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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】水中玉掛システム及び水中玉掛方法
(51)【国際特許分類】
   B63C 11/00 20060101AFI20240618BHJP
   B63C 11/52 20060101ALI20240618BHJP
   B66C 23/52 20060101ALI20240618BHJP
   B66C 1/12 20060101ALI20240618BHJP
   B66C 13/40 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
B63C11/00 E
B63C11/00 B
B63C11/00 F
B63C11/52
B66C23/52
B66C1/12 D
B66C13/40 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020212694
(22)【出願日】2020-12-22
(65)【公開番号】P2022098986
(43)【公開日】2022-07-04
【審査請求日】2023-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000166627
【氏名又は名称】五洋建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西 広人
(72)【発明者】
【氏名】大原 幸大
(72)【発明者】
【氏名】琴浦 毅
【審査官】中島 昭浩
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-218298(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0032247(KR,A)
【文献】特開2011-201633(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63C 11/00
B63C 11/48
B63C 11/52
B66C 23/52
B66C 1/12
B66C 13/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶に搭載されたクレーンの吊索を水中の物体に取り付けられた吊筋に連結する水中玉掛システムであって、
前記吊索に、連結部材を介して連結される索体と、前記索体を介して前記吊索に連結される鉤状部材とを有する吊具と、
水中で画像を撮影する撮影装置を有し、水上から受信する信号に従い水中を移動する無人潜水機と、
前記無人潜水機に設けられ、前記吊具を解放可能に保持する保持機構と
前記連結部材を介して前記吊索に連結され、前記無人潜水機と連結され前記信号を伝える信号線と
を備える水中玉掛システム。
【請求項2】
船舶に搭載されたクレーンの吊索を水中の物体に取り付けられた吊筋に連結する水中玉掛システムであって、
前記吊索に、連結部材を介して連結される索体と、前記索体を介して前記吊索に連結される鉤状部材と、浮体とを有する吊具と、
水中で画像を撮影する撮影装置を有し、水上から受信する信号に従い水中を移動する無人潜水機と、
前記無人潜水機に設けられ、前記吊具を解放可能に保持する保持機構と
を備える水中玉掛システム。
【請求項3】
複数の前記吊具を備え、
前記保持機構は前記複数の吊具の各々を個別に解放可能に保持する
請求項1又は2に記載の水中玉掛システム。
【請求項4】
前記保持機構は、前記複数の吊具の各々の前記無人潜水機から前方に延伸する部分の長さが異なるように前記複数の吊具を保持する
請求項に記載の水中玉掛システム。
【請求項5】
前記保持機構は、保持している前記吊具に閾値以上の外力が加えられた場合に当該外力により前記吊具を解放する
請求項1乃至のいずれか1項に記載の水中玉掛システム。
【請求項6】
前記保持機構は、水上から受信する信号に従い保持している前記吊具を解放する
請求項1乃至のいずれか1項に記載の水中玉掛システム。
【請求項7】
前記保持機構は、水上から受信する信号に従い動く可動部を備える
請求項1乃至のいずれか1項に記載の水中玉掛システム。
【請求項8】
請求項1乃至のいずれか1項に記載の水中玉掛システムを用いて船舶に搭載されたクレーンの吊索を水中の物体に取り付けられた吊筋に連結する水中玉掛方法であって、
前記無人潜水機に設けられた前記保持機構により保持された前記吊具が連結された前記吊索を前記クレーンから水中に吊り下ろす工程と、
前記吊り下ろす工程において前記吊具と共に水中を下降した前記無人潜水機が前記撮影装置により撮影する画像に基づき、水上から前記無人潜水機に信号を送信し、前記無人潜水機を移動させて、前記水中の物体に取り付けられた前記吊筋に前記吊具を連結する工程と
を備える水中玉掛方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中に設置されている物体を水上に吊り上げる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
水中に設置されているコンクリートブロック等の物体を撤去する方法として、作業船上のクレーンから水中に下ろしたワイヤロープ等の吊索の先端付近に取り付けられたフック等の吊具を、撤去対象の物体に取り付けられている吊筋と呼ばれるU字の金具に引っ掛けて連結し、吊索をクレーンで吊り上げることで、撤去対象の物体を作業船上に吊り上げる方法がある。吊筋に吊具を連結する作業は「玉掛」と呼ばれる。また、連結されている吊具を吊筋から取り外す作業は「玉外し」と呼ばれる。
【0003】
玉掛に関する技術を開示する特許文献として、例えば特許文献1がある。特許文献1に記載の発明によれば、水上で玉掛した物体をワイヤで水中に吊り下ろし、海底等に着底させると、吊具に取り付けられている浮体の浮力により吊具が水平軸周りに回転し吊筋から外れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-264573号公報
【文献】特開2010-207106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の発明によると、水中における玉外しの作業が容易となる。しかしながら、特許文献1に記載の発明によって、水中における玉掛作業は容易にならず、潜水士による作業が必要となる。
【0006】
また、特許文献2に記載の発明によると、水中における潜水士によらない玉掛作業が可能だが、玉掛は1か所しか行うことが出来ない。建設工事で使用する水中に設置されたブロックを吊り上げるには少なくとも2カ所に玉掛を行う必要がある。また、玉掛を行う物体に事前に案内索が連結されていることが必要となる。
【0007】
上述の背景に鑑み、本発明は、潜水士によらず案内索も不要で水中における複数回の玉掛を可能とする手段を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明は、船舶に搭載されたクレーンの吊索を水中の物体に取り付けられた吊筋に連結する水中玉掛システムであって、前記吊索に、連結部材を介して連結される索体と、前記索体を介して前記吊索に連結される鉤状部材とを有する吊具と、水中で画像を撮影する撮影装置を有し、水上から受信する信号に従い水中を移動する無人潜水機と、前記無人潜水機に設けられ、前記吊具を解放可能に保持する保持機構と、前記連結部材を介して前記吊索に連結され、前記無人潜水機と連結され前記信号を伝える信号線とを備える水中玉掛システムを第1の態様として提案する。
また、本発明は、船舶に搭載されたクレーンの吊索を水中の物体に取り付けられた吊筋に連結する水中玉掛システムであって、前記吊索に、連結部材を介して連結される索体と、前記索体を介して前記吊索に連結される鉤状部材と、浮体とを有する吊具と、水中で画像を撮影する撮影装置を有し、水上から受信する信号に従い水中を移動する無人潜水機と、前記無人潜水機に設けられ、前記吊具を解放可能に保持する保持機構とを備える水中玉掛システムを第2の態様として提案する。
【0009】
第1及び第2の態様に係る水中玉掛システムによれば、潜水士によらず水中における玉掛ができる。
【0011】
の態様に係る水中玉掛システムによれば、信号線を介して確実な信号を送信することが出来る。
【0013】
の態様に係る水中玉掛システムによれば、玉掛作業終了後に無人潜水機を引き上げる際に、無人潜水機を水中の物体と一緒にクレーンで引き上げることが出来る。
【0015】
の態様に係る水中玉掛システムによれば、水中において吊具の重力が浮体の浮力により相殺されて、吊具を保持し運搬する無人潜水機の負荷が軽減される。
【0016】
第1又は2の態様に係る水中玉掛システムにおいて、複数の前記吊具を備え、前記保持機構は前記複数の吊具の各々を個別に解放可能に保持する、という構成が第の態様として採用されてもよい。
【0017】
の態様に係る水中玉掛システムによれば、複数の吊筋が取り付けられた水中の物体に対する玉掛が個別に行える。
【0018】
の態様に係る水中玉掛システムにおいて、前記複数の吊具の各々の前記無人潜水機から前方に延伸する部分の長さが異なるように前記複数の吊具を保持する、という構成が第の態様として採用されてもよい。
【0019】
の態様に係る水中玉掛システムによれば、複数の吊筋に1つずつ吊具の鉤状部材を連結させる際、他の吊具の鉤状部材が邪魔になりにくく、スムーズな連結ができる。
【0020】
第1乃至第のいずれかの態様に係る水中玉掛システムにおいて、前記保持機構は、保持している前記吊具に閾値以上の外力が加えられた場合に当該外力により前記吊具を解放する、という構成が第の態様として採用されてもよい。
【0021】
の態様に係る水中玉掛システムによれば、無人潜水機が保持機構により保持している吊具の鉤状部材を吊筋に連結させた後、物体から離れるように移動することで、吊具が保持機構から解放される。
【0022】
第1乃至第のいずれかの態様に係る水中玉掛システムにおいて、前記保持機構は、水上から受信する信号に従い保持している前記吊具を解放する、という構成が第の態様として採用されてもよい。
【0023】
の態様に係る水中玉掛システムによれば、無人潜水機が保持機構により保持している吊具の鉤状部材を吊筋に連結させた後、水上から無人潜水機に対し信号を送信することで、吊具が保持機構から解放される。
【0024】
第1乃至第のいずれかの態様に係る水中玉掛システムにおいて、前記保持機構は、水上から受信する信号に従い動く可動部を備える、という構成が第の態様として採用されてもよい。
【0025】
の態様に係る水中玉掛システムによれば、保持機構を動かすことにより、無人潜水機全体を移動させるよりも容易に、吊筋と吊具の鉤状部材との連結が行える。
【0026】
また、本発明は、第1乃至第のいずれかの水中玉掛システムを用いて船舶に搭載されたクレーンの吊索を水中の物体に取り付けられた吊筋に連結する水中玉掛方法であって、前記無人潜水機に設けられた前記保持機構により保持された前記吊具が連結された前記吊索を前記クレーンから水中に吊り下ろす工程と、前記吊り下ろす工程において前記吊具と共に水中を下降した前記無人潜水機が前記撮影装置により撮影する画像に基づき、水上から前記無人潜水機に信号を送信し、前記無人潜水機を移動させて、前記水中の物体に取り付けられた前記吊筋に前記吊具を連結する工程とを備える水中玉掛方法を第の態様として提案する。
【0027】
の態様に係る水中玉掛方法によれば、潜水士によらず海上から水中における玉掛作業ができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】一実施形態に係る水中玉掛システムの全体構成を示した図。
図2】一実施形態に係る無人潜水機の構成を示した図。
図3】一実施形態に係る吊具の構成を示した図。
図4】一実施形態に係る保持機構の構成を示した図。
図5A】一実施形態に係る水中玉掛方法の手順を説明するための図。
図5B】一実施形態に係る水中玉掛方法の手順を説明するための図。
図5C】一実施形態に係る水中玉掛方法の手順を説明するための図。
図5D】一実施形態に係る水中玉掛方法の手順を説明するための図。
図5E】一実施形態に係る水中玉掛方法の手順を説明するための図。
図6】一変形例に係る保持機構の構造の例を示した図。
図7】一変形例に係る水中玉掛システムの全体構成を示した図。
図8】一変形例に係る水中玉掛システムの全体構成を示した図。
図9】一変形例に係る水中玉掛システムの全体構成を示した図。
【0029】
[実施形態]
以下に本発明の一実施形態に係る水中玉掛システム1と、水中玉掛システム1を用いて水中玉掛を行う方法(以下、水中玉掛方法Mという)を説明する。
【0030】
図1は、水中玉掛システム1の全体構成を示した図である。水中玉掛システム1は、水上を移動可能な作業船8(船舶の一例)に搭載されたクレーン9により水中に吊り下ろされて、水中において海底G上に設置されているコンクリートブロック7(水中の物体の一例)に対し玉掛を行うシステムである。
【0031】
クレーン9は、基台91と、基台91上で垂直方向の軸周りに旋回する旋回体92と、旋回体92上に取り付けられたリール93及びジブ94と、リール93により巻き取り及び巻き出しが行われ、ジブ94の先端に取り付けられた滑車95を通って吊り下げされるクレーンワイヤ96(吊索の一例)と、クレーンワイヤ96の先端に取り付けられたクレーンフック97(連結部材の一例)を備える。
【0032】
コンクリートブロック7は、ブロック本体71と、ブロック本体71の上面に取り付けられた複数の吊筋72を備える。以下、コンクリートブロック7が備える吊筋72の数は2つであるものとするが、この数は2つに限られない。
【0033】
コンクリートブロック7の位置(例えば、緯度、経度、水深)は、ナローマルチビーム探査等の方法により、予め特定されている。
【0034】
作業船8には、クレーン9に加え、リール4とコントローラ5が設置されている。リール4は、後述するケーブル14の巻き取り及び巻き出しを行うためのリールである。
【0035】
コントローラ5は、例えばプログラムに従い各種データ処理を行うコンピュータにより実現され、例えば、操作者による操作に応じて、後述する無人潜水機11に対し各種制御信号を送信することで、操作者による無人潜水機11の操作を可能とする装置である。
【0036】
また、クレーンワイヤ96を海底に降下させる位置については事前に特定した座標位置に基づき作業船8に設置したGNSS(Global Navigation Satellite System)(図示略)を利用して設定する。
【0037】
水中玉掛システム1は、無人潜水機11と、複数の吊具12と、無人潜水機11に設けられ、複数の吊具12を解放可能に保持する保持機構13(図1において図示略)と、無人潜水機11とコントローラ5及び電源(図示略)とを接続するケーブル14と、ケーブル14の途中に取り付けられケーブル14をクレーンフック97に連結させる連結リング15を備える。
【0038】
図2は、無人潜水機11の構成を示した図である。なお、図2には、無人潜水機11に加え、無人潜水機11に一方の端部が接続されたケーブル14と、ケーブル14の途中に取り付けられた連結リング15も示されている。
【0039】
無人潜水機11は、筐体111と、カメラ112(撮影装置の一例)と、ライト113と、複数のスラスタ114と、制御ユニット115を備える。
【0040】
カメラ112は、例えば光学カメラであり、水中で画像を継続的に撮影する。ライト113は水中で発光し、水中の物体に光を照射する。スラスタ114は、モータと、モータにより駆動され回転するプロペラを備え、無人潜水機11に推進力を与える推進装置である。また、スラスタ114は筐体111に対する姿勢を変更する姿勢変更機構を備え、姿勢を変更することで、無人潜水機11に与える推進力の方向を変更できる。制御ユニット115は筐体111内に配置され、ケーブル14を介してコントローラ5から受信する信号に従い、カメラ112、ライト113、スラスタ114の動作を制御する。
【0041】
水中玉掛システム1が備える吊具12の数は2以上である。既述のように、本実施形態の説明において、コンクリートブロック7が備える吊筋72の数は2つであるものとするため、本説明においては水中玉掛システム1が備える吊具12の数も2つであるものとするが、吊筋72の数は3以上であってもよい。以下、2つの吊具12を区別するために、無人潜水機11の右側に保持されている吊具12を吊具12(1)と呼び、左側に保持されている吊具12を吊具12(2)と呼ぶ。ただし、これらの吊具を区別しない場合は、単に吊具12という。
【0042】
図3は、吊具12の構成を示した図である。吊具12は、鉤状部材121と、鉤状部材121に引っ掛けられた吊筋72が意図せず鉤状部材121から外れるのを防止するための外れ止め金具122と、鉤状部材121の尾部(鉤状でない側の端部)から延伸するように鉤状部材121に連結された所定長さ(例えば、0.5m)のパイプ123と、鉤状部材121の尾部に連結された所定長さ(例えば、2m)の索体124と、索体124の鉤状部材121と連結されていない側の端部に取り付けられた連結リング125と、鉤状部材121に取り付けられた浮体126を備える。索体124の鉤状部材121に連結される側の端部から所定長さ(例えば、0.5m)の部分は、パイプ123に覆われている。なお、浮体126は、図3以外の図において図示が省略されている。
【0043】
鉤状部材121は鉤状(U字形状)の部材であり、例えば金属製である。鉤状部材121は、吊筋72に引っ掛けられ、コンクリートブロック7と索体124を連結する役割を果たす。外れ止め金具122は、バネ等により図3の矢印Aの方向に付勢されており、矢印Aと反対の方向に力が加えられるとその方向に回動し鉤状部材121の内側に向かう経路を開き、その力から解放されると矢印Aの方向に回動し、図3の状態(鉤状部材121の内側に向かう経路を塞ぐ状態)に戻る。
【0044】
パイプ123は管状の部材であり、例えば金属製である。パイプ123は、保持機構13により保持される部材である。
【0045】
索体124は、例えばワイヤロープである。連結リング125は、例えば金属製のリング形状の部材であり、索体124をクレーンフック97に連結させる役割を果たし、索体124の先端部分に固着されている。浮体126は、例えば発泡スチロール等の水中で浮力を生じる部材であり、水中で吊具12の重力を軽減して、吊具12を保持し運搬する無人潜水機11の負荷を軽減する役割を果たす。なお、浮体126は、吊具12の重心付近、又は、吊具12の重心より鉤状部材121側に配置されていることが望ましい。その場合、図3に示すように鉤状部材121の開いている部分が下側となる姿勢が保たれ易く、無人潜水機11による玉掛の作業が容易に行える。
【0046】
図4は、無人潜水機11を底面側から見た図であり、保持機構13の構成を示している。本実施形態において、保持機構13は、無人潜水機11の底面上に取り付けられた複数のクリップ131により構成される。保持機構13を構成するクリップ131は、吊具12(図4において浮体126は図示略)のパイプ123を挟み込むことによって吊具12を保持する。そして、吊具12の鉤状部材121に対し図4に示す矢印Bの方向に所定の閾値以上の外力が加えられた場合、吊具12がクリップから外れることにより、保持機構13による吊具12の解放が行われる。なお、パイプ123の材料は、一定の強度が保持されるのであればプレスチック、金属、ゴム、木材等のいずれであっても構わない。
【0047】
保持機構13は、複数の吊具12の各々を、無人潜水機11から前方に延伸する部分の長さが異なるように保持する。図4の例では、保持機構13に保持されている状態において、吊具12(1)の無人潜水機11から前方に延伸する部分の長さは、吊具12(2)の無人潜水機11から前方に延伸する部分の長さより長い。すなわち、吊具12(1)の鉤状部材121は、吊具12(2)の鉤状部材121よりも無人潜水機11の前方に位置している。このように、複数の吊具12の鉤状部材121の位置が異なるように吊具12が保持機構13により保持される結果、例えば、吊具12(1)が吊筋72の1つに連結される際、吊具12(2)がその連結の邪魔になりにくく、吊具12(2)が吊筋72の1つに連結される際には吊具12(1)がすでに玉掛けされ無人潜水機11上からなくなっているので連結の邪魔にならない。
【0048】
ケーブル14(図1図2参照)は、作業船8上に設けられた電源(図示略)から無人潜水機11に電力を供給する電力線と、コントローラ5と無人潜水機11との間で制御信号等の各種信号を送受信するための信号線と、補強線とを複合した複合ケーブルである。ケーブル14の一方の端部は無人潜水機11に接続されており、他方の端部のうち電力線は電源に接続され、信号線はコントローラ5に接続されている。なお、ケーブル14は無人潜水機11を吊る吊索の役割も果たす。ケーブル14は、リール93によるクレーンワイヤ96の巻き出し又は巻き取りに応じて、リール4により巻き出し又は巻き取りが行われる。
【0049】
連結リング15(図2参照)は、ケーブル14の無人潜水機11に接続されている端部から他方の端部に向い所定の長さ(連結リング15の取り付け位置は、索体124の長さを勘案して定めるが、例えば、5m)の位置においてケーブル14に取り付けられている。連結リング15は、例えば金属製のリング形状の部材であり、ケーブル14をクレーンフック97に連結させる役割を果たす。
【0050】
図5A図5Eは、上述した水中玉掛システム1を用いて行われる水中玉掛方法Mの手順を説明するための図である。
【0051】
無人潜水機11の操作者(以下、操作者Aとする)は、作業船8の船上において、吊具12を保持機構13に保持させる。具体的には、吊具12(1)及び吊具12(2)のパイプ123を、保持機構13のクリップ131に挟み込ませる。
【0052】
続いて、操作者Aは、クレーンフック97に、2つの吊具12の各々の連結リング125と、連結リング15とを取り付ける。なお、クレーンフック97には外れ止め金具が設けられており、取り付けられた連結リング125と連結リング15が意図せず外れることはない。
【0053】
上記のクレーンフック97に対する連結リング125の取り付けにより、吊具12の鉤状部材121が索体124及びクレーンフック97を介してクレーンワイヤ96に連結された状態となる。また、上記のクレーンフック97に対する連結リング15の取り付けにより、無人潜水機11がケーブル14及びクレーンフック97を介してクレーンワイヤ96に連結された状態となる。
【0054】
続いて、クレーン9を操作する操作者(以下、操作者Bとする)は、クレーンフック97が作業船8の甲板から1m程度高い位置にぶら下がるように、ジブ94の位置及び姿勢を調整すると共に、クレーンワイヤ96の巻き出し量を調整し、無人潜水機11の固定状態を確認する。
【0055】
続いて、操作者Bは、クレーンワイヤ96を数メートル程、巻き上げて、吊具12が取り付けられた無人潜水機11をクレーン9で吊り上げた後、ジブ94を倒して、無人潜水機11が作業船8の外側で吊り下げられた状態とする(図5A)。なお、この状態において無人潜水機11は動作していない。なお、このとき操作者Aは、クレーン9の巻き上げに伴い無人潜水機11のケーブル14の巻き出しを行う。以後も、操作者Bによるクレーン9の操作に応じて、操作者Aは無人潜水機11のケーブル14の巻き出し量の調整等の必要な対応を行う。
【0056】
続いて、作業船8を操作する操作者Cは、コントローラ5のディスプレイに表示される作業船8の位置(GNSSにより測定される位置)を見ながら、既知のコンクリートブロック7の位置の概ね直上となるように作業船8を移動させ、その位置で作業船8を錨泊させる。なお、作業船8の位置決め方法は前記記載の方法以外を用いてもよく、本記載に制限されない。
【0057】
続いて、操作者Bは、クレーンフック97の水深が、概ね既知のコンクリートブロック7の水深より所定距離(例えば、10m)だけ高い(浅い)水深に至るまで、クレーンワイヤ96の巻き出しを行う。これにより、無人潜水機11に設けられた保持機構13により保持された吊具12が連結されたクレーンワイヤ96が、クレーン9から水中に吊り下ろされる。なお、クレーンワイヤ96の先端の水深は、例えば、リール93によるクレーンワイヤ96の巻き出し量により特定される。このクレーンワイヤ96の巻き出しに伴い、リール4によるケーブル14の巻き出しも行われる。
【0058】
続いて、操作者Aは、コントローラ5の操作装置に対する操作を行い、無人潜水機11に対し動作の開始を指示する。その指示に応じて動作を開始した無人潜水機11は、ライト113により光を照射すると共に、カメラ112により継続的に画像の撮影を行い、撮影した画像を表す画像データを順次、ケーブル14を介してコントローラ5に送信する。コントローラ5のディスプレイには、カメラ112により撮影される画像が表示される。なお、無人潜水機11の稼働に伴い、操作者Bは操作者Aと連携してクレーンワイヤ96の巻き出しを随時行う。
【0059】
続いて、操作者Aは、コントローラ5のディスプレイに表示される画像、すなわち、吊具12と共に水中を下降した無人潜水機11がカメラ112により撮影する画像にコンクリートブロック7が写っているか否かを確認する。
【0060】
既知のコンクリートブロック7の位置及び水深の情報が正しく、作業船8が正しくコンクリートブロック7の直上に錨泊され、クレーンフック97の水深がコンクリートブロック7の水深より所定距離だけ高い水深となるように正しくクレーンワイヤ96の巻き出しが行われていれば、カメラ112が撮影する画像にコンクリートブロック7が写る。
【0061】
ただし、既知のコンクリートブロック7の位置及び水深の情報が不正確であったり、作業船8がコンクリートブロック7の直上から外れた位置に錨泊されていなかったり、クレーンフック97の水深がコンクリートブロック7の水深よりかなり浅い水深となるようにクレーンワイヤ96の巻き出しが行われていたりすると、無人潜水機11は動作を開始した時点における位置及び姿勢においてカメラ112の画角からコンクリートブロック7が外れる場合がある。その場合、操作者Aは、カメラ112が撮影する画像に基づき、コンクリートブロック7の探索を行う。具体的には、操作者Aは、コントローラ5の操作装置に対する操作を行い水上から無人潜水機11に対し信号を送信して、カメラ112が撮影する画像にコンクリートブロック7が写るように無人潜水機11を移動させる(図5B)。この場合、無人潜水機11の移動とは、無人潜水機11の姿勢の変更を含む。
【0062】
カメラ112が撮影する画像にコンクリートブロック7が写ると、操作者Aは、コントローラ5の操作装置に対する操作を行うことで無人潜水機11を遠隔操縦し、無人潜水機11をコンクリートブロック7に近付かせ、吊具12(1)の鉤状部材121を吊筋72の1つに引っ掛けさせる(図5C)。その後、操作者Aは無人潜水機11を保持機構13のクリップ131に所定の閾値以上の外力が加えられクリップ131からパイプ123(つまり吊具12)が解放される方向(例えば斜め上後方)に移動させる。その結果、吊具12(1)が保持機構13から外れる。これにより、吊筋72に対する吊具12(1)の玉掛が完了する。
【0063】
続いて、操作者Aは、コントローラ5の操作装置に対する操作を行うことで無人潜水機11を遠隔操縦し、無人潜水機11を再びコンクリートブロック7に近付かせ、吊具12(2)の鉤状部材121をもう1つの吊筋72に引っ掛けさせる。その後、操作者Aは無人潜水機11を斜め上後方に移動させる。その結果、吊具12(2)が保持機構13から外れる。これにより、吊筋72に対する吊具12(2)の玉掛が完了する。
【0064】
上記のように、複数の吊具12の全てに関し、吊筋72に対する吊具12の玉掛が完了すると、操作者Aは、コントローラ5の操作装置に対する操作を行い、無人潜水機11を、海底G上のコンクリートブロック7から少し離れた位置に移動させて、無人潜水機11の動作を停止させる(図5D)。
【0065】
続いて、操作者Aから連絡を受けた操作者Bは、クレーンワイヤ96の巻き取りを行わせる。クレーンワイヤ96の巻き取りに伴い、リール4によるケーブル14の巻き取りも行われる。クレーンワイヤ96の巻き取りにより、吊具12を介してクレーンワイヤ96に連結されたコンクリートブロック7と、ケーブル14を介してクレーンワイヤ96に連結された無人潜水機11が水上へと吊り上げられる(図5E)。
【0066】
その後、操作者Bは、クレーンワイヤ96の巻き上げとジブ94の起立を行いコンクリートブロック7と無人潜水機11を作業船8の甲板の上方に吊り上げた状態とし、クレーンワイヤ96をゆっくりと巻き出させて、無人潜水機11が甲板上に到達した時点でいったん、クレーンワイヤ96の巻き出しを停止する。その状態で、操作者Aは無人潜水機11をコンクリートブロック7の周辺位置から退避させる。
【0067】
続いて、操作者Bは、再び、クレーンワイヤ96をゆっくりと巻き出させて、コンクリートブロック7を甲板上に下ろす。
【0068】
続いて、操作者Aは、吊具12の鉤状部材121をコンクリートブロック7の吊筋72から取り外すと共に、連結リング15及び連結リング125をクレーンフック97から取り外す。以上が、水中玉掛方法Mの説明である。
【0069】
上述した水中玉掛システム1及び水中玉掛方法Mによれば、潜水士によらず水中玉掛を行うことができる。
【0070】
また、上述した水中玉掛システム1及び水中玉掛方法Mによれば、無人潜水機11がクレーン9によりコンクリートブロック7の近傍まで吊り下ろされるため、無人潜水機11は水面からコンクリートブロック7の近傍まで自走する必要がない。また、上述した水中玉掛システム1及び水中玉掛方法Mによれば、水中で玉掛が完了した後、無人潜水機11はクレーン9により水上まで吊り上げられるため、無人潜水機11は海底G付近から水面まで自走する必要がない。その結果、操作者Aが無人潜水機11を操縦する手間が軽減されると共に、無人潜水機11が消費するエネルギーが削減される。
【0071】
さらに、無人潜水機11が、水中音響測位装置、慣性航法装置等の自装置の位置を水中で測定する装置を備える必要がない。
【0072】
[変形例]
上述の実施形態は様々に変形され得る。以下に、それらの変形の例を示す。なお、以下に示す2以上の変形例が適宜組み合わされてもよい。
【0073】
(1)保持機構13が、水上から受信する信号に従い動く可動部を備えてもよい。図6は、この変形例に係る保持機構21の構造の例を示した図(無人潜水機11を底面側から見た図)である。図6に示される保持機構21は、無人潜水機11の筐体111の底面上に取り付けられた旋回台211と、旋回台211に取り付けられ無人潜水機11の前方へと延伸する主アーム212と、主アーム212から右方向に延伸する副アーム213(1)及び主アーム212から左方向に延伸する副アーム213(2)と、副アーム213(1)の先端付近に配置され開閉するクリップ214(1)と、副アーム213(2)の先端付近に配置され開閉するクリップ214(2)を備える。なお、クリップ214(1)又はクリップ214(2)が閉じた状態とは、対向する2つの部材が互いに近付く方向に移動し、吊具12(図6において浮体126は図示略)を挟み込んで保持する状態を意味する。また、クリップ214(1)又はクリップ214(2)が開いた状態とは、対向する2つの部材が互いに離れる方向に移動し、吊具12を保持しない(挟み込んで保持していた吊具12を解放する)状態を意味する。
【0074】
旋回台211は、コントローラ5からの制御信号に従い動作する制御ユニット115の制御下で、鉛直方向の軸周り(図6に矢印Cで示される方向)に回動する。主アーム212は、コントローラ5からの制御信号に従い動作する制御ユニット115の制御下で、無人潜水機11の前後方向(図6に矢印Dで示される方向)に移動する。クリップ214(1)及びクリップ214(2)は、コントローラ5からの制御信号に従い動作する制御ユニット115の制御下で、個別に開閉する。
【0075】
例えば、操作者Aは、コントローラ5の操作装置に対する操作によって、水中玉掛システム1に以下の動作を行わせる。まず、操作者Aは、無人潜水機11をコンクリートブロック7の近傍まで移動した後、無人潜水機11をその位置に停止する。続いて、操作者Aは、吊筋72の1つに吊具12(1)の鉤状部材121が向かう方向となるように保持機構21の旋回台211を旋回する。続いて、操作者Aは、主アーム212を前方に移動して吊具12(1)の鉤状部材121を吊筋72の上に載せた後、主アーム212を後方に移動する。これにより、鉤状部材121が吊筋72に引っ掛ける。その後、操作者Aは、クリップ214(1)を開く。これにより、吊具12(1)の吊筋72に対する玉掛が完了する。操作者Aは、吊具12(2)に関しても同様の作業を行う。
【0076】
保持機構21を備える水中玉掛システム1によれば、操作者Aは、吊具12を吊筋72に引っ掛けるための作業を、無人潜水機11の操縦により全て行う場合と比較し、容易に行うことができる。
【0077】
なお、図6に示した保持機構21は水上から受信する信号に従い動く可動部を備える保持機構の一例であって、可動する位置や方向、可動部の数等が異なる他の様々な保持機構が採用されてもよい。例えば、ロボットアームと呼ばれる三次元的に複雑な動きを行える装置が、保持機構として採用されてもよい。
【0078】
(2)コントローラ5と無人潜水機11との間の通信が無線により行われてもよい。その場合、無人潜水機11がバッテリを備え、バッテリから供給される電力により動作してもよい。コントローラ5と無人潜水機11との間の通信が無線により行われ、かつ、無人潜水機11が備えるバッテリから供給される電力により動作する場合、ケーブル14に代えて、無人潜水機11をクレーンフック97に連結させるための索体が用いられてもよい。図7は、そのような変形例に係る水中玉掛システム1の全体構成を示した図である。なお、図7において、ケーブル14に代えて、無人潜水機11をクレーンフック97に連結させるための索体には符号22が付されている。
【0079】
なお、コントローラ5と無人潜水機11との間で行われる無線通信の方式は、水中で無線通信を行えるものであれば、音波(超音波を含む)を用いる方式、光を用いる方式(光無線)等のいずれであってもよい。
【0080】
(3)上述した実施形態においては、ケーブル14が連結リング15を介してクレーンフック97に連結される。しかしながら、ケーブル14はクレーンフック97に連結されなくてもよい。図8は、この変形例に係る水中玉掛システム1の全体構成を示した図である。
【0081】
図8に示す構成の水中玉掛システム1による場合、無人潜水機11は玉掛作業が完了するまでは、保持機構13が保持する吊具12を介してクレーンフック97に連結されている。従って、上述した実施形態における場合と同様に、無人潜水機11は作業船8からコンクリートブロック7の近傍までクレーン9により吊り下ろされる。
【0082】
一方、図8に示す構成の水中玉掛システム1による場合、玉掛作業が完了すると、無人潜水機11とクレーンフック97の連結は解かれる。従って、クレーン9の吊り上げにより、無人潜水機11の回収を行うことはできない。ただし、無人潜水機11はケーブル14を介して作業船8上のリール4に連結されている。従って、操作者Aがリール4にケーブル14を巻き上げさせることで、無人潜水機11を水面まで吊り上げ、無人潜水機11を回収することができる。
【0083】
この変形例による場合、無人潜水機11とコンクリートブロック7の吊り上げが個別に行われるため、例えば、吊り上げ時に無人潜水機11がコンクリートブロック7と接触して破損するような事故が生じにくい。
【0084】
また、コンクリートブロック7が吊り上げられている状況を確認しやすい位置に無人潜水機11を移動して、コンクリートブロック7の吊り上げ状況を無人潜水機11のカメラ112で船上から確認することもできる。
【0085】
また、玉掛の完了まではケーブル14をクレーンフック97に連結し、玉掛の完了後にその連結を解放する構成が採用されてもよい。例えば、水中玉掛システム1が、ケーブル14の電力線から供給される電力により磁力を発する電磁石を有する連結機構を備え、その連結機構が磁力により連結リング15とケーブル14の連結を維持する構成が採用されてもよい。この場合、作業船8における操作者(例えば、操作者A)の操作に応じてケーブル14から連結機構の電磁石への電力供給が停止されると、連結リング15がケーブル14から外れる。これにより、無人潜水機11とクレーンフック97との連結が解かれるため、無人潜水機11はリール4によるケーブル14の巻き上げにより回収可能となる。
【0086】
なお、連結リング15とケーブル14との連結を解放する機能を備える連結機構の方式は電磁石を用いるものに限られない。例えば、ケーブル14の信号線を介してコントローラ5から送信される信号に従い動作するアクチュエータにより連結の解放を行う方式の連結機構が採用されてもよい。
【0087】
(4)上述した変形例(2)に係る水中玉掛システム1において採用されるものとした索体22は無くてもよい。
【0088】
図9は、この変形例に係る水中玉掛システム1の全体構成を示した図である。この変形例に係る水中玉掛システム1による場合、玉掛作業が完了すると、無人潜水機11は水中でいずれの索体にも拘束されない。従って、クレーン9やリール4によって無人潜水機11を水面まで吊り上げることはできない。すなわち、無人潜水機11は、海底G付近から水面まで自走する必要がある。ただし、操作者Aは、無人潜水機11に対し単純に直上に移動するように指示を与えた後、その指示に従い作業船8の近傍の水面に浮上した無人潜水機11を回収すればよい。従って、操作者Aは無人潜水機11の回収のために、無人潜水機11を操縦する必要はない。また、無人潜水機11は、自装置の位置を測定する装置を備える必要はない。
【0089】
(5)上述した実施形態において、カメラ112は光学カメラであるものとしたが、水中の構造物の形状を表す画像を生成できる撮影装置であれば、光学カメラ以外の方式の撮影装置(例えば、超音波カメラや水中ソナー)がカメラ112として採用されてもよい。
【0090】
(6)上述した実施形態において、吊具12の索体124及び無人潜水機11を吊り上げる吊索の役割を果たすケーブル14はクレーンフック97に連結されるものとしたが、クレーンフック97を介さずに、索体124又はケーブル14が直接、クレーンワイヤ96に連結されてもよい。
【0091】
(7)上述した実施形態において、コンクリートブロック7は水中から水上へ吊り上げられた後、作業船8の甲板上に下ろされるものとしたが、水中から吊り上げられた撤去対象の物体を下ろす先は作業船8に限られない。例えば、作業船8とは異なる台船上に撤去対象の物体が下ろされてもよい。その場合、水中から回収された物体は台船により目的地まで運搬される。
【0092】
(8)上述した実施形態において、吊具12は管状の部材であるパイプ123を備えるものとしたが、吊具12がパイプ123に代えて、例えば棒状の部材を備えてもよい。この場合、索体124は棒状の部材に沿わされた状態で棒状の部材に固定されてもよい。また、保持機構13が鉤状部材121を保持できれば、パイプ123やその代替の部材は無くてもよい。
【0093】
(9)上述した実施形態において、吊具12のパイプ123を保持する保持機構13を無人潜水機11の底面に取り付けるものとしたが、無人潜水機11の上面等、底面以外の場所に取り付けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0094】
1…水中玉掛システム、4…リール、5…コントローラ、7…コンクリートブロック、8…作業船、9…クレーン、11…無人潜水機、12…吊具、13…保持機構、14…ケーブル、15…連結リング、21…保持機構、22…索体、71…ブロック本体、72…吊筋、91…基台、92…旋回体、93…リール、94…ジブ、95…滑車、96…クレーンワイヤ、97…クレーンフック、111…筐体、112…カメラ、113…ライト、114…スラスタ、115…制御ユニット、121…鉤状部材、122…外れ止め金具、123…パイプ、124…索体、125…連結リング、126…浮体、131…クリップ、211…旋回台、212…主アーム、213(1)・213(2)…副アーム、214…クリップ。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図6
図7
図8
図9