、周壁21には、二つの屈曲部材30を接合部材50によって接合する箇所が四箇所ある。
【0042】
そして、四つの屈曲部材30において、隣り合う二つの屈曲部材30同士が接合部材50によって接合されることで、四つの屈曲部材30が一体に組付けられ、周壁21の四角枠状が維持されている。したがって、四つの接合部材50は、周壁21の形状を維持する維持部材として機能している。また、枠体20は、四つの屈曲部材30から形成される周壁21と、四つの接合部材50と、から構成されている。
【0043】
図3に示すように、基準方法で周壁21を形成した場合、各側壁22で周方向に隣接する第1板部31と第2板部32とは、第1先端縁31cと第2先端縁32cを突き合わせた状態で接合部材50によって接合される。基準方法で周壁21を形成する場合であっても、第1板部31及び第2板部32に対して接合部材50を貼着する面は、適宜選択すればよい。
【0044】
貫通方向Zへの周壁21の寸法は、防火中空壁Wの壁厚より大きい。このため、枠体20を貫通孔14に配置した状態では、周壁21における貫通方向Zの両端を防火中空壁Wから突出させることができる。なお、周壁21の四つの角23の各々は、直角である。
【0045】
次に、充填部材15について説明する。
充填部材15は、不燃性を有する材料製である。本実施形態では、充填部材15はロックウール製である。充填部材15は、断熱材17に比べて圧縮変形しやすい材質である。ロックウールは、熱により硬化する材質である。このため、充填部材15は、熱により硬化すると、断熱材17よりも圧縮変形しにくくなる性能を有する。
【0046】
図10に示すように、充填部材15は、略三角柱である。充填部材15は、三角形状の二つの底面15aを有する。充填部材15において、二つの底面15aを繋ぐ方向を高さ方向とする。充填部材15は、二つの底面15aの斜辺同士を高さ方向に繋ぐ面に内面15bを有し、内面15b以外の二つの面に側面15cを有する。二つの側面15cは直交している。充填部材15は、底面15aの三角形を潰す何れの方向にも圧縮変形可能である。充填部材15の底面15aの斜辺以外の二つの辺の各々の長さは、枠体20の四つの側壁22の各々の周方向への長さの半分より長い。
【0047】
壁貫通配管装置25は、外圧により圧縮変形する断熱材17により流体管24が覆われた断熱材付管13と、貫通孔14に配置され、かつ断熱材付管13を取り囲む枠体20と、断熱材17の外周面のうち軸方向の一部を覆う熱膨張部材18と、を備える。また、壁貫通配管装置25は、断熱材付管13の外面と、当該外面に対向する枠体20の内面との間に充填され、断熱材17に比べて圧縮変形しやすい材質の充填部材15と、を備える。
【0048】
図9に示すように、防火中空壁Wの貫通構造において、貫通孔14内に枠体20が配置されている。枠体20の内部空間Kにより、防火中空壁Wを壁厚方向に貫通する貫通空間Tが画定されている。枠体20の内部である貫通空間Tに断熱材付管13が挿通されることにより、防火中空壁Wの貫通空間Tを断熱材付管13が貫通している。枠体20は、断熱材付管13を取り囲む。枠体20の内面と、断熱材付管13の外周面との間の隙間Mには充填部材15が充填される。
【0049】
図8に示すように、隙間Mに充填された充填部材15は、断熱材付管13の外周面と、当該外周面に対向する枠体20の内面との間の隙間Mを塞いでいる。
また、枠体20の外面と貫通孔14の内面との間には外側閉塞部材16が介在している。外側閉塞部材16は、非通気性のロックウールによって形成されている。なお、外側閉塞部材16は、セラミックウールといった不燃性を有する材料によって形成されていれば、材質は適宜変更可能である。外側閉塞部材16は、細長な帯状であるとともに、シート状である。外側閉塞部材16は、大判のシート状の外側閉塞部材16を切断して形成されているが、予め細長なシート状に形成されたものを使用してもよい。
【0050】
第1孔11a内に配置された外側閉塞部材16は、第1孔11aの内面と、当該内面に対向する各屈曲部材30の第1外面31b及び第2外面32bとの間を閉塞している。また、第2孔12a内に配置された外側閉塞部材16は、第2孔12aの内面と、当該内面に対向する各屈曲部材30の第1外面31b及び第2外面32bとの間を閉塞している。
【0051】
外側閉塞部材16は、各孔11a,12aの内面と各屈曲部材30の第1外面31b及び第2外面32bとの間で厚さ方向に圧縮されている。圧縮変形した外側閉塞部材16は、原形状への復帰により、各孔11a,12aの内面及び各屈曲部材30の第1外面31b及び第2外面32bに沿って変形しつつ、接触している。
【0052】
縮小方法で形成された周壁21の各側壁22において、第1板部31の外側に第2板部32が重合する場合は、第1外面31bと第2先端縁32cと第2外面32bとから段差が形成され、第2板部32の外側に第1板部31が重合する場合は、第2外面32bと第1先端縁31cと第1外面31bとから段差が形成される。外側閉塞部材16は、上記段差に沿って変形し、接触している。
【0053】
上記のように、各側壁22に段差が形成されるが、接合部材50が第1内面31a及び第2内面32aに貼着されていると、枠体20と外側閉塞部材16との接触箇所が減るため、接合部材50は、第1内面31a及び第2内面32aに貼着されるのが好ましい。また、縮小方法で周壁21を形成した場合、貫通孔14内に四つの屈曲部材30を配置した後、第1内面31a及び第2内面32aに接合部材50を貼着できるため、周壁21の大きさを貫通孔14に合わせやすく、さらには、外側閉塞部材16を圧縮させた位置を決めやすい。
【0054】
外側閉塞部材16は、貫通方向Zへの寸法が屈曲部材30よりも小さい帯状である。また、外側閉塞部材16は、屈曲部材30の板厚方向への寸法よりも大きい厚さを有し、貫通構造では、外側閉塞部材16は、屈曲部材30の板厚以上の圧縮量で圧縮変形されている。
【0055】
四つの充填部材15の各々は、内面15bを断熱材付管13に接触させて隙間Mに充填されている。また、四つの充填部材15の各々は、二つの側面15cの一方を、周壁21の一つの側壁22の内面に接触させ、他方を隣り合う側壁22の内面に接触させて隙間Mに充填されている。断熱材付管13の周方向に隣り合う充填部材15同士は枠体20の周方向に沿って互いに押し付け合い、枠体20の周方向に圧縮変形している。つまり、断熱材付管13の周方向に隣り合う充填部材15同士は、周壁21の一組の側壁22同士の間で、枠体20の周方向に圧縮変形している。
【0056】
また、四つの充填部材15の各々は、断熱材付管13の径方向に沿って周壁21の内面と流体管24との間で圧縮変形している。四つの充填部材15は断熱材付管13の外周面に沿って変形し、四つの内面15bが一繋ぎとなって断熱材付管13の外周面を周方向全体に亘って取り囲んでいる。つまり、四つの充填部材15の内面15bは、断熱材付管13の周方向全体に亘って外周面に接触している。四つの充填部材15の各々は、周壁21の内面と断熱材付管13の外周面との接触により、外圧を受けて圧縮変形している。ただし、充填部材15は、断熱材17に比べて圧縮変形量が多く、断熱材17はほとんど圧縮変形していない。
【0057】
図2に示すように、熱膨張部材18は、貫通方向Zに沿う防火中空壁W寄りの一部が貫通空間T内に位置している。このため、熱膨張部材18の一部が、断熱材17の外周面と充填部材15の内面との間に介在している。
【0058】
図2又は図11に示すように、防火中空壁Wの貫通構造において、各充填部材15の両底面15aの各々には、被覆部材としての防水テープ60が貼着されている。防水テープ60は、隙間Mへの充填によって圧縮変形した底面15aの形状に合わせられる。防水テープ60の材質は、非通気性である。そして、四つの充填部材15の底面15aに防水テープ60を貼着することで、外気が充填部材15に及ぶことを抑制する。
【0059】
図2又は図12に示すように、充填部材15の両底面15a側において、四つの防水テープ60の表面には、環状の位置決めテープ61が貼着される。位置決めテープ61の材質は、例えばアルミニウム製である。位置決めテープ61は、断熱材付管13を取り囲む形状である。位置決めテープ61は、挿通孔61aを有する。挿通孔61aの直径は、断熱材付管13における熱膨張部材18での外径より僅かに大きい。このため、挿通孔61aには断熱材付管13の熱膨張部材18を設けた部分が挿通できる。位置決めテープ61の外形形状は、枠体20の内面に沿う四角形状である。位置決めテープ61は、四つの防水テープ60の表面に亘って貼着される。位置決めテープ61は、防水テープ60を介して四つの充填部材15を位置決めする。
【0060】
また、防火中空壁Wの表面には、外側閉塞部材16を覆うように防水テープ62が貼着されている。また、防火中空壁Wの表面及び枠体20には、防水テープ62の表面を覆うように位置決めテープ63が貼着されている。
【0061】
次に、防火中空壁Wの貫通構造の形成方法を説明する。
枠体20を形成する四つの屈曲部材30を、第1屈曲部材30a、第2屈曲部材30b、第3屈曲部材30c、及び第4屈曲部材30dとする。
【0062】
図6に示すように、第1間仕切り壁11の第1孔11aの内面に沿う四面に沿って外側閉塞部材16を配置する。同じく、第2孔12aの内面に沿う四面に沿って外側閉塞部材16を配置する。
【0063】
次に、図7及び図8に示すように、第1屈曲部材30aの角形成部33を、貫通孔14の第1角14aに合わせて貫通孔14内に配置し、第2屈曲部材30bの角形成部33を第2角14bに合わせて貫通孔14内に配置する。また、第3屈曲部材30cの角形成部33を第3角14cに合わせて貫通孔14内に配置し、第4屈曲部材30dの角形成部33を第4角14dに合わせて貫通孔14内に配置する。このとき、各内面に沿って隣り合う屈曲部材30において、一方の屈曲部材30の第1板部31の先端部と、他方の屈曲部材30の第2板部32とを互いの板厚方向に重合させる。貫通孔14の内面の寸法に合わせて、第1板部31と第2板部32の重合量を調節する。また、外側閉塞部材16を厚さ方向に圧縮するように、第1板部31と第2板部32の重合量を調節する、そして、隣り合う一方の屈曲部材30の第1板部31と、他方の屈曲部材30の第2板部32とを接合部材50によって接合する。
【0064】
その結果、貫通孔14内に周壁21が形成され、枠体20が配置される。また、枠体20の内側に貫通空間Tが画定される。この場合、第1屈曲部材30aの第1板部31と第2屈曲部材30bの第2板部32とが重合されて第2内面142に沿う側壁22が形成され、第2屈曲部材30bの第1板部31と第3屈曲部材30cの第2板部32とが重合されて第3内面143に沿う側壁22が形成されている。また、第3屈曲部材30cの第1板部31と第4屈曲部材30dの第2板部32とが重合されて第4内面144に沿う側壁22が形成されている。また、第4屈曲部材30dの第1板部31と第1屈曲部材30aの第2板部32とが重合されて第1内面141に沿う側壁22が形成されている。また、各屈曲部材30が外側閉塞部材16を厚さ方向に圧縮している。
【0065】
次に、図9に示すように、枠体20によって貫通孔14内に画定された貫通空間Tに断熱材付管13を挿通し、貫通空間Tに断熱材付管13を貫通させる。このとき、断熱材付管13における断熱材17の外周面に熱膨張部材18を巻き付けた状態で、断熱材付管13を貫通空間Tに挿通してもよいし、断熱材付管13を貫通空間Tに挿通した後に、断熱材17の外周面に熱膨張部材18を巻き付けてもよい。断熱材付管13に対し熱膨張部材18を巻き付けるタイミングがいずれであっても、断熱材17が厚さ方向に潰れすぎていないかを確認できる。
【0066】
次に、図10に示すように、第1屈曲部材30aの第1内面31a及び第2内面32aと、これら内面に対向する断熱材付管13の外周面との隙間Mに一つの充填部材15を充填し、第2屈曲部材30bの第1内面31a及び第2内面32aと、これら内面に対向する断熱材付管13の外周面との隙間Mに一つの充填部材15を充填する。また、第3屈曲部材30cの第1内面31a及び第2内面32aと、これら内面に対向する断熱材付管13の外周面との隙間Mに一つの充填部材15を充填し、第4屈曲部材30dの第1内面31a及び第2内面32aと、これら内面に対向する断熱材付管13の外周面との隙間Mに一つの充填部材15を充填する。
【0067】
各充填部材15は、厚さ方向に圧縮変形させながら隙間Mに充填される。隙間Mに充填された各充填部材15は、圧縮変形された状態から原形状への復帰力により、各屈曲部材30の第1内面31a及び第2内面32aと、断熱材付管13の外周面に強く接触する。また、各充填部材15は、断熱材付管13の外周面と各側壁22の内面に沿って変形し、第2先端縁32cによって形成される段差にも追従して変形する。
【0068】
次に、図11に示すように、防水テープ60を各充填部材15の両方の底面15aに貼着し、その後、図12に示すように、位置決めテープ61を四つの防水テープ60の表面に亘って貼着する。すると、防火中空壁Wの貫通構造が完成する。
【0069】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)防火中空壁Wの貫通構造を形成する際、断熱材付管13の外周面と枠体20の内面との間の隙間Mに充填部材15を圧縮変形させながら充填する。そして、充填部材15は、断熱材付管13の断熱材17に比べて圧縮変形しやすい材質である。このため、隙間Mに充填された充填部材15は、原形状へ復帰しにくく、断熱材17が充填部材15によって圧縮変形することを抑制できる。したがって、充填部材15を隙間Mに充填する際、断熱材17が圧縮変形しないように充填部材15の充填量の調整、及び充填部材15の充填の仕方に配慮を払う必要がなくなり、充填部材15の充填作業が容易になる。さらには、断熱材付管13において、断熱材17の圧縮に伴う断熱効果の低下を抑制できる。
【0070】
(2)また、充填部材15は、圧縮変形したままの状態が維持され、断熱材付管13の外周面と枠体20の内面とに強く接触した状態が維持される。このため、充填部材15によって断熱材付管13を枠体20内に位置決めできる。
【0071】
(3)枠体20の周壁21を四つの屈曲部材30を組み合わせて形成できる。そして、隣り合う屈曲部材30の第1板部31と第2板部32との重合量を調節することで、周方向への側壁22の寸法を調節して、周壁21のサイズを貫通孔14のサイズに柔軟に合わせることができる。よって、貫通孔14のサイズに合わせて枠体20を複数用意する必要がなくなる。また、貫通孔14の形状がいびつであっても、枠体20によって柔軟に対応できる。
【0072】
(4)充填部材15は圧縮変形可能である。このため、周壁21の側壁22に、第1板部31と第2板部32との重合に伴って段差が形成されても、充填部材15は、段差に追従して変形し、隙間Mを閉塞できる。
【0073】
(5)外側閉塞部材16は圧縮変形可能である。このため、外側閉塞部材16は、枠体20の周壁21の外面と貫通孔14の内面との間で厚さ方向に圧縮され、周壁21の外面と貫通孔14の内面とに強く接触する。よって、外側閉塞部材16によって周壁21の外面と貫通孔14の内面との間を閉塞できる。
【0074】
特に、縮小方法によって周壁21を形成した場合、第1板部31と第2板部32の重合部には段差が形成されるが、段差に追従して外側閉塞部材16が変形するため、外側閉塞部材16によって周壁21の外面と貫通孔14の内面との間を閉塞できる。さらに、貫通孔14の角が直角にならずアール形状であったり、貫通孔14の内面に凹凸があったりしても、外側閉塞部材16が貫通孔14の形状に追従して変形するため、周壁21の外面と貫通孔14の内面との間を閉塞できる。
【0075】
(6)防火中空壁Wの貫通構造において、充填部材15の底面15aには防水テープ60が貼着される。防水テープ60は非通気性であるため、ロックウール製の充填部材15に外気が及びにくくなる。このため、外気に含まれる水蒸気によって充填部材15のロックウールが湿気を帯びることを抑制できる。また、防水テープ60及び位置決めテープ61により、充填部材15の底面15aが防火中空壁Wの表側に臨むことを抑制できるため、充填部材15の劣化を抑制できる。
【0076】
(7)充填部材15は、熱により硬化する。このため、防火中空壁Wの貫通構造が火災に曝されたとき、火災の熱により充填部材15が硬化し、圧縮変形しにくくなる。その結果、断熱材付管13の熱膨張部材18が流体管24に向けて膨張しやすくなり、流体管24が焼失しても膨張した熱膨張部材18によって貫通孔14を塞ぐことができる。
【0077】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
図13に示すように、枠体20の周壁21は、枠体構成体としての四つの屈曲部材30と、枠体構成体としての四つの直部形成体80と、から構成されていてもよい。
【0078】
直部形成体80は、長四角板状である。周壁21は、四つの屈曲部材30、及び四つの直部形成体80を四角枠状をなすように並べることで形成されている。周壁21の四つの角23は、四つの屈曲部材30の角形成部33によって構成されている。
【0079】
四つの側壁22の各々は、周方向に隣り合う二つの屈曲部材30のうちの一方の第1板部31と、他方の第2板部32と、第1板部31と第2板部32との間に配置される一つの直部形成体80と、を組み合わせて形成されている。そして、周壁21において、直部形成体80に対し、第1板部31と第2板部32との重合量を周方向に沿って増減させることにより、周壁21の内部空間Kを拡縮できる。
【0080】
周壁21の四つの側壁22の各々において、第1板部31の先端部と直部形成体80、及び第2板部32の先端部と直部形成体80とは、接合部材50によって接合されている。四つの屈曲部材30と四つの直部形成体80とが接合部材50によって接合されることで、四つの屈曲部材30、及び四つの直部形成体80が一体に組付けられ、周壁21が形成されている。
【0081】
○ 屈曲部材30は、金属板を屈曲させて形成したものではなく、一定幅の二つの金属板材を粘着テープでL形状に形成したものであってもよい。このように構成した場合、屈曲部材30は、枠体20の施工現場でL形状に形成してもよいし、工場でL形状に形成してもよい。
【0082】
○ 接合部材50は、第1板部31と第2板部32に亘るように、第1板部31及び第2板部32に貼着されたが、接合部材50を両面テープとした場合、接合部材50を、重合する第1板部31と第2板部32の間に介在させて第1板部31と第2板部32とを接合してもよい。
【0083】
○ 屈曲部材30において、第1板部31の第1方向H1への寸法と、第2板部32の第2方向H2への寸法とを同じとしてもよい。
○ 屈曲部材30において、第1板部31の第1方向H1への寸法と、第2板部32の第2方向H2への寸法は適宜変更してもよい。
【0084】
○ 枠体20の周方向全体に亘って粘着テープを貼着して枠体20の四角筒状を維持するようにしてもよい。
○ 貫通孔14が矩形孔状である場合、周壁21の四つの側壁22のうち、対向する一組の側壁22は、他の対向する一組の側壁22よりも短くなる。この場合、貫通孔14の長辺に合わせて第1板部31と第2板部32の重合量、又は、第1板部31及び第2板部32と直部形成体80との重合量を調節し、貫通孔14の短辺に合わせて第1板部31と第2板部32の重合量、又は第1板部31及び第2板部32と直部形成体80との重合量を調節する。
【0085】
○ 一つの側壁22を構成する二つの屈曲部材30で第1板部31と第2板部32を重合させたが、一つの側壁22を構成する二つの屈曲部材30で第1板部31同士を重合させてもよい。
【0086】
○ 断熱材付管13の熱膨張部材18は、貫通方向Zの全体が貫通孔14内に位置していてもよい。
○ 断熱材付管13及び壁貫通配管装置25は、熱膨張部材18を備えていなくてもよい。
【0087】
○ 充填部材15に熱膨張性能を付与してもよい。
○ 充填部材15の形状は三角柱状に限らない。
○ 防火中空壁Wの貫通構造において、防水テープ60及び位置決めテープ61の少なくとも一方は省略してもよい。
【0088】
○ 防火中空壁Wの貫通構造において、外側閉塞部材16は省略してもよい。
○ 枠体20は、枠体構成体を組み合わせて形成されるものでなくてもよい。
○ 区画壁は中空壁でなくてもよく、中実壁であってもよい。この場合、貫通孔14の内側に枠体20を配置せず、貫通孔14そのものを貫通空間Tとする。
【0089】
○ 枠体20は、貫通方向Zの全体が貫通孔14内に配置されていてもよい。要は、枠体20は、貫通方向Zの一部が貫通孔14内に配置されていればよい。
○ 枠体20は、複数の屈曲部材30を組み合わせ形成されるタイプや、複数の屈曲部材30と直部形成体80を組み合わせて形成されるタイプでなくてもよい。つまり、枠体20は、枠状の一部品からなるタイプであってもよい。
【0090】
○ 実施形態では、貫通構造の形成方法として、貫通孔14が形成された防火中空壁Wに枠体20を後設置する例を示したが、これに限らない。区画壁としてのコンクリート床に貫通構造を形成する場合、枠体20は、型枠としてコンクリート埋設され、そのままコンクリート床に先設置されてもよい。この場合、枠体20はコンクリート床から撤去されない。
【符号の説明】
【0091】
K…内部空間、M…隙間、T…貫通空間、W…区画壁としての防火中空壁、13…断熱材付管、14…貫通孔、15…充填部材、16…外側閉塞部材、17…断熱材、18…熱膨張部材、20…枠体、21…周壁、22…側壁、24…管としての流体管、30…枠体構成体としての屈曲部材、60…被覆部材としての防水テープ、80…枠体構成体としての直部形成体。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13