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特許7505978線状リポペプチドパエニペプチン及びそれを使用する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-17
(45)【発行日】2024-06-25
(54)【発明の名称】線状リポペプチドパエニペプチン及びそれを使用する方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 7/06 20060101AFI20240618BHJP
   A61K 38/08 20190101ALI20240618BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240618BHJP
   A61L 15/28 20060101ALI20240618BHJP
   A61L 15/32 20060101ALI20240618BHJP
   A61L 15/40 20060101ALI20240618BHJP
   A61L 15/42 20060101ALI20240618BHJP
   A61L 15/44 20060101ALI20240618BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20240618BHJP
   C12N 15/11 20060101ALN20240618BHJP
【FI】
C07K7/06
A61K38/08
A61K45/00
A61L15/28 100
A61L15/32 100
A61L15/40 100
A61L15/42 100
A61L15/44 100
A61P31/04
C12N15/11 Z ZNA
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2020506188
(86)(22)【出願日】2018-08-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-10-08
(86)【国際出願番号】 US2018045395
(87)【国際公開番号】W WO2019028463
(87)【国際公開日】2019-02-07
【審査請求日】2021-08-05
(31)【優先権主張番号】62/541,200
(32)【優先日】2017-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518365086
【氏名又は名称】バイオヴェンチャーズ リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100162422
【弁理士】
【氏名又は名称】志村 将
(72)【発明者】
【氏名】ファン エン
(72)【発明者】
【氏名】ムン ソン ヒ
(72)【発明者】
【氏名】スメルツァー マーク
(72)【発明者】
【氏名】ミーカー ダニエル
【審査官】谷合 正光
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/191551(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0174298(US,A1)
【文献】FEMS Microbiol. Lett.,2017年,364(8),Advance Access Publication Date: 25 Feb 2017
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 7/06
A61K 38/08
A61K 45/00
A61L 15/28
A61L 15/32
A61L 15/40
A61L 15/42
A61L 15/44
A61P 31/04
C12N 15/11
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
線状のリポペプチドを含む抗菌性の組成物であって、前記リポペプチドが、親油性末端-R1とアミン末端-NR23の間に入る、配列番号1~10のいずれか1つを含むペプチドを含み、
1は、式R5-CH(NH2)-C(=O)-の、置換されている分岐又は非分岐のC6~C20アルカノイルを含み、R5が、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、フェニルアルキル、及びビフェニルアルキルからなる群から選択され、
2及びR3は、水素又はC1~C6アルキルから独立して選択され、
前記リポペプチドが抗菌活性を有する、組成物。
【請求項2】
(a)前記リポペプチドが、培地中の微生物に対して8.0μg/mL以下の最小発育阻止濃度を有するか;
(b)前記リポペプチドが、培地中の微生物に対して16.0μg/mL以下の最小殺菌濃度を有するか;
(c)前記リポペプチドが、128μg/mLのリポペプチド濃度において、50.0%以下の溶血百分率を有するか;
(d)前記リポペプチドが、105μg/mLのリポペプチド濃度において、50.0%以上の生存百分率を有するか;
(e)前記リポペプチドが、微生物に対する抗菌剤に関して128以上の感作因数を有するか;
(f)前記組成物が、表面上の生存微生物における少なくとも2.0 logの低減という抗バイオフィルム活性のための有効量の前記リポペプチドを有するか;又は
(g)これらの組み合わせ
である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、及び(f)からなる群から選択される少なくとも2つの特性を有する、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記微生物が、
(i)グラム陰性菌;
(ii)グラム陽性菌;
(iii)薬物耐性菌;又は
(iv)(i)及び(iii)又は(ii)及び(iii)の組み合わせ
である、請求項2~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記微生物が、グラム陰性菌である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記グラム陰性菌が、大腸菌、A.バウマンニ(A. baumannii)、E.クロアカ(E. cloacae)、K.ニューモニエ(K. pneumoniae)、及びP.エルジノーサ(P. aeruginosa)からなる群から選択される、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記微生物が、グラム陽性菌である、請求項4に記載の組成物。
【請求項8】
前記グラム陽性菌が、E.フェシウム(E. faecium)及びS.アウレウス(S. aureus)からなる群から選択される、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記微生物が、薬物耐性菌である、請求項4に記載の組成物。
【請求項10】
前記薬物耐性菌が、カルバペネム耐性菌、メチシリン耐性菌、又はポリミキシン耐性菌である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記リポペプチドが、

である、
請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
2及びR3が、水素である、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
抗菌剤を更に含む、請求項1又は4~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
(a)前記抗菌剤が、培地中で、前記リポペプチド非存在下での微生物に対する最小発育阻止濃度よりも、前記リポペプチドの存在下において該微生物に対して低い最小発育阻止濃度を有するか;
(b)前記抗菌剤が、培地中で、前記リポペプチド非存在下での微生物に対する最小殺菌濃度よりも、前記リポペプチドの存在下において該微生物に対して低い最小殺菌濃度を有するか;
(c)前記リポペプチドが、微生物に対する前記抗菌剤に関して128以上の感作因数を有するか;
(d)前記組成物が、表面上の生存微生物における少なくとも2.0 logの低減という抗バイオフィルム活性のための有効量の前記リポペプチド及び/又は前記抗菌剤を有するか;又は
(e)これらの組み合わせ
である、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
(a)、(b)、(c)、及び(d)からなる群から選択される少なくとも2つの特性を有する、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
治療有効量の請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物、及び薬学的に許容できる賦形剤、担体、又は希釈剤を含む、医薬組成物。
【請求項17】
表面への適用のために製剤化された、有効量の請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物を含む、抗バイオフィルム製品。
【請求項18】
前記表面が、医療用装置表面、医療用機器表面、医療用インプラント表面、包帯表面、創傷表面、又は皮膚である、請求項17に記載の抗バイオフィルム製品。
【請求項19】
スプレー、軟膏、ゲル、フォーム、ペースト、ヒドロゲル、又は親水コロイドとして製剤化されている、請求項17又は18に記載の抗バイオフィルム製品。
【請求項20】
ドレッシング材と、創傷又は皮膚上の微生物感染又は微生物バイオフィルムを治療又は防止するための有効量の請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物とを含む、包帯。
【請求項21】
前記ドレッシング材が、布、海綿質、アルギネート、コラーゲン、フィルム、ゲルシート、創傷充填剤、ヒドロゲル、親水コロイド、又はこれらの組み合わせを含む、請求項20に記載の包帯。
【請求項22】
インビトロで、微生物の増殖を阻害する、微生物を死滅させる、又は微生物を感作する方法であって、前記微生物と、有効量の請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物とを接触させることを含む、方法。
【請求項23】
インビトロで、表面上でのバイオフィルムの形成を防止するか、又は前記バイオフィルムにおいて、微生物の増殖を阻害する、微生物を死滅させる、若しくは微生物を感作する方法であって、前記表面又は該表面に配置されたバイオフィルムと、有効量の請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物、又は請求項1719のいずれか一項に記載の抗バイオフィルム製品とを接触させることを含む、方法。
【請求項24】
前記表面が、医療用装置表面、医療用機器表面、医療用インプラント表面、包帯表面、創傷表面、又は皮膚である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
創傷若しくは皮膚上でのバイオフィルムの形成を防止するか、又は前記バイオフィルムにおいて、微生物の増殖を阻害する、微生物を死滅させる、若しくは微生物を感作するための使用のための組成物、製品、又は包帯であって、有効量の請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物、請求項16に記載の医薬組成物、請求項1719のいずれか一項に記載の抗バイオフィルム製品、又は請求項2021のいずれか一項に記載の包帯を含む、組成物、製品、又は包帯。
【請求項26】
対象中又は対象上の微生物感染を防止するか又は微生物感染を治療するための使用のための組成物、製品、又は包帯であって、治療有効量の請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物又は請求項16に記載の医薬組成物、請求項1719のいずれか一項に記載の抗バイオフィルム製品、又は請求項2021のいずれか一項に記載の包帯を含む、組成物、製品、又は包帯。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本特許出願は、2017年8月4日に出願された米国仮特許出願第62/541,200号明細書の優先権の利益を主張し、その全容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本明細書に開示される技術は、一般に、線状リポペプチドパエニペプチン並びに抗菌薬及び増強薬としてそれらを使用する方法に関する。
【0003】
配列表
本出願は、EFS-Webを介して電子ファイル化されており、.txtフォーマットで電子的に提出された配列表を含む。.txtファイルは、2018年8月6日に作成された「2018-08-06_6401-00035_ST25.txt」というタイトルの配列表を含み、サイズは7,960バイトである。本.txtファイル中に含まれる配列表は、本明細書の一部であり、その全容が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0004】
抗生物質耐性病原菌の継続的な出現及び急速な広がりは、公衆衛生に対する重大な脅威となりつつある。カルバペネム耐性腸内細菌科(Enterobacteriaceae)(CRE)により引き起こされる感染症は、治療するのが困難であり、多くの場合において治療が不可能であり、医療施設内の患者の間で緊急の脅威の1つと認識された。薬物耐性病原菌により引き起こされる他の深刻な脅威には、多剤耐性アシネトバクター(Acinetobacter)、多剤耐性シュードモナス・エルジノーサ(Pseudomonas aeruginosa)、薬物耐性カンピロバクター(Campylobacter)、バンコマイシン耐性エンテロコッカス(Enterococcus)、及びメチシリン耐性スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)が含まれる(CDC、2013年)。近年では、グラム陰性菌由来のプラスミド媒介性のポリミキシン耐性遺伝子mcr-1が、世界中の多くの国々で報告された(Liuら、2016年)。これらの発見は、薬物耐性病原菌に対する最後の防御線の重大な突破を意味している。この懸念を更に強めることには、多くの細菌性病原菌がバイオフィルムを形成することが可能であり、これはマトリックスに組み込まれた細胞凝集体であり、元の宿主組織及び留置する医療用装置の両方に関して、大部分の抗生物質治療に対して本質的に耐性である(Flemmingら、2016年)。抗生物質耐性病原菌により引き起こされる重篤な感染症は、高い罹患率及び死亡率に関連し、著しい経済上の費用の一因となる。従って、薬物耐性及びバイオフィルム形成性の病原菌により引き起こされる感染症の治療のために、新規で、安全な、且つ効果的な抗菌剤を開発することが緊急に必要である。
【発明の概要】
【0005】
線状リポペプチドパエニペプチン、リポペプチドを含む製品、及びそれらを使用する方法を本明細書に開示する。本発明の一態様は、抗菌性組成物を含む。抗菌性組成物は線状リポペプチドを含み得て、リポペプチドは、親油性末端-R1とアミン末端-NR23の間に入る、配列番号:1~17のいずれか1つと少なくとも66%の配列同一性を有するペプチドを含む。R1は、置換されているか又は非置換の、分岐又は非分岐のC2~C20アルカノイルを含み得て、R2及びR3は、水素又はC1~C6アルキルから独立して選択され得る。好適には、該組成物は、1つ又は複数の以下の特性を有し得る:
(a)リポペプチドは、培地中の微生物に対して8.0μg/mL以下の最小発育阻止濃度を有する;
(b)リポペプチドは、培地中の微生物に対して16.0μg/mL以下の最小殺菌濃度を有する;
(c)リポペプチドは、128μg/mLのリポペプチド濃度において、50.0%以下の溶血百分率を有する;
(d)リポペプチドは、105μg/mLのリポペプチド濃度において、50.0%以上の生存百分率を有する;
(e)リポペプチドは、微生物に対する抗菌剤に関して128以上の感作因数(sensitization factor)を有する;又は
(f)該組成物は、表面上の生存微生物における少なくとも2.0 logの低減という抗バイオフィルム活性のための、有効量のリポペプチドを有する。
好適には、該組成物は、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、又は(f)から選択されるうち、少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、又は全ての特性を有し得る。
【0006】
一部の実施形態では、ペプチドは、R1-X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7-X8-X9-NR23を含み、式中:
1は、Dab、Orn、Dap、Lys及びArgからなる群から選択され得て;
2は、Ile、Val、Phe、Dap、及びPhepheからなる群から選択され得て;
3は、Dab、Orn、Dap、Thr、Lys及びArgからなる群から選択され得て;
4は、dLeu、dPhe、及びPhepheからなる群から選択され得て;
5は、Leu、Phe及びPhepheからなる群から選択され得て;
6は、Dab、Orn、Dap、Lys及びArgからなる群から選択され得て;
7は、dVal、dLeu、dPhe及びPhepheからなる群から選択され得て;
8は、Leu、Phe、Phephe、及びOctglyからなる群から選択され得て;且つ/又は
9は、Ser及びDabからなる群から選択され得る。
【0007】
好適には、ペプチドは、配列番号:1~17のいずれか1つと少なくとも88%の配列同一性を有し得る。一部の実施形態では、-R1は:R4-C(=O)-又はR5-CH(NH2)-C(=O)-を含む。好適には、R4は、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、フェニルアルキル、ビフェニルアルキル、アルキルアミン、シクロアルキルアミン、フェニルアルキルアミン、ビフェニルアルキルアミン、アルコキシ、シクロアルコキシ、フェニルアルコキシ、若しくはビフェニルアルコキシからなる群から選択され得るか、又はR5は、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、フェニルアルキル、及びビフェニルアルキルからなる群から選択され得る。ある特定の実施形態では、R2及びR3は、水素から選択される。
【0008】
本明細書に記載される組成物は、抗細菌剤などの抗菌剤を更に含んでもよい。好適には、抗菌剤を含む組成物は、1つ又は複数の以下の特性を有し得る:
(a)抗菌剤は、培地中で、リポペプチド非存在下での微生物に対する最小発育阻止濃度よりも、リポペプチドの存在下において、微生物に対して、より低い最小発育阻止濃度を有する;
(b)抗菌剤は、培地中で、リポペプチド非存在下での微生物に対する最小殺菌濃度よりも、リポペプチドの存在下において、微生物に対して、より低い最小殺菌濃度を有する;
(c)リポペプチドは、微生物に対する抗菌剤に関して128以上の感作因数を有する;又は
(d)該組成物は、表面上の生存微生物における少なくとも2.0 logの低減という抗バイオフィルム活性のための、有効量のリポペプチド及び/又は抗菌剤を有する。
好適には、該組成物は、(a)、(b)、(c)、又は(d)から選択されるうち、少なくとも2つ、3つ、又は全ての特性を有し得る。抗菌剤は、抗細菌剤を含み得る。例示的な抗菌剤には、限定されることなく、アンピシリン、クラリスロマイシン、エリスロマイシン、リファンピシン、又はバンコマイシンが含まれる。
【0009】
本発明の別の態様は、本明細書に記載される組成物のいずれかを含む抗菌性製品を含む。そのような製品の1つは、治療有効量の本明細書に記載される組成物のいずれか、及び薬学的に許容できる賦形剤、担体、又は希釈剤を含む医薬組成物である。別のそのような製品は、表面への適用のために製剤化された、有効量の本明細書に記載される組成物のいずれかを含む抗バイオフィルム製品である。好適には、抗バイオフィルム製品は、スプレー剤、軟膏剤、ゲル剤、フォーム剤、ペースト、ヒドロゲル、又は親水コロイドとして製剤化され得る。抗バイオフィルム製品の適用に好適な例示的表面には、限定されることなく、医療用装置表面、医療用機器表面、医療用インプラント表面、包帯表面、創傷表面、又は皮膚が含まれる。抗バイオフィルム製品は、本明細書に記載される組成物のいずれかをそこに配置している医療用装置、医療用機器、医療用インプラント、又は包帯を含み得る。更に別のそのような製品は、ドレッシング材と、創傷又は皮膚上の微生物感染又は微生物バイオフィルムを治療又は防止するための有効量の本明細書に記載される組成物のいずれかを含、包帯である。ドレッシング材は、布、海綿質、アルギネート、コラーゲン、フィルム、ゲルシート、創傷充填剤、ヒドロゲル、親水コロイド、又はこれらの組み合わせを含み得る。
【0010】
抗菌性組成物は、微生物の増殖を阻害し、死滅させ、又は感作する(sensitize)に効果的である。本発明の別の態様は、微生物の増殖を阻害し、死滅させ、又は感作する方法を含む。該方法は、微生物と、有効量の本明細書に記載される組成物のいずれか、又は本明細書に記載される医薬組成物、抗バイオフィルム製品、若しくは包帯のいずれかを含む、本明細書に記載される抗菌性製品のいずれかと接触させることを含み得る。
【0011】
抗菌性組成物はまた、表面上へのバイオフィルムの形成を防止するか、又はバイオフィルム中での微生物の増殖を阻害し、死滅させ、若しくは感作するのにも効果的である。本発明の別の態様は、表面上へのバイオフィルムの形成を防止するか、又はバイオフィルム中の微生物の増殖を阻害し、死滅させ、若しくは感作する方法を含む。該方法は、表面又はそこに配置されたバイオフィルムと、有効量の本明細書に記載される組成物のいずれか、又は本明細書に記載される医薬組成物、抗バイオフィルム製品、若しくは包帯のいずれかを含む、本明細書に記載される抗菌性製品のいずれかと接触させることを含み得る。抗バイオフィルム製品の適用に好適な例示的表面には、限定されることなく、医療用装置表面、医療用機器表面、医療用インプラント表面、包帯表面、創傷表面、又は皮膚が含まれる。
【0012】
抗菌性組成物はまた、対象中又は対象上の微生物感染を防止するか又は微生物感染を治療するのにも効果的である。本発明の別の態様は、対象中又は対象上の微生物感染を防止するか又は微生物感染を治療することを含む。その方法は、治療有効量の本明細書に記載される組成物のいずれか、又は本明細書に記載される医薬組成物、抗バイオフィルム製品、若しくは包帯のいずれかを含む、本明細書に記載される抗菌性製品のいずれかを投与することを含み得る。該組成物又は抗バイオフィルム製品は、経口、静脈内、筋肉内、皮下、局所的、及び肺の経路を介して投与され得る。
【0013】
好適には、本明細書に記載される微生物は、バイオフィルム中に存在しても又はしなくても、例えば、グラム陰性菌又はグラム陽性菌のような細菌であり得る。一部の実施形態では、微生物は、薬物耐性菌である。これには、薬物耐性のグラム陰性菌又は薬物耐性のグラム陽性菌が含まれる。例示的なグラム陰性菌には、限定されることなく、大腸菌(E.coli)、A・バウマンニ(A.baumannii)、E・クロアカ(E.cloacae)、K・ニューモニエ(K.pneumoniae)、及びP・エルジノーサ(P.aeruginosa)が含まれる。例示的なグラム陽性菌には、限定されることなく、E.フェシウム(E.faecium)及びS・アウレウス(S.aureus)が含まれる。例示的な薬物耐性菌には、限定されることなく、カルバペネム耐性菌、メチシリン耐性菌、又はポリミキシン耐性菌が含まれる。好適には、バイオフィルムは、本明細書に記載される微生物により形成されるか又は本明細書に記載される微生物のいずれかを含み得る。好適には、感染症は、本明細書に記載される微生物のいずれかの感染症であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1A】類似体17への0~32μg/mLにおける曝露を伴う、病原菌の時間-死滅曲線を示す。(図1A)シュードモナス・エルジノーサ ATCC27853;(図1B)スタフィロコッカス・アウレウス ATCC29213。値は平均として表され(実験数、3)、エラーバーは標準偏差を示す。
図1B】類似体17への0~32μg/mLにおける曝露を伴う、病原菌の時間-死滅曲線を示す。(図1A)シュードモナス・エルジノーサ ATCC27853;(図1B)スタフィロコッカス・アウレウス ATCC29213。値は平均として表され(実験数、3)、エラーバーは標準偏差を示す。
図2A】in vitroでカテーテル上に確立されたバイオフィルムに対する抗生物質の相対的活性を示す。(図2A)メチシリン耐性のスタフィロコッカス・アウレウスLAC菌株に対する、パエニペプチン類似体17、セフタロリン(Cef)、及びダプトマイシン(Dap)。LAC菌株に対する各抗生物質に関するMICに相当する濃度の5倍、10倍、又は20倍に相当する濃度において、活性を決定した。(図2B)シュードモナス・エルジノーサ ATCC27853に対する類似体17及びポリミキシンB(PMB)。P・エルジノーサ ATCC27853に対する各抗生物質に関するMICに相当する濃度の10倍、20倍、40倍、又は80倍に相当する濃度において、活性を決定した。72時間の抗生物質曝露後に、結果を検討評価した。値は平均として表される(実験数、6)。異なる文字を用いた平均は、群間で有意に異なる(p<0.05)。
図2B】in vitroでカテーテル上に確立されたバイオフィルムに対する抗生物質の相対的活性を示す。(図2A)メチシリン耐性のスタフィロコッカス・アウレウスLAC菌株に対する、パエニペプチン類似体17、セフタロリン(Cef)、及びダプトマイシン(Dap)。LAC菌株に対する各抗生物質に関するMICに相当する濃度の5倍、10倍、又は20倍に相当する濃度において、活性を決定した。(図2B)シュードモナス・エルジノーサ ATCC27853に対する類似体17及びポリミキシンB(PMB)。P・エルジノーサ ATCC27853に対する各抗生物質に関するMICに相当する濃度の10倍、20倍、40倍、又は80倍に相当する濃度において、活性を決定した。72時間の抗生物質曝露後に、結果を検討評価した。値は平均として表される(実験数、6)。異なる文字を用いた平均は、群間で有意に異なる(p<0.05)。
図3A】パエニペプチン類似体17の抗菌活性に対するリポ多糖(LPS)及びリポテイコ酸(LTA)の影響を示す。(図3A)シュードモナス・エルジノーサ ATCC27853、16μg/mLにおける類似体17;(図3B)スタフィロコッカス・アウレウス ATCC29213、32μg/mLにおける類似体17。値は平均として表され(実験数、少なくとも3)、エラーバーは標準偏差を示す。異なる文字を用いた平均は、群間で有意に異なる(p<0.05)。
図3B】パエニペプチン類似体17の抗菌活性に対するリポ多糖(LPS)及びリポテイコ酸(LTA)の影響を示す。(図3A)シュードモナス・エルジノーサ ATCC27853、16μg/mLにおける類似体17;(図3B)スタフィロコッカス・アウレウス ATCC29213、32μg/mLにおける類似体17。値は平均として表され(実験数、少なくとも3)、エラーバーは標準偏差を示す。異なる文字を用いた平均は、群間で有意に異なる(p<0.05)。
図4A】パエニペプチン類似体17の存在下での、細菌膜電位における変化を示す。(図4A)シュードモナス・エルジノーサ ATCC27853;(図4B)スタフィロコッカス・アウレウス ATCC29213。値は平均として表され(実験数、3)、エラーバーは標準偏差を示す。異なる文字を用いた平均は、群間で有意に異なる(p<0.05)。
図4B】パエニペプチン類似体17の存在下での、細菌膜電位における変化を示す。(図4A)シュードモナス・エルジノーサ ATCC27853;(図4B)スタフィロコッカス・アウレウス ATCC29213。値は平均として表され(実験数、3)、エラーバーは標準偏差を示す。異なる文字を用いた平均は、群間で有意に異なる(p<0.05)。
図5A】パエニペプチン類似体17の存在下での、細菌細胞からの分子内カリウムイオンの放出を示す。(図5A)シュードモナス・エルジノーサ ATCC27853;(図5B)スタフィロコッカス・アウレウス ATCC29213。値は平均として表され(実験数、3)、エラーバーは標準偏差を示す。異なる文字を用いた平均は、群間で有意に異なる(p<0.05)。
図5B】パエニペプチン類似体17の存在下での、細菌細胞からの分子内カリウムイオンの放出を示す。(図5A)シュードモナス・エルジノーサ ATCC27853;(図5B)スタフィロコッカス・アウレウス ATCC29213。値は平均として表され(実験数、3)、エラーバーは標準偏差を示す。異なる文字を用いた平均は、群間で有意に異なる(p<0.05)。
図6A】4μg/mlにおける類似体1又は15単独への曝露、及びトリプシンソイブロス(TSB)中の1μg/mlにおけるクラリスロマイシン(CLR)又はリファンピシン(RIF)との組み合わせの曝露を伴う、カルバペネム耐性病原菌の時間-死滅曲線を示す。(図6A)アシネトバクター・バウマンニ(Acinetobacter baumannii)FDA-CDC AR0063;(図6B)クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)FDA-CDC AR0097。値は平均として表され(独立した生物学上の反復の数、少なくとも3)、エラーバーは標準偏差を示す。異なる文字を用いた、24時間のエンドポイントにおける平均は、群間で有意に異なる(p<0.05)。
図6B】4μg/mlにおける類似体1又は15単独への曝露、及びトリプシンソイブロス(TSB)中の1μg/mlにおけるクラリスロマイシン(CLR)又はリファンピシン(RIF)との組み合わせの曝露を伴う、カルバペネム耐性病原菌の時間-死滅曲線を示す。(図6A)アシネトバクター・バウマンニ(Acinetobacter baumannii)FDA-CDC AR0063;(図6B)クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)FDA-CDC AR0097。値は平均として表され(独立した生物学上の反復の数、少なくとも3)、エラーバーは標準偏差を示す。異なる文字を用いた、24時間のエンドポイントにおける平均は、群間で有意に異なる(p<0.05)。
図7A】4μg/mlにおける類似体1又は15単独への曝露、及びin vitroでの95%ヒト血清中の4μg/mlにおけるクラリスロマイシン(CLR)又はリファンピシン(RIF)との組み合わせの曝露を伴う、カルバペネム耐性病原菌の時間-死滅曲線を示す。(図7A)アシネトバクター・バウマンニ FDA-CDC AR0063;(図7B)クレブシエラ・ニューモニエ FDA-CDC AR0097。値は平均として表され(独立した生物学上の反復の数、少なくとも3)、エラーバーは標準偏差を示す。異なる文字を用いた、24時間のエンドポイントにおける平均は、群間で有意に異なる(p<0.05)。
図7B】4μg/mlにおける類似体1又は15単独への曝露、及びin vitroでの95%ヒト血清中の4μg/mlにおけるクラリスロマイシン(CLR)又はリファンピシン(RIF)との組み合わせの曝露を伴う、カルバペネム耐性病原菌の時間-死滅曲線を示す。(図7A)アシネトバクター・バウマンニ FDA-CDC AR0063;(図7B)クレブシエラ・ニューモニエ FDA-CDC AR0097。値は平均として表され(独立した生物学上の反復の数、少なくとも3)、エラーバーは標準偏差を示す。異なる文字を用いた、24時間のエンドポイントにおける平均は、群間で有意に異なる(p<0.05)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
線状リポペプチドパエニペプチン、リポペプチドを含む製品、及びそれらを使用する方法を本明細書に開示する。以下の実施例で実証されるように、本開示のリポペプチドは、抗菌活性及び抗バイオフィルム活性を有する。理論に束縛されることは望まないが、本明細書に開示されるパエニペプチンは、微生物の細胞膜を破壊し且つ損傷すると考えられる。細胞膜の破壊は、微生物にとって直接的に細胞傷害性であり、結果としてパエニペプチン(paeninpeptin)は抗菌剤となり得る。他の場合には、細胞膜の破壊は、他の抗菌剤の輸送を促進し、他の薬剤の細胞傷害性を増強することができる。どちらの場合にも、本明細書に開示される組成物は、微生物の増殖を阻害し、且つ微生物感染症を治療することが可能である。
【0016】
本明細書に開示される組成物は、薬物耐性菌を含む、グラム陰性菌に対して効果的である。グラム陰性菌は、外膜の透過性障壁の結果として、多くの抗生物質を含む大きな疎水性分子に対して本質的に耐性である。膜の外側の統合性は、細胞表面上の2価のカチオン(Mg2+及びCa2+)により連結されたアニオン性リポ多糖(LPS)ネットワークにある。LPSに対する親和性を有する、本明細書に開示されるパエニペプチン(paeninpeptin)などのカチオン性リポペプチドは、外膜の体系を破壊し、抗菌活性をもたらし且つ/又は既存の抗生物質の侵入を可能にする。本開示のリポペプチドは、抗菌活性を有し且つ/又は同時投与された抗菌剤に対して微生物を感作する。結果として、線状リポペプチドは、新しい抗菌性製品及びそれらの使用を可能にする。
【0017】
線状リポペプチド
「線状リポペプチドパエニペプチン」(「リポペプチド」又は「パエニペプチン」と表され得る)とは、親油性末端、アミン末端、及びそれらの間に入るペプチドを含むリポペプチドを意味する。線状リポペプチドパエニペプチンを特徴づける3つの構造的特色:疎水性のN末端鎖、正電荷を持つ残基、及び疎水性のアミノ酸がある。結果として、親油性末端の長さ若しくは親油性末端の構造を選択し;リポペプチドのカチオン性特徴を修正し;アミノ酸を置換するか、又はこれらの任意の組み合わせにより、類似体が容易に開発され得る。
【0018】
本明細書に開示されるリポペプチドは、パエニバチルス属(Paenibacillus sp.)OSY-Nにより生成される線状及び環状のリポペプチドの天然混合物と組成的に同様である[Huang、E.ら。新規なパエニバチルス菌株は、線状及び環状の抗菌性リポペプチドファミリーを生成する:環化は、それらの抗菌活性にとって必須ではない。FEMS Microbiology Letters 2017年、364、その全容が参照により本明細書に組み込まれる]。注目すべきことに、本明細書に開示されるリポペプチドの状況における「線状」の使用は、リポペプチドが、天然の環状リポペプチドのマクロラクトン環化がなく、パエニペプチンファミリーの抗菌活性を依然として保持していることを意味する。線状リポペプチド抗生物質の開発は、合成プロセスを著しく単純化し、従ってこのファミリーのリポペプチドを製造する費用を低減させるため、経済的に有益である。最も重要なことには、これによって、標準的な固相ペプチド合成を使用して、非常に多数の線状パエニペプチン類似体に到達することができる。
【0019】
線状リポペプチドは、式R1-X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7-X8-X9-NR23を含み得て、式中、R1は親油性末端であり、NR23はアミン末端であり;X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7-X8-X9は、それらの間に入る9個のアミノ酸ペプチドである。一部の実施形態では、ペプチドは、Dab-Ile-Dab-dPhe-Leu-Dab-dVal-Leu-Ser(配列番号:1)又はその派生体を含む。配列番号:1の派生体は、少なくとも1個の置換アミノ酸を含み得る。特定の実施形態では、派生体は、1個のアミノ酸置換(すなわち、配列番号:1に対して88%の配列同一性)、独立して選択された2個のアミノ酸置換(すなわち、配列番号:1に対して77%の配列同一性)、又は独立して選択された3個のアミノ酸置換(すなわち、配列番号:1に対して66%の配列同一性)を含み得る。特定の実施形態では、置換アミノ酸は、親油性アミノ酸及び/又はカチオン性アミノ酸から選択される。
【0020】
置換アミノ酸は、タンパク質原性アミノ酸又は非タンパク質原性アミノ酸であってもよい。「タンパク質原性アミノ酸」には、親油性アミノ酸[すなわち、アラニン(Ala)、イソロイシン(Ile)、ロイシン(Leu)、メチオニン(Met)、フェニルアラニン(Phe)、トリプトファン(Trp)、チロシン(Tyr)、又はバリン(Val)]、カチオン性アミノ酸[すなわち、アルギニン(Arg)、ヒスチジン(His)、又はリシン(Lys)]、極性無電荷のアミノ酸[すなわち、セリン(Ser)、スレオニン(Thr)、アスパラギン(Asn)、又はグルタミン(Gln)]、アニオン性アミノ酸[すなわち、アスパラギン酸(Asp)又はグルタミン酸(Glu)]、システイン(Cys)、グリシン(Gly)、プロリン(Pro)、セレノシステイン(Sec)、又はピロールリシン(Pyl)のL-異性体のいずれかが含まれる。
【0021】
「非タンパク質原性アミノ酸」には、タンパク質原性アミノ酸のD-異性体、タンパク質原性アミノ酸の非天然類似体、機能化アミノ酸、又は伸長した側鎖を有するアミノ酸のいずれかが含まれる。「タンパク質原性アミノ酸の非天然類似体」には、置換されたタンパク質原性アミノ酸のL-及びD-異性体、タンパク質原性アミノ酸側鎖を有するβ-アミノ酸、又はこれらの任意の組み合わせが含まれる。置換されたタンパク質原性アミノ酸は、アルキル、アリール、アシル、アジド、シアノ、ハロ、ヒドラジン、ヒドラジド、ヒドロキシル、アルケニル、アルキニル(alkynl)、エーテル、チオール、スルホニル、セレノ、エステル、チオ酸、ボレート、ボロネート、ホスホ、ホスホノ、ホスフィン、ヘテロ環式、エノン、イミン、アルデヒド、ヒドロキシルアミン、ケト、アミノ、又はこれらの任意の組み合わせから選択される1つ又は複数の置換基を有し得る。「機能化アミノ酸」には、光活性化可能な架橋基を伴うアミノ酸;スピン標識アミノ酸;蛍光性アミノ酸;新規な官能基を伴うアミノ酸;別の分子と共有結合的に又は非共有結合的に相互作用するアミノ酸;金属結合性アミノ酸;金属含有性アミノ酸;放射性アミノ酸;光ケージ化及び/又は光異性化可能なアミノ酸;ビオチン又はビオチン類似体含有性のアミノ酸;グリコシル化又は炭水化物修飾されたアミノ酸;ケト含有性アミノ酸;ポリエチレングリコール又はポリエーテルを含むアミノ酸;重原子置換アミノ酸;化学的に開裂可能又は光開裂可能なアミノ酸;伸長した側鎖を伴うアミノ酸;毒性基含有性のアミノ酸;例えば糖置換セリンなどの糖置換アミノ酸;炭素連結の糖含有性のアミノ酸;酸化還元活性のアミノ酸;α-ヒドロキシル含有性の酸;アミノチオ酸含有性のアミノ酸;α,α二置換アミノ酸;β-アミノ酸;及びプロリン以外の環状アミノ酸が含まれる。非タンパク質原性アミノ酸の例には、2,4-ジアミノ酪酸(2,4-diaminobutyic acid)(Dab)、2,3-ジアミノプロピオン酸(2,3-diaminoproprionic acid)(Dap)、オルニチン(Orn)、4-フェニル-フェニルアラニン(Phephe)、又はオクチルグリシン(Octgly)が含まれる。
【0022】
配列番号:1の派生体には、配列番号:2~配列番号:17の配列(表1)のいずれかが含まれるが、これらに限定されない。配列番号:2~配列番号:17の配列の派生体はまた、少なくとも1つの上述の置換アミノ酸を含んで調製され得る。特定の実施形態では、派生体は、1個のアミノ酸置換、独立して選択された2個のアミノ酸置換、又は独立して選択された3個のアミノ酸置換を含み得る。
【0023】
本発明のある特定の実施形態では、X1からX9までは、いくつかの異なるアミノ酸から独立して選択され得る。X1は、Dab、Orn、Dap、Lys、又はArgから独立して選択され得る。X2は、Ile、Val、Phe、Dap、又はPhepheから独立して選択され得る。X3は、Dab、Orn、Dap、Lys、Arg、又はThrから独立して選択され得る。X4は、dLeu、dPhe、又はPhepheから独立して選択され得る。X5は、Leu、Phe又はPhepheから独立して選択され得る。X6は、Dab、Dap、Orn、Lys、又はArgから独立して選択され得る。X7は、dVal、dLeu、dPhe又はPhepheから独立して選択され得る。X8は、Leu、Phe、Phephe、Octglyから独立して選択され得る。X9は、Ser又はDabから独立して選択され得る。ペプチドは、これらの任意の組み合わせを含み得る。
【0024】
親油性末端は、ペプチドの末端から伸長している、置換されているか又は非置換の、分岐又は非分岐の疎水性のアルカノイル部分であり得る。親油性末端は、ペプチドのN末端から伸長し得る。一部の実施形態では、親油性末端は、イミド結合を介してN末端から伸長している、直鎖、分岐、又は環状のアルカノイルである。親油性末端は、少なくとも2個の炭素原子を有する部分であり得る。一部の実施形態では、親油性末端は、2~約20個(すなわち、C2~C20アルカノイル)、約2~約14個(すなわち、C2~C14アルカノイル)、約6~約14個(すなわち、C6~C14アルカノイル)、又は約6~約10個の炭素原子(すなわち、C6~C10アルカノイル)を有する。
【0025】
アルカノイルは、アルキル部分、アルケニル部分、アルキニル部分、シクロアルキル部分、シクロアルケニル部分、フェニル部分、ビフェニル部分、アミノ部分、アルコキシ部分、ハロ部分、又はこれらの任意の組み合わせを含み得る。ある特定の実施形態では、アルカノイルは、一般式R-C(=O)-を有し、式中、Rは、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、フェニルアルキル、ビフェニルアルキル、アルキルアミン、シクロアルキルアミン、フェニルアルキルアミン、ビフェニルアルキルアミン、アルコキシ、シクロアルコキシ、フェニルアルコキシ、又はビフェニルアルコキシ(biphenphylalkoxy)である。ある特定の実施形態では、アルカノイルは、一般式R-CH(NH2)-C(=O)-を有し、Rは、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、フェニルアルキル、又はビフェニルアルキル部分である。親油性末端の例には、限定されることなく、エタノイル、ブタノイル、ヘキサノイル、ヘプタノイル、オクタノイル、デカノイル、ベンゾイル、ベンジルオキシカルボニル、3-シクロヘキシルアラニル(3-cyclohexylanlanyl)、ビオフェニル-4-カルボキシル、4-フェニル-フェニルアラニル、又は4-ブロモ-フェニルアラニルが含まれる。
【0026】
アミン末端は、ペプチドの末端から伸長している任意のアミノ部分であり得る。一部の実施形態では、アミン末端は、ペプチドのC末端から伸長する。アミン末端は、一般式-NRR’の第1級、第2級、又は第3級のアミンであり得て、式中、R及びR’は、水素又はC1~C6アルキル部分から独立して選択される。
【0027】
リポペプチドは、塩として調製されてもよい。一部の実施形態では、リポペプチドは、薬学的に許容できる塩として調製され得る。
【0028】
カチオン性リポペプチドパエニペプチンには3つの構造的特色:疎水性のN末端脂肪酸アシル鎖、正電荷を持つ残基、及び疎水性のアミノ酸がある。リポペプチドの例示的な実施形態を、表1に提供する。これらの類似体における構造変形には、例えば、(i)N末端脂肪酸アシル鎖の長さの変形(例えば、それぞれ類似体1、3、8、及び12における、ヘキサノイル、ヘプタノイル、オクタノイル及びデカノイル基);(ii)脂肪酸アシル鎖の疎水性アシル基との置き換え(例えば、それぞれ類似体14、15、及び16における、ベンゾイル、ベンジルオキシカルボニル、及び3-シクロヘキシルアラニル基);(iii)正電荷を持つ残基の修飾(例えば、類似体9、10、11、及び13);並びに(iv)パエニペプチン中の疎水性アミノ酸の変化(例えば、類似体2、4、5、6、7、及び17)が含まれる。
【0029】
表1.パエニペプチン類似体(An.)のリポペプチド配列
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
aDab:2,4-ジアミノ酪酸;
bC8-Pat:リード化合物;他の類似体における置換N末端基及びアミノ酸残基は太字である;
cOrn:オルニチン
dDap:ジアミノプロピオン酸(diaminoproprionic acid);
ePhephe:4-フェニル-フェニルアラニル;
fOctgly:オクチルグリシル
【0030】
抗菌性製品
本明細書に開示される組成物は、クラリスロマイシン及びリファンピシンなどの抗菌剤の、抗菌スペクトルを拡大し且つ抗生物質活性を向上させる。結果として、リポペプチド単独又は他の抗生物質との組み合わせは、カルバペネム耐性病原菌を含む、抗生物質耐性グラム陰性菌により引き起こされる感染症を治療するための、代替の治療的選択肢であり得る。
【0031】
本明細書に記載される構造-活性関係の研究を通して、類似体7、12及び17を含み、微生物の増殖を阻害するか又は微生物を死滅させることが可能な強力なリポペプチドが同定される。類似体17は、メチシリン耐性のS.アウレウスバイオフィルムに対して、ダプトマイシン及びセフタロリンについて観察された活性に匹敵する強力な活性を示した。この新規な類似体はまた、確立されたP・エルジノーサバイオフィルムに対しても強い有効性を示した。従って、類似体17は、浮遊性及びバイオフィルム関連の両方の条件下で、薬物耐性病原菌を標的とする、有望な広域抗菌スペクトル性の抗生物質候補である。類似体9は、非溶血性であり、強力なP・エルジノーサ特異性の抗菌活性を保持した。これは、本明細書に開示されるリポペプチドが、広域抗菌スペクトル性の抗菌性製品又は共生細菌に対する抗生物質圧力を低下することが可能な狭域抗菌スペクトル性の抗菌性製品として使用され得ることを実証している。
【0032】
多くの強力な大きな疎水性抗生物質は、リファンピシン、クラリスロマイシン及びエリスロマイシンを含み、外膜透過性障壁のために、グラム陰性病原菌に対して活性ではない。グラム陰性菌の外膜におけるLPSは、そのような薬物を排除する主要な透過性障壁である。多剤耐性のグラム陰性病原菌により引き起こされる感染症を治療するための緊急の必要性を考慮すると、既存の抗生物質の侵入を促進する、外膜の透過処理剤は、抗生物質耐性に対抗するための代替手法を提供する。
【0033】
本明細書に開示されるパエニペプチンリポペプチドの中で、溶血活性をほとんど示さず且つA・バウマンニ及びK・ニューモニエに対する活性を欠いている10の化合物を、これら2つの病原菌に対して、リファンピシンと組み合わせて試験した。4μg/mlにおいて試験する場合、6つのパエニペプチン類似体(1、3、9、14、15及び16)は、A・バウマンニ及びK・ニューモニエに対するリファンピシンのMICを、16μg/mL(19.42μM)からナノモル及びサブナノモルレベルまで減少させた(感作因数:2,048~8,192)。同様のレベルの相乗作用は、類似体9及び16と、タンパク質合成阻害剤クラリスロマイシンとの間でも観察された。従って、パエニペプチンは、異なる作用様式を有する異なる種類の抗生物質を増強することができる。
【0034】
抗菌性組成物及び製品を、上述のリポペプチドから調製し得る。以下で更に十分に説明するように、リポペプチドは抗菌活性、抗バイオフィルム活性を有し、且つ微生物を他の抗菌性組成物に対して感作する。このため、バイオフィルム形成を受けやすい表面に適用するための医薬組成物又は製剤を含み、いくつかの異なる抗菌性製品の開発が可能となる。この組成物は、リポペプチドを唯一の抗菌剤として、又はリポペプチドを別の抗菌剤に加えて含んでもよい。医薬組成物はまた、線状ペプチドが単独の有効活性成分(API)であるか、又は1つ若しくは複数の付加的なAPIと組み合わせて使用され得る場合も、調製され得る。バイオフィルム形成を受けやすい表面に適用するための製剤に関して、線状ペプチドは、抗菌性及び/若しくは抗バイオフィルム活性を有する唯一の組成物であるか、又は抗菌性及び/若しくは抗バイオフィルム活性を有する1つ又は複数の付加的な組成物と組み合わせて使用されてもよい。
【0035】
抗菌活性を有するリポペプチドとは、リポペプチドが、微生物の増殖を阻害することが可能で、且つ/又は微生物を死滅させることが可能であることを意味する。好適には、リポペプチドは、培地中の微生物に対して8.0μg/mL以下の最小発育阻止濃度及び/又は培地中の微生物に対して16.0μg/mL以下の最小殺菌濃度を有する。「最小発育阻止濃度」(又は「MIC」)とは、インキュベーション後に微生物細胞の視認できる成長をもたらすことがない、リポペプチドの最低濃度を意味する。「最小殺菌濃度」(又は「MBC」)とは、最初の接種材料に対して、生存細菌細胞の数において少なくとも99.9%の低減に至る、リポペプチドの最低濃度を意味する。好適には、リポペプチドは、これらの特性の一方又は両方のいずれかを保有し、抗菌活性を保有すると考えられ得る。優れた抗菌活性を有するリポペプチドを開示する。好適には、リポペプチドは、6.0μg/mL、4.0μg/mL、2.0μg/mL、若しくは1.0μg/mL以下のMIC、及び/又は14.0μg/mL、12.0μg/mL、10.0μg/mL、8.0μg/mL、6.0μg/mL、4.0μg/mL、2.0μg/mL、若しくは1.0μg/mL以下のMBCを有し得る。培地は、限定されることなく、トリプシンソイブロス(「TBS」)又は血清などの身体の液体部分を含み、微生物の成長を支えるように設計された任意の好適な固体、液体又は半固体であり得る。
【0036】
微生物は、細菌、古細菌(archeae)、及び酵母菌などの多数の異なる微小生物のいずれかであり得る。細菌は、グラム陰性菌、例えば、アシネトバクター、バルトネラ(Bartonella)、ボルデテラ(Bordetella)、ボレリア(Borrelia)、ブルセラ(Brucella)、カンピロバクター、エンテロバクター(Enterobacter)、エシェリキア(Escherichia)、フランシセラ(Franisella)、ヘモフィルス(Haemophilus)、ヘリコバクター(Helicobacter)、クレブシエラ(Klebsiella)、レジオネラ(Legionella)、レプトスピラ(Leptospira)、モラクセラ(Moraxella)、ナイセリア(Neisseria)、プロテウス(Proteus)、シュードモナス、リケッチア(Rickettsia)、サルモネラ(Salmonella)、セラチア(Serratia)、シゲラ(Shigella)、トレポネーマ(Treponema)、ビブリオ(Vibrio)、若しくはエルシニア(Yersinia)属の細菌など、グラム陽性菌、例えば、バチルス(Bacillus)、クロストリジウム(Clostridium)、コリネバクテリア(Corynebacterium)、リステリア(Listeria)、スタフィロコッカス、若しくはストレプトコッカス(Streptococcus)属の細菌など、又はグラム陰性でもグラム陽性でもない細菌、例えば、クラミジア(Chlamydia)、クラミドフィラ(Chlamydophila)、マイコバクテリウム(Mycobacterium)、若しくはマイコプラズマ(Mycoplasma)属の細菌などであり得る。
【0037】
微生物は、薬物耐性微生物であり得る。本明細書で使用される場合、「薬物耐性」とは、抗菌剤のMICが、培地中で32.0μg/mLより高いことを意味する。好適には、微生物は、カルバペネム耐性微生物又はポリミキシン耐性微生物である。
【0038】
一部の実施形態では、リポペプチドは、溶血性及び/又は細胞傷害性ではない。本明細書で使用される場合、リポペプチドは、128μg/mLのリポペプチド濃度において、溶血百分率が50.0%以下である場合、「非溶血性」である。好適には、溶血百分率は、128μg/mLのリポペプチド濃度において、45.0%、40.0%、35.0%、30.0%、25.0%、20.0%、15.0%、10.0%、又は5.0%以下である。本明細書で使用される場合、リポペプチドは、105μg/mLのリポペプチド濃度において、HEK293ヒト腎臓細胞株に対して生存百分率が50.0%以上である場合、「非細胞傷害性(non-cytoxic)」である。好適には、生存百分率は、105μg/mLのリポペプチド濃度において、55.0%、60.0%、又は65.0%以上であり得る。
【0039】
リポペプチドは、多数の異なる抗菌剤と組み合わせて使用され、抗菌剤に対して微生物を感作し得る。本明細書で使用される場合、「感作因数」とは、リポペプチドの非存在下における抗菌剤のMICの、微生物に対して4μg/mLのリポペプチドの存在下における抗菌剤のMICに対する比を意味する。感作因数は、微生物に対する抗菌剤に関して、128(すなわち、27)以上である。好適には、感作因数は、微生物に対する抗菌剤に関して、256(すなわち、28)、512(すなわち、29)、1024(すなわち、210)、2048(すなわち、211)、4096(すなわち、212)、又は8192(すなわち、213)以上である。リポペプチドによりもたらされる感作の結果として、抗菌剤は、微生物の増殖を阻害するために必要とされる抗菌剤の量を、10μg/mL超から1μg/mL、0.1μg/mL、0.01μg/mL、又は0.001μg/mL未満まで低減させるのに効果的であり得る。場合によっては、このため、抗菌剤が、カルバペネム-又はポリミキシン耐性微生物などの薬物耐性微生物に対して効果的であることが可能となる。
【0040】
リポペプチドと組み合わせて使用される抗菌剤は、細胞経路及び/又は例えば細胞膜のような細胞性膜の構造若しくは機能を阻害する抗生物質であり得る。例えば、抗菌剤は、タンパク質合成、RNA合成、DNA合成、代謝、又は細胞壁合成を阻害し得る。そのような機能を実施することができる抗菌剤の例には、アミノグリコシド、テトラサイクリン、マクロライド、オキサゾリジノン、ストレプトグラミン、リコサミド(licosamide)、リファムピン、キノロン、ノボビオシン、トリメトプリム、スルファメトキサゾール、β-ラクタム、グリコペプチド、ツニカマイシン、バシトラシン、ポリミキシン、又はナイシンが含まれるが、これらに限定されない。
【0041】
抗バイオフィルム活性を有するリポペプチドとは、リポペプチドが、表面上の微生物の増殖を阻害することが可能で、且つ/又は微生物を死滅させることが可能であることを意味する。好適には、本明細書に開示される組成物は、未処置の表面と比較して、表面上に生存している微生物又はコロニー形成単位の少なくとも2.0 logの低減という抗バイオフィルム活性のための、有効量のリポペプチドを含む。好適には、リポペプチドは、表面上の生存微生物における2.5、3.0、3.5、4.0、4.5又は5.0 logの低減のための有効量を有し得る。
【0042】
本明細書に記載される1つ又は複数の特性を有するリポペプチドは、医薬組成物、抗バイオフィルム製品、又は包帯を含む、抗菌性製品に製剤化され得る。
【0043】
医薬組成物
本明細書に開示される方法に利用される化合物は:(a)本明細書に開示される、治療有効量の1つ又は複数の化合物;及び(b)1つ又は複数の薬学的に許容できる担体、賦形剤、又は希釈剤を含む医薬組成物として製剤化され得る。薬学的な有効量は、リポペプチド単独又はリポペプチド及び抗菌剤の組み合わせのものであってもよい。医薬組成物は、約0.1~2000mg(好ましくは約0.5~500mg、より好ましくは約1~100mg)の範囲の化合物を含み得る。医薬組成物は、約0.1~100mg/kg体重(好ましくは約0.5~20mg/kg体重、より好ましくは約0.1~10mg/kg体重)の1日用量における化合物を提供するために投与され得る。一部の実施形態では、医薬組成物が患者に投与された後(例えば、投与後の約1、2、3、4、5、又は6時間後)、作用部位における化合物の濃度は約2~10μMである。
【0044】
本明細書に開示される方法に利用される化合物は、任意の薬学的に許容できる剤形が利用可能であるけれども、固体剤形における医薬組成物として製剤化されてもよい。例示的な固体剤形には、錠剤、カプセル剤、小袋、トローチ剤、散剤、丸剤、又は顆粒剤が含まれるが、これらに限定されず、且つ固体剤形は、例えば、速溶剤形、制御放出剤形、凍結乾燥剤形、遅延放出剤形、延長放出剤形、脈動放出剤形、即時放出及び制御放出の混合剤形、又はこれらの組み合わせであり得る。
【0045】
本明細書に開示される方法に利用される化合物は、担体を含む医薬組成物として製剤化されてもよい。例えば、担体は、タンパク質、炭水化物、糖、タルク、ステアリン酸マグネシウム、セルロース、炭酸カルシウム、及びデンプン-ゼラチンペーストからなる群から選択されてもよい。
【0046】
本明細書に開示される方法に利用される化合物は、1つ又は複数の結合剤、充填剤、滑沢剤、懸濁化剤、甘味料、着香剤、防腐剤、緩衝剤、湿潤剤、崩壊剤、及び発泡剤を含む医薬組成物として製剤化されてもよい。充填剤は、ラクトース一水和物、ラクトース無水物、及び様々なデンプンを含んでもよく;結合剤の例は、様々なセルロース及び架橋したポリビニルピロリドン、例えばAvicel(登録商標)PH101及びAvicel(登録商標)PH102などの微結晶性セルロース、微結晶性セルロース、並びにケイ化微結晶性セルロース(ProSolv SMCC(商標))である。好適な滑沢剤は、圧縮される粉末の流動性に作用する薬剤を含み、Aerosil(登録商標)200などのコロイド性二酸化ケイ素、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、及びシリカゲルを含み得る。甘味料の例には、スクロース、キシリト-ル、サッカリンナトリウム、シクラメート、アスパルテーム、及びアセスルファム(acsulfame)などの任意の天然又は人工の甘味料が含まれ得る。着香剤の例は、Magnasweet(登録商標)(MAFCOの商標)、バブルガム香料、及びフルーツ香料などである。防腐剤の例には、ソルビン酸カリウム、メチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸及びその塩、例えばブチルパラベンなどのパラヒドロキシ安息香酸の他のエステル、エチルアルコール若しくはベンジルアルコールなどのアルコール、フェノールなどのフェノール化合物、又は塩化ベンザルコニウムなどの第4級化合物が含まれ得る。
【0047】
好適な希釈剤には、薬学的に許容できる不活性充填剤、例えば微結晶性セルロース、ラクトース、リン酸水素カルシウム、糖類、及び前述のいずれかの混合物が含まれ得る。希釈剤の例には、Avicel(登録商標)PH101及びAvicel(登録商標)PH102などの微結晶性セルロース;ラクトース一水和物、ラクトース無水物、及びPharmatose(登録商標)DCL21などのラクトース;Emcompress(登録商標)などのリン酸水素カルシウム;マンニトール;デンプン;ソルビトール;スクロース;並びにグルコースが含まれる。
【0048】
好適な崩壊剤には、軽度に架橋されたポリビニルピロリドン、コーンデンプン、ジャガイモデンプン、メイズデンプン、及び加工デンプン、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン(cross-povidone)、デンプングリコール酸ナトリウム、及びこれらの混合物が含まれる。
【0049】
発泡剤の例は、有機酸及び炭酸塩又は重炭酸塩などの発泡剤対である。好適な有機酸には、例えば、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、フマル酸、アジピン酸、コハク酸、及びアルギン酸並びに酸の無水物及び塩が含まれる。好適な炭酸塩及び炭酸塩には、例えば、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸グリシンナトリウム、L-リシン炭酸塩、及びアルギニン炭酸塩が含まれる。あるいは、発泡剤対の重炭酸ナトリウム成分のみが存在してもよい。
【0050】
本明細書に開示される方法に利用される化合物は、任意の好適な経路を介して送達するための医薬組成物として製剤化されてもよい。例えば、医薬組成物は、経口、静脈内、筋肉内、皮下、局所的、及び肺の経路を介して投与され得る。経口投与用の医薬組成物の例には、カプセル剤、シロップ剤、濃縮物、散剤及び顆粒剤が含まれる。
【0051】
本明細書に開示される方法に利用される化合物は、当技術分野で周知の従来手順に基づいて、有効成分と標準的な薬学的担体又は希釈剤とを組み合わせることにより調製された、従来の剤形で投与されてもよい。これらの手順は、所望の調製に適切な原料を混合、造粒化及び圧縮又は溶解することを含み得る。
【0052】
この化合物を含む医薬組成物は、例えば経口(バッカル若しくは舌下を含む)、直腸、経鼻、局所的(バッカル、舌下若しくは経皮を含む)、腟又は非経口的(皮下、筋肉内、静脈内若しくは皮内を含む)経路によって、任意の適切な経路による投与に適合され得る。そのような製剤は、医薬の技術分野で周知の任意の方法により、例えば有効成分と担体(複数可)又は賦形剤(複数可)とを関連付けることにより調製され得る。
【0053】
経口投与に適した医薬組成物は、カプセル剤若しくは錠剤;散剤若しくは顆粒剤;水性若しくは非水性の液体中の溶液剤若しくは懸濁剤;食用のフォーム若しくはホイップ;又は水中油型の液体乳剤若しくは油中水型の液体乳剤などの個別単位として与えられてもよい。
【0054】
経皮投与に適した医薬組成物は、長期的に、受容者の表皮と密接に接触した状態を維持するように意図された個別パッチとして与えられてもよい。例えば、有効成分は、イオン導入法によりパッチから送達されてもよい。
【0055】
局所投与に適した医薬組成物は、軟膏剤、クリーム剤、懸濁剤、ローション剤、散剤、溶液剤、ペースト、ゲル剤、含浸ドレッシング材、スプレー剤、エアゾール剤又は油脂として製剤化されてもよく、防腐剤、薬物浸透を補助する溶媒並びに軟膏剤及びクリーム剤中の軟化剤などの適切な従来の添加剤を含有してもよい。
【0056】
目又は例えば口及び皮膚のような他の外部組織への適用のために、医薬組成物は、好ましくは局所的な軟膏剤又はクリーム剤として塗布される。軟膏剤に製剤化される場合、化合物は、パラフィン又は水混和性の軟膏基剤のいずれかと共に利用されてもよい。あるいは、化合物は、水中油型クリーム基剤又は油中水型基剤と共にクリーム剤に製剤化されてもよい。目への局所投与に適した医薬組成物には、有効成分が、好適な担体、特に水性溶媒中に溶解しているか又は懸濁している点眼薬が含まれる。
【0057】
口中への局所投与に適した医薬組成物には、トローチ剤、香錠及び口腔洗浄薬が含まれる。
【0058】
直腸内投与に適した医薬組成物は、坐剤又は浣腸として与えられてもよい。
【0059】
担体が固体である、経鼻投与に適した医薬組成物には、鼻吸入がとられる(すなわち、鼻の近くに保持された粉末容器から、鼻通路を通した迅速吸入による)方式で投与される、粒度(例えば、20~500マイクロメートルの範囲)を有する粗粉末剤が含まれる。担体が液体である、経鼻スプレー剤として又は点鼻剤としての投与に好適な製剤には、有効成分の水性又は油性の溶液剤が含まれる。
【0060】
吸入による投与に適した医薬組成物には、様々な種類の定用量加圧式のエアゾール、噴霧吸入器又は吹き付け器の手段により生成され得る細かい微粒子ダスト又はミストが含まれる。
【0061】
膣内投与に適した医薬組成物は、ペッサリー、タンポン、クリーム剤、ゲル剤、ペースト、発泡剤又はスプレー製剤として与えられてもよい。
【0062】
非経口投与に適した医薬組成物には、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤及び製剤を意図される受容者の血液と等張にする溶質を含有し得る水性及び非水性の無菌注入溶液;並びに懸濁化剤及び増稠剤を含み得る水性及び非水性の無菌懸濁剤が含まれる。製剤は、例えば密封されたアンプル及びバイアルのような単位用量又は複数回用量の容器で与えられてもよく、使用直前に注入用に、例えば水のような無菌の液体担体の添加のみを必要とする、フリーズドライ(凍結乾燥)の状態で保管され得る。即時調合の注入溶液剤及び懸濁剤は、無菌の散剤、顆粒剤及び錠剤から調製されてもよい。
【0063】
経口投与用の錠剤及びカプセル剤は、単位用量投薬形態であり得て、結合剤、例えばシロップ、アラビアガム、ゼラチン、ソルビトール、トラガカント、若しくはポリビニルピロリドンなど;充填剤、例えばラクトース、糖、メイズデンプン、リン酸カルシウム、ソルビトール若しくはグリシンなど;錠剤化滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコール若しくはシリカなど;崩壊剤、例えばジャガイモデンプンなど;又はラウリル硫酸ナトリウムなどの許容される湿潤剤などの従来の賦形剤を含有してもよい。錠剤は、通常の薬務で周知の方法に基づいてコーティングされてもよい。経口液体調製剤は、例えば水性若しくは油性の懸濁剤、溶液剤、乳剤、シロップ剤若しくはエリキシル剤のような形態であってもよく、又は使用前に水若しくは他の好適なビヒクルで再構成するための乾燥製品として与えられてもよい。そのような液体調製剤は、懸濁化剤、例えばソルビトール、メチルセルロース、グルコースシロップ、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸アルミニウムゲル剤又は水素化食用脂など、乳化剤、例えばレシチン、モノオレイン酸ソルビタン、又はアラビアガムなど;非水性ビヒクル(食用油脂を含み得る)、例えばアーモンド油、油性エステルなど、グリセリン、プロピレングリコール、又はエチルアルコールなど;防腐剤、例えばp-ヒドロキシ安息香酸メチル若しくはp-ヒドロキシ安息香酸プロピル又はソルビン酸など、及び、所望ならば、従来の着香剤又は着色剤などの従来の添加剤を含有してもよい。
【0064】
本明細書に開示される組成物及び方法に利用される化合物は、医薬組成物として投与され得て、従って、該化合物を組み込んだ医薬組成物は、本明細書に開示される組成物の実施形態であると考えられる。そのような組成物は、薬学的に許容できる任意の物理的形態を取ってもよく;例示的に、それらは経口投与される医薬組成物であり得る。そのような医薬組成物は、有効量の本開示化合物を含有し、その有効量は、投与される化合物の1日用量に関連する。各投薬単位は、所与の化合物の1日用量を含有し得るか、又は各投薬単位は、用量の2分の1又は3分の1などの、1日用量のある画分を含有し得る。各投薬単位に含有されている各化合物の量は、治療のために選択される特定の化合物の固有特性、及び付与される効能などの他の要因に部分的に依存し得る。本明細書に開示される医薬組成物は、周知の手順を利用することにより患者に投与された後、有効成分の迅速放出、持続放出、又は遅延放出を提供するために製剤化され得る。
【0065】
本明細書に開示される方法に基づく使用のための化合物は、単一化合物又は化合物の組み合わせとして投与されてもよい。例えば、癌活性を治療する化合物は、単一化合物として、又は癌を治療するか若しくは異なる薬理学的活性を有する別の化合物と組み合わせて投与されてもよい。
【0066】
上述のように、化合物の薬学的に許容できる塩が熟考され、且つ本開示の方法に利用されてもよい。用語「薬学的に許容できる塩」は、本明細書で使用される場合、生命体に対して実質的に無毒である、化合物の塩を指す。典型的な薬学的に許容できる塩には、本明細書に開示される化合物と、薬学的に許容できるミネラル又は有機酸又は有機若しくは無機の塩基との反応により調製される塩が含まれる。そのような塩は、酸付加塩及び塩基付加塩として公知である。本明細書に開示される大部分又は全ての化合物は塩を形成することが可能であり、且つ塩形態の医薬品は、しばしば、遊離の酸又は塩基より容易に結晶化され且つ精製されるために、一般的に使用されることが、当技術分野の読者には理解されよう。
【0067】
酸付加塩を形成するために一般に利用される酸には、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、リン酸などの無機酸、及びp-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、p-ブロモフェニルスルホン酸、炭酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸、酢酸などの有機酸が含まれ得る。好適な薬学的に許容できる塩の例には、硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、リン酸一水素塩、リン酸二水素塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、臭化物塩、ヨウ化物塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、ギ酸塩、塩酸塩、二塩酸塩、イソ酪酸塩、カプロン酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオル酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ブチン-1,4-二酸塩、ヘキシン-l,6-二酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、フタル酸塩、キシレンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、フェニルプロピオン酸塩、フェニル酪酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、アルファ-ヒドロキシ酪酸塩、グリコール酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、プロパンスルホン酸塩、ナフタレン-1-スルホン酸塩、ナフタレン-2-スルホン酸塩、マンデル酸塩などが含まれ得る。
【0068】
塩基付加塩には、アンモニア又はアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩などの無機塩基に由来する塩が含まれる。そのような塩を調製するのに有用な塩基には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウムなどが含まれる。
【0069】
本明細書に開示される化合物の任意の塩の一部を形成する特定の対イオンは、該塩が全体として薬理学的に許容できる限り、且つ対イオンが塩に対して全体的に所望されない特質をもたらさない限り、化合物の活性に対して決定的ではない可能性がある。所望されない特質には、所望されない溶解度又は毒性が含まれ得る。
【0070】
該化合物の薬学的に許容できるエステル及びアミドもまた、本明細書に開示される組成物及び方法に利用することができる。好適なエステルの例には、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ドデシルエステル、ベンジルエステルなどのアルキル、アリール、及びアラルキルのエステルが含まれる。好適なアミドの例には、メチルアミド、ジメチルアミド、メチルエチルアミドなどの非置換アミド、一置換アミド、及び二置換アミドが含まれる。
【0071】
加えて、本明細書に開示される方法は、化合物又はその塩、エステル及び/又はアミドの溶媒和形態を使用して実行されてもよい。溶媒和物形態には、エタノール溶媒和物、水和物などが含まれ得る。
【0072】
抗バイオフィルム製品
本明細書に開示される方法に利用される化合物は、表面への適用のために製剤化された、表面上の微生物バイオフィルムを治療するか又は防止するために、表面への適用のために製剤化された、有効量の1つ又は複数の本明細書に開示される化合物を含む抗バイオフィルム組成物として製剤化されてもよい。有効量は、リポペプチド単独又はリポペプチド及び抗菌剤の組み合わせのものであってもよい。表面は、バイオフィルムを防止するか又は治療するのに望ましい任意の表面であってもよく、医療用装置、医療用機器、医療用インプラント、包帯、創傷、又は皮膚が含まれるが、これらに限定されない。抗バイオフィルム製品は、表面への適用に好適な任意の方式で製剤化されてもよい。製剤の例には、限定されることなく、スプレー剤、軟膏剤、ゲル剤、フォーム剤、ペースト、ヒドロゲル、又は親水コロイドが含まれる。
【0073】
特定の実施形態では、抗バイオフィルム製品は、ドレッシング材と、創傷上の微生物感染又は微生物バイオフィルムを治療又は防止するための有効量の1つ又は複数の本明細書に開示される化合物を含、包帯である。該化合物は、例えば、スプレー剤、軟膏剤、ゲル剤、フォーム剤、ペースト、ヒドロゲル、又は親水コロイドのような上述の製剤のいずれかに製剤化され、ドレッシング材の表面に適用されるか又はドレッシング材中に含浸されてもよい。ドレッシング材は、創傷への適用に好適な任意のドレッシング材であり、限定されることなく、ガーゼなどの天然及び合成の織布、海綿質、アルギン酸塩、コラーゲン、フィルム、ゲルシート、創傷充填剤、ヒドロゲル、若しくは親水コロイド、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0074】
リポペプチドを使用する方法
本発明のリポペプチド及び組成物は、表面上における、微生物の増殖の阻害若しくは死滅、バイオフィルム形成の防止、又は創傷若しくは皮膚上における、バイオフィルム中の微生物の増殖の阻害若しくは死滅、バイオフィルム形成の防止、又は対象における、バイオフィルム中の微生物の増殖の阻害若しくは死滅、又は微生物感染の防止若しくは微生物感染の治療を含む、種々の手法で使用され得る。
【0075】
治療方法
本明細書に記載される組成物の使用は、対象又は創傷若しくは皮膚上における、微生物感染の防止又は微生物感染の治療のためのものである。本明細書で使用される場合、用語「治療すること」又は「治療する」とは、それぞれ、一時的若しくは持続的に基づくいずれかで、症状を軽減し、結果として生じる症状の原因作用を除き、且つ/又は挙げられた疾患若しくは障害の結果として生じる症状の、出現を防止するか若しくは遅くし、又は進行若しくは重症度を逆行させることを意味する。従って、本明細書に開示される方法は、治療的及び予防的な投与の両方を包含する。
【0076】
本明細書で使用される場合、用語「有効量」は、対象への単回投与又は複数回投与の時に、診断又は治療下において対象に所望の効果を提供する化合物の量又は用量を指す。本開示の方法は、本明細書に記載される微生物のいずれかの微生物感染症を治療するために、有効量の本開示の化合物(例えば、医薬組成物中に存在する)を投与することを含み得る。
【0077】
本明細書で使用される場合、「対象」は、「患者」又は「個体」と互換的であり得て、治療を必要とする、ヒト又は非ヒト動物であってもよい動物を意味する。「治療を必要とする対象」には、本明細書に開示されるリポペプチド又は抗菌性化合物を用いる治療に対して応答性である疾患、障害、又は状態を有する対象が含まれ得る。例えば、「治療を必要とする対象」には、微生物性の疾患又は状態を有する対象が含まれ得る。好適には、微生物性の疾患又は状態は、グラム陰性菌又はグラム陽性菌のいずれかの薬物耐性菌感染症を含む、グラム陰性菌感染症又はグラム陽性菌感染症であり得る。例示的なグラム陽性菌感染症には、限定されることなく、大腸菌、A・バウマンニ、E・クロアカ、K・ニューモニエ、又はP・エルジノーサの感染症が含まれる。例示的なグラム陰性菌感染症には、限定されることなく、E.フェシウム及びS.アウレウスの感染症が含まれる。例示的な薬物耐性菌感染症には、限定されることなく、カルバペネム耐性菌、メチシリン耐性菌、又はポリミキシン耐性菌の感染症が含まれる。
【0078】
有効量は、公知の技術の使用により、且つ類似の環境下で得られた結果を観察することにより、当業者としての担当の診断専門医により、容易に決定することができる。投与される化合物の有効量又は用量の決定において:対象の種;対象の大きさ、年齢、及び総体的な健康状態;関与する疾患又は障害の関与程度又は重症度;個々の対象の応答;投与される特定の化合物;投与様式;投与される調製剤の生物学的利用能特徴;選択される投与レジメン;併用薬剤投与の使用;並びに他の関連する環境などの多数の要因が、担当の診断専門医により考慮され得る。
【0079】
典型的な1日用量は、約0.01mg/kg~約100mg/kg(約0.05mg/kg~約50mg/kg及び/又は約0.1mg/kg~約25mg/kgなど)の、本治療方法において使用される各化合物を含有し得る。
【0080】
組成物は、各投薬が約1~約500mgのそれぞれの化合物を個々に含有する単位剤形、又は約5~約300mg、約10~約100mg、及び/又は約25mgなどの単回単位剤形に製剤化され得る。用語「単位剤形」は、患者に一体成形投薬として好適な物理的に個別の単位を指し、各単位は、好適な薬学的な担体、希釈剤、又は賦形剤と関連して、所望の治療効果をもたらすように算出された所定量の活性物質を含有する。
【0081】
微生物の増殖を阻害するか又は微生物を死滅させる方法
本明細書に記載される組成物の使用は、微生物の増殖を阻害するか又は死滅させるためのものである。本明細書で使用される場合、用語「微生物の増殖を阻害する」とは、本明細書に記載される組成物を用いたインキュベーション後に、微生物細胞の成長を遅くすることを意味する。好適には、インキュベーション後に、微生物細胞の成長を遅くすることは、インキュベーション後に微生物細胞の視認できる成長がないことであり得る。本明細書で使用される場合、用語「微生物を死滅させる」とは、最初の生存微生物細胞又は接種材料の数に対して、生存微生物細胞の数に低減があることを意味する。本明細書で使用される場合、用語「有効量」は、所望の効果を提供する化合物の量又は用量を指す。有効量は、微生物の増殖を阻害するための組成物のMIC、又は微生物を死滅させるための組成物のMBCであり得る。
【0082】
本発明の代替の態様では、リポペプチドは、表面上へのバイオフィルムの形成を防止するためか、又はバイオフィルム中の微生物の増殖を阻害するか若しくは死滅させるために使用され得る。この方法は、表面又はそこに配置されたバイオフィルムと、有効量の本明細書に記載される組成物とを接触させることを含む。リポペプチドは、表面への適用に好適な任意の製剤として適用され得る。好適には、表面は創傷又は皮膚である。組成物は、創傷上への直接的適用か、又はリポペプチドをその表面に含むか若しくは内部に含浸させた包帯を介する間接的適用のいずれかにより、創傷又は皮膚に適用され得る。
【実施例
【0083】
パエニペプチン類似体の合成及び特徴付け
パエニペプチン類似体を、受託ペプチドサービス(Genscript Inc.、Piscataway、NJ)を通して合成した。固相ペプチド合成を、リンクアミド樹脂にFmoc化学法を使用して実行した。樹脂は、使用前に1時間、DMF中で事前膨潤させた。対応するアミノ酸、HOBT及びDICを添加し、続いて室温で1時間揺動することにより、アミド化反応を達成した。Fmoc保護基を、DMF中の20%のピペリジン(体積/体積)で1時間処理することにより除去した。脱保護とカップリングの間に、固相ペプチド合成容器をN2加圧下で排液し、DMFで5回洗浄した。少量の樹脂を開裂させ、HPLCにより分析して変換を確認した。最後に、該樹脂をTFA/TIPS/H2O(18:1:1、体積/体積/体積)の混合物で処理し、2時間静かに振盪した。開裂溶液を濾過し、真空中で濃縮した。粗製ペプチドを、分取スケールC18-RP-HPLCを使用して精製した。合成リポペプチドを、HPLCにより均質になるまで精製して(純度95%以上)、高分解質量分析により特徴付けした。質量スペクトル(MS)を、カリフォルニア大学リバーサイド校で、Agilent 6210 Time-of-Flight(TOF) LC質量分析計(Agilent Technologies、Santa Clara、CA)を使用して記録した。各パエニペプチン類似体の1H NMRスペクトルを、D2O中で、Agilent 400-MR DD2分光計(400MHz)でテトラメチルシラン(TMS)を内部標準として使用して記録した。化学シフトをδ(ppm)として、スピン-スピン結合定数をJ(Hz)値として報告した。純度、HRMS及び1H NMRデータは、補足資料中にある。
【0084】
純度決定のためのHPLC法
方法A:HPLC分析を、Alltima C18カラム(5マイクロメートル、4.6×250mm)を使用して、逆相HPLC(RP-HPLC)システムで、1.0ml/分の流量で実施した。移動相A:100%水中の0.065%のトリフルオロ酢酸(体積/体積)及び移動相B:100%アセトニトリル中の0.05%のトリフルオロ酢酸(体積/体積)を使用して、勾配溶離により分離を達成した。UVモニターを220nmの波長で使用して、溶離を検出した。標的リポペプチドの純度を、ピーク面積に基づいて算出した。方法B:HPLC分析を、Thermo Scientific BetaSil C18カラム(3マイクロメートル、4.6×150mm)を使用して、逆相HPLC(RP-HPLC)システムで、0.8ml/分の流量で実施した。移動相A:100%水中の0.1%のトリフルオロ酢酸(体積/体積)及び移動相B:100%MeOH中の0.1%のトリフルオロ酢酸(体積/体積)を使用して、勾配溶離により分離を達成した。UVモニターを220nmの波長で使用して、溶離を検出した。標的リポペプチドの純度を、ピーク面積に基づいて算出した(表2)。
【0085】
【表2】
【0086】
パエニペプチン(paenepeptin)類似体の核磁気共鳴及び質量分析のデータ
C6-Pat(1)
1H NMR (400 MHz、D2O) δ 7.36 - 7.01(m、5H、D-Phe4-ArH)、4.58 (t、J = 8.0 Hz、1H、D-Phe4-Hα)、4.38 - 4.10 (m、6H、Dab1-Hα + Dab3-Hα + Dab6-Hα +Leu5-Hα + Leu8-Hα + Ser9-Hα)、4.00 - 3.93 (m、2H、Ile2-Hα + D-Val7-Hα)、3.78 -3.67 (m、2H、Ser9-Hβ)、3.08 - 2.82 (m、6H、Dab1-Hγ + Dab3-Hγ + Dab6-Hγ)、2.70 - 2.45 (m、2H、D-Phe4-Hβ)、2.14 (t、J = 7.4 Hz、2H、Lipid-Hα)、2.11 - 1.66 (m、8H、Dab1-Hβ + Dab3-Hβ + Dab6-Hβ + Ile2-Hβ + D-Val7-Hβ)、1.60 -0.93 (m、14H、Leu5-Hβ、Hγ + Leu8-Hβ、Hγ + Lipid-Hβ、Hγ、Hδ + Ile2-Hγ)、0.85 - 0.58 (m、27H、Ile2-Hγ、Hδ + Leu5-Hδ + D-Val7-Hγ + Leu8-Hδ + Lipid-CH3) ppm. HRMS-ESI (m/z) C53941311 (M+H)+に関する計算値:1088.7197;実測値:1088.7194
【0087】
C7Val2-Pat (2)
1H NMR (400 MHz、D2O) δ 7.31 - 7.08 (m、5H、D-Phe4-ArH)、4.56 (t、J = 8.0 Hz、1H、D-Phe4-Hα)、4.37 - 4.06 (m、6H、Dab1-Hα + Dab3-Hα + Dab6-Hα +Leu5-Hα + Leu8-Hα + Ser9-Hα)、4.02 - 3.91 (m、2H、Val2-Hα + D-Val7-Hα)、3.79 - 3.67 (m、2H、Ser9-Hβ)、3.08 - 2.83 (m、6H、Dab1-Hγ + Dab3-Hγ + Dab6-Hγ)、2.73 - 2.48 (m、2H、D-Phe4-Hβ)、2.16 (t、J = 7.4 Hz、2H、Lipid-Hα)、2.12 - 1.69 (m、8H、Dab1-Hβ + Dab3-Hβ + Dab6-Hβ + Val2-Hβ + D-Val7-Hβ)、1.65 - 0.93 (m、14H、Leu5-Hβ、Hγ + Leu8-Hβ、Hγ + Lipid-Hβ、Hγ、Hδ、Hε)、0.89 - 0.59 (m、27H、Val2-Hγ + Leu5-Hδ + D-Val7-Hγ + Leu8-Hδ + Lipid-CH3) ppm. HRMS-ESI (m/z) C53941311 (M+H)+に関する計算値: 1088.7197;実測値:1088.7186
【0088】
C7-Pat (3)
1H NMR (400 MHz、D2O) δ 7.40 -7.04 (m、5H、D-Phe4-ArH)、4.56 (t、J = 8.0 Hz、1H、D-Phe4-Hα)、4.44 - 4.06 (m、6H、Dab1-Hα + Dab3-Hα + Dab6-Hα +Leu5-Hα + Leu8-Hα + Ser9-Hα)、4.00 - 3.93 (m、2H、Ile2-Hα + D-Val7-Hα)、3.78 - 3.67 (m、2H、Ser9-Hβ)、3.12 - 2.81 (m、6H、Dab1-Hγ + Dab3-Hγ + Dab6-Hγ)、2.70 - 2.48 (m、2H、D-Phe4-Hβ)、2.16 (t、J = 7.5 Hz、2H、Lipid-Hα)、2.11 - 1.64 (m、8H、Dab1-Hβ + Dab3-Hβ + Dab6-Hβ + Ile2-Hβ + D-Val7-Hβ)、1.60 - 0.95 (m、16H、Leu5-Hβ、Hγ + Leu8-Hβ、Hγ + Lipid-Hβ、Hγ、Hδ、Hε + Ile2-Hγ)、0.88 - 0.59 (m、27H、Ile2-Hγ、Hδ + Leu5-Hδ + D-Val7-Hγ + Leu8-Hδ + Lipid-CH3) ppm. HRMS-ESI (m/z) C54961311 (M+H)+に関する計算値:1102.7353;実測値:1102.7316
【0089】
C7Phe2-Pat (4)
1H NMR (400 MHz、D2O) δ 7.38 - 6.96 (m、10H、Phe2-ArH + D-Phe4-ArH)、4.58 - 4.42 (m、2H、D-Phe4-Hα + Phe2-Hα)、4.31 - 4.10 (m、6H、Dab1-Hα + Dab3-Hα + Dab6-Hα +Leu5-Hα + Leu8-Hα + Ser9-Hα)、3.95 (d、J = 7.4 Hz、1H、D-Val7-Hα)、3.79 - 3.67 (m、2H、Ser9-Hβ)、3.08 - 2.71 (m、8H、Dab1-Hγ + Dab3-Hγ + Dab6-Hγ + Phe2-Hβ)、2.67 - 2.47 (m、2H、D-Phe4-Hβ)、2.10 (t、J = 7.5 Hz、2H、Lipid-Hα)、2.06 - 1.65 (m、7H、Dab1-Hβ + Dab3-Hβ + Dab6-Hβ + D-Val7-Hβ)、1.60 - 0.98 (m、14H、Leu5-Hβ、Hγ + Leu8-Hβ、Hγ + Lipid-Hβ、Hγ、Hδ、Hε)、0.84 - 0.60 (m、21H、Leu5-Hδ + D-Val7-Hγ + Leu8-Hδ + Lipid-CH3) ppm. HRMS-ESI (m/z) C57941311 (M+H)+に関する計算値:1136.7197;実測値:1136.7196
【0090】
C7dLeu7-Pat (5)
1H NMR (400 MHz、D2O) δ 7.40 - 7.01 (m、5H、D-Phe4-ArH)、4.56 (t、J = 8.0 Hz、1H、D-Phe4-Hα)、4.37 - 4.06 (m、7H、Dab1-Hα + Dab3-Hα + Dab6-Hα + Leu5-Hα + D-Leu7-Hα + Leu8-Hα + Ser9-Hα)、3.98 (d、J = 8.1 Hz、1H、Ile2-Hα)、3.83 - 3.66 (m、2H、Ser9-Hβ)、3.11 - 2.82 (m、6H、Dab1-Hγ + Dab3-Hγ + Dab6-Hγ)、2.72 - 2.47 (m、2H、D-Phe4-Hβ)、2.16 (t、J = 7.4 Hz、2H、Lipid-Hα)、2.12 - 1.62 (m、7H、Dab1-Hβ + Dab3-Hβ + Dab6-Hβ + Ile2-Hβ)、1.62 - 0.94 (m、19H、Leu5-Hβ、Hγ + D-Leu7-Hβ、Hγ + Leu8-Hβ、Hγ + Lipid-Hβ、Hγ、Hδ、Hε + Ile2-Hγ)、0.85 - 0.60 (m、27H、Ile2-Hγ、Hδ + Leu5-Hδ + D-Leu7-Hδ + Leu8-Hδ + Lipid-CH3) ppm. HRMS-ESI (m/z) C55981311 (M+H)+に関する計算値:1116.7510;実測値:1116.7510
【0091】
C7Phe2dLeu7-Pat (6)
1H NMR (400 MHz、D2O) δ 7.33 - 6.99 (m、10H、Phe2-ArH + D-Phe4-ArH)、4.57 - 4.42 (m、2H、Phe2-Hα + D-Phe4-Hα)、4.31 - 4.10 (m、7H、Dab1-Hα + Dab3-Hα + Dab6-Hα + Leu5-Hα + D-Leu7-Hα + Leu8-Hα + Ser9-Hα)、3.83 - 3.66 (m、2H、Ser9-Hβ)、3.06 - 2.71 (m、8H、Dab1-Hγ + Dab3-Hγ + Dab6-Hγ + Phe2-Hβ)、2.68 - 2.44 (m、2H、D-Phe4-Hβ)、2.10 (t、J = 7.4 Hz、2H、Lipid-Hα)、2.06 - 1.65 (m、6H、Dab1-Hβ + Dab3-Hβ + Dab6-Hβ)、1.62 - 0.98 (m、17H、Leu5-Hβ、Hγ + D-Leu7-Hβ、Hγ + Leu8-Hβ、Hγ + Lipid-Hβ、Hγ、Hδ、Hε)、0.84 - 0.60 (m、21H、Leu5-Hδ + D-Leu7-Hδ + Leu8-Hδ + Lipid-CH3) ppm. HRMS-ESI (m/z) C58961311 (M+H)+に関する計算値:1150.7353;実測値:1150.7335
【0092】
C7Phe2dLeu7Phe8-Pat (7)
1H NMR (400 MHz、D2O) δ 7.39 - 6.96 (m、15H、Phe2-ArH + D-Phe4-ArH + Phe8-ArH)、4.61 - 4.41 (m、3H、Phe2-Hα + D-Phe4-Hα + Phe8-Hα)、4.31 - 3.98 (m、6H、Dab1-Hα + Dab3-Hα + Dab6-Hα + Leu5-Hα + D-Leu7-Hα + Ser9-Hα)、3.83 - 3.66 (m、2H、Ser9-Hβ)、3.20 - 2.73 (m、10H、Dab1-Hγ + Dab3-Hγ + Dab6-Hγ + Phe2-Hβ + Phe8-Hβ)、2.68 - 2.42 (m、2H、D-Phe4-Hβ)、2.09 (t、J = 7.4 Hz、2H、Lipid-Hα)、2.04 - 1.63 (m、6H、Dab1-Hβ + Dab3-Hβ + Dab6-Hβ)、1.45 - 0.96 (m、14H、Leu5-Hβ、Hγ + D-Leu7-Hβ、Hγ + Lipid-Hβ、Hγ、Hδ、Hε)、0.79 - 0.53 (m、15H、Leu5-Hδ + D-Leu7-Hδ + Lipid-CH3) ppm. HRMS-ESI (m/z) C61941311 (M+H)+に関する計算値: 1184.7197;実測値:1184.7200
【0093】
C8-Pat (8)
1H NMR (400 MHz、D2O) δ 7.37 - 6.98 (m、5H、D-Phe4-ArH)、4.54 (t、J = 8.0 Hz、1H、D-Phe4-Hα)、4.38 - 4.08 (m、6H、Dab1-Hα + Dab3-Hα + Dab6-Hα +Leu5-Hα + Leu8-Hα + Ser9-Hα)、4.00 - 3.93 (m、2H、Ile2-Hα + D-Val7-Hα)、3.78 -3.67 (m、2H、Ser9-Hβ)、3.10 - 2.80 (m、6H、Dab1-Hγ + Dab3-Hγ + Dab6-Hγ)、2.70 - 2.45 (m、2H、D-Phe4-Hβ)、2.14 (t、J = 7.4 Hz、2H、Lipid-Hα)、2.10 - 1.64 (m、8H、Dab1-Hβ + Dab3-Hβ + Dab6-Hβ + Ile2-Hβ + D-Val7-Hβ)、1.56 - 0.95 (m、18H、Leu5-Hβ、Hγ + Leu8-Hβ、Hγ + Lipid-Hβ、Hγ、Hδ、Hε、Hζ + Ile2-Hγ)、0.85 - 0.58 (m、27H、Ile2-Hγ、Hδ + Leu5-Hδ + D-Val7-Hγ + Leu8-Hδ + Lipid-CH3) ppm. HRMS-ESI (m/z) C55981311 (M+H)+ に関する計算値:1116.7510;実測値:1116.7518
【0094】
Dab9-Pat (9)
1H NMR (400 MHz、D2O) δ 7.39 - 7.02 (m、5H、D-Phe4-ArH)、4.57 (t、J = 8.0 Hz、1H、D-Phe4-Hα)、4.37 - 4.11 (m、6H、Dab1-Hα + Dab3-Hα + Dab6-Hα +Leu5-Hα + Leu8-Hα + Dab9-Hα)、4.02 - 3.96 (m、2H、Ile2-Hα + D-Val7-Hα)、3.08 - 2.84 (m、8H、Dab1-Hγ + Dab3-Hγ + Dab6-Hγ + Dab9-Hγ)、2.73 - 2.46 (m、2H、D-Phe4-Hβ)、2.16 (t、J = 7.3 Hz、2H、Lipid-Hα)、2.12 - 1.64 (m、10H、Dab1-Hβ + Dab3-Hβ + Dab6-Hβ + Dab9-Hβ + Ile2-Hβ + D-Val7-Hβ)、1.63 - 1.00 (m、18H、Leu5-Hβ、Hγ + Leu8-Hβ、Hγ + Lipid-Hβ、Hγ、Hδ、Hε、Hζ + Ile2-Hγ)、0.83 - 0.62 (m、27H、Ile2-Hγ、Hδ + Leu5-Hδ + D-Val7-Hγ + Leu8-Hδ + Lipid-CH3) ppm. HRMS-ESI (m/z) C561011410 (M+H)+ に関する計算値:1129.7826;実測値:1129.7823
【0095】
Dab2,9-Pat (10)
1H NMR (400 MHz、D2O) δ 7.39 - 7.07 (m、5H、D-Phe4-ArH)、4.59 (t、J = 8.0 Hz、1H、D-Phe4-Hα)、4.39 - 4.05 (m、7H、Dab1-Hα + Dab2-Hα+ Dab3-Hα + Dab6-Hα +Leu5-Hα + Leu8-Hα + Dab9-Hα)、4.00 (d、J = 7.1 Hz、1H、D-Val7-Hα)、3.08 - 2.83 (m、10H、Dab1-Hγ + Dab2-Hγ + Dab3-Hγ + Dab6-Hγ + Dab9-Hγ)、2.72 - 2.52 (m、2H、D-Phe4-Hβ)、2.17 (t、J = 7.3 Hz、2H、Lipid-Hα)、2.13 - 1.67 (m、11H、Dab1-Hβ + Dab2-Hβ + Dab3-Hβ + Dab6-Hβ + Dab9-Hβ + D-Val7-Hβ)、1.60 - 0.95 (m、16H、Leu5-Hβ、Hγ + Leu8-Hβ、Hγ + Lipid-Hβ、Hγ、Hδ、Hε、Hζ)、0.89 - 0.57 (m、21H、Leu5-Hδ + D-Val7-Hγ + Leu8-Hδ + Lipid-CH3) ppm. HRMS-ESI (m/z) C54981510 (M+H)+ に関する計算値:1116.7622;実測値:1116.7660
【0096】
Orn-Pat (11)
1H NMR (400 MHz、D2O) δ 7.31 - 7.03 (m、5H、D-Phe4-ArH)、4.56 - 4.48 (m、1H、D-Phe4-Hα)、4.39 - 4.07 (m、6H、Orn1-Hα + Orn3-Hα + Orn6-Hα +Leu5-Hα + Leu8-Hα + Ser9-Hα)、4.03 - 3.94 (m、2H、Ile2-Hα + D-Val7-Hα)、3.83 - 3.68 (m、2H、Ser9-Hβ)、3.15 - 2.80 (m、6H、Orn1-Hδ + Orn3-Hδ + Orn6-Hδ)、2.80 - 2.64 (m、2H、D-Phe4-Hβ)、2.15 (t、J = 7.4 Hz、2H、Lipid-Hα)、2.01 - 0.92 (m、32H、Orn1-Hβ、Hγ + Orn3-Hβ、Hγ + Orn6-Hβ、Hγ + Ile2-Hβ、Hγ + D-Val7-Hβ + Leu5-Hβ、Hγ + Leu8-Hβ、Hγ + Lipid-Hβ、Hγ、Hδ、Hε、Hζ)、0.93 - 0.58 (m、27H、Ile2-Hγ、Hδ + Leu5-Hδ + D-Val7-Hγ + Leu8-Hδ + Lipid-CH3) ppm. HRMS-ESI (m/z) C581041311 (M+H)+ に関する計算値:1158.7979;実測値:1158.7989
【0097】
C10-Pat (12)
1H NMR (400 MHz、D2O) δ 7.36 - 7.04 (m、5H、D-Phe4-ArH)、4.56 (t、J = 7.8 Hz、1H、D-Phe4-Hα)、4.38 - 4.10 (m、6H、Dab1-Hα + Dab3-Hα + Dab6-Hα +Leu5-Hα + Leu8-Hα + Ser9-Hα)、4.02 - 3.95 (m、2H、Ile2-Hα + D-Val7-Hα)、3.82 - 3.68 (m、2H、Ser9-Hβ)、3.10 - 2.81 (m、6H、Dab1-Hγ + Dab3-Hγ + Dab6-Hγ)、2.73 - 2.47 (m、2H、D-Phe4-Hβ)、2.16 (t、J = 7.3 Hz、2H、Lipid-Hα)、2.12 - 1.64 (m、8H、Dab1-Hβ + Dab3-Hβ + Dab6-Hβ + Ile2-Hβ + D-Val7-Hβ)、1.62 - 0.95 (m、22H、Leu5-Hβ、Hγ + Leu8-Hβ、Hγ + Lipid-Hβ、Hγ、Hδ、Hε、Hζ、Hη、Hθ + Ile2-Hγ)、0.87 - 0.60 (m、27H、Ile2-Hγ、Hδ + Leu5-Hδ + D-Val7-Hγ + Leu8-Hδ + Lipid-CH3) ppm. HRMS-ESI (m/z) C571021311 (M+H)+ に関する計算値:1144.7823;実測値:1144.7844
【0098】
C10Thr3Leu4-Pat (13)
1H NMR (400 MHz、D2O) δ 4.40 - 3.95 (m、10H、Dab1-Hα + Ile2-Hα + Thr3-Hα + D-Leu4-Hα + Leu5-Hα + Dab6-Hα + D-Val7-Hα+ Leu8-Hα + Ser9-Hα + Thr3-Hβ)、3.80 - 3.64 (m、2H、Ser9-Hβ)、3.02 - 2.84 (m、4H、Dab1-Hγ + Dab6-Hγ)、2.16 (t、J = 7.3 Hz、2H、Lipid-Hα)、2.11 - 1.71 (m、6H、Dab1-Hβ + Dab6-Hβ + Ile2-Hβ + D-Val7-Hβ)、1.62 - 0.98 (m、28H、D-Leu4-Hβ、Hγ + Leu5-Hβ、Hγ + Leu8-Hβ、Hγ + Lipid-Hβ、Hγ、Hδ、Hε、Hζ、Hη、Hθ + Ile2-Hγ + Thr3-Hγ)、0.89 - 0.67 (m、33H、Ile2-Hγ、Hδ + D-Leu4-Hδ + Leu5-Hδ + D-Val7-Hγ + Leu8-Hδ + Lipid-CH3) ppm. HRMS-ESI (m/z) C541031212 (M+H)+ に関する計算値:1111.7819;実測値:1111.7803
【0099】
ベンゾイル-Pat (14)
1H NMR (400 MHz、D2O) δ 7.73 - 7.34 (m、5H、Benzoyl-ArH)、7.32 - 7.05 (m、5H、D-Phe4-ArH)、4.58 - 4.46 (m、2H、D-Phe4-Hα + Dab1-Hα)、4.35 - 4.06 (m、5H、Dab3-Hα + Dab6-Hα + Leu5-Hα + Leu8-Hα + Ser9-Hα)、4.02 - 3.95 (m、2H、Ile2-Hα + D-Val7-Hα)、3.80 - 3.65 (m、2H、Ser9-Hβ)、3.12 - 2.80 (m、6H、Dab1-Hγ + Dab3-Hγ + Dab6-Hγ)、2.78 - 2.49 (m、2H、D-Phe4-Hβ)、2.25 - 1.63 (m、8H、Dab1-Hβ + Dab3-Hβ + Dab6-Hβ + Ile2-Hβ + D-Val7-Hβ)、1.62 - 0.93 (m、8H、Leu5-Hβ、Hγ + Leu8-Hβ、Hγ + Ile2-Hγ)、0.91 - 0.59 (m、24H、Ile2-Hγ、Hδ + Leu5-Hδ + D-Val7-Hγ + Leu8-Hδ) ppm. HRMS-ESI (m/z) C54881311 (M+H)+ に関する計算値:1094.6727;実測値:1094.6746
【0100】
Cbz-Pat (15)
1H NMR (400 MHz、D2O) δ 7.43 - 7.02 (m、10H、D-Phe4-ArH + Cbz-ArH)、5.00 (s、2H、Cbz-CH2)、4.54 (t、J = 7.9 Hz、1H、D-Phe4-Hα)、4.39 - 3.98 (m、8H、Dab1-Hα + Dab3-Hα + Dab6-Hα + Leu5-Hα + Leu8-Hα + Ser9-Hα + Ile2-Hα + D-Val7-Hα)、3.80 - 3.65 (m、2H、Ser9-Hβ)、3.11 - 2.81 (m、6H、Dab1-Hγ + Dab3-Hγ + Dab6-Hγ)、2.76 - 2.47 (m、2H、D-Phe4-Hβ)、2.15 - 1.68 (m、8H、Dab1-Hβ + Dab3-Hβ + Dab6-Hβ + Ile2-Hβ + D-Val7-Hβ)、1.61 - 0.97 (m、8H、Leu5-Hβ、Hγ + Leu8-Hβ、Hγ + Ile2-Hγ)、0.83 - 0.56 (m、24H、Ile2-Hγ、Hδ + Leu5-Hδ + D-Val7-Hγ + Leu8-Hδ) ppm. HRMS-ESI (m/z) C55901312 (M+H)+ に関する計算値:1124.6833;実測値:1124.6811
【0101】
Cha-Pat (16)
1H NMR (400 MHz、D2O) δ 7.37 - 7.07 (m、5H、D-Phe4-ArH)、4.60 - 4.55 (m、1H、D-Phe4-Hα)、4.50 - 4.07 (m、6H、Dab1-Hα、Dab3-Hα + Dab6-Hα + Leu5-Hα + Leu8-Hα + Ser9-Hα)、4.03 - 3.92 (m、3H、Ile2-Hα + D-Val7-Hα + Cha-Hα)、3.77 - 3.70 (m、2H、Ser9-Hβ)、3.20 - 2.78 (m、6H、Dab1-Hγ + Dab3-Hγ + Dab6-Hγ)、2.73 - 2.39 (m、2H、D-Phe4-Hβ)、2.23 - 1.64 (m、8H、Dab1-Hβ + Dab3-Hβ + Dab6-Hβ + Ile2-Hβ + D-Val7-Hβ)、1.59 - 0.94 (m、21H、Leu5-Hβ、Hγ + Leu8-Hβ、Hγ + Ile2-Hγ、Cha-Hβ、Hγ、Hδ、Hε、Hζ)、0.90 - 0.53 (m、24H、Ile2-Hγ、Hδ + Leu5-Hδ + D-Val7-Hγ + Leu8-Hδ) ppm. HRMS-ESI (m/z) C56991411 (M+H)+ に関する計算値:1143.7619;実測値:1143.7636
【0102】
ChaPhe2Leu7Phe8-Pat (17)
1H NMR (400 MHz、D2O) δ 7.35 - 6.95 (m、15H、Phe2-ArH + D-Phe4-ArH + Phe8-ArH)、4.62 - 4.00 (m、9H、Phe2-Hα + D-Phe4-Hα + Phe8-Hα + Dab1-Hα + Dab3-Hα + Dab6-Hα + Leu5-Hα + D-Leu7-Hα + Ser9-Hα)、3.89 - 3.81 (m、1H、Cha-Hα)、3.79 - 3.65 (m、2H、Ser9-Hβ)、3.19 - 2.72 (m、10H、Dab1-Hγ + Dab3-Hγ + Dab6-Hγ + Phe2-Hβ + Phe8-Hβ)、2.65 - 2.40 (m、2H、D-Phe4-Hβ)、2.10 - 1.61 (m、6H、Dab1-Hβ + Dab3-Hβ + Dab6-Hβ)、1.60 - 0.73 (m、19H、Leu5-Hβ、Hγ + D-Leu7-Hβ、Hγ + Cha-Hβ、Hγ、Hδ、Hε、Hζ)、0.70 - 0.55 (m、12H、Leu5-Hδ + D-Leu7-Hδ) ppm. HRMS-ESI (m/z) C63971411 (M+H)+ に関する計算値:1225.7462;実測値:1225.7471
【0103】
抗菌薬感受性試験
最小発育阻止濃度(MIC)
パエニペプチン類似体の最小発育阻止濃度(MIC)を、微量液体希釈法(Wirker、M.A.Methods for Dilution Antimicrobial Susceptibility Tests for Bacteria that Grow Aerobically:承認規格M07-A8;Clinical and Laboratory Standards Institute、Wayne、PA、2009)を使用して決定した。7つの参照菌株(アシネトバクター・バウマンニ ATCC19606、大腸菌(Escherichia coli)ATCC25922、クレブシエラ・ニューモニエ ATCC13883、シュードモナス・エルジノーサ ATCC27853、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)ATCC19434、スタフィロコッカス・アウレウス ATCC29213及びメチシリン耐性のS.アウレウス ATCC43300)に、MIC試験を施した。
【0104】
パエニペプチン類似体をトリプシンソイブロス(TSB;Becton Dickinson)中で2倍希釈し、清澄なUV-無菌化96ウェルのマイクロタイタープレート(NBS、Corning Inc.、Corning、NY)中で、およそ1.5×105コロニー形成単位(CFU)/mLを含有する、TSB中の同体積の細菌懸濁剤と混合した。合計体積は100μLであり、最終パエニペプチン濃度は0.5~32μg/mLの範囲であった。マイクロタイタープレートを、37℃で18~20時間インキュベートした。各菌株に関するMICは、インキュベーション後に、細菌細胞の視認できる成長がもたらされない、各パエニペプチン類似体の最低濃度と定義された。
【0105】
これらの17のパエニペプチン類似体の抗細菌活性を、4つのグラム陰性及び3つのグラム陽性の菌株に対して、各菌株に関する最小発育阻止濃度(MIC)の決定に基づいて決定した。試験細菌種に対する全てのパエニペプチン類似体のMIC値を表3に列記する。抗細菌活性は、類似体1、3、8及び12において脂肪酸鎖の長さがC6からC10まで増加すると共に、増加した。脂質鎖がC8より短い類似体1及び3は、類似体8より有意に活性が低かった。逆に、C10脂質尾部を含有する類似体12は、抗細菌活性に注目すべき増加を示した。脂質鎖をベンゾイル又はベンジルオキシカルボニル基で置き換えると(類似体14及び15)、抗菌活性は低下したが、類似体16中の3-シクロヘキシルアラニル置換基は、大腸菌及びP・エルジノーサに対するその活性を保持した(表3)。
【0106】
【表3】
【0107】
化合物8は、正電荷を持つ3個の2,4-ジアミノ酪酸(Dab)残基から成る。3個の全てのDab残基を、側鎖に追加の炭素を保有するオルニチン(Orn)により置き換えると(類似体11)、予期に反して抗細菌活性が消失した。正電荷を持つ残基の数の変化もまた抗菌活性に相当な効果を与えた。例えば、9位においてC末端SerをDabに変更すると(類似体9)、P・エルジノーサを除く全ての細菌種に関するMICに増加がもたらされた。同様に、1個の追加のDabを2位に加えると(類似体10)、又はDab電荷を3位で低減させると(類似体13)、ほとんど全ての抗細菌活性の消失がもたらされた。対照的に、疎水性の増加に関連する変化は、抗細菌活性の増加に関連した。例えば、類似体3及び4は、より疎水性の残基(Ile又はPhe)を2位に有し、同じ位置にVal残基を有する類似体2より強力であった。7位においてValをLeuにより置き換えても(類似体5)、また抗菌活性における増加を示した。類似体6、7、及び17における疎水性の更なる増加は、全ての試験細菌株に対する抗細菌活性を有意に向上させた(表3)。
【0108】
抗生物質耐性菌株に関する最小発育阻止濃度(MIC)
上記の参照菌株に加えて、9つのカルバペネム耐性単離株及び6つのポリミキシン耐性菌株(表4及び表5)の感受性を、FDA-CDC Antibiotic Resistance Bankからの臨床単離株を含み、選択されたパエニペプチン類似体17に関して試験した。各実験において1回の反復を伴う、少なくとも3回の独立した実験を行った。
【0109】
パエニペプチン類似体17は、合理的設計された17の類似体の中で最も活性のある化合物である。そのため、薬物耐性のグラム陰性菌に対するそのin vitroの有効性に関して、この類似体を更に評価した。パエニペプチン類似体17は、A・バウマンニ、エンテロバクター・クロアカ(Enterobacter cloacae)、大腸菌、K・ニューモニエ、及びP・エルジノーサを含み、FDA-CDC Antibiotic Resistance Bankからの9つのカルバペネム耐性臨床単離株に対して0.5~2μg/mlのMICを伴う強力な活性を示した(表4)。加えて、類似体17は、ポリミキシン耐性遺伝子mcr-1を保有する菌株を含む、ポリミキシン耐性の大腸菌及びK・ニューモニエ菌株に対して活性であった(表5)。
【0110】
【表4】

a様々な種類のβ-ラクタマーゼの産生
【0111】
【表5】

a細菌株は、FDA-CDC Antibiotic-Resistance Bankから得られ、大腸菌AR 0494は、プラスミドにコードされているポリミキシン耐性遺伝子、mcr-1を保有する;b菌株は、大腸菌 ATCC25922の派生体である;c菌株は、K・ニューモニエ ATCC13883の派生体である。
【0112】
最小殺菌濃度(MBC)
パエニペプチン類似体の最小殺菌濃度(MBC)を、MIC試験の終点において、MIC試験に使用された96ウェルマイクロタイタープレートから、50μLの細胞懸濁液のアリコートを継代培養することにより決定した。視認できる成長がない、各抗菌薬濃度からの残存細胞を、トリプシンソイ寒天(TSA)にプレーティングすることにより数え上げた。MBCは、最初の接種材料に対して、生存細菌細胞の数において少なくとも99.9%の低減に導く、抗菌剤の最低濃度と定義された。各実験において1回の反復を伴う、3回の独立した実験を行った。
【0113】
強力で且つ広範な抗細菌活性を示す6つのパエニペプチン類似体(5、6、7、8、12、及び17)を選択し、同じ4つのグラム陰性及び3つのグラム陽性の菌株に対するそれらの最小殺菌活性(MBC)を決定した。類似体9及び16は、シュードモナスに対して狭域活性を示し;従って、これらの類似体のMBCは、P・エルジノーサに対してのみ決定された。選択されたパエニペプチン類似体のMBC値を表6に列記する。リード化合物(類似体8)と比較して、3つの新規なパエニペプチン類似体(7、12、及び17)は、大部分の試験細菌株に対して、それらの殺菌活性において2~8倍の増加を示した(表6)。
【0114】
【表6】
【0115】
時間死滅アッセイ
類似体17の時間-死滅動態を、3つの濃度(8、16及び32μg/ml)において、参照菌株P・エルジノーサ ATCC27853及びS.アウレウス ATCC29213を使用して決定した。抗菌薬処置後の残存細胞を、0、2、4、6及び24時間において、TSAにプレーティングすることにより数え上げた。各実験において1回の反復を伴う、3回の独立した実験を行った
時間-死滅アッセイを、P・エルジノーサ ATCC27853及びS.アウレウス ATCC29213の両方に対して最も効果的な類似体である、類似体17を用いて実施した。これは、3つの異なる濃度(8、16及び32μg/ml)において行われた。類似体17は、両方の病原菌に対して濃度依存性の殺菌効果を示した。例えば、生存P・エルジノーサ細胞の数は、それぞれ32μg/ml及び16μg/mlにおける類似体17に曝露された場合、2時間内に5.1 log及び3.7 log低減し、いずれの濃度においても24時間の曝露後に、生存細胞は検出されなかった。8μg/mlにおける類似体17は、2時間内に生存P・エルジノーサ細胞の2.2 logの低減をもたらしたが、有意な細菌再成長が24時間で観察された(図1A)。類似体17が、生存S.アウレウス細胞の数における同様の低減を達成するには、より長い時間がかかった。詳細には、32μg/ml及び16μg/mlにおける類似体17への曝露により、生存S.アウレウス細胞の数が、それぞれ5.4 log及び3.1 log低減したが、4時間後のみであった。S.アウレウス細胞が類似体17に8μg/mlにおいて曝露された場合もまた、S.アウレウスの再成長が観察された(図1B)。
【0116】
抗細菌活性及び安定性に対するヒト血清の影響
選択されたパエニペプチン類似体の抗細菌活性に対するヒト血清の影響を、微生物培地をヒト血清(MP Biomedicals、Solon、OH)により置き換えたことを除いて、上述のMIC決定に使用されたものと同様の手順を使用して決定した。パエニペプチン類似体を、100%のヒト血清中で2倍希釈し、およそ1.5×105CFU/mLの大腸菌 ATCC25922又はS.アウレウス ATCC29213を含有する同体積の90%血清と混合した。最終のパエニペプチン濃度は、95%血清中で0.5~64μg/mLの範囲であった。次に、血清存在下でのMICを上述のように試験した。
【0117】
ヒト血清中のペプチドの安定性を決定するために、パエニペプチン類似体を、100%のヒト血清中に64μg/mlの最終濃度まで添加した。この混合物を37℃でインキュベートし、試料を0、6、12及び24時間に取り出した。処理したパエニペプチン類似体を、100%のヒト血清中で2倍希釈し、MIC決定のためにTSB中の同体積の大腸菌 ATCC25922細胞(およそ1.5×105CFU/mL)と混合した。ヒト血清中でのインキュベーション後の残留抗細菌活性を、非処置対照と比較した。
【0118】
ヒト血清は、P・エルジノーサ ATCC27853及びK・ニューモニエ ATCC13883の成長を阻害し(データは示さず);そのため、95%血清中で成長した他の参照菌株(大腸菌 ATCC25922及びS.アウレウス ATCC29213)を使用して、ヒト血清の存在下でのパエニペプチン類似体の抗細菌有効性を試験した。ヒト血清中で、類似体9及び16は、大腸菌に対して強力な活性を示し、一方、類似体9は、S.アウレウスに対して活性にわずかな増加を示した(表7)。しかしながら、他の類似体は、ヒト血清の存在下で抗菌活性の低減を示した。例えば、類似体17は、大腸菌及びS.アウレウスの両方に対するMICに8~16倍の増加を示し、これはその活性の88~94%の低減に相当する。ヒト血清タンパク質は、ある特定のリポペプチド抗生物質と結合することができ、その抗細菌活性を制限すると一般に考えられている。例えば、リポペプチドMX-2401のS.アウレウス ATCC29213に対するMICは、微生物培地における2μg/mlから、95%マウス血清における128μg/mlまで増加し;これは98.9%のタンパク質結合に相当する。しかしながら、タンパク質結合の程度を使用して、抗生物質の最終的な治療性能を正確に予測することはできない。例えば、ダプトマイシンは、血漿タンパク質と高度に結合する(94%)リポペプチドであるが、メチシリン耐性のS.アウレウスにより引き起こされる感染症を治療するために近年承認された効果的な薬物である。
【0119】
95%のヒト血清の存在下で試験した、8つのパエニペプチン類似体の中で、4つの類似体(8、9、16及び17)は、大腸菌に対して相対的に高い活性を示し(表7)、従ってこれらの4つの類似体を、ヒト血清中で37℃におけるそれらの安定性に関して更に試験した。類似体16は、血清中での6時間のインキュベーション後、そのMICに1~2μg/mlから32μg/ml超まで増加を示し、これは、類似体16がヒト血清中で37℃において安定ではない可能性があることを示している(表8)。詳細には、類似体16は、ヒト血清中で大腸菌に対して相対的に低いMIC(2μg/ml)を示したが(表7)、血清中で37℃におけるインキュベーション時間を延長した後、その有効性を消失した。これは、類似体16は、細菌細胞を急速に死滅させ得るが、血清成分により経時的に不活性化されることを示唆している。重要なことに、他の3つの試験類似体(8、9、及び17)は、ヒト血清中で37℃において24時間までインキュベートした後、抗細菌活性にほとんど減少を示さなかった(表8)。類似体8は、N末端修飾において類似体16とは異なる。これに基づいて、類似体8中のN末端脂質鎖が、ヒト血清中でのその高安定性に関連し得る。しかしながら、類似体16中の疎水性基(3-シクロヘキシルアラニル)は、血清中で不活性化されることから保護することはなかった。類似体16及び17は、同じN末端修飾を共有しているが、2、7、及び8位における3つのアミノ酸がより疎水性の残基で置換された場合、類似体17はより安定となった。
【0120】
【表7】
【0121】
【表8】

a大腸菌 ATCC25922に対するMICを決定した。
【0122】
溶血活性
溶血活性を、既に記載した96ウェルプレート中で、フィブリン除去したウサギ血液を使用して評価した。赤血球(RBC)を溶解することが可能な、非イオン性界面活性剤Triton X-100を、正の対照として0.1%で使用した。簡潔に言えば、ウサギ血液(Hardy Diagnostics、Santa Maria、CA)を、リン酸緩衝食塩水(PBS;pH7.2)で1:19比(体積/体積)に希釈し、RBCを洗浄して1,000×gにおいて4℃で5分間、遠心分離に4回かけることにより遊離ヘモグロビンを除去した。150μLのパエニペプチン類似体の2倍希釈物を16~128μg/mLの最終濃度で用いて、洗浄RBCのアリコート(50μL)を37℃で30分間、マイクロタイタープレート(NBS、Corning Inc.)中でインキュベートした。インキュベーション後、処置したRBCを、繰り返しピペッティングすることにより静かに混合した。細胞懸濁液のアリコート(20μL)を、新しい96ウェルプレート中で200μLのPBSと混合し、2,204×gで10分間遠心分離にかけた。Cell Imaging Multimode Reader(Cytation 3、BioTek; Winooski、VT)を使用して、415nmにおける吸光度を測定するために、上清を新しい96ウェルプレートに移した。各パエニペプチン類似体に曝露した後に観察された溶血百分率をX-100に対して算出した。各実験において1回の反復を伴う、少なくとも3回の独立した実験を行った。
【0123】
N末端脂質鎖の改変は、パエニペプチン溶血活性に対して実質的な影響をもたらした。類似体1、3、8、及び12の中で、ウサギ赤血球に対する溶血活性は、脂質鎖長がC6からC10まで増加するにつれて増加した。詳細には、C6及びC7脂質鎖をそれぞれ伴う類似体1及び3は、128μg/mLにおいて溶血をほとんど示さず、一方、同じ濃度において、C10脂質鎖を保有する類似体12は、強い溶血活性を示した(表9)。重要なことに、これらの同じ傾向は、相対的抗細菌活性に反映され、これらもまた鎖長の増加と共に増加した。対照的に、類似体14、15、及び16において、脂肪酸鎖を疎水性基で置き換えると、その溶血活性は大きく低減した。これらの結果は、脂肪酸鎖を芳香族基で置き換えることにより、リポペプチドポリミキシンの毒性が低減するというこれまでの報告と一致している。しかしながら、上述のように、類似体14及び15において脂肪酸鎖を疎水性基で置き換えることによって、また抗細菌活性の低減をもたらした。
【0124】
類似体9及び16は、P・エルジノーサに対するそれらの活性を保持し、128μg/mLにおいて非溶血性であり(表9)、従ってこれらの2つのパエニペプチン派生体は、狭域抗菌スペクトル性の抗シュードモナス剤として更に開発され得る。C7パエニペプチン派生体(類似体2~7)の中で、より疎水性のアミノ酸がペプチド鎖に導入された場合、溶血活性は増加した。1つの例外は類似体6であり、類似体5より疎水性であるが溶血性はかなり低かった。化合物8と比較して、類似体17は、A・バウマンニ及びK・ニューモニエに対する抗細菌活性において少なくとも4倍の改善を示したが(表3)、溶血活性における37%の増加という損失を伴った(表9)。
【0125】
【表9】

a溶血百分率を、正の対照Triton X-100に対して算出した。
【0126】
細胞傷害性
ヒト腎臓細胞株(HEK 293)に対するパエニペプチン類似体の細胞傷害性を、MTTアッセイ(Huang E、Yousef AE.2014 Paenibacterin,a novel broad-spectrum lipopeptide,neutralises endotoxins and promotes survival in a murine model of Pseudomonas aeruginosa-induced sepsis.Int J Antimicrob Agents 44:74~77)を使用して決定した。細胞生存率を、30~105μg/mlの間の濃度におけるリポペプチド添加の24時間後に測定した。ヒト胚腎臓細胞(HEK 293)の生存率は、パエニペプチン濃度の増加と共に低下した。105μg/mlにおけるパエニペプチン類似体1及び15の存在下での、HEK293細胞の生存率は、それぞれ、61%及び67%であった(表10)。パエニペプチン類似体1及び15の相対的に低い細胞傷害性は、赤血球に対するそれらの低溶血活性と相関していた。
【0127】
【表10】
【0128】
抗バイオフィルム活性
確立されたS.アウレウス又はP・エルジノーサのカテーテル-関連バイオフィルムに対するパエニペプチン類似体17の効果を、既に記載したようにわずかな修正を伴ってin vitroで決定した18。簡潔に言えば、フッ素化エチレンプロピレンカテーテル(14ゲージ;Introcan 安全カテーテル;B.Braun、Bethlehem、PA)の1-cmのセグメント(n=6)を、24ウェルのマイクロタイタープレート(超低付着表面;Corning Inc.)のウェル中の、2mLのバイオフィルム培地(0.5%のグルコース及び3.0%のNaClを補充したTSB)に入れる前に、20%のヒト血漿で終夜事前コーティングした。各ウェルに、メチシリン耐性のS.アウレウス菌株LAC又はP・エルジノーサ ATCC27853を、0.05のOD600nmまで接種した。37℃における24時間のインキュベーション後、確立されたバイオフィルムを伴うカテーテルを、S.アウレウスLAC菌株に関するそのMICの5、10、及び20倍、又はP・エルジノーサ ATCC27853に関するそのMICの10、20、40、及び80倍に相当する濃度におけるパエニペプチン類似体17を伴うか又は伴わず、新しく作製されたバイオフィルム培地に移した。LAC及びP・エルジノーサ ATCC27853に対する類似体17のMIC値は、それぞれ、8μg/mL及び1μg/mlであった。各菌株でコロニー化され且つ各濃度に曝露された6つのカテーテルを、1日間隔で取り出し、同じ濃度の類似体17を含有する新鮮培地に移した。72時間の曝露後、カテーテルをPBSで洗い、続いて超音波処理する(S.アウレウスに関して)か、又は強くボルテックスして(P・エルジノーサに関して)、定量的に粘着性細菌を回収した。生存しているS.アウレウス又はP・エルジノーサ細胞を、連続希釈物をTSAにプレーティングすることにより数え上げた。セフタロリン及びダプトマイシンを、各抗生物質に関するMICの20倍の濃度で、S.アウレウス菌株LACを用いて形成されたバイオフィルムの状況における正の対照として使用した。ポリミキシンBを、そのMICの20倍の濃度で(10μg/ml)、P・エルジノーサ ATCC27853により形成されたバイオフィルムの状況における正の対照として使用した。
【0129】
バイオフィルム中の細菌細胞は、抗生物質処置に対して浮遊性細胞より耐性であり、従って、確立されたバイオフィルムの状況において最大有効性を有するこれらの抗生物質を同定することが重要となる。これまでの研究により、ダプトマイシン及びセフタロリンは、この状況において多くの他の抗生物質より活性であることが実証された。この理由から、確立されたバイオフィルムの状況における類似体17の評価は、これらの2つの抗生物質に対する比較に基づいた。図2Aに示されるように、類似体17の活性は、メチシリン耐性のS.アウレウス菌株LACにより形成された、確立されたカテーテル-関連バイオフィルムの状況においてin vitroで試験した場合、これらの抗生物質の両方に匹敵するものであった。詳細には、40μg/mL(MICの5倍)又は160μg/mL(MICの20倍)における類似体17を用いた処置により、生存バイオフィルム-関連S.アウレウス細胞の、それぞれ、3 log及び5 logの低減がもたらされた。その上、そのMICの20倍に等しい濃度において、類似体17への曝露により、6つのカテーテルの生存細菌の3つが完全に排除され(50%)、一方、そのMICの同じ倍数におけるダプトマイシンへの曝露により、6つのカテーテルの1つのみが排除され(17%)、等しい濃度セフタロリンによっては1つも排除されなかった。S.アウレウス菌株LACの浮遊性細胞を使用して検討評価した場合、最低MICを有した類似体12は、確立されたカテーテル-関連バイオフィルムの状況において、活性を持たなかった(データは示さず)。類似体17もまた、P・エルジノーサ ATCC27853により形成されたバイオフィルムに対して、同じin vitroでのカテーテル-関連バイオフィルムモデルを使用して試験した。MICの40倍(40μg/ml)における類似体17への曝露後、確立されたバイオフィルム中の生存P・エルジノーサ細胞の数において2.6 logの低減が観察された(図2B)。
【0130】
リファンピシン及びクラリスロマイシンに対するグラム陰性病原菌の増強
アシネトバクター及びクレブシエラを含むグラム陰性菌は、疎水性抗生物質リファンピシンに対して本質的に耐性である。A・バウマンニ ATCC19606及びK・ニューモニエATCC13883に対するリファンピシンのMICは、16μg/mLであった(表11)。単独で使用した場合に、アシネトバクター及びクレブシエラに対する直接的抗細菌活性を欠いている10のパエニペプチン類似体を、リファンピシンとの可能性のある相乗効果に関して調査した。パエニペプチン類似体13は、リファンピシンとの相乗作用を示さなかった唯一の試験化合物であった。これは、ペプチドの3位において、正電荷を持つDabをThrと置き換えたことによると考えられる。この置換により、ペプチドの全般的電荷が低減し、従って、グラム陰性菌中のLPSとの相互作用を減少させ得る。従って、類似体13は、リファンピシンのグラム陰性病原菌内への侵入を促進することができない可能性がある。9つの類似体は、リファンピシンと様々な程度の相乗効果を示した。4μg/mLで試験した場合、6つのパエニペプチン類似体(1、3、9、14、15及び16)は、アシネトバクター及びクレブシエラの両方に対するリファンピシンのMICを、16μg/mLから、0.00098μg/mLと0.0078μg/mLの間未満の範囲まで減少させ、これは、リファンピシンの抗細菌活性における2,048~8,192倍の増加に相当する(表11)。
【0131】
【表11】
【0132】
リファンピシンと有望な相乗作用を示した2つのパエニペプチン類似体(9及び16)を更なる試験用に選択し、異なる作用機序を有する4つの追加の抗生物質と組み合わせた。詳細には、クラリスロマイシン及びエリスロマイシンはタンパク質合成を遮断し、一方、バンコマイシン及びアンピシリンは細胞壁生合成を阻害する。これらの4つの抗生物質は、単独で試験した場合、グラム陰性病原菌に対して効果的ではなかった(MIC≧32μg/ml)。4μg/mlにおける類似体9及び16と組み合わせた場合、クラリスロマイシンは、A・バウマンニ ATCC19606及びK・ニューモニエ ATCC13883に対するその活性に2,048~8,192倍の増加を示した(表12)。4μg/mlにおける類似体9及び16の存在下で、エリスロマイシンは、これらの2つの病原菌に対して中等度の増加を示した(64~512倍)。興味深いことに、類似体9及び16は、バンコマイシンの活性をA・バウマンニに対しては増強したが、K・ニューモニエに対しては増強しなかった。類似体9又は16とアンピシリンとの間に相乗効果は観察されなかった(表12)。
【0133】
【表12】
【0134】
パエニペプチン類似体と、リポ多糖及びリポテイコ酸との相互作用
細胞表面上でのパエニペプチンの最初の結合標的を特定するために、パエニペプチン類似体17の殺菌活性に対する影響に関して、精製LPS又はLTAを調査した。LPSを用いた研究用に、P・エルジノーサ ATCC27853を、およそ106CFU/mL含有するようにTSBで希釈した。大腸菌O111:B4(Sigma)から精製したLPSを、細胞懸濁液に、10、25、50、又は100μg/mLの最終濃度で添加した。これに続いて、パエニペプチン類似体17を16μg/mLの最終濃度まで添加した。この混合物を、37℃において200rpmで撹拌しながら、60分間インキュベートした。残存細胞を、TSAにプレーティングすることにより定量化した。各実験において1回の反復を伴う、3回の独立した実験を行った。LTAを用いた実験用に、S.アウレウス ATCC29213を約106CFU/mLまで希釈し、S.アウレウスから単離されたLTA(Sigma)と、10、25、50、又は100μg/mLの最終濃度で混合した。類似体17を32μg/mLの最終濃度で添加し、37℃において200rpmで撹拌しながら60分間インキュベートした後、残存S.アウレウス細胞を、TSAにプレーティングすることにより数え上げた。各実験において1回の反復を伴う、4回の独立した実験を行った。
【0135】
精製LPSは、パエニペプチン類似体17のP・エルジノーサ ATCC27853に対する抗菌活性に対して有意な影響を及ぼした。高濃度(100μg/ml)における精製LPSの添加により、17の殺菌活性は無力化された(図3A)。同様の傾向が、類似体7、8、9、及び12に関して観察された(データは示さず)。これらの結果は、パエニペプチンが、グラム陰性菌の外膜からのLPSに関して高親和性を有することを示唆している。従って、グラム陰性細胞表面上のLPSが、パエニペプチンの最初の結合標的であると考えられる。グラム陽性菌では、負電荷を持つリポテイコ酸(LTA)が細胞表面上の重要な成分である。図3Bに示されるように、100μg/mLにおいて、精製LTAは類似体17のS.アウレウス ATCC29213に対する抗細菌活性を有意に低減させた。50μg/mlにおけるLTAは、いくらかの阻害を示したが、その効果は、LTAを伴わない対照と統計的に異なるものではなかった。これらの結果は、グラム陽性菌中のLTAもまた、おそらく静電気的相互作用を通して、パエニペプチンに関するドッキング分子として役立ち得ることを示唆している。これは、負電荷を持つLTAが、ナイシン及びブレビバシリン(brevibacillin)を含む、いくつかのカチオン性ペプチドの最初の標的と報告された観察と一致している。
【0136】
細胞膜完全性アッセイ
パエニペプチン処置後の膜電位の変動を、蛍光プローブ3,3’-ジプロピルチアジカルボシアニンヨウ化物[DiSC3(5);Invitrogen]を使用して決定した。DiSC3(5)は、分極細胞膜中に蓄積し、自己消光する膜電位感受性色素である。各アッセイに関して、P・エルジノーサ ATCC27853又はS.アウレウス ATCC29213の終夜培養物をTSB中で1/100に希釈し、37℃において200rpmで撹拌しながら約5時間成長させた。インキュベーション後、細菌細胞を3,660×gにおいて4℃で10分間遠心分離にかけることにより収集し、5mMのグルコースを補充した5mMのHEPES緩衝剤(pH7.2、Sigma)(緩衝剤A)を使用して2回洗浄した。S.アウレウスの細胞を緩衝剤Aに再懸濁させ、一方、P・エルジノーサ細胞を緩衝剤B(0.2mMのEDTAを補充した緩衝剤A)に再懸濁させ、これはグラム陰性菌によるDiSC3(5)の取り込みを促進することで公知である。DiSC3(5)を、細胞懸濁液に0.5μMの最終濃度で添加し、続いて15分間室温でインキュベートした。インキュベーション後、KClを100mMの最終濃度で添加した。細胞懸濁液のアリコート(90μL)を組み合わせたDiSC3(5)と共に、黒色NBSマイクロプレート(Corning Inc.)のウェルに添加した。これに続いて、10μLのパエニペプチン類似体17を8~64μg/mLの最終濃度で添加した。膜脱分極及びDiSC3(5)プローブの細菌細胞からの放出による蛍光シグナルの増加を、Cell Imaging Multimode Reader(Cytation 3、BioTek)を使用して622nmの励起及び670nmの発光において記録した。各実験において1回の反復を伴う、3回の独立した実験を行った。
【0137】
カリウムイオン放出アッセイ
パエニペプチン処置した細菌細胞から漏出するカリウムイオンを、健康な細菌細胞に対して不透過性である、K+-感受性プローブ(PBFI;Invitrogen)を使用して測定した。S.アウレウスATCC29213及びP・エルジノーサ ATCC27853の細胞懸濁液を、緩衝剤A中で、細胞膜完全性アッセイで前述した手順と同じ手順を使用して調製した。細菌細胞のアリコート(90μL)を、黒色NBSマイクロプレートのウェルに分注した。PBFI K+-感受性プローブを、細胞懸濁液に2μMの最終濃度で添加した。これに続いて、10μLのパエニペプチン類似体17を8~64μg/mLの最終濃度で添加した。緩衝剤中のカリウムイオン濃度に対応する蛍光の変化を、Cell Imaging Multimode Reader(Cytation 3、BioTek)を使用して、346nmの励起波長及び505nmの発光波長で記録した。各実験において1回の反復を伴う、3回の独立した実験を行った。
【0138】
電位勾配がプロトン駆動力の主な要因である場合、細菌細胞は、細胞膜全体にわたりプロトン勾配を維持する。図4A~4Bに示されるように、16μg/mLにおけるパエニペプチン類似体17は、健康な分極細胞膜中にのみ蓄積するDiSC3(5)プローブの放出による蛍光の増加によって立証されるように、膜電位を脱分極させた。その上、32~64μg/mLにおける類似体17は、処置したP・エルジノーサ及びS.アウレウス細胞から分子内カリウムイオンを著しく放出した(図5A-5B)。従って、パエニペプチンの殺菌活性は、細胞膜の破壊及び損傷に起因すると考えられ得る。
【0139】
統計分析。
細菌不活性化アッセイに関して、各実験の最後の残存細胞数を分析した。蛍光測定に関して、類似体17を添加する前及び後の蛍光強度の変化を分析した。全てのデータに、分散分析(ANOVA)、続いて、SPSS Statistics(バージョン24;SPSS、Inc.、Chicago、IL、USA)を使用してテューキーの真の有意差(Tukey’s honest significant difference)(HSD)検定を施した。
【0140】
カルバペネム耐性病原菌に対するクラリスロマイシン及びリファンピシンの増強
上述の構造-活性相関(SAR)研究を通して、128μg/mlにおいて非溶血性である2つの類似体(1及び15)を同定した。パエニペプチン類似体1は、パエニペプチンC’と比較してより短い脂質鎖(C6)を保有し、一方、類似体15は、脂質鎖を疎水性のカルボキシベンジル基で置換している。これらの2つの類似体は、2つの参照菌株、アシネトバクター・バウマンニ ATCC19606及びクレブシエラ・ニューモニエ ATCC13883に対して、リファンピシンを増強した。パエニペプチン類似体のカチオン性は、グラム陰性病原菌の外膜を破壊し得て、それは分子内薬物標的を攻撃する疎水性抗生物質の侵入を促進する。本研究では、我々はパエニペプチン類似体(1及び15)の細胞傷害性を評価することを目的とし、且つFDA-CDC Antimicrobial Resistance Isolate Bankからのアシネトバクター・バウマンニ及びクレブシエラ・ニューモニエを含む、10のカルバペネム耐性菌株に対する、クラリスロマイシン又はリファンピシンについての潜在的な増強を決定した。
【0141】
クラリスロマイシン(タンパク質合成阻害剤)、リファンピシン(RNA合成阻害剤)、ポリミキシンBノナペプチド、パエニペプチン類似体又はこれらの組み合わせの最小発育阻止濃度(MIC)を、微量液体希釈法を使用して、10のカルバペネム耐性菌株に対して決定した。パエニペプチン類似体1又は15は単独で、AR0037、AR0052、AR0063、及びAR0070などの特定のA・バウマンニ単離物に対して阻害活性を示し、これはまたリファンピシンにも感受性が高かった(表13)。これらの単離物の感受性増加は、A・バウマンニに高率で菌株依存性であり得て;5つのK・ニューモニエ試験菌株はどれも、パエニペプチンにもリファンピシンにも感受性ではなかった。パエニペプチン1及び15は、細胞傷害性アッセイに関する組織培養実験に使用された、10%のウシ胎仔血清(FBS)の存在下で同様のMICを示した。ポリミキシンBノナペプチドは、抗生物質増強薬として公知であり、単独で使用した場合、10全ての試験菌株に対して効果的ではなかった(MIC>32μg/ml)(表13)。表14に示されるように、ポリミキシンBノナペプチドとクラリスロマイシン又はリファンピシンとの組み合わせは、パエニペプチン類似体と比較すると、中等度の増強効果を示した。対照的に、パエニペプチン類似体は、クラリスロマイシン及びリファンピシンの抗細菌活性を劇的に増加させた。例えば、4μg/mLにおけるパエニペプチン類似体1及び15は、クラリスロマイシンのA・バウマンニFDA-CDC AR 0037に対するMICを、それぞれ、16μg/mlから0.0313及び0.0019μg/mlまで減少させ、これはその抗生物質活性における512~8192倍の増加に相当する(表14)。これらの結果は、パエニペプチン類似体が、抗生物質感受性の参照菌株に対する抗生物質の有効性を増加させたという我々の前述の所見と一致した。
【0142】
【表13】
【0143】
【表14】
【0144】
時間-死滅動態アッセイを使用して、パエニペプチン類似体存在下での、クラリスロマイシン又はリファンピシンの静菌活性又は殺菌活性を決定した。パエニペプチン類似体、クラリスロマイシン、及びリファムピンを、時間-死滅動態アッセイにおいて治療上適切な濃度で使用した。細菌生存数を、抗菌薬処置の0、2、4、6、及び24時間後に決定した。24時間のエンドポイントにおける細菌残存数に、分散分析(ANOVA)、続いて、SPSS Statistics(バージョン24;SPSS、Inc.、Chicago、IL、USA)を使用してテューキーの真の有意差(HSD)検定を施した。図6Aに示されるように、単独で使用した場合、4μg/mlにおけるパエニペプチン類似体及び1μg/mlにおけるクラリスロマイシン又はリファンピシンは、トリプシンソイブロス中で37℃において、A・バウマンニFDA-CDC AR 0063の成長を阻害せず;細菌集団は、24時間内に2.1~3.0 log増加した。逆に、細胞集団は、クラリスロマイシン又はリファンピシンと組み合わせたパエニペプチン類似体1又は15によって処置した場合、経時的に着実に低減した。併用処置は、24時間内に4.7~5.1 logの低減をもたらした。同様の傾向が、第2のカルバペネム耐性病原菌、K・ニューモニエFDA-CDC AR 0097に関して観察された(図6B)。パエニペプチン類似体、クラリスロマイシン又はリファンピシンは単独では、試験濃度においてK・ニューモニエFDA-CDC AR 0097に対して殺菌性ではなく;パエニペプチン類似体とクラリスロマイシンとの組み合わせは、細胞数を24時間内に2.1~2.5 log低減させ、一方、リファンピシンとの組み合わせは、24時間内にトリプシンソイブロス中で4.9 logの低減を生じた(図6B)。従って、クラリスロマイシン又はリファンピシンをプラスしたパエニペプチン類似体は、トリプシンソイブロス中でA・バウマンニ及びK・ニューモニエの両方に対して、どちらかの単一薬剤より有意に優れていた。
【0145】
パエニペプチン類似体の治療的可能性を更に試験するために、パエニペプチン単独又は他の抗生物質との組み合わせの時間-死滅動態アッセイを、in vitroで95%のヒト血清中で実施した。抗菌薬処置なしでは、A・バウマンニFDA-CDC AR 0063の集団は、24時間内に5.8 log~9.3 log増加した。4μg/mlにおけるリファンピシンは、24時間内に細胞集団の1.4 logの低減をもたらしたが、他の単一抗生物質処置は効果的ではなかった(図7A)。リファンピシン単独もまた、クラリスロマイシン及びパエニペプチン類似体1又は15の間の併用処置と比較した場合、同様の又はわずかに良好の活性を示した。その上、リファンピシンとパエニペプチン類似体1又は15との組み合わせは、細菌集団を2.7 log減少させ、これは、それぞれの単一薬剤処置より有意に良好であった。同様に、パエニペプチン類似体1及び15は、A・バウマンニFDA-CDC AR 0063に対してクラリスロマイシンを有意に増強し、24時間内に95%のヒト血清中で、それぞれ、1.3及び0.7 logの低減をもたらした(図7A)。
【0146】
ヒト血清は、K・ニューモニエFDA-CDC AR0097に対して静菌効果を示し;24にわたる細菌細胞数は最初の細菌集団を一度も越えなかった。また、ヒト血清が、参照菌株、K・ニューモニエ ATCC13883の成長を阻害したことも観察した(データは示さず)。同様に、他の研究者らは、特定のK・ニューモニエ菌株に対するヒト血清の阻害効果を報告した(7、8)。ヒト血清の存在は、パエニペプチン類似体1の殺菌有効性を向上させ、それは24時間内に4.2 logのK・ニューモニエ細胞を不活性化した(図7B)。類似体1とクラリスロマイシン又はリファンピシンとの組み合わせは、併用処置が、95%のヒト血清中での類似体1単独ほど統計的に良好でなかったけれども、24時間内に細菌集団における4.9 logの低減をもたらした。N末端において類似体1と異なるパエニペプチン類似体15は、ヒト血清中でK・ニューモニエFDA-CDC AR0097に対して、殺菌活性を示すこともクラリスロマイシンを増強することもなかった。しかしながら、類似体15をリファンピシンと組み合わせると、24時間内に4.6 logの低減を達成した(図7B)。従って、類似体15とリファンピシンとの間の組み合わせは、95%のヒト血清中でのK・ニューモニエに対するそれぞれの単一処置より有意に良好であった。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕線状のリポペプチドを含む抗菌性の組成物であって、前記リポペプチドが、親油性末端-R1とアミン末端-NR23の間に入る、配列番号:1~17のいずれか1つと少なくとも66%の配列同一性を有するペプチドを含み、
1は、置換されているか又は非置換の、分岐又は非分岐のC2~C20アルカノイルを含み、
2及びR3は、水素又はC1~C6アルキルから独立して選択される、組成物。
〔2〕(a)前記リポペプチドが、培地中の微生物に対して8.0μg/mL以下の最小発育阻止濃度を有するか;
(b)前記リポペプチドが、培地中の微生物に対して16.0μg/mL以下の最小殺菌濃度を有するか;
(c)前記リポペプチドが、128μg/mLのリポペプチド濃度において、50.0%以下の溶血百分率を有するか;
(d)前記リポペプチドが、105μg/mLのリポペプチド濃度において、50.0%以上の生存百分率を有するか;
(e)前記リポペプチドが、微生物に対する抗菌剤に関して128以上の感作因数を有するか;
(f)前記組成物が、表面上の生存微生物における少なくとも2.0 logの低減という抗バイオフィルム活性のための有効量の前記リポペプチドを有するか;又は
(g)これらの組み合わせ
である、前記〔1〕に記載の組成物。
〔3〕前記リポペプチドの最小発育阻止濃度が、培地中の微生物に対して8.0μg/mL以下である、前記〔2〕に記載の組成物。
〔4〕前記リポペプチドの最小殺菌濃度が、培地中の微生物に対して16.0μg/mL以下である、前記〔2〕に記載の組成物。
〔5〕前記リポペプチドの溶血百分率が、128μg/mLのリポペプチド濃度において50.0%以下である、前記〔2〕に記載の組成物。
〔6〕前記リポペプチドの生存百分率が、105μg/mLのリポペプチド濃度において50.0%以上である、前記〔2〕に記載の組成物。
〔7〕前記リポペプチドの感作因数が、微生物に対する抗菌剤に関して128以上である、前記〔2〕に記載の組成物。
〔8〕抗菌剤が、アンピシリン、クラリスロマイシン、エリスロマイシン、リファンピシン、及びバンコマイシンからなる群から選択される、前記〔7〕に記載の組成物。
〔9〕表面上の生存微生物における少なくとも2.0 logの低減という抗バイオフィルム活性のための有効量の前記リポペプチドを有する、前記〔2〕に記載の組成物。
〔10〕(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、及び(f)からなる群から選択される少なくとも2つの特性を有する、前記〔2〕に記載の組成物。
〔11〕前記微生物が、
(i)グラム陰性菌;
(ii)グラム陽性菌;
(iii)薬物耐性菌;又は
(iv)(i)及び(iii)又は(ii)及び(iii)の組み合わせ
である、前記〔2〕~〔10〕のいずれか一項に記載の組成物。
〔12〕前記微生物が、グラム陰性菌である、前記〔11〕に記載の組成物。
〔13〕前記グラム陰性菌が、大腸菌、A・バウマンニ、E・クロアカ、K・ニューモニエ、及びP・エルジノーサからなる群から選択される、前記〔12〕に記載の組成物。
〔14〕前記微生物が、グラム陽性菌である、前記〔11〕に記載の組成物。
〔15〕前記グラム陽性菌が、E.フェシウム及びS.アウレウスからなる群から選択される、前記〔14〕に記載の組成物。
〔16〕前記微生物が、薬物耐性菌である、前記〔11〕に記載の組成物。
〔17〕前記薬物耐性菌が、カルバペネム耐性菌、メチシリン耐性菌、又はポリミキシン耐性菌である、前記〔16〕に記載の組成物。
〔18〕ペプチドが、R1-X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7-X8-X9-NR23を含み、
1が、Dab、Orn、Dap、Lys及びArgからなる群から選択され;
2が、Ile、Val、Phe、Dap、及びPhepheからなる群から選択され;
3が、Dab、Orn、Dap、Thr、Lys及びArgからなる群から選択され;
4が、dLeu、dPhe、及びPhepheからなる群から選択され;
5が、Leu、Phe及びPhepheからなる群から選択され;
6が、Dab、Orn、Dap、Lys及びArgからなる群から選択され;
7が、dVal、dLeu、dPhe及びPhepheからなる群から選択され;
8が、Leu、Phe、Phephe、及びOctglyからなる群から選択され;且つ
9が、Ser及びDabからなる群から選択される、前記〔1〕~〔17〕のいずれか一項に記載の組成物。
〔19〕前記ペプチドが、配列番号:1~17のいずれか1つと少なくとも88%の配列同一性を有する、前記〔1〕~〔18〕のいずれか一項に記載の組成物。
〔20〕-R1が:
4-C(=O)-を含み、且つR4が、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、フェニルアルキル、ビフェニルアルキル、アルキルアミン、シクロアルキルアミン、フェニルアルキルアミン、ビフェニルアルキルアミン、アルコキシ、シクロアルコキシ、フェニルアルコキシ、若しくはビフェニルアルコキシからなる群から選択されるか、又は
5-CH(NH2)-C(=O)-を含み、且つR5が、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、フェニルアルキル、及びビフェニルアルキルからなる群から選択される、
前記〔1〕~〔19〕のいずれか一項に記載の組成物。
〔21〕R2及びR3が、水素から選択される、前記〔1〕~〔20〕のいずれか一項に記載の組成物。
〔22〕抗菌剤を更に含む、前記〔1〕に記載の組成物。
〔23〕(a)前記抗菌剤が、培地中で、前記リポペプチド非存在下での微生物に対する最小発育阻止濃度よりも、前記リポペプチドの存在下において該微生物に対して低い最小発育阻止濃度を有するか;
(b)前記抗菌剤が、培地中で、前記リポペプチド非存在下での微生物に対する最小殺菌濃度よりも、前記リポペプチドの存在下において該微生物に対して低い最小殺菌濃度を有するか;
(c)前記リポペプチドが、微生物に対する前記抗菌剤に関して128以上の感作因数を有するか;
(d)前記組成物が、表面上の生存微生物における少なくとも2.0 logの低減という抗バイオフィルム活性のための有効量の前記リポペプチド及び/又は前記抗菌剤を有するか;又は
(e)これらの組み合わせ
である、前記〔22〕に記載の組成物。
〔24〕前記抗菌剤の最小発育阻止濃度が、培地中で、前記リポペプチド非存在下での最小発育阻止濃度よりも、前記リポペプチドの存在下において低い、前記〔23〕に記載の組成物。
〔25〕前記抗菌剤の最小殺菌濃度が、培地中で、前記リポペプチド非存在下での最小殺菌濃度よりも、前記リポペプチドの存在下において低い、前記〔23〕に記載の組成物。
〔26〕リポタンパク質の感作因数が、前記微生物に対する前記抗菌剤に関して128以上である、前記〔23〕に記載の組成物。
〔27〕前記抗菌剤が、アンピシリン、クラリスロマイシン、エリスロマイシン、リファンピシン、及びバンコマイシンからなる群から選択される、前記〔26〕に記載の組成物。
〔28〕表面上の生存微生物における少なくとも2.0 logの低減という抗バイオフィルム活性のための有効量の前記リポペプチド及び/又は前記抗菌剤を有する、前記〔23〕に記載の組成物。
〔29〕(a)、(b)、(c)、及び(d)からなる群から選択される少なくとも2つの特性を有する、前記〔23〕に記載の組成物。
〔30〕前記微生物が、
(i)グラム陰性菌;
(ii)グラム陽性菌;
(iii)薬物耐性菌;又は
(iv)(i)及び(iii)又は(ii)及び(iii)の組み合わせ
である、前記〔23〕~〔29〕のいずれか一項に記載の組成物。
〔31〕前記微生物が、グラム陰性菌である、前記〔30〕に記載の組成物。
〔32〕前記グラム陰性菌が、大腸菌、A・バウマンニ、E・クロアカ、K・ニューモニエ、及びP・エルジノーサからなる群から選択される、前記〔31〕に記載の組成物。
〔33〕前記微生物が、グラム陽性菌である、前記〔30〕に記載の組成物。
〔34〕前記グラム陽性菌が、E.フェシウム及びS.アウレウスからなる群から選択される、前記〔33〕に記載の組成物。
〔35〕前記微生物が、薬物耐性菌である、前記〔30〕に記載の組成物。
〔36〕前記薬物耐性菌が、カルバペネム耐性菌、メチシリン耐性菌、又はポリミキシン耐性菌である、前記〔35〕に記載の組成物。
〔37〕ペプチドが、R1-X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7-X8-X9-NR23を含み、
1が、Dab、Orn、Dap、Lys及びArgからなる群から選択され;
2が、Ile、Val、Phe、Dap、及びPhepheからなる群から選択され;
3が、Dab、Orn、Dap、Thr、Lys及びArgからなる群から選択され;
4が、dLeu、dPhe、及びPhepheからなる群から選択され;
5が、Leu、Phe及びPhepheからなる群から選択され;
6が、Dab、Orn、Dap、Lys及びArgからなる群から選択され;
7が、dVal、dLeu、dPhe及びPhepheからなる群から選択され;
8が、Leu、Phe、Phephe、及びOctglyからなる群から選択され;且つ
9が、Ser及びDabからなる群から選択される、前記〔22〕~〔36〕のいずれか一項に記載の組成物。
〔38〕前記ペプチドが、配列番号:1~18のいずれか1つと少なくとも88%の配列同一性を有する、前記〔22〕~〔37〕のいずれか一項に記載の組成物。
〔39〕R1が:
4-C(=O)-を含み、且つR4が、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、フェニルアルキル、ビフェニルアルキル、アルキルアミン、シクロアルキルアミン、フェニルアルキルアミン、ビフェニルアルキルアミン、アルコキシ、シクロアルコキシ、フェニルアルコキシ、若しくはビフェニルアルコキシからなる群から選択されるか、又は
5-CH(NH2)-C(=O)-を含み、且つR5が、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、フェニルアルキル、及びビフェニルアルキルからなる群から選択される、前記〔22〕~〔38〕のいずれか一項に記載の組成物。
〔40〕R2及びR3が、水素から選択される、前記〔22〕~〔39〕のいずれか一項に記載の組成物。
〔41〕治療有効量の前記〔1〕~〔40〕のいずれか一項に記載の組成物、及び薬学的に許容できる賦形剤、担体、又は希釈剤を含む、医薬組成物。
〔42〕表面への適用のために製剤化された、有効量の前記〔1〕~〔40〕のいずれか一項に記載の組成物を含む、抗バイオフィルム製品。
〔43〕前記表面が、医療用装置表面、医療用機器表面、医療用インプラント表面、包帯表面、創傷表面、又は皮膚である、前記〔42〕に記載の抗バイオフィルム製品。
〔44〕スプレー、軟膏、ゲル、フォーム、ペースト、ヒドロゲル、又は親水コロイドとして製剤化されている、前記〔42〕又は〔43〕に記載の抗バイオフィルム製品。
〔45〕ドレッシング材と、創傷又は皮膚上の微生物感染又は微生物バイオフィルムを治療又は防止するための有効量の前記〔1〕~〔40〕のいずれか一項に記載の組成物を含、包帯。
〔46〕前記ドレッシング材が、布、海綿質、アルギネート、コラーゲン、フィルム、ゲルシート、創傷充填剤、ヒドロゲル、親水コロイド、又はこれらの組み合わせを含む、前記〔45〕に記載の包帯。
〔47〕微生物の増殖を阻害する、微生物を死滅させる、又は微生物を感作する方法であって、前記微生物と、有効量の前記〔1〕~〔40〕のいずれか一項に記載の組成物とを接触させることを含む、方法。
〔48〕表面上でのバイオフィルムの形成を防止するか、又は前記バイオフィルムにおいて、微生物の増殖を阻害する、微生物を死滅させる、若しくは微生物を感作する方法であって、前記表面又は該表面に配置されたバイオフィルムと、有効量の前記〔1〕~〔40〕のいずれか一項に記載の組成物、前記〔41〕に記載の医薬組成物、前記〔42〕~〔44〕のいずれか一項に記載の抗バイオフィルム製品、又は前記〔45〕~〔47〕のいずれか一項に記載の包帯とを接触させることを含む、方法。
〔49〕前記表面が、医療用装置表面、医療用機器表面、医療用インプラント表面、包帯表面、創傷表面、又は皮膚である、前記〔48〕に記載の方法。
〔50〕創傷若しくは皮膚上でのバイオフィルムの形成を防止するか、又は前記バイオフィルムにおいて、微生物の増殖を阻害する、微生物を死滅させる、若しくは微生物を感作する方法であって、前記創傷、前記皮膚、又は前記創傷若しくは前記皮膚のいずれかに配置されたバイオフィルムと、有効量の前記〔1〕~〔40〕のいずれか一項に記載の組成物、前記〔41〕に記載の医薬組成物、前記〔42〕~〔44〕のいずれか一項に記載の抗バイオフィルム製品、又は前記〔45〕~〔47〕のいずれか一項に記載の包帯とを接触させることを含む、方法。
〔51〕対象中又は対象上の微生物感染を防止するか又は微生物感染を治療する方法であって、治療有効量の前記〔1〕~〔40〕のいずれか一項に記載の組成物又は前記〔41〕に記載の医薬組成物、前記〔42〕~〔44〕のいずれか一項に記載の抗バイオフィルム製品、又は前記〔45〕~〔47〕のいずれか一項に記載の包帯を投与することを含む、方法。
〔52〕前記微生物又は微生物感染症が、
(i)グラム陰性菌若しくはグラム陰性菌感染症;
(ii)グラム陽性菌若しくはグラム陽性菌感染症;
(iii)薬物耐性菌若しくは薬物耐性菌感染症;又は
(iv)(i)及び(iii)若しくは(ii)及び(iii)の組み合わせ
である、前記〔47〕~〔51〕のいずれか一項に記載の方法。
〔53〕前記微生物が、グラム陰性菌であるか、又は前記微生物感染症が、グラム陰性菌感染症である、前記〔53〕に記載の方法。
〔54〕前記グラム陰性菌が、大腸菌、A・バウマンニ、E・クロアカ、K・ニューモニエ、及びP・エルジノーサからなる群から選択されるか、又は前記グラム陰性菌感染症が、大腸菌感染症、A・バウマンニ感染症、E・クロアカ感染症、K・ニューモニエ感染症、及びP・エルジノーサ感染症からなる群から選択される、前記〔53〕に記載の方法。
〔55〕前記微生物が、グラム陽性菌であるか、又は前記微生物感染症が、グラム陽性菌感染症である、前記〔52〕に記載の方法。
〔56〕前記グラム陽性菌が、E.フェシウム及びS.アウレウスからなる群から選択されるか、又は前記グラム陽性菌感染症が、E.フェシウム感染症及びS.アウレウス感染症から選択される、前記〔55〕に記載の方法。
〔57〕前記微生物が、薬物耐性菌であるか、又は前記微生物感染症が、薬物耐性菌感染症である、前記〔52〕に記載の方法。
〔58〕前記薬物耐性菌が、カルバペネム耐性菌、メチシリン耐性菌、若しくはポリミキシン耐性菌であるか、又は前記薬物耐性菌が、カルバペネム耐性菌感染症、メチシリン耐性菌感染症、若しくはポリミキシン耐性菌感染症である、前記〔57〕に記載の方法。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
【配列表】
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